特許第6140151号(P6140151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140151統合失調症の処置において4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンおよびその塩を投与する方法
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  • 特許6140151-統合失調症の処置において4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンおよびその塩を投与する方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140151
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】統合失調症の処置において4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンおよびその塩を投与する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20170522BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61K31/495ZMD
   A61K45/00
   A61P25/18
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-516318(P2014-516318)
(86)(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公表番号】特表2014-517050(P2014-517050A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012061779
(87)【国際公開番号】WO2012175531
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】PA201100465
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】61/498,653
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ホルム,レネ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーン,ローン
【審査官】 渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/037398(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/135495(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/149727(WO,A1)
【文献】 特表2009−501798(JP,A)
【文献】 木藤弘子(他3名),統合失調症患者における個別の認知機能に対応した服薬自己管理支援による再入院抑制効果,日病薬誌,2010年,第46巻8号,p1114-1117
【文献】 NEW薬理学,日本,南江堂,1997年 8月 1日,改訂第3版,p20,268-277
【文献】 新・薬剤学総論(改訂第3版),1987年 4月10日,p262-267
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(I)の遊離塩基として計算される、20mg/週から50mg/週の間に相当する用量で、週2回、または週1回、経口投与用の即放性製剤(IR−製剤)、徐放性製剤、制御放出製剤、または遅延放出製剤において投与されることを特徴とする、統合失調症、統合失調症様障害、または統合失調感情障害(分裂感情障害)を処置するための下記式の化合物(I)を含む医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
化合物(I)が、塩基化合物(I)の遊離したものとして計算される、20mg/用量から50mg/用量の間の用量で、週1回投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、約30mg/用量から約45mg/用量の間の用量で、週1回投与される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、約30mg/用量の用量で、週1回投与される、請求項1、2または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、約45mg/用量の用量で、週1回投与される、請求項1、2または3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
統合失調症、統合失調症様障害、または統合失調感情障害(分裂感情障害)を処置するための薬剤を製造するための、下記式の化合物(I)の使用であって、化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、20mg/週から50mg/週の間に相当する用量で、週2回、または週1回、経口投与用の即放性製剤(IR−製剤)、徐放性製剤、制御放出製剤、または遅延放出製剤において投与される、化合物(I)の使用。
【化2】
【請求項7】
請求項1に記載の医薬組成物であって、セルチンドール、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、クロザピン、ジプラシドン、およびオサネタントからなる群から選択される化合物をさらに統合失調症、統合失調症様障害、または統合失調感情障害(分裂感情障害)を処置するための薬剤を調製するための医薬組成物
【請求項8】
統合失調症、統合失調症様障害、または統合失調感情障害(分裂感情障害)に罹患している患者を処置するための医薬組成物であって;有効量の下記式の化合物(I)を単独で、またはセルチンドール、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、クロザピン、ジプラシドン、およびオサネタントから選択される1つもしくは複数の神経遮断剤とともに含み、化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、20mg/週から50mg/週の間に相当する用量で、週2回、または週1回、経口投与用の即放性製剤(IR−製剤)、徐放性製剤、制御放出製剤、または遅延放出製剤において投与される、医薬組成物。
【化3】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、週1回の投与レジメンで中枢神経系の疾患を処置するための、ドーパミンDおよびD受容体、ならびにセロトニン5HT受容体における活性を有する4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンおよびその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンおよびその塩、これらの塩を含有する医薬組成物、ならびに統合失調症または精神病の症状に関連する他の疾患の処置を含めたこれらの医学的使用は、WO2005/016900で開示されている。以下、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−1,2,2−トリメチル−ピペラジンを化合物(I)と呼ぶ。
【0003】
【化1】
化合物(I)は、ジクロナピンとしても知られている。
【0004】
EP638073は、ピペラジン環の2位および/または3位において置換される3−アリール−1−(1−ピペラジニル)インダンのトランス異性体の群をカバーする。該化合物は、ドーパミンDおよびD受容体、ならびに5−HT受容体に高い親和性を有すると記載されており、統合失調症を含めた中枢神経系における疾患数種の処置に有用であることが示唆されている。
【0005】
上の化合物(I)は、Bogesoらによって、J. Med. Chem.、1995、38、4380-4392ページに、フマル酸塩の形態で記載されている。表5の化合物(−)−38を参照されたい。この刊行物は、化合物38の(−)−鏡像異性体は、in vitroでD選択性を幾分示す、強力なD/D拮抗物質であると結論を下している。該化合物は、強力な5−HT拮抗物質とも記載されている。化合物は、ラットにカタレプシーを誘導しないということも言及されている。
【0006】
統合失調症の病因論は不明であるが、1960年代初期に系統立てて述べられた統合失調症のドーパミン仮説は、この障害に内在する生物学的機構を理解するための理論的枠組みをもたらした(Carlsson、Am. J. Psychiatry 1978、135、164-173ページ)。その最も簡潔な形態では、ドーパミン仮説は、統合失調症がドーパミン作用亢進状態に関連していることを述べており、これは今日市販されているすべての抗精神病薬が、ドーパミンD受容体の拮抗作用を幾分働かせるという事実によって裏付けられる概念である(Seeman、Science and Medicine 1995、2、28-37ページ)。しかし、脳の辺縁域において、ドーパミンD受容体の拮抗作用が、統合失調症の陽性症状を処置する際に重要な役割を果たすことは一般に認められている一方で、脳の線条体域におけるD受容体の遮断は、錐体外路症状(EPS)を引き起こす。EP638073に記載されているように、混合したドーパミンD/D受容体の阻害のプロファイルは、いわゆる「非定型」抗精神病化合物数種、特に、統合失調症患者の処置に使用されるクロザピン(8−クロロ−11−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5H−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン)を用いて観察されている。
【0007】
さらに、選択的なD拮抗物質が、睡眠障害およびアルコール中毒の処置に関連付けられている(D.N. Eder、Current Opinion in Investigational Drugs、2002 3(2):284-288ページ)。
【0008】
ドーパミンは、情動障害の病因論においても重要な役割を果たす可能性がある(P. Willner、Brain. Res. Rev. 1983、6、211-224ページ、225-236ページおよび237-246ページ;Bogesoら、J. Med. Chem.、1985、28、1817-1828ページ)。
【0009】
EP638073では、統合失調症患者における陰性症状を含めた統合失調症、うつ病、不安、睡眠障害、片頭痛発作および神経遮断剤によって誘導されるパーキンソニズムなどの様々な疾患の処置するために、5−HT受容体に対して親和性を有する化合物、特に5−HT2A受容体アンタゴニストがどのように示唆されてきたかが記載されている。5−HT2A受容体の拮抗作用は、旧知の神経遮断剤によって誘導される錐体外路副作用の発生率を低下させることも示唆されている(Balsaraら、Psychopharmacology 1979、62、67-69)。
【0010】
精神病患者、特に統合失調症患者は、薬剤の定期的な摂取をいやがるか、または摂取が不可能であることが多く;数件の研究により、投薬頻度が少ないと、服薬遵守の程度が高くなり、ひいては、最終的に患者の処置がより良好になることが示されている。したがって、抗精神病薬の、長く作用する調製物の必要性については、まだ対処されていない。特に、投与レジメン、投薬頻度または投薬様式を変化させ、より柔軟にするために、抗精神病薬の、長く作用する調製物が、筋肉内へのデポ剤の代替物に相当する非侵襲形態で要求されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、ヒトにおける化合物(I)の排泄半減期が約150時間であることを見出した。ドーパミンD1およびD2受容体の両方に対する親和性と組み合わされて排泄半減期が長いと、化合物(I)は、週1回、隔週1回または週2回、例えば非侵襲形態で、経口投与用の即放性製剤(IR−製剤)、徐放性製剤、制御放出製剤、または遅延放出製剤などで投与でき、長く作用する抗精神病性があると推定される化合物になる。
【0012】
さらに、本発明の発明者らは、驚くべきことに、ヒトにおいて、化合物(I)の主な代謝物、すなわちトランス−1(6−クロロ−3−フェニル−インダン−1−イル)−3,3−ジメチル−ピペラジンである化合物(II)も、ドーパミンD1およびD2受容体の両方に対する親和性を備え、約300〜400時間の排泄半減期を有することを見出した。
【0013】
【化2】
【0014】
化合物(I)およびその主な代謝物の長い半減期、ならびにドーパミンD1およびD2受容体の両方に対する親和性の驚くべき組合せから、本発明の発明者らは、化合物(I)を、精神病の処置における通常の時間間隔よりも、長い時間間隔で投与できると結論付けた。したがって、精神病の維持処置、ならびに精神病の急性憎悪の処置において、化合物(I)は、週1回、週2回、または隔週1回で投与できることが予想される。
【0015】
本願の発明者らは、驚くべきことに、化合物(I)を、約30mg/週から約45mg/週の間の用量で週1回投薬すると、PANSS総得点を、少なくとも、10mg/日の1日用量と同じ程度に低下させることを見出した。これにより、ヒトに低用量を投与できるようにする、すなわち全身、例えば肝臓への負担を減らし、投薬頻度を減らせるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】週1回、化合物(I)の投薬に適用される研究デザインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
既に指し示されているように、化合物(I)は、ドーパミンD1およびD2受容体の両方に対する親和性を有し、抗精神病性があると推定される化合物である。ラットにおける、条件回避反応(CAR)モデルを使用した前臨床実験(実験手順は、以前にHertel P、Olsen CK、Arnt J.、Eur. J. Pharmacol. 2002;439(1-3):107-11ページに記載されている。)は、化合物(I)が、きわめて低水準のD2受容体占有率で、抗精神病活性を備えることを指し示している。
【0018】
D1およびD2受容体のトレーサーとして11C−SCH23390および11C−ラクロプライドを使用した、健常な対象における陽電子放射断層法(PET)の研究で、化合物(I)は、18日間にわたって、毎日与えられる用量を2から10mg/日増加させた場合、被殻において11〜43%のD2受容体占有率を誘導することが見出された。D2受容体占有率のこのようなレベルは、現在使用されている抗精神病薬のものと比較して低く、一般的に、処置に有効にするためには、50%近辺のまたはそれを超えるD2受容体占有率が必要である(Stone JM、Davis JM、Leucht S、Pilowsky LS.、Schizophr Bull. 2008 Feb 26)。同様のPET研究において、化合物(I)は、18日間にわたって、毎日与えられる用量を2から10mg/日増加させた場合、被殻において32〜69%のD1受容体占有率上昇を誘導することが見出された。これほど高水準のD1占有率は、現在使用されている抗精神病薬では、一般的には見られない(Farde L、Nordstrom AL、Wiesel FA、Pauli S、Halldin C、Sedvall G、Arch Gen Psychiatry. 1992;49(7):538-44ページ)。したがって、化合物(I)は、D1受容体占有率対D2受容体占有率の独特な比率を示す。
【0019】
以上に基づき、化合物(I)が、統合失調症患者において、低水準のD2受容体占有率しか誘導できない(4mg/用量から60mg/用量)用量で、臨床的に著しい治療効果を有することが期待される。これが、化合物(I)によって示される、D1受容体占有率の高さ、およびD1受容体占有率対D2受容体占有率の独特な比率の結果であろう。治療有効用量でのD2受容体占有率の低さは、D2受容体遮断によって介在される、錐体外路副作用および高プロラクチン血症を含めた厄介な副作用を誘導する傾向が低下するという観点から、利益となるはずである。
【0020】
遊離塩基として計算される、治療有効量4〜60mgの化合物(I)は、経口投与され、そのような投与に適切なあらゆる形態、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤または液剤の形態で提示することができる。
【0021】
一実施形態において、化合物(I)の塩は、固形医薬体、適切には、経口崩壊錠剤などの錠剤またはカプセル剤の形態で投与される。
【0022】
薬学的に許容される塩
本発明は、化合物(I)の塩も含み、典型的には、薬学的に許容される塩である。そのような塩には、薬学的に許容される酸付加塩が挙げられる。酸付加塩は、無機酸および有機酸の塩を含む。
【0023】
適切な無機酸の代表的な例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などが挙げられる。適切な有機酸の代表的な例には、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸、ならびに8−ハロテオフィリン、例えば8−ブロモテオフィリンが挙げられる。薬学的に許容される無機酸付加塩または有機酸付加塩のさらなる例には、Berge, S.M.ら、J. Pharm. Sci. 1977、66、2に列挙されている薬学的に許容される塩が挙げられ、この文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
さらに、本発明の化合物(I)およびその塩は、非溶媒和形態、ならびに水、エタノールなど薬学的に許容される溶媒を用いて溶媒和形態で存在できる。一般的に、溶媒和形態は、本発明の目的に対して、非溶媒和形態と同等と考えられる。
【0025】
本発明の具体的な実施形態において、化合物(I)はコハク酸塩またはマロン酸塩の形状である。
【0026】
医薬組成物
本発明は、治療有効量の本発明の化合物(I)および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0027】
本発明の化合物(I)は、単独で、または薬学的に許容される担体、賦形剤もしくは添加剤と組み合わせて、単回用量でも複数用量でも投与できる。本発明による医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤、ならびに他の知られているあらゆる補助剤および添加剤を用いて、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995に開示されているものなどの従来の技術に従って製剤できる。
【0028】
具体的な実施形態において、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(A.R. Genaro編)、1990、1640-1641ページに記載の手順に従って測定して、15分以内に、特に、10分以内、例えば、5分、4分、3分、2分または1分で崩壊する化合物(I)を含む医薬組成物。
【0029】
医薬組成物は、経口、経鼻、局所(バッカルおよび舌下を含む)、および非経口(皮下、筋肉内、くも膜下、静脈内および皮内を含む)の経路など、あらゆる適切な経路で投与するために、特に製剤できる。経路は、処置される対象の全身状態および年齢、処置される状態の性質ならびに有効成分に依存することが理解されるであろう。
【0030】
本発明の化合物(I)は、遊離物質または薬学的に許容されるその塩として一般的に用いられる。適切な有機酸および無機酸の例は上に記載されている。
【0031】
投与レジメン
長く作用する抗精神病性化合物、長く作用する調製物、および抗精神病性化合物の長く作用する調製物は、体外から投与される化合物の医薬的活性水準を、1週間など1日超にわたって維持して、化合物を毎日与えずに、週2回、週1回、または隔週1回でさえ済むようにする、化合物および化合物の調製物を指す。
【0032】
本発明は、精神病、特に統合失調症、または精神病の症状に関連する他の疾患、例えば統合失調症様障害、統合失調感情障害(分裂感情障害、妄想性障害、短期精神障害、共有精神病性障害、ならびに精神病の症状、例えば双極性障害における躁病を呈する他の精神障害もしくは疾患、例えば双極性障害、を含めた、中枢神経系の疾患を処置するための化合物(I)に関し、化合物(I)は、週2回、週1回、または隔週1回投与される。
【0033】
本発明は、精神病、特に統合失調症、または精神病の症状に関連する他の疾患、例えば統合失調症様障害、統合失調感情障害(分裂感情障害、妄想性障害、短期精神障害、共有精神病性障害、ならびに精神病の症状、例えば双極性障害における躁病を呈する他の精神障害もしくは疾患、例えば双極性障害、を含めた、中枢神経系の疾患を処置する方法など、化合物(I)を医学的に使用する方法にも関し、化合物(I)は、週2回、週1回、または隔週1回投与される。
【0034】
遊離塩基として計算される、化合物(I)の週1回(すなわち7日間の間隔)または週2回(すなわち3から4日間の間隔で週2回)または隔週1回(すなわち14日間の間隔)の用量は、適切には1mg/用量から100mg/用量の間であり、より適切には1mg/用量から60mg/用量の間、例えば、好ましくは、5mg/用量から55mg/用量の間、その例として、10mg/用量から45mg/用量mgの間であり、特に、30mg/用量から45mg/用量の間、その例として40mg/用量または45mg/用量である。
【0035】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、週2回、週1回、または隔週1回、20mg/週から50mg/週。の間に相当する用量で投与されることを特徴とする、中枢神経系の疾患を処置するための化合物(I)に関する。
【0036】
化合物(I)の週1回または週2回(すなわち3から4日間の間隔で週2回)または隔週1回(すなわち14日間の間隔)の投与は、中枢神経系における疾患、特に精神病の維持処置用、ならびに精神病の急性憎悪の処置用にできる。
【0037】
維持処置は、本発明の化合物(I)によって、または異なる抗精神病性化合物によって、患者が安定した後での再発を予防するようにデザインされている。
【0038】
急性憎悪は、精神状態が急激に悪化することである。
【0039】
本明細書に引用されている刊行物、特許出願および特許を含めたすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、各参考文献が、参照により個々に、かつ具体的に示され、その全体が説明される場合と同じ範囲で組み込まれる(法律によって許可される最大限の範囲で)。
【0040】
本明細書では、標題および副題は便宜上使用されるのみであり、本発明を多少なりとも制限するものと解釈されるべきではない。
【0041】
本明細書における、ありとあらゆる例、または例示的表現(「例えば(for instance)」、「例えば(for example)」、「例えば(e.g.)」、および「そのようなものとして」)の使用は、本発明をよりよく理解できるようにすることのみを目的としており、特に指示がない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。
【0042】
本明細書では、「約」という用語は、およそ、大体、〜前後の、または〜の辺りを意味するために本明細書で使用されている。「約」という用語が数字の範囲と組み合わされて使用される場合、説明される数値の限度を上下に拡張することによりその範囲を修飾する。本明細書では、一般的に「約」という用語は、10パーセントの上下(高低)の差によって述べられる数値を上下に修飾するために使用される。
【0043】
本明細書では、数字の範囲とともに使用される「〜の間」という用語は、範囲の下限および上限値(端点)を含む。
【0044】
本発明について記載する文脈において、「a」および「an」および「the」および類似した指示対象の使用は、本明細書で特に指示がない限り、または文脈に明らかに反しない限り、単一および複数の両方をカバーすると解釈されるものである。
【0045】
特に指示がない限り、本明細書で得られるすべての正確な数値は、対応するおよその数値の典型(例えば、特定の要因または測定に関して得られる、すべての正確な例示の数値は、「約」という言葉で適切に修飾される、対応するおよその測定値も得ると考えることができる。)である。
【0046】
要素(複数可)に関して「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、「含有する」などの用語を使用した本発明の任意の態様(複数可)の本明細書における記載は、特に明記されない限り、または文脈に明らかに反しない限り、特定の要素(複数可)「からなる(consist of)」、「から実質的になる(consists essentially of)」、「を実質的に含む(substantially comprises)」本発明の類似した態様(複数可)に対する裏付けとすることを意図している。
【0047】
本明細書における特許文献の引用および組み込みは、便宜上行われるに過ぎず、上記特許文献の妥当性、特許性および/または法的強制力のいかなる見解も反映しない。
【0048】
本発明は、本明細書に添付されている特許請求の範囲で唱えられている主題の、準拠法で認められるように、あらゆる改変および同等物を含む。
【0049】
実験
結合アッセイ
ヒトD結合アッセイの説明
本アッセイは、NaCl120mM、KCl5mM、MgCl4mM、CaCl1.5mM、EDTA1mMを含有する、pH7.4のアッセイバッファであるトリス50mM中で、SPAに基づく競合結合として実行できる。
【0050】
均一化したヒトD受容体膜調製物20マイクロg、およびSPAビーズ(WGA RPNQ0001、Amersham)0.25mgを加える前に、H−ラクロプライド(Perkin Elmer、NET975)1.5nMを、試験化合物と総量90マイクロLに混合する。撹拌下で、アッセイプレートを室温にて60分間インキュベートし、続いてシンチレーションカウンター(TriLux、Wallac)で計測する。総結合は、加えられる放射性リガンドがおよそ15%を占め、アッセイバッファを使用して明らかにされる一方で、非特異的結合は、ハロペリドール10マイクロMの存在下で明らかにされる。非特異的結合は、総結合のおよそ10%を構成した。
【0051】
データ点はH−ラクロプライドの特異的結合の百分率で表され、IC50値(H−ラクロプライドの特異的結合の50%の阻害を引き起こす濃度)は、S字可変勾配カーブフィッティングを使用する非線形回帰分析によって決定される。解離定数(K)は、Cheng Prusoffの式(K=IC50/(1+(L/K))から計算され、遊離放射性リガンドであるLの濃度は、アッセイで加えられるH−ラクロプライドの濃度に近似する。H−ラクロプライドのKは、三重測定を用いて実行されるそれぞれ独立した飽和アッセイ2件から、1.5nMに決定される。
【0052】
ヒトD結合アッセイの説明
本アッセイは、NaCl120mM、KCl5mM、MgCl4mM、CaCl1.5mM、EDTA1mMを含有する、pH7.4のアッセイバッファであるトリス50mM中で、SPAに基づく競合結合として実行される。均一化したヒトD受容体膜調製物2.5マイクロg、およびSPAビーズ(WGA RPNQ0001、Amersham)0.25mgを加える前に、H−SCH23390(Perkin Elmer、NET930)およそ1nMを、試験化合物と総量60マイクロLに混合する。
【0053】
アッセイプレートを遠心分離器にかける前に、撹拌下で、プレートを室温にて60分間インキュベートし、続いてシンチレーションカウンター(TriLux、Wallac)で計測する。総結合は、加えられる放射性リガンドがおよそ15%を占め、アッセイバッファを使用して明確にされる一方で、非特異的結合は、ハロペリドール10マイクロMの存在下で明確にされる。
【0054】
データ点は特異的結合の百分率で表され、IC50値(特異的結合の50%の阻害を引き起こす濃度)は、S字可変勾配カーブフィッティングを使用する非線形回帰分析によって決定される。解離定数(K)は、Cheng Prusoffの式(K=IC50/(1+(L/K))から計算され、遊離放射性リガンドであるLの濃度は、アッセイで加えられる放射性リガンドの濃度に近似する。
【0055】
ヒト5−HT2結合の説明
Cerep Contract Laboratories(カタログ参照#471)にて実験を行う。
【0056】
ラットの脳におけるD受容体へのin vivo結合の説明
Andersenら(Eur J Pharmacol、(1987)144:1-6ページ)と、少しの改変(Kapur S.ら、J Pharm Exp Ther、2003、305、625-631ページ)に従って、in vivo結合を行う。簡潔には、ラット6匹(雄のWistar種、180〜200g)を、尾静脈を経由して[H]−ラクロプライド9.4ミクロCiを静脈内に投与する30分前に、皮下に20mg/kgの試験化合物を用いて処置する。
【0057】
放射性リガンドの注入から15分後、頸椎脱臼によりラットを屠殺し、脳を直ちにすばやく取り出し、線条体および小脳を別々にして5mL(小脳は20mL)の氷冷バッファ(pH7.4のKPO50mM)中で均一化する。ホモジネート1.0mLを、0.1%PEIに浸したWhatmanGF/Cフィルターを通して濾過する。これは、断頭後60秒以内に完了させる。フィルターを氷冷バッファ5mLで2回洗浄し、シンチレーションカウンターで計測する。ビヒクルで処置したラットの群を使用して、[H]−ラクロプライドの、線条体における総結合および小脳における非特異的結合を決定する。ホモジネートを、タンパク質含有量についてBCAタンパク質測定アッセイ(Smith P.K.ら(1985)Anal.Biochem.、150:6-85ページ)により測定する。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
化合物(I)の結合親和性
予め行ったin vivo結合の研究により、化合物(I)はD、Dおよび5−HTAの受容体と、以下の親和性で結合することが示された。
ヒトD結合:K=19nM
ヒト5−HT2結合:K=4.2nM
脳におけるD受容体へのin vivo結合:ED50=4.1mg/kg
(実施例2)
研究デザイン
化合物(I)のコハク酸水素塩の形態で投与される、化合物(I)の週1回投薬の実現可能性を評価するために行われた研究デザインを、図1にまとめる。本研究は、統合失調症患者における化合物(I)の1日1回投薬対週1回投薬の安全性、耐性およびPKの、無作為化、二重盲検、並行群予備研究である。
【0059】
オープンラベル期間(OL期間)は、オープンラベル処置(ベースライン)を開始してから、オープンラベル処置を終了する(OL中断または二重盲検処置に対する無作為化の、いずれか最初に発生した段階で)までの期間である。
【0060】
プラセボ期間(PBO期間)は、週1回投薬に無作為化された患者がプラセボ処置を受け、一方1日1回投薬に無作為化された患者は、化合物(I)10mg/日で処置を続ける二重盲検処置の第1週である。
【0061】
二重盲検期間(DB期間)は、二重盲検処置(無作為化)を開始してから、二重盲検処置を終了する(DB中断または完了の、いずれか最初に発生した段階で)までの期間であり、すなわち、PBO期間を含めた二重盲検期間全体である。
【0062】
IMP投与期間(IMP期間)は、オープンラベル処置(ベースライン)を開始してから、二重盲検処置を終了する(中断または完了の、いずれか最初に発生した段階で)までの期間であり、すなわち、OL期間プラスDB期間である
(実施例3)
PANSS総得点のランダム化に由来する変化
研究を、実施例2に記載の研究デザインを用いて行った。
【0063】
PANSS総得点のランダム化に由来する変化としての結果を、表1に載せる:
【0064】
【表1】
【0065】
上のデータにより、20mg/週から45mg/週、特に、30mg/週から45mg/週の範囲の週1回投薬は、10mg/日の1日1回投薬と同じ程度、PANSS総得点の低下に効果的であることが示される。
また、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
(1)化合物(I)の遊離塩基として計算される、20mg/週から50mg/週の間に相当する用量で、週2回、週1回または隔週1回投与されることを特徴とする、中枢神経系における疾患を処置するための化合物(I)。
【化3】
(2)塩基化合物(I)の遊離したものとして計算される、20mg/用量から50mg/用量の間の用量で、週1回投与される、上記(1)に記載の化合物(I)。
(3)化合物(I)の遊離塩基として計算される、約30mg/用量から約45mg/用量の間の用量で、週1回投与される、上記(1)または(2)に記載の化合物(I)。
(4)化合物(I)の遊離塩基として計算される、約30mg/用量の用量で、週1回投与される、上記(1)、(2)または(3)に記載の化合物(I)。
(5)化合物(I)の遊離塩基として計算される、約45mg/用量の用量で、週1回投与される、上記(1)、(2)または(3)に記載の化合物(I)。
(6)疾患が、精神病、特に統合失調症、または精神病の症状に関連する他の疾患、例えば統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害(分裂感情障害)、妄想性障害、短期精神障害、共有精神病性障害、ならびに精神病の症状、例えば双極性障害における躁病を呈する他の精神障害もしくは疾患、例えば双極性障害、からなる疾患群から選択される、上記(1)に記載の処置のための化合物(I)であって、パーキンソン氏病における精神病を処置するための化合物(I)。
(7)精神病、特に統合失調症、または精神病の症状に関連する他の疾患、例えば統合失調症様障害、統合失調感情障害(分裂感情障害)、妄想性障害、短期精神障害、共有精神病性障害、ならびに精神病の症状、例えば双極性障害における躁病を呈する他の精神障害もしくは疾患、例えば双極性障害、を処置し、パーキンソン氏病における精神病を処置するための薬剤を製造するための、化合物(I)の使用であって、化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、20mg/週から50mg/週。の間に相当する用量で、週2回、週1回または隔週1回投与される、化合物(I)の使用。
(8)精神病、特に統合失調症、または、精神病の症状に関連する他の疾患、例えば統合失調症様障害、統合失調感情障害(分裂感情障害)、妄想性障害、短期精神障害、共有精神病性障害、ならびに精神病の症状、例えば双極性障害における躁病を呈する他の精神障害もしくは疾患、例えば双極性障害、を処置し、パーキンソン氏病における精神病を処置するための薬剤を調製する、セルチンドール、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、クロザピン、ジプラシドン、およびオサネタントからなる群から選択されるさらなる化合物を含む、上記(1)に記載の化合物(I)または上記(7)に記載の化合物(I)の使用であって、化合物(I)の遊離塩基として計算される、20mg/週から50mg/週。の間に相当する用量で、週2回、週1回または隔週1回投与される、化合物(I)または化合物(I)の使用。
(9)精神病、特に統合失調症、または、精神病の症状に関連する他の疾患、例えば統合失調症様障害、統合失調感情障害(分裂感情障害)、妄想性障害、短期精神障害、共有精神病性障害、ならびに精神病の症状、例えば双極性障害における躁病を呈する他の精神障害もしくは疾患、例えば双極性障害、に罹患している患者を処置し、パーキンソン氏病における精神病を処置する方法であって;有効量の化合物(I)を単独で、またはセルチンドール、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、クロザピン、ジプラシドン、およびオサネタントから選択される1つもしくは複数の神経遮断剤と組み合わせて、患者に投与することを含み、化合物(I)が、化合物(I)の遊離塩基として計算される、20mg/週から50mg/週。の間に相当する用量で、週2回、週1回または隔週1回投与される、方法。
(10)中枢神経系の疾患、特に統合失調症などの精神病を処置するための化合物(I)または化合物(I)の塩、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤および添加剤を含む医薬組成物であって、化合物(I)を含む医薬組成物が、週2回、週1回または隔週1回投与されることを特徴とする、医薬組成物。
(11)セルチンドール、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、クロザピン、ジプラシドン、およびオサネタントから選択される1つまたは複数の神経遮断剤をさらに含む、上記(10)に記載の医薬組成物。
図1