【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的に鑑み、本発明の第1の態様は、皮膚を穿刺することにより体液のサンプルを作成する機器及びシステムであって、
ハウジングと、
上記ハウジング内において切開要素に対して接続され得る切開用駆動器であって、該切開用駆動器に対して接続された切開要素を、穿通運動のトリガの後、上記切開要素が最大変位の点に到達するまでは該切開要素が穿通方向に運動する穿通運動を以て駆動し得、且つ、該切開要素が上記最大変位の点に到達した後は逆方向に駆動する切開用駆動器と、
皮膚接触開口を囲繞すると共に、上記皮膚に当接して押圧され得る圧力リングとを有し、
上記皮膚接触開口は、少なくとも1.5mmであり、且つ、4mm以下の直径を有する円形に対応する開口面積を有する、機器及びシステムを提案する。好適には上記開口面積は、少なくとも2mm、好適には少なくとも2.5mmの直径を有する円形に対応する。上記機器は更に、上記穿通運動のトリガ時に、上記圧力リングと上記皮膚との間の押圧力を、少なくとも3N、好適には少なくとも4N、最も好適には少なくとも5Nに制御する押圧力制御デバイスを備えて成る。
【0015】
概略的に、上記圧力リングは円形であると共に、この場合にそれは所定の内側(自由)径を有すべきである。非円形の皮膚接触開口の場合、該開口の面積は、言及された直径値を有する円形の面積に対応する(すなわち、それに等しくある)べきである。
【0016】
上述の公知の手法と対照的に、本発明は、十分な量のサンプル液体の自動的な搾出のために目標部位膨出に頼らない。寧ろ、本発明者等は、比較的に小さな皮膚接触開口と、押圧力制御デバイスにより保証される比較的に大きな押圧力との組み合わせにより、サンプル生成に必要とされる高信頼性を達成し得ることを見出した。このことは望外であった、と言うのも特に、上記デバイスが皮膚の相当な膨出を許容する大きな開口を有さなければ、斯かる高圧は血液を“押しのける”であろうことが想定されたからである。この想定は特に、一般人にさえ知られた、小径の部材を皮膚上に押圧すると、当該部位からの血液の喪失を表すべく赤から白へと色変化が起こる、という経験に基づいていた。
【0017】
本発明は、目標部位膨出に関する問題、すなわち、切開要素の先端が皮膚内へと貫通する貫通深度の再現性の欠如を克服する。上記切開用駆動器の長手方向位置(すなわち切開運動の方向における位置;以下においては、“z位置”)を然るべく調節すれば、故に、ランセットの最大変位点の所定のz位置に依れば、上記貫通深度は、穿通運動の間における皮膚表面の厳密なz位置に依存する。膨出の故に、この皮膚位置は実質的に不確定である。
【0018】
この不確実性を克服するために、幾つかの先行技術のデバイスは、切開機器内に一体化された皮膚位置検出デバイスにより皮膚の厳密なz位置を検出する手段を有している。他のデバイスは、皮膚内への切開要素先端の貫通の間に高信頼性のz位置基準を提供するために、(機器の皮膚接触開口を囲繞する皮膚接触表面に加えて)皮膚に接触される基準皮膚接触表面を有する貫通深度基準要素を以て動作する。これらの手法は再現可能な貫通深度の達成を助力するが、それらは機器の設計及び製造に相当の費用を必要とし、システムを、手軽であるどころか、更に高価なものとする。
【0019】
多くの切開システムは、貫通深度の不確実性を単に無視している。対象者毎の個別的な変動は、貫通深度設定を調節することにより補償され得るので容認されるが、個人内変動(すなわち、同一のユーザに関する変動)は残る。これらの変動としては、温度、先行する皮膚処理(たとえば、石鹸による洗浄)、及び、特定の切開部位の選択などの如き影響要因により引き起こされる皮膚の(弾性的な及び他の)特性の変化が挙げられる。これらの変動は、必要であるよりも相当に大きな痛覚に繋がる、と言うのも、これらの変動は、皮膚の不都合な位置によってさえも十分な量のサンプル液体が作成される如く、大きな値の貫通深度設定を必要とするからである。
【0020】
本発明は、切開部位における皮膚のz位置の優れた再現性を、故に、貫通深度の優れた再現性を許容する。同時に、簡素で安価な切開システムの設計態様により、(”搾り取り”なしで)自動的なサンプル生成が達成される。
【0021】
適切な押圧力制御デバイスにより、所定の押圧力が確実とされる。斯かるデバイスは機械的とされ得、特に、そのスプリング力が上記圧力リングと上記ハウジングとの間に作用する如き様式で配置されたスプリング・デバイスを備える。上記スプリング・デバイスは好適には、金属スプリングとして具現される。但し、空気圧スプリング、又は、弾性材料から成る弾性要素の如き他のスプリング状デバイスが公知であり且つ使用され得る。以下において“スプリング”という語句は、任意の斯かるスプリング・デバイスの一例として使用される。好適には、以下に更に詳細に記述される様に、それは事前張設される。
【0022】
電気的手段により動作する押圧力制御デバイスは、コイル及び磁心を含む電磁駆動器、特に、音声コイル駆動器を備えて成り得る。圧力の制御は全自動とされ得るか、又は、それはユーザの動作を必要とし得る。後者の場合、上記圧力リングが皮膚に当接して押圧される力を測定するために電気的手段が使用され得ると共に、この力は、適切である視認可能な、又は、音響的若しくは触覚的な手段によりユーザに対して表示され得る。
【0023】
好適には上記第1の態様と組み合わされ得るが、独立的にも使用され得る本発明の第2の主要態様に依れば、本発明は、皮膚穿刺先端を有する切開要素を使用して皮膚を穿刺することにより体液のサンプルを作成するシステム及び機器であって、
該機器は、
ハウジングと、
上記ハウジング内において切開要素に対して接続され得る切開用駆動器であって、該切開用駆動器に対して接続された切開要素を、穿通運動のトリガの後、上記切開要素が最大変位の点に到達するまでは該切開要素が穿通方向に運動する穿通運動を以て駆動し得、且つ、該切開要素が上記最大変位の点に到達した後は逆方向に駆動する切開用駆動器と、
皮膚接触開口を囲繞すると共に、上記皮膚に当接して押圧され得る圧力リングとを有し、
上記圧力リングは、その円周部の少なくとも一部分上にて、1.5mm以下、好適には1.2mm以下、最も好適には1mm以下の幅を有する、システム及び機器を提案する。高度に好適な実施例に依れば、斯かる狭幅の圧力リングは、該圧力リングが当該周縁表面部分から上記穿通方向に突出する如く、該圧力リングから凹状形成された周縁表面部分により囲繞される。上記圧力リング及び上記凹状形成周縁表面部分は、圧力片と呼称される単一要素の一部分として具現され得る。但し、上記圧力リング及び上記凹状形成周縁表面は、2つの別体的な要素の夫々の一部分であることも可能である。
【0024】
更なる好適実施例に依れば、上記圧力リングは上記周縁表面から少なくとも0.5mm、好適には少なくとも0.8mmであり且つ2.0mm以下、好適には1.5mm以下だけ、上記周縁表面から突出する。
【0025】
この主要態様に関し、“圧力リング”という語句は本明細書においては本質的に幾何学的な意味で使用され、すなわち、上記皮膚接触開口を囲繞する狭幅のリング形状領域を指すことを銘記することは特に重要である。上記機器と皮膚との間に作用する力は、本質的には、又は少なくとも選好的には、上記圧力リングを介してのみ担持される。故に上記圧力リングは、上記皮膚接触開口を囲繞する狭幅のリング形状表面領域であって、上記機器の実使用の間において、該機器と皮膚との間に作用する力の少なくとも50%、好適には少なくとも70%、最も好適には少なくとも90%を担持するリング形状表面領域である。それ故に、本発明のこの態様に依れば、皮膚と上記機器との間に作用する力全体の内の少なくとも言及された割合が、記述された最大寸法を有する小寸のリング形状領域のみにより担持される。
【0026】
上記圧力リングを形成する上記リング形状領域は、多くの場合に“リング”と称される円形断面を有する環状要素の一部分とされ得る。但し好適には、本発明の上記圧力リングは、図面に関して更に説明される如く、圧力片の一部分として具現される。
【0027】
本発明に関し、本発明の上記第2の態様の特徴は、分析のために十分な量のサンプル液体を確実に且つ自動的に生成することを助力することが見出されている。
【0028】
好適には上記第1及び/又は第2の態様と組み合わされるが、独立的にも使用され得る本発明の第3の主要態様に依れば、本発明は、皮膚穿刺先端を有する切開要素を使用して皮膚を穿刺することにより体液のサンプルを作成するシステム及び機器であって、
該機器は、
ハウジングと、
上記ハウジング内において切開要素に対して接続され得る切開用駆動器であって、該切開用駆動器に対して接続された切開要素を、穿通運動のトリガの後、上記切開要素が最大変位の点に到達するまでは該切開要素が穿通方向に運動する穿通運動を以て駆動し得、且つ、該切開要素が上記最大変位の点に到達した後は逆方向に駆動する切開用駆動器と、
皮膚接触開口を囲繞すると共に、上記皮膚に当接して押圧され得る圧力リングとを有し、
上記切開用駆動器及び上記圧力リングは、上記切開要素が上記最大変位点に在るときに該切開要素の上記皮膚穿刺先端が上記圧力リング平面から外方に延在する突出距離が、0.3mm以下、好適には0.2mm以下、最も好適には0.1mm以下である様に、相互に対して位置決めされる、システム及び機器を提案する。上記圧力リング平面は、上記圧力リングの最前部分を通る平面であって、穿通方向に対して直交して延在する平面として定義される。故に、上記突出距離は、上記最大変位点と、上記圧力リングの(z方向における)最近傍箇所との間におけるz方向の距離である。
【0029】
本発明に関し、驚くべきことに、斯かる非常に小さな突出距離によってさえも、高度に高信頼性のサンプル生成が達成されることが見出されている。これに関しては、サンプル生成の信頼性とサンプル生成の量との間の差を理解することが重要である。これらの2つの特性が殆ど相関を示さないことは望外であった。本発明の上記第3の態様に従う非常に小さな突出距離は、少量のみのサンプルを生成し得るが、依然としてこのことは、全自動の切開分析デバイスに対して十分な信頼性を以て行われる。
【0030】
本発明の上記第2及び第3の主要態様は、任意のサイズの皮膚接触開口に対し且つ任意の押圧力に対して好適である。但し、上記機器が、上記押圧力を本発明の第1の主要態様に関して上記に特定された制限値内に制御する押圧力制御デバイスを備えるならば、特に良好な結果が達成される。更に、上記皮膚接触開口は好適には、少なくとも1.5mm、好適には少なくとも2mm、最も好適には2.5mmであり且つ8mm以下、好適には5mm以下、最も好適には3.5mm以下の直径を有する円形に対応する開口面積を有すべきである。
【0031】
全ての3つの主要態様に関し、上記機器は好適には、上記に特定された如く両方が“単一ユニット・システム”を形成する一体的な切開分析要素を以て動作し得る。更に選好的には、この場合に上記一体的な切開分析要素のランセットは、上記皮膚を穿刺することにより作成されたサンプル液体を毛管流により該切開要素のサンプル収集区域まで搬送する毛管チャネルを有する直接的サンプリング器として具現される。
【0032】
同様に、本発明の全ての3つの主要態様に関しては、切開を行い且つ分析のために十分な量のサンプル液体をサンプリングするために必要とされる最短相互作用期間は長くとも3秒であることが好適である。好適には、上記最短相互作用期間は2秒以下であり、更に好適にはそれは1秒以下である。
【0033】
このことは特に、上記に特定された両方の形式A及びBの一体化された切開分析システムに関連する。斯かるシステムにおいてユーザは、皮膚と上記機器の上記圧力リングとの間の押圧力を確立することにより、上記システムと相互作用する。このことは、携帯式器具を指又は他の身体部分に対して押圧することにより好適に行われ得る。代替的に、たとえばテーブル上に位置された機器に対し、指又は他の身体部分が押圧され得る。
【0034】
先行技術に依れば、時間的事項は概略的に、“検査時間”、すなわち(切開から、分析対象物の濃度が表示されるまでの)分析に対して必要とされる合計時間に関する関心事にすぎなかった。しかし本発明者等は、早期の考え方から離れ、上述の部分的に相反する要件を達成する上では最短相互作用期間(“MITP”)の持続時間が非常に重要であることを見出した。この期間は、上記システムのサンプル収集デバイスにおいて切開を行い且つ分析のために十分な量のサンプルを収集するために(上記で特定された如き)ユーザと機器との間の相互作用が必要とされる最小限の時間分として定義される。上記MITPの間に実施される機能としては、切開、(好適には、上記切開要素の毛管内への直接的な)組織からのサンプル液体の搾出、及び、十分な量のサンプルの収集が挙げられる。
【0035】
上記MITPは、ユーザに依存しない、すなわち、上記機器の設計態様により、且つ、可能的には上記システムの他の構成要素によってのみ決定されるシステム関連量である。それは、各々の場合においてユーザの習慣を含む多数の態様に依存する相互作用の実際時間と混同されてはならない。実際の相互作用時間は概略的にユーザ毎に変化し、特定のユーザに対しては、分析毎にさえ変化する。本発明は、少なくとも全てのユーザが上記機器と相互作用すべき最小限の時間が、示された非常に小さな閾値未満である如き様式でシステムを設計することを教示する。
【0036】
上記MITPの開始時点は、上記システムの“切開準備完了”時点、すなわち、上記切開用駆動器が、自身に接続された切開要素の切開運動を推進する準備ができ且つ皮膚の所望の切開部位が上記機器の上記皮膚接触開口に適切に位置決めされた時点である。システムの設計態様に依存し、“切開準備完了”の状況と、穿通運動のトリガ動作との間には短い時的間隔が必要とされることもある。斯かる短い(準備的な)遅延期間は、たとえば皮膚位置を検出するために上記機器により必要とされることもある。但し好適には、上記設計態様は、機器の要件により斯かる準備的な期間は必要とされず、すなわち、上記システムの状況が“切開準備完了”であるときにはトリガ動作が直ちに行われ得る如きである。この場合、上記MITPの開始時点は、上記穿通運動のトリガ動作と一致し得る。
【0037】
但し、特に、皮膚と上記圧力リングとの間における押圧力を確立した後に生ずる皮膚の粘弾性的な変形を考慮すると、非常に短くて明確である準備的な遅延期間が、非機器的な理由で用意されることもある。
【0038】
MITPの終了は、分析のために十分な量の体液が、サンプリングされ、すなわち、上記機器の上記サンプル収集デバイス内に取り込まれた、という事実により特徴付けられる。本明細書において使用される“サンプル収集デバイス”とは、上記機器の内部における上記システムの任意の部分であって、其処においては、皮膚切開の結果として作成されたサンプル液体が分析のために利用可能である任意の部分である。それはたとえば、チャンバ又は毛管であり得ると共に、空であり、又は、吸収材料により充填され得る。
【0039】
詳細は、特定のシステムの形式及び設計態様の特徴に依存する。
【0040】
“二重ユニット・システム”の場合、上記サンプル収集デバイスは、分析ユニットに属する。それは、分析要素の一部又は専用のサンプル収集要素の一部であり得ると共に、分析ユニットが上記皮膚接触開口へと移動された後でサンプルを収集する。
【0041】
“単一ユニット・システム”の場合、上記サンプル収集デバイスは、切開要素の一部分、又は、分析要素の一部分、又は、一体的な切開分析要素の一部分、又は、専用のサンプル収集要素の一部分とされ得る。
【0042】
もし上記サンプル収集デバイスが分析要素の一部分又は一体的な切開分析要素の一部分であるならば、該デバイスは特に、上記要素の反応区域の一部分であってサンプル液体と反応する試薬を含む反応区域の一部分とされることで、上記分析に特性的である一定種類の測定可能な物理的変化を生成し得る。
【0043】
好適には上記サンプル収集デバイスは、上記分析要素の反応区域とは別体的であると共に、該デバイスは、上記MITPより長い中間保存時間に亙りサンプル液体を保存するに適したリザーバを含む。この実施例のひとつの利点は、該実施例は、分析の時的要件をサンプル収集の時的要件から分離することを許容する、ということである。上記MITPは、上記サンプル収集デバイスの上記リザーバが分析のために十分な量のサンプル液体を収容すると直ちに終了される。たとえば、反応区域の充填などの更なる段階は、ユーザの継続的な相互作用なしで、別個に行われ得る。
【0044】
最後に言及された好適実施例において、上記サンプル収集デバイスの上記リザーバから上記分析要素の上記反応区域までのサンプル液体の移送は、自発的に、又は、制御されたタイミングを以て行われ得る。前者の場合には、上記リザーバと上記反応区域との間に永続的な流体連通が提供される。後者の場合、上記サンプル収集デバイスの上記リザーバから上記分析要素までの流体連通は“切換え可能”であり、すなわち、好適には少なくともMITPの持続時間に対して最初に、流体連通は無いが、適切な時点においては、制御様式で流体連通が確立される。切換えに対して適切な手段は、たとえば特許文献14から知られる。
【0045】
MITP全体の間において、押圧力の値は重要である。それは好適には上記MITPの間において上記押圧力制御デバイスにより、少なくとも3N、好適には少なくとも4N、更に好適には少なくとも5Nに維持されるべきである。別の好適実施例に依れば、最大値は、同一の期間の間において維持されるべきであり、すなわち、大きくとも10N、好適には大きくとも8N、更に好適には大きくとも7Nとされるべきである。
【0046】
押圧力のこれらの制限値は、皮膚からサンプルを引き出す要件に関して好適である。但しこのことは、MITPの間において押圧力がその範囲内で変動することが許容されるべきことを意味してはいない。寧ろ、押圧力の最大変動範囲は、15%以下、好適には10%以下、更に好適には5%以下に制限されるべきことが見出されている。絶対値で表現すると、上記MITPの間において上記圧力リングと皮膚との間における押圧力の最大変動範囲は、±0.5N以下、好適には±0.3N以下、更に好適には±0.2N以下とされるべきである。
【0047】
上述の如く、MITPはユーザに依存しない量であり、システムの設計態様のみに依存する。但し好適には、上記機器はMITP制御デバイスを備えて成る。この語句は、ユーザと機器との間において必要とされる相互作用(すなわち、主として、皮膚と上記圧力リングとの間において必要とされる押圧力)が少なくともMITPの間においてユーザにより確実に維持されることを助力する任意のデバイスを指している。換言すると、上記MITP制御デバイスは、ユーザと機器との間の実際の相互作用がMITPと重複する(又は少なくとも一致する)ことを確実とするための支援を提供する。
【0048】
上記MITP制御デバイスは、穿通運動の手動トリガ動作の如きユーザの動作は必要でない、という様な意味において全自動で動作する必要はない。寧ろそれは、MITPの開始及び終了を直接的又は間接的にユーザに対して特に信号通知することにより、ユーザに対する支援を提供し得る。
【0049】
上記MITP制御デバイスは、(以下において更に詳細に考察されるべき)任意の適切な手段を用いて圧力リングと皮膚との間に作用する押圧力を検出することによりMITPの開始時点を検出する手段を備えて成る。圧力が所定の最小の値又は範囲に対応するとき、この状況は、適切である可視的、可聴的又は触覚的な信号によりユーザに対して表示され得る。代替的に上記切開運動は、“切開準備完了”の状況が検出されたときに、自動的にトリガされ得る。この場合には、“切開準備完了”とトリガ動作との間に遅延は無く、すなわち、MITPは自動トリガ動作により開始する。代替的に、たとえば粘弾性的な皮膚変形に対して必要とされる時間を考慮するなどの、機器制御による遅延時間があり得る。斯かる場合、“切開準備完了”とトリガ動作との間における準備的遅延期間は好適には、長くとも1秒、更に好適には長くとも0.7秒、最も好適には長くとも0.5秒である。好適な下限値は0.2秒であり、少なくとも0.3秒が更に好適であり、少なくとも0.4秒が最も好適である。
【0050】
MITP期間の終了は概略的に、適切である可視的、可聴的又は触覚的な信号によりユーザに対して表示される。
【0051】
本発明に対しては、その最も包括的な意味において、専用のMITP制御デバイスは必要でないことを銘記すべきである。特定の状況に依存し、ユーザは、MITPの開始及び終了の間接的な表示が提供されれば十分であり得る。たとえば、(以下に更に詳細に記述されるべき)スプリング支持された圧力リング上にユーザの指を押圧したときに“切開準備完了”状況は該ユーザにより“感知”され得ると共に、MITPの持続時間は、MITPの終了に関してユーザの“感知”に頼れば十分であり得るほどに短時間であり得る。
【0052】
上記機器は、(上記MITP制御デバイスの一部分としての)一定種類の充填制御器であって、十分な量のサンプル液体を表すか、又は、十分な量のサンプルが収集されたときにのみ分析を許容する充填制御器を有し得る。但し、多くの場合において斯かる充填制御器は必要とされない。寧ろ、MITPの終了は、(システム構成要素の設計態様に依存する)固定的なMITP値を用いて上記機器により算出される。
【0053】
本発明に関し、上記切開要素の末端における上記圧力リングと皮膚との間における上述の押圧力が、切開時だけでなく、その後における短い相互作用期間に対しても維持されるならば、一体化された切開分析システムにより相当の利点が達成されることが見出された:
−両方の形式A及びBの一体化された切開分析システムに依れば、MITPに対するこの押圧力を維持すると、十分に大容量のサンプル液体の生成が助力され;
−形式A(二重ユニット・システム)の場合、上述の押圧力によりMITPを維持することは、上記分析デバイスが上記皮膚接触開口まで移動される時点まで、皮膚に対する上記機器(すなわち、その皮膚接触開口)の位置が固定されることを確実とするために更に重要であり;
−形式Bのシステム(単一ユニット・システム)によると、上述の押圧力によりMITPを維持することは、上記切開先端の厳密なz位置を許容することにより、短い時的間隔の間における十分な量のサンプル液体の吸引を増進するために重要であることが見出された。
【0054】
本発明に関しては更に、一体化された切開分析システムの多くのユーザは、十分な押圧力を十分な時的間隔に亙り維持することは困難とされてきたこと、及び、本明細書において記述される特徴を取入れたシステムによれば、機器の使用に関する推奨規則の遵守が相当に促進されることが見出されている。
【0055】
本発明によれば、単純で安価な設計態様の貫通深度調節デバイスを使用することが許容される。たとえば、皮膚位置の僅かな残存変動に対処するためには、交換可能である距離要素又は圧力リングを配備して、特定ユーザの要件に対する当該システムの個人用適合を許容すれば十分であり得る。
【0056】
本発明の上記機器及びシステムは、皮膚の粘弾性的特性を最適様式で考慮している。この様にして、サンプル液体の十分な供給が確実とされるだけでなく、過剰に多いサンプル液体の“溢流”が回避される。本発明によれば、300nl以下、好適には200nl以下、最も好適には100nl以下の程度である非常に少ないサンプル体積により、確実な分析が好適に許容される。
【0057】
本発明は以下において、図面中に示された好適実施例に関して更に詳細に記述される。其処に示される技術的な特徴及び要素は、本発明の各実施例を設計するために個別的に又は組み合わせて使用され得る。