(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140267
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】インシュリンペン用の近距離無線通信に基づく容量式充填度センサー
(51)【国際特許分類】
G01F 23/26 20060101AFI20170522BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20170522BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20170522BHJP
G01F 23/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
G01F23/26 A
A61M5/142 530
A61M5/168 500
A61M5/168 514Z
G01F23/00 B
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-500709(P2015-500709)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-512509(P2015-512509A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】AT2013050060
(87)【国際公開番号】WO2013138830
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2015年10月28日
(31)【優先権主張番号】A358/2012
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】507313412
【氏名又は名称】エーアイティー オーストリアン インスティテュート オブ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AIT Austrian Institute of Technology GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】514237943
【氏名又は名称】サイベルスドルフ レイバー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100175237
【弁理士】
【氏名又は名称】加納 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】バンメル マンフレッド
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ゲルノート
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/024562(WO,A1)
【文献】
特開2009−284657(JP,A)
【文献】
特開2006−191728(JP,A)
【文献】
特開平8−175071(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/021295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/14−23/296
A61M 5/00− 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の電極(4、5)間の静電容量を測定するための装置であって、
2個の電極(4、5)間の静電容量を測定するための、2個の電極(4、5)の下流の測定回路(6)と、
測定回路(6)の下流の通信ユニット(7)と、
通信ユニット(7)に接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第1のアンテナ(8)であって、それにより、通信ユニット(7)が、受信する読み取り値を、外部のデータ通信ユニット(40)に送信するようになっている第1のアンテナ(8)とを備えた装置において、
測定回路(6)に接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第2のアンテナ(9)であって、それにより、第2のアンテナ(9)が交流電磁場により励起されると、電極(4、5)に交流電流がかかるように、第2のアンテナ(9)の接続部が、電極(4、5)に直接又は間接的に接続されている第2のアンテナ(9)を備え、
それにより、測定回路(6)が、電極(4、5)にかかる交流電圧又は電極(4、5)を通って流れる交流電流を直接又は間接的に測定するように構成され、
それにより、測定回路の出力が、直接又は間接的に通信ユニット(7)に送られ、
さらに、コイル状構造と少なくとも1巻を有し、第2のアンテナ(9)と同じ表面積を取り囲んでおり、第2のアンテナ(9)と同じ巻き数を有している第3のアンテナ(10)と、
特定の静電容量を有する基準コンデンサー(11a)であって、第3のアンテナ(10)が交流電磁場によって励起されると、基準コンデンサー(11a)の電極に交流電流がかかるように、第3のアンテナ(10)の接続部が基準コンデンサー(11a)の電極に、直接又は間接的に接続されている基準コンデンサーと、
基準コンデンサー(11a)にかかる又は基準コンデンサー(11a)を通って流れる交流電流を、直接又は間接的に測定するための第2の測定回路(16)と、
測定回路(6、16)によって得られた読み取り値の比率を決定し、それらの読み取り値を校正機能にかけ及び/又はそれらの読み取り値を静電容量に基づく読み取り値に変換し、これをそのアウトプットにおいて出力する、通信ユニット(7)の上流の静電容量及び/又は測定値決定ユニット(15)であって、通信ユニット(7)が、この比率を、流体容器(1)内に残る流体(14)の量に関するそれぞれの読み取り値として送信するようになっている静電容量及び/又は測定値決定ユニット(15)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
2個の電極(4、5)間の静電容量を測定するための装置であって、
2個の電極(4、5)間の静電容量を測定するための、2個の電極(4、5)の下流の測定回路(6)と、
測定回路(6)の下流の通信ユニット(7)と、
通信ユニット(7)に接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第1のアンテナ(8)であって、それにより、通信ユニット(7)が、受信する読み取り値を、外部のデータ通信ユニット(40)に送信するようになっている第1のアンテナ(8)とを備えた装置において、
測定回路(6)に接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第2のアンテナ(9)であって、それにより、第2のアンテナ(9)が交流電磁場により励起されると、電極(4、5)に交流電流がかかるように、第2のアンテナ(9)の接続部が、電極(4、5)に直接又は間接的に接続されている第2のアンテナ(9)を備え、
それにより、測定回路(6)が、電極(4、5)にかかる交流電圧又は電極(4、5)を通って流れる交流電流を直接又は間接的に測定するように構成され、
それにより、測定回路の出力が、直接又は間接的に通信ユニット(7)に送られ、
さらに、第3のアンテナ(10)の接続部のうちの1つが、基準コンデンサー(11a)の2個の電極(4、5)のうちの1つにそれぞれ接続され、基準コンデンサー(11a)の下流の第2の測定回路(16)が、基準コンデンサー(11a)の接続部間の電圧の振幅を測定するように構成されており、それにより通信ユニット(7)が、第2の測定回路(16)のアウトプットに接続されたもう1つのアウトプットを有することを特徴とする装置。
【請求項3】
2個の電極(4、5)間の静電容量を測定するための装置であって、
2個の電極(4、5)間の静電容量を測定するための、2個の電極(4、5)の下流の測定回路(6)と、
測定回路(6)の下流の通信ユニット(7)と、
通信ユニット(7)に接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第1のアンテナ(8)であって、それにより、通信ユニット(7)が、受信する読み取り値を、外部のデータ通信ユニット(40)に送信するようになっている第1のアンテナ(8)とを備えた装置において、
測定回路(6)に接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第2のアンテナ(9)であって、それにより、第2のアンテナ(9)が交流電磁場により励起されると、電極(4、5)に交流電流がかかるように、第2のアンテナ(9)の接続部が、電極(4、5)に直接又は間接的に接続されている第2のアンテナ(9)を備え、
それにより、測定回路(6)が、電極(4、5)にかかる交流電圧又は電極(4、5)を通って流れる交流電流を直接又は間接的に測定するように構成され、
それにより、測定回路の出力が、直接又は間接的に通信ユニット(7)に送られ、
さらに、第2のアンテナ(9)及び第3のアンテナ(10)が、又はアンテナ(8)も、同じ表面積を取り囲んでいることを特徴とする装置。
【請求項4】
第2のアンテナ(9)の接続部のうちの1つが、2個の電極(4、5)のうちの1つとそれぞれ接続されており、
測定回路(6)が、2個の電極(4、5)間の電圧の振幅を測定するように構成され、この振幅に対応する値を、測定回路のアウトプットにおいて利用可能に保持する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
内側又は外側表面に、2個の電極(4、5)が向かい合って互いに接触せずに配置された流体容器(1)を特徴とし、それにより、好ましくは2個の電極(4、5)間の静電容量が流体容器(1)内の流体(14)の量によって決まり、それにより測定回路(6)によって供給される読み取り値が、流体容器(1)内の流体(14)の量に対応することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の装置。
【請求項6】
流体容器(1)が、この流体(14)を生体に注入するように設計されている投与装置(3)と流体連通していることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
投与装置(3)が、流体容器(1)の充填度読み取り値が送られる制御ユニットにより制御され、それにより制御ユニットは、流体容器(1)の充填度が所定量だけ減少するまで投与装置を作動させることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1に記載の装置とデータ通信ユニット(40)とを含むシステムであって、それによりデータ通信ユニット(40)が、第1のアンテナ(8)、第2のアンテナ(9)、及び場合により第3のアンテナ(10)に電磁波を送るように設計されているシステム。
【請求項9】
データ通信ユニット(40)が、請求項1〜7の何れか1に記載の装置によって与えられる読み取り値を受信するための受信ユニットと、これらの読み取り値を記憶するための記憶媒体を有していることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
データ通信ユニット(40)が、追加の制御ユニットを有しており、追加の制御ユニットが、流体容器(1)の充填度(L2)の読み取り値を所定の間隔で受信し、充填度(L2)とデータ通信ユニットの記憶媒体に記憶された充填度との差(DL)を測定し、この差(DL)が所定の閾値を超えると信号を送信することを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
2個の電極(4、5)間の静電容量を、データ通信用の第1のアンテナ(8)と、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第2のアンテナ(9)であって、第2のアンテナ(9)が交流電磁場によって励起されると、2個の電極(4、5)に交流電流がかかるように、直接又は間接的に2個の電極(4、5)に接続された第2のアンテナ(9)を、用いて測定する方法において、
第2のアンテナ(9)が、データ通信装置(40)によって交流電磁場を用いて励起され、それにより2個の電極(4、5)に交流電流をかけ、
前記交流電流を用いて、2個の電極(4、5)間の静電容量が測定され、前記静電容量又は前記静電容量に由来する値が、第1のアンテナ(8)を経由してデータ通信装置(40)に送られ、
第2のアンテナと同じ表面積を取り巻く第3のアンテナ(10)と、特定された静電容量を有する基準コンデンサー(11a)を用い、それにより第3のアンテナ(10)が、交流電磁場によって励起されると、基準コンデンサー(11a)の電極に交流電流がかかるように、第3のアンテナ(10)の接続部が、基準コンデンサー(11a)の電極に、直接又は間接的に接続され、
第3のアンテナ(10)が第2のアンテナ(9)と共に、データ通信装置(40)によって交流電磁場を用いて励起され、それにより基準コンデンサー(11a)に交流電流をかけ、
前記交流電流を用いて、基準コンデンサー(11a)の静電容量が測定され、2個の電極(4、5)間の静電容量と基準コンデンサー(11a)の静電容量との間の比率が、データ通信装置(40)に送られる
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
内側又は外側表面に、2個の電極(4、5)が向かい合って互いに接触せずに配置された流体容器(1)を用いる請求項11に記載の方法において、2個の電極(4、5)間の静電容量又は2個の電極(4、5)間の静電容量と基準コンデンサー(11a)の静電容量との間の比率が、充填度(L)の測定尺度として用いられ、校正表を用いて充填度(L)に変換されることを特徴とする方法。
【請求項13】
流体容器(1)の充填度(L1)が、データ通信ユニット(40)に送信され、送信された充填度(L1)が、データ通信ユニット(40)又はデータ通信ユニット(40)に接続された他のデータ通信装置に記憶され、後に読み出すことができることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
流体容器(1)の充填度(L1)が、データ通信ユニット(40)に送信され、その後流体容器(1)は流体を抜かれ、それにより流体容器の充填度(L2)が、所定の間隔で、リアルタイムに測定され、データ通信ユニット(40)に送信され、流体を抜く過程の開始前の充填量(L2)と、送信された最新の充填度(L2)との間の差(DL)が決定され、データ通信ユニット(40)は、この差(DL)が所定の閾値を超えると信号を送り、この信号が送られた後、流体容器(1)の流体抜きが中断されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の公知要件事項部に記載のように2個の電極間の静電容量を測定するための装置と、独立請求項12の公知要件事項部に記載のように静電容量を測定するための
方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を投与するための多数の装置が、先行技術から公知である。斯かる装置は、主として、薬剤を人又は動物に投与するために使用される。インシュリンの糖尿病患者への投与、又は薬剤、ホルモン、生物学的薬剤などの投与量が重要な因子である用途が、特に、本発明による装置の好ましい用途である。
【0003】
「インシュリンペン」として知られる液状のインシュリンを糖尿病患者に投与するための投与装置が、先行技術から公知である。斯かる装置を用いると、インシュリンを、液状で所要量、個々の患者に簡単かつ安全に投与することができ、患者は自分自身で投与を制御することができる。一般に、そのような投与装置は、各々、それぞれの気体状又は液状の薬剤、ここではインシュリンの入ったアンプルを有している。これらのアンプルは、しばしばカートリッジと呼ばれる。カートリッジは、投与装置に挿入され、それにより、注入アセンブリが、それぞれのカートリッジから薬剤を取得し、その薬物を患者に送り込む。
【0004】
注入アセンブリは、ある一定量で各薬剤を患者に送り込む用量測定アセンブリも有している。ここで、それぞれのカートリッジ又はアンプルに必要量の薬剤がない場合には、用量測定が必ずしも適正になされないという問題がある。ほとんどの製品は、のぞき窓を通してカートリッジ又はアンプルのそれぞれの液量が読めるようになっているが、これは、カードリッジ又はアンプル内のインシュリン又は流体の量のおおよその測定ができるだけである。ほとんどの場合、のぞき窓からの読み取りは、非常に粗雑な読み取りができるに過ぎない。視覚障害のある患者にとって、インシュリン又は他の流体の残量を確実に測定することは困難又は不可能である。多くの用途において生じるもう一つの問題は、最新の充填度又は最新の注入量を覚えていることである。これは、忘れっぽい人だけの問題ではなく、投与量が過小又は過剰になることがある。
【0005】
第1の問題を是正するため、容量式充填度測定の原理が、先行技術から公知である。この目的で、少なくとも2個の電極が、アンプル、カートリッジ自体又はアンプルの領域における下側ペンシャフトの内側の何れかに、取り付けられる。電極の取り付けは、例えば、蒸着又は接着によって行うことができる。下側ペンシャフトの内側に接着又は蒸着させる場合には、ペンに挿入されるアンプルは、下側ペンシャフトの内側とぴったりと合っていなければならない。流体、特にインシュリンの誘電特性と、流体を包囲する非金属材料の誘電特性との間の著しい相違に起因して、両電極によって測定される静電容量Cmは、アンプル内の充填度によって決まる。アンプル又はカートリッジは、本発明に関しては、流体容器と称する。
【0006】
図1〜
図3は、流体容器1内の流体Lの残量測定の基本原理を詳細に示している。
図1は、アンプルの形態の流体容器1の側面図を示しており、流体容器の外壁には、金属電極4、5が接着又は蒸着されている。
図2は、流体容器1の上面図を示している。金属電極4、5は、円筒状の流体容器1のカバーの円周方向に離れた部分に配置され、互いに接触しない。
図3は、流体容器1の充填度に応じた金属電極間で測定される静電容量間の関係を、充填度及び金属電極4、5の大きさを異ならして、示している。流体容器1の2個の金属電極4、5間の静電容量を測定することにより、流体容器1内の各流体14、例えば薬剤の充填度Lを、流体14の誘電率が空気又は流体14の代わりに流体容器1に入る他の流体の誘電率と十分に相違する程度に、容易に推定することができる。この場合では、2つの誘電率の比率は、約1:80である。
【0007】
図1〜
図3に示す容量式充填度測定方法に関する問題は、この実施の形態は、静電容量を測定するためには、交流電圧源を要することである。このことは、特に、近距離無線通信(NFC)が可能な携帯電話又はNFCインターフェースを有するデータ通信装置と連動して完全に受動的に作動されるようになっている構成要素に関して問題を生じさせる。特に、静電容量を測定するための交流電流を発生させる電池を組み込むことは、かなりの努力を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、別の電力供給源を必要としない、特に近距離無線通信に適合した受動的構成要素においてコンデンサーの静電容量の測定を可能にする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1に記載した構成上の特徴により、上記の種類の装置において、この目的を達成するものである。2個の電極間の静電容量の測定装置には、以下の構成要素:
2個の電極間の静電容量を測定するための、2個の電極の下流の測定回路、
測定回路の下流の通信ユニット、及び
通信ユニットに接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第1のアンテナであって、それにより、通信ユニットが、受信する読み取り値を、外部のデータ通信ユニットに送信するようになっている第1のアンテナ、
測定回路に接続され、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第2のアンテナであって、それにより、第2のアンテナが交流電磁場により励起されると、2個の電極に交流電流がかかるように、第2のアンテナの接続部が、2個の電極に直接又は間接的に接続されている第2のアンテナ、
が備わっており、
それにより、測定回路が、2個の電極にかかる交流電圧又は2個の電極を通って流れる交流電流を直接又は間接的に測定するように構成され、
それにより、測定回路の出力が、直接又は間接的に通信ユニットに送られる。
【0010】
本発明による
装置において、極めて重要な利点は、別個の交流発生手段も電池もなしに、静電容量の測定が可能なこと、及び本発明による装置が、全面的に受動的に作動することである。これには、多くの感温注入溶液にとって危機的なことのあるアンプル内の流体の測定可能な加熱が実質的にないという利点もある。
【0011】
特に簡単な静電容量の測定では、第2のアンテナの接続部のうちの1つそれぞれが、2個の電極のうちの1つそれぞれと接続されており、測定回路が、2個の電極間の電圧の振幅を測定するように構成され、この振幅に対応する値を、測定回路のアウトプットにおいて利用可能に保持する。
【0012】
通信装置のそれぞれの位置及び配置とは無関係に測定値及び静電容量を測定するため、コイル状構造と少なくとも1巻を有し、第2のアンテナと同じ表面積を取り囲んでおり、特に第2のアンテナと同じ巻き数を有している第3のアンテナと、特定の静電容量を有する基準コンデンサーであって、第3のアンテナが交流電磁場によって励起されると、基準コンデンサーの電極に交流電流がかかるように、第3のアンテナの接続部が基準コンデンサーの電極に、直接又は間接的に接続されている基準コンデンサーと、基準コンデンサーにかかる又は基準コンデンサーを通って流れる交流電流を、直接又は間接的に測定するための第2の測定回路と、測定回路から得られた読み取り値の比率を決定し、特にそれらの読み取り値を校正機能にかけ及び/又はそれらの読み取り値を静電容量に由来する読み取り値に変換し、これをそのアウトプットにおいて出力する、通信ユニットの上流の静電容量又は測定値決定ユニットであって、通信ユニットが、この比率を、流体容器内に残る流体の量に関するそれぞれの読み取り値として送信するようになっている静電容量又は測定値決定ユニットとが、好ましくは設けられる。
【0013】
特に簡単な静電容量の測定では、第3のアンテナの接続部のうちの1つが、基準コンデンサーの2個の電極のうちの1つにそれぞれ接続され、基準コンデンサーの下流の第2の測定回路が、基準コンデンサーでの電極間の電圧の振幅を決定するように構成されており、それにより通信ユニットが、第2の測定回路のアウトプットに接続されたもう1つのアウトプットを有する。
【0014】
信頼性のある測定を可能にする簡単に構成されてしっかりとした本発明の実施の形態では、第2のアンテナと第3のアンテナ及び、必要ならば、アンテナが、同じ表面積を取り囲んでいる。
【0015】
本発明の有益な変更した実施の形態が、流体容器内の流体保有量を測定するのに使用することができる。ここで、流体容器には、特に内側又は外側の表面に、向かい合って互いに接触せずに配置された2個の電極が備わっており、それにより、好ましくは2個の電極間の静電容量が流体容器内の流体の量によって決まり、それにより測定回路によって供給される読み取り値が、流体容器内の流体の量に対応する。
【0016】
流体を生体に投与するため、流体容器が、この流体を生体に注入するように設計されているのが好ましい投与装置と流体連通しているとよい。
【0017】
投与する流体の適正な用量測定のため、投与装置が、流体容器の充填度読み取り値が送られる制御ユニットにより制御され、それにより制御ユニットは、流体容器の充填度が特定量だけ減少するまで投与装置を作動させてもよい。
【0018】
加えて、本発明は、本発明による装置とデータ通信ユニットとを有するシステムであって、それによりデータ通信ユニットが、第1のアンテナ、第2のアンテナ、及び場合により第3のアンテナに電磁波を送るように設計されているシステムに関する。好ましくは、データ通信ユニットは、携帯電話からなっている。このシステムを用いると、本発明による装置内に配置された電源なしに静電容量を適正に測定することができる。
【0019】
加えて、本発明は、本発明による装置とデータ通信ユニットとを含むシステムであって、それによりデータ通信ユニットが、第1のアンテナ、第2のアンテナ、及び場合により第3のアンテナに電磁波を送るようになっているシステムに関する。好ましくは、データ通信ユニットは、携帯電話からなる(携帯電話によって現実化される)。このシステムを用いると、本発明による装置内に電源がなくても静電容量を適正に測定することができる。
【0020】
測定したデータを適正に記録し処理するため、データ通信ユニットが、本発明による装置によって与えられる読み取り値を受信するための受信ユニットと、これらの読み取り値を記憶するための記憶媒体を有していてもよい。
【0021】
流体の送り出しを制御するため、データ通信ユニットが、追加の制御ユニットを有しており、追加の制御ユニットが、流体容器の充填度の読み取り値を所定の間隔で受信し、この充填度とデータ通信ユニットの記憶媒体に記憶された充填度との差を測定し、この差が所定の閾値を超えると信号を送信するようにしてもよい。
【0022】
加えて、本発明は、2個の電極間の静電容量を、データ通信用の第1のアンテナと、コイル状構造と少なくとも1巻きを有する第2のアンテナであって、第2のアンテナが交流電磁場によって励起されると、2個の電極に交流電流がかかるように、直接又は間接的に2個の電極に接続された第2のアンテナを、用いて測定する方法に関する。本発明では、第2のアンテナが、データ通信装置によって交流電磁場を用いて励起され、それにより2個の電極に交流電流をかけること、2個の電極間の静電容量が、前記交流電流を用いて測定され、前記静電容量又は前記静電容量に由来する値が、第1のアンテナを経由してデータ通信装置に送られるようにしてもよい。
【0023】
本発明による方法では、別個の交流発電機も電池もなしに、静電容量の測定が可能なことと、本発明による装置が、全面的に受動的に作動することが、利点である。これには、多くの温度に敏感な注射液にとって危機的な場合があるアンプル内の流体の測定できる加熱が、実質的に不要となるという利点もある。
【0024】
通信装置のそれぞれの位置及び配置とは無関係に測定値及び静電容量を決定するため、特に第2のアンテナと同じ表面積を取り巻く第3のアンテナと、所定の静電容量を有する基準コンデンサーが好都合に規定され、それにより第3のアンテナが、交流電磁場によって励起されると、基準コンデンサーの電極に交流電流がかかるように、第3のアンテナの接続部が、基準コンデンサーの電極に、直接又は間接的に接続され、それにより、第3のアンテナが第2のアンテナと共に、データ通信装置によって交流電磁場を用いて励起され、それにより電極に交流電流をかけ、前記交流電流を用いて、基準コンデンサーの静電容量が測定され、2個の電極間の静電容量と基準コンデンサーの静電容量との比率が、第1のアンテナを経由してデータ通信装置に送られることが好ましい。
【0025】
本発明の有益な変更した実施の形態を、流体容器の流体保有量を測定するのに用いることができる。この実施の形態では、流体容器が、特にその内側又は外側表面に、向かい合って互いに接触せずに配置された2個の電極を備えており、2個の電極間の静電容量又は2個の電極間の静電容量と基準コンデンサーの静電容量との間の比率が、充填度の測定尺度として用いられ、特に校正表を用いて充填度に変換されることを特徴とする。
【0026】
個々の投与量を調べ監視するため、流体容器の充填度が、データ通信ユニットに送信されることと、送信された充填度が、データ通信ユニット又はデータ通信ユニットに接続された他のデータ通信装置に記憶され、後に読み返すことができるようにしてもよい。
【0027】
投与する流体の適正な用量測定のため、流体容器の充填度が、データ通信ユニットに送信され、その後流体容器は流体を抜かれ、それにより流体容器の充填度が、特に所定の間隔で、リアルタイムに測定され、データ通信ユニットに送信され、流体を抜く過程の開始前の充填量と、送信された最新の充填度との間の差が決定され、データ通信ユニットは、この差が所定の閾値を超えると信号を送り、この信号が送られた後、流体容器の流体抜きが中断されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】電極の種々の大きさにおける2個の電極間の静電容量と流体容器の充填度との間の関係を示す図である。
【
図4】インシュリンペンの形態の本発明による断面図を示す図であり、本発明の典型的な実施の形態を、より詳細に説明するものである。
【
図5】静電容量を測定するのに必要な個々の構成要素の電気的配線の概略図であり、本発明の典型的な実施の形態を、より詳細に説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の典型的な実施の形態を、以下の図面(
図4、
図5)を参照してより詳細に説明する。
【0030】
図4は、静電容量を測定するための本発明の有益な実施の形態を、より詳細に示している。
図4に示す本発明の装置は、円筒状のハウジング11を備えており、この円筒状のハウジング内には、やはり円筒状の液体容器1(
図1、
図2参照)が挿入されている。流体容器1は、円筒状のハウジング11から取り出すことができ、同じタイプの流体容器1と交換することができる。流体容器1のカバーには、流体容器1に沿って延びる電極4、5が配置されている。この好ましい典型的な実施の形態では、2個の電極4、5は、円周方向に間隔をあけて配置され(
図2参照)、流体容器1の全長にわたって延びている。流体容器1は、更に、流体容器1の
一方に配置された端部壁12を備えている。円筒状の流体容器1の前面には、端部壁12の反対側にある凹部13が配置されている。流体容器1の内側には、人に投与する流体14が入っている。この流体14は、凹部13を経由して流体容器1から流出する及び/又は取り出すことができる。円筒状の流体容器1のカバーに対して端部壁12を移動させることにより、流体14は、流体容器1から押し出され、流体容器1の流体充填容積14が減少する。
【0031】
加えて、
図4の本発明による装置は、投与装置3すなわち送り出しユニットを有しており、投与装置すなわち送り出しユニットにより、流体14を流体容器1から患者に投与することができる。特に、投与装置3としては、注射針が用いられる。本発明のこの好ましい実施の形態では、投与装置3は、円筒状の流体容器1の軸方向に対して垂直な流体容器1の端部壁12を流体容器1に押し込み、それにより、この端部壁12の反対側の端部にある流体14を、凹部13を経由して投与装置3の注入領域32へと移動させるプランジャー31を備えている。注入領域32と流体容器1とは、直に流体連通している。投与装置3は、更に、プランジャーのための駆動手段33を備え、駆動手段は、プランジャー31を流体容器1の端部壁12に押圧し、それにより、流体容器1に収容された流体14を、それぞれの患者に投与する。
【0032】
端部壁12と端部壁12の反対側にある凹部13との間の領域は、完全に流体14で満たされ、流体容器1の残りの領域は、空であり、この場合には、空気で満たされている。流体容器1からの流体の排出により、40e
0〜80e
0の誘電率を有する流体14は、約e
0の誘電率を有する
空気によって連続的に置き換えられる。電極4、5間の中間領域の誘電率が減少することにより、流体容器1のカバーに配置された電極4、5間の静電容量も減少する。流体容器からの流体の排出によって引き起こされる2個の電極4、5間の静電容量の減少が、
図3により詳細に示されている。
【0033】
図示の実施の形態は、充填度を容量測定により測定できるようにしている。しかしながら、本発明は、一般的に図示の充填度測定に限定されない、というよりもむしろ、本発明は、あらゆる静電容量又は測定値であってその変化が静電容量の変化を引き起こす測定値を決定するのに一般的に使用することができる。したがって、本発明は、充填度を測定するのに使用される必要はない。代わりに、本発明は、あらゆる静電容量の測定を可能にする。以下に、追加の交流電力源又は電池を要しない静電容量の測定を説明する。
【0034】
本発明のこの典型的な実施の形態では、2個の電極4、5間の静電容量は、
図5に示す回路によって測定される。この回路は、通信ユニット7に接続されたアンテナ8を、備えている。アンテナ8は、例えば、近距離無線通信(NFC)の用途に使用されるようなコイルアンテナである。アンテナ8は、一方で、通信ユニット7と外部のデータ通信装置40、例えば、携帯電話との間の通信を可能にする役目を果たし、他方で、測定及び通信に必要なエネルギーを、データ通信装置40から本発明による静電容量測定ユニットに送ることを可能にしている。
【0035】
具体的な実施の形態の一つでは、通信ユニット7は、測定及びデータ通信装置40との通信中、通信ユニット7を作動させるのに要する量の電気エネルギーを中間貯蔵するための小さなバッファーを有していてもよい。しかしながら、バッファーは、そのエネルギー容量が2個の電極4、5間の静電容量を測定するための交流信号を発生させるのに十分足りるだけ大きい必要はない。
【0036】
一般的に、2個の電極間の静電容量及び基準コンデンサー11
aの静電容量は、直接測定することができ、測定に要する特定のエネルギーは、データ通信装置によって直接供給することができる。
【0037】
この実施例で示す本発明の好ましい実施の形態では、第2のアンテナ9及び第3のアンテナ10を有している。第2のアンテナの2つの連結部は、2個の電極4、5に接続されている。2個の電極4、5間には電圧があり、この電圧の振幅は、それぞれのコンデンサーの静電容量に応じるものである。第3のアンテナ10の連結部は、各々基準コンデンサー11
aの電極に接続されている。
【0038】
この実施の形態の場合には、第2のアンテナ9と第3のアンテナ10は、同じ巻き数を有している。しかしながら、このことは必須ではない。その代わりに、例えば、異なる巻き数の選択を用いて意図的な校正オフセット(calibration offset)を行って、必要に応じた基準静電容量の選択を容易にしてもよい。
【0039】
外部のデータ通信装置40によってもたらされる電界エネルギー及び外部のデータ通信装置40によって生じる電界の周波数は、外部のデータ通信装置40の種類によって変化する。外部のデータ通信装置40の種類によって引き起こされる異なる読み取り値を回避するため、第3のアンテナ10が備わっており、第3のアンテナは、第2のアンテナ9と同じ表面積を取り囲んでいる。第3のアンテナ10の2つの接続部は、基準コンデンサー11の2個の電極に接続されている。2個の電極4、5にかかる電圧と、基準コンデンサー11にかかる電圧とを比較することにより、それぞれの外部のデータ通信装置40とは関係なく静電容量の読み取り値を得ることができる。
【0040】
第2と第3のアンテナ9、10は、同じ表面積を取り囲んでいる。
図4及び
図5の概略図は、単に参照の簡単さ及び容易さを目的とするものである。第2と第3のアンテナ9、10は、同じ表面積を取り囲んでいるので、外部のデータ通信装置40とアンテナ9、10との間のそれぞれの相対位置は、基準コンデンサー11
aの出力の電圧と、2個の電極4、5間の電圧との間の比率に影響を与えない。
【0041】
本発明の肝要な利点は、2個の電極4、5間の静電容量、及び必要な場合には、基準コンデンサー11
aの静電容量を測定するためには、電圧発生手段の装備又は電池の装備は不要であり、それぞれの静電容量を測定するのに必要なエネルギーは、外部のデータ通信装置40によって生じさせた電場から直接得ることができることである。
【0042】
この実施例で示す本発明の好ましい実施の形態は、2個の測定回路6、16を有しており、これらの測定回路は、通信ユニット7に接続されており、それらの測定回路6、16によって測定された全ての値を通信ユニット7に送信する。この実施の形態の場合には、2個の測定回路6、16は各々、整流器、整流器の下流の平滑回路、及び平滑回路の下流のADC回路(アナログ/デジタル変換回路)を有している。それぞれのADC回路の結果は、通信ユニット7に送られる。
【0043】
それぞれ、基準コンデンサー11の出力における電圧と、2個の電極4、5間の電圧との間の比率を決定し、この結果をその出力において利用可能に維持し、その結果を通信ユニット7に送る静電容量及び測定値決定ユニット15が備わっている。必要ならば、この比率の静電容量又は静電容量に基づく値への変換を行ってもよく、それにより、それぞれの比率は、特定の静電容量値において前もって決定された基準比率とそれぞれ比較される。そのため、例えば、得られた静電容量値Cmは、
図3のグラフにより、流体容器内の流体14のそれぞれの充填度Lに変換することができる。通信ユニット7は、この比率又はそれぞれの変換値を、要求があり次第、外部の通信ユニット40に送信する。
【0044】
この典型的な実施の形態では、静電容量及び測定値決定ユニット15、測定回路6、16及び基準コンデンサー11
aは、共有チップ17に配置されている。本発明の他の変更した実施の形態では、通信ユニット7も、共有チップ17に配置することができる。
【0045】
この典型的な本発明の実施の形態では、投与装置3は、制御ユニット(図示せず)によって制御され、制御ユニットには、比較ユニット15の出力における流体容器1の充填度の読み取り値が送られる。制御ユニットは、流体容器1の充填度が、特定量だけ減少するまで投与装置3を作動させる。プランジャーが停止に達したら、プロセスも停止させることができる。この場合、それぞれの流体容器1が空であり、所要量の流体が投与されなかったことを示すエラーメッセージを送ることができる。
【0046】
一度にどれだけの量の流体が投与されたかを測定するため、先に説明したように、投与の前後で充填度Lが測定される。そのため、投与前の第1の充填度L1と、投与後の第2の充填度L2が利用可能である。第1の充填度と第2の充填度との間の差DLが得られたら、その結果は、投与された流体の量である。
【0047】
流体を投与する時には、それぞれの流体の用量測定をするため、投与前の第1の充填度L1を保存することができ、第2の充填度をリアルタイムに測定することができる。第1の充填度と第2の充填度との間の差DLが、閾値に達すると、投与は打ち切られる。この目的で、それぞれの投与装置3は、作動を停止される。例えば、プランジャー31のための駆動手段33が作動を停止され、プランジャー31は止められる。それ以上、流体14は投与されない又は送り出されない。