(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両台車1の側面図である。
図1に示すように、台車1は、二次サスペンションバネとなる空気バネ2を介して車体(図示せず)を支持するボルスタ3と、ボルスタ3をヨーイング方向に相対回動自在に支持する台車枠4とを備えている。台車枠4は、車両長手方向(前後方向)の中央において横方向(車幅方向)に延びる横ばり5を有しているが、いわゆる側ばりを有していない。横ばり5の前方及び後方には、それぞれ横方向に延びる車軸6が配置され、車軸6の横方向両側には車輪7が固定されている。車軸6の横方向の両端部には、車輪7よりも横方向外側にて車軸6を回転自在に支持する軸受8が設けられ、軸受8は軸箱9に収容されている。
【0012】
軸箱9は、連結装置20によって横ばり5の車幅方向の両端部に弾性的に連結されている。連結装置20は、軸箱9から一体に横ばり5側に向けて突出した軸ばり13と、横ばり5から軸ばり13側に向けて突出して且つ横方向に間隔をあけて並んだ一対の受け座11,11と、軸ばり13の先端部を受け座11,11に弾性結合するためのゴムブッシュ等(図示せず)を有する連結部14とを備えている。即ち、本実施形態の台車1は、軸ばり式である。
【0013】
横ばり5と軸箱9との間には、車両長手方向に延びた板バネ10が架け渡され、板バネ10の長手方向の中央部10aが横ばり5の横方向の両端部を下方から支持し、板バネ10の長手方向両側の各端部10bが軸箱9に下方から支持されている。即ち、板バネ10が、一次サスペンションバネの機能と従来の側ばりの機能とを兼ねている。板バネ10は、例えば、繊維強化樹脂で形成され、板バネ10の中央部10aは、一対の受け座11,11の間で横ばり5の下方に潜り込むように配置されている。横ばり5の横方向の両端部の下部には、側面視で円弧状の下面を有する押圧部材12が設けられ、押圧部材12の下面が板バネ10の中央部10aに上方から載せられている。即ち、押圧部材12は、板バネ10を上下方向に固定しない状態で、横ばり5が伝達する下方荷重(車体荷重等)によって板バネ10の中央部10aを下方に押している。
【0014】
軸箱9の上部には、後述するように、軸箱カバー15、第1防振ゴムユニット16、楔状部材17、第2防振ゴムユニット18及びバネ座19等が下から順に積層されている。バネ座19には、弾性シート34(ゴムシート)を介して板バネ10の端部10bが上方から載せられている。板バネ10の各端部10bは、その上面が中央部10aに向く方向に傾斜した姿勢で支持され、板バネ10の中央部10aは、押圧部材12により下方に押されており、板バネ10は、側面視で全体として下方に凸な弓形状に形成されている。
【0015】
台車1には、車両走行時における第1防振ゴムユニット16の鉛直方向の弾性変形に追従するように鉛直荷重変動センサ21が設けられている。鉛直荷重変動センサ21は、台車枠4から車輪7に向けた荷重伝達経路において、第1防振ゴムユニット16と並列に配置されている。鉛直荷重変動センサ21は、平面視において第1防振ゴムユニット16の外方に配置されている。また、台車1には、車両走行時における第2防振ゴムユニット18の横方向の弾性変形に追従するように第1横荷重変動センサ22A及び第2横荷重変動センサ22Bが設けられている。第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bは、台車枠4から車輪7に向けた荷重伝達経路において、第2防振ゴムユニット18と並列に配置されている。第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bは、平面視において第2防振ゴムユニット18の外方に配置されている。
【0016】
図2は、
図1に示す台車1の一部を断面化した要部側面図である。
図3は、
図2のIII−III線断面図である。
図4は、
図2のIV−IV線断面図である。
図5は、
図2のV方向から見た要部の正面図である。
図2に示すように、軸箱9は、その上面から上方に突出した突起部9aを有している。軸箱9には、軸箱カバー15が上方から被せられている。軸箱カバー15は、その中央部に上方に突出した筒部15aを有している。その筒部15aが突起部9aに嵌合することで、軸箱カバー15が軸箱9に対して水平方向に位置決めされている。軸受カバー15は、断面逆凹形状であり、軸受カバー15の内側面と軸受9の外側面との間にシール部材15が介装されている。軸受カバー15の下面と軸受9の上面との間には、1枚以上の薄肉(例えば、1〜3mm)のライナ25が挿入されている。また、軸受カバー15は、第1防振ゴムユニット16よりも水平方向外方(例えば、車両長手方向の外方)に突出して且つ水平な上面が形成された下ブラケット部15bを有している。
【0017】
軸受カバー15には、第1防振ゴムユニット16が上方から載せられている。第1防振ゴムユニット16は、円環状の下板27と、円環状の上板28と、下板27と上板28とに挟まれた防振ゴム29とを有している。防振ゴム29の下端面及び上端面は、下板27及び上板28に接着されている。第1防振ゴムユニット16の下板27は、筒部15aに嵌合することで軸受カバー15に対して水平方向に位置決めされている。
【0018】
第1防振ゴムユニット16には、楔状部材17が上方から載せられている。楔状部材17は、たとえば金属からなり、剛性を有する。楔状部材17の下面は、水平面である。楔状部材17の上面は、台車1の車両長手方向の中央側に向くように傾斜した傾斜面である。即ち、楔状部材17の上面は、車両長手方向の外方にいくにつれて高くなる傾斜面である。楔状部材17の下面の中央部には、凹部17aが形成されている。その凹部17aがリングスペーサ30を介して筒部15aに嵌合することで、楔状部材17が軸箱カバー15に対して水平方向に位置決めされている。これにより、第1防振ゴムユニット16の上板28も間接的に軸箱カバー15に対して水平方向に位置決めされることになる。即ち、第1防振ゴムユニット16は、上板28が下板27に対して水平方向に相対変位しないように位置決めされている。
【0019】
楔状部材17の上面には、第2防振ゴムユニット18が上方から載せられている。第2防振ゴムユニット18は、円環状の下板31と、円環状の上板32と、下板31と上板32とに挟まれた円環状の防振ゴム33とを有している。防振ゴム33は、防振ゴム29と同じ材料からなる。防振ゴム33の下端面及び上端面は、下板31及び上板32に接着されている。楔状部材17の上面の中央部には、上方に突出した突起部17bが形成されており、第2防振ゴムユニット18の下板31は、突起部17bに嵌合することで楔状部材17に対して水平方向に位置決めされている。
【0020】
第2防振ゴムユニット18の上面には、バネ座19が上方から載せられている。バネ座19は、上方に向けて開放され、かつ、台車1の車両長手方向の中央側に向けて開放された凹部19aを有している。バネ座19の凹部19aには、弾性シート34(ゴムシート)を介して板バネ10の端部10bが上方から載せられている。バネ座19の下面には、下方に突出した突起部17bが形成されており、第2防振ゴムユニット18の上板32は、突起部19bに嵌合することでバネ座19に対して水平方向に位置決めされている。即ち、第2防振ゴムユニット18では、下板31が楔状部材17とともに水平方向に動き、上板32がバネ座19とともに水平方向に動くため、上板32が下板31に対して水平方向に相対変位することができる。
【0021】
台車1には、鉛直荷重変動センサ21、第1横荷重変動センサ22A,第2横荷重変動センサ22B及び演算器70を有する荷重計測装置100が搭載されている。演算器70は、外部から入力された静止輪重と、車両走行中における鉛直荷重変動センサ21の鉛直方向の荷重変動に関する出力とから車両走行中の輪重Pを算出するとともに、車両走行中における第1及び第2荷重変動センサ22A,22Bの横方向の荷重変動に関する出力から車両走行中の車輪7の横圧Qを算出する。
【0022】
図2及び3に示すように、楔状部材17には、第1防振ゴムユニット16よりも水平方向外方(例えば、車両長手方向の外方)に突出して且つ水平な下面が形成された上ブラケット35が固定具B1,B2(例えば、ボルト)により固定されている。なお、上ブラケット35は、固定具を用いずに溶接又は接着により楔状部材17に固定してもよいし、楔状部材17の一部として形成してもよい。上ブラケット35の下面は、下ブラケット部15bの上面に対して鉛直方向に対向している。上ブラケット35の下面には、鉛直荷重変動センサ21が接着されている。下ブラケット部15bの上面には、絶縁材料からなる圧接部材36(例えば、ゴム等からなる弾性部材)が接着され、圧接部材36が鉛直荷重変動センサ21の下面に圧接している。
【0023】
鉛直荷重変動センサ21は、圧接部材36の上面に圧接する下面電極41と、上ブラケット35の下面に接着された上面電極42と、下面電極41及び上面電極42により鉛直方向に挟まれた媒介部材43とを有している。圧接部材36は絶縁材料からなるため、下面電極41と圧接部材36とは互いに電気的に絶縁されている。上面電極42と上ブラケット35との間に介在する接着材は絶縁材料からなるため、上面電極42と上ブラケット35とも互いに電気的に絶縁されている。
【0024】
鉛直荷重変動センサ21は、台車枠4から車輪7に向けた荷重伝達経路において、防振ゴム29と並列に配置されて、台車枠4からの下方荷重を支持した防振ゴム29の鉛直方向の弾性変形に追従する。詳細には、下面電極41は、下板27、軸箱カバー15及び圧接部材36を介して、防振ゴム29の下端面の鉛直方向の動きに連動して鉛直方向に動く。換言すると、下面電極41は、防振ゴムユニット16の下板27と一体に鉛直方向に変位する。同様に、上面電極42は、上板28、楔状部材17及び上ブラケット35を介して、防振ゴム29の上端面の鉛直方向の動きに連動して鉛直方向に動く。換言すると、上面電極42は、防振ゴムユニット16の上板28と一体に鉛直方向に変位する。
【0025】
媒介部材43は、防振ゴム29とは異なる材料からなる。媒介部材43は、下面電極41及び上面電極42の鉛直方向の相対移動により変形して下面電極41及び上面電極42からの電気的出力(例えば、電圧)に変化を生じさせる。一例として、媒介部材43を、誘電性を有する樹脂又はエラストマーからなる弾性部材とすれば、下面電極41と上面電極42との間の鉛直方向の距離変化により電極41,42間の静電容量が変化し、下面電極41及び上面電極42の間の電圧に変化を生じさせることができる。または、別例として、媒介部材43を圧電体とすれば、媒介部材43に加わる鉛直方向の荷重変化により電極41,42間の電圧に変化を生じさせることができる。あるいは、更なる別例として、荷重変動センサそのものを、圧力の変化によって電気抵抗が変化する感圧型導電ゴムとすれば、その感圧型導電ゴムに加わる荷重の変化により感圧型導電ゴムの対向端の間の電圧に変化を生じさせることができる。
【0026】
媒介部材43は、防振ゴム29よりも変形抵抗が小さい。例えば、媒介部材43の変形抵抗は、防振ゴム29の変形抵抗の50%以下であり、好ましくは10%以下である。また、媒介部材43が弾性部材である場合には、媒介部材43のバネ定数は、防振ゴム29のバネ定数よりも小さい。例えば、媒介部材43のバネ定数は、防振ゴム29のバネ定数の50%以下であり、好ましくは10%以下である。また、媒介部材43の鉛直方向から見た面積は、防振ゴム29の鉛直方向から見た面積よりも小さい。例えば、媒介部材43の当該面積は、防振ゴム29の当該面積の50%以下であり、好ましくは10%以下である。媒介部材43の鉛直方向の厚さは、上面電極41及び下面電極42の鉛直方向の厚さの5倍以上であり、好ましくは10倍以上である。
【0027】
図2、4及び5に示すように、楔状部材17には、垂直な左側面が形成された右ブラケット部37aと、垂直な右側面が形成された左ブラケット部37bとを有するブラケット37が固定具B3,B4(例えば、ボルト)により固定されている。右ブラケット部37a及び左ブラケット部37bは、第2防振ゴムユニット18よりも水平方向外方(例えば、車両長手方向の外方)に突出している。右ブラケット部37aの左側面と左ブラケット部37bの右側面とは、横方向に間隔をあけて互いに対向している。なお、ブラケット37は、固定具を用いずに溶接又は接着により楔状部材17に固定してもよいし、楔状部材17の一部として形成してもよい。
【0028】
バネ座19には、右ブラケット部37aと左ブラケット部37bとの間に挿入された中央ブラケット部38aを有するブラケット38が固定具B5,B6(例えば、ボルト)により固定されている。中央ブラケット部38aの右側面は、垂直面であり、右ブラケット部37aの左側面と隙間をあけて対向している。中央ブラケット部38aの左側面は、垂直面であり、左ブラケット部37bの右側面と隙間をあけて対向している。
【0029】
中央ブラケット部38aの右側面及び左側面には、第1横荷重変動センサ22A及び第2横荷重変動センサ22Bがそれぞれ接着されている。右ブラケット部37aの左側面及び左ブラケット部37bの右側面には、絶縁材料からなる圧接部材38,39(例えば、ゴム等からなる弾性部材)がそれぞれ接着されている。右側の圧接部材38の左側面が横荷重変動センサ22Aの外側面(右側面)に圧接し、左側の圧接部材39の外側面(右側面)が横荷重変動センサ22Bの左側面に圧接している。
【0030】
第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bの各々は、鉛直荷重変動センサ21と同じ構造であり、鉛直荷重変動センサ21に対して車両長手方向周りに90°回転させた姿勢で配置されている。詳細には、第1横荷重変動センサ22Aは、圧接部材38に圧接する外側面電極51(右側面電極)と、中央ブラケット部38aの右側面に接着された内側面電極52(左側面電極)と、外側面電極51及び内側面電極52により横方向に挟まれた媒介部材53とを有している。第2横荷重変動センサ22Bは、圧接部材39に圧接する外側面電極61(左側面電極)と、中央ブラケット部38aの左側面に接着された内側面電極62(右側面電極)と、外側面電極61及び内側面電極62により横方向に挟まれた媒介部材63とを有している。圧接部材38,39は絶縁材料からなるため、外側面電極51,61と圧接部材38,39とは互いに電気的に絶縁されている。内側面電極52,62と中央ブラケット部38aとの間に介在する接着材は絶縁材料からなるため、内側面電極52,62と中央ブラケット部38aとも互いに電気的に絶縁されている。
【0031】
第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bは、台車枠4から車輪7に向けた荷重伝達経路において、防振ゴム33と並列に配置されて、台車枠4からの下方荷重を支持した防振ゴム33の横方向の弾性変形に追従する。詳細には、内側面電極51,61は、下板31、楔状部材17及びブラケット37を介して、防振ゴム33の下端面の横方向の動きに連動して横方向に動く。換言すると、内側面電極51,61は、防振ゴムユニット18の下板31と一体に横方向に変位する。同様に、外側面電極52,62は、上板32、バネ座19及びブラケット38を介して、防振ゴム33の上端面の横方向の動きに連動して横方向に動く。換言すると、外側面電極52,62は、防振ゴムユニット18の上板32と一体に横方向に変位する。
【0032】
第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bの媒介部材53,63は、防振ゴム33とは異なる材料からなる。本実施形態では、鉛直荷重センサ21の媒介部材43と同じ材料からなる。即ち、媒介部材53,63の各々は、それを挟む外側面電極51,61及び内側面電極52,62の横方向の相対移動により変形して外側面電極51,61及び内側面電極52,62からの電気的出力(例えば、電圧)に変化を生じさせる。
【0033】
媒介部材53,63は、防振ゴム33よりも変形抵抗が小さい。例えば、媒介部材53,63の変形抵抗は、防振ゴム33の変形抵抗の50%以下であり、好ましくは10%以下である。また、媒介部材53,63が弾性部材である場合には、媒介部材53,63のバネ定数は、防振ゴム33のバネ定数よりも小さい。例えば、媒介部材53,63のバネ定数は、防振ゴム33のバネ定数の50%以下であり、好ましくは10%以下である。また、媒介部材53,63の横方向から見た面積は、防振ゴム33の横方向から見た面積よりも小さい。例えば、媒介部材53,63の当該面積は、防振ゴム33の当該面積の50%以下であり、好ましくは10%以下である。媒介部材53,63の横方向の厚さは、電極51,52,61,62の横方向の厚さの5倍以上であり、好ましくは10倍以上である。
【0034】
鉛直荷重変動センサ21、第1横荷重変動センサ22A及び第2横荷重変動センサ22Bには、演算器70が有線又は無線にて通信可能に接続されている。演算器70は、鉛直荷重変動センサ21からの電気的出力と第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bからの電気的出力とを受信し、車輪7がレールに及ぼす鉛直方向下方の荷重である輪重Pと、車輪7がレールの側面に及ぼす横方向の荷重である横圧Qとを算出する。
【0035】
演算器70は、下記の数式1により輪重Pを算出する。
【0036】
[数式1]
P=P0+ΔP
ここで、P0は、台車1が静止した状態での輪重を意味する静止輪重であり、ΔPは、車両走行時における輪重の変動量である。静止輪重P0は、車両走行前又は後に外部の静止輪重計測装置(図示せず)により計測されて演算器70に入力される。輪重変動量ΔPは、下記の数式2により求められる。
【0037】
[数式2]
ΔP=f(V)
ここで、Vは、鉛直荷重変動センサ21からの電気的出力(例えば、電圧)である。fは、鉛直荷重変動センサ21からの出力と輪重変動量ΔPとの対応関係を予め求めておくことで設定される関数である。また、演算器70は、下記の数式3により横圧Qを算出する。
【0038】
[数式3]
Q=Q0+ΔQ=ΔQ
ここで、Q0は、台車1が静止した状態での横圧を意味し、具体的にはゼロが入力される。ΔQは、車両走行時における横圧の変動量である。横圧変動量ΔQは、下記の数式4及び数式5の少なくとも1つにより求められる。
【0039】
[数式4]
ΔQ=f1(V1)
[数式5]
ΔQ=f2(V2)
ここで、V1は、第1横荷重変動センサ22Aからの電気的出力(例えば、電圧)であり、V2は、第2横荷重変動センサ22Bからの電気的出力(例えば、電圧)である。f1は、第1横荷重変動センサ22Aからの出力と横圧変動量ΔQとの対応関係を予め求めておくことで設定される関数である。f2は、第2横荷重変動センサ22Bからの出力と横圧変動量ΔQとの対応関係を予め求めておくことで設定される関数である。
【0040】
演算器70は、車両走行中に同一時間軸にて検出された鉛直荷重変動センサ21と第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bとの各センサ値を数式1〜5に入力し、輪重P及び横圧Qを算出し、車両走行中のQ/P値(横圧を輪重で除した値)を出力する。Q/P値は、脱線係数として用いられ、車両走行中のQ/P値が所定の許容範囲内にあるか否かを判定することで、脱線可能性を容易に判断することが可能となる。
【0041】
以上に説明した構成によれば、軸箱9と台車枠4との間に介設された防振ゴム29と並列に鉛直荷重変動センサ21が配置され、軸箱9と台車枠4との間に介設された防振ゴム33と並列に横荷重変動センサ22A,22Bが配置されるため、鉛直荷重変動センサ21の媒介部材43及び横荷重変動センサ22A,22Bの媒介部材53,63は、台車枠4からの下方荷重が防振ゴム29,33により負担された状態で、防振ゴム29の鉛直方向の荷重変動及び防振ゴム33の横方向の荷重変動に応じて変形することになる。よって、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bの媒介部材43,53,63は、台車1が静止した状態において更なる変形の余地を十分に確保することができる。そのため、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bの感度を高くすることができ、計測精度を向上させることが可能となる。
【0042】
更に、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bは、防振ゴム29,33と並列に配置されるものであるため、防振ゴム29,33を搭載したあらゆる台車に容易に適用することができる。また、媒介部材43,53,63は、防振ゴム29,33よりも変形抵抗が小さいので、防振ゴム29,33の弾性変形の挙動を阻害することも抑制できる。また、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bは、防振ゴム29,33の外部に配置されるので、既存の台車にも容易に後付けすることができる。
【0043】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る鉛直荷重変動センサ21の配置を説明する断面図である。
図7は、第2実施形態に係る横荷重変動センサ22A,22Bの配置を説明する断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図6及び7に示すように、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bは、防振ゴム129,133で囲まれた空間129a,133aに配置されている。第2実施形態の第1防振ゴムユニット116は、第1実施形態の第1防振ゴムユニット16と同じ所に配置され、第2実施形態の第2防振ゴムユニット118は、第1実施形態の第2防振ゴムユニット18と同じ所に配置される。但し、第2実施形態の台車では、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bは、第1及び第2防振ゴムユニット116,118の外部には配置されていない。
【0044】
第1防振ゴムユニット116は、円環状の下板27と、円環状の上板28と、下板27と上板28とに挟まれた防振ゴム129とを有している。防振ゴム129の下端面及び上端面は、下板27及び上板28に接着されている。防振ゴム129には、上面又は下面に開口した凹空間129aが形成され、その凹空間129aに鉛直荷重変動センサ21が収容されている。鉛直荷重変動センサ21の下面電極41は、防振ゴム129のうち凹空間129aの下面となる部分に圧接され、鉛直荷重変動センサ21の上面電極42は上板28に絶縁材(例えば、絶縁接着剤)を介して固定されている。鉛直荷重変動センサ21は、防振ゴム129に対して水平方向に隙間をあけている。なお、下面電極41及び上面電極42に接続された電線(図示せず)は、第1防振ゴムユニット116から外部に導出されて、演算器70(
図2参照)に接続されている。
【0045】
第2防振ゴムユニット118は、円環状の下板31と、円環状の上板32と、下板31と上板32とに挟まれた防振ゴム133とを有している。防振ゴム133の下端面及び上端面は、下板31及び上板32に接着されている。防振ゴム133には、上面及び下面に開口した孔空間133aが形成され、その孔空間133aに第1横荷重変動センサ22A及び第2横荷重変動センサ22Bが収容されている。横荷重変動センサ22A,22Bの外側面電極51,61は、孔空間133aにおいて下板31から上方に突出した側ブラケット部137A,137Bに絶縁材(例えば、絶縁接着剤)を介してそれぞれ固定されている。側ブラケット部137A,137Bは、上板32に対して鉛直方向に隙間をあけている。
【0046】
横荷重変動センサ22A,22Bの内側面電極52,62は、孔空間133aにおいて上板32から下方に突出した中央ブラケット部138に絶縁材(例えば、絶縁接着剤)を介して固定されている。中央ブラケット部138は、下板31に対して鉛直方向に隙間をあけて、かつ、防振ゴム133のうち孔空間133aの側面となる部分に対して隙間をあけている。なお、外側面電極51,61及び内側面電極52,62に接続された電線(図示せず)は、第2防振ゴムユニット118から外部に導出されて、演算器70(
図2参照)に接続されている。
【0047】
以上に説明した構成によれば、軸箱9と台車枠4との間に介設された防振ゴム129と並列に鉛直荷重変動センサ21が配置され、軸箱9と台車枠4との間に介設された防振ゴム133と並列に横荷重変動センサ22A,22Bが配置されるため、鉛直荷重変動センサ21の媒介部材43及び横荷重変動センサ22A,22Bの媒介部材53,63は、台車枠4からの下方荷重が防振ゴム129,133により負担された状態で、防振ゴム129の鉛直方向の荷重変動及び防振ゴム133の横方向の荷重変動に応じて変形することになる。よって、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bの媒介部材43,53,63は、台車が静止した状態において更なる変形の余地を十分に確保することができる。そのため、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bの感度を高くすることができ、計測精度を向上させることが可能となる。
【0048】
更に、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bは、台車枠4から車輪7(
図1参照)への荷重伝達経路において、防振ゴム129,133と並列に配置されるものであるため、防振ゴム129,133を搭載したあらゆる台車に容易に適用することができる。また、鉛直荷重変動センサ21及び横荷重変動センサ22A,22Bは、防振ゴム129,133で囲まれた空間129a,133aに収容されるので、各センサ21,22A,22Bを異物(例えば、埃など)から容易に保護することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0049】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る台車201の一部を断面化した要部側面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、第3実施形態の台車201の台車枠204は、側ばり273を有している。軸箱9は、連結装置220によって側ばり273に弾性的に連結されている。連結装置220は、側ばり273から突出して且つ横方向に間隔をあけて並んだ一対の受け座211,211と、軸箱9から一体に受け座211,211側に向けて突出した軸ばり13と、軸ばり13の先端部を受け座211,211に弾性結合するためのゴムブッシュ等(図示せず)を有する連結部214とを備えている。即ち、本実施形態の台車1は、軸ばり式である。
【0050】
第1防振ゴムユニット16には、下バネ座271が上方から載せられている。下バネ座271の下面の中央部には、凹部271aが形成されている。その凹部271aが軸受カバー15の筒部15aに嵌合することで、下バネ座271が軸箱カバー15に対して水平方向に位置決めされている。これにより、第1防振ゴムユニット16の上板28も間接的に軸箱カバー15に対して水平方向に位置決めされる。下バネ座271は、その中央部から上方に突出した支柱部271bを有している。下バネ座271は、第1防振ゴムユニット16よりも水平方向外方(例えば、車両長手方向の外方)に突出して且つ水平な下面が形成された上ブラケット部271cを有している。
【0051】
下バネ座271の上には、サスペンションバネとしてコイルバネからなる軸バネ272の下端が載せられている。側ばり273には、軸箱9の上方において下方に開口したハウジング部273aを有している。ハウジング部273aの内部空間の上面には、上バネ座274が位置決めされて、軸バネ272の上端に上バネ座274が載せられている。即ち、軸箱9と側ばり273との間には、コイルバネからなる軸バネ272がサスペンションバネとして介装されている。上バネ座274は、下方に突出する筒部274aを有している。筒部274aは、軸バネ272から水平方向の内方に隙間をあけて、かつ、支柱部271bから水平方向の外方に隙間をあけて配置されている。筒部274aと支柱部271bとの間には、防振ゴム275が挿入されている。
【0052】
下バネ座271の上ブラケット部271cの下面は、軸箱カバー15の下ブラケット部15bの上面に対して鉛直方向に対向している。上ブラケット部271cの下面には、鉛直荷重変動センサ21が接着されている。下ブラケット部15bの上面には、絶縁材料からなる圧接部材36(例えば、ゴム等からなる弾性部材)が接着され、圧接部材36が鉛直荷重変動センサ21の下面に圧接している。
【0053】
下バネ座271には、第1実施形態と同様のブラケット37が固定されている。側ばり273には、第1実施形態と同様のブラケット38が固定されている。そして、第1実施形態と同様にして、ブラケット37とブラケット38との間に、第1横荷重変動センサ22A及び第2横荷重変動センサ22Bが配置されている。
【0054】
鉛直荷重変動センサ21は、台車枠204から軸箱9に向けた荷重伝達経路において、防振ゴム29と並列に配置されて、台車枠4からの下方荷重を支持した防振ゴム29の鉛直方向の弾性変形に追従する。また、第1及び第2横荷重変動センサ22A,22Bは、台車枠4から軸箱9に向けた荷重伝達経路において、軸バネ272と並列に配置されて、台車枠4からの下方荷重を支持した軸バネ272の横方向の弾性変形に追従する。このような構成によれば、第1実施形態と同様に、各種台車への適用が容易でありながら、輪重及び横圧の計測精度を向上させることができる。
【0055】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る台車の一部を断面化した要部側面図である。
図10は、
図9に示す鉛直荷重変動センサの配置を説明する平面図である。
図11は、
図9に示す横荷重変動センサの配置を説明する平面図である。なお、前述した実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、軸箱9は、連結装置20によって横ばりの車幅方向の両端部に弾性的に連結されている。連結装置20は、軸箱9から一体に横ばりに向けて車両長手方向に突出した軸ばり13と、横ばりから軸ばり13側に向けて突出して且つ横方向に間隔をあけて並んだ一対の受け座11と、軸ばり13の先端部を受け座11に弾性結合する連結部14とを備えている。
【0056】
連結部14は、軸ばり13の先端に設けられた筒部71と、受け座11に固定された心棒72と、筒部71と心棒72との間に挟まれた筒状のゴムブッシュ73とを有する。即ち、ゴムブッシュ73が撓むことにより、軸箱9が、心棒72の軸心Xを支点として鉛直方向及び横方向に揺動可能となっている。軸箱9の上部には、軸箱カバー15、第1防振ゴムユニット216、楔状部材17、第2防振ゴムユニット218及びバネ座19等が下から順に積層されている。
【0057】
図9〜11に示すように、第1防振ゴムユニット216は、第2実施形態の第1防振ゴムユニット116と概ね同様の構成であるが、当該ユニット216に収容される鉛直荷重変動センサ21の数が異なる。第2防振ゴムユニット218も、第2実施形態の第2防振ゴムユニット118と概ね同様の構成であるが、当該ユニット218に収容される横荷重変動センサ22A,22Bの数が異なる。
【0058】
第1防振ゴムユニット216には、平面視において、その中心Yを基準として、点対称の位置に内部空間129aが形成されている。そして、鉛直荷重変動センサ21が各内部空間129aにそれぞれ収容されることで、2つの鉛直荷重変動センサ21が、第1防振ゴムユニット216の中心Yを基準として点対称に配置されている。第2防振ゴムユニット218には、平面視において、その中心Zを基準として、点対称の位置に内部空間133aが形成されている。そして、横荷重変動センサ22A,22Bの組が各内部空間113aにそれぞれ収容されることで、2組の横荷重変動センサ22A,22Bが、第2防振ゴムユニット218の中心Zを基準として点対称に配置されている。
【0059】
ここで、軸箱9が心棒72の軸心Xを支点として鉛直方向及び横方向に円弧運動するため、第1防振ゴムユニット216及び第2防振ゴムユニット218の防振ゴムの変形量は、ユニット216,218内の位置に応じて異なる。即ち、第1防振ゴムユニット216及び第2防振ゴムユニット218のうち心棒72の軸心Xから遠い部分では、心棒72の軸心Xから近い部分に比べ、変形量(変位量)が大きくなる。しかし、演算器70(
図2参照)は、2つの鉛直荷重変動センサ21から出力される値を平均することで、中心Yにおける鉛直方向の荷重変動を取得でき、2組の横荷重変動センサ22A,22Bから出力される値を平均することで、中心Zにおける横方向の荷重変動を取得できる。
【0060】
したがって、軸箱9が円弧運動する軸ばり式の台車においても、平面視における第1及び第2防振ゴムユニット216,218の配置角度にかかわらず、中心Y,Zでの荷重変動を取得することができる。なお、本実施形態では、1つの防振ゴムユニットあたりに2つのセンサ21又は2組のセンサ22A,22Bを設けたが、3つ以上のセンサ21又は3組以上のセンサ22A,22Bを設けてもよい。
【0061】
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。前述した各実施形態では、輪重Pを算出するための鉛直荷重変動センサ22と、横圧Qを算出するための横荷重変動センサ22A,22Bとの両方を台車に搭載しているが、いずれか一方のみを台車に搭載してもよい。前述した各実施形態では、鉛直荷重変動センサ22と横荷重変動センサ22A,22Bとが異なる防振ゴム29,33にそれぞれ対応して並列配置されているが、互いに同じ防振ゴム29(又は防振ゴム33)に対応して並列配置されてもよい(第2弾性体は、第1弾性体と同じものでもよい)。