特許第6140310号(P6140310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140310超臨界水流によって原油の品質を上げ、かつ脱硫するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140310
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】超臨界水流によって原油の品質を上げ、かつ脱硫するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 31/09 20060101AFI20170522BHJP
   C10G 31/08 20060101ALI20170522BHJP
   C10G 31/06 20060101ALI20170522BHJP
   B01J 3/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C10G31/09
   C10G31/08
   C10G31/06
   B01J3/00 A
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-561592(P2015-561592)
(86)(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公表番号】特表2016-515151(P2016-515151A)
(43)【公表日】2016年5月26日
(86)【国際出願番号】US2014020689
(87)【国際公開番号】WO2014138208
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年10月28日
(31)【優先権主張番号】13/785,437
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,キ−ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リー,チュ−ヘオン
(72)【発明者】
【氏名】ガーハウシュ,モハンマド,エス.
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0099374(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0099378(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0159498(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0099377(US,A1)
【文献】 特開2003−286491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/00− 3/08、
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油流から汚染物質を除去するプロセスであって、
原油流を混合装置に供給するステップと、
超臨界水流を前記混合装置に供給するステップと、
前記混合装置内で前記原油流及び前記超臨界水流を混合して、混合原油及び超臨界水流を生成するステップと、
前記混合原油及び超臨界水流を物理的濾過器に供給して、前記混合原油及び超臨界水流から固体化合物を除去して、濾過済み混合原油及び超臨界水流を生成するステップと、
前記濾過済み混合原油及び超臨界水流を生成するステップの後に、さらなる処理のためにユニットに前記濾過済み混合原油及び超臨界水流を供給するステップと、を含
さらなる処理のための前記ユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、および水素化分解ユニットから成る群から選択される、プロセス。
【請求項2】
前記ユニットが脱硫ユニットである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記混合装置内で前記原油流及び超臨界水流を混合した結果、前記固体化合物が沈殿する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記固体化合物がアルカリ化合物である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記超臨界水流を前記混合装置に供給する前に、前記超臨界水流を濾水器に供給して、濾過済み超臨界水流を生成するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記物理的濾過器が直列に配置された2つ以上の濾過器を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記物理的濾過器が並列に配置された2つ以上の物理的濾過器を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記物理的濾過器に供給される際の前記混合原油及び超臨界水流の温度が400℃超の温度に維持される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記物理的濾過器がカップ型濾過器、膜型濾過器、または深層型濾過器である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記混合原油及び超臨界水流を前記混合原油及び超臨界水流の乱流を生み出す装置に供給して、前記混合原油及び超臨界水流を前記濾過器に供給する前に、乱流混合原油及び超臨界水流を生成するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記乱流を生み出す装置が連続撹拌槽型反応器である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
原油流から汚染物質を除去するプロセスであって、
超臨界状態未満の水流を濾水器に供給して、固体化合物を除去し、濾過済み水流を生成するステップと、
加熱装置を用いて、前記濾過済み水流を超臨界状態まで加熱して、濾過済み超臨界水流を生成するステップと、
前記濾過済み超臨界水流を混合装置に供給するステップと、
原油流を前記混合装置に供給するステップと、
前記混合装置内で前記原油流及び前記濾過済み超臨界水流を混合し、混合原油及び超臨界水流を生成するステップと、
前記混合原油及び超臨界水流を物理的濾過器に供給して、前記混合原油及び超臨界水流から第2の固体化合物を除去し、濾過済み混合原油及び超臨界水流を生成するステップと、
前記濾過済み混合原油及び超臨界水流を生成するステップの後に、さらなる処理のためにユニットに前記濾過済み混合原油及び超臨界水流を供給するステップと、を含
さらなる処理のための前記ユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、および水素化分解ユニットから成る群から選択される、プロセス。
【請求項13】
前記物理的濾過器が直列に配置された2つ以上の濾過器を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記物理的濾過器が並列に配置された2つ以上の濾過器を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記物理的濾過器に供給される際の前記混合原油及び超臨界水流の温度が400℃超の温度に維持される、請求項12〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記物理的濾過器がカップ型濾過器、膜型濾過器、または深層型濾過器である、請求項12〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記固体化合物が前記水流内でアルカリ化合物である、請求項12〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第2の固体化合物が、前記混合装置内で前記原油流を前記超臨界水流と混合した結果、沈殿するアルカリ化合物である、請求項12〜17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記混合原油及び超臨界水流を前記混合原油及び超臨界水流の乱流を生み出す装置に供給して、前記混合原油及び超臨界水流を前記濾過器に供給する前に、乱流混合原油及び超臨界水流を生成するステップをさらに含む、請求項12〜18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記乱流を生み出す装置が連続撹拌槽型反応器である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
原油流から汚染物質を除去するプロセスであって、
水流を濾水器に供給して、固体アルカリ化合物を除去し、濾過済み水流を生成するステップと、
加熱装置を用いて、前記濾過済み水流を超臨界状態まで加熱して、400℃超の温度に維持される濾過済み超臨界水流を生成するステップと、
400℃超の温度に維持される前記濾過済み超臨界水流を混合装置に供給するステップと、
原油流を前記混合装置に供給するステップと、
前記混合装置内で前記原油流及び前記濾過済み超臨界水流を混合し、混合原油及び超臨界水流を生成するステップと、
前記混合原油及び超臨界水流を連続撹拌槽型反応器に供給して、乱流混合原油及び超臨界水流を生成するステップと、
400℃超の温度に維持される前記乱流混合原油及び超臨界水流を物理的濾過器に供給して、前記混合原油及び超臨界水流から第2の固体化合物を除去し、濾過済み混合原油及び超臨界水流を生成するステップと、
前記濾過済み混合原油及び超臨界水流を生成するステップの後に、さらなる処理のためにユニットに前記濾過済み混合原油及び超臨界水流を供給するステップと、を含
さらなる処理のための前記ユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、および水素化分解ユニットから成る群から選択される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、普通ならば反応炉及び装置を汚染するであろう沈殿固体化合物を除去する方法及び装置を提供すると同時に、超臨界水流を使用して、原油の品質を上げ、かつ脱硫するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
大半の精製プロセスは、入ってくる原油供給の塩化合物(その大半がアルカリ化合物を含む)の濃度を制限する。これらの塩化合物は、処理に使用される装置に対して腐食性があり、かつ、現代的な精製プロセスで広く使用される触媒に対しても有毒であり得る。原油全体が、その原産地に依存してその塩分が変化する。脱塩装置は、原油からアルカリ化合物を除去できるが、脱塩装置は通常、大量のエネルギーとさらに注入される化学物質を必要とする。さらに、処理された原油に残っているアルカリ化合物のレベルも、超臨界水を使用した処理における詰まりの問題を生じさせ得る。
【0003】
超臨界水は、原油の品質を上げるのに使用され得る特性を有する。例えば、その臨界点で、およびその周辺で水の誘電率の急激な減少によって、アルカリ化合物が超臨界水に溶けないようになる。超臨界水内のアルカリ化合物の低溶解性は、原油処理中にアルカリ化合物の沈殿を誘導する。原油の従来の処理中、沈殿は、反応炉や熱交換器などの下流のユニットの詰まりや腐食を生じさせ得る。これが、原油処理ユニットの予期せぬ停止につながり得る。
【0004】
本発明は、有利には、原油内で様々な量のアルカリ化合物による装置の詰まりを回避すると同時に、超臨界水の使用を通じて、原油の品質を上げるプロセス及び装置を提供する。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様では、本発明は、原油流から汚染物質を除去するためのプロセスを提供する。このプロセスでは、原油流が混合装置に供給される。超臨界水流も混合装置に供給される。混合装置内で原油流及び超臨界水流が混合され、混合原油及び超臨界水流が生成される。原油と超臨界水が混合されると、アルカリ化合物が沈殿する。
【0006】
次に、沈殿した化合物を含む混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器に供給され、混合原油及び超臨界水流から固体化合物が除去される。この濾過プロセスにより、濾過済み混合原油及び超臨界水流が生成される。濾過済み混合原油及び超臨界水流は、さらなる処理のためにユニットに供給される。
【0007】
別の態様では、本発明は、原油流から汚染物質を除去するためのプロセスを提供する。この態様では、水流が超臨界状態未満で濾水器に供給されて、固体化合物を除去し、濾過済み水流が生成される。次に、濾過済み水流が加熱装置内で超臨界状態にまで加熱され、濾過済み超臨界水流が生成される。次に、濾過済み超臨界水流が混合装置に供給される。原油流も混合装置に供給される。次に、混合装置内で原油流及び濾過済み超臨界水流が混合され、混合原油及び超臨界水流が生成される。次に、混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器に供給され、混合原油及び超臨界水流から第2の固体化合物が除去される。これにより、濾過済み混合原油及び超臨界水流も生成される。次に、濾過済み混合原油及び超臨界水流は、さらなる処理のためにユニットに供給される。一部の実施形態では、このユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、水素化分解ユニット及びその他の同様のユニットである。
【0008】
別の態様では、本発明は、原油流から汚染物質を除去するためのプロセスを提供する。このプロセスでは、水流が濾水器に供給され、固体アルカリ化合物が除去されて、濾過済み水流が生成される。次に、濾過済み水流が加熱装置内で超臨界状態にまで加熱され、濾過済み超臨界水流が生成される。濾過済み超臨界水流は、プロセス中、400℃超の温度に維持される。原油流も混合装置に供給される。次に、混合装置内で原油流及び濾過済み超臨界水流が混合され、混合原油及び超臨界水流が生成される。次に、混合原油及び超臨界水流が連続撹拌槽型反応器に供給され、乱流混合原油及び超臨界水流が生成される。次に、乱流混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器に供給され、混合原油及び超臨界水流から固体化合物が除去され、濾過済み混合原油及び超臨界水流が生成される。乱流混合原油及び超臨界水流は、プロセス中、400℃超の温度に維持される。次に、濾過済み混合原油及び超臨界水流は、さらなる処理のためにユニットに供給される。一部の実施形態では、このユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、水素化分解ユニット及びその他の同様のユニットである。
【0009】
本発明の実施形態は、一般に、原油がさらに処理される前に、アルカリ化合物およびその他の固体化合物の除去を可能にする。これにより、プロセスの運転安定性全体が向上する。あらゆる種類の原油に対して、このプロセスの使用が想定されるが、アルカリ性の高い石油原料の処理において特に有用であろう。アルカリ性の高い石油原料は、プロセスラインの詰まり及び腐食などの問題を生じさせ得るアルカリ化合物を比較的多く沈殿させ得る。
【0010】
以下の好適な実施形態の説明を読めば、当業者には本発明の特徴及び利点がすぐに明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の特定の態様を示すのに、以下の図面が含まれるが、排他的な実施形態として見なされるべきではない。開示された主題は、当業者に想到される、かつ、本開示の利点を有するように、形状及び機能における大幅な修正、変更および同等物が可能である。
図1】本発明の1つの実施形態の図である。
図2】本発明の1つの実施形態の図である。
図3】少なくとも2つの物理的濾過器を含む、本発明の1つの実施形態の図である。
図4】本発明の1つの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用されるように、「原油」という用語は、従来的なあらゆる種類の原油、非従来的なあらゆる種類の原油(より低品質な原油、特重質原油およびシェール油)、ビチューメン、精錬済みビチューメンまたはその抽出物、ストリームクラッカーからの製品流、液化石炭、油砂から回収された液体製品、アスファルテン及びバイオマス由来の炭化水素を含む。
【0013】
本明細書で使用されるように、「アルカリ化合物」という用語は、元素周期表の第1族および第2族の元素を有する化合物を含む。例示的なアルカリ化合物は、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムを含む。
【0014】
1つの態様では、本発明は、原油流から汚染物質を除去するためのプロセスを提供する。図1に示す通り。プロセスでは、原油流140が混合装置110に供給される。超臨界水流130も混合装置110に供給される。原油流及び超臨界水流は、混合装置110で混合され、原油及び超臨界水流120が生成される。次に、混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器100に供給され、混合原油及び超臨界水流から固体化合物が除去される。この濾過プロセスにより、濾過済み混合原油及び超臨界水流150が生成される。次に、さらなる処理のために、濾過済み混合原油及び超臨界水流がユニットに供給される。一部の実施形態では、このユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、水素化分解ユニット及びその他の同様のユニットである。
【0015】
一般に、さらなる処理のためのユニットは、原油をさらに処理するための任意のユニットであってもよい。一部の実施形態では、さらなる処理のためのユニットは、アルカリ化合物が減った原油流から恩恵を得るユニットである。さらなる実施形態では、このユニットは、脱硫ユニット、超臨界水反応炉ユニット、水素処理ユニット、水素化分解ユニット及びその他の同様のユニットである。
【0016】
さらなる実施形態では、混合装置内で原油及び超臨界水流を混合した結果、固体化合物が沈殿する。一部の実施形態では、固体化合物は、アルカリ化合物を含む。
【0017】
さらなる実施形態では、このプロセスは、超臨界水流を混合装置に供給する前に、超臨界水流を濾水器(水濾過器)に供給して、濾過済み超臨界水流を生成するステップをさらに含む。濾水器は、水に含まれるアルカリ化合物を除去するよう動作し得る。
【0018】
さらなる実施形態では、超臨界水流は、濾過中、臨界レベル以上で維持される。さらなる実施形態では、超臨界水流は、濾過中、400℃以上に維持される。超臨界水流の温度は、当技術分野で既知の種々の方法で維持され得る。その中には、配管の断熱、熱トレース、ラインヒーター、またはその他の加熱器が含まれる。
【0019】
さらなる実施形態では、原油流は、超臨界水流と結合される前は比較的低い温度にある。一部の実施形態では、原油流は、300℃未満の温度にある。他の実施形態では、原油流は、150℃未満の温度にある。一部の実施形態では、原油流は、22.1MPa以上に加圧される。
【0020】
さらなる実施形態では、物理的濾過器に供給される際の混合原油及び超臨界水流の温度は、水に対する超臨界条件以上に維持される。一部の実施形態では、物理的濾過器に供給される際の混合原油及び超臨界水流の温度は、400℃を超えた温度に維持される。一部の実施形態では、物理的濾過器に供給される際の混合原油及び超臨界水流の温度は、約400〜450℃に維持される。混合原油及び超臨界水流の温度は、当技術分野で既知の種々の方法で維持され得る。その中には、配管の断熱、熱トレース、ラインヒーター、またはその他のヒーターが含まれる。
【0021】
さらなる実施形態では、濾過器を出る際の濾過済み混合原油及び超臨界水流の温度は、水に対する超臨界条件以上である。一部の実施形態では、濾過器を出る際の濾過済み混合原油及び超臨界水流の温度は、400℃以上の温度である。一部の実施形態では、濾過器に入る際の混合原油及び超臨界水流の温度が、水に対する超臨界条件未満である場合でも、濾過器を出る際の濾過済み混合原油及び超臨界水流の温度は、水に対する超臨界条件を超えて上昇される。一部の実施形態では、濾過器を出る際の混合原油及び超臨界水流の温度が、水に対する超臨界条件未満である場合でも、濾過器を出る際の濾過済み混合原油及び超臨界水流の温度は、400℃以上に上昇される。
【0022】
本発明の混合装置110は、当技術分野で既知のいかなる種類の混合装置でもよい。一部の実施形態では、混合装置は、静的混合器、インライン混合器、撹拌器、混合を強化できるインライン装置(例えば、超音波プローブ)、混合を強化できるインライン部品(例えば、開口部)および、羽根車組み込み混合器から選択される。
【0023】
本発明の物理的濾過器100には、当技術分野で既知の物理的濾過器が含まれていてもよい。一部の実施形態では、濾過器には、カップ型濾過器、膜型濾過器または、深層型濾過器が含まれる。図3に示す通り。さらなる実施形態では、物理的濾過器には、2つ以上の濾過器が含まれていてもよい。図3に示す通り。一部の実施形態では、物理的濾過器には、2つ以上の濾過器101及び102は、並列に配置される。一部の実施形態では、物理的濾過器は、直列に配置される。3つ以上の物理的濾過器を含むさらなる実施形態では、物理的濾過器は、直列及び並列に配置されてもよい。2つ以上の濾過器が使用される場合、濾過器は同じであっても、異なっていてもよい。
【0024】
さらなる実施形態では、物理的濾過器は、サイズが約0.1μm以上の固体粒子を除去するよう動作できる。さらなる実施形態では、物理的濾過器は、サイズが約1.0μm以上の固体粒子を除去するよう動作できる。さらなる実施形態では、物理的濾過器は、サイズが約5.0μm以上の固体粒子を除去するよう動作できる。さらなる実施形態では、物理的濾過器は、サイズが約10μm以上の固体粒子を除去するよう動作できる。
【0025】
物理的濾過器の配置も、その他の物理的濾過器がプロセスによって使用中であっても、一部の物理的濾過器の清掃を可能にするようであってもよい。濾過器は、逆または順流方向に洗浄水を流すことで洗浄されてもよい。洗浄水の温度は、約5〜300℃である。一部の実施形態では、洗浄水の温度は、約50〜90℃である。洗浄水の圧力は、液相にある水に対して維持される。洗浄水は、油/水分離器からの脱イオン水、(超臨界水へ)給水及び生産水から選択されてもよい。清掃中、物理的濾過器は、洗浄効率を向上させるため、洗浄中に超音波型振動器となってもよい。
【0026】
濾過器内の液体の温度は、当技術分野で既知の種々の方法で臨界レベルか、もしくはそれを超えて維持される。その中には、配管の断熱、熱トレース、ラインヒーター、及びその他のヒーターが含まれる。
【0027】
混合装置110及び物理的濾過器100間の配管120の長さ及び直径は、乱流効果による原油流及び超臨界水流の混合を向上させるよう選択されてもよい。原油が水と同じ密度及び粘度であると仮定することで推定し得るレイノルズ数は、濾過器のちょうど前の、配管の端部で、4,000超である必要がある。これにより、高い度合いでの原油及び水の混合が確保される。
【0028】
一部の実施形態では、プロセスにはさらに、混合原油及び超臨界水流を、乱流を生成する装置に供給するステップが含まれる。混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器に供給される前に、混合原油及び超臨界水流の乱流を生成する装置を使用して、乱流混合原油及び超臨界水流が生成される。一部の実施形態では、乱流を生成する装置は、連続撹拌槽型反応器である。当該実施形態では、連続撹拌槽型反応器内の撹拌器の直径及び回転速度は、原油及び超臨界水流の完全混合を達成するように選択され得る。連続撹拌槽型反応器の内部容量は、連続撹拌槽型反応器内の混合液体の滞留時間によって決定され得る。一部の実施形態では、滞留時間は、約1〜120秒である。他の実施形態では、滞留時間は、約2〜10秒である。
【0029】
乱流を生成するのに、既知の任意の装置を使用してもよい。一般に、混合を支援し、アルカリ化合物の沈殿を生じさせるために、混合原油及び超臨界水流の連続及び/または完全混合を可能にし得る任意の装置(例えば、超音波プローブ)を使用してもよい。
【0030】
混合原油流及び超臨界水流は、独立した高圧ポンプを通じて、プロセスを通じて供給され得る。原油流及び超臨界水流は、少なくとも水の臨界圧(22.1MPa)にまで送り出される。一部の実施形態では、原油流及び超臨界水流は、約22.2〜41.5MPaの圧力にまで送り出される。他の実施形態では、原油流及び超臨界水流は、約22.9〜31.1MPaの圧力にまで送り出される。
【0031】
一部の実施形態では、外気温及び運転圧力での原油及び水の体積流量の比率は、10:1〜1:10の範囲内である。他の実施形態では、外気温及び運転圧力での原油及び水の体積流量の比率は、5:1〜1:5の範囲内である。さらなる実施形態では、外気温及び運転圧力での原油及び水の体積流量の比率は、2:1〜1:2の範囲内である。
【0032】
さらなる実施形態では、原油流170及び水流160は、加熱器190及び180を使用して、所定のレベルにまで独立して事前加熱される。超臨界水流130は、約374〜600℃にまで加熱され得る。一部の実施形態では、超臨界水流130は、約400〜550℃にまで加熱され得る。原油流140は、約10〜300℃にまで加熱され得る。一部の実施形態では、原油流140は、約50〜200℃にまで加熱され得る。原油流及び水流を加熱する装置は、当技術分野で既知の任意の装置から選択されてもよい。当該装置には、帯状加熱器、浸漬加熱器及び管状炉が含まれる。原油流及び水流の加熱装置は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0033】
別の態様では、本発明は、原油流から汚染物質を除去するためのプロセスを提供する。この態様では、水流が超臨界状態未満で濾水器に供給され、固体化合物を除去し、濾過済み水流が生成される。次に、濾過済み水流が加熱装置内で超臨界状態にまで変形され、濾過済み超臨界水流が生成される。次に、濾過済み超臨界水流が混合装置に供給される。原油流も混合装置に供給される。次に、混合装置内で原油流及び濾過済み超臨界水流が混合され、混合原油及び超臨界水流が生成される。次に、混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器に供給され、混合原油及び超臨界水流120から第2の固体化合物が除去され、濾過済み混合原油及び超臨界水流150が生成される。次に、濾過済み混合原油及び超臨界水流150がさらなる処理のためにユニットに供給される。
【0034】
さらなる実施形態では、物理的濾過器には、当技術分野で既知の任意の物理的濾過器が含まれていてもよい。一部の実施形態では、濾過器には、カップ型濾過器、膜型濾過器または、深層型濾過器が含まれる。さらなる実施形態では、物理的濾過器には、2つ以上の濾過器が含まれていてもよい。一部の実施形態では、2つ以上の濾過器は、直列に配置される。一部の実施形態では、物理的濾過器は、直列に配置される。3つ以上の物理的濾過器を含むさらなる実施形態では、物理的濾過器は、直列及び並列に配置されてもよい。2つ以上の濾過器が使用される場合、濾過器は同じであっても、異なっていてもよい。
【0035】
一部の実施形態では、プロセスにはさらに、混合原油及び超臨界水流を、乱流を生成する装置に供給するステップが含まれる。混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器に供給される前に、混合原油及び超臨界水流の乱流を生成する装置を使用して、乱流混合原油及び超臨界水流が生成される。一部の実施形態では、乱流を生成する装置は、連続撹拌槽型反応器である。乱流を生成するのに、既知の任意の装置を使用してもよい。一般に、混合を支援し、アルカリ化合物の沈殿を生じさせるために、混合原油及び超臨界水流の連続及び/または完全混合を可能にし得る任意の装置を使用してもよい。
【0036】
さらなる実施形態では、混合装置内で原油及び超臨界水流を混合した結果、固体化合物が沈殿する。一部の実施形態では、固体化合物は、アルカリ化合物を含む。
【0037】
さらなる実施形態では、このプロセスは、超臨界水流を混合装置に供給する前に、超臨界水流を濾水器に供給して、濾過済み超臨界水流を生成するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、超臨界水流は、濾過中、臨界レベル以上に維持される。さらなる実施形態では、超臨界水流は、濾過中、400℃以上に維持される。超臨界水流の温度は、当技術分野で既知の種々の方法で維持され得る。その中には、配管の断熱、熱トレース、ラインヒーター、またはその他のヒーターが含まれる。
【0038】
さらなる実施形態では、物理的濾過器に供給される際の混合原油及び超臨界水流の温度は、水に対する超臨界条件以上に維持される。一部の実施形態では、物理的濾過器に供給される際の混合原油及び超臨界水流の温度は、400℃か、それを超えた温度に維持される。混合原油及び超臨界水流の温度は、当技術分野で既知の種々の方法で維持され得る。その中には、配管の断熱、熱トレース、ラインヒーター、またはその他の加熱器が含まれる。
【0039】
別の態様では、本発明は、原油流から汚染物質を除去するためのプロセスを提供する。このプロセスでは、水流が濾水器に供給され、固体アルカリ化合物が除去されて、濾過済み水流が生成される。次に、濾過済み水流が加熱装置内で超臨界状態にまで加熱され、濾過済み超臨界水流が生成される。濾過済み超臨界水流は、プロセス中、400℃超の温度に維持される。次に、濾過済み超臨界水流が混合装置に供給される。濾過済み超臨界水流は、プロセス中、400℃超の温度に維持される。原油流も混合装置に供給される。次に、混合装置内で原油流及び濾過済み超臨界水流が混合され、混合原油及び超臨界水流が生成される。次に、混合原油及び超臨界水流が連続撹拌槽型反応器に供給され、乱流混合原油及び超臨界水流が生成される。次に、乱流混合原油及び超臨界水流が物理的濾過器に供給され、混合原油及び超臨界水流から第2の固体化合物が除去され、濾過済み混合原油及び超臨界水流が生成される。乱流混合原油及び超臨界水流は、プロセス中、400℃超の温度に維持される。濾過済み混合原油及び超臨界水流は、さらなる処理のためにユニットに供給される。
【0040】
さらなる実施形態では、図2に示すように、濾過済み混合原油及び超臨界水流150は、超臨界水反応炉200に供給される。超臨界水反応炉200は、円筒形反応炉、管形反応炉、または当技術分野で既知のその他の反応炉であってもよい。一部の実施形態では、超臨界水反応炉は、撹拌器を有していてもよい。超臨界反応炉は、水平、垂直またはその両方であってもよい。超臨界水反応炉は、直列または並列に配置された2つ以上の反応炉であってもよい。流れ方向は、上向きまたは下向き、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0041】
超臨界水反応炉200の温度は、374℃を超えた温度に維持される。一部の実施形態では、超臨界水反応炉の温度は、約380〜600℃間の温度に維持される。さらなる実施形態では、超臨界水反応炉の温度は、約390〜450℃間の温度に維持される。超臨界水反応炉の温度は、当技術分野で既知の種々の方法で維持されてもよい。これらの中には、帯状加熱器、浸漬加熱器及び管状炉が含まれる。一部の実施形態では、超臨界水反応炉内の液体での滞留時間は、約1〜120分である。他の実施形態では、滞留時間は、約10秒〜60分である。他の実施形態では、滞留時間は、約30秒〜20分である。
【0042】
さらなる実施形態では、超臨界水反応炉200からの流出物250は、冷却装置210に転送され、冷却流260が生成される。冷却装置210は、当技術分野で既知の任意の冷却装置から選択されてもよい。当技術分野で既知の冷却装置の中には、冷却器及び熱交換器がある。冷却流の結果として生じる温度は、約10及び200℃である。一部の実施形態では、冷却流の結果として生じる温度は、約30及び150℃である。
【0043】
さらなる実施形態では、冷却流260は、減圧装置220を使用して放出流に減圧される。減圧装置220は、当技術分野で既知の当該装置から選択されてもよい。当技術分野で既知の装置の中には、圧力調節弁及び毛細管がある。次に、放出流270は、気液分離器230を使用して、気相流280及び液相流290に分離される。次に液相流は、油水分離器を使用して水流310及び石油製品300に分離される。
【0044】
図4に示すように、一部の実施形態はさらに、超臨界水を濾過する浄化器103が含まれる。
【0045】
実施例:
【0046】
API比重が26.3°の60°F及び総硫黄分が3.00重量%であるあらゆる種類のアラビアン ヘビー(Arabian Heavy)原油が提供された。原油には、NaClの5PTBの塩分が含まれていた。試験に使用された水は、ASTM D1193で定義されたグレードIであった。水の抵抗率は、25℃で18M−オーム−cmであった。原油は、加熱テープを備える0.083インチI.D.の伝達線を巻くことで、50℃まで事前加熱された。水は、蓄熱加熱器(LIDBERG 3地帯管状炉)によって550℃にまで事前加熱された。水及び原油は、外気温および3,600psigの圧力で体積流量比率が5ml/5mlになるよう、個別の高圧定量ポンプによって送り出された。加圧及び事前加熱された水は、T字継手(Autoclave Engineers、CT4440)を使用して、簡単な加圧及び事前加熱された原油と結合された。T字継手は、加熱テープ(Briskheat加熱テープ)が巻きつけられた伝達線によって高圧濾過器(AutoClave Engineers、CF4−5)に連結された。T字継手及び濾過器間の伝達線の長さは、12.0インチで、内径(I.D.)は、0.083インチであった。伝達線内部の液体の温度は、濾過器の注入口前の約0.5インチの点に挿入された熱電対によって、410℃であると測定された。原油が同じ条件で水と同じ密度及び粘度を有すると仮定することによって、濾過器の注入口での液体のレイノルズ数は、5,450であると計算された。濾過器からの液体は、反応炉に注入された。反応炉は、27.5インチ長で、外径が9/16インチ(O.D.)(3/16インチI.D.)であり、反応炉の内部容積は、約12.4mlとなった。反応炉内の液体の温度は、蓄熱加熱器(AJEON 3地帯管状炉)によって約430℃に制御された。反応炉からの流出物は、二重管型熱交換器を使用して、50℃に冷却され、次に、背圧調節器(TESCOM 26−1762−24−090)によって周囲条件にまで減圧された。システムの圧力は、3,600psigの圧力に維持された。製品には、油及び水相を分離するために、解乳化剤が添付された解乳化手順が行われた。分離された油製品は、API比重31.7°の60°F及び総硫黄分2.34重量%を示した。48時間の運転後、(濾過器前及び熱交換器後の)プロセスラインを通じた差圧は、200〜300psigにまで上昇した。査型電子顕微鏡−エネルギー分散型分析(SEM−EDS)で分析するために、プロセスラインから濾過器が取り外され、濾過器内の固体析出物が除去された。固体析出物の内容には、固体炭素及び酸化鉄の他、リン酸カルシウムが含まれていた。原油には、微量として、カルシウム及びリンが含まれていた。沈着したリン酸カルシウムは、酸化鉄粒子を生成したコークス沈着及び濾過器の腐食を誘導した。濾過器の後に固体析出物及び反応炉の吸入口及び排出口間の差圧は確認されなかった。この観察は、本発明で開示された方法の有効性を示した。
【0047】
理論に限定されることなく、急激に減少した誘電率がアルカリ化合物の沈殿の原因であると考えられる。この減少は、超臨界点で、あるいはその周辺で確認される。この誘電率の下降が確認される水の超臨界点周辺の条件を説明するのに、超臨界が使用される。また、超臨界点を超えて延長する。水は、約374℃の超臨界温度周辺及び22.1MPaの超臨界圧力周辺で超臨界特性を示す。
【0048】
それゆえ、本発明は、本発明で固有の目的及び利点の他、述べられている目的及び利点を達成するのによく適している。本発明が、本明細書の教示の利点を有する当業者には明らかである、異なるが、同等の方法で変更及び実践されてもよいため、前述で開示される特定の実施形態は、単に例示的なものである。さらに、以下の特許請求の範囲で説明された場合以外で、本明細書に記載される構成または設計の詳細には、一切の制限は意図されない。それゆえ、前述で開示される特定の図示された実施形態が変更、結合または改変されてもよく、かつ、このような変形例がすべて本発明の範囲及び精神に収まると考えられることは明白である。本明細書に例示的に開示される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素及び/または本明細書に開示される任意の選択的な要素がなくても、適切に実践し得る。組成物及び方法は、種々の構成要素またはステップを「備える」、「有する」または「含む」という用語で請求されるが、組成物及び方法も種々の構成要素及びステップから「本質的になっても」または「なっても」よい。前述に開示されるすべての数字及び範囲は、ある程度変わってもよい。また、特許請求の範囲内の用語は、特許権所有者によって別段で明示的かつ明確に定義されない限り、単純で、通常の意味を有する。本明細書で及び本明細書において参照によって援用され得る1つ以上の特許またはその他の文書において言葉または用語の使用法に不一致がない場合、本明細書に一致する定義が採用されるべきである。

図1
図2
図3
図4