特許第6140351号(P6140351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140351複数の機械と相互通信を行う機械システム
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  • 特許6140351-複数の機械と相互通信を行う機械システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6140351
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】複数の機械と相互通信を行う機械システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-213569(P2016-213569)
(22)【出願日】2016年10月31日
(62)【分割の表示】特願2016-37956(P2016-37956)の分割
【原出願日】2016年2月29日
【審査請求日】2016年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】小田 勝
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 清典
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−246859(JP,A)
【文献】 特開平7−56618(JP,A)
【文献】 特開2015−156182(JP,A)
【文献】 特開平2−213905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 1/00 −7/04
11/00 −13/04
17/00 −17/02
19/418
21/00 −21/02
G05D 1/00 −1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの機械(11、12)と、前記機械(11、12)と通信可能に接続されたコンピュータと、該コンピュータに搭載されるベースソフトウェア(13)及び作業ソフトウェア(14)と、を具備する機械システム(10)であって、
前記ベースソフトウェア(13)は、
前記機械(11、12)の各々から前記機械(11、12)の各々の識別情報に関連付けて前記ベースソフトウェア(13)に入力される第1機械情報と前記機械(11、12)の各々に対して前記ベースソフトウェア(13)から出力される第2指示情報との受渡しを行うプログラム部分である第1通信部(15)と、
前記作業ソフトウェア(14)から前記ベースソフトウェア(13)に前記機械(11、12)の各々の識別情報に関連付けて入力される第1指示情報と前記作業ソフトウェア(14)に対して前記機械(11、12)の各々の識別情報に関連付けて前記ベースソフトウェア(13)から出力される第2機械情報との受渡しを行うプログラム部分である第2通信部(16)と、
前記第1機械情報、前記第2機械情報、前記第1指示情報、及び前記第2指示情報を前記機械(11、12)の各々の識別情報に関連付けて記憶部(17)に記憶させるプログラム部分と、を含み、
前記機械(11、12)は、前記機械(11、12)の状態を前記第1機械情報として前記機械(11、12)の各々の識別情報に関連付けて前記第1通信部(15)に渡す機能、及び、前記第1通信部(15)から入力される前記第2指示情報によって、それ以降の作業動作を決定する機能を有し、
前記作業ソフトウェア(14)は、前記第2通信部(16)から前記機械(11、12)の各々の識別情報に関連付けて入力される前記第2機械情報を基に、前記機械(11、12)の各々への前記第1指示情報を作成し、前記機械(11、12)の各々の識別情報に関連付けて前記第2通信部(16)に渡す機能を有することを特徴とする機械システム。
【請求項2】
前記ベースソフトウェア(13)は、前記作業ソフトウェア(14)が適切であるか、または不適切であるかを判断するプログラム部分である判断部を更に含み、
前記作業ソフトウェア(14)は、前記作業ソフトウェア(14)の製造元情報と前記作業ソフトウェア(14)の検査結果に基づいた認証記録情報(18)を具備し、
前記第1指示情報の一部は、前記認証記録情報(18)であり、
前記ベースソフトウェア(13)は、前記判断部が前記認証記録情報(18)を不適切と判断した場合には、前記第2通信部(16)による全ての通信を実行しないようにすることを特徴とする請求項1に記載の機械システム。
【請求項3】
前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方は、前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方について、起点からの使用期間を監視し、所定期間ごとに料金の支払い情報を前記第1通信部(15)に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の機械システム。
【請求項4】
前記ベースソフトウェア(13)は、外部機器(19)と通信するためのプログラム部分である第3通信部(20)を更に含み、
前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方は、前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方について、起点からの使用期間を監視し、所定期間ごとに料金の支払い情報を前記第3通信部(20)に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の機械システム。
【請求項5】
前記起点が、前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方のインストールタイミングであることを特徴とする請求項3または4に記載の機械システム。
【請求項6】
前記起点が、前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方の購入日であることを特徴とする請求項3または4に記載の機械システム。
【請求項7】
前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方の最新版数を記録する第2記憶部(21)を更に具備し、
前記ベースソフトウェア(13)は、前記第2記憶部(21)の内容を確認するプログラム部分である第4通信部(22)を更に含み、
前記ベースソフトウェア(13)は、前記第2記憶部(21)に記録される前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方の最新版数が、前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方における現状の版数より進んだものである場合に、該最新版数を前記第1通信部(15)に出力することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の機械システム。
【請求項8】
前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方の最新版数を記録する第2記憶部(21)を更に具備し、
前記ベースソフトウェア(13)は、前記第2記憶部(21)の内容を確認するプログラム部分である第4通信部(22)を更に含み、
前記ベースソフトウェア(13)は、前記第2記憶部(21)に記録される前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方の最新版数が、前記ベースソフトウェア(13)及び前記作業ソフトウェア(14)の少なくともいずれか一方における現状の版数より進んだものである場合に、該最新版数を前記第3通信部(20)に出力することを特徴とする請求項4に記載の機械システム。
【請求項9】
前記第1機械情報及び前記第2機械情報の一部は、前記機械(11、12)の使用時間、モータの電流値、振動値、発熱温度、及び音量の群から選択される少なくとも一つの情報であり、
前記第1指示情報及び前記第2指示情報の一部は、前記機械(11、12)に対する停止指示もしくは減速指示、及び警告表示の少なくともいずれか一方の情報であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の機械システム。
【請求項10】
前記第1機械情報の一部は、前記機械(11、12)の位置情報であり、
前記第2指示情報の一部は、前記機械(11、12)の相対位置があらかじめ設定された距離以下となった場合に、動作優先順位下位の機械に対する停止指示によって機械同士の干渉を回避させるための前記機械(11、12)の動作指示情報であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の機械システム。
【請求項11】
前記第1機械情報の一部は、前記機械(11、12)の作業受付情報及び作業完了情報であり、
前記第2指示情報の一部は、あらかじめ前記機械(11、12)に記憶された作業についての、内容の選択、作業順序、前記機械(11、12)の起動、及び前記機械(11、12)の停止のうちの少なくとも一つを含む作業指示情報であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の機械システム。
【請求項12】
前記第1機械情報の一部は、前記機械(11、12)の作業対象物の状態を示す情報であり、
前記第2指示情報の一部は、前記作業対象物の状態に応じて前記機械(11、12)の動作を変えるための動作変更指示情報であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の機械システム。
【請求項13】
前記第1機械情報の一部は、前記機械(11、12)の予定動作情報であり、
前記第2指示情報の一部は、前記機械(11、12)の予定動作が適切か、または不適切かを判断した結果であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の機械システム。
【請求項14】
前記機械(11、12)がロボットであることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機械と相互通信を行う機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、生産計画を行う生産計画装置によって、製造する製品、製品数、納期、使用する機械、及び製造工程などが計画されている。そして、生産計画装置によって立案された製造計画に基づいて、製造現場の作業者が、工作機械や産業用ロボットなどの機械を稼働させていた。また、製造現場の作業者が、機械の操業情報、製品の製造実績などを生産計画装置に送ることにより、品質管理、工程管理等を行ってきた。
【0003】
例えば、品目オブジェクト、作業オブジェクトを用いて工程情報を作成し、工程情報と資源オブジェクトから割付け情報を作成する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、工作機械又は測定装置の機器情報をあらかじめ設定された周期で定期的に収集し、収集された機器情報を収集時刻と関係付けてデータベースに蓄積し、外部装置に送信する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
近年、市場ニーズの多様化、製品ライフサイクルの短期化、グローバル市場における競争の激化により、製品品種が増大するとともに、販売量の変動が増大している。そのため、市場の要求にダイナミックに連動して製品を製造できるように、変種変量生産に対応することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/105298号
【特許文献2】特開2004−62276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、複数の機械を一つの製造セルとしてまとめて、工程毎に製造セル単位で製造を行うセル生産方式が提案されている。セル生産方式では、一つの製造セルで複数の品種を生産することが可能であり、生産量に合わせて製造セルの数を増減させることも可能であり、製造する品種の変化に合わせて製造セル内の構成を変更することも可能である。
【0008】
さらに、生産計画指示を生産計画装置からインターネット通信を介して受信しつつ、製製造現場における複数の機械をイントラネット通信を介して制御するセル制御装置が開発されている。このようなセル制御装置によれば、製造現場から離れた場所に在る生産計画装置からの指示により各機械を稼働させ、各機械から各種の情報をリアルタイムに自動収集して一元的に管理できるようになる、と期待されている。
【0009】
前述のようなセル制御装置においては、専用の作業ソフトウェアをセル制御装置に組込むことにより、各機械とセル制御装置とを通信可能に相互接続し、機械毎の作業動作を実行できるようにする事が考えられている。この場合、セル制御装置のベースソフトウェアと作業ソフトウェアと各機械との間で情報を受渡せるようにする必要がある。このとき、セル制御装置に組込まれた作業ソフトウェアを管理できることも必要とされる。
【0010】
したがって本発明の目的は、上述のような実情に鑑み、ベースソフトウェアと作業ソフトウェアと各機械との間での情報の受渡しとその管理を行える機械システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一態様によれば、少なくとも2つの機械と、前記機械と通信可能に接続されたコンピュータと、該コンピュータに搭載されるベースソフトウェア及び作業ソフトウェアと、を具備する機械システムであって、
前記ベースソフトウェアは、
前記機械の各々から前記機械の各々の識別情報に関連付けて前記ベースソフトウェアに入力される第1機械情報と前記機械の各々に対して前記ベースソフトウェアから出力される第2指示情報との受渡しを行うプログラム部分である第1通信部と、
前記作業ソフトウェアから前記ベースソフトウェアに前記機械の各々の識別情報に関連付けて入力される第1指示情報と前記作業ソフトウェアに対して前記機械の各々の識別情報に関連付けて前記ベースソフトウェアから出力される第2機械情報との受渡しを行うプログラム部分である第2通信部と、
前記第1機械情報、前記第2機械情報、前記第1指示情報、及び前記第2指示情報を前記機械の各々の識別情報に関連付けて記憶部に記憶させるプログラム部分と、を含み、
前記機械は、前記機械の状態を前記第1機械情報として前記機械の各々の識別情報に関連付けて前記第1通信部に渡す機能、及び、前記第1通信部から入力される前記第2指示情報によって、それ以降の作業動作を決定する機能を有し、
前記作業ソフトウェアは、前記第2通信部から前記機械の各々の識別情報に関連付けて入力される前記第2機械情報を基に、前記機械の各々への前記第1指示情報を作成し、前記機械の各々の識別情報に関連付けて前記第2通信部に渡す機能を有することを特徴とする機械システムが提供される。
【0012】
本発明の第二態様によれば、上記第一態様において、前記ベースソフトウェアは、前記作業ソフトウェアが適切であるか、または不適切であるかを判断するプログラム部分である判断部を更に含み、前記作業ソフトウェアは、前記作業ソフトウェアの製造元情報と前記作業ソフトウェアの検査結果に基づいた認証記録情報を具備し、前記第1指示情報の一部は、前記認証記録情報であり、前記ベースソフトウェアは、前記判断部が前記認証記録情報を不適切と判断した場合には、前記第2通信部による全ての通信を実行しないようにすることを特徴とする機械システムが提供される。
【0013】
本発明の第三態様によれば、上記第一態様または第二態様のいずれかにおいて、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方は、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方について、起点からの使用期間を監視し、所定期間ごとに料金の支払い情報を前記第1通信部に出力することを特徴とする機械システムが提供される。
【0014】
本発明の第四態様によれば、上記第一態様または第二態様のいずれかにおいて、前記ベースソフトウェアは、外部機器と通信するためのプログラム部分である第3通信部を更に含み、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方は、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方について、起点からの使用期間を監視し、所定期間ごとに料金の支払い情報を前記第3通信部に出力することを特徴とする機械システムが提供される。
【0015】
本発明の第五態様によれば、上記第三態様または第四態様において、前記起点が、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方のインストールタイミングであることを特徴とする機械システムが提供される。
【0016】
本発明の第六態様によれば、上記第三態様または第四態様において、前記起点が、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方の購入日であることを特徴とする機械システムが提供される。
【0017】
本発明の第七態様によれば、上記第一態様から第六態様のいずれかにおいて、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方の最新版数を記録する第2記憶部を更に具備し、前記ベースソフトウェアは、前記第2記憶部の内容を確認するプログラム部分である第4通信部を更に含み、前記ベースソフトウェアは、前記第2記憶部に記録される前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方の最新版数が、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方における現状の版数より進んだものである場合に、該最新版数を前記第1通信部に出力することを特徴とする機械システムが提供される。
【0018】
本発明の第八態様によれば、上記第四態様において、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方の最新版数を記録する第2記憶部を更に具備し、前記ベースソフトウェアは、前記第2記憶部の内容を確認するプログラム部分である第4通信部を更に含み、前記ベースソフトウェアは、前記第2記憶部に記録される前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方の最新版数が、前記ベースソフトウェア及び前記作業ソフトウェアの少なくともいずれか一方における現状の版数より進んだものである場合に、該最新版数を前記第3通信部に出力することを特徴とする機械システムが提供される。
【0019】
本発明の第九態様によれば、上記第一態様から第八態様のいずれかにおいて、前記第1機械情報及び前記第2機械情報の一部は、前記機械の使用時間、モータの電流値、振動値、発熱温度、及び音量の群から選択される少なくとも一つの情報であり、前記第1指示情報及び前記第2指示情報の一部は、前記機械に対する停止指示もしくは減速指示、及び警告表示の少なくともいずれか一方の情報であることを特徴とする機械システムが提供される。
【0020】
本発明の第十態様によれば、上記第一態様から第九態様のいずれかにおいて、前記第1機械情報の一部は、前記機械の位置情報であり、前記第2指示情報の一部は、前記機械の相対位置があらかじめ設定された距離以下となった場合に、動作優先順位下位の機械に対する停止指示によって機械同士の干渉を回避させるための前記機械の動作指示情報であることを特徴とする機械システムが提供される。
【0021】
本発明の第十一態様によれば、上記第一態様から第十態様のいずれかにおいて、前記第1機械情報の一部は、前記機械の作業受付情報及び作業完了情報であり、前記第2指示情報の一部は、あらかじめ前記機械に記憶された作業についての、内容の選択、作業順序、前記機械の起動、及び前記機械の停止のうちの少なくとも一つを含む作業指示情報であることを特徴とする機械システムが提供される。
【0022】
本発明の第十二態様によれば、上記第一態様から第十一態様のいずれかにおいて、前記第1機械情報の一部は、前記機械の作業対象物の状態を示す情報であり、前記第2指示情報の一部は、前記作業対象物の状態に応じて前記機械の動作を変えるための動作変更指示情報であることを特徴とする機械システムが提供される。
【0023】
本発明の第十三態様によれば、上記第一態様から第十二態様のいずれかにおいて、前記第1機械情報の一部は、前記機械の予定動作情報であり、前記第2指示情報の一部は、前記機械の予定動作が適切か、または不適切かを判断した結果であることを特徴とする機械システムが提供される。
【0024】
本発明の第十四態様によれば、上記第一態様から第十三態様のいずれかにおいて、前記機械がロボットであることを特徴とする機械システムが提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ベースソフトウェアと作業ソフトウェアと各機械との間で情報の受渡しを行うことにより各機械の作業動作を実行させつつ、その受渡し時の情報を記憶し管理することができる。例えば、それら情報の受渡しを認証記録情報に基づいて制限することができる。また、例えば、作業ソフトウェアまたはベースソフトウェアについての料金の支払い情報を取得して通信部に出力することもできる。
【0026】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態による機械システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は、一実施形態による機械システムの構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、本実施形態の機械システム10は、二つの機械11、12と、ベースソフトウェア13と、作業ソフトウェア14とを具備する。但し、図1においては、二つの機械11、12が図示されているが、本発明においては、少なくとも一つの機械が有ればよい。
【0030】
ベースソフトウェア13は、機械11、12の各々からベースソフトウェア13に入力される第1機械情報と機械11、12の各々に対してベースソフトウェア13から出力される第2指示情報との受渡しを行うプログラム部分である第1通信部15を含む。さらに、ベースソフトウェア13は、作業ソフトウェア14からベースソフトウェア13に入力される第1指示情報と作業ソフトウェア14に対してベースソフトウェア13から出力される第2機械情報との受渡しを行うプログラム部分である第2通信部16を含む。また、ベースソフトウェア13は、上記の第1機械情報、第2機械情報、第1指示情報、及び第2指示情報を記憶部17に記憶させるプログラム部分も含む。
【0031】
前述の機械11、12は、機械11、12の状態を上記の第1機械情報として第1通信部15に渡す機能、及び、第1通信部15から入力される上記の第2指示情報によって、それ以降の作業動作を決定する機能を有する。つまり、機械11、12は第2指示情報を受けると、該第2指示情報の内容に応じた作業動作を実行する。機械11、12は、例えば産業用ロボット、NC工作機械などである。また、各機械11、12はCPU、ROM、RAM、及び通信制御部(図示せず)を有しており、該通信制御部が第1通信部15との情報通信を制御している。
【0032】
さらに、前述の作業ソフトウェア14は、第2通信部16から入力される上記の第2機械情報を基に、機械11、12の各々への上記の第1指示情報を作成し、第2通信部16に渡す機能を有する。
【0033】
特に、本実施形態において、第1通信部15は、機械11、12の各々から機械11、12の各々の識別情報に関連付けてベースソフトウェア13に入力される第1機械情報と機械11、12の各々に対してベースソフトウェア13から出力される第2指示情報との受渡しを行うのが好ましい。さらに、上記の第2通信部16は、作業ソフトウェア14からベースソフトウェア13に機械11、12の各々の識別情報に関連付けて入力される第1指示情報と作業ソフトウェア14に対して機械11、12の各々の識別情報に関連付けてベースソフトウェア13から出力される第2機械情報との受渡しを行うのが好ましい。各機械11、12の識別情報は、例えば、機械毎に割当てられた管理番号である。
【0034】
さらに、記憶部17は、上記の第1機械情報、第2機械情報、第1指示情報、及び第2指示情報を機械11、12の各々の識別情報に関連付けて記憶するのが好ましい。
さらに、機械11、12は、機械11、12の状態を第1機械情報として機械11、12の各々の識別情報に関連付けて第1通信部15に渡し、また第1通信部15から入力される第2指示情報によって、それ以降の作業動作を決定するのが好ましい。
そして、作業ソフトウェア14は、第2通信部16から機械11、12の各々の識別情報に関連付けて入力される第2機械情報を基に、機械11、12の各々への第1指示情報を作成し、機械11、12の各々の識別情報に関連付けて第2通信部16に渡すのが好ましい。
【0035】
また、本実施形態の機械システム10において、機械11、12は、例えば製品を製造する工場に配置されている。これに対して、ベースソフトウェア13は、例えば、機械11、12が配置された工場の敷地にある別の建屋内の管理パソコンに搭載されている。この場合には、該管理パソコンと各機械11、12とは、イントラネット通信、例えばフィールドバス通信のネットワークを介して相互通信可能に接続されていることが好ましい。さらに、管理パソコンは、例えば、工場から遠隔地に在る事務所内の上位コンピュータ(図示せず)とインターネットのネットワークを介して相互通信可能に接続されていることが好ましい。上位コンピュータは、例えば、上記の事務所において複数の機械11、12による生産計画を作成し、それらの生産状況を管理する生産管理装置(Manufacturing Execution System:MES)である。
【0036】
作業ソフトウェア14は、コンピュータ読取り可能な可搬型記録媒体から公知のセットアッププログラム等を用いて前述の管理パソコンにインストールされていることが好ましい。可搬型記録媒体は、例えばCD−ROM(compact disk read only memory)、DVD−ROM(digital versatile disk read only memory)などである。
【0037】
さらに、本実施形態の機械システム10において、前述のベースソフトウェア13は、作業ソフトウェア14が適切であるか、または不適切であるかを判断するプログラム部分である判断部(図示せず)を更に含むのが好ましい。この場合、前述の作業ソフトウェア14は、作業ソフトウェア14の製造元情報と作業ソフトウェア14の検査結果に基づいた認証記録情報18を具備するのが好ましい。このような構成において、作業ソフトウェア14からベースソフトウェア13に入力される第1指示情報の一部は、認証記録情報18である。そして、ベースソフトウェア13は、上記の判断部が認証記録情報18を不適切と判断した場合には、第2通信部16による全ての通信を実行しないようにすることが好ましい。つまり、作業ソフトウェア14が未承認のものであるため、ベースソフトウェア13は、作業ソフトウェア14とベースソフトウェア13との間で機械情報や指示情報の受渡しを行わないようにする。
【0038】
また、ベースソフトウェア13及び作業ソフトウェア14の少なくともいずれか一方は、その一方のソフトウェア(13、14)について、起点からの使用期間を監視し、所定期間ごとに料金の支払い情報を第1通信部15に出力することが好ましい。ここでいう料金の支払い情報とは、例えば、ベースソフトウェア13や作業ソフトウェア14の使用期間に応じて料金を課した場合や、それらソフトウェアに対する情報の受渡し時の通信量に応じて料金を課した場合の、料金の支払済を示す情報である。
このような構成によれば、例えば、第1通信部15は、ベースソフトウェア13や作業ソフトウェア14についての料金の支払い情報を基に、各機械11、12に対する情報の受渡しを制御する、例えば通信の停止や減速を行うことができる。
なお、前述のように監視される起点は、例えば、ベースソフトウェア13及び作業ソフトウェア14の少なくともいずれか一方のインストールタイミングである。あるいは、そのような起点は、ベースソフトウェア13及び作業ソフトウェア14の少なくともいずれか一方の購入日であってもよい。
【0039】
さらに、ベースソフトウェア13は、図1に示されるように、表示機19などの外部機器と通信するためのプログラム部分である第3通信部20を更に含むことが好ましい。この構成においては、ベースソフトウェア13及び作業ソフトウェア14の少なくともいずれか一方は、その一方のソフトウェア(13、14)について、前述のような起点からの使用期間を監視し、所定期間ごとに料金の支払い情報を第3通信部20に出力するのが好ましい。
このような構成によれば、例えば、第3通信部20は、ベースソフトウェア13や作業ソフトウェア14についての料金の支払い情報を基に、料金未納の警告メッセージを表示機19に表示させることができる。
【0040】
また、前述のような機械システム10は、図1に示されるように、ベースソフトウェア13及び作業ソフトウェア14の少なくともいずれか一方の最新版数を記録する第2記憶部21を更に具備するのが好ましい。この構成においては、ベースソフトウェア13は、第2記憶部21の内容を確認するプログラム部分である第4通信部22を更に含むことが好ましい。さらに、ベースソフトウェア13は、第2記憶部21に記録されるベースソフトウェア13及び作業ソフトウェア14の少なくともいずれか一方の最新版数が、その一方のソフトウェア(13、14)における現状の版数より進んだものである場合に、その最新版数を第1通信部15または第3通信部20に出力するのが好ましい。
【0041】
以下に、ベースソフトウェア13の第1通信部15と機械11、12の各々との間で受渡される第1機械情報及び第2指示情報と、ベースソフトウェア13の第2通信部16と作業ソフトウェア14との間で受渡される第2機械情報及び第1指示情報とについて、具体例を示す。
【0042】
上記の第1機械情報及び第2機械情報の一部は、例えば、機械11、12の使用時間、モータの電流値、振動値、発熱温度、及び音量の群から選択される少なくとも一つの情報である。また、上記の第1指示情報及び第2指示情報の一部は、機械11、12に対する停止指示もしくは減速指示、及び警告表示の少なくともいずれか一方の情報である。これらの情報をベースソフトウェア13に対して受渡せることにより、ベースソフトウェア13は各機械11、12の異常を検知することができる。
【0043】
さらに、上記の第1機械情報は、機械11、12の位置情報を含んでいてもよい。この場合、上記の第2指示情報の一部は、機械11、12の相対位置が、あらかじめ設定された距離以下となった場合に、動作優先順位下位の機械に対する停止指示によって機械同士の干渉を回避させるための機械11、12の動作指示情報であるのが好ましい。これらの情報をベースソフトウェア13に対して受渡せることにより、ベースソフトウェア13は機械11、12同士の干渉を防ぐことができる。
【0044】
さらに、上記の第1機械情報は、機械11、12の作業受付情報及び作業完了情報を含んでいてもよい。この場合、上記の第2指示情報の一部が、あらかじめ機械11、12に記憶された作業についての、内容の選択、作業順序、機械11、12の起動、及び機械11、12の停止のうちの少なくとも一つを含む作業指示情報であるのが好ましい。このような情報をベースソフトウェア13に対して受渡せることにより、ベースソフトウェア13は各機械11、12での作業中の状態を管理することができる。
【0045】
さらに、上記の第1機械情報は、機械11、12の作業対象物の状態を示す情報を含んでいてもよい。この場合、上記の第2指示情報の一部は、それら作業対象物の状態に応じて機械11、12の動作を変えるための動作変更指示情報であるのが好ましい。このような情報をベースソフトウェア13に対して受渡せることにより、ベースソフトウェア13は、各機械11、12の作業対象物の状態に応じて各機械11、12の動作を是正、補完または検査することができる。
【0046】
さらに、上記の第1機械情報は、機械11、12の予定動作情報を含んでいてもよい。この場合、上記の第2指示情報の一部は、機械11、12の予定動作が適切か、または不適切かを判断した結果であるのが好ましい。このような情報をベースソフトウェア13に対して受渡せることにより、ベースソフトウェア13は、機械11、12の動作シミュレーションの結果を確認することができる。
【0047】
なお、各機械11、12は、工作機械やロボットに限られず、PLC(Programmable Logic Controller)、搬送機、計測器、試験装置、プレス機、圧入器、印刷機、ダイカストマシン、射出成型機、食品機械、包装機、溶接機、洗浄機、塗装機、組立装置、実装機、木工機械、シーリング装置又は切断機などであってもよい。
【0048】
また、前述の各記憶部17、21は、例えば、RAM(Random Access Memory)といったメモリ装置、ハードディスクといった固定ディスク装置、または、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、光ディスク装置、などである。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態の機械システム10によれば、ベースソフトウェア13と作業ソフトウェア14と各機械11、12との間で情報の受渡しを行うことにより各機械の作業動作を実行させつつ、その受渡し時の情報を記憶し管理することができる。例えば、それら情報の受渡しを、作業ソフトウェア14に含まれている認証記録情報に基づいて制限することができる。また、作業ソフトウェア14またはベースソフトウェア13についての料金の支払い情報を取得して第1通信部1や第3通信部20に出力することもできる。
【0050】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の実施形態に変更および種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【符号の説明】
【0051】
10 機械システム
11、12 機械
13 ベースソフトウェア
14 作業ソフトウェア
15 第1通信部
16 第2通信部
17 記憶部
18 認証記録情報
19 表示機
20 第3通信部
21 第2記憶部
22 第4通信部
【要約】
【課題】ベースソフトウェアと作業ソフトウェアと各機械との間での情報の受渡しとその管理を行える機械システムを提供する。
【解決手段】機械システム10は、二つの機械11、12と、これら機械と通信可能に接続されたコンピュータと、該コンピュータに搭載されるベースソフトウェア13及び作業ソフトウェア14と、を備える。ベースソフトウェア13は、機械11、12の各々からベースソフトウェア13に入力される第1機械情報と機械11、12の各々に対してベースソフトウェア13から出力される第2指示情報との受渡しを行うプログラム部分である第1通信部15と、作業ソフトウェア14からベースソフトウェア13に入力される第1指示情報と作業ソフトウェア14に対してベースソフトウェア13から出力される第2機械情報との受渡しを行うプログラム部分である第2通信部16とを含む。
【選択図】図1
図1