【実施例】
【0027】
本発明の実用的かつ現在好ましい実施形態を、以下の実施例に示すように説明する。
しかしながら、当業者が、本開示を考慮して、本発明の精神及び範囲内で改変及び改良を行い得ることは理解されるであろう。
【0028】
調製例1:
水溶性遊離アミンキトサンの調製1
ステップ1:キトサン多糖の調製
溶媒として乳酸を用いて5%キトサン溶液を調製した。この5%キトサン溶液100mL(pH 5.0〜5.5)にバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)BN-262に由来するキトサナーゼ5単位を添加し、40℃で36時間、酵素反応を行った。反応完了後、1μmのプレフィルターを用いて混合液をろ過し、次いでホロー(hollow)フィルター(分子量:20kDa)を用いて再度ろ過した。得られたろ液をナノフィルターシステムを用いて濃縮し、次いで滅菌し、噴霧乾燥器で乾燥させた。その結果、キトサン多糖が得られた。
【0029】
ステップ2:酸不含キトサン多糖の調製
得られたキトサン多糖を1LのPBS(pH 7.0)に溶解し、これに0.52Lのトリエチルアミンをゆっくり滴下した。この時点で、キトサンオリゴ糖のアミン基1当量がトリエチルアミン2当量と反応した。反応混合物を室温で2時間反応させ、これにアセトンを添加して撹拌した。次に遠心分離を行った。上記の手順を2〜3回繰り返し、風乾及び凍結乾燥して酸不含キトサン多糖を得た。この時点で、Supra 30Kを用いて4℃で15,000rpm、20分間の遠心分離を行った。
【0030】
ステップ3:水溶性遊離アミンキトサンの調製
ステップ2で調製したキトサン多糖に30mL〜50mLの0.001N HClを添加し、2時間反応させた。反応混合液にアセトンを添加し、撹拌後、上記と同じ条件で遠心分離した。上記の手順を2〜3回繰り返し、風乾及び凍結乾燥した。乾燥させた生成物を蒸留水に溶解し、活性炭/イオン交換樹脂カラムで精製した。得られた水溶液を凍結乾燥した。次いで生成物を水に溶解し、セルロースアセテートメンブレン(透過分子量:20kDa)でろ過した。その結果、分子量20kDaの水溶性遊離アミンキトサンが得られた。
【0031】
調製例2:
水溶性遊離アミンキトサンの調製2
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに100kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量100kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
【0032】
比較例1:水溶性遊離アミンキトサンの調製3
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに1kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量1kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
【0033】
比較例2:水溶性遊離アミンキトサンの調製4
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに3kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量3kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
【0034】
比較例3:水溶性遊離アミンキトサンの調製5
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに5kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量5kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
【0035】
比較例4:水溶性遊離アミンキトサンの調製6
調製例1のステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンの代わりに10kDaのセルロースアセテートメンブレンを使用する以外は調製例1の記載と同様にして、分子量10kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
【0036】
比較例5:水溶性遊離アミンキトサンの調製7
調製例1のステップ1の酵素反応及びステップ3の20kDa セルロースアセテートメンブレンを用いたろ過を実施しない以外は調製例1の記載と同様にして、分子量150kDaの水溶性遊離アミンキトサンを調製した。
【0037】
実験例1:水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性の評価1
本発明の水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性を評価するために、以下の実験を実施した。
韓国海洋微細藻類培養センター(Korea Marine Microalgae Culture Center)から分与されたミクロシスチス・アエルギノーザ、セネデスムス・オブリクウス、及びクロレラ・ブルガリスを、防緑藻活性の評価のためのアオコ形成藻類として使用した。藻類を、NaNO
3(15mg)、K
2HPO
4(40mg)、MgSO
4・7H
2O(75mg)、CaCl
2・2H
2O(36mg)、クエン酸(6mg)、クエン酸第二鉄アンモニウム(6mg)、EDTA(1mg)、NaCO
3(20mg)、H
3BO
3(2.86mg)、MnCl
2・4H
2O(1.81mg)、ZnSO
4・7H
2O(0.222mg)、CuSO
4・5H
2O(0.079mg)、及びCo(NO
3)
2・6H
2O(0.0494mg/1L)を添加したBG-11培地中で、22℃、3,000ルクス(14h/10hの明暗サイクル)で培養した。前培養した藻類細胞を2×10
5個/mL又は5×10
5個/mLの密度に希釈し、次いでこれを24ウェルマイクロタイタープレートに播種した。調製例1、調製例2、及び比較例1〜5で調製した水溶性遊離アミンキトサンを、それぞれ6.25(mg/mL)/ウェルの濃度から出発して1/2に順次希釈し、上記の株を播種したプレートに添加した。未処理の対照としては、水溶性遊離アミンキトサンを含有しないBG-11培地をウェルに添加した。上記の培養条件で2日間培養する間に、50%阻害濃度(以後IC
50とする)を決定するために、6時間毎に血球計で藻類集団を計数した。結果を表1に示す。
【表1】
表1に示すように、本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を示した。より正確には、分子量20kDa〜100kDaの本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、ミクロシスチス・アエルギノーザ、セネデスムス・オブリクウス、及びクロレラ・ブルガリス等のアオコ形成藻類に対して、分子量依存的に優れた防藻活性を示した。すなわち、分子量100kDaの水溶性遊離アミンキトサンの防藻活性は、0.024g/L以下のIC
50であることが示され、分子量20kDaの水溶性遊離アミンキトサンのアオコ形成藻類、特にクロレラ・ブルガリスに対する防藻活性は、0.049g/LのIC
50を有する程優れていた。一方、比較例5の分子量が100kDaを超えるキトサンは優れた防藻活性を示したのに対して、比較例1〜4で調製した分子量が20kDaより小さい水溶性遊離アミンキトサンは、クロレラ・ブルガリスを除き、分子量20kDa〜100kDaを有するキトサンと比較して、藻類に対する濃度を少なくとも2倍にして処理した場合に防藻活性を示した。従って、本発明の分子量20kDa〜100kDaを有する水溶性遊離アミンキトサンはアオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を有することが確認された。
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンはアオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの減少及びアオコ形成藻類の増殖阻害に有効であることが示唆される。従って、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用することができる。
【0038】
実験例2:水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性の評価2
本発明の水溶性遊離アミンキトサンの防緑藻活性を評価するために、以下の実験を実施した。
実験例1で使用したアオコ形成藻類を、NaNO
3(15mg)、K
2HPO
4(40mg)、MgSO
4・7H
2O(75mg)、CaCl
2・2H
2O(36mg)、クエン酸(6mg)、クエン酸第二鉄アンモニウム(6mg)、EDTA(1mg)、NaCO
3(20mg)、H
3BO
3(2.86mg)、MnCl
2・4H
2O(1.81mg)、ZnSO
4・7H
2O(0.222mg)、CuSO
4・5H
2O(0.079mg)、及びCo(NO
3)
2・6H
2O(0.0494mg/1L)を添加したBG-11培地中で培養した。培養した藻類を10
5個/mLの密度で24ウェルマイクロタイタープレートに播種し、これに調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンをウェル当たり12mg/mLの濃度で添加し、22℃で2時間培養した。未処理の対照としては、水溶性遊離アミンキトサンを含有しないBG-11培地をウェルに添加した。培養終了後、視覚化のために光学顕微鏡及び蛍光顕微鏡下で培養液を観察した。結果を
図1及び
図2に示す。
【0039】
図1及び
図2に示すように、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対して防藻活性を示した。緑藻類は、生きている場合は自身が蛍光を発するが、死んでいる場合は蛍光を発することができない。この事実に基づき、蛍光顕微鏡下での観察を行った。未処理の対照群の観察から、生物の数が維持され、その形態が変化していないことが確認された。しかしながら、藻類を調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンで処理した場合、藻類の数は未処理の対照群と比較して有意に減少し、集団の増大は全く観察されなかった。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンがアオコ形成藻類の死滅を引き起こし得ることが確認された。
【0040】
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンはアオコ形成藻類に対して優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの減少及びアオコ形成藻類の増殖阻害に有効であることが示唆される。従って水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用することができる。
【0041】
実験例3:淡水生物に対する細胞毒性の評価
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンの淡水生物に対する細胞毒性を評価するために、以下の実験を実施した。
まず、淡水に棲むコイから血液を採取した。凝固を防ぐためにヘパリンで血液を処理し、赤血球を分離した。分離した赤血球の密度を8%に調節し、調製例1及び2、比較例1〜5でそれぞれ調製した水溶性遊離アミンキトサンを10mg/mLの濃度から2倍ずつに希釈したもので処理した。2時間後、上清を分離し、遊離したヘモグロビンをマイクロプレートリーダーで測定して赤血球の溶血を計算した。結果を
図3に示す。
【0042】
図3に示すように、本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、淡水生物に対する細胞毒性を有さないことが確認された。より正確には、調製例1及び2で調製した水溶性遊離アミンキトサンは、その濃度に関わらず、5%未満の低い溶血率を示した。一方、比較例5で調製した100kDaを超える分子量を有する水溶性遊離アミンキトサンは、低濃度においても高い溶血率を示した。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、淡水生物に対する細胞毒性がなく、安全であることが確認された。
【0043】
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対する優れた防藻活性を有するだけでなく、淡水生物に対する細胞毒性を引き起こすことなく、安全であることも確認され、生態系にいかなる二次的な問題を引き起こすこともないため、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物が固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用できることが示された。
【0044】
実験例4:水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果の評価1
本発明の水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果を評価するために、以下の実験を実施した。
実験例1に記載したものと同じ培養条件で前培養したミクロシスチス・アエルギノーザ及びセネデスムス・オブリクウスを、少なくとも10
6個の細胞密度でTフラスコに入れ、調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサン24mg/Lで処理した。ヘモサイトメーターを使用してアオコ形成藻類の数を6時間毎に計数し、24時間後に水の濁度を観察した。この時点で、未処理対照として水溶性遊離アミンキトサンを含有しない培地を使用した。結果を
図4及び
図5に示す。
【0045】
図4及び
図5に示すように、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、ミクロシスチス・アエルギノーザ及びセネデスムス・オブリクウス等のアオコ形成藻類に対して防藻活性を有することが確認された。より正確には、水溶性遊離アミンキトサンで処理しなかった未処理群では懸濁液のような高い水の濁度を示し、ミクロシスチス・アエルギノーザ及びセネデスムス・オブリクウス等のアオコを生じる藻類の数が増大した。一方、本発明の水溶性遊離アミンキトサンで処理した場合、水の濁度が低下して水がより透明になり、死んだ藻類はフラスコの底に沈殿した。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンが、アオコを生じるこれらの藻類に対して防藻活性を有することが確認された。
【0046】
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対する優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの減少及びアオコ形成藻類の増殖阻害に有効であることが示唆される。従って、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用できる。
【0047】
実験例5:水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果の評価2
アオコが実際に増殖した淡水中での本発明の水溶性遊離アミンキトサンの緑藻除去効果を評価するために、以下の実験を実施した。
まず、アオコが顕著な池から採取した700Lの水を水浴中に移す。次いで、その中に本発明の調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサン60mg/mLを投入する。1〜12時間後、水浴中の水を観察し、写真撮影した。結果を
図6及び
図7に示す。
【0048】
図6及び
図7に示すように、本発明の水溶性遊離アミンキトサンは、実際に池での増殖過程にあったアオコを生じさせる藻類に対して優れた防藻活性を示した。より正確には、
図6に示すように、池の水を調製例2で調製した水溶性遊離アミンキトサンで処理すると、池でアオコを生じさせる藻類が処理1時間後に死滅し、沈殿した。
図7に示すように、池の水を水溶性遊離アミンキトサンで処理した12時間後には、アオコを生じさせていた藻類が全て死滅して沈殿し、その結果、水がより透明になり、濁度がより低くなったことが確認された。従って、本発明の水溶性遊離アミンキトサンが、アオコが増殖した淡水中の緑藻を除去するのに優れていることが確認された。
【0049】
本発明の分子量20kDa〜100kDaの水溶性遊離アミンキトサンは、アオコ形成藻類に対する優れた防藻活性を有することが確認され、アオコの低減及びアオコ形成藻類の増殖阻害において有効であり、またアオコが実際に発生している淡水中の緑藻の除去にも優れていることが示唆された。従って、水溶性遊離アミンキトサンを有効成分として含有する防緑藻組成物は、固化したダム、貯水池、湖、ゴルフコースのウォーター・ハザード、池、淡水の養魚場、及び釣り場を含む、淡水生態系に適用可能な安全な防緑藻組成物として効果的に使用できる。
【0050】
当業者は、上記記載中に開示された概念及び特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するための他の実施形態を改変又は設計するための基礎として容易に利用できることを理解するであろう。当業者はまた、そのような等価な実施形態が、添付した請求の範囲に示される本発明の精神及び範囲から逸脱するものではないことを理解するであろう。