(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140375
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】映像音声クリップを利用した自律的学習システム
(51)【国際特許分類】
G09B 5/06 20060101AFI20170522BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20170522BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20170522BHJP
【FI】
G09B5/06
G09B19/00 H
G06Q50/20
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-560937(P2016-560937)
(86)(22)【出願日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2016050707
(87)【国際公開番号】WO2016114261
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-4319(P2015-4319)
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 配布日:平成26年7月15日、配布場所:株式会社ジェネックスソリューションズ内(東京都港区1−27−6)、公開者:株式会社ジェネックスソリューションズ、配布した物の内容:高橋勇人が発明した「映像音声クリップを利用した自立的学習システム」について、同システムの概要説明書を配布して役務提供の申出を行った。他34件の証明書有り
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514032164
【氏名又は名称】株式会社ジェネックスソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇人
(72)【発明者】
【氏名】金田 喜人
(72)【発明者】
【氏名】田中 信行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 倫生
【審査官】
櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−101637(JP,A)
【文献】
特開2012−42503(JP,A)
【文献】
特開2007−65291(JP,A)
【文献】
特開2003−208083(JP,A)
【文献】
株式会社ジェネックスソリューションズ,多店舗・多業態展開型ビジネス向けサービスマネジメントツール「ClipLine」の提供を開始,[online],株式会社 PR TIMES,2014年10月 6日,PR TIMES, [2016年6月10日検索],URL,http://www.prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000011390.html
【文献】
タブレットでバイト教育,日経MJ,株式会社日本経済新聞社,2014年11月26日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 5/00− 7/12
19/00−19/26
G06Q50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習用の映像音声クリップを利用した自律的学習システムであって、
通信機能、学習用の映像音声クリップの再生機能及びユーザが当該映像音声クリップによって再生される動作に倣って行った動作を撮影・録音した成果物データの生成機能を有するユーザ端末と、
映像音声クリップデータを記憶する映像音声クリップデータベース、
前記映像音声クリップデータベースに記憶された映像音声クリップデータを前記ユーザ端末に配信する配信処理部、
前記ユーザ端末から送信される成果物データを受信する成果物受信部、及び
前記成果物データについて学習成果を評価し、所定水準の学習成果が達成されたと評価された成果物データを新たな学習用の映像音声クリップとして前記映像音声クリップデータベースに記憶する成果物評価部、
を有するコンテンツサーバと
から構成されることを特徴とする自律的学習システム。
【請求項2】
前記成果物評価部は、学習指導者に前記成果物データを視聴させて当該学習指導者から当該成果物データについての評価の入力を受け付けることで、学習成果の評価を行うことを特徴とする請求項1に記載の自律的学習システム。
【請求項3】
前記成果物評価部は、前記成果物データを所定の評価基準に基づいて自動的に評価することを特徴とする請求項1に記載の自律的学習システム。
【請求項4】
前記コンテンツサーバは、前記ユーザ端末から受信した成果物データのうち、所定水準の学習成果が達成されたと評価された成果物データを当該ユーザ端末以外のユーザ端末に対して公開することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自律的学習システム。
【請求項5】
前記コンテンツサーバは、前記ユーザ端末から受信した成果物データを当該ユーザ端末以外のユーザ端末に対して公開するとともに、当該成果物データに対する当該ユーザ端末以外のユーザ端末からの評価又はコメントの入力を受け付けることを特徴とする請求項1に記載の自律的学習システム。
【請求項6】
前記成果物評価部は、前記ユーザ端末から受信した成果物データについて、当該ユーザ端末以外のユーザ端末からの評価が所定水準をクリアしているか否かに基づいて、学習成果の評価を行うことを特徴とする請求項5に記載の自律的学習システム。
【請求項7】
前記映像音声クリップデータベースは、初期状態において映像音声クリップを記憶しておらず、前記ユーザ端末から送信される成果物データのうち前記成果物評価部によって所定水準の学習成果が達成されたと評価された成果物データのみが学習用の映像音声クリップとして前記映像音声クリップデータベースに蓄積されることを特徴とする請求項1に記載の自律的学習システム。
【請求項8】
前記コンテンツサーバは、ユーザの属性情報及び学習カリキュラム情報を記憶するユーザ情報データベースと、
前記学習カリキュラム情報に基づき、各ユーザへの映像音声クリップの配信及び各ユーザにおける学習の進捗状況を管理する進捗管理部とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自律的学習システム。
【請求項9】
前記ユーザ端末は、映像音声の撮影録音機能を内蔵し又は外部から利用可能であり、映像音声クリップに倣ってユーザが行う動作を撮影録音して成果物データを生成することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自律的学習システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステム上で映像音声クリップを教材として利用した学習システムに関し、特に、システム管理者による管理を伴わず自律的に教材コンテンツの発展・改良が行われる学習システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリップとは映像・音声コンテンツを構成する小単位の素材であって、通常数秒から数十秒の長さで一定のコンテンツを含むものを言う。本明細書において、映像・音声クリップとは、映像のみ、音声のみ及び映像及び音声からなるクリップを含むものとする。
【0003】
コンピュータネットワークの発展、コンピュータ機器・携帯端末の普及により、映像・音声コンテンツが様々な用途で個人的に手軽に利用されるようになっている。これに伴い、映像・音声コンテンツの制作側が映像・音声コンテンツを配信するのみならず、従来受け手であったインターネットユーザも自ら撮影・録音した映像・音声コンテンツを発信することが一般的となってきている。
【0004】
このような環境において、映像・音声コンテンツを学習教材として利用することが広く行われている。例えば、特許文献1に記載されているように、指導者側が学習教材である映像・音声コンテンツを学習者に配信し、学習者がこれを視聴して学習を行い、その結果を指導者側にフィードバックして指導者側が学習達成度を計測するほか、学習者が教材の良し悪しを評価するといったオンライン学習システムが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−6348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のオンライン学習システムでは、常に、教材配信側(指導者側)が教材コンテンツを制作して学習者に提供するという配信形態であり、さらに学習者からアウトプットされる学習成果やフィードバックを教材配信側(指導者側)が受け止め、処理して、学習者の評価や教材の改良に反映するという形態であったため、教材配信側(指導者側)すなわちシステム運営者においては膨大な人的・経済的リソースを負担しなければインタラクティブで効果的なオンライン学習システムが維持できない状況にあった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、教材配信側から一方的に学習者に対して教材を配信する形態ではなく、学習者からアウトプットされる学習成果コンテンツがそのまま他の学習者の教材コンテンツと化し、システム管理者による管理を伴わず自律的に教材コンテンツの発展・改良が行われるオンライン学習システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者らは、典型的には数秒から数十秒の長さで一定の意味合いを含む小単位の映像・音声コンテンツ素材(以下、「映像音声クリップ」という)を学習教材コンテンツとして用いるとともに、学習者自らに学習内容の履行の撮像・録音をさせた映像音声クリップを収集し、当該映像音声クリップを学習達成度などを測る材料として利用するのみならず、それ自体が学習教材コンテンツとして利用されるような仕組みを案出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、学習用の映像音声クリップを利用した自律的学習システムであって、通信機能、学習用の映像音声クリップの再生機能及び当該映像音声クリップに対する学習成果を示す映像音声クリップと同質である成果物データの生成機能を有するユーザ端末と、映像音声クリップデータを記憶する映像音声クリップデータベース、前記映像音声クリップデータベースに記憶された映像音声クリップデータを前記ユーザ端末に配信する配信処理部、前記ユーザ端末から送信される成果物データを受信する成果物受信部、及び前記成果物データについて学習成果を評価し、所定水準の学習成果が達成されたと評価された成果物データを新たな学習用の映像音声クリップとして前記映像音声クリップデータベースに記憶する成果物評価部を有するコンテンツサーバとから構成されることを特徴とする自律的学習システムを提供するものである。
【0010】
本発明の自律的学習システムにおいて、前記成果物評価部は、学習指導者に前記成果物データを視聴させて当該学習指導者から当該成果物データについての評価の入力を受け付けることで、学習成果の評価を行うことを特徴とする。
人手により成果物の評価を行うことにより、きめ細やかで総合的な評価をすることができる。
一方で、前記成果物評価部は、前記成果物データを所定の評価基準に基づいて自動的に評価することとしてもよい。
例えば、模範となる映像音声データとの比較分析や画像解析、音声解析といった手法を用いて自動評価を行うことができる。
【0011】
本発明の自律的学習システムにおいて、前記コンテンツサーバは、前記ユーザ端末から受信した成果物データのうち、所定水準の学習成果が達成されたと評価された成果物データを当該ユーザ端末以外のユーザ端末に対して公開することを特徴とする。
これにより、他ユーザのお手本となるべき映像音声クリップが公開されるため、ユーザは多数の教材へのアクセスが可能となる。
【0012】
本発明の自律的学習システムにおいて、前記コンテンツサーバは、前記ユーザ端末から受信した成果物データを当該ユーザ端末以外のユーザ端末に対して公開するとともに、当該成果物データに対する当該ユーザ端末以外のユーザ端末からの評価又はコメントの入力を受け付けることを特徴とする。
また、前記成果物評価部は、前記ユーザ端末から受信した成果物データについて、当該ユーザ端末以外のユーザ端末からの評価が所定水準をクリアしているか否かに基づいて、学習成果の評価を行うことを特徴とする。
これにより、人手による成果物の評価を行うことを要せずとも、自律的に学習成果の評価承認が行われ、ユーザの学習が進行するようになる。
【0013】
本発明の自律的学習システムにおいて、前記映像音声クリップデータベースは、初期状態において映像音声クリップを記憶しておらず、前記ユーザ端末から送信される成果物データのうち前記成果物評価部によって所定水準の学習成果が達成されたと評価された成果物データのみが学習用の映像音声クリップとして前記映像音声クリップデータベースに蓄積されることを特徴とする。
これにより、システム管理側又は学習指導側において、教材コンテンツである映像クリップを予め制作・提供することを要せずとも、学習者が自ら優良な教材コンテンツを生成し、これを再利用するという自律的な学習システムが構築される。
【0014】
本発明の自律的学習システムにおいて、前記コンテンツサーバは、ユーザの属性情報及び学習カリキュラム情報を記憶するユーザ情報データベースと、
前記学習カリキュラム情報に基づき、各ユーザへの映像音声クリップの配信及び各ユーザにおける学習の進捗状況を管理する進捗管理部とを有することを特徴とする。
また、前記ユーザ端末は、映像音声の撮影録音機能を内蔵し又は外部から利用可能であり、映像音声クリップに倣ってユーザが行う動作を撮影録音して成果物データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明によれば、教材配信側から一方的に学習者に対して教材を配信する形態ではなく、学習者からアウトプットされる学習成果コンテンツがそのまま他の学習者の教材コンテンツと化し、システム管理者による管理を伴わず自律的に教材コンテンツの発展・改良が行われるオンライン学習システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる映像クリップを利用した自律的学習システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる映像クリップを利用した自律的学習システムにおけるコンテンツサーバの内部構成を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムにおいて利用される映像クリップの画面表示例を示す図である。
【
図4】本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムの利用の流れを概略的に示したフロー図である。
【
図5】本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムにおいて映像クリップを利用した学習の画面表示例を示す図である。
【
図6】本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムにおいて映像クリップを利用した学習の画面表示例を示す図である。
【
図7】本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムにおいて映像クリップを利用した学習の画面表示例を示す図である。
【
図8】本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムにおいて映像クリップを利用した学習の画面表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の映像音声クリップを利用した自律的学習システムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1〜
図8は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0018】
映像クリップを利用した自律的学習システムの構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる映像クリップを利用した自律的学習システムの概要を示す図である。以下では、もっぱら映像クリップ(映像及び音声からなるコンテンツ)について説明するが、映像のみで音声を含まないクリップや音声のみのクリップについても同様に適用されるべき技術思想である。
【0019】
図1において、本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムは、学習教材としての映像クリップを記憶し、当該映像クリップについての情報処理及び配信処理を行うコンテンツサーバと、コンテンツサーバを管理・操作するための管理者端末と、コンテンツサーバから学習教材としての映像クリップの配信を受け、利用し、コンテンツサーバに対してフィードバックを行う複数のユーザ端末と、ユーザ(学習者)の学習指導者が利用するクライアント端末とから構成される。ユーザ端末は、据え置き型PC、ノートPC、スマートフォンやタブレットPC等の携帯端末、その他あらゆる種類の通信可能かつ映像クリップが再生可能なコンピュータ装置である。図示するように、コンテンツサーバ、管理者端末、ユーザ端末、クライアント端末はそれぞれネットワークを通じて通信可能となっている。
【0020】
図2は、
図1に示すコンテンツサーバの内部構成を概略的に示す図である。
図2において、コンテンツサーバは、映像クリップデータ等を記憶する映像クリップデータベース、ユーザ情報を記憶するユーザ情報データベース、映像クリップデータベースに映像クリップの登録・編集処理を行う映像クリップ編集部、ユーザ情報データベースにユーザ情報の登録処理を行うユーザ情報編集部、映像クリップデータベースに記憶された映像クリップの配信処理を行う配信処理部、配信された映像クリップによる学習の進捗状況を管理する進捗管理部、配信された映像クリップによる学習の成果物を受信する成果物受信部、受信した学習の成果物の評価処理を行う成果物評価部、受信した学習の成果物をユーザ端末及びクライアント端末に閲覧させる成果物公開部を有している。
ユーザ端末は、配信された映像クリップを再生する機能を有しており、また、映像・音声を記録(撮影・録音)する撮影手段を内臓し又は外部に有している。
【0021】
映像クリップデータベースは、学習用の映像クリップデータ及びそれに付随する情報(例えば、制作者、コンテンツの種類・用途、配信対象者、評価者、達成度測定法等)を記憶している。
ユーザ情報データベースは、
図1においてユーザ端末を利用する学習者及びクライアント端末を利用する学習指導者に関する情報を記憶している。学習者に関しては、各人の学習内容・カリキュラム・進捗・達成度等の情報を記憶しており、学習指導者に関しては、指導の権限・対象・指導履歴等を記憶している。
【0022】
映像クリップ編集部は、管理者端末、クライアント端末等から操作を受け付けて、映像クリップデータ及び付随情報を映像クリップデータベースに登録する。あるいは、ユーザ端末から映像クリップを登録する。
ユーザ情報編集部は、管理者端末、クライアント端末等から操作を受け付けて、ユーザ端末を利用する学習者及びクライアント端末を利用する学習指導者に関する情報をユーザ情報データベースに登録する。あるいは、ユーザ端末から学習者に関する情報を登録できる構成としてもよい。
【0023】
配信処理部は、映像クリップデータベースに記憶された各々の映像クリップについて、ユーザ(学習者)端末に対する配信処理を行う。この配信処理は、映像クリップデータベースに記憶された映像クリップの付随情報及びユーザ情報データベースに記憶された情報から把握される所定の学習カリキュラムに基づき、各々のユーザにとって適切な内容・タイミング・分量・配信形式にて配信されるものとする(アダプティブラーニング)。
進捗管理部は、各々の学習者について、ユーザ端末に配信された映像クリップによる学習の進捗状況に関する情報を管理する。この進捗管理は、映像クリップデータベースに記憶された映像クリップの付随情報及びユーザ情報データベースに記憶された情報から把握される所定の学習カリキュラム、並びにユーザ端末からの当該映像クリップによる学習成果物その他の情報(学習できなかった、学習しなかった等)の受領によって把握されるものとする。
また、進捗管理部は、ユーザ端末に対して、そのユーザが現在行うべき学習内容を例えばToDoリストなどの形式で表示するようにしてもよい。
【0024】
成果物受信部は、映像クリップが配信された学習者による成果物として、当該学習者の動作等を撮影した映像クリップをユーザ端末から受信する。
成果物評価部は、所定の評価基準又は評価方法に基づき、ユーザ端末から受信した映像クリップに表れる当該学習者の成果物について評価を行う。ここで、学習成果物である学習者の動作等を撮影した映像クリップの評価は、例えば基準となる映像クリップ(当該学習者に配信したものでも別途用意されたものでもよい)との差異を分析することにより自動的にする評価方法でもよい(客観的評価)。あるいは、成果物公開部により、学習成果物である学習者の動作等を撮影した映像クリップをクライアント端末又はユーザ端末を学習指導者又は他の学習者に閲覧させ、評価をさせることとしてもよい(主観的評価)。
【0025】
図3は、本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムにおいて利用される映像クリップの画面表示例を示す図である。
図示するように、ユーザ端末の表示装置上において、配信された映像クリップを再生して視聴することができる。また、映像クリップの付随情報も表示することができる。映像クリップはユーザ端末内に保存されて何度も視聴できるようにしてもよいし、都度コンテンツサーバから取得して視聴するようにしてもよい。
【0026】
映像音声クリップを利用した自律的学習システムの利用形態
本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムは、小単位・短時間の映像を利用したあらゆる種類の学習に適用することができる。例えば、接客動作の学習、スピーチの学習、語学の学習など人の動作が関係する様々な学習に適用することが考えられる。
ここで、
図1に示す管理者端末は、本システムの管理者がコンテンツサーバ等を操作・管理するための端末であり、クライアント端末は、ユーザ(学習者)の学習指導者が映像クリップの登録・編集や配信内容の割り当て、学習の進捗管理、成果物の評価・承認、成果物の再利用の管理などを行うための端末である。
【0027】
図4は、本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムの利用の流れを概略的に示したフロー図である。
図4において、まず、本システムの管理者又はユーザ(学習者)の学習指導者は、管理者端末又はクライアント端末からコンテンツサーバにアクセスし、ユーザ情報編集部によって、学習者であるユーザの属性情報などをユーザ情報データベースに登録し、これを適宜編集する。
また、本システムの管理者又はユーザの学習指導者は、管理者端末又はクライアント端末からコンテンツサーバにアクセスし、映像クリップ編集部によって、教材コンテンツである映像クリップ及び付随情報を映像クリップデータベースに登録し、これを適宜編集する。
【0028】
さらに、本システムの管理者又はユーザの学習指導者は、管理者端末又はクライアント端末からコンテンツサーバにアクセスし、どのユーザにどの映像クリップをどのように配信するかという学習カリキュラムを設定することもできる。このように設定された学習カリキュラムについては、コンテンツサーバの配信処理部及び進捗管理部によって配信から成果確認までの情報が管理される。
【0029】
続いて、管理者端末又はクライアント端末からの操作によって、あるいはユーザ自らのユーザ端末による操作によって、映像クリップデータベースに登録された映像クリップがユーザ端末に配信され、あるいは取得される。
ユーザは、ユーザ端末上で映像クリップを再生し、学習を行う。このとき、映像クリップは、例えば
図3に示すような形態でユーザ端末上に再生される。学習を行った後、学習成果を示すための成果物を生成する。ここで言う成果物は、ユーザが映像クリップによって再生される動作に倣って行った動作を撮影・録音したものである。すなわち、成果物もまた映像クリップである。ここで、例えば
図5に示すように、教材コンテンツである映像クリップと自らの動作を撮影・録音した成果物とを同時並列的に再生することで、学習効果を高めることも可能である。
尚、学習用の映像音声クリップには、(1)学習者に対して動作の説明・デモンストレーションを行うクリップ、(2)学習者に対して動作の見本を示し模倣させるクリップ、(3)学習者に対して質問をして答えさせるクリップなどがある。(1)については説明等を理解した旨を示す成果物、(2)については動作を模倣した様子を撮影・録音した成果物、(3)については質問に対する回答を撮影・録音した成果物がそれぞれ対応する。
【0030】
ユーザは、生成した成果物をユーザ端末からコンテンツサーバの成果物受信部に対してアップロードする。
コンテンツサーバにアップロードされた成果物は、成果物評価部により、所定水準の学習成果が達成されているか否か評価される。この評価は、教材である映像クリップとの差異を検出して自動的に行うものであってもよいが、学習指導者による視認によって行うこともできる。この場合、学習指導者は、コンテンツサーバから取得した成果物をクライアント端末上で再生し、当該成果物に対して評価ないしは承認・不承認の判定を付することとなる。
学習指導者による評価を行う場合、例えば
図6に示すように、ユーザと学習指導者とでコメントを交換し合うインタラクティブな評価方法を採用することで、よりユーザの学習効果やモチベーションが向上することが期待される。
【0031】
上記のようにして所定水準の学習成果の達成が認められた成果物は、承認された成果物として映像クリップデータベースに登録される。この承認された成果物は、そのまま他ユーザの学習教材となり得るものであり、映像クリップデータベースに予め登録されていた映像クリップとともに、他ユーザへの配信の対象となる。
【0032】
このように、本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムでは、ユーザが学習指導者に対して学習成果を示すために生成する成果物それ自体が映像クリップであることから、所定水準の学習成果の達成が認められた成果物たる映像クリップが新たな教材コンテンツとして得られる、すなわち、システム管理者や学習指導者が何らの作業を行うことを要せずして、教材が教材を生み出すという極めて新規で特徴的な自律的学習システムが提供されることとなる(
図4のフロー図中A)。
【0033】
さらに、本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムでは、コンテンツサーバの成果物公開部により、所定水準の学習成果の達成が認められた成果物たる映像クリップをユーザに公開する機能を有している。その画面表示例を
図7及び
図8に示す。これにより、ユーザは、自らが学習しようとする教材コンテンツに関して、システム管理者又は学習指導者側から提供された映像クリップのみならず他ユーザが生成した成果物たる映像クリップからも選択することが可能となり、利便性が高まるばかりか、システム管理者又は学習指導者側の教材コンテンツ制作の負担も軽減されることとなる(
図4のフロー図中B)。
【0034】
また、コンテンツサーバの成果物公開部により公開されるユーザが生成した成果物たる映像クリップに対して、他ユーザからのコメント記入や評価入力ができるようになっている。これにより、ユーザ同士が学習の成果を分かち合い競い合う雰囲気が生まれ、学習効果やモチベーションの向上が図られる。
さらには、ユーザが生成した成果物の評価・承認プロセスの一部又は全部を、他ユーザからの評価に委ねるようにすることもできる。これにより、システム管理者又は学習指導者側の評価・承認の作業負担が軽減されることとなる(
図4のフロー図中C)。成果物の評価・承認プロセスの全部をユーザ同士の相互評価に委ねることとすれば、学習指導者が学習者に指導を行わなくとも、学習者ら自らが自律的に学習を継続的に行うことができるシステムとなる。
【0035】
本発明の映像クリップを利用した自律的学習システムの更なる応用形態として、映像クリップデータベースは初期状態において一切の映像クリップを記憶していない形態、すなわちシステム管理側又は学習指導側において教材コンテンツである映像クリップを予め制作・提供することを一切行わない形態をとることも可能である。
この場合、システム管理側又は学習指導側は、初期状態において、教材コンテンツである映像クリップの雛型のみを提示する。例えば、「○○の動作、10秒」といった情報のみを与えると、ユーザは当該動作を行い、それを撮像録音した成果物である映像クリップを生成し、コンテンツサーバにアップロードする。この成果物が学習指導者による評価又はユーザによる相互評価により所定水準の学習成果を達成しているものと評価されれば、それが学習用の映像クリップとして映像クリップデータベースに蓄積されることとなる。すなわち、本システムでは、教材コンテンツである映像クリップの雛型のみを与えておけば、学習者であるユーザが自ら優良な教材コンテンツを生成し、これを他のユーザの学習の利用に供することでさらに教材コンテンツが増加するという極めて自律性の高い学習システムが構築されることとなる。
【0036】
以上、本発明の映像音声クリップを利用した自律的学習システムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態における各種サーバコンピュータの構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
図1〜
図8等に示すように、本発明の映像音声クリップを利用した自律的学習システムは、これを構成するコンテンツサーバ、クライアント端末、ユーザ端末、管理者端末といったコンピュータ群のCPU、メモリ、補助記憶装置、ディスプレイ、入力デバイス等を含むハードウェア資源上に構築されたOS、アプリケーションソフトウェア、データベース、ネットワークシステム等によって実現されるものである。
【0038】
そして、映像音声クリップを利用して学習者が生成した成果物である映像音声クリップのうち所定基準をクリアすると判定されたものを学習コンテンツたる映像音声クリップとして再利用するという情報処理が上記のハードウェア資源を用いて具体的に実現されるものであるから、自然法則を利用した技術的思想に該当するものであり、産業上利用することができるものである。