特許第6140388号(P6140388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140388
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】シート及びこれを用いた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A61F13/511 100
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-269380(P2011-269380)
(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2013-119012(P2013-119012A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮村 猛史
(72)【発明者】
【氏名】内山 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5242632(US,A)
【文献】 特開2009−155741(JP,A)
【文献】 実開平5−5119(JP,U)
【文献】 特開2009−61026(JP,A)
【文献】 特開2012−136791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを平面視した側の第1面側に突出し内部空間を有する第1突出部と、前記第1面側とは反対側の第2面側に突出し内部空間を有する第2突出部とを有し、前記第1突出部及び第2突出部は、該シートの平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に壁部を介し連続してシート平面方向に広がって配され、
前記第1突出部の内部空間は第2面側に開放され、前記第2突出部の内部空間は第1面側に開放されており、
前記第1突出部の頂部から第2突出部の頂部へと繋がる前記壁部には、前記第2突出部の内部空間へ向けて括れた部分を有し、
前記壁部は、前記シートの平面方向の実質的にいずれの箇所においても、前記第1突出部と第2突出部とを結ぶ方向に沿った繊維配向性を有するシート。
【請求項2】
シート厚み方向への加圧によって、前記括れ部分のシート材が折り重なって積層厚み部となる請求項1記載のシート。
【請求項3】
0.5gf/cmの圧力でシート厚み方向に面状に加圧したときのシート厚み(T0.5)と、50gf/cmの圧力でシート厚み方向に面状に加圧したときのシート厚み(T50)との比(T0.5/T50)が2.5〜10.0である請求項1又は2記載のシート。
【請求項4】
前記括れ部分が、前記第2突出部の内部空間を介して対向する2か所にある請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート。
【請求項5】
前記第2突出部の内部空間はその平面視において長軸及び短軸を有する環形状であり、前記第2突出部の壁部の短軸方向に前記括れ部分が対をなして配されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項6】
前記シートが不織布からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート。
【請求項7】
前記括れた部分が筋状に形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のシートを、前記第2面側を非肌当接面側に向けて、表面材として適用した吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は突起のあるシート及びこれを用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティーライナー、及び使い捨ておむつ等といった吸収性物品において、その機能に応じて、シート材の片面に突出した部分を設けたものや、筋状に隆起した部分を設けたもの、多数の孔をあけたものなどが開発されている。例えば特許文献1には、シート材の片面に筋状に延びる突出部があり、その断面がかまぼこ(略半円)形状にされた積層シートが開示されている。これにより、例えばクッション性のある表面シートとして用いることができるとされる。特許文献2には、圧縮回復率が高いシートとして、シートの片面側に突出した円錐台状の突出部をエンボスによって多数設けたシートが開示されている。特許文献3には、実質的に伸縮しない2層のシート状物からなるシートであって、上層のシート状物が多数の直方体状の凸部を有するものとされ、上層の凸部と下層との間が空洞となっている吸収性物品の表面シートが開示されている。このシートにより、凸部内の閉じた空洞部分に液を捕捉できて液漏れ防止や隠蔽性が良化するとされる。
【0003】
【特許文献1】特開2008−25081号公報
【特許文献2】特開2001−20168号公報
【特許文献3】特開2004−174234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上述のようなものとは異なる形態を探求し、従来とは異なる性質やより良化した機能を付与しうるシートを提供することを目的に鋭意研究開発を行った。具体的には、シート材の片面側のみではなく、表裏両面に突出した部分を有する連続したシートの作製とその性質・機能を検討した。
したがって、本発明は、クッション性及び変形性に優れ、通気性が良好なシートの提供を課題とする。また本発明は、前記シートを用いて排泄物の捕集性に優れた吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シートを平面視した側の第1面側に突出し内部空間を有する第1突出部と、前記第1面側とは反対側の第2面側に突出し内部空間を有する第2突出部とを有し、前記第1突出部及び第2突出部は、該シートの平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に壁部を介し連続してシート平面方向に広がって配され、前記第1突出部の内部空間は第2面側に開放され、前記第2突出部の内部空間は第1面側に開放されており、前記第1突出部の頂部から第2突出部の頂部へと繋がる前記壁部には、前記第2突出部の内部空間へ向けて括れた部分を有するシートにより上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシートは、クッション性及び変形性に優れ、通気性が良好なものとなる。また本発明の吸収性物品は、前記シートを用いて排泄物の捕集性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態としてのシートを一部断面により模式的に示す斜視図である。
図2図1のシートにおける領域IIを拡大して示す断面図である。
図3図1のシートにおけるIII−III線断面を拡大して示す断面図である。
図4図1のシートにおけるIV−IV線断面を拡大して示す断面図である。
図5】本実施形態のシートの断面を撮像した図面代用写真である。
図6】第2突出部及びその内部空間について厚み方向断面を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
図7】第2突出部の外面を拡大して模式的に示す説明図である。
図8】本実施形態のシートを押圧して括れ部が積層厚み部となった様子を模式的に示す説明図である。
図9】第1突出部と第2突出部との関係を平面視により模式的に示す説明図である。
図10】本実施形態のシートを押圧したときの様子を模式化して示す説明図である。
図11】長軸及び短軸のある楕円平面形状を有する第2突出部を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は断面側面図である。
図12図9の一部を拡大して示す説明図である。
図13】壁部の繊維配向の状態を展開して模式的に示す説明図である。
図14】第2突出部の繊維配向の状態を平面視により模式的に示す説明図である。
図15】本発明の一実施形態のおむつを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明の好ましい実施形態としてのシートの要部を模式的に示す一部断面斜視図である。図2図1のシートにおける領域IIを拡大して示し、図3及び図4はそれぞれそのIII−III線断面及びIV−IV線断面を示す拡大断面図である。このシート10は例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品のシート部材として適用することが好ましく、第1面側z図2参照)を着用者の肌面側に向けて用い、第2面側zを物品内部の吸収体(図示せず)側に配置して用いることが好ましい。以下、上記図面に示した不織布10の上記のとおり第1面側を着用者の肌面に向けて用いる実施態様を考慮して説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0009】
本実施形態のシート10は、図1に示すように、シート10を平面視した第1面側には、多数の第1突出部1が縦横の2つの方向に面内で斜交する関係で延び配列されている(以下、この配列を斜交格子状配列ということがある。)。この格子状配列が直交(90°)する関係でもよく、そのときには直交格子状の配列として区別していうことがある。本実施形態においては、その面内における第1方向(x)と第2方向(y)が、30°〜90°の角度で交差していることが好ましい。さらにシート10には、前記第1面側と反対側の第2面側に突出する多数の第2突出部2が形成されている。この第2突出部2も斜交格子状配列になっているが、直交格子状配列であってよい。その交差角度の好ましい範囲は、第1突出部1に伴って定まるため、上記と同様である。この第1突出部1と第2突出部2とは、シート面に対して互いに反対方向に突出している。
【0010】
そして第1突出部1と第2突出2とは、シート10の平面視交差する異なる方向のそれぞれに交互に壁部3を介し連続して面方向に広がるよう配されている。図1においては、s方向及びs方向に第1突出部1と第2突出2とが交互にシート平面方向に連続的に配列されている。さらに平面視のみならず側面視においても第1突出部及び第2突出2が同一位置にない、つまり重なりのない関係で両者が交互に配置するようにされている(図2参照)。
上記のようにして面内の第1方向(x方向)及び第2方向(y方向)にそれぞれ延び配列された第1突出部1と第2突出部2とは、シート平面方向に矛盾無く連続し、シート10を構成している。ここで、矛盾無く連続するとは、特定の形状部分が連なって面状になるとき、屈折したり不連続になったりせず、緩やかな曲面で全体が連続した状態になることをいう。
【0011】
前記「連続」とは、シートの素材が実質的に断絶することなくシートの面状が形成されていることであり、例えば、断続した部分やシート素材を部分的に欠いた孔領域がないことを意味する。ただし、繊維間細孔のような微細孔は前記孔領域には含まれない。これを区別していうときには、例えば孔領域をその円相当直径で1mm以上のものと定義することができる。上記の「連続」の語には、積層シートであることも含まれるが、本実施形態においては積層していない単層のシートをその好ましい実施形態として示している。また、この「連続」という語の意味を、不織布の第1面側zの面と第2面側zの面とが実質的に連なっていると表現することもできる。ここでの実質的に連なるとは、上記のとおりに、本発明の効果を損なわない範囲で孔を有さずそれより小さな微細孔を有していてもよい意味である。
【0012】
本発明のシートにおいて、第1突出部と第2突出部との配列形態は上記に限定されず、矛盾無く連続しうる配列で配置しうる形態であればよく、例えば、第1突出部を中心に6角形の頂点に6つの第2突出部が配置し、そのパターンが面内に広がる配列であってもよい。なお、この場合、第2突出部の数が第1突出部の数を上回るため、第2突出部同士が隣接する状態が生じるが、全体において連続したシート状態が構成される限りにおいて、このような形態の配列も第1突出部と第2突出部とが「交互」に配列したという意味に含まれる。
【0013】
本実施形態において第1突出部1及び第2突出部2は頂部11及び21に丸みをもった円錐台形状もしくは半球状にされている。より詳細にみれば、第1突出部1の突出形状は尖鋭ではなくどちらかというと半球状であり、他方、第2突出部2の突出形状はより尖鋭であり頂部21に丸みのある円錐ないし円錐台形状になっている。なお、本実施形態において突出部は上記形状に限定されず、どのような突出形態でもよく、例えば、様々な錐体形状(本明細書において錐体形状とは、円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等を含む意味である。)であることが実際的である。
【0014】
第1突出部1及び第2突出部2には、その外径と相似する頂部に丸みのある円錐台形状もしくは半球状の内部空間18、28を保持している。第1突出部1の内部空間18は第2面側に開放され、第2突出部2の内部空間28は第1面側に開放されている。また、それぞれの内部空間18及び28は、尾根部6を介して隔てられており実質的に連続しない空間として形成されている(図2参照)。
他方、第1突出部1と第2突出部2のシート厚み方向における間には、壁部3が構成されており、この壁部3ないし上記尾根部6を介して両突出部が連続するシート構造とされている。壁部3は第1突出部1と第2突出部2とを繋ぐ部分である。壁部3は、両突出部とは明確に領域区別されるものではなく、両突出部それぞれの頂部11及び21から伸びる裾野部分である。つまり壁部3は、両突出部の共有部分であり両突出部の一部である。また壁部3は、第1突出部1の内部空間18とこれに隣接する第2突出部の内部空間28とを隔てる部分であり、両内部空間の外縁をなす部分でもある。
【0015】
シート10において、第2突出部2を形成する壁部3には、図5に示すように、第2突出部2の内部空間28へ向けて括れた部分(以後、括れ部7という。)が形成されている。図5は、本実施形態のシート10の断面を撮像した図面代用写真である。図5では、括れ部7の配置領域を一点鎖線で示し符号7を付している。図5に示すように、括れ部7は、少なくとも2箇所に対をなして形成されていることが好ましい。つまり一対の括れ部7は、文字どおり、第2突出部2の断面放物線の幅(A)に対して幅狭(B)にされた部分である。第2突出部2の幅(B)は、一対の括れ部7,7が最も接近した位置でのその内壁の距離であり、幅(A)は、括れ部7付近及びその下方で壁部3同士の幅が最も広い部分の内壁間の距離である。
括れ部7の幅狭に関して、例えば図6に示すような形態が挙げられる。図6は、第2突出部2及びその内部空間28について厚み方向断面を拡大して模式的に示す拡大断面図である。図6(a)では第2突出部2の断面形状が放物線状であり、第2突出部の幅(A)に対して括れ部7が幅狭(B)とされている。図6(b)では頂部21付近が膨らんだ形状であり、第2突出部の幅(A)に対して括れ部7が幅狭(B)とされている。図6(c)では頂部21付近が上方よりも小さくされ形状であり、第2突出部の幅(A)に対して括れ部7が幅狭(B)とされている。各断面幅の比率(B/A)は、0.2〜0.9が好ましく、0.4〜0.8がさらに好ましい。通液性の観点から0.2以上が好ましく、また、クッション性の観点から0.8以下が好ましい。
【0016】
この幅(A)及び(B)の関係について別の視点からいえば、一対の括れ部7を通る第2突出部2のシート厚み(T)断面において、第2突出部2の頂部21周辺の曲率に基づく曲線uよりも括れ部7が内側に配される関係と定義される。つまり曲線uがなす幅よりも括れ部7が幅狭として定義される。前記曲線uがなす幅は、前述の括れ部7の幅狭(B)の高さ位置における幅である(図6参照)。この定義の例として図6を参照すれば、図6(a)では、曲線uが第2突出部2全体の形状と一致し、その壁部3の幅(A11)に対して括れ部7が幅狭(B)とされている。図6(b)では、曲線uの幅が頂部11から延びる壁部の幅よりも広くされている。つまり、第2突出部2の内部空間28の頂部21付近が大きくされた巾着形状である。この例では、曲線uの幅(A21)に対して括れ部が幅狭(B)とされている。図6(c)では、曲線uの幅が頂部11から延びる壁部の幅よりも狭くされている。この例では、曲線uの幅(A31)に対して括れ部が幅狭(B)とされている。
以上の例にあるように、第2突出部2の内部空間28の頂部21周辺の空間広さに対して、その上部で内部空間28が搾られるように括れ部7が配置されていることが好ましい。この観点から、図6(a)の比率(B/A11)及び図6(c)の比率(B/A31)は、0.15〜0.85が好ましく、0.3〜0.75がさらに好ましい。図6(b)の比率(B/A21)は、0.1〜0.8が好ましく、0.25〜0.7がさらに好ましい。通液性の観点から0.15以上が好ましく、また、クッション性の観点から0.85以下がさらに好ましい。
【0017】
括れ部7は、第1突出部1の頂部11と第2突出部2の頂部21とを結ぶ壁部3において、シート厚み(T)に対して任意の高さに配することができる。その中でも下記3区分の定義において、括れ部7は、領域PからPの上部寄りの範囲に、または頂部21の曲率が変化する領域p’と領域p’との境界に配されることが好ましい(図2参照)。また下記2区分の定義において、括れ部7は、中央線(中央面)m又はm’よりも半身厚みt側に、括れ部7が配されることが好ましい(図2参照)。
より具体的には、括れ部7の頂部21からの高さ(T)のシート厚み(T)に対する比率(T/T)は、0.1〜0.9が好ましく、0.2〜0.8が好ましい。クッション性の観点から0.1以上が好ましく、また、クッション性や肌触りの観点から0.9以下が好ましい。
【0018】
(壁部3の3区分)
3区分は、典型的には壁部3をシート厚み(T)の3等分(P=P=P)として定義される。あるいは、図6(b)のように第1突出部1と第2突出部2との頂部の尖度ないし曲率が異なるときには、壁部3は、断面において直線状になった比較的狭い部分の領域P’と、そこから湾曲し丸みを帯びいく領域をそれぞれP、P’として区分することもできる。つまり、第2突出部頂部2の頂部21の曲率半径が第1突出部頂部1の頂部11の曲率半径より大きくされている(曲率が小さい)。この後者の区分は、図6(c)においても適用でき、第2突出部頂部2の頂部21の曲率半径が第1突出部頂部1の頂部11の曲率半径より小さくされている(曲率が大きい)。
【0019】
(壁部3の2区分)
壁部3を第1面側の半身厚み(t)及び第2面側の半身厚み(t)も上記と同様であり、基本的には、シート厚み(T)を2等分した線を中央線(中央面)mとし、両半身厚み(t,t)が等しいものとしてみる。あるいは、第1突出部1と第2突出部2との頂部における尖度もしくは曲率半径に差がある場合には、壁部の断面直線状部分の中央と評価される位置m’で区分し定義することができる。図6(c)の例では、後者の定義によるならば、第1面側の半身厚みt<第2面側の半身厚みtとされている。
【0020】
次に括れ部7の壁面3表面における好ましい形状について説明する。
括れ部7は、壁部3表面の周方向の一部にあってもよく、全周にあってもよい。一部にある場合は、少なくとも内部空間28を介して対向する2か所にあることが好ましい。
括れ部7,7が対をなして配される場合、各括れ部7は、第2突出部2をなす壁部3の曲面において、図7(a)及び(b)に示すように所定の幅に筋状に形成されたものであってもよく、図7(c)に示すように点状に形成されたものであってもよい。なお図7(a)では括れ部7が壁部3外周の半円周長さに近似するがそれよりも短くされており、図7(b)では前記(a)のものよりも短い括れ部7とされている。シート10において、後述のクッション性や括れ部7のばね性による変形性の付与の観点から、図7(a)や(b)のように所定幅に筋状に括れが形成されていることが好ましい。この所定幅に関して、括れ部7が配される高さ位置の第2突出部2の外周の半円周長さを(C)とし、括れ部7の括れ筋の周長さを(D)としたとき、これらの比率(D/C)は、クッション性等の観点から0.2〜0.9が好ましく、0.3〜0.8がさらに好ましい。
【0021】
ここで上述したシート10の基本構造に基づく作用について説明する。
・クッション性及び変形性
シート10は表裏の片面だけではなく両面において突出した部分(第1及び第2突出部)を有する。両突出部においては、その頂部11,頂部21及びそれらの周辺が丸みのある凸レンズのような形状である。そのためシート10は、シート厚み(T)方向の押圧があっても、両面の両突出部で力が分散され、その構造に特有のクッション性を発現する。この点については、例えば従来の筋状の突起や片面の突起ではどうしても線ないし面としての弾力性を発現することとなるが、本実施形態によれば三次元的な動きに対してもよく追従して両面において点(圧力変化によって円形状に面積を増減する)で支持されたような立体的なクッション性を奏する。
さらにシート10は、前述のとおり、壁部3に第2突出部2の内部空間28へ入り込んだ括れ部7が形成されている。括れ部7は、シート厚み(T)方向の押圧を分散し緩和する作用を奏する。例えば、第1突出部1側からの押圧は、頂部11から壁部3を伝って第2突出部2の頂部21まで及ぼうとするが、その応力が括れ部7の湾曲部分で分散されて、第2突出部2への応力伝播が緩和される。これにより、前記の丸みのある両突出部と相俟って、シート10はへたり難くなり優れたクッション性が得られる。またシート10は、平面方向の力に対しても括れ部7がそのばね性を発揮して、弾性変形と除重時の形状回復性が優れたものとなる。例えば第1突出部1側の面に平面方向の力が加わると、第1突出部1は括れ部7を起点としてその応力に柔軟に対応して変形し、また括れ部7のばね性によりもとの形状に回復され易い。他方、第2突出部2側は、括れ部7で力が緩和されるので変形が起こりにくく安定したものとなる。
以上のようなクッション性及び変形性の維持の観点から、括れ部7は、できるだけ角の少ない丸みのある形状であることが好ましい。これにより、繰り返しの荷重に対しても括れ部7に応力が集中せずに好適に緩和され、良好なばね特性が発揮される。
【0022】
・通気性
シート10では第1面側および第2面側それぞれの面に開放された内部空間が存在する。このシート10を吸収性物品に適用すると、開放された多数の内部空間が着用者から発生する湿気を拡散しつつ、吸収体側から発散する蒸気も効果的に拡散させることができる。
・排泄物の捕集性
シート10は、内部空間18及び28を有することで、吸収性物品のシート部材として用いると、排泄液や排泄物の物性に応じて多様な形態でこれらを捕集し対応することができる。例えば、図1のシート10の第1面側zを肌面側としたと想定して説明すると、粘度が高く浸透性の低い排泄物であれば、内部空間28に一時その排泄物がストックされる。また、粘度の低く拡散しやすい液であっても、複数の内部空間28に分散して一時貯蔵される。このように内部空間28に捕集された液は、前述のクッション性等によるシート10のへたり難さのために、第1面1側に液戻りし難い。また第2突出部2にある幅狭の括れ部7が、それより下方の内部空間に対する内部突起となって液の戻りを抑制するよう作用する。また、肌面にまず当たる部分が第1突出部1の頂部11であり、上記捕集された排泄液ないし排泄物は肌に接触しにくくされている。これにより、尿や便、経血やおりものの排泄ののちにも、幅広く対応して極めて良好なサラッと感じが持続される。
【0023】
シート10の前記の通気性や捕集性に関し、高い押圧下にあっても、括れ部7は平面方向に広がらずにシート材が折り重なる積層厚み部71へと変形することが好ましい。たとえば、両面の突出部が潰れてしまうような押圧があっても、図8に示すように、括れ部7が3重の積層厚み部71となることが好ましい。この積層厚み部71が厚み方向にある程度の高さを形成するので、内部空間18及び28が部分的にでも残る。これにより、通気性が維持され、液の保持領域が残って液流出が抑制される。
前記の積層厚み部71が好適に形成されるシート10の構造としては、シート厚みが、シート上の突起間ピッチ長さよりも薄く、またシート上の突起間ピッチ長さの4分の1よりも厚いことが好ましい。
【0024】
・肌触り
シート10には両面方向に第1及び第2の突出部があり、その頂部は丸みを帯びている。そのため肌がシート10に接触すると、その肌に対して点で柔らかく良好な肌触りが実現される。また、装着時の圧力に対しても接触する点が面状に増減することで肌触りを良好としながら、圧力に対するシート全体の形状変形を少なく抑えることができ、また、圧力変形からの形状復元も容易とすることができる。上記の良好なクッション性に起因する作用もあり、点接触のような肌との接触による作用と相俟って、独特の良好な肌触りが得られる。また、排泄等を受けたときにも、上述した点接触が効果を奏し、サラッとした肌触りが実現される。
【0025】
シート10において、前述のクッション性及び変形性をより確かなものとし、これらの特性と柔らかな肌触りとを両立させるために、圧縮硬さ(LC)は、0.01〜0.35が好ましく、更には0.05〜0.3が、より好ましくは0.1〜0.25の範囲である。シート10は、圧縮硬さ(LC)が上記の範囲であるため、適度な空隙を有することができ、柔軟性を保持しながら、高い吸収性能を達成することができる。
【0026】
(圧縮硬さ(LC)の測定方法)
シートの圧縮硬さ(LC)は、風合い計測システムKES−FB3−AUTO−A(カトーテック株式会社製、商品名)を使用して測定しできる。測定時の設定は、感度2,圧縮速さ50秒/mm、データ取込感覚0.1秒、加圧面積2cm(付属治具)とし、また測定するシートの大きさは15cm×15cmとし、測定台の中央に配置した。測定器の基準設定に従い3カ所の測定を行い、その平均値を測定値として求められる。
【0027】
さらにシート10のクッション性及び変形性について図9及び10を参照して以下に説明する。
図9は、第1突出部と第2突出部との関係を平面視により模式的に示す説明図である。第1突出部1と第2突出部とが面内の第1方向(x)及び第2方向(y)に延びて配置された形態をモデル化して示している(x方向及びy方向は一点鎖線で図示した方向及びこれを平行移動した方向を含む。)。円で示された第1突出1及び第2突出部2(破線)はそれぞれ、その平面視の概略的な位置を示しており、その中心が頂部の頂点にほぼ一致する。図10は、接触平面を上述したような硬質の部材(例えば金属製の台座と押圧板)とみて、あるいは実際にそれを用いて、所定の圧力で押圧したときの不織布の変形状態を模式的に示した説明図である。視野としては、図2に示した断面と同様であるが、簡略化して示している。
シート10は、非変形性の押圧面により50gf/cmの圧力で前記不織布を面方向に押圧したときにも、該押圧面と前記シートとの間の内部空間18及び28が維持されていることが好ましい。このような内部空間の維持性は第1面側もしくは第2面側のみであってもよい。これは、つまり相応の押圧を受けても適度に反発し不織布が良好なクッション性を発揮することを示している。この、50gf/cmの圧力とは、たとえば実際の吸収性物品に適用されたときに、乳幼児が着座したときの圧力に相当する圧力である。なお、本発明において圧力の測定は特に断らない限り、後記実施例に記載の手順で行った。
【0028】
シート10はさらに、非変形性の押圧面により0.5gf/cmの圧力で前記不織布を面方向に押圧したときに、該押圧面及び前記不織布の接触面積S0.5と前記押圧面の単位総面積Sa(図9参照)(面方向に1mm以上の空間がある場合、その空間は除く)との比率(S0.5/Sa)が0.1〜0.4、更には0.12〜0.35、特に0.15〜0.3であることが好ましい。このような範囲で接触面積S0.5が押圧に対して単位総面積より小さくされているということは、図10(b)のように押圧下においても内部空間18,28が維持されていることを意味し、不織布を触ったときの柔らかさ、もしくは滑らかさ、といった優れた触感を有することを意味する。なお、0.5gf/cmの圧力とは、たとえば実際の吸収性物品に適用されたときに、着座していないときの、シートと肌との接触状態に相当する圧力である。
【0029】
なお、上記のような接触面積比率となるのは、第1面側及び第2面側の両者であることが好ましいが、片方のみであってもよい。上記単位総面積Saと接触面積S0.5との関係について少し補足すると、図9に示したように単位総面積Saは不織布内の平面視における任意の領域であればよく、好ましくは、第1突出部1及び第2突出部2が複数均等に包含される領域である。これに対して、図中の実線による円を第1突出部1の押圧面との接触部分としてみると、上記単位総面積Saにおける第1突出部の接触面積S0.5は、ハッチングをした各領域の面積の総和となる。この比率が上記接触面積比率(S0.5/Sa)となる。
【0030】
また、本実施形態においては、非変形性の押圧面により50gf/cmの圧力でシート10を面方向に押圧したときに、該押圧面及びシート10の接触面積S50と前記押圧面の単位総面積Saとの比率(S50/Sa)が0.3〜0.9、更には0.4〜0.85、特に0.5〜0.8であることが好ましい。
このような範囲で接触面積S50が押圧に対して単位総面積より小さくされているということは(図10(c)参照)、着座時などの加圧時においても不織布構造として空間が存在し、吸収性や通気性が維持されるということを意味する。なお、上記のような接触面積比率となるは、第1面側及び第2面側の両者であることが好ましいが、片方のみであってもよい。接触面積比率(S50/Sa)の見方については、表裏を異にする以外、上記接触面積比率(S0.5/Sa)と同様である。
【0031】
さらにシート10においては、非変形性の押圧面により0.5gf/cmの圧力で押圧したときのシート厚みT0.5が、2.5〜5であることが好ましく、更には2.8〜4.5であることが好ましい。また、非変形性の押圧面により50gf/cmの圧力で押圧したときのシート厚みT50が、0.5〜1.3であることが好ましく、更には0.7〜1.1であることが好ましい。
さらにシート10においては、非変形性の押圧面により0.5gf/cmの圧力で押圧したときのシート厚みT0.5と、非変形性の押圧面により50gf/cmの圧力で前記不織布を面方向に押圧したときのシート厚みT50との比率(T0.5/T50)が、2.5〜10であることが好ましく、更には2.5〜8であることが好ましい。このようなシート厚み方向のコシを有する不織布とすることで、優れたクッション性を有するとともに、素早く液を落とし込む、また液戻りの低減化、といった吸収性能にも寄与する。
【0032】
(厚みの測定方法)
シート10の厚みT0.5及びT50は、風合い計測システムKES−FB3−AUTO−Aを使用して測定することができる。測定時の設定は、感度2,圧縮速さ50秒/mm、データ取込感覚0.1秒、加圧面積2cm(付属治具)とし、また測定するシートの大きさは15cm×15cmとし、測定台の中央に配置して測定する。測定器の基準設定に従い3カ所の測定とし、荷重0.5g/cm時の厚みをT0.5、荷重50g/cm時の厚みをT50とし、それぞれ3カ所の平均値を測定値とした。
【0033】
シート10の括れ部7が壁部3表面の周方向の一部にある場合、前述のようにシート10のクッション性や変形性を付与する観点から、括れ部7は、第2突出部2の壁部3において応力が集中し易いところに形成されることが好ましい。
例えば、シートを賦形するために機械方向(MD方向)にシート材を搬送していくとき、シート材はMD方向に伸長され易く、CD方向に対して部材の強度が低下し易い。そのため賦形されたシートにおいて、製造時のCD方向に一致する第2突出部2の部分に応力が集中し易くなる。少なくともこの部分に括れ部7が対をなして形成されることが好ましい。特にシート10が不織布からなる場合、製造搬送時の賦形前の繊維ウェブはMD方向に繊維が配向する傾向にあるため、括れ部7はCD方向にあることが好ましい。なお、「MD」はシート材が製造時に流れる方向をいい、「Machine Direction」の略語である。流れ方向ともいう。「CD」は上記MDにシート面内方向で直交する方向であり、「Cross Direction」の略語である。
【0034】
また同様の観点から、第2突出部2の内部空間28の平面形状が長軸及び短軸を有する環形状であると、短軸方向に応力が集中し易い。そのため、第2突出部2の短軸方向に、括れ部7が少なくとも対をなして形成されることが好ましい。例えば図11に示すような形態が挙げられる。図11は、長軸及び短軸のある楕円平面形状を有する第2突出部を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は断面側面図である。図11に示すように、平面形状が長軸m及び短軸nを有する楕円形状である場合、第2突出部2の壁部3の短軸n方向に括れ部7,7が形成されることが好ましい。
【0035】
次に、上記のような形状と特性を有するシート10の形成素材について説明する。
シート10の形成素材としては、前述の形状が得られるのであれば、この種の物品に用いられる各種のシート材を用いることができる。例えば、不織布、フィルム、織り布、紙等が挙げられる。また、これらの同種又は異類の素材を複数組み合わせた複合シートであってもよい。
シート10を吸収性物品に適用する際、その部材の機能に合わせて素材や性質を適宜選択することが好ましい。たとえば、液保持性の吸収体の肌当接面側にある表面シートや中間シートあるいは吸収性コアの被覆シートである場合は、液透過性のシートであることが好まし。吸収体よりも非肌当接面側に配されるシートである場合は、透湿性又は防漏性のシートであることが好ましい。また液の横漏れ防止のためのサイドシートとする場合は、撥水性のシートであることが好ましい。
【0036】
シート10を表面シート等の液透過性の部材として吸収性物品に適用する場合、シート10の第一面側を肌当接面側に配することが好ましい。つまり、括れ部7のある第2突出部2は非肌当接面側となる。これにより、括れ部7による、シート10の排泄物の捕集性や後述の液透過性、液拡散性、液戻り防止性、吸収性能を発揮させることができる。
【0037】
不織布としては、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布等のものを用いることができる。その素材としては、特に限定されず、例えば次の繊維などが挙げられる。ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維等のポリオレフィン繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維;芯鞘型、サイドバイサイド型等の構造の複合繊維、例えば鞘成分がポリエチレン又は低融点ポリプロピレンである芯鞘構造の繊維が好ましく挙げられ、該芯/鞘構造の繊維の代表例としては、PET(芯)/PE(鞘)、PP(芯)/PE(鞘)、PP(芯)/低融点PP(鞘)等の芯鞘構造の繊維。更に具体的には、上記構成繊維は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン複合繊維を含むのが好ましい。ここで、該ポリエチレン複合繊維の複合組成は、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンであり、該ポリプロピレン複合繊維の複合組成が、ポリエチレンテレフタレート/低融点ポリプロピレンであるのが好ましく、より具体的には、PET(芯)/PE(鞘)、PET(芯)/低融点PP(鞘)が挙げられる。また、これらの繊維は、単独で用いて不織布を構成してもよいが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
不織布からなるシートを吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、親水性の不織布又は親水化処理された不織布が好ましい。またサイドシートとして用いる場合には、撥水性の不織布が好ましい。吸収体の非肌当接面側にある裏面シート等のシートとして用いる場合は、防漏性の観点から不織布をフィルム(透湿性/非透湿性)と組み合わせることが好ましい。
【0038】
フィルムとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂を用いたものが挙げられる。また前記不織布と張り合わせたシートとしてもよい。
フィルムからなるシートを吸収性物品の裏面シート等に用いる場合、防漏性と透湿性との両立の観点から、例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムなどが好ましい。また表面シート等に用いる場合は、液透過性の観点から親水性微細孔フィルムなどが好ましい。またフィルムを表面シートやサイドシートなどに用いる場合、肌に直接触れるため、肌ざわりの観点から布様の感触にあるようなエンボス加工が施されていることが好ましい。
【0039】
シート10を上記の形成素材を用いて表面シート等の液透過性のシートとし、該シート10を吸収性物品に適用する場合、前述の形状と相俟って、さらに以下のような作用を奏する。
・吸収性能(液透過性、液拡散性、液戻り防止性など)
シート10は、第2面側にも第1突出部1に対応した内部空間18を有する。シート10を吸収性物品の表面シート等として第1面側を肌当接面に配すると、吸収体等の下層部材との間に第1突出部1の内部空間18が配置される。この場合、排泄物は、第2突出部2の内部空間28に一時貯蔵されるものもあれば、頂部11及び壁部3を介して第2面側に透過され、第1突出部1の内部空間18に捕集されるものもある。つまり、シート10は、液を肌から遠ざけつつ非肌面側へと透過させ、その位置で多くの液を一時貯蔵できるので液透過性に優れたものとなる。
さらに第2突出部2が有する括れ部7は、前述のとおりそのばね性によって内部空間を保持するとともに内部空間28の中蓋のようになる。括れ部7のこのような作用によって、第1面側への液戻りが抑制されるとともに、内部空間28内で下層への力が働き液を第2面側へと押出し易くする。これにより液は、シート10の非肌当接面側へと透過されやすく、吸収体等の下層の部材との間で拡散されやすくなる。つまりシート10は、液透過性、液拡散性、液戻り防止性に優れたものとなる。
【0040】
以上のとおりシート10は、上記のクッション性や括れ部7のばね性等に起因する内部空間の保持によって、内部空間から肌面側への液戻りを抑制することができる。また括れ部7によって液の吸収体側への押出し作用が働き、表面シートから吸収体への吸収速度を速く維持できる。またシート10を表面シートとすると下層の吸収体にかかる圧力が適度に分散され形状復元力が大きいことから、吸収体からの液戻り量が低減される。加えて過吸収状態の場合などに吸収体から液が溢れてきた際には、まだ吸収に余裕のある他の吸収部位に、前記内部空間18により適切に液が拡散する。したがってシート10は、吸収性能の安定性の高いものとなる。
【0041】
次に、シート10が不織布からなる場合について以下に詳述する。不織布は、液透過性等の吸収性能を高め、繰り返しの押圧にも耐えてクッション性や変形性などを維持させる観点から好ましい。特に、詳細については後述するが、シート10の壁部3においてはその壁の起立する方向に向け配向した不織布繊維の配向性を有することが好ましい。このように配向した繊維部分にしっかりとしたコシが生まれ、繊維が厚み方向に潰れてしまうことのない適度のクッション性を実現する。さらに、上述した壁部3の繊維配向性により、押圧力を受けて不織布が潰されても、その形状復元力が大きく、梱包状態や着用が継続されても初期のクッション性を喪失しにくい。また、壁部3の括れ部7においては、不織布の繊維の隙間があることによってより柔軟に動きやすく応力緩和され、ばね性がより効果的に発揮され易い。
【0042】
上記の繊維配向性を含め不織布からなるシート10のより詳細な特徴について、その形状をモデルとして簡略化して示した図12〜14に基づいて説明する。以下、不織布からなるものを不織布シート10として説明する。不織布シート10には第1突出部1(実施線で示した)と第2突出部2(破線で示した)とがあり、図9ではそれらがそれぞれ単純な円として示されている。それらの円の大きさは、区別のため若干異なるものとしており、図1等に示した形態とその寸法等において一致するものではない。不織布シート10においては、第1突出部1と第2突出部2とが格子状配列になって配置されている。これを、別の言い方で示すと、所定方向に第1列k、第2列k、第3列k、としてみたとき、各列の第1突出部1と第2突出部2とは交互に配置されており、各列の突出部をシート面内で各列に斜交する方向(y方向)に投影したときに、隣接する列において第1突出部と第2突出部とが重なる関係となる。さらに言うと、第n列と第n+2列において、第1突出部1と第2突出部2とがそれぞれ重なる状態とされている。つまり、本実施形態においては、列kの第1突出部及び第2突出部がy方向に平行移動したとき、列kの第1突出部及び第2突出部と重なる関係とされている。ただし、本発明がこれに限定して解釈されるものではなく、上記隣接する第1突出部と第2突出部とにずれがあってもよい。
【0043】
第1突出部1と第2突出部2との間には、これらの共有部分として壁部3が形成されている。図12に示した中央の第1突出部1でみると、四方の第2突出部2から連続してくる4つの壁部部分31、32、33、34が形成されている。そして、その4つの壁部部分31〜34はシート面内方向で壁部部分31’、32’、33’、34’で連繋されており、一連になり環状の壁部3が構成されている。前記壁部部分31’、32’、33’、34’の第1面側で隣接する第1突出部との間には馬の背になった稜線部分が存在し、その部分が尾根部6となり上記壁部部分31’〜34’のそれぞれに対応して、尾根部61〜64が形成されている。
【0044】
図13(a)は図12に示した壁部3を展開して長方形のモデルで示したものであり、そこに図示された線gは繊維の配向方向を示している。壁部部分の位置を表すために、さらに、上記環状の壁部を円柱として、その母船に直交する面で切断した横断面でみたときに90°ごとに異なる位置として31〜34の符号を加入して示している。図13(a)に示したように、本実施形態の壁部3はいずれの箇所においても壁部の起立方向に配向している。そして、本実施形態においては、0°位置(壁部部分31)と180°位置(壁部部分33)は第2面側(z)側に偏倚した状態でその強い配向性(線g1b)を示す部分が位置しており、他方、90°位置(壁部部分32)と270°位置(壁部部分34)は第1面側(z)側に偏倚した状態でその強い配向性(線g1a)を示す部分が位置している。同図では図が混み合うため図示していないが、壁部部分31’〜34’においても同様であり、全面的に同様の繊維配向性を有している。ただし、強い配向性を示す壁部部分は31、32、33、34と変化するその中間位置で全体において漸次変化する環状の壁部の配向性の構造を構成している。これにより本実施形態において特有のクッション性を生じることは前述のとおりであり。
一方、例えば、繊維ウェブを賦形する前に融着し所定の配向性が与えられた従来の不織布にエンボス加工等によりくぼみを与えた場合は、通常図13(b)のように環状の壁部を平面視において90°ごとに分割してみると、その分割位置ごとに繊維配向性が変わることとなる。具体的には同図に示したとおり壁部部分31、33ではその起立方向(線g1c)に繊維が配向するが、壁部部分32、34ではそれと直交する方向(線g)に繊維が配向する。
【0045】
図14図12に示した第2突出部2を1つ取り出した状態で繊維の配向方向(線g)をモデル的に示している。その位置を特定するために壁部部分の符号をその対応する位置に付している。同図に示したとおり、本実施形態においては、第2突出部2の頂部21に向かって収束する放射状の繊維配向性を有している。このことはつまり、上記壁部との関係を併せていうと、壁部3から第2突出部2にわたってそのシート面の面方向に沿って第2突出部の頂部21に向かって収束するように繊維が配向していることを示している。このように、第2突出部頂部21に放射上の繊維配向性があることで、外観の均一性、形状保持性および高吸収性能などという作用を奏する。
【0046】
上記の不織布シート10の製造方法はこの種の製品に一般的な方法を適宜採用すればよい。一例を挙げると、下記のような態様が挙げられる。融着する前の繊維ウェブを、所定の厚みとなるようカード機からウェブ賦形装置に供給する。ウェブ賦形装置では、まず常温(約23℃)の空気を供給して、多数の突起9(図2参照)を有し通気性を有する台座(図示せず)の上に上記繊維ウェブを定着させる。次いで、その台座上の繊維ウェブに熱風h(図2参照)を各繊維が適度に融着可能な温度で吹きつけて、前記台座上の突起9にそって繊維ウェブを賦形するとともに、各繊維を融着させる。このときの熱風の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、130〜160℃にすることが好ましく、風速は20〜80m/sにすることが好ましい。
【0047】
さらに上記の不織布シート10に括れ部7を形成する方法の一例として、ニップロールによる押圧加工が挙げられる。上記型賦形加工された不織布の状態に応じ、線圧20〜50kg/cmで押圧することが好ましい。
【0048】
連続生産を考慮すると、上記台座を搬送可能なコンベア式のものとし、搬送されてくる型付けされた不織布を、ロールで巻き取っていく態様が挙げられる。なお上記括れの形成は、上記賦形加工の直後に行ってもよく、または上記賦形加工された不織布をいったんロールに巻き取り、おむつや生理用品等の物品に加工する際に、括れ加工を行ってもよい。
【0049】
本実施形態のシート10における寸法諸元について以下に説明する。
シートの厚さについては、シート10の全体としてみたときの厚さをシート厚み(T)といい、その凹凸に湾曲したシートの局部的な厚さを層厚み(S)として区別する(図2参照)。シート厚み(T)は用途によって適宜調節すればよいが、おむつや生理用品等の表面シートとして用いることを考慮すると、1.0mm〜4.5mmが好ましく、1.5mm〜4.2mmがより好ましい。その範囲とすることにより、適度な立体感のある良好な外観と、優れた吸収性能を両立することができる。層厚みは、シート内の各部位において異なっていてよく、用途によって適宜調節すればよい。おむつや生理用品等の表面シートとして用いることを考慮すると、第1突出部頂部の層厚み(S)は0.1mm〜1mmであることが好ましく、0.2mm〜0.8mmがより好ましい。好ましい層厚みの範囲としては第2突出部頂部の層厚み(S)及び壁部の層厚み(S)も同様である。
本実施形態の不織布10においては、第1突出部1の層厚みS、第2突出部の層厚みS、及び壁部の層厚みSは、実質的に同じである。ここで実質的に同じとは、それぞれの断面を観察したときに、ほぼ同じ厚みであることを意味する。このような形態の不織布とすることにより、外観の均一性、および安定した吸収性能およびクッション性を得ることができ好ましい。
【0050】
シート10は乾燥時と湿潤時で厚みがほぼ変化しないことが好ましい。すなわち、下記厚み変化率において85〜115%であることが好ましく、更には90〜110%であることがより好ましい。
厚み変化率(%)=湿潤時厚み(mm)/乾燥時厚み(mm)×100 (数式1)
・乾燥時厚み
常温(23℃、50%RH)環境下に24時間静置した後の、シートの厚み。
・湿潤時厚み
シートを、常温(23℃、50%RH)環境下に24時間静置する。シートより大きい平面状の容器に、イオン交換水を10mmの高さになるまで入れる。この容器にシートを入れ、1時間後に取り出す。このシートの厚み。
【0051】
第1突出部1及び第2突出部2がなす列の間隔は、用途によって適宜調節すればよいが、おむつや生理用品等の表面シートとして用いることを考慮すると、1mm〜12mmが好ましく、2.5mm〜6mmがより好ましい。
【0052】
次にシート10の吸収性物品への適用例につき、図15を参照して説明する。
図15は、シート10を適用した使い捨ておむつ100を一部切欠して模式的に示す斜視図である。同図に示したおむつはテープ型の乳幼児用使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。
【0053】
本実施形態の使い捨ておむつ100は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート10と、非肌当接面側に配置される液不透過性のバックシート81と、これらの間に介在する吸収体83とを有する(図15参照)。表面シートとしては上記実施形態のシート10が適用され、その第1突出面側が肌当接面とされている。本実施形態においては、バックシート81と表面シート10との間に吸収体83が介在配置されている。バックシート81は展開状態で、その両側縁が長手方向中央部cにおいて内側に括れた略砂時計形の形状を有しており、1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。本実施形態においては、サイドシート85がなす横漏れ防止ギャザー82が設けられており、これにより乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止しうる。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。なお、図15においては各部材の配置関係や境界を厳密には図示しておらず、この種のおむつの一般的な形態とされていれば特にその構造は限定されない。
【0054】
本実施形態のおむつ100はテープ型のものとして示しており、背側rのフラップ部にはファスニングテープ86が設けられている。このテープ86を腹側fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、おむつを装着固定することができる。このとき、おむつ中央cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収体83が乳幼児の臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。これにより排泄物が的確に吸収体83に吸収保持される。このような形態で用いることにより、特にシート10を表面シートとして適用したことによる良好な肌触り、クッション性、排泄物の捕集性を示す。特におむつ100において、排泄物の捕集性については、従来の線状の突出物の表面シートや小孔の開いたものでは達成できない極めて高い性能を実現することができ、例えば、乳幼児の肌を下痢便や軟便等による肌荒れから好適に保護することできる。
さらにおむつ100は、シート10のクッション性や括れ部7のばね性等に起因する内部空間の保持によって、内部空間から肌面側への液戻りを抑制することができる。また括れ部7によって液の吸収体側への押出し作用が働き、表面シートから吸収体への吸収速度を速く維持できる。またシート10は下層の吸収体にかかる圧力を適度に分散し形状復元力が大きいことから、吸収体から表面シートへの液戻り量が低減される。加えて吸収体の排泄対応領域が過吸収状態であっても、まだ吸収に余裕のある他の吸収部位に、前記内部空間18により適切に液が拡散する。したがっておむつ100は、表面シートの肌当接面側に液残りや液戻りを抑制し液透過性に優れ、吸収性能の安定性の高いものとなる。
【0055】
本発明のシートは、その他、各種用途に用いることができる。例えば、上述した使い捨ておむつや、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の吸収性物品の表面シートとして好適に使用することができる。なかでも、シートの両面が網状構造であることに起因する通気性や液拡散性、押圧力時の変形特性、などに優れていることから、おむつや生理用品等の表面シートと吸収体との間に介在させるサブレイヤーとして用いることもできる。その他、表面シート、ギャザー、外装シート、ウイングとして利用する形態も挙げられる。その他、おしり拭きシート、清掃シート、フィルターとして利用する形態も挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0057】
(実施例1)
芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtex×51mmの芯鞘型複合繊維を坪量30g/mとなるようカード機からウェブ賦形装置に供給した。ウェブ賦形装置では、常温の空気を供給して、多数の突起を有し通気性を有する台座の上に上記繊維ウェブを定着させた。この台座の突起のピッチ(突起の平面視における中心間の距離)を、MD方向8mm、CD方向5mm、突出高さを3mmとした。次いで、その台座上の繊維ウェブに熱風(温度130℃、風速50m/s)を吹きつけて賦形し、前記台座上の突起にそって繊維ウェブを賦形するとともに、熱風を温度160℃、風速5m/sの条件に切り替えて各芯鞘構造の繊維を融着させた。このときのライン速度は100m/minとした。次に、線圧35kg/cmに調整したニップロール間を通した。このようにして、熱融着して賦形し、プレスした不織布を取り出し、括れ部を有するシート試験体1とした。
【0058】
(実施例2)
上記実施例1における台座の突起の突出高さを5mmとした以外同様にしてシート試験体2を得た。
【0059】
(比較例1)
特開2008−25081号公報の実施例1と同様にして、蛇腹状の形態を有する不織布を作製した。具体的には以下のとおりである。
第1繊維層として、低密度ポリエチレン(融点110℃)とポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維A、および高密度ポリエチレン(融点135℃)とポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、撥水油剤がコーティングされた繊維Bとが混合された繊維層を使用した。繊維Aと繊維Bは70:30の混合比で含有され、坪量は15g/mに調整した。
第2繊維層として、高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度4.4dtex、平均繊維長38mm、親水油剤がコーティングされた繊維100%の繊維層を使用した。この繊維層における坪量は25g/mであった。
特開2008−25081号公報の図8図9に示されたものと同様の装置を用い、前記のようにして積層した繊維を搬送しながら、これに前記装置の吹き出し部から温度105℃、風量1200l/minの条件で熱風を吹き当てのようにして、蛇腹状上の形態を有するシート試験体c1を得た。
【0060】
(比較例2)
特開2001−20168号公報の実施例1と同様にして、エンボスにより凹凸を有する不織布を作製した。具体的には以下のとおりである。
ポリプロピレン樹脂からなる、坪量40g/mのスパンボンド不織布を、両面から2つの凸ロールを用いて130℃でスチールマッチエンボス加工することにより、規則的に配列された多数の凸部〔凸部の数;5個/cm(圧縮回復性シートの面積基準)、各凸部間の距離;4.5mm、凸部における表面と裏面との間の厚み;0.5mm〕が形成されている繊維集合体からなる圧縮回復性シート(シート試験体c2)を得た。
【0061】
(比較例3)
特開2004−174234号公報の実施例1と同様にして、凹凸を有する2層構造の不織布を作製した。具体的には以下のとおりである。
第1および第2のシートを構成する不織布として、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる2.2dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量18g/mのエアースルー不織布をそれぞれ準備した。これらのシートを用い、特開2004−174234に示す装置を用いて使い捨ておむつの吸収性物品用シート(シート試験体c3)を作製した。得られたシートにおける凸部の高さhは1.4mm、X方向に沿う凸部の幅wは4.0mm、接合部(凹部)の幅kは1.0mmであった。
【0062】
上記の不織布試験体を用い下記の測定試験を行った。その結果を下記の表1に示す。
【0063】
<50gf/cm加圧時空間>
10cm角のアクリル板を準備した。このとき、荷重が50gf/cmとなるよう、アクリル板上に載せる錘を調整した。平らな机上にシートを置き、その上にアクリル板と錘を載せ、机上およびアクリル板とシートとの間に空間が存在するかしないかを観察した。
【0064】
<厚み>
不織布の厚みは、風合い計測システムKES−FB3−AUTO−Aを使用して測定した。測定時の設定は、感度2,圧縮速さ50秒/mm、データ取込感覚0.1秒、加圧面積2cm(付属治具)とし、また測定するシートの大きさは15cm×15cmとし、測定台の中央に配置した。測定器の基準設定に従い3カ所の測定を行った。荷重0.5g/cm時の厚みをT0.5、荷重50g/cm時の厚みをT50とし、それぞれ3カ所の平均値を測定値とした。
【0065】
<圧縮硬さ(LC)>
不織布の圧縮硬さ(LC)は、風合い計測システムKES−FB3−AUTO−Aを使用して測定した。測定時の設定は、感度2,圧縮速さ50秒/mm、データ取込感覚0.1秒、加圧面積2cm(付属治具)とし、また測定するシートの大きさは15cm×15cmとし、測定台の中央に配置した。測定器の基準設定に従い3カ所の測定を行い、その平均値を測定値とした。
【0066】
<クッション性>
シートを上から評価者の手で押したり戻したりした時の感触を評価した。評価者は3人とし、その平均点(小数点第一位を四捨五入)をそのシートの評価結果とした。
測定結果の評価を実用上の要求を考慮し以下のように区別した。
3: 押した時および戻した時に、バネのような反発感を感じる。
2: 押した時および戻した時に、バネのような反発感はあるが、弱い。もしくは、押した時または戻した時のどちらかのみ、バネのような反発感を感じる。
1: 押した時および戻した時に、バネのような反発感を感じない。
【0067】
<易変形性>
シートを折り曲げた時の感触を評価した。評価者は3人とし、その平均点(小数点第一位を四捨五入)をそのシートの評価結果とした。
測定結果の評価を実用上の要求を考慮し以下のように区別した。
3: 折り曲げた時に柔らかく感じる。また自然に折れ曲がる。
2: 折り曲げた時に多少硬く感じる。もしくは、折り曲げた時に折れ曲がり線が発生する。
1: 折り曲げた時に硬く感じる。もしくは、折り曲げた時に折れ曲がり線が発生する。
【0068】
<吸収速度>
280×160mmに切り出した不織布試験体を、サブレイヤー(芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる4.43.3dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量1220g/mのウェブ、および芯がポリプロピレンで鞘がポリエチレンからなる7.8dtexの芯鞘型複合繊維を構成繊維とする坪量20g/mのウェブを重ね合わせて作製したエアースルー不織布)を介して、パルプ吸収体の上に設置した。上記不織布上に20g/cmの荷重を均等にかけ、試験体のほぼ中央に設置した内直径36mmの筒を当て、そこから生理食塩水を注入した。その後、10分ごとに40gずつ3回にわたり生理食塩水を注入し、3回目を注入した際の吸収しきる時間(秒)を測定した。各試料の測定結果を下表1に示した。
測定結果の評価を実用上の要求を考慮し以下のように区別した。
A: 吸収しきる時間が180秒以内。
B: 吸収しきる時間が180秒〜300秒。
C: 吸収しきる時間が300秒以上。
【0069】
<液戻り性>
前記吸収速度評価において、3回目を注入した10分後に、注入部を中心として、その上にろ紙(ADVANTEC東洋製4A、大きさ100mm×100mm)20枚を乗せ、更にその上に3.5kPa(3.5kg、大きさ100mm×100mm)の重りを乗せる。重りを乗せてから2分後にろ紙を外す。ろ紙の初期重量と加圧後重量の差分を液戻り量として測定する。
測定結果の評価を実用上の要求を考慮し以下のように区別した。
A: 液戻り量が0.5g以下。
B: 液戻り量が0.5〜1g。
C: 液戻り量が1g以上。
【0070】
【表1】
【0071】
上記の結果より、本発明の好ましい実施形態に係る不織布(実施例)は、比較例のものに比して、通気性が良好であり、クッション性及び変形性がともに高く、吸収速度が速くべた付かない肌に優しい特性において優れることが分かる。
【符号の説明】
【0072】
1 第1突出部
11 第1突出部頂部
18 第1突出部 内部空間
2 第2突出部
21 第2突出部頂部
28 第2突出部 内部空間
3 壁部
7 括れ部
10 シート
図1
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