(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記分子性カチオンが、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのいずれかのアルカリ金属(第1A族元素)、Ti、Zr、Hf(第4A族元素)、又は、C、Si、Ge、Sn、Pn(第4B族元素)のいずれかの金属イオン、又は、これらの複数種を含む請求項2に記載の粒子状物質検出素子。
【背景技術】
【0002】
近年、コモンレール式燃料噴射システム、過給器システム、酸化触媒、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFと称す。)、選択触媒還元(SCR)システム、排気再循環(EGR)システム等を組み合わせて、ディーゼル機関やガソリンリーンバーン機関等の燃焼排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)、粒状物質(以下、PMと称す。)、未燃炭化水素HC等の環境負荷物質の低減が図られている。
このようなシステムに用いられるDPFは、一般に、耐熱性に優れ、かつ、無数の細孔を有する多孔質セラミックスを素材としたハニカム構造とされ、多孔質の隔壁に存在する細孔中にPMを捕捉し、PMが堆積して細孔に目詰まりを起こして圧力損失が高くなると、バーナやヒータ等で加熱したり、機関の燃焼爆発後に少量の燃料を噴射するポスト噴射等によりDPF内に高温の燃焼排気を導入したりして、DPFを加熱し、DPF内に捕集されたPMを燃焼除去して再生できる構成とされている。
内燃機関の燃焼効率をさらに向上すべく、このようなDPFの再生時期の判断や、DPFの劣化、破損等を検出するOBD(オンボードダイアグノーシス、車載式故障診断装置)や、内燃機関のフィードバック制御等において、燃焼排気中に含まれるPM量を高精度で連続的に検出できる検出手段が望まれている。
【0003】
燃焼排気中のPM量の検出手段として、特許文献1には、煤を含むガスが通過するガス流路内に設置して、前記ガスに含まれる前記煤を検出する煤検出センサであって、多孔質の導電性物質から構成された煤検出電極と、前記煤検出電極に配設され、前記煤検出電極の電気抵抗の値を測定するための少なくとも一対の導電性電極とを備えて、煤が煤検出電極に付着する際に変化する電気抵抗の値を検出することによって煤の量を検出する煤検出センサが開示されている。
また、特許文献2には、DPFの上流側と下流側とに酸化触媒と熱電対とを設けて、DPFに流入するPMを含んだ燃焼排気の酸化触媒反応による発熱温度とDPFを通過した処理済燃焼排気の酸化触媒反応による発熱温度との差を検出して燃焼排気中のPM量を検出する技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、波長可変ダイオードレーザを用いて高温プロセスガスの化学種及び温度を連続的にモニタリングする方法が開示されている。
【0004】
ところが、特許文献1にあるような、煤検出電極に堆積した煤の量によって変化する抵抗値を測定する方法では、煤検出電極に所定値以上の煤が堆積した場合には検出感度が低下する虞があり、また、煤検出電極の抵抗値変化が被測定ガス中のPM濃度の変化によるものなのか、長期の使用による煤検出電極上に堆積、残留した煤によるものなのか区別できない虞もある。
また、特許文献2にあるような、示差熱の検出による方法では、機関の運転状況の変化による燃焼排気温度の変化の影響やDPFの目詰まりによる流量変化の影響を受けやすく、燃焼排気中のPM量を正確に検出することができない虞がある。
さらに、特許文献3にあるような半導体レーザ等の光学的手段によって、燃焼排気中のPM量を検出する方法では、レーザ光の授受を行う光学的開口部に燃焼排気中のPMが堆積して、正確なモニタリングができなくなる虞がある。
【0005】
このような従来のPM検出センサの問題を解決すべく、特許文献4では、少なくとも、プロトン伝導性の固体電解質からなるプロトン導電体と、該プロトン導電体の表面に形成した測定電極と基準電極とからなる電極対と、該電極対間に所定の電流又は電圧を印加する電源とを具備し、上記測定電極を被測定ガスに対向せしめ、かつ、上記基準電極を被測定ガスから隔離せしめたことを特徴とする炭素量検出センサが開示されている。
【0006】
特許文献4の炭素量検出センサでは、電源から電極間への通電を行って測定電極上で被測定ガス中の炭素成分との電気化学反応を引き起こして、検出部に堆積した炭素成分を酸化除去しつつ、電気化学反応に際して検出される電流の変化によって被測定ガス中に含まれる炭素量の検出を可能とすることで、従来の問題点である不感期間の解消と、測定電極上に被測定ガス中に含まれる炭素成分の堆積抑制とを同時に実現可能とし、長期に亘る信頼性の維持を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献4の炭素量検出センサでは、500℃以下のいわゆる中温領域において高いプロトン伝導性を示す特殊な固体電解質体を用いて、電気化学反応により発生させた活性酸素亜種の高い酸化力を利用して電極表面に堆積したPMを燃焼除去すると共に、この時流れる電流の変化からPM量の検出を行っているため、寒冷地においてディーゼル機関を低温環境下で始動したとき等、燃焼排気の温度が150℃以下の低温である場合に、電気化学反応を起こすための活性化エネルギを超えられず、被測定ガス中のPM検出が遅れる虞があることが判明した。
また、短時間に一定量以上のPMが排出された場合には、電気化学反応が追いつかず、未反応のPMが電極表面に堆積したり、電気化学反応をきっかけとして電流変化を伴わないPMと被測定ガス中に含まれる酸素との自己燃焼反応が起こって正確な炭素量の検出が困難となったりする虞があることが判明した。
【0008】
そこで、かかる実情に鑑み、本願発明は、低温時においても安定して粒子状物質を検出でき、かつ、粒子状物質の排出量が多くても正確に検出できる粒子状物質検出素子及び粒子状物質検出センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明(10、10a、10b)では、粒子状物質を含む被測定ガス流路(3)内に載置し、被測定ガス中の粒子状物質を定量的に検出する粒子状物質検出素子であって、少なくとも、導電性基体(100)と、その表面に形成した、分極性電極材料からなる検知電極(110)と、検知電極(110)に対向して形成した基準電極(120)とからなる電極対と、を具備し、上記検知電極(110)を被測定ガスに対向せしめ、かつ、上記基準電極(120)を被測定ガスから隔離せしめ
てなり、
上記分極性電極材料は、無機固体酸塩(M1、M1a、M1b、M1c)、又は、エレクトレット(M2、M2a、M2b)のいずれかであり、
上記無機固体酸塩が、硫酸一水素イオン(HSO4)、リン酸イオン(PO43−)、リン酸一水素イオン(HPO42−)、リン酸二水素イオン(H2PO42−)、セレン酸一水素イオン(HSeO4−)、ピロリン酸一水素イオン(HP2O73−)、ピロリン酸二水素イオン(H2P2O72−)、ピロリン酸三水素イオン(H3P2O7−)、ホスホン酸一水素イオン(H2PO3−)のいずれかから選択したオキソ酸型アニオンと、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのいずれかのアルカリ金属(第1A族元素)、Ti、Zr、Hf(第4A族元素)、又は、C、Si、Ge、Sn、Pn(第4B族元素)のいずれかから選択した金属イオンとの塩であり、
上記エレクトレットが、強誘電体、誘電体、又は、固体電解質材料のいずれかの分極性無機材料を配向分極、イオン分極、電子分極させたものである。
【0011】
請求項
2の発明(10、10a、10b)では、上記無機固体酸塩(M1a、M1b、M1c)が、分子性アニオン、及び/又は、分子性カチオンを含む。
【0012】
請求項
3の発明(10、10a、10b)では、上記無機固体酸塩(M1b、M1c)が、ブレンステッド酸、及び/又は、ブレンステッド塩基を含む。
【0013】
請求項
4の発明(10、10a、10b)では、上記無機固体酸塩(M1c)が、遷移金属を含む。
【0017】
請求項
5の発明(10、10a、10b)では、上記分子性カチオンが、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのいずれかのアルカリ金属(第1A族元素)、Ti、Zr、Hf(第4A族元素)、又は、C、Si、Ge、Sn、Pn(第4B族元素)のいずれかの金属イオン、又は、これらの複数種を含む。
【0021】
請求項
6の発明(10、10a、10b)では、上記エレクトレットが、金属酸化物、及び/又は、アルカリ土類金属酸化物を含む。
【0022】
請求項
7の発明(10、10a、10b)では、上記強誘電体材料、誘電体材料、又は、固体電解質材料が、ZrTiO
4−SnO
2TiO
2、Fe
2O
3−NiO、Zn
2TiO
2、ZnNiTiO
4、ZnFe
2O
4、K
2OAl
2O
3−SiO
2、CaOAl
2O
3、BaTiO
3、Al
2O
3TiO
2、MgOAl
2O
3のいずれかである。
【0023】
請求項
8の発明(10、10a、10b)では、上記金属酸化物が、TiO
2、NiO、Al
2O
3、Fe
2O
3、MnO
2、Co
2O
3/CoO、Sn
2O
3/SnO、ZnOのいずれかであり、上記アルカリ土類金属酸化物が、BaO、K
2O、CaO、MgOのいずれかである。
【0024】
請求項
9の発明(10、10a、10b)では、上記導電性基体は、分極性を有する導電性基体材料からなる。
【0025】
請求項
10の発明(10、10a、10b)では、上記分極性を有する導電性基体材料が、SnO
2、SiO
2、TiO
2、WO
3をリン酸、又は、硫酸のいずれかから選択した強酸によって熱処理した材料のいずれかである。
【0026】
請求項
11の発明(10a、10b)では、絶縁体(140、160)内に埋設され、通電により発熱し、少なくとも、上記検知電極(110)、及び/又は、上記導電性基体(100)を加熱する発熱体(150)を具備する。
【0027】
請求項
12の発明(10b)では、上記検知電極(110)上に区画した粒子状物質捕集室(170)と、被測定ガス中の粒子状物質に静電気的な引力を作用させ上記粒子状物質捕集室(170)内に引き込むために、上記検知電極(110)との間に強電界を発生させる電界発生電極(180)とを具備する。
【0028】
請求項
13の発明(1)では、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を定量的に検出する粒子状物質検出センサであって、請求項1ないし19のいずれかに記載の粒子状物質検出素子(10、10a、10b)と、該粒子状物質検出素子の(10、10a、10b)上記検知電極(110)と上記基準電極(120)との間に所定の電圧を印加して、上記粒子状物質検出素子(10、10a、10b)内の電荷を分極せしめる直流電源(20)と、粒子状物質が上記検知電極(110)の表面に堆積する際に生じる電荷の移動に伴う、上記検知電極(110)と上記基準電極(120)と間の電流変化(ΔI)を検出する電流検出手段(21)、又は、上記検知電極と上記基準電極と間の電圧変化を検出する電圧検出手段と、上記電流検出手段(21)、又は、上記電圧検出手段の検出結果から、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量を算出する粒子状物質量演算手段(22)とを具備する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記粒子状物質検出素子(10、10a、10b)の内の電荷を分極させた状態で、上記検知電極(110)の表面に、電荷を帯びた粒子状物質が堆積すると、瞬間的に上記粒子状物質検出素子(10、10a、10b)で電荷の移動が起こり、そのときの電流変化を計測することで、極めて正確に被測定ガス中の粒子状物質の定量的な計測が可能となる。
本発明の粒子状物質検出センサにおいては、従来の抵抗式や静電容量式の粒子状物質検出センサにおいて、不可避的に発生していた不感期間が解消され、極めて高い応答性を発揮できる。
また、検知電極(110)上に堆積する粒子状物質の量が多い場合でも、極めて高い精度で定量的な検出が可能となることが判明した。
本発明によれば、低温時においても安定して粒子状物質を検出でき、かつ、粒子状物質の排出量が多くても正確に検出できる粒子状物質検出素子及び粒子状物質検出センサを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出センサ(PM検出センサ)1及びその要部である粒子状物質検出素子(PM検出素子)10について
図1、
図2を参照して説明する。
本実施形態におけるPM検出センサ1は、内燃機関の燃焼排気中の粒子状物質(PM)を正確に検出して、DPFの再生時期の判断や、DPFの性能劣化、破損等を検知するOBDや、燃焼排気中に燃料を噴射して、PMやNOxの低減を図るリッチスパイク制御等に利用することができる。
【0032】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態におけるPM検出センサ1は、図略の内燃機関から排出される燃焼排気を被測定ガスとして、被測定ガス流路壁3に固定され、被測定ガス流路内にPM検出素子10の測定部が載置される。
PM検出素子10は、少なくとも、導電性基体100と、その表面に形成した、分極性電極材料からなる検知電極110と、検知電極110に対向して形成した基準電極120とからなる電極対と、を具備し、検知電極110を被測定ガスに対向せしめ、かつ、基準電極120を被測定ガスから隔離せしめた構成を基本としている。
PM検出素子10は、分極性の導電性材料を用いて板状に形成された導電性基体100と、導電性基体100の一方の表面に分極性材料を用いて形成された検知電極110と、他方の表面に、検知電極110に対向して、同じく分極性材料を用いて形成された基準電極120とからなり、電極対を構成している。
【0033】
検知電極110、及び、基準電極120には、後述する分極性の電極材料が用いられ、略平板状に形成されている。
検知電極110は、被測定ガス中に晒されている。
一方、基準電極120は、基準ガス室形成層131によって区画された基準ガス室130に対向し、被測定ガスから離隔されている。
検知電極110と基準電極120とは、制御装置2に接続されている。
制御装置2には、直流電源20が設けられ、検知電極10と基準電極120との間に所定の電圧が印加されるようになっている。
さらに、検知電極110と基準電極120との間に流れる電流の変化、又は、検知電極110と基準電極120との間の電位差の変化を検出するように、電流検出手段21、又は、電圧検出手段21が設けられている。
電流検出手段21、又は、電圧検出手段21には、電流変化ΔI、又は、電圧変化を検出した検出結果に基づいて被測定ガス中のPM量を算出するPM量演算手段22が接続されている。
【0034】
本発明の要部である検知電極110に用いることのできる分極性電極材料について説明する。本発明において、検知電極110に電圧を印加したり、検知電極110の表面に、電荷を帯びたPMが付着したりしたときに、少なくとも検知電極110内で電荷の移動により分極し、電気二重層が形成されることが必要であるため、少なくとも検知電極110は、分極性電極材料を用いて形成することを必須の要件としている。
本発明において、分極性材料として、利用可能な材料は、以下の2種類(M1グループ、M2グループ)に大別することができる。
M1グループは、無機固体酸塩を基本とするものであり、M2グループは、エレクトレットを基本とするものである。
(M1):無機固体酸塩からなるもの、
(M1a):(M1)に、分子性アニオン、及び/又は、分子性カチオンを含むもの、
(M1b):(M1)、又は、(M1a)に、ブレンステッド酸、又は、ブレンステッド塩基とを含むもの、
(M1c):(M1)、(M1a)、(M1b)のいずれかに遷移金属を含むもの、
(M2):強誘電体、誘電体、又は、固体電解質材料のいずれかの分極性無機材料を配向分極、イオン分極、電子分極させたエレクトレットからなるもの、
(M2a):(M2)のいずれかに金属酸化物を含むもの、
(M2b):(M2)、又は、(M2a)のいずれかにアルカリ土類金属酸化物を含むもの、のいずれかを用いることができる。
【0035】
より具体的には、無機固体酸塩として、硫酸一水素イオン(HSO
4)、リン酸イオン(PO
43−)、リン酸一水素イオン(HPO
42−)、リン酸二水素イオン(H
2PO
42−)、セレン酸一水素イオン(HSeO
4−)、ピロリン酸一水素イオン(HP
2O
73−)、ピロリン酸二水素イオン(H
2P
2O
72−)、ピロリン酸三水素イオン(H
3P
2O
7−)、ホスホン酸一水素イオン(H
2PO
3−)等のオキソ酸型アニオンと、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのいずれかのアルカリ金属(第1A族元素)、Ti、Zr、Hf(第4A族元素)、又は、C、Si、Ge、Sn、Pn(第4B族元素)のいずれかの金属イオンとの塩を適宜選択することができる。
【0036】
分子性アニオンとしては、上述のオキソ酸型アニオンの他、イミド酸型アニオン、チオ酸型アニオン、ハロゲン化水素型アニオンのいずれか、又は、これらの複数種を含むものを適宜選択できる。
イミド酸型アニオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CF
3SO
2)
2N
−)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン((C
2F
5SO
2)
2N
−)、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン((FO
2S)
2N
−)のいずれか、又は、これらの複数種を含むものを適宜選択できる。
チオ酸型アニオンとしては、チオメトキシドイオン(CH
3S
−)、チオエトキシドイオン(C
2H
5S
−)、チオプロポキシドイオン(C
3H
7S−)、チオブトキシドイオン(C
4H
9S
−)、チオペントキシドイオン(C
5H
11S
−)のいずれか、又は、これらの複数種を含むものを適宜選択できる。
ハロゲン化水素酸型アニオンとしては、例えば、フッ素イオン(F−)、塩素イオン(Cl−)、臭素イオン(Br−)、ヨウ素イオン(I−)のいずれか、又は、これらの複数種を含むものを適宜選択できる。
【0037】
分子性カチオンとしては、Li、Na、K、Rb、Cs、Frのいずれかのアルカリ金属(第1A族元素)、Ti、Zr、Hf(第4A族元素)、又は、C、Si、Ge、Sn、Pn(第4B族元素)のいずれかの金属イオン、又は、これらの複数種を含むものを適宜選択できる。
【0038】
ブレンステッド酸としては、硫酸(H
2SO
4)、リン酸(H
3PO
4)、セレン酸(H
2SeO
4)、ピロリン酸(H
3P
2O
7)、ホスホン酸(H
3PO
3)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸((CF
3SO
2)
2NH)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸((C
2F
5SO
2)
2NH)、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸((FO
2S)
2NH)、チオメトキシド酸(CH
3SH)、チオエトキシド酸(C
2H
5SH)、チオプロポキシド酸(C
3H
7SH)、チオブトキシド酸(C
4H
9SH)、チオペントキシド酸(C
5H
11SH)、フッ化水素酸(FH)、塩化水素酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)のいずれかを適宜選択できる。
【0039】
ブレンステッド塩基としては、イミダゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピロリジン誘導体、ピペラジン誘導体、アミン誘導体、ホスフィン誘導体、スルファン誘導体のいずれかを適宜選択できる。
【0040】
強誘電体材料、誘電体材料、又は、固体電解質材料として、ZrTiO
4−SnO
2TiO
2、Fe
2O
3−NiO、Zn
2TiO
2、ZnNiTiO
4、ZnFe
2O
4、K
2OAl
2O
3−SiO
2、CaOAl
2O
3、BaTiO
3、Al
2O
3TiO
2、MgOAl
2O
3のいずれかを適宜選択できる。
金属酸化物として、TiO
2、
NiO、Al
2O
3、Fe
2O
3、
MnO2、Co
2O
3/CoO、Sn
2O
3/SnO、ZnOのいずれかを適宜選択できる。
アルカり土類金属酸化物として、BaO、K
2O、CaO、MgOのいずれかを適宜選択できる。
【0041】
なお、本発明において、検知電極110を構成する分極性電極材料として、ブレンステッド酸水溶液等の液体を含む場合には、検知電極110は、一定の湿潤状態を維持している必要があるが、内燃機関の燃焼排気を被測定ガスとした場合、被測定ガス中に水蒸気が含まれており、これによって、検知電極110の過剰な乾燥を避けることが可能である。
【0042】
本実施形態において、導電性基体100には、SnO
2にリン酸熱処理を施した分極性の大きい伝導性基体材料が用いられている。
導電性基体100を構成する分極性材料には、SnO
2にリン酸処理を施した材料以外にもSiO
2、TiO
2、WO
3に強酸(リン酸、硫酸等)を用いて熱処理を施した材料等の分極性を有する導電性材料を用いるのが望ましい。
ただし、本発明では、少なくとも、検知電極110が分極性を有することを必須の要件とし、検出電流が小さくなるものの、導電性基体100は、必ずしも分極性を有するものでなくても良く、SnO
2、WO
3、MoO
3等の導電性材料を用いることができる。
【0043】
図2を参照して、本発明の第1の実施形態におけるPM検出素子10の具体的な構成並びに製造方法の概要について説明する。
導電性基体100は、上述の導電性基体材料を用いて、ドクターブレード法や加圧成型法等の公知のセラミック成形方法により略平板状に形成されている。
導電性基体100の一方の面には、検知電極110、検知電極リード部111、検知電極端子部112、基準電極端子部122が形成され、他方の面には、基準電極120、基準電極リード部121が形成され、基準電極リード部121と基準電極端子部122とは導電性基体100を貫通するスルーホール電極123を介して接続されている。
検知電極110及び基準電極120は、上述の分極性電極材料を用いて、ドクターブレード法、又は、厚膜印刷等の公知の成膜方法によって、導電性基体100の表面に形成することができる。
【0044】
検知電極リード部111、検知電極端子部112、基準電極リード部121、基準電極端子部122、スルーホール電極123は、電気伝導性の良好な金属を含み厚膜印刷、蒸着、メッキ等の公知の導体形成方法によって形成することができる。
導電性基体100の基準電極120の形成された側に積層して、基準ガス室130を形成するための基準ガス室形成層131と基底層140とが形成されている。
基準ガス室形成層131と基底層140には、例えば、アルミナ、チタニア、スピネル等の公知の絶縁性セラミックスが用いられ、ドクターブレード法や加圧成型法等の公知のセラミック成形方法により平板状に形成されている。プ基準ガス室形成層131は、平板の一部を切り欠いた略コ字型に形成され、基準ガス室130が区画されている。
検知電極110、基準電極120等を形成した導電性基体100と基準ガス室形成層131と基底層140とを積層、焼成することにより一体のPM検出素子10を形成することができる。
【0045】
図3、
図4A、
図4B、
図4C、
図4Dを参照して本発明のPM検出センサ1のPM検出原理について説明する。
直流電源20から検知電極110と基準電極120とからなる電極対間に所定の直流電圧を印加すると、
図4Aに示すように、検知電極110、導電性基体100、基準電極120内で電荷の分極が起こる。
このとき、
図3に4Aとして示すように検知電極110と基準電極120との間に電流Iが流れる。
図4Bに示すように、各電極110、120、導電性基体100内での分極が進行し、
図3に4Bとして示す分極の進行と共に徐々に電流Iは小さくなる。
検知電極110内に分極による電気二重層が形成された状態で、被測定ガス中にPMを模したカーボン粒子を噴射すると、
図3に4Cとして示すように、瞬間的に電流Iが大きくなり、再び低下する。
このとき、カーボン粒子は、正の電荷を帯びており、被測定ガス内に噴射されたカーボン粒子が検知電極110の表面に付着すると、
図4Cに示すように、検知電極110内で、ほぼ平衡状態となっていた電気二重層に乱れを生じさせ、検知電極110内、及び、導電性基体100内で電子及びプロトンの移動が起こり、電流Iが再び流れ、
図3に4Dとして示すように徐々に低下する。
検知電極110の表面に堆積するPM量に変化がなければ、
図4Dに示すように帯電したPMと、検知電極110内で分極した電荷とがバランスすると、
図3に4Dとして示すように電流Iは小さくなくなる。
【0046】
なお、
図3に示すように、電圧の印加から一定の分極状態となるまでに、凡そ300秒程度掛かり、この期間は、PM検出センサ1が検出機能を発揮し得ない不感期間となる虞があるが、実際の内燃機関の燃焼排気中のPMを検出する際には、内燃機関の始動前に予めPM検出センサ1への電圧の印加を実施するよう制御することで、始動直後のPM排出の検出漏れを回避できる。
また、本実施形態においては、PM検出素子10を加熱することなく電圧の印加のみによって分極を起こさせているが、素子温度を高くすることで、分極し易くし、不感期間の短縮を図ることも可能である。
【0047】
本発明のPM検出センサ1は、PMが検知電極110に付着した瞬間に発生する電荷の移動によって引き起こされる電流Iの変化を電流/電圧検出手段21によって検出することで極めて応答性の高いPM検出を実現できる。
【0048】
表1及び
図5を参照して、本発明の第1の実施形態におけるPM検出センサ1を用いた試験結果について説明する。
表1に示すように、SnO
2をリン酸処理した分極性材料からなる導電性基体100と、SnO
2からなり分極性を有しない導電性基体100zと、リン酸処理したSnO
2と集電材としてAuを混合することで得た分極性電極材料からなる検知電極110と、Auからなる分極性を有しない検知電極110zとの組み合わせについて、水準1〜4の試料を作成し、PMを吹き付けたときに検出される電流を検出した。
検出条件として、内燃機関の燃焼排気を模した被測定ガスとして、所定の温度(例えば150℃〜200℃)に維持した不活性ガスを検知電極110側に供給し、直流電源20から所定の電圧V(例えば、0.3〜0.8V)を印加し、電流Iが一定となった状態で、PMを模したカーボン粒子を噴射したときの電流Iの変化量を計測した。
その結果を、
図5、及び、表1の判定結果に示す。
【0049】
なお、本試験においては、Ptの多孔質電極に無機固体酸塩を混合しリン酸水溶液を含浸させたものを用いている。Ptは電圧取り出し安定(集電)のため、すなわち半導体化のために用いている。
本試験においては、簡易試験であるため、分極性材料SnP
2O
7と集電材のPtとを分極性の酸水(分極性材料)でペースト化して平板状に形成した導電性基体に塗りつけて構成したものを用いた。実際のセンサとして使用する際には、上記の分極性材料を用いることで本発明の効果を発揮することが可能である。
【表1】
【0050】
図5に示すように、水準1、水準2においては、PMの吹き付けたときに電流Iの変化が検出され、特に水準1において、大きな電流変化が検出された。
一方、水準3、水準4においては、いずれも、PMの吹き付けたときに電流Iの変化が検出されなかった。
このことから、少なくとも、検知電極110を分極性の電極材料によって形成することによって、PMの検出が可能となり、さらに、導電性基体100にも分極性材料を用いることで、より大きな電流変化が検出され、センサとしての信頼性を向上できると考えられる。
【0051】
ここで、
図6A、
図6Bを参照して、水準1と水準2の試験結果の違いについて説明する。
図6Aに示すように、水準1では、PMが検知電極110の表面に付着したときに、検知電極110内だけでなく導電性基体100内でも電荷の移動が起こり、それが大きな電流Iとなって検出されるものと考えられる。
一方、
図6Bに示すように、水準2では、PMが検出電極110の表面に付着したときに、検知電極110の内部だけで分極がこるので、電荷の移動量も少なく、結果として検出される電流の変化が小さくなることが判明した。
また、分極性を有しない検知電極110zを用いた水準3、4の場合には、電極上にPM100zが堆積しても検出できないことが判明した。
【0052】
図7を参照して、本発明のPM検出センサ1を用いて、被測定ガス中に既知量のPMの噴射と停止を繰り返したときの応答性について説明する。
図7に実線で示すように、単位時間当たりに噴射するPM供給速度Q(μg/s)を周期的に変化させたとき、
図7に点線で示すように、PM供給速度Qの変化に追従して検出電流I(μA)も変化し、極めて高い応答性を発揮できることが判る。
【0053】
また、経過時間と共に、検出電流Iが徐々に小さくなっているが、これは、検知電極110の総面積に対するPMの堆積量の増加により、PMが検知電極110の表面上に堆積した瞬間に移動する電荷量が、分極状態となった総電荷量に対して、相対的に減少するためと推察される。
したがって、本発明のPM検出センサ1を実際の燃焼排気中のPM量の検出に用いる場合には、検知電極110上にPMの堆積が続くとやがて飽和状態となり、被測定ガス中のPM量を検出できなくなる虞があるが、検知電極110上に堆積したPMを燃焼除去することによって、PM検出センサ1を再生することができる。
【0054】
このとき、本発明の検知電極110に用いられている分極性電極材料、及び、導電性基体100に用いられている分極性基体材料は、プロトン伝導性を有するプロトン伝導体としても機能を発揮し得るものであるため、直流電源20から検知電極110と基準電極120とに印加する電圧を上げ、被測定ガス中に存在する水蒸気と検知電極110の表面に堆積したPMとの間に電気化学反応を生じさせ、酸化力の強い活性酸素亜種を発生させ、PMを酸化除去する事も可能である。
【0055】
さらに、後述する第2の実施形態におけるPM検出素子10aのように、通電により発熱する発熱体150を内蔵させることにより、検知電極110上に堆積したPMを、定期的に加熱除去するようにしても良い。
【0056】
図8A、
図8Bを参照して、本発明のPM検出センサ1の低温始動時に対する効果、及び、線形性に対する効果について説明する。
本発明の始動性向上に対する効果を確認するため、MP
2O
7型ピロリン酸塩からなるプロトン伝導性の固体電解質層とその対向する表面にAuからなる一対の多孔質電極を形成し、電気化学反応によってPM量を検出する従来のPM検出センサを比較例とし、検知電極をピロリン酸塩からなる分極性電極材料によって形成した本発明の実施例とし、被測定ガスの温度を25℃から250℃まで変化させ、一定のPM供給速度Q(=8μg/s)に対する検出電流の変化の違いを調査した。
その結果、
図8Aに示すように、本発明の実施例では、25℃の低温時においても、高い電流変化ΔIを示し、しかも、一定の入力(PM供給量)に対して、いずれの温度においても、ほぼ一定の電流変化ΔIを示しており、広い温度領域で、精度良くPM量を定量的に検出できると期待できる。
【0057】
一方、従来のプロトン伝導体を固体電解質層として形成し、電気化学反応を利用した比較例では、50℃以下では、極めて電流変化ΔIが小さく、100℃においても、150℃以上で計測した結果と比較して、差が大きく、出力結果の温度依存性が高いことが判る。
さらに、PM供給速度Q(μg/s)を増やした場合の検出出力は、2μg/sから20μg/sまで供給速度Qを変化させたときに、
図8Bに実線で示すように本発明の実施例においては、直線的に変化しており、極めて線形性が高く、本発明のPM検出センサ1を用いれば、被測定ガス中の存在するPM量の多寡に拘わらず極めて高い精度で定量的な検出が可能となることが判る。
【0058】
一方、
図8Bに点線で示す比較例においては、5μg/s迄は、本発明の実施例と遜色のない結果を示しているが、PM供給速度Qが多くなるにつれ、線形性が失われることが判る。
これは、比較例においては、一定量以上のPMが短時間に排出された場合に、電気化学反応が追いつかず未反応のPMが電極表面に残留したり、電気化学反応をきっかけとして電流変化を伴わない被測定ガス中に含まれる酸素とPMとの自己燃焼反応が起こったりするためと思料する。
【0059】
図9を参照して、本発明の第2の実施形態におけるPM検出センサ1aの要部であるPM検出素子10aについて説明する。
本実施形態においては、上記実施形態と同様の構成に加えて、絶縁体(140、160)内に埋設され通電により発熱する発熱体150を付加した点が相違する。
図9に示すように、基底層140の裏面側に積層して、基底層140と同材質のヒータ基体160が設けられ、基底層140とヒータ基体160との間には発熱体150及び、発熱体リード部151、152とが埋設され、ヒータ基体160の対向する表面に形成された発熱体端子部155、156と、ヒータ基体160を貫通して発熱体リード部151、152及び発熱体端子部155、156とを接続する発熱体スルーホール153、154とによってヒータ部が構成され、一体的焼成された、PM検出素子10aを形成している。
本実施形態によれば、通電によって発熱体150を500℃以上の高温に発熱させて検知電極110上に堆積したPMを燃焼除去したり、通電によって発熱体150を150℃から200℃程度に維持して、導電性基体100及び検知電極110の温度を一定に保持し、早期に分極状態を安定化させ、検出精度の安定化を図ったりすることも可能となる。
【0060】
図10を参照して、本発明の第3の実施形態におけるPM検出素子10bについて説明する。
本実施形態においては、上記第1の実施形態におけるPM検出素子10、又は、第2の実施形におけるPM検出素子10aの検知電極110側に積層して、検知電極110を覆うように区画した粒子状物質捕集室(PM捕集室)170と、被測定ガス中の粒子状物質に静電気的な引力を作用させPM捕集室170の内側に引き込むために、検知電極110との間に強電界を発生させる電界発生電極180とを具備することを特徴とする。
PM捕集室170は、基底層140と同材質の絶縁性材料を用いたPM捕集室形成層171と、遮蔽層190によって区画されている。
本実施形態においては、検知電極端子部112bと基準電極端子部122bとが遮蔽層190の表面に形成され、これに合わせて検知電極リード部111と検知電極端子部112bとを接続するスルーホール電極113b及び基準電極リード部121と基準電極端子部122bとを接続するスルーホール電極123bが形成され、電界発生電極180に接続する電界電極リード部181、電界電極端子部182、スルーホール電極183が形成されている。
本実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果に加え、検知電極110と電界発生電極180との間に強い電界を発生させ、被測定ガス中のPMを静電気的な引力でPM捕集室170内に引込、PM量を検出することが可能となり、被測定ガスの流速の影響や、被測定ガス流路への取付け方向の影響を拝上してさらに安定したPM検出を行うことが可能となる。
【0061】
本発明は上記実施形態に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、自動車エンジン等の内燃機関に搭載される炭素量検出センサを例に説明したが、本発明の炭素量検出センサは、車載用に限定されるものではなく、火力発電所等の大規模プラントにおける炭素量検出の用途にも利用可能である。
また、電極対間に流れる電流を周期的に変化させたパルス電流として通電制御することにより、さらなる検出精度や応答性の向上も期待できる。
加えて、上記実施形態においては、いわゆる積層型のセンサ素子構造を例として説明したが、分極性固体電解質材料を有底筒状に形成し、その外側と内側と分極性電極層を設けたいわゆるコップ型のセンサ素子構造としても良い。