(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140413
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-209902(P2012-209902)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-68416(P2014-68416A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年7月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 健
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−233493(JP,A)
【文献】
特開2002−130265(JP,A)
【文献】
実開平02−088444(JP,U)
【文献】
特開2007−181325(JP,A)
【文献】
特開2005−265194(JP,A)
【文献】
実開平01−131254(JP,U)
【文献】
特開2008−057657(JP,A)
【文献】
特開平07−308044(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0265645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
ステータコアを有するステータと、
前記回転軸に嵌合され、前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記ロータの両側にそれぞれ取り付けられた一方の軸受及び他方の軸受と、
一方の前記軸受の外輪の前記ロータと反対側の側面が当接する段差を設けてなる軸受受容部を有する第1フランジと、
他方の前記軸受を受容する貫通孔の軸受受容部、及び、前記貫通孔の軸受受容部の外端部側に連設形成された内周に雌ねじを設けた軸受ホルダー受容部を有する第2フランジと、
一方の前記軸受と前記ロータの間に介在し、一方の前記軸受の内輪と前記ロータに当接する一方のスペーサと、
他方の前記軸受と前記ロータの間に介在し、他方の前記軸受の内輪と前記ロータに当接する他方のスペーサと、
前記軸受ホルダー受容部の雌ねじに螺着可能に、外周に雄ねじを設けた回転可能な軸受ホルダーと、を備え、
一方の前記軸受の内輪は前記回転軸にすきまばめで嵌合され、
他方の前記軸受の内輪は前記回転軸にすきまばめで嵌合され、
一方の前記軸受の外輪は前記第1フランジの前記軸受受容部にすきまばめで嵌合され、
他方の前記軸受の外輪は前記第2フランジの前記軸受受容部にすきまばめで嵌合され、
前記軸受ホルダーは、概略円板形状を有し、
前記軸受ホルダーは、他方の前記軸受の外輪と当接する一方の側面であって概略円板形状の外縁部に細い円環状の凸部が設けられており、
回転移動された前記軸受ホルダーの前記凸部が前記軸受の外輪に当接され、かつ、回転移動された前記軸受ホルダーに他方の前記軸受の外輪が軸方向に押し込まれることで一方の前記外輪が前記段差に当接する状態となるように、他方の前記軸受の外輪、他方の前記軸受の内輪、他方の前記スペーサ、前記ロータ、一方の前記スペーサ、一方の前記軸受の内輪及び一方の前記軸受の外輪の順に予圧が掛けられていることによって、一方の前記軸受及び他方の前記軸受の予圧調整とエンドプレイの取り除き調整とが同時に行われていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記軸受ホルダーの他方の外面となる側面には回転させる際の工具受けの孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
一方の前記軸受の外輪が前記第1フランジの前記軸受受容部にすきまばめされる際の隙間は5μm〜16μmであり、
他方の前記軸受の外輪が前記第2フランジの前記軸受受容部にすきまばめされる際の隙間は5μm〜16μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
一方の前記軸受の内輪が前記回転軸にすきまばめされる際の隙間は5μm〜13μmであり、
他方の前記軸受の内輪が前記回転軸にすきまばめされる際の隙間は5μm〜13μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記回転軸は同一径の段なしの丸棒でなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関するものであり、特に、回転電機の軸方向のあそびを最小限にすることができる構造にした回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用分析器のポンプ等には、細かな回転角度制御が可能なことから、ステッピングモータを使うケースが多い。しかしながら、ステッピングモータを使用した医療用分析器のポンプでは、ステッピングモータのエンドプレイ(これを「軸方向の遊び」とも言う)が問題視されてきた。つまり、医療用ポンプは、薬液等の吸入量を細かく調整する必要があるので、モータのエンドプレイがあるとその分だけ吸入量に誤差が生じてしまう。
【0003】
また、一般的な直動アクチュエータとして使う場合にも、同様にエンドプレイは問題となる。
【0004】
回転電機全般において、駆動時にステータとロータに発生する渦電流の発生を抑えるため、一般に、回転電機のステータとロータは積層された電磁鋼板で製作されている。ステータとロータにそれぞれ使用される積層電磁鋼板部品は、積層枚数も多いことから厚さのばらつきが発生しやすい。このばらつきは、予圧スプリングが入るスペースのばらつきとなるので、結果としてエンドプレイのばらつきにつながる。
【0005】
また、回転電機全般において、軸受には玉軸受が用いられている。このような回転電機では、軸受に玉軸受を設けることにより回転軸は滑らかに回転することができる。しかし、玉軸受単体には内輪と外輪との間にアキシャル方向及びラジアル方向のガタツキが存在するとともに、内輪とロータとの間及び外輪とケースとの間にそれぞれガタツキが存在し、このガタツキが振動や騒音の発生要因となることがある。
【0006】
このような背景から、スプリング等で玉軸受の内輪に軸方向の予圧を与えることにより玉及び外輪に対する予圧調整を行うことが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、スプリング等で玉軸受に予圧をかけた場合、回転軸のエンドプレイが発生するが、このエンドプレイは医療用ポンプやエンコーダを使用した回転機では最小限に留める必要がある。
【0007】
上記特許文献1に記載の回転電機は、ロータの下端に調整ねじがねじ込まれ、その調整ねじと玉軸受の内輪との間に予圧バネ等の予圧調整用部材が挟持されている。そして、調整ねじがねじ込まれると、予圧調整部材は玉軸受の内輪をロータの軸方向に沿って押圧し、その玉軸受に予圧を与える構造にしている。
【0008】
上記特許文献2に記載の回転電機は、ステータ及びロータを備えるとともに、ロータを軸支する玉軸受、及びステータが固定されるケースを有する回転電機であり、玉軸受の内輪はロータの回転軸に圧入され、玉軸受の外輪はケースの軸受圧入部に圧入されている。また、軸受圧入部の外側において、ケースの内面に設けられた雌ねじ部と、雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を外周に有し、雌ねじ部と雄ねじ部との螺着により玉軸受の外輪の側面に当接する調整具(エンドプラグ)と、を備え、調整具を雌ねじ部に螺着させて外輪の側面に当接させ、その外輪を軸方向に押し込むことにより、玉軸受の軸方向隙間を調整する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−45501号公報。
【特許文献2】特開2007−181325号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の回転電機は、調整ねじがねじ込まれると、予圧調整部材が内輪をロータの軸方向に沿って押圧し、玉軸受に予圧を与えて調整するものであるが、その予圧調整用部材は、そのまま製品に組み込まれるため、部品点数、及び重量の増加、コストの高騰を招くという問題点があった。
【0011】
一方、特許文献2に記載の回転電機の構造では、圧入力は玉軸受の外輪外径とケース内径等の嵌合部寸法に影響されやすく、ばらつきが非常に大きい。また、圧入する方法だと圧入時の抵抗のばらつきにより軸受と軸受ホルダーの間にアキシャル隙間が起こりやすい。そのため、製造時にエンドプレイを0(ゼロ)にしても使用時に軸受がアキシャル隙間方向へ動いた場合、エンドプレイが発生して不良となる虞がある問題点があった。
【0012】
また、圧入力のばらつき等を考慮にいれて、予めケース内径を小さく形成しておくので、大きな圧入力を必要とする。したがって、調整には非常に大きなトルクで調整具を回転させなければならない。同時に大きな予圧を軸受にかけることになり、軸受の外輪に変形を生じさせやすい。軸受の外輪が変形した場合、軸受内のボールが正しく摺動しなくなり回転機の動作不良を発生させる原因となる。すなわち、予圧が高ければ高いほど玉軸受の寿命が短くなる。このため、信頼性を要求される用途には使用できないという問題点があった。
【0013】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、エンドプレイを0(ゼロ)として軸方向の遊びを無くすことができる予圧調整作業を簡便かつ短時間に行うことができる廉価に構成可能な回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明の回転電機は、回転軸と、ステータコアを有するステータと、前記回転軸と一体に回転するロータと、前記ロータを軸支する2つの軸受と、該軸受を受容する軸受受容部をそれぞれ有する第1フランジ及び第2フランジと、を有する回転電機であって、内周に雌ねじを設けて前記第2フランジの軸受受容部の外端部側に形成された軸受ホルダー受容部と、前記軸受ホルダー受容部の雌ねじに螺着可能に、外周に雄ねじを設けた
回転可能な軸受ホルダーと、を備え、前記2つの軸受の内輪は前記回転軸にそれぞれすきまばめで嵌合され、外輪は前記第1フランジ及び第2フランジの前記軸受受容部にそれぞれすきまばめで嵌合され
、前記2つの軸受の予圧調整とエンドプレイの取り除き調整を同時に行うように、回転移動された前記軸受ホルダーが前記軸受の外輪に当接され、かつ、回転移動された前記軸受ホルダーに前記軸受の外輪が軸方向に押し込まれた状態となっており、前記軸受ホルダーは、概略円板形状を有し、前記軸受の外輪と当接する一方の側面であって概略円板形状の外縁部には細い円環状の凸部が設けられている、構成である。
【0015】
この構成によれば、2つの軸受の内輪は回転軸にそれぞれすきまばめで嵌合され、外輪は第1フランジ部及び第2フランジの軸受受容部にそれぞれすきまばめで嵌合されており、軸受の内輪は回転軸に対してアキシャル方向に移動可能で、外輪は第1フランジ部及び第2フランジの軸受受容部に対してそれぞれアキシャル方向に移動可能である。したがって、スプリング(スプリングシム)を使用せずに外径に雄ねじを設けてある軸受ホルダーを、内周に雌ねじを設けてある軸受ホルダー受容部に螺着し、軸受の外輪に当接する位置までねじ送りさせて締め付けると、軸受をアキシャル方向に移動させることができる。これにより固定子と回転子の厚さのばらつきをねじ締め量で吸収し、軸受ホルダーによって軸受を押えることによりエンドプレイを0(ゼロ)にできる。この結果、軸受ホルダーの回転トルク(締め付け力)で軸受にかかる予圧を安定して設定でき、また軸受外輪の変形等を防ぐことができ、高寿命の軸受、高寿命な回転電機の設計が可能となる。
この構成によれば、軸受ホルダーをねじ込む際、工具受けの孔に工具を係合させて軸受ホルダーを容易に回転させてねじ込むことができるので、調整作業を簡単にすることができる。また、軸受ホルダーが軸受外輪に当接する位置までねじ送りされると、細い円環状の凸部が軸受外輪の端面全体に当接する。
【0016】
また、前記軸受ホルダー
の他方の外面となる側面には細い円環状の凸部が設けられ、他方の外面となる側面には回転させる際の工具受けの孔が少なくとも2個設けられている、構成が好ましい(請求項2)。
【0017】
これにより、軸受端面全体に予圧を付与した状態で保持されるので、軸受外輪の変形を防ぐことができ、信頼性の高い回転電機を得ることができる。
【0018】
また、前記軸受の外輪が前記フランジの前記軸受受容部にすきまばめされる際の隙間は5μm〜16μmである、構成が好ましい(請求項3)。
【0019】
この構成によれば、軸受の外輪と軸受受容部との間の振動を抑えながら、2つの軸受の適切な予圧調整とエンドプレイの取り除き調整を同時に行うことができる。
【0020】
また、前記軸受の内輪が前記回転軸にすきまばめされる際の隙間は5μm〜13μmである、構成が好ましい(請求項4)。
【0021】
この構成によれば、軸受の内輪と回転軸との間の振動を抑えながら、2つの軸受の適切な予圧調整とエンドプレイの取り除き調整を同時に行うことができる。
【0022】
また、前記回転軸に嵌合される前記ロータと前記軸受の間にスペーサが当接するように介在してなる、構成が好ましい(請求項5)。
【0023】
この構成によれば、ロータと軸受との間の隙間をスペーサによりばらつきなく調整することができ、組立作業性及び組立精度が向上する。
【0024】
また、前記回転軸は同一径の段なしの丸棒でなる、構成が好ましい(請求項6)。
【0025】
この構成によれば、回転軸を同一径の段なしの丸棒とすることにより、回転軸の加工を容易にし、加工時間を少なくしてより廉価に製造することができる。また、回転軸に対する2つの軸受及びロータの装着がし易くなり、組立作業性が向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、従来の回転電機で用いていたスプリング等の、エンドプレイの原因となる予圧バネを廃し、軸受ホルダーという「ねじ部品」により軸受位置と軸受にかかる予圧を調整してエンドプレイを最小限にすることができる。そのようにすることにより、予圧調整作業を簡便かつ短時間に行うことができるとともに、軸受ホルダーの回転トルク(締め付け力)で軸受にかかる予圧を安定して設定可能となる。結果として、高寿命の軸受、高寿命な回転電機の設計が可能となるとともに、エンドプレイが0(ゼロ)となるように軸方向の遊びを無くした回転電機、及び廉価に構成可能な回転電機が得られる。
【0027】
また、軸受の内輪と回転軸との間及び軸受受容部と外輪との間をそれぞれすきまばめとし、このうち外輪については軸受ホルダーのねじ送りによって軸方向に押し込むことにより、軸方向の遊び、つまりエンドプレイを0に調整することができるので、振動及び騒音を低減することができる。
【0028】
さらに、軸受ホルダーは、フランジの端部を覆うカバーとして兼用可能であることから、実質的に部品点数は増加することなく、回転電機は簡便、軽量、かつ廉価な構成となる。
【0029】
さらにまた、内輪及びロータに対して付加されるもの(追加部品)がないので、重量は増えることがない。これにより、回転モーメントが増加することもなく、加減速の応答性を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態による回転電機を示す斜視図である。
【
図2】同上回転電機の上半分を断面して示す側面図である。
【
図3】同上回転電機における軸受ホルダーの平面図である。
【
図5】すきまばめにおける隙間と振動との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図1及び
図2は本発明に係る回転電機を示すものであり、
図1はその外観斜視図、
図2はその回転電機の上半分を断面して示す側面図である。
【0033】
図1及び
図2において、符号10は本発明に係る回転電機の一例として示すハイブリット型ステッピングモータである。ステッピングモータ10は、出力軸である回転軸11と、回転軸11に固定されたロータ12と、ステータ13と、ステータ13の軸方向前方に設けられてケース部材となる第1フランジとしてのフロントフランジ14と、ステータ13の軸方向後方に設けられてケース部材となる第2フランジとしてのリアフランジ15、等により構成されている。
【0034】
前記回転軸11は、同一径の段なしの丸棒で形成されている。回転軸11には、電磁鋼板を積層してなるロータコア16aと16bとで永久磁石17を挟んで構成される前記ロータ12が嵌挿されて固定されている。なお、回転軸11とロータコア16a,16b及び永久磁石17との間は、必要に応じて接着剤により固定される。
【0035】
前記ステータ13は、電磁鋼板を積層してなるステータコア13aと、このステータコア13aに巻回されたコイル13b,13bを有し、フロントフランジ14とリアフランジ15とに挟まれ、かつ、フロントフランジ14とリアフランジ15の間を長ビス18で固定して一体化されている。そして、コイル13bに通電することによって、ステータ13が励磁される。
【0036】
前記リアフランジ15には、ステータ13のコイル13bに電力供給するための給電端子19a(
図2参照)を有するコネクタ19が設けられている。
【0037】
前記フロントフランジ14及びリアフランジ15は、それぞれ内方に突出する円筒リブ14a及び円筒リブ15aを有し、円筒リブ14a及び円筒リブ15aの各中心には回転軸11を配置させる貫通孔20及び貫通孔21が軸中心を一致させて設けられている。
【0038】
前記フロントフランジ14には、内径が貫通孔20の内径よりも大きく、かつフロントフランジ14の内面側から穿設されて貫通孔20との間に段差22を設けてなる断面円形の軸受受容部23が、貫通孔20と連設形成されている。その軸受受容部23内には、玉軸受24が受容される。
【0039】
前記リアフランジ15の貫通孔21は、玉軸受25を受容する軸受受容部を兼ねる。したがって、以下の説明では、貫通孔21を軸受受容部21として説明する。また、この軸受受容部21の外端部側には、リアフランジ15の外面側から形成された、内周に雌ねじを設けてなる断面円形の軸受ホルダー受容部26が軸受受容部21と連設形成されている。その軸受ホルダー受容部26には、軸受ホルダー27が螺着により取り付けられる。
【0040】
前記回転軸11は、ロータ12の両側にそれぞれ取り付けられた玉軸受24,25を介してフロントフランジ14とリアフランジ15に支持される。すなわち、ここでの支持は、玉軸受24,25の内輪24a,25aが回転軸11に嵌合され、外輪24b,25bが軸受受容部23,21に嵌合(受容)され、この玉軸受24,25間に回転軸11を掛け渡した状態にして支持する。なお、玉軸受24,25の内輪24a,25aと回転軸11との嵌合、及び玉軸受24,25の外輪24b,25bと軸受受容部23,21との嵌合は、しまりばめではなく、それぞれすきまばめであり、したがってこれらは相対的に動くことができる。また、ロータ12と各玉軸受24,25の内輪24a,25aとの間にはスペーサ28,29が配置され、各内輪24a,25aは、スペーサ28,29及びロータ12に制止されて、それ以上軸方向内方に近接することができないようになっている。
【0041】
なお、本実施例での軸受受容部23と玉軸受24の外輪24bとの隙間は5μm〜16μm、回転軸11と玉軸受24の内輪24aとの隙間は5μm〜13μm、回転軸11とスペーサ28との隙間及び回転軸11とスペーサ29との隙間はそれぞれ50μm〜550μm、回転軸11と玉軸受25の内輪25aとの隙間は5μm〜13μm、軸受受容部21と玉軸受25の外輪25bとの隙間は5μm〜16μmに設定してある。
【0042】
前記軸受ホルダー27は、
図3及び
図4に示しているように、軸受ホルダー受容部26の雌ねじと螺合されて軸受ホルダー受容部26に螺着するための雄ねじを外周に設けてある円環形状をした部材であり、玉軸受25の外輪25bと当接する内面となる一方の面には、細い円環状の凸部27aが設けられている。また、軸受ホルダー27の外面となる他方の面には、その軸受ホルダー27を回転移動させる際に工具(図示せず)の受けとなる工具受けの孔30が2個設けられている。
【0043】
したがって、このように構成されたステッピングモータ10は、各部品を
図2に示すように配置した後で、軸受ホルダー27を回転させてねじ込むと、軸受ホルダー27がモータ中心側にねじ送りされて移動する。移動した軸受ホルダー27は、円環状の凸部27aが玉軸受25の外輪25b側面に面で当接して、玉軸受25がアキシャル方向に動かされ、順次突き当たる位置まで移動する。移動の伝達は、軸受ホルダー27、玉軸受25の外輪25b、玉軸受25の内輪25a、スペーサ29、ロータ12,スペーサ28、玉軸受24の内輪24a、玉軸受24の外輪24bの順で予圧が掛かり、適正予圧に達したところで終了となる。
【0044】
なお、適正予圧の調整は、軸受ホルダー27を回転させる時の回転トルクを管理することで管理できる。また、玉軸受24及び玉軸受25が適切な予圧の突き当たり位置まで移動することにより、アキシャル方向のガタ、つまりエンドプレイを無くして0にすることができる。これにより、一つの軸受ホルダー27を回転させてねじ込むことで一対の玉軸受24,25の位置調整と予圧調整が同時にできる。
【0045】
すなわち、本実施例のステッピングモータ10では、軸受受容部23と玉軸受24の外輪24b、回転軸11と玉軸受24の内輪24a、回転軸11とスペーサ28、回転軸11とスペーサ29、回転軸11と玉軸受25の内輪25a、軸受受容部21と玉軸受25の外輪25bは、それぞれしまりばめではなく、すきまばめであり、特に軸受受容部23及び軸受受容部21と玉軸受24及び玉軸受25の外輪24b,25bの間に、それぞれ5μm〜16μmの隙間を確保することで、振動を抑えて回転軸11のエンドプレイを最小限にすることができる。
【0046】
図5は、軸受受容部21及び23と玉軸受24及び玉軸受25の外輪24b,25bの間に設けた隙間量(μm)と振動(m/s
2)との関係を示す、実験結果で得られたデータである。このデータからは、軸受受容部21及び軸受受容部23の内径と玉軸受24及び玉軸受25の外輪24b,25bの隙間が5μm〜16μmの範囲までは振動レベルはほぼ一定であり、16μmを超えるとほぼ直線的に振動レベルが増加して行くことがわかる。また、5μm未満では中間ばめに近づき、軸受ホルダー27が回転・移動できず、予圧調整ができなくなる。したがって、振動を抑えながら、適切な予圧を与えることが可能な範囲が、隙間量で5μm〜16μmということができる。
【0047】
なお、軸受寿命は予圧によって大きく変わり、過予圧は寿命を大きく悪化させてしまう。例えば、回転軸11の径φ5に対しては呼び番号1650(外径16mm、内径5mm、幅5mm)の玉軸受を使用し、この時、軸受ホルダー27と軸受ホルダー受容部26はM18(1mmピッチ)のねじを設ける。玉軸受25に対してM18(1mmピッチ)より小さいねじを使用すると、玉軸受25の外輪25b側面全体を押すことができなくなり、反対に大きいねじを使用すると加工に時間がかかる。また、ピッチの小さい細目ねじを使うことで、細かな予圧調整が可能となり、結果として玉軸受25の高寿命化が可能となる。
【0048】
軸受ホルダー27をリアフランジ15の厚みの範囲内に収めるには、軸受ホルダー27を薄くする必要があるが、軸受ホルダー27を薄くすると雄ねじ部分の山数が少なくなり強度が低下する。ここでM18(1mmピッチ)の細めねじを使うことで軸受ホルダー27のねじ山数が多くでき、軸受ホルダー27を薄くしてもねじ強度が確保される。軸受ホルダー27を薄くできることによって、従来のサイズと変わらない回転電機の長さを実現できる。
【0049】
さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれものである。例えば、軸受ホルダー27端面の工具受け孔30の形状は、これに限定されず、例えば、縦溝等の形状でも廻し工具の形状との組合せで軸受ホルダー27を回転可能にすることができればよい。さらに、縦溝等の形状、あるいは中心を外した位置に設けた場合では、2つ設けなくても少なくとも1つ以上であればよい。
【0050】
また、軸受ホルダー27は円環状に限定されず、円盤状であってもよい。この場合、重量は少し増すが回転軸11端面も覆うことができ、カバーとしての機能も強くすることができる。
【0051】
また、軸受ホルダー27は、軸受ホルダー受容部26の雌ねじ部と噛み合う部分を接着することによって「ゆるみ止め」とできる。
【0052】
通常、スペーサ28,29は樹脂材料が使用されるが、熱膨張による寸法変化を抑制するため、フロントフランジ14、リアフランジ15、軸受ホルダー27、スペーサ28、29を同一素材のアルミ材にすると、熱膨張(収縮)によるアキシャル方向の寸法変化を最小限にすることができる。
【0053】
さらに、上記実施例では、ハイブリッド型ステッピングモータに適用した場合で説明したが、これに限定されるものではなく、他の各種モータ等、広く一般の回転電機にも適用することができるものである。
【0054】
また、軸受として玉軸受を用いた場合で説明したが、これに限定されるものではなく、他の軸受を用いた場合にも適用することができるものである。
【符号の説明】
【0055】
10 ステッピングモータ(回転電機)
11 回転軸
12 ロータ
13 ステータ
13a ステータコア
13b コイル
14 フロントフランジ(第1フランジ)
14a 円筒リブ
15 リアフランジ(第2フランジ)
15a 円筒リブ
16a ロータコア
16b ロータコア
17 永久磁石
18 長ビス
19 コネクタ
19a 給電端子
20 貫通孔
21 貫通孔(軸受受容部)
22 段差
23 軸受受容部
24 玉軸受
24a 内輪
24b 外輪
25 玉軸受
25a 内輪
25b 外輪
26 軸受ホルダー受容部
27 軸受ホルダー
27a 円環状の凸部
28 スペーサ
29 スペーサ
30 工具受けの孔