(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140451
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】長尺鉄筋の分離装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/30 20060101AFI20170522BHJP
B65G 25/00 20060101ALI20170522BHJP
B65G 47/14 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B65G47/30 J
B65G25/00 B
B65G47/14 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-3048(P2013-3048)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-133638(P2014-133638A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2016年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】302049932
【氏名又は名称】京葉ベンド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 広志
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−023731(JP,U)
【文献】
実開平03−102515(JP,U)
【文献】
実開平02−079306(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00−47/32
B65G 25/00−25/12
B65G 47/88
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺鉄筋の延びる方向に間隔をおいて設けた複数の供給ベルトの各一端を固定し、各他端を可逆回転可能な各別の回転体に取り付け、これらの回転体を同時に同一方向に可逆回転して各供給ベルトを同時に巻き取り、繰り出し可能となし、各供給ベルトが下方にたるんだ状態である待機状態において、搬入コンベアから長尺鉄筋を受け入れ、各供給ベルトが直状に張った状態である供給状態において長尺鉄筋を分離装置に供給する長尺鉄筋の供給装置を用いた長尺鉄筋の分離装置であって、前記供給装置から供給された複数本の長尺鉄筋を受ける供給装置側から下方に向けて傾斜した受け部と、この受け部より高い位置にある複数段の供給装置側から下方に向けて傾斜した載置部とこの載置部に長尺鉄筋を案内する案内部とを備えるとともに、長尺鉄筋の長手方向に間隔をおいて配置された複数の階段状分離体と、前記受け部から順次階段状分離体のより上の載置部に案内部に案内されて長尺鉄筋を移送させるべく昇降動可能で前記各階段状分離体と対をなしてその近傍にそれぞれ配置された複数の昇降体と、階段状分離体の最上段の載置部に位置する長尺鉄筋を一本ずつ搬出すべく昇降動可能な搬出昇降体とからなり、前記階段状分離体の案内部は、階段状分離体本体に取替え可能に固定された付属板の下方から上方に向けて供給装置側に傾斜するよう伸びる端面によって構成されることを特徴とする長尺鉄筋の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非整列状態で無秩序に積み重ねられている多数の長尺鉄筋を一本ずつ分離する長尺鉄筋の分離装置に長尺鉄筋を適宜本数ずつ供給する供給装
置を用いた長尺鉄筋の分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、長尺鉄筋は9〜12m程度の長さを有する一方で、直状を維持する硬さは有していないため、容易に撓むものである。したがって、長尺鉄筋が多数積み重なった状態では、強制的に整列しない限り、湾曲したものや、斜めになったものが混在して重なり合う無秩序な非整列状態となってしまう。このため、長尺鉄筋を切断加工や、曲げ加工する前段階で、無秩序な非整列状態にある多数の長尺鉄筋を一本ずつ分離する必要があり、従来から、各種の分離装置が提案されている。なお、本明細書では、各長尺鉄筋の軸線がすべて同方向に伸びている状態を整列状態といい、各長尺鉄筋の軸線がすべて同方向に伸びていない状態を非整列状態という。
【0003】
従来、例えば、下から順に幅が狭くなる同一段差の第1のステップを供給側に形成する複数の固定板と、各第1のステップに対応する第2のステップを供給側に形成し、前記各固定板の間に挟むように配列する複数の可動板とを備え、各固定板と各可動板の対応する前記第1、第2の各ステップは、それぞれ下から順に幅を狭くし、各第2のステップを各第1のステップより供給側に突出させた分離装置がある。この分離装置によると、各可動板を第1のステップの段差相当分だけ一斉に上下に往復動すると、最下段の第2のステップ上に供給される複数本の鉄筋は、各第2のステップを介して本数が減少しながら上方の第1のステップに順に移載され、最終的に一本ずつに分離されて最上段の第1のステップから排出される(特許文献1)。
【0004】
また、従来の分離装置に対する長尺鉄筋の供給は、通常のコンベア装置やコンベア装置に付属する傾斜板によって、非整列状態のまま間欠的に、あるいは連続的に行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−40416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の分離装置は、複数の固定板と複数の可動板とを交互に配置し、各可動板を同時に上下に往復動させて、長尺鉄筋を順次、各固定板のステップを一段ずつ上昇させるよう構成しているので、各固定板と各可動板との間隔が広すぎるとこの間隔部分で長尺鉄筋が撓んでしまい、この長尺鉄筋を円滑かつ確実に上昇させるには大きな駆動力を必要とするため、これを避けるために多数の固定板と可動板を配置しなければならないという不都合がある。
【0007】
また、従来の分離装置に対する長尺鉄筋の供給は非整列状態のまま行なわれるので、一本ずつ分離するためには前記各ステップを多数必要とし、例えば5段程度設けて、多段階的に順次、整列させながら分離しなければならず、構造が複雑にならざるをえないという不都合もある。本発明は、このような不都合を解消した長尺鉄筋
の分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため本発明の請求項1に係る長尺鉄筋の
分離装置は、長尺鉄筋の延びる方向に間隔をおいて設けた複数の供給ベルトの各一端を固定し、各他端を可逆回転可能な各別の回転体に取り付け、これらの回転体を同時に同一方向に可逆回転して各供給ベルトを同時に巻き取り、繰り出し可能となし、各供給ベルトが最も下方にたるんだ繰り出し状態である待機状態において、搬入コンベアから長尺鉄筋を受け入れ、各供給ベルトが直状に張った巻き取り状態である供給状態において長尺鉄筋を分離装置に供給す
る供給装置
を用いた長尺鉄筋の分離装置であって、前記供給装置から供給された複数本の長尺鉄筋を受ける供給装置側から下方に向けて傾斜した受け部と、この受け部より高い位置にある複数段、例えば2段の供給装置側から下方に向けて傾斜した載置部とこの載置部に長尺鉄筋を案内する案内部とを備えるとともに、長尺鉄筋の長手方向に間隔をおいて配置された複数の階段状分離体と、前記受け部から順次階段状分離体のより高い位置の載置部に案内部に案内されて長尺鉄筋を移送させるべく昇降動可能で前記各階段状分離体と対をなしてその近傍にそれぞれ配置された複数の昇降体と、階段状分離体の最上段の載置部に位置する長尺鉄筋を一本ずつ搬出すべく昇降動可能な搬出昇降体とからなるものであり、階段状分離体の案内部は、階段状分離体本体に取替え可能に固定された付属板の下方から上方に向けて供給装置側に傾斜するよう伸びる端面によって構成されることを特徴とする。
【0009】
この分離装置は、昇降体を昇降動すると、供給装置から受け部に供給された長尺鉄筋を、階段状分離体の案内部で案内してより高い載置部に順次、確実かつ容易に載置し、最上段の載置部に移送された長尺鉄筋を、搬出昇降体によって一本ずつ搬出する。前記階段状分離体と前記昇降体は対をなして近い位置に配置されているので、一段上の載置部に移送する動作が、大きな駆動力を必要とすることなく、確実かつ容易になされる。
また、この分離装置は、下方から上方に向けて供給装置側に傾斜している案内部によって、昇降体で階段状分離体の一段上の載置部へ長尺鉄筋を移送する過程で、昇降体上の長尺鉄筋を案内部の傾斜角度に応じて落下させ、上の載置部へ移送する長尺鉄筋の本数を減少させる。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
【0012】
本発明の請求項
1に係る
長尺状鉄筋の分離装置によれば、簡潔な構成で確実、かつ容易に長尺鉄筋を分離することができる
ほか、階段状分離体のより上の載置部へ長尺鉄筋を移送する過程で長尺鉄筋の本数を減少できるので、載置部の数を減少させて、より簡潔な構成が可能にな
り、加えて、端面の傾斜角度が異なる付属板に交換することで、案内部の傾斜角度を変更できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】階段状分離体と昇降体を示す部分拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る長尺鉄筋
の分離装置の好適な実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、
分離装置20に長尺鉄筋X
を供給する供給装置1は、待機部2と供給部3からなる。待機部2は、積み重ねられた長尺鉄筋Xの落下を規制する長尺鉄筋Xの延びる方向に間隔をおいて設けた複数の長尺鉄筋規制板4と、同じく長尺鉄筋Xの延びる方向に間隔をおいて設けた複数の搬入ベルト5を備えている。前記各長尺鉄筋規制板4は適宜な各搬入ベルト5の間に位置している。前記各搬入ベルト5は無端状チェーンベルトからなり、駆動スプロケット6とこの駆動スプロケット6よりも上方に位置する従動スプロケット7に掛け渡され、遊転スプロケット8に案内されて、
図1上、後述する供給ベルト14への搬入経路が若干上昇するように反時計方向に循環移動する。前記駆動スプロケット6は長尺鉄筋規制板4に規制された長尺鉄筋Xの軸方向に延びる駆動軸9に取り付けられており、この駆動軸9が駆動モータ10によって
図1上、反時計方向に回転されることにより、前記駆動スプロケット6は同方向に回転される。
【0015】
従動スプロケット7は駆動軸9と平行に伸びる従動軸11に取り付けられ、この従動軸11の所定位置には、複数の案内リール12が遊転可能に支持され、各案内リール12の下方には固定軸13が設けられている。前記各固定軸13には、チェーンベルトからなる供給ベルト14の一端が固定され、供給ベルト14の他端は、案内リール12、案内ローラ15を介して可逆回転可能な回転体である巻き取りリール16に設けた固定軸17に固定されている。前記巻き取りリール16は、前記駆動軸9と平行に伸びる回転軸18に取り付けられ、この回転軸18が可逆回転モータ19によって可逆回転することにより、回転軸18と同一方向に可逆回転される。
【0016】
回転軸18に取り付けられた各巻き取りリール16を、可逆回転モータ19によって同時に可逆回転して、各供給ベルト14を同時に、同一長、巻き取り、繰り出し可能となし、各供給ベルト14が最も下方にたるんだ繰り出し状態である待機状態(A)において、搬入ベルト5から長尺鉄筋Xを受け入れ、各供給ベルト14が案内リール12と案内ローラ15間で直状に張った巻き取り状態である供給状態(B)において長尺鉄筋Xを分離装置20に供給するものである。
【0017】
図1及び
図2に示すように、分離装置20は、供給装置1から供給された複数本の長尺鉄筋Xを受ける供給装置1の供給部3側から下方に向けて傾斜した受け部たる長尺鉄筋Xの長手方向に間隔をおいて配置された複数の受け板21(
図1にのみ図示)と、同じく長尺鉄筋Xの長手方向に間隔をおいて配置された複数の階段状分離体22と、昇降動可能で前記各階段状分離体22と対をなしてその近傍にそれぞれ配置された複数の昇降体23と、階段状分離体22の最上段に位置する一本の長尺鉄筋Xを搬出すべく昇降動可能な搬出昇降体24と、搬出された一本の長尺鉄筋Xを図示していない貯蔵部に移す複数対の揺動アーム25からなる。
【0018】
図3に示すように、階段状分離体22は、供給装置1側から下方に向けて傾斜した2段の載置部31,32と、これらの載置部31,32に長尺鉄筋Xを案内する案内部33,34とを備え、前記各載置部31,32は受け板21より高い位置にある。そして、前記案内部33,34は、
階段状分離体本体に取替え可能に固定された付属板22a,22bの上下方向に伸びる一端面によって形成され、下方から上方に向けて供給装置1側に傾斜している。この傾斜角度は、前記付属板22a,22bを交換することにより適宜設定可能で、角度の大きさに応じて一段上の載置部31,32に移送される長尺鉄筋Xの本数が減少する。
【0019】
また、各階段状分離体22と対をなしてその近傍にそれぞれ配置された複数の昇降体23は、受け板21から順次階段状分離体22のより上の載置部31,32に案内部33,34で案内して長尺鉄筋Xを移送させるべく押し上げ部35,36を備えている。そして、これら押し上げ部35,36は、
階段状分離体本体に取替え可能に固定された付属板23a,23bの傾斜した上端面によって形成されている。前記各昇降体23は、ラック37がピニオン38に噛み合い、図示していない可逆回転可能な回転駆動源によってピニオン38が所定方向に回転することにより、昇降動する。そして、この昇降動を阻害しないように、前記各昇降体23のピニオン38に対応する位置に、U字状の切り欠き39を形成している。なお、階段状分離体22と対をなす昇降体23とには、この昇降体23の昇降動を案内する案内機構26を設けている。
【0020】
階段状分離体22の最上段である2段目の載置部32に位置する長尺鉄筋Xを一本ずつ搬出する搬出昇降体24は、前記載置部32の最も低い位置に対応して設けられ、図示していない駆動源によって昇降動され、上昇したときに前記載置部32の最も低い位置に載置された一本の長尺鉄筋Xを、
揺動アーム25へ搬出する。そして、各搬出昇降体24は、各階段状分離体22の外側に対応位置して設けられている。また、
揺動アーム25は、図示していない駆動源によって、図示の待機状態から
図3上、反時計方向に揺動され、載置された一本の長尺鉄筋Xを図示していない貯蔵部へ落下させ、直ちに元位置に
揺動復帰するものである。
【0021】
続いて、本実施形態の動作について説明する。
図1に示すように、長尺鉄筋規制板4によって規制された搬入ベルト5上の非整列状態にある多数の長尺鉄筋Xは、駆動モータ10の回転駆動力で前記搬入ベルト5が
図1上
反時計方向に所定距離だけ循環駆動されると、待機状態(A)にある供給ベルト14上に適宜本数供給され、前記搬入ベルト5の駆動は停止される。次いで、可逆回転モータ19の所定方向への回転駆動力で前記供給ベルト14が徐々に巻き取りリール16に巻き取られていくに従い、前記供給ベルト14上の長尺鉄筋Xは上方に揺すられることにより、徐々に水平方向に広がって整列状態となる。
【0022】
そして、この整列状態において長尺鉄筋Xは、供給ベルト14が供給状態(B)になると受け板21上に供給されて、その傾斜面に沿って下降し、案内部33に係止された状態で停止する(
図3参照)。なお、供給ベルト14から受け板21上に供給される長尺鉄筋Xは、図示していない検出スイッチによって検出され、あらかじめ設定された本数に達すると、前記巻き取りリール16が可逆回転モータ19によって逆転されて、受け板21上への供給が停止される。
【0023】
ここで、待機状態にあった昇降体23がピニオン38の所定方向への回転により所定距離上昇し、受け板21上で案内部33側に位置する複数本の長尺鉄筋Xを押し上げ部35によって前記案内部33に沿って上昇させ、前記案内部33の傾斜によって前記押し上げ部35上の長尺鉄筋Xは落下し、2,3本の長尺鉄筋Xが載置部31上に移送される。次いで、前記ピニオン38の逆方向への回転により昇降体23は下降され、再び待機状態となる。
【0024】
続いて、上述の動作が繰り返され、載置部31上の長尺鉄筋Xは昇降体23の押し上げ部36によって案内部34に沿って上昇され、案内部34によって一本の長尺鉄筋Xのみが許容されて一段上の載置部32上に移送される。この時に、供給ベルト14が再度巻き取られて、整列状態となった長尺鉄筋Xは供給状態(B)にある供給ベルト14から受け板21上に供給されて、その傾斜面に沿って下降し、案内部33に係止された状態で停止する一方、受け板21上で案内部33側に位置する複数本の長尺鉄筋Xは、押し上げ部35によって2,3本の長尺鉄筋Xが載置部31上に移送される。次いで、各供給ベルト14は待機状態(A)となり、各昇降体23も下降されて再び待機状態となる。
【0025】
ここで、各搬出昇降体24が上昇し、載置部32上の長尺鉄筋Xを待機状態(
図3状態)にある
揺動アーム25上に搬出する。次いで、揺動アーム25が待機状態から
図3上、反時計方向に揺動され、揺動アーム25上に載置された一本の長尺鉄筋Xを図示していない貯蔵部へ落下させて、1サイクルの供給、分離動作を終了する。そして、以上の動作を繰り返すことにより、供給、分離動作が連続してなされるものである。
【0026】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、供給ベルト14に関する案内リール12と巻取りリール16の位置関係を反対に設定して、搬入ベルト5側で巻き取るように構成してもよい。また
、押し上げ部35,36は、付属
板23a,23bの端面で構成するほか、付属
板23a,23bを設けることなく
昇降体本体自身の端面で構成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 供給装置
2 待機部
3 供給部
5 搬入ベルト
12 案内リール
13,17 固定軸
14 供給ベルト
15 案内ローラ
16 巻き取りリール
20 分離装置
21 受け板
22 階段状分離体
22a,22b 付属板
23 昇降体
24 搬出昇降体
25 揺動アーム
31,32 載置部
33,34 案内部
35,36 押し上げ部