(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧縮空気供給手段から液体還元剤貯留槽内に供給する圧縮空気の流量および貯留槽内液体還元剤温度を制御することにより、排ガスに添加する気化還元剤量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化システム。
さらに液体還元剤保管槽を備えており、前記液体還元剤貯留槽には液面計が設置され、この液面計からの貯留槽内還元剤液上面のレベル検知信号に基づいて、前記液体還元剤保管槽から液体還元剤貯留槽に供給される還元剤の供給量が制御されることを特徴とする、請求項1または2に記載の排ガス浄化システム。
前記液体還元剤貯留槽に加熱手段が備えられ、この加熱手段によって貯留槽内の液体還元剤の温度が調整されることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
脱硝触媒層の下流側の排気通路に循環熱媒体加熱用熱交換器が設置され、該熱交換器と前記加熱手段とは熱媒体循環管によって接続されており、該熱交換器において触媒層から排出された浄化排ガスの排熱で、液体還元剤貯留槽の加熱手段からの循環熱媒体が加温されることを特徴とする、請求項4に記載の排ガス浄化システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来の排ガス浄化システムでは、脱硝触媒層の上流側の排気通路に、アルコール系還元剤を液体の状態でスプレー等により噴霧し、脱硝触媒層に到達する前にアルコール系還元剤を気化させているため、還元剤の気化熱により排ガス温度が低下し、触媒層における触媒の脱硝性能が低下するという問題があった。そして、これに対処するためには、例えば脱硝触媒の使用量を増加するなどの対策が必要であるという問題があった。特に、船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関などでは、排ガス温度が200〜400℃程度とさらに低温域であるため、還元剤の気化熱により排ガス温度がさらに低くなると、十分な脱硝性能が得られず、実用化が難しいというのが現状であった。
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガスのように、排ガス温度が200〜400℃程度の比較的低温域の排ガスであっても、アルコール、炭化水素などの液体還元剤を用いて、しかも排ガス温度を低下させることなく、高い脱硝性能を維持することができて、実用性に優れている、排ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、液体還元剤貯留槽内で気化した還元剤に対して圧縮空気を供給し、これにより形成された気化還元剤同伴空気を内燃機関の脱硝触媒層上流側の排気通路に供給することにより、排ガスに添加する際に、事前に気化した還元剤を供給することができて、従来の液体還元剤の気化熱による排ガス温度の低下を抑制し、高い脱硝性能を維持することができて、実用性に優れた排ガス浄化システムを構築できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
また、本発明者らは、液体還元剤貯留槽からの還元剤を熱交換器において加熱して気化させ、この気化還元剤を内燃機関の脱硝触媒層上流側の排気通路に供給することにより、排ガスに添加する際に、事前に気化した還元剤を供給することができて、従来の液体還元剤の気化熱による排ガス温度の低下を抑制し、高い脱硝性能を維持することができて、実用性に優れた排ガス浄化システムを構築できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、内燃機関の排気通路に、上流側から順に還元剤供給手段と脱硝触媒層が配置され、前記還元剤供給手段より還元剤が前記触媒層上流側の排ガスに添加され、排ガス中の窒素酸化物が還元されて、排ガスが浄化される排ガス浄化システムにおいて、
液体還元剤貯留槽と、圧縮空気供給手段とを備えており、前記液体還元剤貯留槽内で気化した還元剤に対して前記圧縮空気供給手段から圧縮空気が供給されて、気化還元剤同伴空気が形成され、この気化還元剤同伴空気が前記還元剤供給手段に供給されることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の排ガス浄化システムであって、前記圧縮空気供給手段から液体還元剤貯留槽内に供給する圧縮空気の流量および貯留槽内液体還元剤温度を制御することにより、排ガスに添加する気化還元剤量を制御することを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の排ガス浄化システムであって、さらに液体還元剤保管槽を備えており、前記液体還元剤貯留槽には液面計が設置され、この液面計からの貯留槽内還元剤液上面のレベル検知信号に基づいて、前記液体還元剤保管槽から液体還元剤貯留槽に供給される還元剤の供給量が制御されることを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化システムであって、前記液体還元剤貯留槽に加熱手段が備えられ、この加熱手段によって貯留槽内の液体還元剤の温度が調整されることを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載の排ガス浄化システムであって、脱硝触媒層の下流側の排気通路に循環熱媒体加熱用熱交換器が設置され、該熱交換器と前記加熱手段とは熱媒体循環管によって接続されており、該熱交換器において触媒層から排出された浄化排ガスの排熱で、液体還元剤貯留槽の加熱手段からの循環熱媒体が加温されることを特徴としている。
【0014】
請求項6の発明は、内燃機関の排気通路に、上流側から順に還元剤供給手段と脱硝触媒層が配置され、前記還元剤供給手段より還元剤が前記触媒層上流側の排ガスに添加され、排ガス中の窒素酸化物が還元されて、排ガスが浄化される排ガス浄化システムにおいて、
液体還元剤貯留槽と、還元剤気化用熱交換器とを備えており、液体還元剤貯留槽から導出された還元剤が熱交換器において加熱されて気化せしめられ、この気化還元剤が、前記還元剤供給手段に供給されることを特徴としている。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の排ガス浄化システムであって、還元剤気化用熱交換器が、脱硝触媒層の下流側の排気通路に設置され、該熱交換器において触媒層から排出された浄化排ガスの排熱で液体還元剤が加熱されて気化せしめられることを特徴としている。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化システムであって、液体還元剤が、アルコール、エーテル、ケトン類、および炭化水素よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの有機化合物であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガスのように、排ガス温度が200〜400℃程度の比較的低温域の排ガスであっても、アルコール、炭化水素などの液体還元剤を用いて、しかも排ガスに添加する際に、事前に気化した還元剤を供給することができて、従来の液体還元剤の気化熱による排ガス温度の低下を抑制し、高い脱硝性能を維持することができるうえに、気化還元剤の添加量の制御が容易であり、実用性に優れているという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の第1発明による排ガス浄化システムの第1実施形態を示すフローシートである。
【0021】
同図を参照すると、本発明の第1発明は、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関などの排ガス源1からの排気通路2に、上流側から順に還元剤供給用管(還元剤供給手段)3と脱硝触媒層4が配置され、前記還元剤供給用管3より還元剤が前記触媒層4に添加され、排ガス中の窒素酸化物が還元されて、排ガスが浄化される排ガス浄化システムであって、液体還元剤を貯留させるための液体還元剤貯留槽5と、コンプレッサー(圧縮空気供給手段)6とを備えており、前記液体還元剤貯留槽5内で気化した還元剤に対して前記コンプレッサー6から圧縮空気が供給(パージ)されて、気化還元剤同伴空気が形成され、この気化還元剤同伴空気が前記還元剤供給管3に供給されることを特徴としている。
【0022】
この実施形態においては、液体還元剤貯留槽5上部の空間内に、コンプレッサー6から導管7を経て圧縮空気を供給(パージ)することで、気化還元剤同伴空気を形成し、この気化還元剤同伴空気を前記還元剤供給管3より排気通路2内に供給する。
【0023】
ここで、液体還元剤として用いることができる化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、および軽油、灯油、ガソリン等の炭化水素よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの低分子量の有機化合物であることが好ましい。
【0024】
また、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガスなどの浄化処理にあたり、上記液体還元剤を用いた脱硝触媒システムにおける脱硝触媒としては、有効成分がゼオライトである脱硝触媒を使用するのが好ましい。
【0025】
そして、本発明の第1発明において、気化還元剤同伴空気中の気化還元剤濃度を一定にするために、液体還元剤貯留槽5の温度を一定に保つことが好ましい。
【0026】
この実施形態においては、液体還元剤貯留槽5の周壁にジャケット式加熱器(加熱手段)8が設けられ、この加熱器8によって貯留槽5内の液体還元剤の温度が調整される。そしてこの場合、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に循環熱媒体加熱用熱交換器9が設置され、該熱交換器9と上記加熱器8とは熱媒体循環管10によって接続されており、熱媒体循環管10の途上に介在させられたポンプ11の作動によって、貯留槽5のジャケット式加熱器8から加熱用循環熱媒体が熱交換器9に送り込まれ、この熱交換器9おいて循環熱媒体が、触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で加温された後、液体還元剤貯留槽5のジャケット式加熱器8に返送されて、貯留槽5の温度が一定に保持されることが好ましい。
【0027】
ここで、液体還元剤として、例えばエタノール(沸点78.37℃)を使用した場合、液体還元剤貯留槽5の液体還元剤の温度を、40℃以上、60℃以下に保持することが好ましい。このとき、例えば脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置された熱交換器9において、触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で循環熱媒体を、例えば50℃に加温した後、熱媒体循環管10によって貯留槽5のジャケット式加熱器8に返送し、貯留槽5の温度を50℃に保持することが好ましい。
【0028】
上記のように、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に循環熱媒体加熱用熱交換器9が設置されて、脱硝触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱を利用して、液体還元剤貯留槽5の温度が一定に保持されている。ここで、循環熱媒体としては、通常、水を使用するが、その他、ペンタン、イソペンタン、ブタン、プロパン等の低分子炭化水素、およびフロン(R134a、R245fa)等を用いることができる。循環熱媒体は、回収する排熱の温度分布に応じて最適なものが選定される。
【0029】
本発明の第1発明の排ガス浄化システムにおいて、コンプレッサー6から導管7を経て液体還元剤貯留槽5の上部空間内に供給する圧縮空気の流量および貯留槽内液体還元剤温度を制御することにより、排ガスに添加する気化還元剤量を制御することが好ましい。
【0030】
上記のように、貯留槽5内の液体還元剤の温度を所定温度(例えば50℃)に保持することにより、貯留槽5の上部空間内の気化還元剤の蒸気圧は一定に保持され、貯留槽5の上部空間内の気化還元剤の濃度が一定となる。従って、貯留槽5の上部空間内に供給する圧縮空気の流量および貯留槽内液体還元剤温度を制御することにより、圧縮空気に同伴される気化還元剤の量も制御され、この気化還元剤同伴空気を還元剤供給管3から排気通路2内の排ガスに添加することにより、排ガスへの気化還元剤の添加量を制御することが可能となる。
【0031】
また、気化還元剤同伴空気中の気化還元剤濃度を一定にするために、液体還元剤貯留槽5内の液体還元剤の貯留量を一定に保つことが好ましい。
【0032】
すなわち、本発明の第1発明の排ガス浄化システムにおいて、さらに液体還元剤保管槽12を備えており、前記液体還元剤貯留槽5には液面計(レベルスイッチ)(図示略)が設置され、この液面計からの貯留槽5内の液体還元剤の上面(液面)のレベル検知信号に基づいて、還元剤液面レベルが貯留下限値を下回った際に、液体還元剤保管槽12からポンプ14の作動により導管13を経て液体還元剤を補充し、還元剤液面レベルが貯留上限値を上回った際に、ポンプ14の作動を止めて、液体還元剤の補充を停止することにより、液体還元剤貯留槽5に供給される還元剤の供給量を制御することが好ましい。
【0033】
本発明の第1発明によれば、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガスのように、排ガス温度が200〜400℃程度の比較的低温域の排ガスであっても、アルコール、炭化水素などの液体還元剤を用いて、しかも排ガスに添加する際に、事前に気化した還元剤を供給することができるため、液体還元剤の気化熱による排ガス温度の低下を抑制し、高い脱硝性能を維持することができる。そのうえ、液体還元剤貯留槽5の上部空間内に供給する圧縮空気の流量および貯留槽内液体還元剤温度を制御することにより、圧縮空気に同伴される気化還元剤の量を制御することができ、この気化還元剤同伴空気を還元剤供給管3から排気通路2内の排ガスに添加することにより、排ガスへの気化還元剤の添加量の制御が容易であり、実用性に優れているものである。
【0034】
図2は、本発明の第1発明による排ガス浄化システムの第2実施形態を示すフローシートである。
【0035】
ここで、上記第1発明の第1実施形態の場合と異なる点は、液体還元剤貯留槽5に内部加熱器(加熱手段)15が設けられ、この内部加熱器15によって貯留槽5内の液体還元剤の温度が調整される点にある。そしてこの場合、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に循環熱媒体加熱用熱交換器9が設置され、該熱交換器9と上記内部加熱器15とは熱媒体循環管10によって接続されており、熱媒体循環管10の途上に介在させられたポンプ11の作動によって、貯留槽5の内部加熱器15から加熱用循環熱媒体が熱交換器9に送り込まれ、この熱交換器9おいて循環熱媒体が、触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で加温された後、液体還元剤貯留槽5の内部加熱器15に返送されて、貯留槽5の温度が一定に保持されることが好ましい。このとき、例えば液体還元剤としてエタノールを使用した場合、例えば脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置された熱交換器9において、触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で循環熱媒体を、例えば50℃に加温した後、熱媒体循環管10によって貯留槽5の内部加熱器15に返送し、貯留槽5の温度を50℃に保持することが好ましい。
【0036】
なお、第1発明の第2実施形態の排ガス浄化システムにおいて、コンプレッサー6から導管7を経て液体還元剤貯留槽5の上部空間内に供給する圧縮空気の流量および貯留槽内液体還元剤温度を制御することにより、排ガスに添加する気化還元剤量を制御したり、気化還元剤同伴空気中の気化還元剤濃度を一定にするために、液体還元剤貯留槽5に液面計(レベルスイッチ)(図示略)を設置して、貯留槽5中の液体還元剤の貯留レベルを一定に保持するなど点は、上記第1発明の第1実施形態の場合と同様である。
【0037】
この第1発明の第2実施形態において、その他の点は、上記第1発明の第1実施形態の場合と同様であるので、
図2において、上記
図1と同一のものには、同一の符号を付した。
【0038】
図3は、本発明の第2発明による排ガス浄化システムの第1実施形態を示すフローシートである。
【0039】
同図を参照すると、本発明の第2の発明は、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関などの排ガス源1からの排気通路2に、上流側から順に還元剤供給用管(還元剤供給手段)3と脱硝触媒層4が配置され、前記還元剤供給用管3より還元剤が前記触媒層4に添加され、排ガス中の窒素酸化物が還元されて、排ガスが浄化される排ガス浄化システムであって、液体還元剤を貯留させるための液体還元剤貯留槽5と、還元剤気化用熱交換器16とを備えており、液体還元剤貯留槽5からポンプ18の作動により導管17を経て導出された還元剤が熱交換器16において加熱されて気化せしめられ、この気化還元剤が、前記還元剤供給管3に供給されることを特徴としている。
【0040】
この第2発明の排ガス浄化システムにおいて、還元剤気化用熱交換器16が、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置され、該熱交換器16において触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で液体還元剤が加熱されて気化せしめられることが好ましい。
【0041】
本発明の第2本発明の排ガス浄化システムにおいて、液体還元剤として用いることができる化合物は、上記第1発明の場合と同様に、アルコール類、エーテル類、ケトン類、および炭化水素よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの低分子量の有機化合物である。
【0042】
ここで、液体還元剤として、例えばエタノール(沸点78.37℃)を使用した場合、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置された熱交換器16において触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱でエタノールよりなる還元剤が沸点以上に加熱されて気化せしめられ、この気化還元剤が、還元剤供給管3より排気通路2内に供給されるものである。
【0043】
本発明の第2発明の排ガス浄化システムにおいては、液体還元剤貯留槽5からポンプ18の作動により導出される液体還元剤の導出量を制御することにより、排ガスに添加する気化還元剤量を制御することが好ましい。
【0044】
本発明の第2発明の排ガス浄化システムにおいて、さらに液体還元剤保管槽12を備えており、液体還元剤保管槽12からポンプ14の作動により導管13を経て液体還元剤を液体還元剤貯留槽5に補充するようになされている。ここで、液体還元剤貯留槽5内の液体還元剤の貯留量を保持するには、例えば液体還元剤貯留槽5からポンプ18の作動により導管17を経て気化用熱交換器16に導出される還元剤の導出量に対応して、液体還元剤保管槽12からポンプ14の作動により同量の液体還元剤を液体還元剤貯留槽5に補充するように、両ポンプ14,18の導出量を制御することが好ましい。
【0045】
本発明の第2発明の排ガス浄化システムによれば、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガスのように、排ガス温度が200〜400℃程度の比較的低温域の排ガスであっても、アルコール、炭化水素などの液体還元剤を用いて、しかも排ガスに添加する際に、事前に気化した還元剤を供給することができるため、液体還元剤の気化熱による排ガス温度の低下を抑制し、高い脱硝性能を維持することができる。そのうえ、液体還元剤貯留槽5からポンプ18の作動により導出される液体還元剤の導出量を制御することにより、排ガスへの気化還元剤の添加量の制御が容易であり、実用性に優れているものである。
【実施例】
【0046】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
本発明の第1発明の第1実施形態のフローシートを示す
図1に基づいて本発明の排ガス浄化システムを実施した。
【0048】
同図を参照すると、本発明の排ガス浄化システムにおいて、例えば船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関などの排ガス源1からの排気通路2に、上流側から順に還元剤供給用管(還元剤供給手段)3と脱硝触媒層4が配置され、さらに排ガス浄化システムには、液体還元剤を貯留させるための液体還元剤貯留槽5と、コンプレッサー(圧縮空気供給手段)6とを備えている。
【0049】
ここで、排ガスとしては、酸素(O
2)を13.8〔vol%−dry〕、水(H
2O)を5.0〔vol%−wet〕、窒素酸化物(NOx)を1000〔ppmvd〕、硫黄酸化物(SOx)を600〔ppmvd〕、それぞれ含有する合成ガスを使用し、250〔℃〕の温度で排気通路2に供給した。
【0050】
脱硝触媒層4には、コバルトをイオン交換したゼオライトが担持されたコルゲート・ハニカム構造型脱硝触媒を充填した。
【0051】
また、液体還元剤としてエタノール(CH
3CH
2OH:沸点78.37℃、5000〔ppmvd〕)を使用した。そして、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置された循環水加熱用熱交換器9において、触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で循環水を、例えば50℃に加温した後、温水循環管10によって液体エタノール貯留槽5のジャケット式加熱器8に返送し、貯留槽5の温度を50℃に保持した。
【0052】
そして、液体エタノール貯留槽5上部の空間内に、コンプレッサー6から導管7を経て圧縮空気を供給(パージ)することで、気化エタノール同伴空気を形成し、この気化エタノール同伴空気を前記還元剤供給管3より排気通路2内に供給し、排ガスおよび還元剤としての気化エタノールを触媒層4の脱硝触媒に接触させて、脱硝反応による排ガスの浄化を実施した。このとき、脱硝触媒層4における面積速度を5.0(m/h)とし、反応温度を250℃とした。
【0053】
ここで、面積速度は、ハニカム型脱硝触媒のガス接触面積あたりの処理ガス量であり、次式で表される。
【0054】
面積速度=処理ガス量(Nm
3/h)/ガス接触面積(m
2)
なお、貯留槽5内の液体エタノールの温度を50℃に保持することにより、貯留槽5の上部空間内の気化還元剤の蒸気圧は一定に保持され、貯留槽5の上部空間内の気化還元剤の濃度が一定となった。このため、貯留槽5の上部空間内に供給する圧縮空気の流量および貯留槽内液体還元剤温度を制御することにより、圧縮空気に同伴される気化還元剤の量も制御され、この気化還元剤同伴空気を還元剤供給管3から排気通路2内の排ガスに添加することにより、排ガスへの気化還元剤の添加量を制御することができた。
【0055】
また、気化エタノール同伴空気を前記還元剤供給管3より排気通路2内に供給する際の気化エタノール同伴空気の温度は、約50℃であるが、排ガスに添加する際に、事前に気化したエタノールよりなる還元剤を供給することができるため、液体エタノールの気化熱による排ガス温度の低下を抑制することができ、脱硝触媒層4の入口の排ガス温度は、約250℃と変わらず、これによって、触媒層4の触媒による高い脱硝性能を維持することができた。
【0056】
下記の表1に、排ガス源1から排気通路2に導入した排ガスの温度と、還元剤供給管3より気化エタノール同伴空気を排気通路2内に供給した後の脱硝触媒層入口の排ガス温度を示した。
【0057】
なお、この実施例においては、図示は省略したが、気化エタノール同伴空気中の気化エタノール濃度を一定にするために、貯留槽5内の液体エタノールの貯留量を一定に保持するようにした。このため、排ガス浄化システムにさらに液体エタノール保管槽12を備え、前記液体エタノール貯留槽5には液面計(レベルスイッチ)を設置して、この液面計からの貯留槽5内の液体エタノールの上面(液面)のレベル検知信号に基づき、エタノール液面レベルが貯留下限値を下回った際に、液体エタノール保管槽12からポンプ14の作動により導管13を経て液体エタノールを補充し、エタノール液面レベルが貯留上限値を上回った際に、ポンプ14の作動を止めて、液体エタノールの補充を停止することにより、液体エタノール貯留槽5に供給されるエタノールの供給量を制御するようにした。
【0058】
(実施例2)
上記第1実施例の場合と同様にして、本発明の排ガス浄化システムを実施するが、第1実施例の場合と異なる点は、本発明の第1発明の第2実施形態のフローシートを示す
図2に基づいて排ガス浄化システムを実施した点にある。すなわち、液体還元剤貯留槽5の内部に加熱器(加熱手段)15が設けられ、この内部加熱器15によって貯留槽5内の液体還元剤の温度を調整した。具体的には、液体還元剤としてエタノールを使用し、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置された熱交換器9において、触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で循環水を、50℃に加温した後、温水循環管10によって貯留槽5の内部加熱器15に返送し、貯留槽5の温度を50℃に保持した。
【0059】
この第2実施例において、その他の点は、上記第1実施例の場合と同様であり、下記の表1に、排ガス源1から排気通路2に導入した排ガスの温度と、還元剤供給管3より気化エタノール同伴空気を排気通路2内に供給した後の脱硝触媒層入口の排ガス温度をあわせて示した。
【0060】
(実施例3)
上記第1実施例の場合と同様にして、本発明の排ガス浄化システムを実施するが、第1実施例の場合と異なる点は、本発明の第2発明の第1実施形態のフローシートを示す
図3に基づいて排ガス浄化システムを実施した点にある。
【0061】
同図を参照すると、本発明の排ガス浄化システムにおいて、排ガス源1からの排気通路2に、上流側から順に還元剤供給用管(還元剤供給手段)3と脱硝触媒層4が配置され、さらに排ガス浄化システムには、液体還元剤を貯留させるための液体還元剤貯留槽5と、還元剤気化用熱交換器16とを備えており、液体還元剤貯留槽5からポンプ18の作動により導管17を経て導出された還元剤が熱交換器16において加熱されて気化せしめられ、この気化還元剤が、前記還元剤供給管3に供給される。この第3実施例において、還元剤気化用熱交換器16が、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置され、該熱交換器16において触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱で液体還元剤が加熱されて気化せしめられる。上記実施例1の場合と同様に、液体還元剤としてエタノール(沸点78.37℃)を使用しており、脱硝触媒層4の下流側の排気通路2に設置された熱交換器16において触媒層4から排出された浄化排ガスの排熱でエタノールよりなる液体還元剤を120℃に加熱して気化させ、この気化還元剤を、還元剤供給管3より排気通路2内に供給した。
【0062】
ここで、気化エタノールを還元剤供給管3より排気通路2内に供給する際の気化エタノールの温度は、約120℃であるが、排ガスに添加する際に、事前に気化したエタノールよりなる還元剤を供給することができるため、液体エタノールの気化熱による排ガス温度の低下を抑制することができ、脱硝触媒層4の入口の排ガス温度は、約250℃と変わらず、これによって、高い脱硝性能を維持することができた。
【0063】
下記の表1に、排ガス源1から排気通路2に導入した排ガスの温度と、還元剤供給管3より気化エタノールを排気通路2内に供給した後の脱硝触媒層入口の排ガス温度をあわせて示した。
【0064】
なお、液体エタノール貯留槽5からポンプ18の作動により導管17を経て気化用熱交換器16に導出される液体エタノールの導出量に対応して、液体エタノール保管槽12からポンプ14の作動により同量の液体エタノールを貯留槽5に補充するように、両ポンプ14,18の導出量を制御することにより、液体エタノール貯留槽5内の液体エタノールの貯留量を保持した。
【0065】
(比較例1)
比較のために、従来の排ガス浄化システムのフローシートを示す
図4に基づいて排ガス浄化システムを実施した。
【0066】
同図を参照すると、従来の排ガス浄化システムにおいて、排ガス源21からの排気通路22に、上流側から順に還元剤供給用管(還元剤供給手段)23と脱硝触媒層24が配置され、さらに排ガス浄化システムには、液体還元剤を貯留させるための液体還元剤貯留槽25を備えており、液体還元剤貯留槽25からポンプ26の作動により導出された還元剤を、供給管23から排気通路22内に直接導入して、排ガス中で気化させた。液体還元剤としては、上記実施例1の場合と同様に、エタノール(沸点78.37℃)を使用した。
【0067】
その結果、液体エタノールの気化熱による排ガス温度の低下が生じて、脱硝触媒層24の入口の排ガス温度は、243℃に低下した。これによって、脱硝触媒層24の脱硝反応の温度が低下するため、触媒層24の脱硝性能は低下したものと考えられる。
【0068】
下記の表1に、排ガス源21から排気通路22に導入した排ガスの温度と、還元剤供給管23より液体エタノールを排気通路
22内に直接供給した後の脱硝触媒層24入口の排ガス温度をあわせて示した。
【0069】
なお、この比較例1の排ガス浄化システムにおいて、さらに液体還元剤保管槽27を備えており、液体還元剤保管槽27からポンプ29の作動により導管28を経て液体エタノールを液体エタノール貯留槽25に補充するようにした。
【表1】
【0070】
上記表1に記載の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜3の排ガス浄化システムによれば、排ガス温度が250℃程度の比較的低温域の排ガスであっても、エタノールよりなる液体還元剤を用いて、しかも排ガスに添加する際に、事前に気化した還元剤を供給することができるため、液体還元剤の気化熱による排ガス温度の低下を抑制し、脱硝触媒層4入口の温度を低下させることなく、還元剤であるエタノールを添加することができ、脱硝触媒層4での高い脱硝性能を維持することができた。そのうえ、排ガスへの気化還元剤の添加量の制御が容易であり、実用性に優れていることが確認できた。
【0071】
これに対し、比較例1によれば、脱硝触媒層24の上流側の排気通路22に、エタノールよりなる還元剤を液体の状態で直接導入し、導入から脱硝触媒層24に到達するまでの間にエタノールよりなる還元剤を気化させているため、還元剤の気化熱により排ガスの温度低下
が生じ、脱硝触媒層4における触媒の脱硝性能が低下するという問題が生じた。