【文献】
佐野友祐, 外3名,”SIFT特徴量の拡張と対称性平面物体検出への応用”,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,2009年 8月 1日,第J92−D巻, 第8号,p.1176-1185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、認識対象物を含む画像(画像領域)が一様でない場合、例えば、コントラストが異なる場合や画像特徴量の分布(例えば、輝度分布)が異なる場合、パターンマッチング処理を実行すると、算出されるマッチング値が大きくばらつく。このため、マッチング値から、認識対象物を含む領域を特定(抽出)することは困難である。このような場合に、適切にパターンマッチング処理を実行しようとすると、画像特性ごとに複数のテンプレート画像(基準画像)を用意し、さらに、テンプレート画像ごとにマッチング値と比較するための閾値を複数用意する必要がある。
【0006】
一方、パターンマッチング処理を用いて、画像中の左右対称な物体を特定(抽出)する技術がある。このような技術では、処理対象の画像領域を対称軸で分割し、分割した片方の画像領域を判定用画像領域とし、分割した他方の画像領域を基準画像領域(テンプレート画像領域)とし、判定用画像領域と基準画像領域とに対してパターンマッチング処理を実行する。そして、パターンマッチング処理により取得されたマッチング値を所定の閾値と比較することで、処理対象画像領域が、左右対称な物体を含む領域であるか否かを判定する。
【0007】
上記技術では、複数の基準画像を用意する必要はないが、処理対象の画像領域の特性が一様でない場合(例えば、コントラストが異なる場合や画像特徴量の分布(例えば、輝度分布)が異なる場合)、マッチング処理により得られるマッチング値が大きくばらつく。したがって、マッチング処理において、複雑な閾値処理(例えば、画像特性ごとに場合分けし、複数の閾値を用いた処理等)を行う必要がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、処理対象画像がどのようなものであっても、複雑な閾値処理を行うことなく、適切に、画像中の軸対称な物体を検出することができる物体検出装置、プログラムおよび集積回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、処理対象領域決定部と、分散取得部と、マッチング判定部と、物体領域検出部と、を備える物体検出装置である。
【0010】
処理対象領域決定部は、画像に含まれる画像領域において、対称軸を設定し、対称軸について線対称となるように、画像領域を判定用画像領域と参照用画像領域とに分割する。
【0011】
分散取得部は、画像領域の画像特徴量のばらつき度を取得する。
【0012】
マッチング判定部は、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング値を取得し、取得したマッチング値を、ばらつき度により補正した補正マッチング値に基づいて、判定用画像領域と参照用画像領域の対称軸についての対称性を判定する。
【0013】
物体領域検出部は、マッチング判定部による判定結果に基づいて、対称軸について線対称である画像領域を検出する。
【0014】
この物体検出装置では、処理対象領域を対称軸で分割した2つの領域である、判定用分割画像領域と参照用分割領域とから取得したマッチング値を、処理対象領域のばらつき度で補正することで、補正マッチング値を取得する。この物体検出装置では、画像領域の特性のばらつきを適切に補正した補正マッチング値を用いて、判定処理を実行するので、線対称である部分と、線対称でない部分のマッチング値の分布が、従来に比べると明確に分離され、その結果、閾値の設定が容易となる。
【0015】
したがって、この物体検出装置では、処理対象画像がどのようなものであっても、複雑な閾値処理を行うことなく、適切に、画像中の軸対称な物体を検出することができる。
【0016】
なお、「画像特徴量」とは、画像の特性に依存する物理量であり、例えば、画像を構成する画素の画素値、輝度値、特定の色成分値(例えば、R成分値、G成分値、B成分値、Y成分値、Cr成分値、Cb成分値等)を含む概念である。
【0017】
第2の発明は、第1の発明であって、ばらつき度は、画像領域の分散値または標準偏差である。
【0018】
これにより、画像領域(処理対象領域)の分散値または標準偏差値を用いて、ばらつき度を決定することができる。
【0019】
第3の発明は、第1の発明であって、ばらつき度は、判定用画像領域および参照用画像領域のいずれか一方の分散値または標準偏差である。
【0020】
これにより、判定用画像領域および参照用画像領域のいずれか一方の分散値または標準偏差値を用いて、ばらつき度を決定することができる。
【0021】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明であって、画像特徴量は、輝度値である。
【0022】
これにより、輝度値を用いて、画像領域(処理対象領域)のばらつき度を決定することができる。
【0023】
第5の発明は、第1から第
4のいずれかの発明であって、マッチング判定部は、判定用画像領域および参照用画像領域がn画素×m画素(m,n:自然数)からなり、判定用画像領域および参照用画像領域において、対称軸について線対称な位置にある画素の画素値をI(i,j)およびT(i,j)とすると、
【0024】
【数1】
【0025】
により取得したマッチング値M1と、ばらつき度とに基づいて、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング度を判定する。
【0026】
これにより、この物体検出装置では、SAD値により、マッチング値M1を取得することができる。
【0027】
第6の発明は、第1から第
4のいずれかの発明であって、マッチング判定部は、判定用画像領域および参照用画像領域がn画素×m画素(m,n:自然数)からなり、判定用画像領域および参照用画像領域において、対称軸について線対称な位置にある画素の画素値をI(i,j)およびT(i,j)とすると、
【0028】
【数2】
【0029】
により取得したマッチング値M1と、前記ばらつき度とに基づいて、前記判定用画像領域と前記参照用画像領域とのマッチング度を判定する。
【0030】
これにより、この物体検出装置では、SSD値により、マッチング値M1を取得することができる。
【0031】
第7の発明は、第5または第6の発明であって、マッチング判定部は、ばらつき度をVarとすると、
M2=M1/Var
により取得した補正マッチング値M2に基づいて、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング度を判定する。
【0032】
これにより、この物体検出装置では、マッチング値M1をばらつき度Varにより除算した補正マッチング値M2により、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング度を判定することができる。
【0033】
第8の発明は、第5または第6の発明であって、マッチング判定部は、ばらつき度をVarとし、画像領域の輝度の平均値をAveYとすると、
M2=M1/(Var×AveY)
により取得した補正マッチング値M2に基づいて、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング度を判定する。
【0034】
これにより、この物体検出装置では、マッチング値M1をばらつき度Varおよび画像領域(処理対象領域)の平均輝度値により除算した補正マッチング値M2により、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング度を判定することができる。
【0035】
第9の発明は、第5または第6の発明であって、マッチング判定部は、ばらつき度をVarとし、判定用画像領域および参照用画像領域のいずれか一方の領域の輝度の平均値をAveYとすると、
M2=M1/(Var×AveY)
により取得した補正マッチング値M2に基づいて、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング度を判定する。
【0036】
これにより、この物体検出装置では、マッチング値M1をばらつき度Varおよび判定用画像領域および参照用画像領域のいずれか一方の領域の平均輝度値により除算した補正マッチング値M2により、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング度を判定することができる。
【0037】
第10の発明は、処理対象領域決定ステップと、分散取得ステップと、マッチング判定ステップと、物体領域検出ステップと、を備える物体検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0038】
処理対象領域決定ステップは、画像に含まれる画像領域において、対称軸を設定し、対称軸について線対称となるように、画像領域を判定用画像領域と参照用画像領域とに分割する。
【0039】
分散取得ステップは、画像領域の画像特徴量のばらつき度を取得する。
マッチング判定ステップは、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング値を取得し、取得したマッチング値を、ばらつき度により補正した補正マッチング値に基づいて、判定用画像領域と参照用画像領域の対称軸についての対称性を判定する。
【0040】
物体領域検出ステップは、マッチング判定ステップによる判定結果に基づいて、対称軸について線対称である画像領域を検出する。
【0041】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏するプログラムを実現することができる。
【0042】
第11の発明は、処理対象領域決定部と、分散取得部と、マッチング判定部と、物体領域検出部と、を備える集積回路である。
【0043】
処理対象領域決定部は、画像に含まれる画像領域において、対称軸を設定し、対称軸について線対称となるように、画像領域を判定用画像領域と参照用画像領域とに分割する。
【0044】
分散取得部は、画像領域の画像特徴量のばらつき度を取得する。
【0045】
マッチング判定部は、判定用画像領域と参照用画像領域とのマッチング値を取得し、取得したマッチング値を、ばらつき度により補正した補正マッチング値に基づいて、判定用画像領域と参照用画像領域の対称軸についての対称性を判定する。
【0046】
物体領域検出部は、マッチング判定部による判定結果に基づいて、対称軸について線対称である画像領域を検出する。
【0047】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏する集積回路を実現することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、処理対象画像がどのようなものであっても、複雑な閾値処理を行うことなく、適切に、画像中の軸対称な物体を検出することができる物体検出装置、プログラムおよび集積回路を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0051】
<1.1:物体検出システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る物体検出システム1000の概略構成図である。
【0052】
物体検出システム1000は、
図1に示すように、撮像部1と、物体検出装置2と、を備える。
【0053】
撮像部1は、被写体からの光を集光する光学系(不図示)と、当該光学系により集光された被写体光を光電変換により画像信号(電気信号)として取得する撮像素子(たとえばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ)(不図示)とを備えている。撮像部1は、撮像素子により撮像した画像(画像信号)を、物体検出装置2に出力する。
【0054】
物体検出装置2は、
図1に示すように、画像入力部21と、処理対象領域決定部22と、分散取得部23と、マッチング判定部24と、物体領域検出部25と、を備える。
【0055】
画像入力部21は、撮像部1から出力される画像(画像信号)を入力する。たとえば、撮像部1がRGBベイヤ配列の色フィルタを備えたCCDイメージセンサを用いる撮像装置である場合、画像入力部21には、例えば、R成分信号、G成分信号およびB成分信号を含む画素信号列が入力される。画像入力部21は、入力された画像信号を、必要に応じて、所定の形式に変換し、変換した画像信号(変換されない場合は、無変換の画像信号)を処理対象領域決定部22、分散取得部23、マッチング判定部24および物体領域検出部25に出力する。
【0056】
なお、「所定の形式への変換」とは、例えば、色空間の変換(例えば、RGB色空間からYCbCr色空間への変換)である。画像入力部21は、入力されたRGB色空間の画像信号(R成分信号、G成分信号およびB成分信号)を、必要に応じて、例えば、YCbCr色空間の信号(Y成分信号、Cb成分信号およびCr成分信号)に変換する。
【0057】
なお、以下では、説明便宜のため、画像入力部21において、入力されたRGB色空間の画像信号(R成分信号、G成分信号およびB成分信号)が、YCbCr色空間の信号(Y成分信号、Cb成分信号およびCr成分信号)に変換され、Y信号(輝度信号(輝度画像))のみが処理対象領域決定部22、分散取得部23、マッチング判定部24および物体領域検出部25に出力される場合を例に説明する。
【0058】
処理対象領域決定部22は、画像入力部21から出力される輝度画像を入力する。処理対象領域決定部22は、入力された輝度画像において、対称性を判断する画像領域(処理対象領域)および対称軸を決定する。そして、処理対象領域決定部22は、決定した処理対象領域および対称軸に関する情報を分散取得部23、マッチング判定部24および物体領域検出部25に出力する。
【0059】
分散取得部23は、画像入力部21から出力される輝度画像と、処理対象領域決定部22から出力される処理対象領域および対称軸に関する情報とを入力する。分散取得部23は、処理対象領域全体の画像特徴量(例えば、輝度値)のばらつき度、あるいは、処理対象領域を対称軸で分割した片方の画像領域の画像特徴量(例えば、輝度値)のばらつき度を取得する。そして、分散取得部23は、取得したばらつき度に関する情報をマッチング判定部24に出力する。
【0060】
マッチング判定部24は、
図1に示すように、マッチング値取得部241と、補正マッチング値取得部242と、判定部243と、を備える。
【0061】
マッチング値取得部241は、画像入力部21から出力される輝度画像と、処理対象領域決定部22から出力される処理対象領域および対称軸に関する情報とを入力する。マッチング値取得部241は、処理対象領域を対称軸で分割した一方の画像領域(以下、「判定用分割領域」という。)と、処理対象領域を対称軸で分割した他方の画像領域(以下、「参照用分割領域」という。)とから、マッチング値を取得する(詳細は後述)。そして、マッチング値取得部241は、取得したマッチング値に関する情報を補正マッチング値取得部242に出力する。
【0062】
補正マッチング値取得部242は、分散取得部23から出力されるばらつき度に関する情報と、マッチング値取得部241から出力されるマッチング値に関する情報とを入力する。補正マッチング値取得部242は、ばらつき度に基づいて、マッチング値を補正し、補正したマッチング値(補正マッチング値)に関する情報を判定部243に出力する。
【0063】
判定部243は、補正マッチング値取得部242から出力される補正マッチング値を入力する。判定部243は、補正マッチング値と閾値Thとを比較し、処理対象領域の対称性を判定する。そして、判定部243は、判定結果を物体領域検出部25に出力する。
【0064】
物体領域検出部25は、画像入力部21から出力される輝度画像と、処理対象領域決定部22から出力される処理対象領域および対称軸に関する情報と、判定部243から出力される判定結果とを入力する。物体領域検出部25は、判定部243の判定結果に基づいて、処理対象領域が対称軸についての対称性が高い画像領域であるか否かを判定し、その判定結果を出力する。
【0065】
<1.2:物体検出システムの動作>
以上のように構成された物体検出システム1000の動作について、以下、説明する。
【0066】
以下では、撮像部1により、
図2に示す画像が撮像され、物体検出装置2に入力される場合を例に説明する。
【0067】
図2に示す画像は、画像入力部21に入力される。画像入力部21に入力される画像は、輝度画像であるため、画像入力部21では、変換処理等(色空間の変換処理等)は実行されず、そのまま、入力画像が画像入力部21から処理対象領域決定部22、分散取得部23、マッチング値取得部241、および、物体領域検出部25に出力される。
【0068】
処理対象領域決定部22では、入力された画像において、対称性を判断する画像領域(処理対象領域)および対称軸が決定される。
【0069】
処理対象領域決定部22は、自動または手動により、対称性を判断する画像領域(処理対象領域)を決定する。
【0070】
処理対象領域決定部22は、自動により、処理対象領域を決定する場合、例えば、所定の大きさのトレース枠を設定し、入力画像上で当該トレース枠内の領域を処理対象領域に設定する。そして、順次、トレース枠を、入力画像上の所定の方向にずらしながら、処理対象領域を設定し、物体検出システム1000での処理を繰り返す。なお、トレース枠の大きさ(面積)は、一定であっても可変であってもよい。
【0071】
また、処理対象領域決定部22は、手動により、処理対象領域を決定する場合、例えば、ユーザにより設定された画像領域を、処理対象領域として決定する。
【0072】
以下では、説明便宜のため、処理対象領域が、
図3に示した領域R1、R2およびR3の3つの領域に設定された場合であって、左右(水平方向)の対称性が高い物体(画像領域)を検出する場合について、説明する。
【0073】
処理対象領域決定部22では、処理対象領域について、対称性を判定するための対称軸が決定される。画像の水平方向に対称性が高い物体を検出する場合、
図3に示すように、処理対象領域R1〜R3のそれぞれの領域について、対称性を判定するための対称軸は、対称軸AX1〜AX3として、決定される。つまり、処理対象領域決定部22では、処理対象領域を左右(水平方向)に均等に分割するように、対称軸が設定(決定)される。したがって、対称軸は、
図3に示すように、処理対象領域の中心点を通る、垂直方向の直線となる。
【0074】
処理対象領域決定部22により決定(設定)された処理対象領域および対称軸に関する情報は、分散取得部23、マッチング判定部24および物体領域検出部25に出力される。
【0075】
分散取得部23では、処理対象領域におけるばらつき度Varが取得される。分散取得部23は、例えば、以下の処理により、ばらつき度Varを取得する。
(1)分散取得部23は、処理対象領域に含まれる画素の画素値(輝度値)の分散値を算出し、算出した分散値をばらつき度Varとする。
(2)分散取得部23は、対称軸で分割した片方の画像領域である判定用分割領域または参照用分割領域に含まれる画素の画素値(輝度値)の分散値を算出し、算出した分散値をばらつき度Varとする。
【0076】
上記処理により、分散取得部23により取得されたばらつき度Varに関する情報は、補正マッチング値取得部242に出力される。
【0077】
マッチング値取得部241では、処理対象領域を対称軸で分割した一方の画像領域である判定用分割領域と、処理対象領域を対称軸で分割した他方の画像領域である参照用分割領域とから、マッチング値M1を取得する。これについて、
図4を用いて、説明する。
【0078】
図4は、
図3の処理対象領域R1を抽出して示した図である。
図4の画像領域R1_Lは、処理対象領域R1を対称軸AX1で分割した一方の画像領域である判定用分割領域であり、画像領域R1_Rは、処理対象領域R1を対称軸AX1で分割した他方の画像領域である参照用分割領域である。
【0079】
また、画像の左右方向(水平方向)の対称性を判定する場合、
図4に示すように、座標軸が設定される。つまり、判定用分割領域R1_Lについての座標軸(X軸:XL、Y軸:YL)および参照用分割領域R1_Rについての座標軸(X軸:XR、Y軸:YR)は、互いに、Y軸方向が同一であり、X軸方向が逆方向となるように設定される。なお、判定用分割領域R1_Lの座標軸において、左上端点を原点とし、参照用分割領域R1_Rの座標軸において、右上端点を原点とする。また、判定用分割領域R1_Lおよび参照用分割領域R1_Rは、ともに、n画素×m画素(m,n:自然数)からなる画像領域であるものとする。
【0080】
マッチング値取得部241は、判定用分割領域および参照用分割領域に含まれる全ての画素に対して、対称軸について線対称な位置の画素同士の差分の絶対値を算出し、積算することで、マッチング値M1を取得する。すなわち、マッチング値取得部241は、判定用分割領域R1_Lの座標(i,j)の位置の画素値をI(i,j)とし、参照用分割領域R1_Rの座標(i,j)の位置の画素値をT(i,j)とすると、下記(数式3)に相当する処理を実行することで、マッチング値M1を取得する。
【0082】
上記処理により取得されたマッチング値M1に関する情報は、補正マッチング値取得部242に出力される。
【0083】
補正マッチング値取得部242では、ばらつき度Varに基づいて、マッチング値M1を補正した補正マッチング値M2が取得される。具体的には、補正マッチング値取得部242において、
M2=M1/Var
に相当する処理が実行されることで、補正マッチング値M2が取得される。
【0084】
そして、上記処理により取得された補正マッチング値M2に関する情報は、判定部243に出力される。
【0085】
判定部243では、補正マッチング値M2が、閾値Thと比較されることで、処理対象領域が左右方向(水平方向)の対称性が高い画像領域であるか否かが判定される。具体的には、判定部243は、以下の処理を実行する。
(1)M2<Thである場合、判定部243は、処理対象領域が、左右方向(水平方向)の対称性が高い画像領域であることを示す判定結果を物体領域検出部25に出力する。
(2)M2≧Thである場合、判定部243は、処理対象領域が、左右方向(水平方向)の対称性が高い画像領域ではないことを示す判定結果を物体領域検出部25に出力する。
【0086】
物体領域検出部25では、判定部243の判定結果に基づいて、処理対象領域が対称軸についての対称性が高い画像領域であるか否かを判定し、その判定結果を出力する。例えば、物体領域検出部25は、対称軸についての対称性が高い画像領域の情報(座標位置情報、大きさ(面積)、形状)等をデータとして出力する、あるいは、対称軸についての対称性が高い画像領域が明示した画像を出力する、等により、判定結果を出力する。
【0087】
図5に、出力結果画像(一例)を示す。
図5では、領域R1およびR2の領域に枠が重畳され、領域R1およびR2が左右対称性の高い物体を含む画像領域として判定(抽出)されたことを示している。
【0088】
図6に、物体検出システム1000において、処理対象領域を、
図3の領域R1〜R3として、上記処理を実行したときの処理結果を示す。具体的には、
図6は、領域R1〜R3を処理対象領域として、上記処理を実行したときの(1)マッチング値M1、(2)輝度値の分散値Var、(3)補正マッチング値M2、(4)領域R1のマッチング値M1を「1」としたときの他の領域のマッチング値M1の比率(正規化値)、および、(5)領域R1の補正マッチング値M2を「1」としたときの他の領域の補正マッチング値M2の比率(正規化値)を示している。
【0089】
なお、
図3の入力画像の各画素の画素値は、8ビットデータであり、0〜255の値をとる。また、分散値Varは、処理対象領域全体の画素値(輝度値)の分散値である。
【0090】
図6から分かるように、領域R1〜R
3のマッチング値M1の比率は、領域xのマッチング値M1をM1(x)と表記すると、
M1(R1):M1(R2):M1(R3)
=1.00:1.05:1.31
となり、
(M1(R3)−M1(R2))/M1(R1)=0.26
となる。
【0091】
つまり、マッチング値M1を用いて処理対象領域が左右対称性の高い画像領域であるか否かの判定するための閾値(マッチング値M1と比較するための閾値)を設定しようとすると、線対称である部分と、線対称でない部分のマッチング値の分布が近いため、適切な閾値を設定することが困難である。その結果、領域R1およびR2が、左右対称性の高い画像領域であり、領域R3が左右対称性の低い画像領域であると、適切に判定することが困難となる。
【0092】
一方、
図6から分かるように、領域R1〜R
3の補正マッチング値M2の比率は、領域xの補正マッチング値M2をM2(x)と表記すると、
M2(R1):M2(R2):M2(R3)
=1.00:0.85:3.20
となり、
(M2(R3)−M2(R1))/M2(R1)=2.20
となる。
【0093】
つまり、補正マッチング値M2を用いて処理対象領域が左右対称性の高い画像領域であるか否かの判定するための閾値(補正マッチング値M2と比較するための閾値)を設定しようとすると、線対称である部分と、線対称でない部分のマッチング値の分布が明確に分離される(正規化値で、マッチング値M1の場合の約8.5倍(≒2.20/0.26))ので、適切な閾値を設定することが容易となる。その結果、領域R1およびR2が、左右対称性の高い画像領域であり、領域R3が左右対称性の低い画像領域であると、適切に判定することが容易となる。
【0094】
上記の通り、物体検出システム1000では、補正マッチング値M2を用いて処理対象領域が左右対称性の高い画像領域であるか否かの判定を行うため、補正マッチング値M2と比較するための閾値の設定範囲が広い。したがって、物体検出システム1000では、例えば、同一画像内(1枚の画像内)あるいは同一シーン内において、単一の閾値を設定するだけで、適切に、補正マッチング値M2を用いた判定処理を実行することができる。その結果、物体検出システム1000では、複数の閾値を設定することなく、また、複雑な場合分けをすることなく、適切に、左右対称性の高い画像領域を特定(抽出)することが可能となる。
【0095】
また、領域R1は暗い車両の画像領域であり、領域R2は明るい車両の画像領域であり、その左右対称性は、領域R2の方が領域R1よりも高い。マッチング値M1で、左右対称性を判定すると、M1(R1)<M1(R2)であるので、領域R1の方が、左右対称性が高いと誤判定されてしまう。
図3、
図6から分かるように、領域R1の車両は、右上側に輝度の高い部分があり、領域R2よりも左右対称性は低いと考えられる。なお、マッチング値M1は、軸対称な位置の画素の画素値の絶対値の差の積算結果なので、マッチング値M1が小さい方が、軸対称性が高いことを示す。
【0096】
それに対して、補正マッチング値M2で、左右対称性を判定すると、M2(R1)>M2(R2)であるので、領域R2の方が、左右対称性が高いと、適切に判定される。領域R2は、明るい画像領域であり、コントラストも大きいため、輝度値の分散値Var(R2)が大きい。一方、領域R1は、暗い領域であり、コントラストも小さいため、輝度値の分散値Var(R1)が小さい。したがって、分散値Varにより、マッチング値M1を補正することで、左右対称性の高さを適切に反映した値(補正マッチング値M2)を取得することができる。
【0097】
以上のように、物体検出システム1000では、処理対象領域を対称軸で分割した2つの領域である、判定用分割画像領域と参照用分割領域とから取得したマッチング値M1を、処理対象領域のばらつき度で補正することで、補正マッチング値M2を取得する。物体検出システム1000では、画像領域の特性のばらつきを適切に補正した補正マッチング値M2を用いて、判定処理を実行するので、線対称である部分と、線対称でない部分のマッチング値の分布が、従来に比べると明確に分離され、その結果、閾値の設定が容易となる。
【0098】
したがって、物体検出システム1000では、処理対象画像がどのようなものであっても、複雑な閾値処理を行うことなく、適切に、画像中の軸対称な物体を検出することができる。
【0099】
≪第1変形例≫
次に、第1実施形態の第1変形例について、説明する。
【0100】
図7に、本変形例の物体検出システム1000Aの概略構成図を示す。
【0101】
本変形例の物体検出システム1000Aは、
図7に示すように、第1実施形態の物体検出システム1000において、マッチング判定部24をマッチング判定部24Aに置換した構成を有している。
【0102】
マッチング判定部24Aは、マッチング判定部24において、マッチング値取得部241をマッチング値取得部241Aに置換し、補正マッチング値取得部242を補正マッチング値取得部242Aに置換した構成を有している。
【0103】
上記以外については、本変形例の物体検出システム1000Aは、第1実施形態の物体検出システム1000と同様である。
【0104】
以下では、本変形例特有の部分について、説明する。
【0105】
マッチング値取得部241Aは、画像入力部21から出力される輝度画像と、処理対象領域決定部22から出力される処理対象領域および対称軸に関する情報とを入力する。マッチング値取得部241Aは、処理対象領域を対称軸で分割した一方の画像領域である判定用分割領域と、処理対象領域を対称軸で分割した他方の画像領域である参照用分割領域とから、マッチング値M1を取得する。また、マッチング値取得部241Aは、処理対象領域全体の輝度値の平均値、あるいは、処理対象領域を対称軸で分割した片方の画像領域の輝度値の平均値を、輝度平均値AveYとして取得する。
【0106】
そして、マッチング値取得部241Aは、取得したマッチング値M1および輝度平均値AveYに関する情報を補正マッチング値取得部242Aに出力する。
【0107】
補正マッチング値取得部242Aは、分散取得部23から出力されるばらつき度Varに関する情報と、マッチング値取得部241Aから出力されるマッチング値M1および輝度平均値AveYに関する情報とを入力する。補正マッチング値取得部242Aは、ばらつき度Varおよび輝度平均値AveYに基づいて、マッチング値M1を補正し、補正マッチング値M2’を取得する。例えば、補正マッチング値取得部242Aは、
M2’=M1/(Var×AveY)
により、補正マッチング値M2’を取得する。
【0108】
そして、補正マッチング値取得部242Aは、取得した補正マッチング値M2’に関する情報を判定部243に出力する。
【0109】
判定部243は、補正マッチング値M2’と閾値Th’とを比較することで、処理対象領域が軸対称性の高い画像領域であるか否かを判定する。
【0110】
以上のように、本変形例の物体検出システム1000Aでは、処理対象領域を対称軸で分割した2つの領域である、判定用分割画像領域と参照用分割領域とから取得したマッチング値M1を、処理対象領域のばらつき度Varおよび輝度平均値AveYで補正することで、補正マッチング値M2’を取得する。つまり、本変形例の物体検出システム1000Aでは、マッチング値M1を、処理対象領域の輝度平均値AveYでも補正するので、処理対象領域の明るさ(輝度)の影響を排除した補正マッチング値M2’を取得することができる。すなわち、物体検出システム1000では、画像領域の特性のばらつきおよび処理対象領域の明るさ(平均輝度値)を考慮し、適切に補正した補正マッチング値M2’を用いて、判定処理を実行するので、閾値処理において用いられる閾値の設定範囲が従来に比べると遙かに広くなり、その結果、閾値の設定が容易となる。
【0111】
したがって、物体検出システム1000Aでは、処理対象画像がどのようなものであっても、複雑な閾値処理を行うことなく、適切に、画像中の軸対称な物体を検出することができる。
【0112】
[他の実施形態]
上記実施形態および変形例の一部または全部を組み合わせて、物体検出システムを構成するようにしてもよい。
【0113】
上記実施形態では、マッチング値M1をSAD値(sum of absolute differences)により算出する例について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、マッチング値M1をSSD値(sum of squared differences)により算出するようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、入力画像に含まれる左右方向(水平方向)に対称性の高い物体(画像領域)を検出する場合、つまり、対称軸の方向が垂直方向である場合について説明したが、これに限定されることはなく、対称軸の方向は任意の方向であってもよい。また、対称軸の方向が任意の方向である場合、上記実施形態で説明した処理を実行する前に前処理として、対称軸の方向が垂直方向となるように処理対象領域を回転させてもよい。このような前処理を行うことで、対称軸の方向が垂直方向となり、上記実施形態の処理(水平方向の対称性を判定する処理)と同様の処理を実行することで、任意の方向の対称軸に対する対称性の高い物体(画像領域)を適切に特定(抽出)することができる。
【0115】
また、上記実施形態では、処理対象領域を矩形状としているが、これに限定されることはなく、対称軸について略線対称となる形状であれば、他の形状(例えば、円形、楕円形等)であってもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、ばらつき度Varとして、画素値(輝度値)の分散値を用いる場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、ばらつき度Varとして、画素値(輝度値)の標準偏差値を用いて処理を行うようにしてもよい。
【0117】
また、上記実施形態の物体検出システム、物体検出装置の一部または全部は、集積回路(例えば、LSI、システムLSI等)として実現されるものであってもよい。
【0118】
上記実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0119】
また、上記実施形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。なお、上記実施形態に係る物体検出システム、物体検出装置をハードウェアにより実現する場合、各処理を行うためのタイミング調整を行う必要があるのは言うまでもない。上記実施形態においては、説明便宜のため、実際のハードウェア設計で生じる各種信号のタイミング調整の詳細については省略している。
【0120】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0121】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray Disc)、半導体メモリを挙げることができる。
【0122】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0123】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。