特許第6140504号(P6140504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140504
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】監視装置、監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/10 20060101AFI20170522BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20170522BHJP
   G08B 13/181 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G01V9/04 S
   G01S17/88
   G08B13/181
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-70904(P2013-70904)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194372(P2014-194372A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝口 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 哲也
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−253449(JP,A)
【文献】 特開2010−187124(JP,A)
【文献】 特開2009−100256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−99/00
G08B 13/00−15/02
G08B 23/00−31/00
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリア内の物体の存在を検出する物体検出手段と、
以下の(a)、(b)および(c)の判定を行う判定手段と、
(a)前記検知エリア内を予め定められている移動条件で移動した物体を「移動体」と判定する。
(b)検出した物体のうち「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定する。
(c)「移動体」と判定した物体の近傍を含む監視範囲を設定し、その監視範囲において新たに「移動体以外」と判定された物体が検知された場合に「物体置去り」と判定する。
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記(a)の判定を行ったことを条件として、前記(b)の判定を開始することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
検知エリア内の物体の存在を検出する物体検出手段と、
以下の(a)、(b)、(d)、(e)および(f)の判定を行う判定手段と、
(a)前記検知エリア内を予め定められている移動条件で移動した物体を「移動体」と判定する。
(b)検出した物体のうち「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定する。
(d)「移動体」と判定された物体がその後「移動体以外」と判定された場合に「移動体停止」と判定する。
(e)「移動体停止」と判定された後に「移動体」と判定された物体を「再移動体」と判定する。
(f)「再移動体」と判定された物体が移動を再開した位置の近傍において、「移動体以外」と判定された状態が予め定められている置去基準時間を超える物体が存在する場合に「物体置去り」と判定する。
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記(a)の判定を行ったことを条件として、前記(b)の判定を開始することを特徴とする監視装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記(b)の判定を行う際、「移動体」と判定するのに要する判定処理時間を超えても「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定することを特徴とする請求項1または2記載の監視装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記(a)の判定が行われていない場合であっても、前記(b)の判定を定期的に行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の監視装置。
【請求項5】
前記判定手段は、以下の(g)の判定をさらに行う。
(g)「移動体停止」と判定された状態が予め定められている滞留基準時間を超えた場合に「移動体滞留」と判定する。
ことを特徴とする請求項2記載の監視装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記(a)、(d)、(e)の判定が行われた物体、前記(a)、(d)、(g)の判定が行われた物体、または前記(a)、(d)、(e)、(g)の判定が行われた物体を、それぞれ同一の物体と判定して管理することを特徴とする請求項5記載の監視装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記判定手段の判定結果を識別可能に出力することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の監視装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項記載の監視装置と、
前記監視装置により「移動体」であると判定された物体を追尾して撮像可能な可動式の撮像装置と、
前記撮像装置の撮像結果を表示するモニタ装置と、を備え、
前記撮像装置は、前記監視装置から出力される判定結果に基づいて、「移動体以外」と判定された物体を撮像することを特徴とする監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知エリアを監視する監視装置、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検知エリアへの侵入を検知する方法として、例えば特許文献1のように物体の移動状況を検出する一方、移動していない物体は検知対象とせずに移動体の侵入を検知する方法や、特許文献2のように予め定められている移動条件に合致する移動体を識別することで移動体の侵入を検知する方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3011121号公報
【特許文献1】特開2004−185363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検知エリア内の物体を静止体であるか移動体であるかを問わずに検知する方法(以下、便宜的に物体検知と称する)の場合、物体が存在していることは検知できるものの、物体の出入り、すなわち、その物体が新たに検知エリアに侵入してきたものであるのか、もともと検知エリアに存在していたものであるのかを検出することができなかった。
一方、所定の移動条件を満たす物体を検知する方法(以下、便宜的に移動体検知と称する)の場合、検知エリアにおける物体の出入りを検出することはできるものの、例えば検知エリアに侵入した後に静止した物体や検知エリア内に突然出現した物体、あるいは置去りにされた物体など移動条件に合致しない物体は、検知対象から外されてしまう。このため、移動体検知では、予め設定した移動条件に合致しないなど想定と異なる挙動を示す移動体は検知することができなかった。
【0005】
かといって、単に物体検知と移動体検知とを組み合わせた場合には、常に検出された物体ごとに位置の記憶や侵入物であるのかの判定を行う必要があること、また、移動体であるかの判定および同一の移動体であるかの判定などの処理を並行して行う必要があることから、処理の負荷が増加するという問題が発生する。そして、処理の負荷の増大は処理時間の増加を招くことから、単位時間当たりの検出回数が低下して、監視性能の低下を招くことになる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、監視性能の低下を招くことなく、検知エリアに存在する検知対象の移動体以外の物体についても検知することができる監視装置、監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、検知エリア内の物体の存在を検出する物体検出手段と、検出した物体に対して(a)検知エリア内を予め定められている移動条件で移動した物体を「移動体」と判定する、(b)検出した物体のうち「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定する、(c)「移動体」と判定した物体の近傍を含む監視範囲を設定し、その監視範囲において新たに「移動体以外」と判定された物体が検知された場合に「物体置去り」と判定する、の各判定を行う判定手段と、判定手段による判定結果を出力する出力手段と、を備え、判定手段は、(a)の判定を行ったことを条件として(b)の判定を開始する。
【0007】
つまり、監視装置は、移動体が検知されていない場合には、物体検知の処理を行わない。このため、(a)の判定を行うことにより検知エリア内で検出した物体に対して従来と同様に移動体検知にて移動体を監視対象とすることが可能であるとともに、移動体が検知されていない場合には(b)の判定を開始しないので、移動体検知と物体検知の双方を実行可能な構成であっても、処理の負荷が単純に倍増するということはない。
また、移動体を検知した場合には「移動体以外」を判定することにより、移動条件に合致せずに従来では検知対象でなかった物体も「移動体以外」として監視対象とすることが可能となる。このため、移動体を検知するための監視装置に従来の物体検知と同様の機能を付加した場合であっても、処理の負荷が大幅に増加することはない。したがって、単位時間当たりの検出回数が低下することがなく、監視性能の低下を招くことがない。この場合、処理の負荷が大幅に増加することもないので、処理回路の高性能化や大型化など招くこともない。
【0008】
また、上記した各判定は、それぞれ以下のような効果を奏する。(a)の判定を行うことにより、検知エリアに出入りする移動体を検知するという本来の機能を実現することができる。また、(b)の判定を行うことにより、移動条件に合致しない物体を監視対象とすることができる。これにより、従来の移動体検知と物体検知とを組み合わせただけではできなかった移動条件が異なる物体の監視、検知エリアに侵入後に停止した物体の監視、検知エリア内での物体置去りの監視など、本来の検知対象である移動体以外の物体についても監視することができる。
また、判定手段は、(c)「移動体」と判定した物体の近傍を含む監視範囲を設定し、その監視範囲において新たに「移動体以外」と判定された物体が検知された場合に「物体置去り」と判定する。これにより、従来の移動体検知では検知できなかった物体置去りを検知することができる。
この場合、物体置去りは、移動体により行われると想定される。つまり、検知エリア全体を監視しなくても、移動体の近傍を監視すれば、物体置去りを検知することが可能であると考えられる。そこで、監視範囲を設定することにより、物体置去りを検知することができるようになる。この場合、物体の近傍を監視すればよいので、無関係な場所(検知エリアにおいて移動体から離れている場所等)を監視する必要がなく、検知エリア内の全ての物体を監視する場合に比べて処理の負荷を低減することができる。
【0009】
請求項3記載の発明では、上記した(b)の判定を行う際、「移動体」と判定するのに要する判定処理時間を超えても「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定する。
移動体を検知する場合、物体が移動体であるか否かの判定は従来から行われている。そして、監視装置は、移動体でないことを判定する処理を行うのではなく、移動体と判定されなかった物体を移動体以外と判定する。つまり、監視装置は、移動体以外と判定するために特別な処理を行う必要がない。したがって、処理の負荷が増加することを抑制できる。
【0010】
請求項4記載の発明では、判定手段は、前記(a)の判定が行われていない場合であっても、前記(b)の判定を定期的に行う。定期的に検知エリア内の物体検知を行うことにより、移動体が存在しない場合であっても物体の侵入検知を可能とすることで監視性能の低下を防止できる。また、連続して物体検知を行うわけではないので、つまり物体検知を常時行うわけではないので、処理の負荷が増加することを防止することができる。また、例えばエリアセンサを所謂レーザ距離計で構成した場合において設置位置よりも低い位置から侵入した物体や、検知エリアに投げ込まれた物体等、移動体の検知を伴わない物体の検知も可能となり、監視性能を向上させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明では、判定手段は、(d)「移動体」と判定された物体がその後「移動体以外」と判定された場合に「移動体停止」と判定する、(e)「移動体停止」と判定された後に「移動体」と判定された物体を「再移動体」と判定する、(f)「再移動体」と判定された物体が移動を再開した位置の近傍において、「移動体以外」と判定された状態が予め定められている置去基準時間を超える物体が存在する場合に「物体置去り」と判定する、の判定をさらに行う。
この場合、(d)の判定を行うことにより、移動体でないことから従来では移動体検知の対象外となっていた物体を監視対象とすることができる。また、(e)の判定を行うことにより、「再移動体」として判定された物体が元々は「移動体」であったことを把握できるので、1つの物体を2つの物体であると誤認識するおそれや、2つの物体を処理対象としてしまいデータ量や負荷が増加することなどを防止できる。また、(f)の判定を行うことにより、単に物体検知と移動体検知とを組み合わせただけでは対応できなかった検知エリア内での物体置去りに対応することができる。
【0013】
請求項5記載の発明では、判定手段は、(g)「移動体停止」と判定された状態が予め定められている滞留基準時間を超えた場合に「移動体滞留」と判定する、の判定をさらに行う。これにより、検知エリアに侵入後に停止して移動体ではなくなったことにより従来では検知対象外となっていた物体を監視対象とすることができる。
【0014】
請求項6記載の発明では、上記した(a)、(d)、(e)の判定が行われた物体、上記した(a)、(d)、(g)の判定が行われた物体、および上記した(a)、(d)、(e)、(g)の判定が行われた物体を、それぞれ同一の物体と判定する。
従来の移動体検知の場合、移動体でなければ検知対象外となるため、移動体が停止して再び移動した場合等には、2つの移動体が検知されることになる。その場合、管理すべきデータ量が増加することから、処理回路の大型化などを招くおそれがある。そのため、上記した(a)、(d)、(e)、(g)等の判定が行われた場合にはそれらの物体を同一物体として管理することで、データ量が不必要に増加することが抑制され、処理回路の大型化を防止することができる。なお、(d)の判定が行われる前には、(b)の判定も行われることになる。
【0015】
請求項7記載の発明では、判定手段による判定結果を識別可能に出力する。これにより、どのような物体が検知エリア内に存在しているのかを容易に把握することができるとともに、例えば「物体置去り」が出力された場合には不審物かどうかを確認する等の対応を早期に取ることができるようになるなど、実用上有益な監視装置を実現することができる。
【0016】
請求項8記載の監視システムの発明では、移動条件に合致する移動体を追尾可能であるとともに、監視装置から出力される判定結果に基づいて物体を撮像する。これにより、本来の監視対象である移動体に加えて、検知エリア内に存在する他の物体の監視が可能となる。この場合、監視対象である「移動体」とは異なる挙動を示した物体、すなわち、検知エリア内において何らかの対応を取る必要があると推測される物体を監視対象とすることができるので、監視性能を向上させることができる。また、検知エリア内に存在している全ての物体を監視するわけではないので、不必要に処理の負荷が増加することもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態による監視装置および監視システムが監視対象とする検知エリアを模式的に示す図
図2】監視装置および監視システムの構成を模式的に示す図
図3】監視装置が実行する監視処理の流れを示す図
図4】移動物体MAに対する判定状態を示す図
図5】移動物体MBに対する判定状態を示す図
図6】移動体滞留と判定される状況の一例を示す図
図7】物体置去りと判定される状況の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の制御方法を適用する監視システム1は、エリアセンサ装置2(監視装置に相当する)、カメラ装置3(撮像装置に相当する)、およびモニタ装置4から構成されている。エリアセンサ装置2は、走査エリアR0内を図1に示す矢印Sの方向に走査して物体の検出を行っており、その走査エリアR0内に、監視対象である検知エリアR1が設定されている。この検知エリアR1は、検知エリアR1内に恒常的に設置されている固定物Kに対応する除外エリアR2を除く範囲が設定されている。なお、除外エリアR2は複数設定されていてもよい。
【0019】
エリアセンサ装置2は、図2に示すように、制御部10、記憶部11、出力部12、レーザ走査部13、物体検出部14および判定部15などを備えている。制御部10は、図示しないCPUやROMおよびRAMなどを有するマイクロコンピュータにより構成されており、記憶部11などに記憶されているコンピュータプログラムを実行することによりレーザ走査部13などを制御する。なお、本実施形態では、物体検出部14および判定部15は、制御部10により実行されるコンピュータプログラムによりソフトウェア的に実現されている。
記憶部11は、図示しないメモリ素子あるいはHDD等の記録装置などにより構成されており、コンピュータプログラムなどの各種の情報や、検知エリアR1内で検出した物体までの距離などの測距情報を記憶する。出力部12は、物体検出部14により検出した物体に関する位置や走査角度等の位置情報や、判定部15による後述する判定結果の出力などを行う。
【0020】
レーザ走査部13は、レーザ照射部13a、レーザ照射部13aから照射されたレーザ光を走査エリアR0に向かって反射するとともに走査エリアR0内の物体で反射した光を受光するミラー13b、予め定められている角度分解能および走査周期にてミラー13bを回転駆動するモータ13c、反射光を受光するレーザ受光部13dを備えている。レーザ照射部13aから照射されたレーザ光は、走査エリアR0内に存在する物体(図2の場合、例えば移動物体MAやMB)で反射した後、レーザ受光部13dにて受光され、何らかの物体の存在を示す検出点として検出される。なお、この図2に示しているレーザ走査部13の構成は一例であり、レーザ照射部13a自体を駆動する構成(つまり、照射時にはミラー13bを利用しない構成)等、他の構成であってもよい。
【0021】
物体検出部14は、レーザ走査部13にて検出点を検出した際の検出点までの距離と走査角度とを少なくとも含む測距情報に基づいて、検出点が同一物体によるものであるかを関連付ける等の周知の手法にて物体を検出する。なお、この物体検出部14は、あくまでも物体の「検出」を行っているのであり、物体に識別番号等を付与して管理するような従来の「物体検知」を行っているわけではない。
【0022】
判定部15は、詳細は後述するが、以下の(a)〜(g)の判定を行っている。
(a)物体検出部14で検出された物体のうち、検知エリアR1内を予め定められている移動条件で移動した物体を「移動体」と判定する。この場合、移動条件としては、物体の移動ベクトルが所定の判定値を超えた場合や、物体の大きさが所定値以上である場合等が設定されている。なお、複数の物体が「移動体」として判定されることもあるし、複数の移動条件が設定されていることもある。
【0023】
(b)物体検出部14で検出された物体のうち、「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定する。より厳密には、判定部15は、(a)において「移動体」であると判定するのに要する判定処理時間(後述する図4等に示すta1)を超えても「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定する。このため、「移動体以外」であると判定されるまでの時間(後述する図5に示すta2)は、必ず判定処理時間よりも長くなっている。なお、この(b)の判定は、上記した(a)の判定が行われたことを条件として開始される。
【0024】
(c)「移動体」と判定した物体の近傍を含む監視範囲を設定し、その監視範囲において新たに「移動体以外」と判定された物体が検知された場合に「物体置去り」と判定する。
(d)「移動体」と判定された物体がその後に「移動体以外」と判定された場合に、「移動体停止」と判定する。この場合、所定の範囲内で最も近くに位置していた「移動体」を、「移動体停止」と判定する物体とする。
(e)「移動体停止」と判定された後に「移動体」と判定された物体を「再移動体」と判定する。
(f)「再移動体」と判定された物体が移動を再開した位置の近傍において、「移動体以外」と判定された状態が予め定められている置去基準時間を超える物体が存在する場合に「物体置去り」と判定する。
【0025】
(g)「移動体停止」と判定された状態が予め定められている滞留基準時間を超えた場合に「移動体滞留」と判定する。
これらの判定は、検知エリア内の物体の存在情報(物体に関する情報であって、その物体が「移動体」、「移動体以外」、「移動体停止」、「移動体滞留」、「再移動体」のいずれであるかを示す情報)の変化を判定しているとも言える。
また、判定手段は、上記した(a)、(d)、(e)の判定が行われた物体、上記した(a)、(d)、(g)の判定が行われた物体、および上記した(a)、(d)、(e)、(g)の判定が行われた物体を、同一の物体と判定する。なお、(d)の判定の前には(b)の判定も勿論行われている。
【0026】
カメラ装置3は、撮像カメラ20および可動式架台21を備えている。この撮像カメラ20は、エリアセンサ装置2から出力される測距情報などに基づいて、検知エリアR1内で「移動体」であると判定された物体を追尾して撮像可能に構成されている。また、カメラ装置3は、物体を追尾する際にその物体を例えば監視者が識別可能な程度まで拡大して撮像可能であるとともに、検知エリアR1の全域を広角で撮像可能となっている。なお、識別可能な程度とは、例えば物体が人であれば顔を認識できる程度、物体が車両であればその車種やナンバープレートあるいは運転者の顔などを認識できる程度のことを意味している。このように、物体の位置の変化に追従させて撮像カメラ20の向きを変化させるとともにその物体を拡大して撮像することが、追尾に相当する。
【0027】
モニタ装置4は、カメラ装置3にて撮像した画像を表示する。このモニタ装置4は、例えば図示しない警備室等に設けられており、警備員などの監視者によってモニタされている。
【0028】
次に、上記した構成の作用について説明する。
エリアセンサ装置2は、図3に示す監視処理を実行しており、処理が開始されると、検知エリアR1を走査し(S1)、検知エリアR1内の物体を検出する。続いて、移動体を検知したか否かを判定し(S2)、つまり、上記した(a)の判定を行い、移動体を検知していない場合には(S2:NO)、ステップS1に移行して走査を繰り返す。一方、エリアセンサ装置2は、移動体を検知した場合には(S2:YES)、判定処理を実行する(S3)。この判定処理では、上記した(b)〜(g)の判定が行われている。
【0029】
ここで、例えば図1に示すように、走査エリアR0内に移動物体MAと移動物体MBとが侵入する状態を想定する。この図1では、移動物体MAに付されているt1〜t8は時刻を示しており、各時刻における移動物体MAの位置が模式的に示されている。ただし、時刻t1〜t2間等においても、監視処理は繰り返し実行されている。以下、説明の簡略化のために、図1に示す移動物体MAと移動物体MBとに対する処理を個別に説明する。なお、移動物体MBについては、「移動体以外」、「移動体滞留」、「物体置去り」の3パターンについて説明する。
【0030】
<移動物体MAに対する処理>
時刻t1では、移動物体MAは、走査エリアR0内に存在するものの検知エリアR1の外に存在している。このため、エリアセンサ装置2は、ステップS3における判定処理では、未だ物体を検出していないことになる。そのため、図4に示すように、時刻t1では物体を検出したか否かの状態を示す「物体検出」がOFFになっている。この「物体検出」は、物体が検出されている状態でONになり、物体が検出されない状態でOFFになることで、物体の検出状態を示している。なお、図4に示す「移動体検知」は上記した(a)の判定により移動体が検知されている状態でONになるものであり、「移動体以外」は、上記した(b)の判定により「移動体以外」が検知されている状態でONになるものである。
【0031】
なお、図4の場合、時刻t1では移動物体MAが走査エリアR0内に存在しているので、その移動速度VAは算出されている。
この時刻t1のように、検知エリアR1内に物体が存在しない場合には、エリアセンサ装置2は、図3に示す監視処理において、「移動体」と判定された物体が無く(S4:NO)、「移動体以外」と判定された物体が無く(S6:NO)、「移動体滞留」と判定された物体が無く(S8:NO)、「物体置去り」と判定された物体が無いことから(S10:NO)、ステップS1に移行して次の走査を開始する。
【0032】
これに対して、図1に示すように時刻t2にて移動物体MAが検知エリアR1内に侵入すると、エリアセンサ装置2は、物体(移動物体MA)を検出したことから、図4に示すように物体検出がONになる。そして、時刻t2後に行われた監視処理において、ステップS3の判定処理で上記した(a)の判定により「移動体」と判定されたことから、移動体検知がONされる。このとき、時刻t2から移動体検知がONされるまでの時間ta1が、上記した判定処理時間に相当する。この判定処理時間は、物体が移動していることを確認できるまでに要する時間であり、例えば数回分の走査時間に相当する。
【0033】
このとき、エリアセンサ装置2は、図3に示す監視処理において、「移動体」と判定された物体があることから(S4:YES)、「移動体」の存在を出力する(例えば、監視者に報知する)とともに、その移動体をカメラ装置3で追尾する(S5)。これにより、検知エリアR1に侵入した物体(移動物体MA)を監視することができる。なお、この時点では、「移動体以外」と判定された物体が無く(S6:NO)、「移動体滞留」と判定された物体が無く(S8:NO)、「物体置去り」と判定された物体が無いことから(S10:NO)、ステップS1に移行して次の走査を開始する。
【0034】
さて、図1に示すように、移動物体MAは、時刻t4〜t5の間で停止している。この場合、エリアセンサ装置2は、ステップS3の判定処理において、移動物体MAが停止したことから「移動体」ではないと判定するとともに、その移動物体MAを「移動体」ではないと判定された物体すなわち「移動体以外」と判定する。このため、図4に示すように、時刻t4において、移動体検知がOFFになるとともに、移動体以外がONになる。そして、図5に示す監視処理において、「移動体以外」と判定された物体があると判定されたことから(S6:YES)、「移動体以外」の存在を出力するとともに、「移動体以外」と判定された物体をカメラ装置3にて撮像する(S7)。これにより、検知エリアR1に侵入後に停止したような「移動体」ではない物体を監視することができるようになる。
この移動物体MAは、図1に示すように、時刻t4〜t5の間停止した後、時刻t5において移動を再開する。このため、図5に示す監視処理において、「移動体」と再度判定されることから(S4:YES)、「移動体」の存在を出力するとともに、その移動体をカメラ装置3で追尾する(S5)。この場合、図4に示すように、時刻t5から判定処理時間が経過した時点で移動体検知がONになるとともに、移動体以外がOFFになる。
【0035】
また、移動物体MAは、時刻t5以降に実施された監視処理のステップS3において、上記した(e)の判定が行われて「再移動体」であると判定されることになる。つまり、この移動物体MAは、上記した(a)の判定、上記した(d)の判定、および上記した(e)の判定が行われていることから、同一物体であると判定される。換言すると、エリアセンサ装置2は、「再移動体」であることを判定することにより、同一の物体が異なる物体であると誤判定されることを防止している。
この移動物体MAは、時刻t7において検知エリアR1から外に出たため、図4に示すように、物体検出、移動体検知、移動体以外がそれぞれOFFになる。なお、走査エリアR0からは出ていないため、移動物体MAの移動速度は算出可能である。
【0036】
<移動物体MBに対する処理その1:「移動体以外」の判定>
移動物体MBは、時刻t2後に検知エリアR1内に投げ込まれたり、エリアセンサ装置2の検知範囲外から侵入したりした物体(例えば床を這ってきて検知エリアR1内で立ち上がった人等)が想定されており、図1に示すように、時刻t3以降に検出された状態となっている。この場合、図5に示すように、時刻t1の時点では移動物体MBが存在していないので物体検出はOFFとなっている一方、図5に示す監視処理が繰り返され、移動物体MBが物体であると特定された時刻t3の時点で、物体検出がONになっている。
この移動物体MBは、図1に示すように時刻t3〜t4の間は停止しており、物体であると判定された時刻t3以降(ただし時刻t4より前)に実行された監視処理では「移動体」と判定されることがない。換言すると、移動物体MBは、物体と検出されてから判定処理時間が経過しても、「移動体」と判定されることがない。このため、移動物体MBは、上記した(b)の判定により「移動体以外」と判定されることになる。そのため、図5に示すように、時刻t3からta2が経過した時点で、移動体以外がONになっている。
【0037】
この場合、エリアセンサ装置2は、図3に示す監視処理において、「移動体以外」があると判定されたことから(S6:YES)、「移動体以外」の存在を出力するとともに、「移動体以外」と判定された物体(つまり、移動物体MB)をカメラ装置3にて撮像する(S7)。これにより、移動物体MBのように検知エリアR1内に突然出現し、且つ、「移動体」ではないため従来は監視対象にならなかった物体を、検出後の早期に監視を開始することができる。
この移動物体MBは、時刻t4において移動を開始しているため、時刻t4から判定処理時間が経過した時点で「移動体」と判定され、図5に示すように、移動体検知がONになり、移動体以外がOFFになっている。この場合、図3に示す監視処理において、「移動体」と判定された物体があることから(S4:YES)、「移動体」の存在を出力するとともに、カメラ装置3で追尾する(S5)。これにより、移動物体MBが継続して監視されることになる。
【0038】
<移動物体MBに対する処理その2:「移動体滞留」の判定>
次に、「移動体滞留」の判定について、図6を参照しながら説明する。
図6は、時刻t2後に移動物体MAから投棄された移動物体MBが検知エリアR1に滞留する状況を例示している。この場合、エリアセンサ装置2は、時刻t2後の移動物体MBを検出した時点で、移動物体MBが「移動体」であると判定し、カメラ装置3にて撮像する(図3の監視処理のステップS4:YES、且つ、S5)。
さて、移動物体MBは、時刻t5まで移動を継続した後、時刻t5以降はその場に停止し続けたとする。このとき、エリアセンサ装置2は、移動物体MBが停止したことから「移動体以外」と判定するとともに、その後移動しなかったことから、換言すると、「移動体停止」と判定された状態が予め定められている滞留基準時間を超えことから、図5に示す監視処理のステップS3において「移動体滞留」と判定する。なお、滞留基準時間は、想定する移動体などに応じて適宜設定すればよい。
【0039】
そして、エリアセンサ装置2は、「移動体滞留」と判定された物体があることから(S8:YES)、「移動体滞留」の発生を出力するとともに、「移動体滞留」と判定された物体をカメラ装置3にて撮像する(S9)。これにより、検知エリアR1に侵入後、その場に滞留し続けている物体を監視対象とすることができる。つまり、停止していることから「移動体」とは判定されず従来であれば対象外となっていた物体を、監視することができるようになる。
【0040】
<移動物体MBに対する処理その3:「物体置去り」の判定>
次に、「移動体置去り」の判定について、図7を参照しながら説明する。
図7は、時刻t4〜t5の間に停止していた移動物体MAが、その場に移動物体MBを置き去りにして移動した状況を例示している。なお、図7の例では移動物体MBが実際には移動することはないものの、便宜的に「移動物体」と称して説明する。
図7の状況では、移動物体MAは、検知エリアR1に侵入した時刻t2の時点から移動し続けており(「移動体」と判定されており)、時刻t4〜t5の間停止し(「移動体停止」と判定され)、時刻t5において移動を再開している(「再移動体」と判定される)。
【0041】
一方、移動物体MBは、移動物体MAが移動を再開した時刻t5後において、移動物体MAの近傍に検出されることになる。この場合、エリアセンサ装置2は、移動物体MBが移動していないことから、「移動体以外」であると判定し、カメラ装置3にて撮像する(図3の監視処理のステップS6:YES、且つ、S7)。この移動物体MBは、時刻t5以降は継続してその場に留まり続けることから、置去基準時間が経過した後も移動することがないと言える。なお、置去基準時間は、適宜設定すればよい。
【0042】
つまり、図7の状況では、エリアセンサ装置2は、「再移動体」と判定された物体(移動物体MA)が移動を再開した位置の近傍において、「移動体以外」と判定された状態が予め定められている置去基準時間を超える物体(移動物体MB)が存在することから、「物体置去り」であると判定することになる(上記した(f)の判定)。そして、エリアセンサ装置2は、「物体置去り」と判定された物体があることから(S10:YES)、「物体置去り」の発生を出力するとともに、「物体置去り」と判定された物体をカメラ装置3にて撮像する(S11)。これにより、移動物体MAが置き去りにした物体(つまり、移動物体MB)を監視対象とすることができる。なお、「物体置去り」には、意図的に置き去りにされた物体だけでなく、不注意で置き忘れた物体も含まれる。
このように、エリアセンサ装置2は、検知エリアR1内に存在する物体を全て管理するのではなく、「移動体」であるのか「移動体以外」であるのかを判定することにより、検知エリアR1の監視を行っている。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
エリアセンサ装置2は、検知エリアR1内に存在する物体を検出し、上記した(a)の判定を行うことにより、検知エリアR1内で検出した物体に対して移動体検知を行うとともに、上記した(b)の判定を行うことにより、移動体以外と判定される物体を監視対象にすることができる。このとき、エリアセンサ装置2は、移動体を検知したことをトリガーとして物体検知のための判定を開始するので、つまり、移動体が検知されていない場合には(b)の判定を開始しないので、移動体検知と物体検知の双方を行う場合であっても処理の負荷が単純に倍増するようなことはない。
【0044】
また、エリアセンサ装置2は、移動体を検知した場合には「移動体以外」を判定することにより、移動条件に合致せずに従来では検知対象でなかった物体も「移動体以外」として監視対象とすることが可能となる。このため、移動体を検知するための監視装置に従来の物体検知と同様の機能を付加した場合であっても、処理の負荷が大幅に増加することはない。したがって、単位時間当たりの検出回数が低下することがなく、監視性能の低下を招くことがない。この場合、処理の負荷が大幅に増加することもないので、処理回路の高性能化や大型化など招くこともない。
【0045】
この場合、上記した(a)の判定を行うことにより、検知エリアR1に出入りする移動体を検知するという本来の機能をまず実現することができる。また、(b)の判定を行うことにより、移動体と判定するための移動条件に合致せずに従来では移動体検知の対象外となっていた物体を監視対象とすることができる。また、(d)の判定を行うことにより、移動体でないことから従来では移動体検知の対象外となっていた物体を監視対象とすることができる。また、(e)の判定を行うことにより、「再移動体」として判定された物体が元々は「移動体」であったことを把握でき、単一の物体を2つの物体であると誤認識するおそれや、2つの物体が処理対象となってデータ量や負荷が増加することなどを防止できる。また、(f)の判定を行うことにより、単に物体検知と移動体検知とを組み合わせただけでは対応できなかった検知エリアR1内での物体置去りに対応することができる。また、(g)の判定を行うことにより、検知エリアR1に侵入後に停止して移動体ではなくなったことにより従来では検知対象外となっていた物体を監視対象とすることができる。
【0046】
これらにより、エリアセンサ装置2は、従来の移動体検知と物体検知とを組み合わせただけではできなかった移動条件が異なる物体の監視、検知エリアに侵入後に停止した物体の監視、検知エリア内での物体置去りの監視など、本来の検知対象である移動体以外の物体についても監視することができるようになる。
エリアセンサ装置2は、「移動体」と判定するのに要する判定処理時間を超えても「移動体」と判定されなかった物体を「移動体以外」と判定する。この場合、物体が移動体であるか否かの判定は従来から行われているため、監視装置は、単純に「移動体」でなければ「移動体以外」と判定すればよい。つまり、「移動体以外」と判定するために特別な処理を行う必要がないので、処理の負荷が増加することを抑制できる。
【0047】
エリアセンサ装置2は、上記した(a)、(d)、(e)の判定が行われた物体、上記した(a)、(d)、(g)の判定が行われた物体、または(a)、(d)、(e)、(g)の判定が行われた物体を、それぞれ同一の物体と判定する。これにより、検知エリアR1内で移動体が停止して再び移動した場合等であっても、1つの物体を2つの移動体と誤検知することがなくなるとともに、管理すべきデータ量が増加することを防止できる。したがって、監視精度を向上させることができるとともに、処理回路の大型化などを招くことがない。
上記した各判定の判定結果を出力するので、どのような物体が検知エリアR1内に存在しているのかを容易に把握することができるとともに、例えば「物体置去り」が出力された場合には不審物かどうかを確認する等の対応を早期に取ることができるようになるなど、実用上有益なエリアセンサ装置2を実現することができる。
【0048】
監視システム1は、エリアセンサ装置2から出力される判定結果に基づいて、「移動体以外」と判定された物体、「移動体滞留」と判定された物体、または「物体置去り」と判定された物体を撮像してモニタ装置4に表示するので、本来の監視対象である移動体に加えて、検知エリアR1内に存在する他の物体を監視することができる。この場合、撮像されるのは監視対象である「移動体」とは異なる挙動を示した物体、すなわち、検知エリアR1内において何らかの対応を取る必要があると推測される物体であるので、監視性能を向上させることができる。また、検知エリアR1内に存在している全ての物体を監視するわけではないので、処理の負荷を不必要に増加させることもない。なお、当然ながら、「移動体」と判定された物体も追尾対象である。
また、このような監視システム1やエリアセンサ装置2を用いることにより、複数の物体が存在する場合であっても各物体を識別でき、防犯や監視サービスの質を向上させることができる。また、例えば出入り口を監視して来場者の人数をカウントする等の用途にも対応することができる。
【0049】
(その他の実施形態)
本発明は、一実施形態にて例示したものに限定されることなく、例えば以下のように変形あるいは拡張することができる。
一実施形態では「移動体」や「移動体以外」が存在する場合に出力(報知)する構成を例示したが、判定結果ごとに異なる態様にて出力する構成としてもよい。例えば、モニタ装置4を備えているのであれば、「移動体」であればその物体を例えば青色で示し、「移動体以外」であればその物体を例えば黄色で示し、「物体置去り」であればその物体を例えば赤色で示すなど、判定結果を識別可能な態様にて出力することが考えられる。
【0050】
この場合、モニタ装置4を設けない場合には、例えば音声出力の音やメッセージ内容を判定結果ごとに異ならせることなどが考えられる。また、判定結果の出力先を、測定結果のデータや撮像した画像等を一定期間保存可能な大容量の記憶装置等としてもよい。
一実施形態では説明の簡略化のため上記した(a)〜(g)の各判定を全て行う構成を示したが、「移動体」であるのか「移動体以外」であるのかだけを判定する構成(つまり、(a)および(b)の判定を行う構成)としてもよく、その場合、「移動体」であるのか「移動体以外」であるのかを識別可能に出力すればよい。また、(a)、(b)、(c)の判定を行う構成としてもよく、その場合、「移動体」、「移動体以外」、「物体置去り」のいずれの判定結果が得られたかを識別可能に出力すればよい。また、各判定を組み合わせる、(c)または(f)の一方の判定により物体置去りを検知する構成としてもよい。
一実施形態では「移動体」、「移動体以外」、「移動体滞留」、「物体置去り」の場合に判定結果を出力する構成としたが、上記した(a)〜(g)の各判定の判定結果を全て出力するように構成してもよい。勿論、それらを識別可能に出力してもよい。
【0051】
「移動体」と判定した物体の近傍を含む監視範囲を設定し、その監視範囲において新たに「移動体以外」と判定された物体が検知された場合に「物体置去り」と判定してもよい。つまり、移動体の近傍に物体の存在状態を監視するための範囲を設定しておき、その監視範囲において例えば移動体の移動後に新たに「移動体以外」の物体が検知されたとき、物体置去りと判定してもよい。これにより、物体置去りを検知することができるようになるとともに、物体の近傍を監視すればよいので、無関係な場所(検知エリアにおいて移動体から離れている場所等)を監視する必要がなく、検知エリア内の全ての物体を監視する場合に比べて処理の負荷を低減することができる。この場合、移動体が移動した軌跡を含むように監視範囲を設定すれば、より確実に「物体置去り」を検知することができる。
【0052】
一実施形態では(a)の判定が行われたことを条件として(b)の判定を行ったが、移動体が存在しない場合であっても(b)の物体の侵入検知を定期的に行ってもよい。この場合、物体検知を可能とすることで監視性能の低下を防止できるとともに、連続した物体検知を行うわけではないので、処理の負荷を軽減することができる。また、エリアセンサ装置2を一実施形態のようにレーザ距離計で構成する場合、その設置位置よりも低い位置から侵入した物体や検知エリアに投げ込まれた物体等のように移動体の検知を伴わない物体をも検出することができ、監視性能を向上させることができる。
【0053】
上記した(f)の判定では「移動体以外」と判定された状態が予め定められている置去基準時間を超える物体が存在する場合に「物体置去り」と判定したが、時間条件を設定せずに、置去基準時間を超えない物体がその後「移動体滞留」と判定された場合等、移動体の近傍において存在状態が変化した物体(特に、移動体の移動後に存在状態が変化した物体)を「物体置去り」と判定してもよい。このように、存在情報の変化に基づいて物体を監視することで、監視性能を向上させることができる。この場合、上記した監視範囲を設定してもよい。
一実施形態では「移動体」と判定された物体、「移動体以外」と判定された物体、「移動体滞留」と判定された物体、および「物体置去り」と判定された物体を全て撮像する構成を示したが、いずれか1つの判定結果が得られた場合のみ撮像する構成としてもよい。また、「移動体停止」と判定された物体や「再移動体」と判定された物体を撮像する構成としてもよい。
【0054】
一実施形態ではいわゆるレーザ距離計にて物体を検出する構成を例示したが、物体の検出は、撮像カメラ等で行ってもよい。これは、レーザ距離計の場合、例えば地面からある高さの位置を水平に走査するものであるので、例えば地面に投棄されたような物体を検知できない可能性が考えられる一方、撮像カメラ等の撮像手段であれば、設置される高さによらず、検知エリアR1内に存在する物体を検出することができるためである。
検知エリア内の測定データの変化に応じて移動体や物体の検知を行うようにしてもよい。つまり、検知エリア内を走査した際に得られた前回の測定データと今回の測定データとを比較し、変化が生じた際に検知を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は監視システム、2はエリアセンサ装置(監視装置)、3はカメラ装置(撮像装置)、4はモニタ装置、14は物体検出部(物体検出手段)、15は判定部(判定手段)、R1は検知エリアを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7