特許第6140512号(P6140512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140512前立腺の疾患を治療するための侵襲性が最小である方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140512
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】前立腺の疾患を治療するための侵襲性が最小である方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20170522BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20170522BHJP
   A61B 18/20 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61B17/3205
   A61B18/12
   A61B18/20
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-88817(P2013-88817)
(22)【出願日】2013年4月3日
(62)【分割の表示】特願2009-544962(P2009-544962)の分割
【原出願日】2008年1月2日
(65)【公開番号】特開2013-144168(P2013-144168A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2013年5月2日
【審判番号】不服2015-10212(P2015-10212/J1)
【審判請求日】2015年6月2日
(31)【優先権主張番号】60/883,097
(32)【優先日】2007年1月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509187635
【氏名又は名称】アクアビーム エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルジュリ ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】パーキンズ ロドニー シー
【合議体】
【審判長】 長屋 陽二郎
【審判官】 熊倉 強
【審判官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−117548(JP,A)
【文献】 特開平11−332880(JP,A)
【文献】 特表2000−507857(JP,A)
【文献】 特表2001−504363(JP,A)
【文献】 特表2001−509038(JP,A)
【文献】 特開2000−139941(JP,A)
【文献】 特開2003−713(JP,A)
【文献】 特開2005−287722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3205
A61B 18/12
A61B 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道を通して導入される前立腺切除デバイスであって、
前記前立腺切除デバイスは、
近位端と遠位端とを有するシャフトと、
前記シャフト内にある第1の内腔であって通気流体を前記尿道に送出することにより、前記尿道を拡大するように構成された第1の内腔と、
エネルギ送出チューブであって、前記エネルギ送出チューブの一部が前記シャフトに対して露出されるように前記シャフト内に配置されたエネルギ送出チューブと、
前立腺組織を切除するために半径方向外方にエネルギを送出するように前記エネルギ送出チューブの前記露出された一部の上に配置されたエネルギ源
を含み、
前記エネルギ送出チューブは、前記エネルギ送出チューブが前記シャフトに対して並進および回転するように適合されている、前立腺切除デバイス。
【請求項2】
前記エネルギ源の周囲の尿道を吸引することにより、組織切除生成物を除去するために前記シャフト内にある内腔をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
尿道を流体でフラッシングすることにより、組織切除生成物の除去を補助するために前記シャフト内にある内腔をさらに含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記シャフトは、1mmから10mmまでの範囲の幅と、15cmから25cmまでの範囲の長さとを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記エネルギ源は、前記エネルギを前立腺の複数の異なる領域に選択的に差し向けるために前記シャフトに対して移動可能である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
膀胱内に固定するために、前記遠位端の近くに膨張可能なアンカーをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記膨張可能なアンカーは、膨張されたときに膀胱の内側の実質的に全体を占有するように膨張するように適合されたバルーンを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記エネルギ源は、前立腺組織を切除するために半径方向外方に加圧された流体を送出するように配置された前記シャフト上にある高圧流体イジェクタを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記エネルギ源は、レーザーエネルギ源を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記エネルギ源は、レーザーエネルギを反射するミラーをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記エネルギ源は、導電性流体源と高周波エネルギ源とを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記エネルギ源は、尿道壁に対して位置決めされることが可能な電極を含む、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年1月2日に出願された米国仮特許出願第60/883,097号(代理人の事件番号第026918−000100US号(以前の第022237−001400US号))の優先権を主張するものである。出典を明示することにより、この出願に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
【0002】
本発明は、全体として医療用の方法及びデバイスに関する。詳細には、本発明は、尿道組織の容積の減量を行うために尿道にエネルギを加えるための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な医学的条件が男性の尿道に悪影響を及ぼし、排尿痛又は排尿困難、前立腺肥大、血尿、背中の下側の痛み等を含む様々な症状を引き起こす。これらの症状のうちの、前立腺炎は細菌感染症であり、抗生物質等の薬剤で治療できる。しかしながら、良性前立腺過形成(BPH)及び前立腺癌等のこの他の状態では、前立腺が拡大し、尿道に障害を形成し、場合によっては膀胱の機能が完全に損なわれる。
【0004】
BPH及び前立腺癌は、両方とも、尿道の周囲の前立腺の組織を除去するか或いは収縮させる治療を必要とする。一般的な治療には、切除用内視鏡を尿道内に配置し、これを使用して余分の前立腺組織を除去する尿道式前立腺切除(TURP)が含まれる。尿道式前立腺切開(TUIP)と呼ばれる別の手順は、前立腺と隣接した筋肉を切断し、膀胱の開口部を弛緩し、排尿困難を緩和する。更に最近になって、尿道式ニードルアブレーション(TUNA)と呼ばれる手順が導入された。TUNAは、尿道を通してニードルを前立腺内に前進し、このニードルを使用してマイクロ波、高周波、又は超音波等のエネルギを送出し、前立腺を小さくし、これにより尿道に作用する圧力を緩和する。尿道式光ファイバを使用するレーザーアブレーションも使用されている。
【0005】
全体として成功しているけれども、これらの方法のうち、全ての患者及び全ての状態を治療する上で適切な方法はない。詳細には、BPH又は前立腺癌のため、尿道内腔内への組織の重篤な貫入がみられる患者は、組織の切断でなく収縮を用いた侵襲性が最小であるプロトコルで治療するのは困難である。かくして、これらの患者の多くは、最終的には、従来の手術による切断を必要とする。
【0006】
これらの理由により、内腔領域を拡大する、及び/又は尿道周囲の組織の容積的除去を行う侵襲性が最小である方法及びデバイスを提供するのが望ましい。尿道周囲の組織の除去又は破壊を行うためのこのような方法及びデバイスは、除去又は破壊により発生した生成物を内腔から除去して尿道に作用する圧力を緩和できる場合には、大量の組織が除去された場合でも、特に望ましい。別の態様では、又は追加として、方法及びデバイスは、視覚化を必要としない治療プロトコルを行う上での安定したプラットホームを提供するため、治療デバイスを尿道に対して固定しなければならない。このようなプロトコルを実施するための方法及びデバイスは、患者に及ぼす危険が最小でなければならず、治療にあたる医師が容易に実施できなければならず、重篤な疾患の患者でも、最少の合併症で症状を緩和できなければならない。これらの目的のうちの少なくとも幾つかは、以下に説明する本発明によって満たされる。
【0007】
バイポーラ高周波前立腺蒸発を行うため、尿道式内視鏡を使用することが、2001年のエンドウロル誌(J.Endourol)の15号の第313頁乃至第316頁のボッフォ等の記事に記載されている。組織アブレーションプラズマを発生するため、生理食塩水中で高周波放電を行うことが、2002年のIEEE Trans.Plasma Sci誌の第30号の第1376頁乃至第1383頁のウォロスコ等の記事、及び2001年の応用物理学書簡第79号の第4503頁乃至第4505頁のスタルダー等の記事に論じられている。組織を切除するための空気/水噴流が、2001年のTrans.ASMEの第246頁乃至第248頁のジアン及びジアジュンの記事に記載されている。US2005/0288639には、カテーテルに基づくシステムに設けられたカテーテル注射器が記載されている。このシステムは、膀胱内のバルーンによって尿道に固定できる。米国特許第6,890,332号、米国特許第6,821,275号、及び米国特許第6,413,256号の各々には、組織アブレーションを行うための高周波プラズマを発生するためのカテーテルが記載されている。この他の特許及び公開された出願には、以下に列挙するものがある。即ち、米国特許第7,015,253号、米国特許第6,890,332号、米国特許第6,821,275号、米国特許第6,413,256号、米国特許第6,378,525号、米国特許第6,296,639号、米国特許第6,231,591号、米国特許第6,217,860号、米国特許第6,200,573号、米国特許第6,179,831号、米国特許第6,142,991号、米国特許第6,022,860号、米国特許第5,994,362号、米国特許第5,872,150号、米国特許第5,861,002号、米国特許第5,817,649号、米国特許第5,770,603号、米国特許第5,753,641号、米国特許第5,672,171号、米国特許第5,630,794号、米国特許第5,562,703号、米国特許第5,322,503号、米国特許第5,116,615号、米国特許第4,760,071号、米国特許第4,636,505号、米国特許第4,461,283号、米国特許第4,386,080号、米国特許第4,377,584号、米国特許第4,239,776号、米国特許第4,220,735号、米国特許第4,097,578号、米国特許第3,875,229号、米国特許第3,847,988号、US2002/0040220、US2001/0048942、WO93/15664、及びWO92/10142。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/883,097号
【特許文献2】US2005/0288639
【特許文献3】米国特許第6,890,332号
【特許文献4】米国特許第6,821,275号
【特許文献5】米国特許第6,413,256号
【特許文献6】米国特許第7,015,253号
【特許文献7】米国特許第6,890,332号
【特許文献8】米国特許第6,821,275号
【特許文献9】米国特許第6,413,256号
【特許文献10】米国特許第6,378,525号
【特許文献11】米国特許第6,296,639号
【特許文献12】米国特許第6,231,591号
【特許文献13】米国特許第6,217,860号
【特許文献14】米国特許第6,200,573号
【特許文献15】米国特許第6,179,831号
【特許文献16】米国特許第6,142,991号
【特許文献17】米国特許第6,022,860号
【特許文献18】米国特許第5,994,362号
【特許文献19】米国特許第5,872,150号
【特許文献20】米国特許第5,861,002号
【特許文献21】米国特許第5,817,649号
【特許文献22】米国特許第5,770,603号
【特許文献23】米国特許第5,753,641号
【特許文献24】米国特許第5,672,171号
【特許文献25】米国特許第5,630,794号
【特許文献26】米国特許第5,562,703号
【特許文献27】米国特許第5,322,503号
【特許文献28】米国特許第5,116,615号
【特許文献29】米国特許第4,760,071号
【特許文献30】米国特許第4,636,505号
【特許文献31】米国特許第4,461,283号
【特許文献32】米国特許第4,386,080号
【特許文献33】米国特許第4,377,584号
【特許文献34】米国特許第4,239,776号
【特許文献35】米国特許第4,220,735号
【特許文献36】米国特許第4,097,578号
【特許文献37】米国特許第3,875,229号
【特許文献38】米国特許第3,847,988号
【特許文献39】US2002/0040220
【特許文献40】US2001/0048942
【特許文献41】WO93/15664
【特許文献42】WO92/10142
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】2001年のエンドウロル誌(J.Endourol)の15号の第313頁乃至第316頁
【非特許文献2】2002年のIEEE Trans.Plasma Sci誌の第30号の第1376頁乃至第1383頁
【非特許文献3】2001年の応用物理学書簡第79号の第4503頁乃至第4505頁
【非特許文献4】2001年のTrans.ASMEの第246頁乃至第248頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明による方法、デバイス、及びシステムは、尿道周囲の組織にアブレーションを加えるため、又は切除するため、エネルギを内腔を通して送出する。本発明は、特に、良性前立腺過形成(BPH)及び前立腺癌の治療に関する。前立腺過形成(BPH)及び前立腺癌は、両方とも、尿道を圧迫し、部分閉塞又は完全閉塞をもたらす。治療は、エネルギ源を尿道内に位置決めする工程と、エネルギをエネルギ源から前立腺内の尿道壁に向かって半径方向外方に差し向ける工程とを含む。通常は、エネルギ源を尿道に対して移動し、尿道内腔を取り囲む前立腺組織の所定の容積を除去する。これは、圧迫及び/又は障害を部分的に又は完全になくすためである。しかしながら、他の実施例では、治療には、BPH及び他の状態を治療するための機械的治療、熱による治療、音響又は振動による治療、低温治療、又はこの他の形体の治療が含まれる。随意であるが、本発明の治療は、化学治療及び他の形態の薬剤治療、並びに外部X線及び他の放射線源を用いた治療、及び治療用放射性同位体を含む放射線薬剤の投与と組み合わせてもよい。例えば、一つ又はそれ以上の薬剤を、エネルギの送出に使用される生理食塩水又は他の流体と組み合わせてもよい。
前立腺内の血管、嚢、及び括約筋を無傷で残したまま、組織の切除及び組織の洗浄の両方を行うのに、液体/ガスの組み合わせ送出を使用してもよい。かくして、高圧液体/ガスエネルギ源には、出血が少なく、焼灼の必要が少ないか或いはなく、括約筋の嚢を穿孔等で損傷する危険が少ないという利点がある。別の態様では、エネルギ源の位置決めで使用されるデバイスは、所望の化学治療剤又は他の薬剤(上文中に説明した)を、本発明によるエネルギ治療の前、治療中、又は治療後のいずれかで別々に送出するのに使用できる。
本発明は、特に、前立腺の尿道式治療に関するが、本発明の特定の特徴は、尿管、結腸、食道、気管、骨髄、血管等の身体の他の内腔、器官、通路、組織、等の治療で使用してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明の第1の特徴では、前立腺組織を切除し除去するための方法は、エネルギ源を尿道内に位置決めする工程と、エネルギをエネルギ源から前立腺内の尿道壁に向かって半径方向外方に差し向ける工程とを含む。次いで、エネルギ源を尿道に対して移動し、内腔を取り囲む組織の所定の容積を除去する。本発明の特定の特徴では、方法は、更に、アンカーを尿道遠位端の膀胱内で膨張する工程を含む。次いで、治療が前立腺組織に適切に差し向けられるように、エネルギ源をアンカーに対して位置決めし、移動する。アンカーを使用することにより、内視鏡やX線透視検査装置等の撮影装置なしで手順を行うことができるため、特に有利である。本発明の方法は、勿論、このような撮影を除外しないが、方法を、所望の場合に更なる撮影なしで行うことができる。
【0012】
通常は、エネルギ源及びアンカーは、共通のカテーテル組立体に、代表的には単一のシャフトに取り付けられる。かくして、カテーテル組立体又はシャフトは、アンカーを膀胱壁と係合させる張力を加えることによって、又は好ましくは、アンカーを膀胱内で一杯に膨張させることのいずれかによって尿道内の固定位置に即ち不動の位置に維持され、これによりカテーテル組立体又はシャフトが誤って外れる危険を減少する。
【0013】
エネルギ源は、組織の切除又はアブレーションに使用できる様々な従来のエネルギ源のうちの任意の一つ又は組み合わせであってもよい。第1の例示のエネルギ源は、水、生理食塩水、液体治療薬等の高圧流体を含む。高圧流体は、多くの場合、水及び空気等の液体及びガスの組み合わせであり、半径方向外方に一つ又はそれ以上の流体流で送出できる。
これらの流体流は、尿道壁及び前立腺組織に直接当たり、組織の切除又は減量を行う。流体流は、シャフト又はカテーテル組立体に対してほぼ垂直に差し向けられてもよいし、シャフト又はカテーテル組立体に対してこれ以外の角度で、代表的には10°乃至90°の範囲の角度で、更に代表的には45°乃至90°の範囲の角度で差し向けられてもよい。
シャフト又はカテーテル組立体には、例えば麻酔薬、抗生物質、抗炎症薬、抗腫瘍剤、特定組織成長因子、抗成長因子、ホルモン剤、ホルモン拮抗剤、血管拡張薬、ビタミン剤、プロテイン等を含む流体の送出に使用できるポート又はイジェクタが設けられている。
【0014】
エネルギ源は、更に、組織のアブレーションに使用されるレーザーエネルギを送出してもよい。レーザーエネルギは、通常は、尿道を通して導入されたカテーテル組立体又はシャフト内に支持された光導波路又はファイバ束によって送出される。レーザーエネルギは、次いで、シャフトを偏向すること及び/又はエネルギを反射するためのミラーを使用することのいずれかによって半径方向外方に差し向けることができる。ミラーは、随意であるが、エネルギが前立腺組織に送出されるとき、エネルギを所望の方法で焦合する又は拡散する表面を有する。
【0015】
第3の適当なエネルギ源は、高周波電流を搬送する導電性流体を含み、随意であるが、導電性流体のプラズマを発生する。このような導電性流体の一つ又はそれ以上の流れをセラミックノズル又は他の分配エレメントを通して外方に差し向けてもよい。
【0016】
第4のエネルギ源は、高周波エネルギを送出するようになった電極を含む。この電極は、偏向された又は偏向できる遠位端を有する。遠位端は、電極を支持するカテーテル組立体又はシャフトから半径方向外方に尿道内に差し向けることができる。かくして、アブレーションを行うための高周波エネルギを組織内に送出するため、電極の遠位端又は他の表面を尿道壁及び前立腺組織と係合させることができる。
【0017】
本発明の方法は、更に、組織の切除及びアブレーションを補助する関連した工程及びプロセスを含んでいてもよい。尿道内に作用空間を形成するため、方法は、更に、エネルギを前立腺組織内に半径方向外方に差し向ける前に、又は差し向け中に尿道内腔を膨張(通気)するために加圧ガスを導入する工程を含んでいてもよい。更に、随意であるが、アブレーション生成物又は切除生成物を、尿道から、代表的には、エネルギ源の送出に使用されたカテーテル組立体又はシャフトの内腔を通して吸引してもよい。アブレーション生成物又は切除生成物の除去を補助するため、吸引と組み合わせて、尿道を生理食塩水又は他の流体でフラッシングしてもよい。通常は、フラッシング及び吸引は、エネルギ源を位置決めするのに使用された同じカテーテル組立体又はシャフトの内腔を使用して行われる。
【0018】
エネルギ源は、前立腺組織を選択的に治療するため、固定されたシャフト又は尿道に対して所定の方法で移動される。代表的には、エネルギ源は、尿道を取り囲む前立腺組織の円筒形容積に亘って治療するために移動される。このような場合には、エネルギ源は、代表的には、エネルギが尿道壁に均等に送出されるように、尿道内で回転及び/又は軸線方向並進される。別の態様では、エネルギ源は、治療のターゲットである尿道内の円筒形でない、随意であるが非対称な領域を走査できる。回転、軸線方向並進、回転振動、及び軸線方向振動の様々な組み合わせを使用できる。
【0019】
本発明の別の特徴では、前立腺を治療するための方法は、尿道を通してシャフトを前進する工程を含む。シャフトに設けられたアンカーを膀胱内で膨張させ、シャフトを尿道内で安定させ、即ち、尿道壁に対する位置を固定する。次いで、シャフトに設けられた治療デバイスを賦勢し、尿道を拡大し、及び/又は前立腺を減量する。この場合、治療デバイスの位置は、アンカーによって固定される。通常は、アンカーは、膀胱内で膨張させたバルーンを含む。バルーンは、代表的には、外れてしまう危険を減少するように、尿道の全容積を一杯に占有するように膨張される。治療デバイスの賦勢は、上文中に説明したエネルギ源のうちの任意の一つのエネルギ源を使用し、安定させたシャフトから、機械的エネルギ、振動エネルギ、熱エネルギ、光エネルギ、及び/又は電気エネルギを前立腺組織に適用する工程を含む。通常は、治療デバイスをシャフトに対して移動し、尿道の所定の表面領域を治療する。所定の表面領域は、通常は円筒形であるが、上文中に説明したように、円筒形でなくてもよいし、非対称であってもよい。代表的には、治療デバイスは、エネルギ流又はエネルギの周方向バンドを放出し、デバイスの移動には、少なくとも、軸線方向並進及び/又は軸線方向振動が含まれる。通常は、移動には、更に、回転及び/又は回転振動が含まれる。
【0020】
以上説明した方法に加え、本発明は、更に、シャフトと、膨張可能なアンカーと、少なくとも一つのエネルギ源とを含む前立腺切除デバイスを提供する。シャフトは近位端及び遠位端を有する。膨張可能なアンカーは、シャフトの遠位端の近くに位置決めされており、膀胱内に固定されるようになっている。シャフトには、更に、少なくとも一つのエネルギ源が配置されている。このエネルギ源は、アンカーが膀胱内に位置決めされたとき、エネルギ源が尿道の所望の領域内に、代表的には、前立腺内に位置決めされるように選択された所定距離だけ、アンカーから手前に離間されている。かくして、エネルギは、撮影又は他の位置決めを行うための方法又は装置を必要とせずに、エネルギ源から半径方向外方に、ターゲット前立腺組織内に選択的に送出される。
【0021】
本発明の前立腺切除デバイスは、更に、手順の補助的部分を実施するため、シャフト内の様々な内腔を含んでいてもよい。例えば、シャフトには、エネルギ源を取り囲む尿道を加圧して拡大する(通気する)ためにガス又は流体を送出するための一つ又はそれ以上の内腔が設けられていてもよい。アブレーション生成物を除去するために尿道を吸引し、及び/又はアブレーション生成物又は切除生成物を除去するために尿道をフラッシングする流体を送出するため、一つ又はそれ以上の追加の内腔が設けられていてもよい。シャフトは、男性の尿道内に逆方向に送出するようになっており、代表的には、幅が1mm乃至10mmの範囲内にあり、長さが15cm乃至25cmの範囲内にある。
【0022】
本発明の前立腺切除デバイスは、上文中に説明した様々なエネルギ源のうちの任意のエネルギ源を含んでいてもよい。通常は、エネルギ源は、エネルギを前立腺の様々な領域に選択的に差し向けることができるように、シャフトに対して移動自在である。更に代表的には、エネルギ源は、シャフトに対し、並進でき、回転でき、並進振動でき、及び/又は回転振動できる。例示のエネルギ源には、シャフト内の追加の内腔に連結されたノズル又は他のポート等の高圧流体イジェクタ、レーザーエネルギを反射するためのミラーと組み合わせてもよい光ファイバ等のレーザーエネルギ源、高周波エネルギ源と組み合わせた導電性流体源、及び/又は高周波エネルギを送出するために尿道壁に当てて位置決めできる電極が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の原理に従って尿道内前立腺組織減量を行うのに適したデバイスの概略図である。
図2A図2Aは、図1のデバイスを使用した前立腺組織減量を示す図である。
図2B図2Bは、図1のデバイスを使用した前立腺組織減量を示す図である。
図2C図2Cは、図1のデバイスを使用した前立腺組織減量を示す図である。
図2D図2Dは、図1のデバイスを使用した前立腺組織減量を示す図である。
図3図3は、前立腺組織減量を行うために高周波−生理食塩水プラズマを使用する特定の前立腺組織治療デバイスを示す図である。
図4図4は、組織の切除を行うために高圧流体を送出する、本発明のデバイスで使用するのに適したエネルギ源の図である。
図5図5は、レーザーエネルギを前立腺組織に送出するための偏向光導波路を含む、本発明のデバイスで使用するのに適したエネルギ源の図である。
図6図6は、光導波路がレーザーエネルギをミラーに差し向け、このミラーがレーザーエネルギを横方向に逸らす、図5に示すデバイスと同様のデバイスを示す図である。
図7図7は、組織のアブレーションを行うために高周波エネルギを送出するため、尿道壁及び前立腺組織と係合できる横方向に突出した電極を含む、本発明のデバイスで使用するのに適したエネルギ源の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、本発明の原理に従って形成された例示の前立腺組織減量デバイス10は、カテーテル組立体を含む。このカテーテル組立体は、全体として、遠位端14及び近位端16を持つシャフト12を含む。シャフト12は、代表的には、一つ、二つ、三つ、四つ、又はそれ以上の軸線方向内腔が、近位端16のハブ18から遠位端14の近くまで延びるポリマー押出形成体である。シャフト12の全長は、ほぼ15cm乃至25cmの範囲内にあり、直径は1mm乃至10mmの範囲内にあり、通常は2mm乃至6mmである。シャフトは、十分な座屈強度を備えており、そのため、以下に更に詳細に説明するように、男性の尿道を通して上方に導入できる。
【0025】
シャフトのエネルギ送出領域20にエネルギ源22が位置決めされている。このエネルギ源は、以下に更に詳細に論じる多くの特別の構成要素のうちの任意の一つの構成要素であってもよい。エネルギ送出領域の遠位端側に、膨張可能な固定バルーン24がシャフトの遠位端に又はその非常に近くに位置決めされている。バルーンは、軸線方向内腔のうちの一つを通してバルーン膨張源26に連結されている。ハブは、随意であるが、注入/フラッシング源28、吸引(負圧)源30、及び/又は通気(加圧したCO2又は他のガス)源32への連結部を備えている。例示の実施例では、注入又はフラッシング源28は、軸線方向内腔(図示せず)を通して、バルーンアンカー24の手前側に及びエネルギ送出領域20の遠位端側に設けられた一つ又はそれ以上の送出ポート34に連結できる。吸引源30は、第2ポート即ち開口部36に連結できる。第2ポート36は、通常は、エネルギ送出領域20の手前側に位置決めされる。通気源32は追加のポート38に連結できる。この追加のポート38もまた、通常は、エネルギ送出領域20の手前側に位置決めされる。ポート34、36、及び38の位置は重要ではなく、例えばシャフト12上に位置決めできる同軸のスリーブやシース等を含む追加のカテーテルやチューブ等で内腔及び送出手段を形成できるということは理解されよう。
【0026】
次に図2A乃至図2Dを参照すると、前立腺組織減量デバイス10は、男性の尿道Uを通して、膀胱Bの直ぐ手前に位置する前立腺P内の領域に導入される。解剖学的構造を図2Aに示す。固定用バルーン24が膀胱頚部BNの直ぐ遠位端側に配置されるようにカテーテル10を位置決めした(図2B参照)後、バルーンを膨張させ、好ましくは、図2Cに示すように膀胱のほぼ全体を占有する。固定用バルーン24を膨張させた後、エネルギ送出領域20が前立腺P内に位置決めされるように前立腺組織減量デバイス10の位置を尿道U内で固定し安定させる。エネルギ送出領域20の適正な位置は、膀胱内での固定用バルーン24の膨張のみで決まるということは理解されよう。前立腺が膀胱頚部BNの直ぐ手前に位置するため、エネルギ送出領域の遠位端をバルーンの近位端と非常に密接して配置することによって、送出領域を適正に、代表的には、0mm乃至5mmのところに、好ましくは、1mm乃至3mmのところに配置できる。固定用バルーン24を膨張させた後、前立腺の減量を行うため、図2Cに矢印で示すようにエネルギを前立腺に送出できる。エネルギが所定時間に亘り及び所望の表面領域に亘って送出された後、エネルギ領域を停止でき、前立腺の減量がなされ、図2Dに示すように尿道に作用する圧力を除去する。
そのとき、図2Dに示すように、ポート34を通してフラッシング流体を送出し、ポート36内に吸引する。随意であるが、治療後、別のカテーテルデバイスを使用して配置できる焼灼用バルーン及び/又はステントを使用してこの領域を焼灼してもよい。
【0027】
次に図3乃至図7を参照し、多くの例示のエネルギ送出領域を説明する。次に図3を参照すると、本発明の原理に従って形成した第1の例示の前立腺切除デバイス110は、近位端114及び遠位端116を持つシャフト112を含む。複数のノズル118が、遠位端116から1cm乃至5cmの範囲の距離だけ手前側の所定の位置でシャフト112に取り付けられている。これらのノズルは、代表的には、プラズマを発生できるセラミックコアであるか或いは、導電性流体の流れを半径方向外方に差し向けることができるポートであり、図3に破線で示すようにノズル118を半径方向外方に移動できる構造120に取り付けられていてもよい。膨張可能なバルーンとして示すアンカー122は、シャフト112の遠位端116に、ノズル118と遠位端チップ124との間の所定の位置に取り付けられている。膨張可能な構造122は、以下に更に詳細に説明するようにノズルアレイ118が前立腺内にあるようにシャフト112を固定するため、膀胱内で膨張できる。
シャフト112は、エネルギ及び材料をシャフトの近位端114から遠位端116まで送出するため、内腔、通路、導線ワイヤ等を含む。例えば導電性流体源128からノズル118に、代表的にはシャフト112内の内腔を通して送出された導電性流体に高周波エネルギを送出するため、高周波エネルギ源126がシャフト112に、通常はノズル118に接続されている。代表的には、一つ又はそれ以上の吸引ポート132に連結された吸引源130即ち負圧源を提供するため、この他の内腔、チャンネル、又は導管が設けられている。生理食塩水等のフラッシング流体をフラッシング流体源134からポート136に導入できるようにするため、他の導管がシャフト112内に設けられていてもよい。その他の場合には、吸引及びフラッシングが同時に行われるのでなく、順次行われるように、吸引源130及びフラッシング流体源134を共通のポートに連結することもできる。更に、随意であるが、通気源140をシャフトのアレイ118の領域に設けられた一つ又はそれ以上の通気ポート142に連結するため、内腔や導管等を設けてもよい。最後に、バルーン122をバルーン膨張源144に連結するため、内腔や導管を設けてもよい。
【0028】
図4に示すように、シャフト12内に配置された送出チューブ202に設けられた高圧ノズル200によって例示のエネルギ送出領域20を形成できる。キャリヤチューブ202は、矢印204が示すように軸線方向に並進でき及び/又は矢印206が示すように回転でき、そのため、ノズル200から出る高圧流208は、前立腺内の尿道の全ての部分又は選択された部分を走査でき、即ちラスターできる。このような高圧水治療についての特定の圧力及び他の詳細は、例えば上掲のジアン及びジアジュンの文献に記載されている。
【0029】
次に図5を参照すると、エネルギ送出領域20内のエネルギ源は、回転及び並進を行うシャフト202に設けられた光ファイバ導波路又はファイバ束220を含む。光導波路202は、レーザー又は他のコヒーレントな光エネルギをビーム222で伝達する。このビームは、キャリヤチューブ202の回転及び/又は並進によって、尿道壁及び前立腺組織を走査でき、即ちラスターできる。
【0030】
図6に示すように、レーザーエネルギを光導波路又はファイバ束230からミラー232に軸線方向に差し向けてもよい。この実施例では、導波路及びミラーの両方が、回転し且つ軸線方向に並進するキャリヤチューブ202に設けられている。この場合も、キャリヤチューブ202の回転及び/又は並進によって、発生したビーム234が尿道壁全体を走査でき、即ちラスターできる。
【0031】
次に図7を参照すると、更に別の実施例では、回転し且つ軸線方向に並進するチューブ202が、チューブから横方向に突出した電極240を備えていてもよい。電極240は電極が尿道壁及び前立腺組織と接触したとき、高周波エネルギをモノポーラモード又はバイポーラモードのいずれかで送出できるように高周波エネルギ源に連結されるようになっている。かくして、高周波エネルギは、前立腺組織の選択された容積及び領域に亘って組織にアブレーションを加えることができる。随意であるが、高周波エネルギの性質を変化させることによって、組織の治療後に組織に焼灼を加えるのに電極240を使用できる。
【0032】
以上の説明が本発明の好ましい実施例の全てであるが、様々な変形、変更、及び等価物を使用できる。従って、以上の説明は、添付の特許請求の範囲に定義した本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0033】
10 前立腺組織減量デバイス
12 シャフト
14 遠位端
16 近位端
18 ハブ
20 エネルギ送出領域
22 エネルギ源
24 バルーンアンカー
26 バルーン膨張源
28 注入/フラッシング源
30 吸引(負圧)源
32 通気源
34 送出ポート
36 第2ポート
38 追加のポート
B 膀胱
BN 膀胱頚部
P 前立腺
U 尿道
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7