【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために、例を挙げて説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明に用いる図面は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
<第一実施形態>
[ドロップレット生成装置の構成]
本発明の第一実施形態に係るドロップレット生成装置10(10A、10B)の構成について、
図1(a)、(b)を用いて説明する。
図1(a)、(b)は、それぞれ、ドロップレット生成装置10A、10Bの構成を模式的に示す図である。
【0020】
初めに、
図1(a)に示すドロップレット生成装置10Aの構成について説明する。ドロップレット生成装置10Aは、基板11と、基板11の内部または表面に形成された、第一流体L1を流す第一流路12と、第二流体L2を流す第二流路13と、を少なくとも備えている。本実施形態および後述する変形例、実施例の説明に用いる図においては、第一流路12、第二流路13の構成を明瞭に示すために、基板11の内部を一部透明化している。
【0021】
基板11としては、例えば、耐薬品性が高く、加工性に優れたガラスなどにより構成される非結晶性基板、石英やシリコンやサファイアなどにより構成される結晶性基板を用いることができる。なお、基板11は大きさが限定されないため、
図1においては、要部が含まれた部分を抜き出して示している。
【0022】
第一流路12は、その側壁を、局所的に内側に凹ませてなる部位12Aを有している。この部位12Aは、第一流路12に第一流体L1を流した際に、第一流体L1の流れる所定の方向f1を、局所的に変化させる機能を有している。部位12Aは湾曲していてもよいが、
図1(a)に示すように屈曲している方が望ましい。
【0023】
第一流路12の側壁面には、開口部13aが設けられている。そして、この開口部13aにおいて、第二流路13の一端が接続されることによって、第一流路12と第二流路13が連通している。
【0024】
開口部13a側から見た、第一流路12の上流側(図の左側)の側壁面12aと下流側(図の右側)の側壁面12bとは、開口部13a側において180度未満の角度をなしている。開口部13aは、側壁面12bに設けられており、側壁面12aと側壁面12bとの交差部(線)から、第一流路12の下流側に広がっている。なお、側壁面12aと側壁面12bのなす角度θaは、90度以上であることが望ましい。角度θaを90度未満とした場合には、第二流路13を形成することが難しくなる。
【0025】
図1(a)においては、第二流路13Aが、側壁面12bに対して垂直をなしている例を示しているが、側壁面12bに対して、第一流路12の上流側に傾いていてもよい。
【0026】
第一流路102の径は、第二流路103の径より大きくなるように設計されており、第一流体の流量は、第二流体の流量を上回る。これにより、第二流体の流れが第一流体の流れに及ぼす影響を小さく抑えられている。したがって、第一流体の流れによる圧力を、開口部から流出する第二流体に対して安定的に作用させることができ、第二流体を容易に切断させることができる。第二流体が切断されることによって形成されたドロップレットは、第二流路の径に等しいサイズのドロップレットとなる。第二流路の径を調整することによって、所望のサイズのドロップレットを形成することができる。
【0027】
上述した構成において、第一流路12、第二流路13に、それぞれ第一流体L1、第二流体L2を流した際に得られる、ドロップレット生成装置10Aの作用および効果について、
図1(a)および
図2(a)、(b)を用いて説明する。
【0028】
図2(a)は、
図1(a)の開口部13a近傍を拡大した図である。
図2(a)は、第一流体L1に第二流体L2を合流させた直後の状態を示している。
【0029】
第二流路13Aの開口部13aから見て上流側においては、側壁面12aの近傍を流れる第一流体L1は、第一流路12の側壁面12aに沿って流れる(
図2(a)の矢印f1の方向)。開口部13aから流出した第二流体L2は、側壁面12aに沿って流れてきた第一流体L1の圧力Faを受ける。圧力Faは、側壁面12aと同じ方向の圧力である。圧力Faを受けた第二流体L2は切断されてドロップレットとなる。形成されたドロップレットは、第一流体L1の流れに乗って下流側へと移動する。
【0030】
第二流路13Aの開口部13aから見て下流側においては、側壁面側へ回転するトルクFτを受けるが、側壁面12bは上流側の側壁面12aの延長上には形成されておらず、側壁面12aと側壁面12bとの位置関係は、180度未満の角度をなしている。そのため、開口部13aから流出した第二流体L2は、側壁面12bと接触し壁面に濡れ広がることなく切断されてドロップレットとなる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のドロップレット生成装置の構成によれば、第一流路、第二流路に、それぞれ第一流体、第二流体を流した際に、第一流路の上流側における第一流体は、上流側の側壁面に沿って流れるので、その流れ方向は、下流側の側壁面と180度未満の角度をなしている。そのため、開口部から第一流路に流入した第二流体は、第一流体の流れを受けて傾いたとしても、第一流路の下流側の側壁面と平行になることはない。したがって、第一流路に流入した第二流体が、第一流路の側壁面に接触するのを防ぎ、微小なドロップレットを安定的に生成することできる。
【0032】
したがって、第一流体の圧力によって、第一流路の下流側の側壁面への第二流体の濡れ広がりを防ぐことができるため、ドロップレットが所望のサイズより大きく形成されるのを防ぐことができる。これらの結果として、微小なドロップレットを安定的に形成することができる。
【0033】
なお、ドロップレット生成装置は、複数配置し、隣接するドロップレット生成装置の第一流路同士を連結することにより、複合ドロップレット生成装置としてもよい。複合ドロップレット生成装置とすることにより、各ドロップレット生成装置に第二流路が備えられ、複数個所において第二流体を同時に流出させることができるため、流出した第二流体を切断して、大量のドロップレットを同時に形成することができる。
【0034】
また、複合ドロップレット生成装置とすることにより、第二流路に流す流体をドロップレット生成装置ごとに変えることができ、複数種類の第二流体を同時に流出させることができるため、流出した第二流体を切断して、複数種類のドロップレットを同時に形成することができる。
【0035】
続いて、
図1(b)に示すドロップレット生成装置10Bの構成について説明する。ドロップレット生成装置10Bにおいては、第二流路の開口部13bが、側壁面12aに設けられており、側壁面12aと側壁面12bとの交差部(線)から、第一流路12の上流側に開口している。第二流路13Bの開口位置を除いた構成は、
図1(a)のドロップレット生成装置10aの構成と同様である。
【0036】
ドロップレット生成装置10Bにおいても、開口部13b側から見た、第一流路12の上流側(図の左側)の側壁面12aと下流側(図の右側)の側壁面12bとが、180度未満の角度をなしている。開口部13bは、側壁面12aに設けられており、側壁面12aと側壁面12bとの交差部(線)から、第一流路12の上流側に広がっている。なお、側壁面12aと側壁面12bのなす角度θbは、90度以上であることが望ましい。角度θbを90度未満とした場合には、第二流路13を形成することが難しくなる。
【0037】
図1(b)においては、第二流路13Bが、側壁面12aに対して垂直をなしている例を示しているが、側壁面12aに対して、第一流路12の上流側に傾いていてもよい。また、第二流路13Bは、側壁面12に対して、第一流路12の下流側に、側壁面12bと垂直をなすまで傾いていてもよい。
【0038】
上述した構成において、第一流路12、第三流路13Bに、それぞれ第一流体L1、第二流体L3を流した際に得られる、ドロップレット生成装置10Bの作用および効果について、
図1(b)および
図3(a)、(b)を用いて説明する。
【0039】
図3(a)は、
図1(b)に示した開口部13b近傍を拡大した図である。
図3(a)は、第一流体L1に第二流体L3を合流させた直後の状態を示している。第二流路13Bの開口部13bから見て上流側においては、側壁面12aの近傍を流れる第一流体L1は、第一流路12の側壁面12aに沿って流れる(
図3(a)の矢印f1の方向)。開口部13bから流出した第二流体L3は、側壁面12aに沿って流れてきた第一流体L1の圧力Fbを受ける。圧力Fbは、側壁面12aと同じ方向に加わる圧力である。圧力Fbを受けた第二流体L3は切断されてドロップレットとなる。形成されたドロップレットは、第一流体L1の流れに乗って下流側へと移動する。
【0040】
第二流路13Bの開口部13bから見て下流側においては、側壁面側へ回転するトルクFτを受けるが、側壁面12bは上流側の側壁面12aの延長上には形成されておらず、側壁面12aと側壁面12bとの位置関係は、180度未満の角度をなしている。そのため、開口部13bから流出した第二流体L3は、側壁面12bと接触し壁面に濡れ広がることなく切断されてドロップレットとなる。
【0041】
流出した第二流体L3は、上流側の側壁面に沿って流れてきた第一流体の圧力を受けて傾いたとしても、第一流路の側壁面12bには接しない。そのため、第二流体L3が側壁面12bに接して濡れ広がって変形するのを防ぐことができ、ドロップレットが所望のサイズより大きく形成されるのを防ぐことができる。これらの結果として、微小なドロップレットを安定的に形成することができる。
【0042】
<変形例>
図1に示した、第一実施形態に係るドロップレット生成装置10の変形例1〜7について、
図5〜10を用いて説明する。
【0043】
[変形例1]
図4は、変形例1に係るドロップレット生成装置100の構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、ドロップレット生成装置100は、基板101と、基板101の内部または表面に形成された、第一流体L1を流す第一流路112と、第二流体L2を流す第二流路113と、を少なくとも備えている。
【0044】
ドロップレット生成装置100おいては、第一流路112が階段状をなしており、開口部113aから見た、第一流路112の下流側の側壁面112bには、流路幅を略一定に保つ屈曲部が設けられている。また、開口部113aから見た、第一流路112の上流側の側壁面112aには、流路幅を狭める屈曲部、流路幅を広げる屈曲部が、開口部113aの位置から順に設けられている。
【0045】
このような構成においても、第一実施形態と同様に、第二流体L2に対して、第一流体L1の流れによる圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。したがって、変形例1に係るドロップレット生成装置110においても、開口部から流出した第二流体L2を、傾きを抑えた状態で引っ張ることができる。そのため、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。
【0046】
[変形例2]
図5は、変形例2に係るドロップレット生成装置110の構成を、模式的に示す図である。
図5に示すように、ドロップレット生成装置110は、基板111と、基板111の内部または表面に形成された、第一流体L1の流路をなす第一流路112と、第二流体L2の流路をなす第二流路113と、を少なくとも備えている。
【0047】
ドロップレット生成装置110は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路113が配された側の第一流路の側壁112aのうち、連通部Cより下流側に位置する部分が全て平坦となっている。ドロップレット生成装置110のその他の部分の構成については、第一実施形態と同様である。
【0048】
このような構成においても、第一実施形態と同様に、第二流体L2に対して、第一流体L1の流れによる圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。したがって、変形例1に係るドロップレット生成装置110においても、開口部から流出した第二流体L2を、傾きを抑えた状態で引っ張ることができる。そのため、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。
【0049】
[変形例3]
図6は、変形例3に係るドロップレット生成装置120の構成を、模式的に示す図である。
図6に示すように、ドロップレット生成装置120は、基板121と、基板121の内部または表面に形成された、第一流体L1の流路をなす第一流路122と、第二流体L2の流路をなす第二流路123と、を少なくとも備えている。
【0050】
ドロップレット生成装置120は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路123が配された側の第一流路の側壁122aのうち、連通部Cより下流側に位置する部分が全て平坦となっている。また、ドロップレット生成装置120は、第二流路123が配された側と反対側の第一流路の側壁122bが全て平坦となっている。ドロップレット生成装置120のその他の部分の構成については、第一実施形態と同様である。
【0051】
このような構成においても、第一実施形態と同様に、第二流体L2に対して、第一流体L1の流れによる圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。したがって、変形例2に係るドロップレット生成装置120においても、開口部から流出した第二流体L2を、傾きを抑えた状態で引っ張ることができる。そのため、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。
【0052】
[変形例4]
図7は、変形例4に係るドロップレット生成装置130の構成を、模式的に示す図である。
図7に示すように、ドロップレット生成装置130は、基板131と、基板131の内部または表面に形成された、第一流体L1の流路をなす第一流路132と、第二流体L2の流路をなす第二流路133と、を少なくとも備えている。
【0053】
ドロップレット生成装置130は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路133が配された側の第一流路の側壁132aのうち、連通部Cより下流側に位置する部分に屈曲部Eを有している。また、ドロップレット生成装置130は、第二流路133が配された側と反対側の第一流路の側壁132b全て平坦となっている。ドロップレット生成装置130のその他の部分の構成については、第一実施形態と同様である。
【0054】
このような構成においても、第一実施形態と同様に、第二流体L2に対して、第一流体L1の流れによる圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。したがって、変形例3に係るドロップレット生成装置130においても、開口部から流出した第二流体L2を、傾きを抑えた状態で引っ張ることができる。そのため、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。
【0055】
[変形例5]
図8は、変形例5に係るドロップレット生成装置140の構成を、模式的に示す図である。
図8に示すように、ドロップレット生成装置140は、基板141と、基板141の内部または表面に形成された、第一流体L1の流路をなす第一流路142と、第二流体L2の流路をなす第二流路143と、を少なくとも備えている。
【0056】
ドロップレット生成装置140は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路143が配された側の第一流路の側壁142aのうち、連通部Cより上流側に位置する部分が外側に突出している。また、ドロップレット生成装置140は、第二流路143が配された側と反対側の第一流路の側壁142b全て平坦となっている。ドロップレット生成装置140のその他の部分の構成については、第一実施形態と同様である。
【0057】
このような構成においても、第一実施形態と同様に、第二流体L2に対して、第一流体L1の流れによる圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。したがって、変形例4に係るドロップレット生成装置140においても、開口部から流出した第二流体L2を、傾きを抑えた状態で引っ張ることができる。そのため、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。
【0058】
[変形例6]
図9は、変形例6に係るドロップレット生成装置150の構成を、模式的に示す図である。
図9に示すように、ドロップレット生成装置150は、基板151と、基板151の内部または表面に形成された、第一流体L1の流路をなす第一流路152と、第二流体L2の流路をなす第二流路153と、を少なくとも備えている。開口部から見た上流側において、変形例1〜5のドロップレット生成装置では、第二流体の流入方向に対して垂直な横方向の流れと斜めの方向の流れが混在していたのに対し、変形例6のドロップレット生成装置では、全て第二流体の流入方向に対して斜めの方向の流れが支配的である。
【0059】
ドロップレット生成装置150は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路155が配された側の第一流路の側壁152aのうち、連通部Cより上流側に位置する部分と、第二流路153が配された側と反対側の第一流路の側壁152bとの距離が一定である。また、ドロップレット生成装置150は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路153が配された側の第一流路の側壁152aのうち、連通部Cより下流側に位置する部分が全て平坦となっている。また、ドロップレット生成装置150は、第二流路153が配された側と反対側の第一流路の側壁152bが全て平坦となっている。ドロップレット生成装置150のその他の部分の構成については、第一実施形態と同様である。
【0060】
このような構成においても、第一実施形態と同様に、第二流体L2に対して、第一流体L1の流れによる圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。したがって、変形例5に係るドロップレット生成装置150においても、開口部から流出した第二流体L2を、傾きを抑えた状態で引っ張ることができる。そのため、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。
【0061】
[変形例7]
図10は、変形例7に係るドロップレット生成装置160の構成を、模式的に示す図である。
図10に示すように、ドロップレット生成装置160は、基板161と、基板161の内部または表面に形成された、第一流体L1の流路をなす第一流路162と、第二流体L2の流路をなす第二流路163と、を少なくとも備えている。第一流路において、変形例1〜5のドロップレット生成装置では、第二流体の流入方向に対して垂直な横方向の流れと斜めの方向の流れが混在していたのに対し、変形例7のドロップレット生成装置では、全て第二流体の流入方向に対して斜めの方向の流れが支配的である。
【0062】
ドロップレット生成装置160は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路165が配された側の第一流路の側壁162aのうち、連通部Cより下流側に位置する部分が、第二流路の長手方向d1に垂直な面Sに対して、角度αの傾斜を有している。また、ドロップレット生成装置160は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路165が配された側の第一流路の側壁162aのうち、連通部Cより上流側に位置する部分と、第二流路163が配された側と反対側の第一流路の側壁162bとの距離が一定である。
【0063】
また、ドロップレット生成装置160は、第一流体L1の流れる方向f1において、第二流路163が配された側の第一流路の側壁162aのうち、連通部Cより下流側に位置する部分が全て平坦となっている。また、ドロップレット生成装置160は、第二流路163が配された側と反対側の第一流路の側壁162bが全て平坦となっている。ドロップレット生成装置160のその他の部分の構成については、第一実施形態と同様である。
【0064】
このような構成においても、第一実施形態と同様に、第二流体L2に対して、第一流体L1の流れによる圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。したがって、変形例6に係るドロップレット生成装置160においても、開口部から流出した第二流体L2を、傾きを抑えた状態で引っ張ることができる。そのため、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。
【0065】
以下、第一実施形態に該当する実施例1、2を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例1、2に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
図11(a)は、第一実施形態に係るドロップレット生成装置を含んだ、ドロップレット形成用のデバイス200の構成例を模式的に示す図である。
図11(b)は、
図11(a)のA−A線において、デバイス200を切断した際の断面図である。
【0067】
デバイス200は、基板201と、基板の内部に形成された第一流路202と、第二流路203と、第三流路204と、を含んでいる。第一流路202、第三流路204は、それぞれ第一流体L1、第二流体L2の流路をなしている。第二流路203は、第一流路202と第三流路204とを連通し、第三流路204から第一流路202に向けて第二流体L2を流出させる機能を有している。
【0068】
デバイス200の構成によれば、第一流路202、第二流路203、第三流路204にそれぞれ第一流体L1、第二流体L2を流した場合、第三流路204から第二流路203を経由して第一流路202へ流出させた線状の第二流体L2に対して、第一流体の流れf1による圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。この圧力の一部は、長手方向に加わる圧力に変換され、第二流体を長手方向に引っ張る力として、第二流体に作用する。短手方向に加わる圧力は、第二流体を傾ける力として第二流体に作用するが、長手方向への圧力に変換された分、第二流体の傾きは従来よりも抑えられた状態となる。
【0069】
したがって、第一流体L1の圧力が、主に第二流体の長手方向に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができる。また、第一流路の下流側の側壁面202aへの濡れ広がりを防ぐことができるため、濡れ広がりによる第二流体L2の変形にともなって、ドロップレットDが所望のサイズより大きく形成されるのを防ぐことができる。これらの結果として、微小なドロップレットDを安定的に形成することができる。
【0070】
図11に示したデバイス200の製造方法について、
図12、13を用いて説明する。
図12は、デバイス200の製造工程のフローを示している。
図13は、デバイスの製造過程における被処理体の要部断面を、製造工程の順に、段階的に示した図である。
【0071】
デバイス200は、
図12に示す4つの工程、すなわち、第一流路用のレーザー照射工程、第二流路用のレーザー照射工程、第三流路用のレーザー照射工程、改質部エッチング工程、を経ることにより、製造することができる。
【0072】
まず、
図13(a)に示すように、第一工程(工程P1)として、基板201の内部のうち第一流路を形成する領域に、レーザー光Lを集光照射し、基板の一面201aと平行な方向Sに、焦点Lfを走査させて構造改質部(改質部)201Aを形成する。
【0073】
第一工程は、2つのステップを経て行う。すなわち、1つ目のステップとして、光源において発光する、パルス幅がピコ秒オーダー以下の直線偏光したレーザー光(直線偏光レーザー光)に対して、強度が所望の大きさとなるように調整を行う。
【0074】
具体的には、基板201に集光照射した、レーザー光Lの焦点Lfにおける強度が、加工下限閾値より大きくなるように調整を行う。ここでの加工下限閾値は、直線偏光レーザー光を基板201の表面近傍に集光照射させた際に、集光した焦点において、改質部を形成することが可能な下限値として定義されるものである。
【0075】
さらに、レーザー光Lの強度は、形成する改質部がエッチング除去可能となるように、工程P1において、基板の一面201aから、改質部を形成する位置までの距離に応じて調整する。
【0076】
次に、2つ目ステップとして、光源において発生するレーザー光Lを、レンズを透過させるなどして基板201の内部に集光照射させ、改質部(微細孔)を形成する領域に沿って、集光した焦点Lfを走査させる。
【0077】
以上の2つのステップを経ることにより、基板201の内部において、レーザー光Lを集光照射して走査した領域とその近傍の領域に、改質部202Aを形成することができる。形成された改質部202Aは、レーザー光Lの集光照射により、エッチング耐性が弱められている。
【0078】
実際には、レーザー光Lを走査した際に、走査した領域、すなわち改質予定の領域に第一改質部が形成されるとともに、走査した領域近傍の領域、すなわち改質予定でない領域に第二改質部が形成される。ただし、第一改質部のエッチング耐性は、第二改質部のエッチング耐性よりも弱くなっている。
【0079】
次に、第二工程(工程P2)として、
図13(b)に示すように、基板201の内部のうち第二流路を形成する領域に、レーザー光Lを集光照射し、基板の一面201aと平行な方向Sに、焦点Lfを走査させて構造改質部(改質部)203Aを形成する。第二工程も、第一工程と同様の二つのステップを経て行う。
【0080】
次に、第三工程として、
図13(c)に示すように、基板201の内部のうち第三流路を形成する領域に、レーザー光Lを集光照射し、基板の一面201aと平行な方向Sに、焦点Lfを走査させて構造改質部(改質部)204Aを形成する。第三工程も、第一工程、第二工程と同様の二つのステップを経て行う。
【0081】
次に、第四工程(工程P3)として、
図13(d)に示すように、改質部202A、203A、204Aに対して選択的にエッチング処理を行い、基板201の内部に第一流路202、第二流路203、第三流路204を形成する。
【0082】
エッチング処理は、ドライエッチング法、ウェットエッチング法のどちらを用いて行ってもよいが、三次元構造の微細孔を形成するため、等方性の高いウェットエッチング法を用いる方が好ましい。よって、本実施例1における工程P3のエッチング処理は、ウェットエッチング法を適用して行うものとする。
【0083】
具体的には、第三工程を経た被処理体を、特定の容器に収容されたエッチング液に浸漬する。そして、基板201の内部に形成された改質部202A、203A、204Aの全体にエッチング液を染み込ませ、これらの除去を進行させる。
【0084】
第四工程のエッチング処理は、基板201の内部において、改質部202A、203A、204Aが、レーザー照射されずに構造改質していない部分に比べて、速くエッチングされる現象を利用するものであり、その結果として、改質部202A、203A、204Aの形状に応じた流路を形成することができる。
【0085】
エッチング液としては、例えばフッ酸(HF)、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸溶液などを用いることができ、第一基板101を構成する材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0086】
特に、水酸化カリウムを主成分とするアルカリ溶液(KOH溶液)は、エッチング液としての選択性が高く、改質部のみを選択的に除去する機能に優れる。そのため、KOH溶液は、例えば、互いに近接して形成された複数の第一改質部を除去して微細孔をなす空間を形成する際に、空間同士が繋がってしまわないように、第一改質部のみをより選択的に除去することが求められる場合に有効となる。
【0087】
第四工程を経ることにより、基板201内部の所望の位置に、第一流路202、第二流路203、第三流路204が形成され、
図11に示したデバイス200を得ることができる。
【0088】
なお、工程P1において用いるレーザー光は、ミクロンオーダーよりも小さな微小領域を走査して改質させることが可能である。したがって、最小寸法をナノオーダー(数10[nm]〜100[nm]のオーダー)とする流路を形成することができる。
【0089】
[実施例2]
図14(a)は、第一実施形態に係るドロップレット生成装置を含んだ、ドロップレット形成用のデバイス300の構成例を模式的に示す図である。
図14(b)は、
図14(a)のB−B線において、デバイス300を切断した際の断面図である。
【0090】
デバイス300は、第一基板301と、第一基板の一面301aに形成された第一凹部302および第二凹部303と、第一凹部302および第二凹部304が覆われるように、第一基板の一面301aに重ねられた第二基板305と、を含んでいる。第一凹部302、第二凹部304は、それぞれ第一流体L1の流路、第二流体L2の流路をなしている。
【0091】
また、デバイス300は、第一基板301の内部において、第二基板305と第一凹部302とで囲まれた内部空間および第二基板305と第二凹部304とで囲まれた内部空間を連通する微細孔303と、を含んでいる。この微細孔303によって、一方の内部空間から他方の内部空間に向けて、第一流体L1または第二流体L2を流すことが可能となる。
【0092】
デバイス300の構成によれば、各流路に第一流体L1、第二流体L2を流した場合、微細孔203から第一流路202へ流出させた線状の第二流体L2に対して、第一流体の流れf1による圧力が、第二流体の長手方向d1と鋭角をなす斜め方向から加わる。この圧力の一部は、長手方向に加わる圧力に変換され、第二流体を長手方向に引っ張る力として、第二流体に作用する。短手方向に加わる圧力は、第二流体を傾ける力として第二流体に作用するが、長手方向への圧力に変換された分、第二流体の傾きは従来よりも抑えられた状態となる。
【0093】
したがって、第一流体L1の圧力が第二流体L2に対して安定的に作用するようになり、作用を受けた第二流体L2を容易に切断することができ、ドロップレットDを安定して形成することができる。また、第一凹部の側壁302aへの濡れ広がりを防ぐことができるため、濡れ広がりによる第二流体L2の変形にともなって、ドロップレットDが所望のサイズより大きく形成されるのを防ぐことができる。これらの結果として、微小なドロップレットDを安定的に形成することができる。
【0094】
図14に示したデバイス300の製造方法について、
図15、16を用いて説明する。
図15は、デバイス300の製造工程のフローを示している。
図16は、デバイスの製造過程における被処理体の要部断面を、製造工程の順に、段階的に示した図である。
【0095】
デバイス300は、
図15に示す6つの工程、すなわち、レーザー照射工程、パターニング工程、Dryエッチング工程、レジスト剥離工程、改質部エッチング工程、キャップ接合工程、を経ることにより、製造することができる。
【0096】
まず、第一工程として、
図16(a)に示すように、第一基板301の内部のうち微細孔を形成する領域に、レーザー光Lを集光照射し、第一基板の一面301aと平行な方向Sに、焦点Lfを走査させて構造改質部(改質部)303Aを形成する。この工程は、実施例1として説明したデバイス200の製造方法における、第一工程と同様の二つのステップを経て行う。
【0097】
次に、第二工程として、
図16(b)に示すように、フォトリソグラフィ法によるミクロンオーダーの流路(マイクロ流路)用のパターニングを行い、第一基板301の第一凹部302、第二凹部304を設ける部分を除いた部分を、レジストRを用いてマスクする。
【0098】
続いて第三工程として、
図16(c)に示すように、マスクされていない、第一凹部302、第二凹部304を設ける部分を、ドライエッチング処理を行って除去する。これにより、第一基板の一方の主面301aに第一凹部302および第二凹部304が形成され、各々の凹部の内側面において、改質部303Aが露出する。
【0099】
続いて第四工程として、マスクに用いたレジストRを、第一基板301から剥離させて除去する。
【0100】
次に、第五工程として、
図16(d)に示すように、改質部303Aに対して選択的にエッチング処理を行い、第一基板301の内部に微細孔303を形成する。
【0101】
次に、第六工程として、
図16(e)に示すように、第六工程を経た第一基板の一面301aに、少なくとも第一凹部302および第二凹部304が覆われるように、第二基板305を接合(キャップ接合)する。第一〜第六工程を経ることにより、
図14に示したデバイス200を得ることができる。
【0102】
[実施例3]
上述した製造方法の他にも、半導体分野におけるフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることで、本発明のドロップレット生成装置を製造することができる。
先ず、基板の一面上にレジスト層を形成する。レジスト層は、第一流路および第二流路が形成される領域が開口されており、この開口部においては基板が露出している。この基板をエッチング処理すると、基板に第一流路及び第二流路が形成される。第一流路と第二流路とを一括して形成してもよいし、各々を個別に形成してもよい。第一流路と第二流路とを形成した後、基板からレジスト層を除去する。そして、基板上にキャップ基板を被せることで、第一流路および第二流路を備えたドロップレット生成装置を形成することができる。