特許第6140529号(P6140529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140529
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】糖縮合反応用触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 21/18 20060101AFI20170522BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20170522BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
   B01J21/18 Z
   C08B37/00 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-111701(P2013-111701)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-4580(P2014-4580A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-120996(P2012-120996)
(32)【優先日】2012年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(72)【発明者】
【氏名】濱 口 徳 寿
(72)【発明者】
【氏名】山 本 来 紀
(72)【発明者】
【氏名】平 井 宏 和
(72)【発明者】
【氏名】高 橋 良 輔
(72)【発明者】
【氏名】高 田 正 保
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−231694(JP,A)
【文献】 特開2009−201405(JP,A)
【文献】 特開2010−222478(JP,A)
【文献】 特許第4966429(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C08B 37/00
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭を触媒成分として含んでなる、糖縮合反応用触媒組成物。
【請求項2】
糖縮合反応が100℃〜300℃の温度条件下で行う反応である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
糖縮合反応が食物繊維含量30重量%以上の糖縮合物組成物を生成する縮合反応である、請求項1または2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒組成物と糖縮合物を含んでなる、糖縮合反応組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖縮合反応用触媒組成物に関し、詳細には、活性炭を触媒成分として含んでなる糖縮合反応用触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭水化物は三大栄養素の一つであり、生命を維持する上で必須な栄養素でその摂取は生命活動を維持する上で必須である。一方、飽食の時代を迎え、成人病等の主たる原因の一つである肥満の防止という視点から、必要以上のカロリーを制限する事が求められるようになった。カロリーを制限する際、摂取する食物の総量を制御する事は最も有効な方法であるが、甘味物等の高カロリー食品への欲求を抑える事は容易ではない。この欲求を満たしつつ、摂取カロリーを抑える方法として“食物繊維”を食品に含有させる事が有効である。例えば、高甘味甘味料に食物繊維を増量剤として加えてダイエット甘味剤としたり、スプレー乾燥食品の賦形剤として食物繊維を加える事で、低カロリーで満腹感を付与させる等の場合がある。
【0003】
これまでに食品分野に使用されている食物繊維としては、植物のヘミセルロース画分を抽出した天然物やグルコースとソルビトールとクエン酸あるいはリン酸とを一定割合で混合し、高温真空下で重合させた縮合物であるポリデキストロースや、デンプンを塩酸存在下、焙焼して得られる焙焼デキストリン、更には、これを消化酵素で処理した後に、酵素耐性画分を分画して得られる難消化性デキストリンが利用されている。植物抽出物はその抽出効率や着色性、食品加工においては必要以上に粘度が高い等の点で課題があり、現在はポリデキストロースや難消化性デキストリンが市場での高い評価を受けているのが現状である。難消化性デキストリンは、デンプンの酸による加水分解と焙焼による熱縮合が同時に起こり、その点では糖を酸と熱により縮合させ、高分子のグルコースポリマー(多糖類)を生成させるという点で、ポリデキストロースと同等と言える。こうした糖縮合は結合がランダムであり、消化酵素で切断されにくい場合が多く、その意味で食物繊維としての機能が付与されていると考えられる。また、難消化性デキストリンの場合は、縮合物を更に消化酵素で処理した後に、酵素耐性画分を分画して食物繊維含有量をあげる事が試みられているが、コストの点で、分画の必要が無い新規な縮合物の製造方法が求められてきた。
【0004】
ところで、単糖類を直接縮合させて多糖類を合成しようとする試みは古くからおこなわれている。多糖類の合成法は大別して、加水分解逆反応法、溶融法、固相法、溶媒法に分けられる。単糖類を使う限り、いずれの方法でも、得られる生成物は構造上の規則性がなく各種分解酵素に分解されにくい低カロリー糖であるといわれている。従って、前述の食物繊維を食品で利用する際は、素材を消化酵素で消化し、耐性画分を食物繊維含量として酵素−重量法、複合法、非重量法等により評価、算出されている。縮合法において、加水分解逆反応法は一般に収率が低く、溶媒法は反応後その溶媒を除去する必要が生じる。そのため両方法ともコストの面で低カロリー糖(食物繊維)の製造方法には適さない。また、固相法も反応時間が長かったり、触媒を効率よく混合するという点で課題がある。この点、原料である糖の融点以上で糖を溶融させ高温真空下若しくは不活性ガス気流中で脱水縮合させる溶融法は工程が単純で前述の方法と比較すると有利だが、着色性の点で課題がある。
【0005】
このうち高温真空下での溶融法は種々試みられている。原料として最も安価なグルコースに限ると、触媒なしで溶融して脱水縮合させる方法、亜リン酸を触媒とする方法、強酸性樹脂を触媒とする方法、塩化チオニルを触媒とする方法や、そのほかにも三塩化リン、五塩化リン、五酸化リン、濃硫酸、メタホウ酸、塩化亜鉛など無機触媒を使う方法、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸など有機触媒を使う方法、珪藻土、活性白土などの鉱物性物質を使う方法(特許文献1)が報告されている。
【0006】
最近では鈴木らにより、フッ化糖を用いる方法や、単糖類を酸触媒(リン酸)と共に固相反応させる方法で糖鎖ポリマーが作製できることが報告されている(非特許文献1および非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−231694号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Atsushi Kanazawa, Shohei Okumura and Masato Suzuki, Org. Biomol. Chem., 3,p.1746-1750(2005)
【非特許文献2】Atsushi Kanazawa, Shingo Namiki and Masato Suzuki, Journal of Polymer Science. Vol45,p.3851-3860 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、糖質を縮合させた糖縮合物の食品への応用を考えるとき縮合の際の触媒や溶媒が食品に適さないものがある。特に、従来方法は一部を除いていずれも非揮発性酸を触媒として用いているため、反応生成物中に触媒が多量に残り、これら触媒の多くがエステル交換反応などにより糖骨格中に取り込まれる場合がある。また、触媒が残存することで、生成物が酸味を呈することがあり、場合によっては酸触媒を除去若しくは中和する必要があった。更に従来方法により得られるいずれの糖縮合物も、原料糖質の分解に起因する着色性に問題があった。
【0010】
本発明は、飲食品への適用が可能な糖縮合物を製造するための触媒用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、意外にも、活性炭存在下で糖縮合反応を実施することにより、着色度が低く、高い難消化性を示す糖縮合物が得られることを見出した。本発明者らはまた、糖質全般が活性炭による糖縮合反応の基質となりうることを見出した。すなわち、本発明者らは、活性炭が糖質全般の縮合反応を触媒するという未知の属性を有していることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)活性炭を触媒成分として含んでなる、糖縮合反応用触媒組成物。
(2)糖縮合反応が100℃〜300℃の温度条件下で行う反応である、上記(1)に記載の触媒組成物。
(3)糖縮合反応が食物繊維含量30重量%以上の糖縮合物組成物を生成する縮合反応である、上記(1)または(2)に記載の触媒組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の触媒組成物と糖縮合物を含んでなる、糖縮合反応組成物。
【0013】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物は活性炭を主成分として使用している。活性炭は固液分離により容易に系外へ除くことができ、また、食品添加物として利用されているように食品への使用に安全性が認められている。従って、本発明によれば、飲食品へそのまま適用可能な糖縮合物を安価で簡便に製造することができる。
【0014】
また、本発明の糖縮合反応用触媒組成物を使用すれば、着色性が低く、難消化性の食物繊維画分が豊富な糖縮合物を一段階で製造することができる。更に、活性炭は反応後に固液分離により系外に除くことができるため、製造された糖縮合物は中性から弱酸性となり酸味を呈さない。従って、本発明の糖縮合反応用触媒組成物を用いて製造された糖縮合物は、飲食品中の糖質の代替物として利用可能な食物繊維として有用である。
【0015】
さらに、本発明の糖縮合反応用触媒組成物を使用すれば、結晶グルコース製造の際に生ずる分蜜液であるハイドロールを糖縮合反応の基質として利用することができる。ハイドロールは結晶グルコースに比べて不純物や水分が多いことから、従来の塩酸やクエン酸などの酸触媒を用いた反応方法では着色が高くなることや風味を損ねるため、使用することが好ましくなかった。すなわち、本発明の糖縮合反応用触媒組成物を使用すれば、産業廃棄物にもなるハイドロールを利用して飲食品に適用可能な食物繊維を製造できることから、リサイクルや原料コスト削減の観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】糖縮合反応において、活性炭を触媒とした場合と、クエン酸、リン酸、塩酸、および活性白土を触媒とした場合の、糖縮合物中の食物繊維含量を示した図である。
図2】糖縮合反応において、活性炭を触媒とした場合と、クエン酸、リン酸、塩酸、および活性白土を触媒とした場合の、糖縮合物の着色度を示した図である。
図3】ハイドロールを反応基質とし、活性炭を触媒として用いた糖縮合反応において、各反応温度での糖縮合物中の食物繊維含量の経時変化を示した図である。
図4】無水結晶グルコースを反応基質とし、活性炭を触媒として用いた糖縮合反応において、各反応温度での糖縮合物中の食物繊維含量の経時変化を示した図である。
図5】ハイドロールを反応基質とし、活性炭を触媒として用いた糖縮合反応において、各反応温度での糖縮合物の着色度の経時変化を示した図である。
図6】無水結晶グルコースを反応基質とし、活性炭を触媒として用いた糖縮合反応において、各反応温度での糖縮合物の着色度の経時変化を示した図である。
【発明の具体的説明】
【0017】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物は「活性炭」を触媒成分として含む。ここで、「活性炭」は、多孔性炭素質吸着材として知られているものを使用することができる。活性炭は、主に、石炭、コークス、ピッチ、骨炭、木炭、ヤシ殻、木材、ノコギリくず、リグニン、牛の骨など動植物および鉱物由来の天然炭素質、フェノール樹脂やポリアクリロニトリルなどの合成樹脂などの有機高分子、煤等の炭素質物質を熱処理により炭化させ、それを賦活させて得ることができる。
【0018】
本発明で用いられる「活性炭」は、活性炭そのものでもよいし、活性炭を一部含んだものでもよい。例えば、プラスチック、鉱物、セラミック、繊維などの担体上に活性炭を担持させたものでもよいし、粉末活性炭を粘着剤で造粒したものでもよいし、鉱物、セラミック等の粉末と粉末活性炭から造粒したものでもよい。また、骨炭、骨炭色素、木炭、木炭色素、グラファイト、カーボンブラックなども、それら構造の中に活性炭を一部含んだものでもよい。糖縮合反応により得られる糖縮合物を食品に添加することを考慮すると、活性炭は、上記炭素素材のうち食品添加物リストに記載されたものであることが好ましい。
【0019】
本発明で用いられる「活性炭」は、活性炭を誘導体化したものでもよい。例えば、過酸化水素や硝酸による酸化反応処理でカルボキシル基を導入した活性炭や、硫酸又は発煙硫酸によるスルホン化処理でスルホン基を導入した活性炭を用いてもよい。さらに本発明で用いられる「活性炭」は、その賦活化条件により酸性〜アルカリ性に性質が変化するが、酸性炭、中性炭、アルカリ性炭のいずれも用いることができる。なお、縮合反応効率の点から酸性炭または中性炭が好ましい。
【0020】
また、本発明に用いる活性炭の形状は特に限定されるものではなく、粒状、粉末状、繊維状、板状、ハニカム状の形状が挙げられる。本発明に用いる活性炭としては、具体的には粉末状炭として水蒸気炭、塩化亜鉛炭が挙げられ、粒状炭として破砕炭、顆粒炭、造粒炭、球状炭が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる活性炭として粉末活性炭を使用する場合には、例えば、日本エンバイロケミカルズ社製「白鷺A、白鷺C、精製白鷺」等を用いることができる。粒状活性炭を使用する場合には、例えば、日本エンバイロケミカルズ社製「粒状白鷺WH、粒状白鷺C」、東洋カルゴン社製「F400、F300、PCB、BPL、CAL、CPG、APC」、クラレケミカル社製「クラレコールKW」、クレハ化学工業社製「BAC」、日本ノリット社製「PN、ZN、SA、SA−SW、SX、CA、CN、CG、D−10、W、GL、HB PLUS」等を用いることができる。繊維状活性炭を使用する場合には、東洋レーヨン社製「FX−300」、大阪ガス社製「M−30」、東洋紡績社製「KF−1500」を、板状活性炭を使用する場合には、鐘紡社製「ミクロライトAC」等を、それぞれ用いることができる。
【0022】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物の存在下で糖縮合反応を実施することができる。ここで、「糖縮合反応」とは、糖質同士を縮合重合させて糖縮合物を得る反応をいい、典型的には、糖質の水酸基同士が脱水縮合するような反応をいう。
【0023】
本発明では、1種または2種以上の糖質を基質に糖縮合反応を実施することができる。糖縮合反応に付すことができる糖質には特に制限はなく、単糖、オリゴ糖、および多糖、並びにこれらの還元物のいずれをも用いることができるが、製造された糖縮合物を飲食品に利用することを意図している場合には飲食品として利用可能な糖質を用いることができる。
【0024】
本発明では、また、糖質の誘導体を糖縮合反応の基質に利用することができる。糖質の誘導体としては、糖酸などの酸化物、糖アルコールなどの還元物、アミノ糖、エーテル化糖、ハロゲン化糖、リン酸化糖などの修飾物が挙げられるが、製造された糖縮合物を飲食品に利用することを意図している場合には飲食品として利用可能な誘導体を用いることができる。例えば、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、グルコサミン、グルコース−6−リン酸等が挙げられるが、飲食品として利用可能な糖質誘導体であれば特段制限は無い。
【0025】
本発明において「単糖」とはオリゴ糖や多糖の構成単位となる糖をいい、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、フラクトース、プシコース等が挙げられるが、飲食品として利用可能な単糖であれば特段制限は無い。
【0026】
本発明において「オリゴ糖」とは、2〜10個の単糖が結合した糖質をいい、例えば、マルトース、セロビオース、トレハロース、ゲンチオビオース、イソマルトース、ニゲロース、ソホロース、コージビオース、スクロース、ツラノース、ラクトース、キシロビオース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、セロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、シクロデキストリン等が挙げられるが、飲食品として利用可能な糖質であれば特段制限は無い。
【0027】
本発明において「多糖」とは、単糖が11個以上結合した糖質をいい、例えば、澱粉、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、プルラン、デキストラン、アラビノキシラン、ペクチン、イヌリン、ガラクタン、マンナン、βグルカン、焙焼デキストリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、等が挙げられるが、飲食品として利用可能な糖質であれば特段制限は無い。
【0028】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では糖質全般が本発明の触媒組成物による糖縮合反応の基質となりうるが、縮合基質として利用できる糖質を例示すると、グルコースや、グルコースとグルコース以外の単糖、グルコースの還元物、オリゴ糖、およびデキストリンからなる群から選択される1種または2種以上との組合せが挙げられ、これ以外にも、グルコース以外の単糖、オリゴ糖、および多糖を1種または2種以上組み合わせて糖縮合反応の基質としてもよい。また、澱粉分解物を糖縮合反応の基質として利用することもできる。
【0029】
また、本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では、糖縮合反応の基質は結晶化した糖質および/または非結晶性の糖質粉末であっても、シロップ状の糖質であってもよい。本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法で糖縮合反応の基質として利用できるシロップ状の糖質としては、糖質の水溶液であれば特に制限はないが、縮合反応においては低水分量である事が好ましい。
【0030】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では糖縮合反応を100℃以上、好ましくは、基質となる糖質の融点以上の温度で実施することができるが、反応効率の観点から100℃〜300℃、好ましくは、100℃〜280℃、より好ましくは、170℃〜280℃の温度範囲で実施することができる。反応時間は縮合反応の進行度合いに従って調整できるが、反応産物中の難消化性画分の割合が75%以上となるように調整した場合には、例えば、反応温度180℃で5〜180分、反応温度190℃で1〜180分、反応温度200℃で1〜180分とすることができる。反応機器の構造は常圧方式または減圧方式により異なるが、100℃から300℃の加熱条件を満たす機械であれば特に制限はない。例えば、棚式熱風乾燥機、薄膜式蒸発器、フラッシュエバポレーター、減圧乾燥機、熱風乾燥機、スチームジャケットスクリューコンベヤー、ドラムドライヤー、エクストルーダー、ウォームシャフト反応機、ニーダーなどが挙げられる。また、反応機器は連続化も可能である。
【0031】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では糖縮合反応を常圧条件下あるいは減圧条件下で実施することができる。糖縮合反応を減圧条件下で実施した場合には反応生成物の着色度が低下するため有利である。
【0032】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物の使用量は糖縮合反応が進行する限り特に限定されないが、グルコースを含む糖質100重量部に対し、活性炭重量基準で0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜10重量部の範囲とすることができる。
【0033】
活性炭は、従来の金属触媒や酸性触媒などと異なり、取り扱いにおいてまたは生成物に残存した場合にも、衛生面等で危険が少なく、安全性が高いため、特に食品用途などにおいては好ましい。また、活性炭は、沈降、ろ過、遠心分離、または充填塔式とすることにより、反応系から容易に分離することができる。従来の酸触媒を使用した場合には、糖縮合物の構造内に酸触媒が結合することや生成物に酸触媒が残存することがあり、触媒を完全に分離することが困難であったが、本発明の活性炭は、反応後に容易に分離可能である。
【0034】
活性炭は再利用性に優れており、繰り返し使用することが可能であるため、経済面でも好ましい。本発明の活性炭の再利用法は、既存の方法を用いることが可能であり特に限定されないが、例えば溶剤の溶質濃度、圧力を下げることにより吸着物などを脱離させる減圧再生法、溶媒により抽出する溶媒再生法、他の吸着物質により置換を行う置換再生法、加熱による加熱脱離法、化学処理による化学再生法、酸化、分解による酸化分解再生法などを用いることが可能である。
【0035】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物は活性炭を主成分として含むが、糖縮合反応触媒能を有する限り活性炭以外の物質(例えば、流動性改善剤、坦体、粘着剤、造粒剤等)を含有していてもよく、活性炭に加えて活性炭以外の糖縮合反応触媒を含有していてもよい。本発明の糖縮合反応用触媒組成物が活性炭以外の糖縮合反応触媒を含む場合、全糖縮合反応触媒成分に対する活性炭の含有割合は50重量%以上とすることができ、好ましくは、75重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0036】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物において活性炭と一緒に使用できる糖縮合反応触媒としては、酸触媒が挙げられ、例えば、塩酸や硫酸やリン酸などの無機酸触媒、クエン酸やフマル酸、マレイン酸、アジピン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸などの有機酸触媒が挙げられる。また、酸触媒以外に、活性白土や珪藻土、白金、イオン交換樹脂などの固体触媒を使用することもできる。飲食品や食品助剤として利用でき、反応系から触媒を簡便に除去できる観点から、不揮発性の触媒が好ましく、より好ましくは不揮発性の固体触媒である。
【0037】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では、糖縮合反応を実施した後、糖縮合反応用触媒組成物と該触媒の作用により得られた糖縮合物の混合物が得られる。すなわち、本発明によれば、本発明の糖縮合反応用触媒組成物と糖縮合物を含有する糖縮合反応組成物が提供される。この糖縮合反応組成物は水分活性が低いためそのまま常温で保存・輸送することができる。本発明の糖縮合反応組成物は、食物繊維である糖縮合物と共に活性炭も含有しているため、そのまま食することにより食物繊維に由来する生理効果と共に活性炭に由来する「毒物の吸着除去(デトックス効果)」や「下痢止め効果」といった有利な生理効果を得ることができる。さらに、既存の糖縮合反応用触媒である有機酸等の様に酸味を有さないため、食品に添加してもその風味に悪影響を与えにくい。また、本発明の糖縮合反応組成物は、脱色作用を有する活性炭を含有しているため、その後の脱色工程の負荷を減じる事ができる点で有利であり、また、本発明の糖縮合反応組成物をスプレードライヤー等により粉末化する場合に活性炭が粉末化基材として働く点でも有利である。なお、本発明の糖縮合反応組成物はさらに適宜水に溶解し、濾過することで触媒組成物の主成分である活性炭を取り除くことができる。
【0038】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法で得られた糖縮合物は糖アルコールに変換してもよい。本発明において糖アルコールとは、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基が還元され、水酸基となっているものを言う。
【0039】
糖アルコールを得る方法は当業者に周知であり、使用可能な還元方法を例示すれば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明においては、少量の糖アルコールを調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。
【0040】
接触水素化反応とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応であり、一般に水添反応とも言われている。本発明による糖アルコールの製造方法を具体的に説明すると、本発明において用いる糖縮合物を水に溶解し、そこにラネーニッケル触媒を適量加え、水素ガスを添加し、高温条件下で還元する。次に、脱色・脱イオン処理して、糖縮合物還元糖組成物を得る。
【0041】
接触水素化反応において使用し得る触媒としては、公知の水添触媒なら特に限定されないが、例えば、ラネーニッケル、還元ニッケル、珪藻土、アルミナ、軽石、シリカゲル、酸性白土などの種々の担体に担持したニッケル−担体触媒などのニッケル触媒;ラネーコバルト、還元コバルト、コバルト−担体触媒などのコバルト触媒;ラネー銅、還元銅、銅−担体触媒などの銅触媒;パラジウム黒、酸化パラジウム、コロイドパラジウム、パラジウム−炭素、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−酸化マグネシウム、パラジウム−アルミナなどのパラジウム触媒;白金黒、コロイド白金、酸化白金、硫化白金、白金−炭素などの白金−担体触媒等の白金触媒;コロイドロジウム、ロジウム−炭素、酸化ロジウムなどのロジウム触媒;ルテニウム触媒などの白金族触媒;酸化二レニウム、レニウム−炭素などのレニウム触媒;銅クロム酸化物触媒;三酸化モリブデン触媒;酸化バナジウム触媒;酸化タングステン触媒;銀触媒などが挙げられる。これらの触媒の内では、ラネーニッケル、還元ニッケル、ニッケル珪藻土を用いることが好ましく、より好ましくは、ラネーニッケルである。
【0042】
また、水素の圧力は通常10〜250kg/cm、好ましく50〜200kg/cmの範囲である。また、反応温度は触媒量、溶媒種別により異なるが、通常80〜200℃の範囲であることが好ましく、90〜160℃がより好ましい。
【0043】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では、食物繊維の含量が30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは、75重量%以上である糖縮合物組成物を製造することができる。食物繊維含量は衛新第13号に記載された分析方法に従って測定できる。また、糖質の組成や反応条件を制御することで分子量および粘度が調整された糖縮合物を提供することができる。例えば、グルコース単独で調製した水溶性食物繊維に比べて、ソルビトールとグルコースを組み合わせて調製した場合には、ソルビトール分子が反応ストップ分子として働き、低分子量で粘度の低い水溶性食物繊維が得られる。一方、オリゴ糖やデキストリンなどの高分子量の素材とグルコースを組み合わせて調製した場合には、より高分子量で粘度の高い水溶性食物繊維が得られる。また、アラビノースやキシロースを用いて調製した場合には、グルコースに比べて高分子量の水溶性食物繊維が得られる。また、反応時間を短くする事で、オリゴ糖に分類される糖縮合物の製造も可能になる。このように、糖質の組み合わせ、糖質の種類および反応条件により糖縮合物の分子量や粘度を調整することができる。
【0044】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法により製造される糖縮合組成物の着色度は、使用する糖基質の種類や反応条件により差は生じるが、20%(w/w)水溶液での420nmの吸光度(OD420)は0〜10.0の範囲(好ましくは0〜5.0の範囲)となりうる。糖基質としてグルコースを単独で用いた場合には、本発明の製造方法により製造される糖縮合組成物の着色度は、20%(w/w)水溶液での420nmの吸光度(OD420)は0〜2.0の範囲となりうる。
【0045】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では糖質の基本構成単位であるグルコースを出発原料として利用し、高分子量の多糖を合成することができる。また、本発明の製造方法では、グルコース精製品である無水および/または含水結晶グルコースや非結晶性粉末グルコース品のみならず、グルコースシロップを利用して糖縮合反応を実施することができる。特に、後記実施例に示されるように、グルコース精製工程で生ずるハイドロールのようなグルコースシロップを縮合基質として利用可能であることから、本発明の製造方法はリサイクルや原料コスト削減の観点から極めて有利である。
【0046】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法ではグルコース以外の糖質を出発原料として利用し、高分子量の多糖を合成することができる。このようにグルコースにグルコース以外の糖質を共存させて縮合させた場合には、植物由来の天然食物繊維により近い組成のヘテロ糖縮合物とすることができる点で有利である。
【0047】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法では、縮合反応により得られた糖縮合物の組成物を、そのまま飲食品に添加することができ、必要に応じて、縮合反応により得られた生成物を遠心分離あるいは濾過等により不溶物を除去し、水溶性画分を濃縮することで、糖縮合物を含有する溶液としてもよい。あるいは、必要に応じて活性炭により脱色させたもの、適当なイオン交換樹脂によりイオン性成分を除去したものを濃縮してもよい。保存性やその後の用途においては、脱色、イオン除去したものを微生物の繁殖が問題とならない程度の水分活性となるまで濃縮することが好適である。あるいは、用途によっては利用しやすいように、乾燥させて、粉末とすることもできる。乾燥は、通常、凍結乾燥あるいは噴霧乾燥やドラム乾燥などの方法が利用できる。乾燥物は、必要により粉砕し、乾燥粉末にすることが望ましい。
【0048】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法により製造された糖縮合物の乾燥物は、難消化性デキストリンやポリデキストロースのような市販の水溶性食物繊維に比べて、水やアルコール溶液に対する非常に優れた溶解性を示す(実施例A12)。従って、本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法により得られた糖縮合物の乾燥物を用いて各種飲食品(特に、後述する高甘味度甘味料を含有する飲料やビール風味飲料)を製造する際には乾燥物の水等への溶解時間を短縮することができ、製造効率を改善することができる点で有利である。
【0049】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法により得られる生成物は、重合度3以上の糖縮合物と共に、重合度3未満のグルコースやマルトース、ゲンチオビオースなどの糖質を含有している。この生成物はそのまま後述するような飲食品などの用途に用いることができるが、必要に応じてこれらの成分を除去してもよい。糖質の単離・精製方法および糖質の分離・除去方法は当業者に周知の手段を利用してよく、膜分離、ゲルろ過クロマトグラフィー、カーボン−セライトカラムクロマトグラフィー、強酸性陽イオン交換カラムクロマトグラフィーなど当業者に周知の糖質の精製方法を使用できる。
【0050】
本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法により得られる生成物を飲食品の風味改善や医薬品の不快な味のマスキング、カロリーコントロールに用いる場合には、その生成物に重合度3未満の糖質および分岐糖質が含まれていてもよいが、味のバランスやカロリー等の観点から、重合度3未満の糖質の一部または全部を膜分離、ゲルろ過クロマトグラフィー、カーボン−セライトカラムクロマトグラフィー、強酸性陽イオン交換カラムクロマトグラフィーなど周知の方法により分離・除去してもよい。
【0051】
さらに、本発明の糖縮合反応用触媒組成物を利用した糖縮合物の製造方法により得られる生成物を飲食品の風味改善やカロリーコントロールに用いる場合には、カロリーの低減や味質のバランスの観点から、酵素処理を行ってもよい。また、酵素処理前後に上記糖質の分離・除去方法を行っても良い。このような酵素処理方法は、一種類または二種類以上の酵素を組み合わせることが可能である。また、酵素処理方法は、複数の酵素を段階的に作用させても良いし、同時に作用させても良い。
【0052】
上記の酵素処理に使用される酵素は特に限定されるものではないが、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、α−グルコシダーゼ、トランスグルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、イソメラーゼ等を挙げることができる。さらに、好ましくは、これら酵素の市販品が挙げられる。
【0053】
本発明の別の面によれば、活性炭を糖縮合反応の触媒成分として使用する方法が提供される。この糖縮合反応は100℃〜300℃の温度条件下で行うことができる。また、この糖縮合反応は、好ましくは、食物繊維含量30重量%以上の糖縮合物組成物を生成する縮合反応である。
【0054】
本発明のさらに別の面によれば、本発明の触媒組成物を使用して糖縮合反応を実施し、本発明の触媒組成物と糖縮合物とを含んでなる糖縮合反応組成物を製造する方法が提供される。
【実施例】
【0055】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0056】
実施例中に示される各種測定方法および分析方法は以下の通り行った。
【0057】
食物繊維含量の測定
平成11年4月26日衛新第13号(栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について)に記載されている高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により測定する。具体的には以下のように行った。
【0058】
まず、サンプル1gを精密に測り、0.08mol/lリン酸緩衝液50mlを加え、pH6.0±0.5であることを確認する。これに熱安定性α-アミラーゼ(Sigma社:EC3.2.1.1 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mlを加え、沸騰水中に入れ、5分ごとに撹拌しながら30分間放置する。冷却後、水酸化ナトリウム溶液(1.1→100)を加えてpHを7.5±0.1に調整する。プロテアーゼ(Sigma社:EC3.4.21.62 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mlを加えて、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させる。冷却後、0.325mol/l塩酸を加え、pHを4.3±0.3に調整する。アミログルコシダーゼ(Sigma社:EC3.2.13 Aspergillus niger由来)溶液0.1mlを加え、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させる。以上の酵素処理終了後、直ちに沸騰水浴中で10分間加熱した後、冷却し、グリセリン(10→100)を内部標準物質として5ml加え、水で100mlとし酵素処理液とする。酵素処理液50mlをイオン交換樹脂(OH型:H型=1:1)50mlを充填したカラム(ガラス管20mm×300mm)に通液速度50ml/hrで通液し、さらに水を通して流出液の全量を200mlとする。この溶液をロータリー・エバポレーターで濃縮し、全量を水で20mlとする。孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、検液とする。
【0059】
次に、検液20μlにつき、液体クロマトグラフィーを行い、検液のグリセリンおよび食物繊維画分のピーク面積値を測定した。
【0060】
液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りであった。
検出器:示差屈折計
カラム:ULTRON PS-80N(φ8.0×300 mm、島津ジーエルシー)を二本連結
カラム温度:80℃
移動相:純水
流速:0.5ml/min
【0061】
食物繊維成分含量は以下の式から算出した。
食物繊維成分含量(%)=[食物繊維成分のピーク面積/グリセリンのピーク面積]×f1×[内部標準グリセリン重量(mg)/秤取資料重量(mg)]×100
(上記式中、f1はグリセリンとブドウ糖のピーク面積の感度比(0.82)である。)
【0062】
着色度の測定
サンプルの着色度の測定は、各種サンプルを20%(w/w)水溶液とし、420nmの吸光度(OD420)を測定することにより行った。
【0063】
白色度の分析
サンプルの白色度の測定は、各種サンプルをBx.50に調整し、日本電色工業社製分光式色差計SE−2000で白色度(WI値)を測定した。SE−15723の標準白板にて標準合わせを行なった後、ブランクに純水を用い、純水測定時のWIを100と換算して算出し、比較例のライテス(ダニスコジャパン社製)は81.7、ファイバーソル2(松谷化学工業社製)は80.3であった。
【0064】
分子量の測定
各サンプルを1%(w/v)となるよう純水で溶解し、1%(w/v)活性炭を添加し、煮沸後、0.45μmメンブレンフィルターろ過した。ろ液をイオン交換樹脂 MB4処理後、0.45μmメンブレンフィルターろ過して分析を行なった。
【0065】
分析条件は以下の通りであった。
カラム:Shodex OHpak SB-803 HQ+SB-802.5HQ(φ 8.0×300 mm、昭和電工)
温度:40℃
溶媒:200 mM 硝酸カリウム 0.9 ml/min
圧力:67kgf/cm2
装置:MALLS:Dawn Heleos-II(Wyatt Technology,USA)(λ=658 nm),
室温RI:Optilab rEX(Wyatt Technology), 25℃
σn/σc:0.145
解析ソフト:Astra(v.5.3.4.14, Wyatt Technology)
打込量 :Bx.1×100 μl
【0066】
メチル化分析
グリコシド結合形式の定量方法測定方法は下記の「箱守のメチル化法」(S.Hakomori,J.Biochem.,55,205(1964))の変法でメチル化し、加水分解後にガスクロマトグラフィーにより各グリコシド結合形式の組成の定量を行った。
【0067】
1)メチル化脱水した試料(5mg)をネジ付試験管(15ψ×100mm)に入れ、0.5mlのDMSOを加えて溶解する。これにNaOHを60mg加え、1時間室温保持した後、0.3mlのヨウ化メチルを加え、60℃1時間反応する。攪拌後氷水中で冷却して水1mlを加えて反応を停止する。1mlのクロロホルムを加えて十分に振とうする。上層(水層)をピペットで採り捨てる。1mlの水を加えて同様に洗浄する。この操作を5回繰り返す。パスツールピペットの底に綿を敷いて、無水硫酸ナトリウムを4〜5cmの層になるように詰めて、溶液を通過させて脱水してからクロロホルムで洗う。次にロータリー・エバポレーターで濃縮・乾固する。
【0068】
2)加水分解メチル化物に1mlの4Mトリフルオロ酢酸を加えて100℃で1時間加水分解し、ロータリー・エバポレーターで60℃で濃縮・乾固する。
【0069】
3)還元加水分解物を0.5mlの水で溶解後、アンモニア水を3滴添加してアルカリ性にし、10mgの水素化ホウ素酸ナトリウムを加えて室温で2時間以上放置する。アンバーライトMB4(オルガノ)を添加し、発泡が止まるまで加えて反応を停止する。次に室温で乾燥してから、生成したホウ酸を除くために、2mlのメタノールを加え室温で乾燥する。この操作を5回繰り返す。
【0070】
4)アセチル化還元物に0.5mlの無水酢酸と0.5mlのピリジンを加えて、100℃で4時間加熱してアセチル化して、2mlのトルエンを加えてロータリー・エバポレーターで濃縮・乾固する。
【0071】
5)脱塩アセチル化物を1mlのクロロホルムに溶解し、1mlの水を加えて振とう後に水層を捨てる。この操作を5回繰り返し、最後にクロロホルムをロータリー・エバポレーターで蒸発させる。
【0072】
6)溶解脱塩物を0.5mlのクロロホルムに溶解してガスクロマトグラフで分析する。
【0073】
7)ガスクロマトグラフィーの条件
カラム:TC-17 fused silica capillary column 30mX0.25mmID,1.0μm film
カラム温度:50℃で1分、280℃まで10℃/分で昇温、保持
試料気化室温度:300℃
検出温度:300℃
流速:2.5ml/分
ヘリウム 検出器ユニット 水素炎イオン化検出器
【0074】
8)還元糖量の測定
DEは、ソモギー変法(澱粉糖関連工業分析法(株式会社食品化学新聞社)(平成3年11月1日発行)11〜13頁)に従って測定した。
【0075】
実施例A:糖縮合物とその製造
実施例A1:糖縮合における各種触媒の検討(1)
活性炭が糖縮合反応の触媒活性を有するか否か、クエン酸触媒、リン酸触媒、塩酸触媒、および鉱物触媒と比較しつつ検討した。
【0076】
活性炭を触媒としたサンプルは、ステンレス容器に15gのハイドロール(ハイグル#9465、DE94、固形分65%、日本食品化工社製)と10% (固形分当り) の活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を混合した後、熱風乾燥機内で1時間反応(180℃)させた。クエン酸、リン酸、塩酸、および活性白土を触媒とした場合は、それぞれ活性炭の代わりに1.5%(固形分当り)クエン酸、0.135%(固形分当り)リン酸、0.005%(固形分当り)塩酸、および0.2%(固形分当り)活性白土を使用した以外は上記と同様に反応を行った。
【0077】
得られたサンプルについて食物繊維含量と着色度を測定した。結果は図1および2に示される通りであった。図1および図2から明らかなように、いずれの触媒でも70%以上の高い食物繊維含量を示したが、着色度は活性炭を使用した場合のみ低減効果が見られた。すなわち、活性炭はクエン酸、リン酸、塩酸、および活性白土とほぼ同等の糖縮合触媒活性を有し、更に、糖縮合物の着色度を顕著に低下させる効果を有することが判明した。また、活性炭は結晶グルコースの製造過程で生ずるハイドロールにも有効に作用することが判明した。
【0078】
実施例A2:糖縮合における各種触媒の検討(2)
グルコース以外の縮合基質を用いた場合にも活性炭が糖縮合反応の触媒活性を有するか否か、クエン酸触媒、リン酸触媒、塩酸触媒、および活性白土土触媒と比較しつつ検討した。
【0079】
活性炭を触媒としたサンプルは、ステンレス容器に15gの糖縮合物基質溶液(固形分66.7%)と10% (固形分当り) の活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を混合した後、熱風乾燥機内で1時間反応(180℃)させた。塩酸、リン酸、クエン酸、および活性白土を触媒とした場合は、それぞれ活性炭の代わりに0.005%(固形分当り)塩酸、0.027%(固形分当り)リン酸、1.5%(固形分当り)クエン酸、および0.2%(固形分当り)活性白土を使用した以外は上記と同様に反応を行った。
【0080】
糖縮合物基質としては以下のものを使用した。
試験区1:グルコースおよびデキストリン (グルコース:デキストリン=70:30)
試験区2:グルコースおよびオリゴ糖(グルコース:オリゴ糖=70:30)
試験区3:グルコースおよび糖アルコール(グルコース:糖アルコール=90:10)
試験区4:グルコースおよびガラクトース(グルコース:ガラクトース=50:50)
試験区5:グルコースおよびキシロース(グルコース:キシロース=50:50)
試験区6:マンノース
試験区7:キシロース
【0081】
グルコースは無水結晶グルコースである「メディカロース」(日本食品化工社製)を、デキストリンは「パインデックス#1」(松谷化学工業社製)を、オリゴ糖は「ブランチオリゴ」(日本食品化工社製)を、糖アルコールはソルビトール(東和化成工業社製)をそれぞれ用いた。また、ガラクトース(ナカライテスク社製)、キシロース(鹿特級、関東化学社製)、マンノース(和光特級、和光純薬社製)を用いた。
【0082】
得られたサンプルについて食物繊維含量と着色度を測定した。結果は表1および表2に示される通りであった。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1および表2から明らかなように、グルコース以外の糖縮合物基質を用いた場合でも、いずれの触媒でも70%以上の高い食物繊維含量を示したが、着色度は活性炭を使用した場合のみ低減効果が見られた。すなわち、活性炭はグルコース以外の糖縮合物基質を用いた場合でも、塩酸、リン酸、クエン酸、および活性白土とほぼ同等の糖縮合触媒活性を有し、更に、糖縮合物の着色度を顕著に低下させる効果を有することが判明した。
【0086】
実施例A3:活性炭触媒の反応条件の検討(1)
活性炭触媒を用いた糖縮合反応において、反応温度や反応時間が反応産物である食物繊維含量や着色度に与える影響を検討した。
【0087】
ハイドロールを基質としたサンプルは、ステンレス容器に15gのハイドロール(ハイグル#9465、日本食品化工社製)と1gの活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を混合した後、100℃以下で熱風乾燥機にサンプルを投入し、運転プログラム(昇温約2.5℃/分、冷却約3.3℃/分)を使用して種々温度条件で達温後1分〜3時間反応させた。反応後、50mlの純水に溶解し、5.0μmフィルターで吸引ろ過して各種分析用サンプルとした。グルコースを基質としたサンプルは、10gの無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)と1gの精製シラサギを用いて上記と同様に反応させた。
【0088】
各温度条件における経過時間毎の食物繊維含量を分析した結果は図3および図4に示される通りであった。また、各温度条件における経過時間毎の20%(w/w)溶液の着色度を測定した結果は図5および図6に示される通りであった。
【0089】
図3〜6から明らかなように、反応温度が高い程、短時間で75%以上の食物繊維含量が得られ、着色度も反応温度が高い程、強く着色することが判明した。ハイドロールを反応させて、75%以上の食物繊維含量を含み、かつ低着色度(Bx.20でOD4202.0以下)となる反応条件は、180℃で1時間(78.4%)、190℃で 10分間(76.6%)、200℃で1分間(78.9%)であった。無水結晶グルコースを反応させて、75%以上の食物繊維含量を含み、かつ低着色度(Bx.20でOD4202.0以下)となる反応条件は、180℃で30分間(82.7%)、190℃で1分間(80.4%)、200℃で1分間(86.5%)であった。
【0090】
実施例A4:活性炭触媒の反応条件の検討(2)
活性炭触媒を用いた糖縮合反応において、減圧条件下での反応が反応産物である食物繊維含量や着色度に与える影響を検討した。
【0091】
活性炭を触媒とし、無水結晶グルコース(表3および表4、試験区A)またはハイドロール(表3および表4、試験区B)を基質としたサンプルは、ステンレス容器内で無水結晶グルコース(メディカロース組成:DE100、日本食品化工社製)若しくはハイドロール(ハイグル#9465、日本食品化工社製)固形分10gに対し、精製シラサギ(日本エンバイロケミカルズ社製)を1g混合した。容器にアルミホイルをかぶせ、適宜穴を開けた後、200℃に保温した減圧乾燥機に素早く入れた。200℃達温後に1時間200℃を維持した。1時間反応後、素早く取り出し、室温にて冷却した。減圧乾燥機における反応は減圧有り(100mmHg)、減圧無しの2通りで行った。減圧する場合にも予め加温し、サンプルを庫内に入れたのち、減圧を始めた。
【0092】
減圧条件下、非減圧条件下での反応産物の着色度を測定した結果は表3に示される通りであった。また、減圧条件下、非減圧条件下での反応産物の食物繊維含量を分析した結果は表4に示される通りであった。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
表3に示されるように、無水結晶グルコースを縮合反応に使用した場合、減圧有りでは減圧無しと比較して着色度は顕著に低下した。同様に、ハイドロールを縮合反応に使用した場合でも減圧する事で極めて低着色度の縮合糖が得られた。
【0096】
実施例A5:糖基質の検討(1)
活性炭触媒を用いた糖縮合反応において、グルコースにオリゴ糖やデキストリンを共存させて反応を実施し、反応産物の性質を検討した。
【0097】
グルコースにオリゴ糖を共存させた糖縮合物サンプルは、ステンレス容器に無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)(Bx.65溶液として使用)、各種オリゴ糖、および精製シラサギ(日本エンバイロケミカルズ社製)1gを添加、混合した後、熱風乾燥機を用いて180℃に達温後、1時間反応を実施した。結晶グルコースと各種オリゴ糖の添加量は固形分量で合計10gになるようにし、また、結晶グルコースと各種オリゴ糖の固形分比率は10%毎になるように設定した。オリゴ糖としては、フジオリゴG67(組成:DE26、日本食品化工社製)、MC−55(組成:DE47、日本食品化工社製)、およびブランチオリゴ(組成:DE23、日本食品化工社製)を使用した。
反応後、50mlの純水に溶解し、5.0μmフィルターで吸引ろ過して各種分析用サンプルとした。
【0098】
グルコースにデキストリンを共存させた糖縮合物サンプルは、ステンレス容器に無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)(Bx.65溶液として使用)、各種デキストリン50%(W/W)水溶液、および精製シラサギ(日本エンバイロケミカルズ社製)1gを添加、混合した後、熱風乾燥機を用いて180℃に達温後、1時間反応を実施した。無水結晶グルコースと各種デキストリンの添加量は固形分量で合計10gになるようにし、また、無水結晶グルコースと各種デキストリンの固形分比率は10%毎になるように設定した。デキストリンとしては、パインデックス#1(組成:DE8、松谷化学工業社製)、パインデックス#2(組成:DE11、松谷化学工業社製)、パインデックス#3(組成:DE25、松谷化学工業社製)、パインデックス#100(組成:DE4、松谷化学工業社製)、およびクラスターデキストリン(組成:DE3、日本食品化工社製)(いずれもBx.65溶液として使用)を使用した。反応後、50mlの純水に溶解し、5.0μmフィルターで吸引ろ過して各種分析用サンプルとした。
【0099】
得られた糖縮合物について食物繊維含量と着色度を測定した。結果は表5〜8に示される通りであった。
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
表5〜8に示されるように、グルコースにオリゴ糖を共存させた場合やデキストリンを共存させた場合にも活性炭存在下で糖縮合反応が進行し、水溶性で食物繊維を豊富に含む糖縮合物が製造できることが判明した。
【0105】
実施例A6:糖基質の検討(2)
活性炭触媒を用いた糖縮合反応において、グルコース以外の糖質のみを縮合基質とした場合について反応を実施し、反応産物の性質を検討した。また、活性炭触媒を用いた糖縮合反応において、グルコースにグルコース以外の糖質を共存させて反応を実施し、反応産物の性質を検討した。
【0106】
グルコース以外の糖質のみを縮合基質とした糖縮合物サンプルはステンレス容器に固形分1gの各種糖質と0.1gの活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を混合し、100℃以下で熱風乾燥機にサンプルを投入し、運転プログラム(昇温約2.5℃/分、冷却約3.3℃/分)を使用して180℃に達温後30分間反応させて調製した。試験に供した糖類は次の通りであった。無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)、マンノース(和光特級、和光純薬社製)、ガラクトース(ナカライテスク社製)、キシロース(鹿特級、関東化学社製)、アラビノース(半井化学薬品社製)、リボース(関東化学社製)、マルトース(日本食品化工社製)、ラクトース1水和物(関東化学社製)。反応後、50mlの純水に溶解し、0.45μmフィルターで吸引ろ過して各種分析用サンプルとした。
【0107】
ヘテロ糖縮合物サンプルはステンレス容器に無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)と、グルコース以外の単糖、すなわち、キシロース(鹿特級、関東化学社製)、ガラクトース(ナカライテスク社製)、マンノース(和光特級、和光純薬社製)を固形分比率が0〜100%となるように混合した全固形分10gの糖質と1.0gの活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を混合し、100℃以下で熱風乾燥機にサンプルを投入し、運転プログラム(昇温約2.5℃/分、冷却約3.3℃/分)を使用して180℃に達温後30分間反応させて調製した。反応後、20%(W/W)となるよう純水に溶解し、0.45μmフィルターで吸引ろ過して各種分析用サンプルとした。
【0108】
各種糖質を縮合させたヘテロ糖縮合物の食物繊維含量および着色度を測定した結果は表9に示される通りであった。
【0109】
【表9】
【0110】
表9に示されるように、グルコース以外の糖質を縮合基質として使用した場合でも低着色で食物繊維含量が豊富な糖縮合物が製造できることが判明した。
【0111】
各種単糖とグルコースを任意の混合比率で調製したヘテロ糖縮合物の食物繊維含量および着色度を測定した結果は表10〜12に示される通りであった。
【0112】
【表10】
【0113】
【表11】
【0114】
【表12】
【0115】
表10〜12に示されるように、グルコースに加えてキシロース、ガラクトース、およびマンノースを縮合原料に用いた糖縮合物は、グルコース単独の糖縮合物に比べて、これら単糖の比率が高くなる毎に食物繊維含量が増加した。また、着色度については、マンノースを使用した糖縮合物ではマンノース比率が高くなるにつれてやや着色度が増加する傾向が見られたが、キシロースやガラクトースを使用した糖縮合物ではこれらの糖比率が高くなっても着色度は横ばいであった。
【0116】
このように、グルコースにグルコース以外の単糖を共存させて得られた糖縮合物は、アラビノース、キシロース、マンノース、ガラクトースなどとグルコースを任意の比率で組み合わせることにより、食物繊維含量の多い糖縮合物を調製することが可能であることが判明した。すなわち、本発明ではグルコース以外の単糖を縮合原料として利用して植物由来の食物繊維により近い組成の糖縮合物を製造できることが示された。また、グルコース以外の単糖のみで縮合反応を実施した場合にも低着色性で食物繊維含量が豊富な糖縮合物が製造できることも判明した。すなわち、本発明の製造方法はグルコースの縮合反応のみならず、グルコース以外の単糖の縮合反応にも有効であることが示された。
【0117】
実施例A7:糖基質の検討(3)
活性炭触媒を用いた糖縮合反応において、グルコースに各種糖アルコールを共存させて反応を実施し、反応産物の性質を検討した。
【0118】
糖縮合物サンプルはステンレス容器に固形分9.0gの無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)と固形分1.0gの各種糖アルコールを、1.0gの活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)と混合し、100℃以下で熱風乾燥機にサンプルを投入し、運転プログラム(昇温約2.5℃/分、冷却約3.3℃/分)を使用して180℃に達温後30分間反応させて調製した。試験に供した糖アルコールは次の通りであった。無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)(比較対照)、ソルビトール(東和化成工業社製)、ガラクチトール(東京化成工業社製)、マンニトール(和光純薬工業社製、和光一級)、キシリトール(東和化成工業社製)、エリスリトール(和光純薬工業社製、和光一級)、ラクチトール(フナコシ社製)、マルチトール(フナコシ社製)、イノシトール(関東化学社製)、グリセロール(関東化学社製)。反応後、5mlの純水に溶解し、0.45μmフィルターで吸引ろ過して各種分析用サンプルとした。
【0119】
グルコースと各種糖アルコールを縮合させた糖縮合物の食物繊維含量および着色度を測定した結果は表13に示される通りであった。
【表13】
【0120】
表13に示されるように、グルコースと糖アルコールを縮合基質として使用した場合でも低着色で食物繊維含量が豊富な糖縮合物が製造できることが判明した。すなわち、本発明の製造方法では糖アルコールも縮合原料として利用できることが示された。
【0121】
実施例A8:糖縮合物の製造(1)
無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)400gに対して、10%(固形分当り)の活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を添加混合後、加熱反応機に投入し、180℃で30分間加熱し、サンプルを得た。室温まで冷却し、このサンプルを20%水溶液とした後、濾過を行い活性炭を完全に除去し、可溶性糖質を得た。得られた可溶性糖質画分を活性炭による脱色濾過、イオン交換樹脂による脱色、エバポレーター濃縮を行った後、乾燥した。約330gの生成物を得、食物繊維含量は79.1%、着色度0.13(Bx.50)、白色度98.5(Bx.50)、平均分子量3,300であった。
【0122】
実施例A8にて製造した糖縮合物の一部を水素化ホウ素酸ナトリウムを用いて室温3時間反応を実施し、得られたサンプルはDE0であった。
【0123】
実施例A8にて製造した糖縮合物の一部をTOYOPEARL HW−40S(φ5.0x90cm)を担体とした樹脂分画に供し、2糖以下の低分子を除去したものは食物繊維含量が94.7%となり、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼで処理した後に樹脂分画したものは食物繊維含量は99.0%であった。
【0124】
実施例A9:糖縮合物の製造(2)
ハイドロール(ハイグル#9465日本食品化工社製)固形分400gに対して、10%(固形分当り)の活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を添加混合後、加熱反応機に投入し、180℃で60分間加熱し、サンプルを得た。室温まで冷却し、このサンプルを20%水溶液とした後、濾過を行い活性炭を完全に除去し、可溶性糖質を得た。得られた糖質画分を活性炭による脱色濾過、イオン交換樹脂による脱色、エバポレーター濃縮を行った後、乾燥した。約300gの生成物を得、食物繊維含量は76.8%、着色度0.76(Bx.50)、白色度83.0(Bx.50)、平均分子量3,300であった。
【0125】
実施例A9にて製造した糖縮合物の一部を水素化ホウ素酸ナトリウムを用いて室温3時間反応を実施したところ、得られたサンプルはDE 0.3であった。
【0126】
実施例A9にて製造した糖縮合物の一部をTOYOPEARL HW−40S(φ5.0x90cm)を担体とした樹脂分画に供し、2糖以下の低分子を除去したものは食物繊維含量が93.3%となり、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼで処理した後に樹脂分画したものは食物繊維含量は99.0%であった。
【0127】
実施例A10:糖縮合物の製造(3)
オリゴ糖シラップ(ブランチオリゴ、日本食品化工社製)固形分120gと無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)固形分280gを混合したBx.65水溶液に対して、10%(固形分当り)の活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を添加混合後、加熱反応機に投入し、180℃で30分間加熱し、サンプルを得た。室温まで冷却し、このサンプルを20%水溶液とした後、濾過を行い活性炭を完全に除去し、可溶性糖質を得た。得られた糖質画分を活性炭による脱色濾過、イオン交換樹脂による脱色、エバポレーター濃縮を行った後、乾燥した。約310gの生成物を得、食物繊維含量は79.0%、着色度0.26(Bx.50)、白色度94.5(Bx.50)、平均分子量5,200であった。
【0128】
実施例A10にて製造した糖縮合物の一部を水素化ホウ素酸ナトリウムを用いて室温3時間反応を実施し、得られたサンプルはDE 0であった。
【0129】
実施例A10にて製造した糖縮合物の一部をTOYOPEARL HW−40S(φ5.0x90cm)を担体とした樹脂分画に供し、2糖以下の低分子を除去したものは食物繊維含量が91.4%となり、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼで処理した後に樹脂分画したものは食物繊維含量は99.0%であった。
【0130】
実施例A11:糖縮合物の製造(4)
デキストリン(パインデックス#1、松谷化学工業社製)固形分120gと無水結晶グルコース(メディカロース、日本食品化工社製)固形分280gを混合したBx.65水溶液に対して、10%(固形分当り)の活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)を添加混合後、加熱反応機に投入し、180℃で30分間加熱し、サンプルを得た。室温まで冷却し、このサンプルを20%水溶液とした後、濾過を行い活性炭を完全に除去し、可溶性糖質を得た。得られた糖質画分を活性炭による脱色濾過、イオン交換樹脂による脱色、エバポレーター濃縮を行った後、乾燥した。約290gの生成物を得、食物繊維含量は78.7%、着色度0.45(Bx.50)、白色度89.0(Bx.50)、平均分子量7,900であった。
【0131】
実施例A11にて製造した糖縮合物の一部を水素化ホウ素酸ナトリウムを用いて室温3時間反応を実施したところ、得られたサンプルはDE 0.1であった。
【0132】
実施例A11にて製造した糖縮合物の一部をTOYOPEARL HW−40S(φ5.0x90cm)を担体とした樹脂分画に供し、2糖以下の低分子を除去したものは食物繊維含量が90.6%となり、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼで処理した後に樹脂分画したものは食物繊維含量は99.0%であった。
【0133】
実施例A12:糖縮合物の製造(5)
マルトオリゴ糖シラップ(DE47、日本食品化工社製)固形分30kgとグルコースシラップ(DE98、日本食品化工社製)固形分70kgを混合したBx.90濃縮液に、3%(固形分当り)の活性炭(水蒸気炭(食品添加物グレード)、フタムラ化学社製)を添加混合後、250℃設定の加熱反応機(連続式ニーダー)に投入し、混練加熱してサンプルを得た。サンプルを水浴中に受け、30%水溶液とした後、活性炭を濾過で完全に除去し、可溶性糖質を得た。得られた可溶性糖質画分を活性炭による脱色濾過、イオン交換樹脂による脱色、エバポレーター濃縮を行った後、乾燥した。約 90kgの生成物を得、食物繊維含量は81.7%、着色度0.14(Bx.20)であった。
[水への溶解性]
実施例A12の糖縮合物と各種水溶性食物繊維(ポリデキストロース、難消化性デキストリン)の水への溶解性を比較した。試験に当たって300ml容トールビーカーに蒸留水を200g添加し、マグネティックスターラーで撹拌(900rpm)した。次いで、各水溶性食物繊維素材を20g一時に添加し、完全に溶解するまでの時間を計測した。なお、乾燥法による溶解性の差を排除するため、各サンプルを10%(w/w)水溶液とした後、凍結乾燥機で乾燥したサンプルを用いて試験を行った。試験結果は図7に示される通りであった。図7から明らかなように、本発明の糖縮合物は、他の水溶性食物繊維と比べ、半分以下の溶解時間で水に溶解することが明らかとなった。
[アルコール溶液への溶解性]
水への溶解性の試験方法で用いた「蒸留水」を30%(v/v)エタノールに置き換えることで、各種水溶性食物繊維のアルコール溶液への溶解性を比較した。試験結果を図8に示される通りであった。図8から明らかなように、本発明の糖縮合物は、他の水溶性食物繊維と比べ、半分以下の溶解時間でアルコール溶液に溶解することが明らかとなった。
なお、いずれの水溶性食物繊維も、30%(v/v)エタノール溶液中に沈澱を生じなかった。
【0134】
このように本発明の糖縮合物は水やアルコール溶液への溶解性が優れており、各種飲食品を製造する際に溶解時間を短縮することができ、製造効率を改善することができる。
【0135】
官能評価試験
各種水溶性食物繊維を比較することを目的として、それぞれを10%水溶液の味質を比較した。10人のパネラーにて、作製した水溶液の官能評価を行い、味質について評価を行った。味質については、非常に良い(◎)、良い(○)、普通(△)、悪い(×)の評価で示し、風味については、非常に良い(◎)、良い(○)、普通(△)、悪い(×)の評価で示した。 比較例として市販水溶性食物繊維のポリデキストロースである「ライテス」(ダニスコジャパン社製)および「ライテスII」(ダニスコジャパン社製)を、また、難消化性デキストリンである「パインファイバー」(松谷化学工業社製)および「ファイバーソル2」(松谷化学工業社製)をそれぞれ用いた。評価結果は表14に示される通りであった。
【0136】
【表14】
【0137】
このように本発明の製造方法により得られた糖縮合物は従来の食物繊維と同様にほぼ無味・無臭であることが確認された。すなわち、本発明の製造方法により得られた糖縮合物は添加する飲食品や医薬品に雑味を付与することなく、飲食品や医薬品の賦形剤や増量剤として利用可能であることが示された。
安全性試験
実施例A12の糖縮合物を用いて、Ames試験を行った。具体的には、水溶性食物繊維NSK-1100の遺伝子突然変異誘発能の有無を検討するため、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)TA100、TA1535、TA98、TA1537及び大腸菌Escherichia coli WP2 uvrAを用いて、代謝活性化する場合および代謝活性化しない場合の条件下で、プレインキュベーション法により実施した。その結果、実施例A12の糖縮合物には変異原性は認められなかった。
また、マウスを使用して、実施例A12の糖縮合物を経口投与して急性毒性試験を行った。その結果、本発明の糖縮合物は無毒性であり、投与可能な最大量においても死亡例は認められず、そのLD50値は10g/kg(マウス体重)以上であった。
消化性試験
実施例A12の糖縮合物を用いて、日本栄養食糧学会誌、第43巻、第23乃至29項(1990)に記載の岡田らの方法に準じて、試験管内において唾液アミラーゼ、人工胃液、膵臓アミラーゼおよび小腸粘膜酵素による消化性を調べた。対照として、市販の水溶性食物繊維(難消化性デキストリン(ファイバーソルII:松谷化学工業社製)およびポリデキストロース(ライテス:ダニスコ社製))を用いた。結果を表15に示される通りであった。
【表15】
表15の結果から明らかなように、本発明の糖縮合物は、唾液アミラーゼ、人工胃液によっては全く消化されず、膵臓アミラーゼでごく僅か分解された。また、対照の難消化性デキストリンの小腸粘膜酵素による分解率が13.2%であるのに対して、本発明の糖縮合物の分解率は、6.7%と低く、本発明の糖縮合物は市販の難消化性デキストリンよりもさらに消化され難いことが判明した。
構造解析
実施例A8、A9、A10、A11、およびA12の糖縮合物について前記のメチル化分析による構造解析を行った。結果は表16に示される通りであった。
【表16】
表16の結果から明らかなように、実施例A8、A9、A10、およびA12の糖縮合物中の主要な結合は1,6−結合であった。また、実施例A11の糖縮合物中の主要な結合は1,4−結合であった。
【0138】
実施例B:糖縮合反応用触媒の検討
実施例B1:活性炭と各種触媒の組合せの検討
活性炭と各種触媒の組合せが糖縮合反応の触媒活性を有するか否かを、各種触媒単独で糖縮合反応を行った場合と比較しつつ検討した。
【0139】
ステンレス容器にて10g(固形分換算w/w)のハイドロール(ハイグル#9465、DE94、固形分65%、日本食品化工社製)と表17に記載の各濃度の触媒を混合した後、熱風乾燥機を用いて180℃で1時間反応させた。各種触媒は対糖質固形分当り、クエン酸0.1〜1.5%、リン酸0.027〜0.135%、塩酸(有効塩素として)0.0001〜0.05%、活性白土0.01〜0.2%の濃度で添加し、単独で、あるいは、対糖質固形分当たり10%の活性炭(精製シラサギ、日本エンバイロケミカルズ社製)と組合せて反応させた。
【0140】
得られたサンプルについて食物繊維含量と着色度(20%水溶液)を測定した。結果は表17に示される通りであった。
【0141】
【表17】
【0142】
いずれの触媒を用いた場合も、活性炭共存下の試験区は、触媒を単独で用いた試験区と比べて食物繊維含有量は増加し、着色度は低下した。よって、クエン酸、リン酸、塩酸、活性白土といった公知の触媒に新たな糖縮合反応用触媒として活性炭を組み合わせて使用することにより、食物繊維含量を高めつつ糖縮合物の着色を抑えることが可能であることが明らかとなった。
【0143】
実施例B2:各種活性炭の検討(1)
活性炭の種類が糖縮合反応の触媒活性を有するか否かを検討した。
【0144】
ステンレス容器にて10g(固形分換算w/w)のハイドロール(ハイグル#9465、DE94、固形分65%、日本食品化工社製)と表18に記載の各種活性炭3gを混合し、均一に分散化した後、熱風乾燥機にて180℃で60分間反応させた。なお、使用した活性炭は以下の通りであった。
活性炭1:水蒸気賦活炭(フタムラ化学社製)
活性炭2:薬品賦活炭(フタムラ化学社製)
活性炭3:塩化亜鉛炭(日本エンバイロケミカルズ社製)
活性炭4:水蒸気賦活炭(日本エンバイロケミカルズ社製)
【0145】
得られたサンプルについて食物繊維含量と着色度(20%水溶液)を測定した。結果は表18に示される通りであった。
【0146】
【表18】
【0147】
いずれの種類の活性炭を用いたサンプルも食物繊維含量80%以上の糖縮合物が得られ、無触媒のサンプルと比べ食物繊維含量は高く、着色度は低く抑えられた。よって、いずれの種類の活性炭も糖縮合反応用の触媒として有用であることが示された。
【0148】
実施例B3:各種活性炭の検討(2)
活性炭の化学修飾が糖縮合反応の触媒活性を有するか否かを検討した。
【0149】
18ccステンレスカップに500mgの反応用混合物(無水結晶ブドウ糖(日本食品化工社製)に2%W/Wの活性炭を混合したもの)を加え、160℃設定オイルバスにて60分間反応させた。その後、氷冷したサンプルを約20%溶液となるように溶解し、食物繊維含量と着色度を測定した。なお、使用した活性炭は以下の通りであった。
活性炭1:活性炭(太閤A、フタムラ化学社製)
活性炭2:活性炭1に硝酸酸化処理を施したもの(硝酸酸化処理方法は、「環境化学 Vol. 17 (2007), No. 4 pp.635-641」に記載の方法に従った。)
活性炭3:活性炭1にスルホン化処理を施したもの(スルホン化処理方法は、特開2009−201405号公報に記載の方法に従った。)
【0150】
結果は表19に示される通りであった。
【0151】
【表19】
【0152】
いずれの種類の活性炭を用いても無触媒条件下のサンプルと比べて、大幅に食物繊維含量の高い糖縮合物が得られ、更に着色も抑えられた。よって、いずれの種類の活性炭も糖縮合反応用の触媒として有用であることが示された。なお、無触媒条件下のサンプルの食物繊維含量が30%以下と低かったのは、本実施例の加熱条件に起因するものと考えられる。
【0153】
実施例B4:中性活性炭の検討
中性活性炭が糖縮合反応の触媒活性を有するか否かを検討した。
【0154】
18ccステンレスカップに500mgの反応用混合物(無水結晶ブドウ糖(日本食品化工社製)に2%W/Wの中性活性炭(活性炭、粉末、中性、和光純薬工業社製)を混合したもの)を加え、175℃設定オイルバスにて90分間反応させた。その後、氷冷したサンプルを約20%溶液となるように溶解し、食物繊維含量と着色度を測定した。
【0155】
結果は表20に示される通りであった。
【0156】
【表20】
【0157】
中性活性炭を糖縮合反応用触媒として用いたサンプルは、食物繊維含量80%以上と無触媒条件下のサンプルと比べて食物繊維含量が高く、さらに着色は抑えられたものであった。よって、中性活性炭も糖縮合反応用の触媒として有用であることが示された。
【0158】
実施例C:その他の糖縮合物の製造
実施例C1:ポリデキストロースの製造
活性炭を糖縮合反応用触媒として添加してポリデキストロースを製造可能であることを確認した。
【0159】
グルコースシラップ(DE98、日本食品化工社製)固形分89kgとソルビトールシラップ(三菱化学フードテック社製)固形分10kgとクエン酸(食品添加物、関東化学社製)1kgを混合し、3%(固形分当り)の活性炭(水蒸気炭(食品添加物グレード)、フタムラ化学社製)を添加混合後、250℃設定の加熱反応機(連続式ニーダー)に投入し、混練加熱してサンプルを得た。サンプルを水浴中に受け、30%水溶液とした後、活性炭を濾過で完全に除去し、ポリデキストロース反応液を得た。得られた反応液を活性炭による脱色濾過、イオン交換樹脂による脱色、エバポレーター濃縮を行った後、乾燥した。約90kgの生成物を得、食物繊維含量は80.7%、着色度0.15(Bx.20)であった。よって、活性炭を糖縮合反応用触媒として使用することでポリデキストロースを製造可能であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6