特許第6140537号(P6140537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140537
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/16 20060101AFI20170522BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H02K37/16 E
   H02K1/16 A
   H02K1/16 C
   H02K37/16 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-123286(P2013-123286)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-241683(P2014-241683A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】保科 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−161053(JP,A)
【文献】 特開2006−141126(JP,A)
【文献】 特開2003−111379(JP,A)
【文献】 特開2002−354777(JP,A)
【文献】 米国特許第6043574(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0097588(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 37/16
H02K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面にS極とN極とが周方向で交互に等角度間隔に設けられたマグネットを備えたロータと、
前記周面に隙間を隔てて対向する複数の突極が周方向に配置されたステータコア、前記複数の突極のうち、第1突極に巻回された第1コイル、および前記複数の突極のうち、前記第1突極に周方向で離間する第2突極に巻回された第2コイルを備えたステータと、
を有し、
前記マグネットでは、前記S極と前記N極とが4対形成され、
前記ステータコアでは、前記突極が6個形成され、
前記第1突極および前記第2突極は、一方の突極が前記S極と前記N極との間に対向するとき、他方の突極が前記S極の中心または前記N極の中心と対向するように配置されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記第1突極と前記第2突極とは、周方向で角度位置が112.5°ずれていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータコアは、複数枚の磁性板を積層してなることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記複数の突極のうち、前記第1突極および前記第2突極は、他の突極より径方向の寸法が長く、
前記第1突極に対する前記第1コイルの巻回部分の径方向の寸法、および前記第2突極に対する前記第2コイルの巻回部分の径方向の寸法が、前記他の突極の径方向の寸法より長いことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ロータの回転を減速して伝達する歯車減速機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットの周面に沿って設けられたステータコアの複数の突極のうち、2つの突極にコイルが巻回されたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用メータ装置や時計等の表示装置においては、モータの出力軸に指針を取り付けた構造が採用されることがある(特許文献1参照)。かかる表示装置に用いられるモータとして、マグネットの周面に沿ってステータコアの複数の突極を配置し、複数の突極のうち、2つの突極にコイルを巻回した構成が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載のモータでは、マグネットの外周面にS極とN極とを3対または5対配置するとともに、突極の数を8個とし、角度位置が90°ずれた2つの突極にコイルが巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−57567号公報
【特許文献2】特許第4125371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の表示装置等で用いるモータに関しては、十分な励磁トルクが得られることに加えて、ロータの加速時や減速時に発生する音量を低減することが求められているが、かかる要求に対しては、特許文献2に記載のモータでは十分に対応することができない。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ロータの加速時や減速時に発生する音量を低減することのできるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、周面にS極とN極とが周方向で交互に等角度間隔に設けられたマグネットを備えたロータと、前記周面に隙間を隔てて対向する複数の突極が周方向に配置されたステータコア、前記複数の突極のうち、第1突極に巻回された第1コイル、および前記複数の突極のうち、前記第1突極に周方向で離間する第2突極に巻回された第2コイルを備えたステータと、を有し、前記マグネットでは、前記S極と前記N極とが4対形成され、前記ステータコアでは、前記突極が6個形成され、前記第1突極および前記第2突極は、一方の突極が前記S極と前記N極との間に対向するとき、他方の突極が前記S極の中心または前記N極の中心と対向するように配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るモータにおいて、マグネットはS極とN極とが等角度間隔に4対形成され、ステータコアでは、突極が6個形成されている。かかる構成の場合、突極を等角度間隔に配置すると、ロータの回転に十分な励磁トルクを得ることができないが、本発明では、複数の突極のうち、第1コイルが巻回された第1突極、および第2コイルが巻回された第2突極は、一方の突極がS極とN極との間に対向するとき、他方の突極がS極の中心またはN極の中心と対向するように配置されている。このため、ロータの回転に十分な励磁トルクを得ることができる。また、かかる構成のモータについて、電気角に対するディテントトルクの変化を検証したところ、マグネットにおいてS極とN極とが3対あるいは5対形成され、ステータコアでは、突極が8個形成されているモータより、ディテントトルクの変化が小さい。このため、ロータの振動が少ないので、ロータの加速時や減速時に発生する音量を低減することができ、低騒音化を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記第1突極と前記第2突極とは、周方向で角度位置が112.5°ずれている構成を採用することができる。かかる構成によれば、6個の突極のうち、第1コイルが巻回された第1突極、および第2コイルが巻回された第2突極は、一方の突極がS極とN極との間に対向するとき、他方の突極がS極の中心またはN極の中心と対向する。
【0009】
本発明において、前記ステータコアは、複数枚の磁性板を積層してなることが好ましい。かかる構成によれば、突極が多い場合でも、磁性板をステータコアの形状に打ち抜く際に磁性板が薄いので、磁性板を効率よく、かつ精度よく打ち抜くことができる。
【0010】
本発明において、前記複数の突極のうち、前記第1突極および前記第2突極は、他の突極より径方向の寸法が長く、前記第1突極に対する前記第1コイルの巻回部分の径方向の寸法、および前記第2突極に対する前記第2コイルの巻回部分の径方向の寸法が、前記他の突極の径方向の寸法より長いことが好ましい。かかる構成によれば、コイルの巻回数を十分に確保することができる。
【0011】
本発明においては、前記ロータの回転を減速して伝達する歯車減速機構が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、モータの外部に歯車減速機構を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るモータにおいて、マグネットはS極とN極とが等角度間隔に4対形成され、ステータコアでは、突極が6個形成されている。かかる構成の場合、突極を等角度間隔に配置すると、ロータの回転に十分な励磁トルクを得ることができないが、本発明では、複数の突極のうち、第1コイルが巻回された第1突極、および第2コイルが巻回された第2突極は、一方の突極がS極とN極との間に対向するとき、他方の突極がS極の中心またはN極の中心と対向するように配置されている。このため、ロータの回転に十分な励磁トルクを得ることができる。また、かかる構成のモータについて、電気角に対するディテントトルクの変化を検証したところ、マグネットにおいてS極とN極とが3対あるいは5対形成され、ステータコアでは、突極が8個形成されているモータより、ディテントトルクの変化が小さい。このため、ロータの振動が少ないので、ロータの加速時や減速時に発生する音量を低減することができ、低騒音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用したモータの説明図である。
図2】本発明を適用したモータの特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
図3】本発明に対する比較例に係るモータの説明図である。
図4図3(a)に示す本発明の比較例1に係るモータの特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
図5図3(b)に示す本発明の比較例2に係るモータの特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したモータを説明する。
【0015】
(モータの説明)
図1は、本発明を適用したモータの説明図であり、図1(a)、(b)、(c)は、モータの平面図、モータの側面図、およびステータ等の平面図である。
【0016】
図1(a)、(b)に示すように、本形態のモータ1は、ケース3と、ケース3に回転可能に支持されたロータ5と、ロータ5の周りに配置されたステータ7とを有している。本形態において、ケース3には支軸51が固定されており、ロータ5は、支軸51に回転可能に支持されている。従って、ロータ5は、支軸51を介してケース3に回転可能に支持されている。また、モータ1は、ロータ5の回転を減速して出力軸90に伝達する減速歯車機構9を有しており、かかる減速歯車機構9も、ロータ5およびステータ7と同様、ケース3に支持されている。
【0017】
ロータ5は、支軸51に回転可能に支持されたピニオン53と、ピニオン53と一体化された円筒状のマグネット6とを有している。本形態において、マグネット6とピニオン53とはインサート成形により一体化されている。このため、マグネット6とピニオン53とは、樹脂製の円板部50によって結合されている。本形態において、マグネット6はフェライト系である。
【0018】
ステータ7は、マグネット6の外周面60(周面)に隙間を隔てて対向する複数の突極80を備えたステータコア8と、複数の突極80のうち、第1突極81にインシュレータ71を介して巻回された第1コイル76と、複数の突極80のうち、第2突極82にインシュレータ72を介して巻回された第2コイル77とを有している。インシュレータ71の端部には第1コイル76に対する2本の給電用の端子710が保持され、インシュレータ72の端部には第2コイル77に対する2本の給電用の端子720が保持されている。端子710、720には、第1コイル76の巻き始めと巻き終わりの端部、および第2コイル77の巻き始めと巻き終わりの端部が絡げられている。
【0019】
減速歯車機構9は、ピニオン53に噛合する大径歯車91aを備えた第1歯車91と、第1歯車91の小径歯車91bに噛合する大径の第2歯車92とを有しており、第2歯車92に出力軸90が固定されている。
【0020】
このように構成したモータ1では、端子710、720を介して第1コイル76および第2コイル77に各相の駆動パルスを供給することにより、ロータ5を回転させ、ロータ5の回転を、減速歯車機構9を介して出力軸90に伝達する。また、モータ1を用いて指針式の表示装置を構成する場合、出力軸90に指針(図示せず)が固定される。かかる表示装置では、端子710、720を介して第1コイル76および第2コイル77に供給された駆動パルスにより、指針の角度位置が切り換わる。その際、端子710、720に正回転用の駆動パルスを供給して指針を時計周りに目標位置まで回転させた後、端子710、720に停止用の駆動パルスを供給すれば、指針を目標位置で停止させることができる。また、この状態で、端子710、720に逆回転用の駆動パルスを供給すれば、指針を反時計周りに別の目標位置まで回転させることができる。
【0021】
(マグネット6およびステータコア8の構成)
図1(c)に示すように、本形態のモータ1において、マグネット6は、外周面60にS極とN極とが周方向で交互に等角度間隔に設けられている。本形態において、マグネット6では、S極とN極とが4対形成されている。このため、マグネット6では、S極とN極とが計8極、等角度間隔で形成されていることから、周方向で隣り合うS極とN極とは、角度位置が45°ずれている。
【0022】
ステータコア8は、マグネット6が配置される部分が開口部84になっており、かかる開口部84の内周縁には、マグネット6の外周面60に向けて突出する複数の突極80が周方向に配置されている。突極80の径方向内側の端部は、マグネット6の外周面60に隙間を介して対向しており、突極80の径方向内側の端部とマグネット6の外周面60との隙間寸法は、複数の突極80のいずれにおいても等しい。本形態において、突極80の数は6個である。
【0023】
ここで、突極80は、不等間隔に配置されているが、第1コイル76が巻回された第1突極81、および第2コイル77が巻回された第2突極82は、一方の突極の周方向の中心がS極とN極との間、すなわち、S極とN極との境界部分に対向するとき、他方の突極の周方向の中心がS極の周方向の中心またはN極の周方向の中心と対向するように配置されている。より具体的には、複数の突極80のうち、周方向で角度位置が112.5°ずれた2つの突極80が第1突極81および第2突極82として利用される。すなわち、複数の突極80のうち、角度位置が112.5°ずれた2つの突極80のうちの一方は、第1コイル76が巻回された筒状のインシュレータ71が外側に嵌められた第1突極81とされ、他方は、第2コイル77が巻回された筒状のインシュレータ72が外側に嵌められた第2突極82とされる。ここで、第1突極81と第2突極82とは、角度位置が112.5°ずれているとは、第1突極81の周方向の中心と第2突極82の周方向の中心とが、角度位置で112.5°ずれていることを意味する。なお、第1突極81と第2突極82との間には、コイルが巻回されていない突極80が1つ存在する。従って、周方向で隣り合う突極80の各間隔は、第1突極81を起点にすると、図1(c)に向かって時計周りに、56.25°、56.25°、56.25°、67.5°、67.5°、56.25°である。
【0024】
本形態では、複数の突極80のうち、第1突極81および第2突極82は、他の突極80より径方向の寸法が長い。このため、第1突極81に対する第1コイル76の巻回部分の径方向の寸法、および第2突極82に対する第2コイル77の巻回部分の径方向の寸法が、他の突極80の径方向の寸法より長い。なお、第1突極81および第2突極82は、径方向の寸法が等しく、第1突極81に対する第1コイル76の巻回部分の径方向の寸法と第2突極82に対する第2コイル77の巻回部分の径方向の寸法とは等しい。
【0025】
複数の突極80のうち、第1突極81および第2突極82以外の突極80は、径方向の寸法、すなわち、後述する連結部85からマグネット6の外周面60に向けて突出する突極80の長さ寸法が全て同一であるため、第1突極81および第2突極82以外の突極80の径方向外側の端部は、マグネット6から同一の距離の位置にある。これに対して、第1突極81および第2突極82は、他の突極80より径方向の寸法が長いので、第1突極81の径方向外側の端部、および第2突極82の径方向外側の端部は、他の突極80の径方向外側の端部よりも、マグネット6から径方向外側に離間した位置にある。
【0026】
ここで、ステータコア8は、第1突極81および第2突極82を含む全ての突極80の径方向外側の端部を連結する枠状の連結部85を有しており、かかる連結部85の幅寸法は全周にわたって略同一である。このため、連結部85は、第1突極81および第2突極82が形成されている角度範囲以外は、マグネット6と同心状の円弧部86になっている。これに対して、連結部85は、第1突極81が形成されている角度範囲は、径方向外側に矩形枠状に突出した矩形部87になっており、第2突極82が形成されている角度範囲は、径方向外側に矩形枠状に突出した矩形部88になっている。従って、矩形部87、88の間は、径方向内側に凹んだ形状になっているが、矩形部87、88の間の部分89も円弧状に形成されている。なお、連結部85では、円弧部86の幅寸法と矩形部87,88の幅寸法は同一であるが、矩形部87、88の間の部分89の幅寸法は、円弧部86の幅寸法や矩形部87,88の幅寸法より広くなっている。
【0027】
本形態において、ステータコア8は板状であり、上記の形状に打ち抜いた磁性板を複数枚、積層することにより、構成されている。
【0028】
(モータ1の評価結果)
図2は、本発明を適用したモータ1の特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、図2(a)、(b)、(c)は、モータ1の電気角とディテントトルクとの関係を示すグラフ、モータ1の電気角と励磁トルクとの関係を示すグラフ、およびラジアル方向でロータ5に加わる電磁力を示すリサージュ図形を示すグラフである。なお、図2(c)では、ロータ5の回転中心軸線に直交する一方方向をX軸方向とし、かかるX軸方向でロータ5に加わる力を横軸としてある。また、図2(c)では、ロータ5の回転中心軸線およびX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、かかるY軸方向でロータ5に加わる力を縦軸としてある。また、評価に用いたモータ1において、ステータコア8は、厚さが0.5mmの無方向性電磁鋼板を上記の形状に打ち抜いて3枚、積層することにより、構成されている。マグネット6は、内径が6mm、外径が8mm、軸線方向の寸法が3mmである。第1コイル76および第2コイル77は各々、径が0.055mmのコイル線を2200回、巻回してなり、その1相分の抵抗値は220Ωである。駆動電圧は5Vである。
【0029】
図3は、本発明に対する比較例に係るモータ1の説明図であり、かかるモータ1についても、特性をシミュレーションにより求めた。図3(a)に示す第1比較例に係るモータでは、マグネット6にS極とN極とが3対形成され、ステータコア8では、突極80が等角度間隔に8個形成されている。また、第1コイル76が巻回された第1突極81と、第2コイル77が巻回された第2突極82とは、角度位置が90°ずれている。
【0030】
図3(b)に示す第2比較例に係るモータでは、マグネット6にS極とN極とが5対形成され、ステータコア8では、突極80が8個形成されている。また、第1コイル76が巻回された第1突極81と、第2コイル77が巻回された第2突極82とは、角度位置が90°ずれている。ここで、突極80は不等間隔に形成されているが、第1突極81および第2突極82のうちの一方の突極の周方向の中心がS極とN極との境界部分に対向しているとき、他方の突極がS極の周方向の中心またはN極の周方向の中心と対向しているため、励磁トルクを発生させるのに支障がない。
【0031】
図4は、図3(a)に示す本発明の第1比較例に係るモータの特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、図4(a)、(b)、(c)は、モータの電気角とディテントトルクとの関係を示すグラフ、モータの電気角と駆動トルクとの関係を示すグラフ、およびラジアル方向でロータ5に加わる電磁力を示すリサージュ図形を示すグラフである。図5は、図3(b)に示す本発明の第2比較例に係るモータの特性をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフであり、図5(a)、(b)、(c)は、モータの電気角とディテントトルクとの関係を示すグラフ、モータの電気角と駆動トルクとの関係を示すグラフ、およびラジアル方向でロータ5に加わる電磁力を示すリサージュ図形を示すグラフである。
【0032】
なお、図4(a)および図5(a)は、図2(a)に対応するデータであり、図4(b)および図5(b)は、図2(b)に対応するデータであり、図4(c)および図5(c)は、図2(c)に対応するデータである。
【0033】
ここで、図3(a)に示す第1比較例に係るモータ、および図3(b)に示す第2比較例に係るモータは、本発明を適用したモータ1と、マグネット6のサイズやステータコア8のサイズ等の基本的な構成が同一であり、マグネット6の極数や突極80の数のみが相違する。
【0034】
図2(a)に示す結果と、図4(a)に示す結果および図5(a)に示す結果とを比較すればわかるように、本発明を適用したモータ1では、第1比較例に係るモータや第2比較例に係るモータに比して、ディテントトルクの変化量が小さい。それ故、ロータ5に加わる外力が小さいので、振動が少ないといえる。
【0035】
次に、図2(b)に示す結果と、図4(b)に示す結果とを比較すればわかるように、本発明を適用したモータ1では、第1比較例に係るモータに比して、励磁トルクが小さいが、それでも、ロータ5の回転に必要な励磁トルクを十分に得ることができる。また、本発明を適用したモータ1では、第1比較例に係るモータより、励磁トルクの変化がわずかに小さい。
【0036】
なお、図2(b)に示す結果と、図5(b)に示す結果とを比較すると、励磁トルクのレベルが同等である。また、本発明を適用したモータ1は、第1比較例に係るモータに比して、励磁トルクの変化がわずかに大きいが、かかる差は小さく、同等といえる。
【0037】
図2(c)に示す結果と、図4(c)に示す結果とを比較すればわかるように、本発明を適用したモータ1では、第1比較例に係るモータに比して、ラジアル方向でロータ5に加わる力が小さい。このため、本発明を適用したモータ1では、第1比較例に係るモータに比して、ラジアル方向でロータ5に加わる外力が小さいので、振動が少ないといえる。
【0038】
なお、図2(c)に示す結果と、図5(c)に示す結果とを比較すると、本発明を適用したモータ1では、第1比較例に係るモータに比して、ラジアル方向でロータ5に加わる力がわずかに大きい。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ1において、マグネット6はS極とN極とが等角度間隔に4対形成され、ステータコア8では、突極80が6個形成されている。かかる構成の場合、突極80を等角度間隔に配置すると、ロータ5の回転に十分な励磁トルクを得ることができないが、ステータコア8では、複数の突極80のうち、第1コイル76が巻回された第1突極81、および第2コイル77が巻回された第2突極82は、一方の突極の周方向の中心がS極とN極との間に対向するとき、他方の突極の周方向の中心がS極の周方向の中心またはN極の周方向の中心と対向するように配置されている。このため、ロータ5の回転に十分な励磁トルクを得ることができる。また、かかる構成のモータ1について、電気角に対するディテントトルクの変化を検証したところ、図2(a)、図4(a)および図5(a)を参照して説明したように、マグネット6においてS極とN極とが3対あるいは5対形成され、ステータコア8では、突極80が8個形成されている比較例1、2に係るモータより、ディテントトルクの変化が小さい。このため、本形態のモータ1では、ロータ5の振動が少ないので、ロータ5の加速時や減速時に発生する音量を低減することができ、低騒音化を図ることができる。
【0040】
また、ステータコア8は、複数枚の磁性板を積層してなる。このため、本形態のように、突極80が多い場合でも、磁性板をステータコア8の形状に打ち抜く際に磁性板が薄いので、磁性板を精度よく打ち抜くことができる。
【0041】
また、複数の突極80のうち、第1突極81および第2突極82は、他の突極80より径方向の寸法が長く、第1突極81に対する第1コイル76の巻回部分の径方向の寸法、および第2突極82に対する第2コイル77の巻回部分の径方向の寸法が、他の突極80の径方向の寸法より大である。それ故、モータ1の回転に必要な励磁トルクを確実に得ることができる。
【0042】
また、モータ1には、ロータ5の回転を減速して伝達する歯車減速機構9が設けられているため、モータ1の外部に歯車減速機構9を設ける必要がない。それ故、本形態のモータ1において出力軸90に指針を取り付けるだけで、表示装置の要部を構成することができ、表示装置の小型化を図ることができる。
【0043】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、ロータ5がステータ7の内側に位置する構成であったが、ロータ5がステータ7の外側に位置するモータに本発明を適用してもよい。この場合、突極80は、ステータコア8から径方向外側に突出してマグネット6の内周面(周面)に対向した構成となる。
【符号の説明】
【0044】
1 モータ
5 ロータ
6 マグネット
7 ステータ
8 ステータコア
9 減速歯車機構
60 マグネットの外周面(周面)
71、72 インシュレータ
76 第1コイル
77 第2コイル
80 突極
81 第1突極
82 第2突極
90 出力軸
図1
図2
図3
図4
図5