特許第6140552号(P6140552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140552
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】用紙搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B65H5/06 L
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-135126(P2013-135126)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-9930(P2015-9930A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】青木 和之
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−167076(JP,A)
【文献】 特開2008−308282(JP,A)
【文献】 特開2003−182173(JP,A)
【文献】 特開2014−047074(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0151941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02− 5/22
B65H 29/12−29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送するための搬送経路と、
前記搬送経路に沿って用紙を搬送する第1の搬送ローラと、
用紙の搬送方向に関して前記第1のローラの下流側に配置され、前記搬送経路に沿って用紙を搬送する第2の搬送ローラと、
前記第1の搬送ローラを駆動する第1の駆動源と、
前記第2の搬送ローラを駆動する第2の駆動源と、
前記第1の搬送ローラと前記第2の搬送ローラの間に配置され、用紙の有無を検出して検出信号を出力する検出手段と、
前記第1の駆動源前記第2の駆動源の駆動力を接続し又は切断するクラッチ部と、
前記検出手段が出力した前記検出信号に基づき、前記第1の搬送ローラと前記第2の搬送ローラによって同一の用紙が搬送されているタイミングで前記第1の駆動源及び前記第2の駆動源からの各駆動力を接続するように前記クラッチ部を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出手段が用紙の先端を検出して出力した先端検出信号を取得した場合に、前記第1の駆動源及び前記第2の駆動源からの各駆動力を接続するように前記クラッチを作動させる接続指令信号を前記クラッチ部に出力し、前記検出手段が用紙の後端を検出して出力した後端検出信号を取得した場合に、接続された前記各駆動力を切断するように前記クラッチを作動させる切断指令信号を前記クラッチ部に出力することを特徴とする請求項1記載の用紙搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像形成装置等に組み込まれて使用される用紙搬送装置に係り、特に搬送経路の形状の如何に関わらず、安価な構成でありながら、張りや弛みを生じさせることなく用紙を損傷させずに円滑に搬送することができる用紙搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数枚のシート状の用紙を搬送しながら、これらに次々と所定の処理を施して排出する機能を備えた産業用装置が種々の技術分野で知られている。このような装置では、所定の経路に沿って用紙を搬送するための搬送手段として、ローラを用いた用紙搬送装置を備えていることがある。例えば、任意の画像を用紙に形成する画像形成装置等においては、このような用紙搬送装置として、搬送される用紙を案内するための搬送経路と、この搬送経路に沿って配置され、用紙を挟持して搬送経路に沿って搬送する複数対の搬送ローラと、各搬送ローラ対を駆動する駆動源を備えた構造の装置が知られている。
【0003】
用紙をローラ対で挟持して搬送経路に沿って搬送する用紙搬送装置としては、一例として、図3に示すような構造を備えた装置が知られている。図3は、搬送経路が屈曲した用紙搬送装置の一部分を示している。図3の用紙搬送装置によれば、用紙を搬送するための搬送経路100は、所定間隔をおいて互いに略平行に配置された一対の案内板101,102から構成されている。屈曲した搬送経路100における曲率半径の中心側の案内板102は、連続した一枚板で構成されているが、曲率半径の外側の案内板101は、屈曲部に破線の囲みで示した所定間隔の隙間103(又は切欠き)が設けられた2枚の平板から構成されている。そして、2枚の案内板101,101の隙間103を挟んで、図中矢印Aで示す搬送方向の上流と下流には、それぞれ一対の搬送ローラ105a,106bが配置されている。各一対の搬送ローラ105a,105bは、一対の案合板101,102にそれぞれ形成された通孔を介して、一対の案内板101,102の間で用紙を挟持できるように互いに対向・当接している。そして、各対の搬送ローラ105a,105bは、曲率半径の中心側のローラが駆動ローラ106aであり、曲率半径の外側のローラが従動ローラ106bになっている。上流の搬送ローラ105aでは、駆動ローラ106aの軸に、搬送方向にのみ回転を伝えるワンウェイクラッチ107を介してモータ108の出力軸がベルトで連動連結されている。また、下流の搬送ローラ105bでは、駆動ローラ106aの軸に、モータ109の出力軸がベルトで直接連動連結されている。搬送ローラ105a,105bの各対を駆動する各モータ108,109は、用紙の搬送の目的に応じた態様で、図示しない制御部によってそれぞれ独立して駆動することができる。
【0004】
なお、下記特許文献1には、以上説明したような用紙搬送装置と同様の機能を有し、画像形成装置の用紙搬送機構として使用できる用紙供給装置の発明が開示されている。この発明の用紙供給装置は、用紙を搬送する第1のローラ対と、第1のローラ対の下流で用紙を搬送する第2のローラ対と、第1と第2のローラ対とを駆動する第1の駆動手段と、第1の駆動手段から第1のローラ対への駆動力をON/OFFする第1のクラッチと、第2のローラ対への駆動力をON/OFFする第2のクラッチと、第1のクラッチと第2のクラッチとを制御する制御手段と、該制御手段により制御されて第1のローラ対を駆動する第2の駆動手段と、第2の駆動手段から第1のローラ対への駆動力を一方向にのみ伝達する動力伝達部材とを備えている。この発明によれば、曲がりや、折れ目のない用紙を供給することが可能であり、画像形成装置に適用すれば高プリント品質且つ高生産性を達成することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−24036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の用紙搬送装置において、上流の駆動用の搬送ローラ105aと、そのモータ108との間にワンウェイクラッチ107がないと仮定すれば、上流の搬送ローラ105aと下流の搬送ローラ105bが同一の用紙を挟持して搬送している状態で、両搬送ローラ105a,105bにかかる搬送負荷が互いに微妙に異なる場合には、両搬送ローラ105a,105bの間にある用紙に張りやたるみが生じ、用紙に傷やしわ等のダメージを与えてしまうという不具合が発生してしまう。
【0007】
このような課題を解決するため、先に説明した通り、従来は上流側の搬送ローラ105aとその駆動用のモータ108との間に搬送方向にのみトルクを伝える構造のワンウェイクラッチ107が組み込まれており、用紙に損傷を与える程の張りが生じない様になっていた。又、これも説明した通り、上流の搬送ローラ105aと下流の搬送ローラ105bの間にある搬送経路100には、外側の案内板101の一部に隙間103が設けられているが、この隙間103は、用紙が搬送経路100の中でたるんだ場合に、弛んだ用紙を搬送経路100の外に逃がすための開口であって、このため用紙は搬送経路100の中で弛んだ場合にも損傷を受けにくかった。
【0008】
このような利点があるにも関わらず、図3に示した従来の用紙搬送装置によれば、上流側の搬送ローラ105aとモータ108との間には、用紙を搬送方向Aに送る方向のトルクのみを伝えるワンウェイクラッチ107が配置されているため、上流側の搬送ローラ105aはモータ108の回転方向に連動する方向と反対方向に空転して用紙の位置ずれを起こしてしまう場合がある。このため、用紙搬送動作の各工程、例えば給紙や排紙等において生じる起動・停止・減速・増速等の各タイミングで動作に遅れが生じる場合があり、かつ動作タイミングは用紙の紙質やサイズに起因してもばらつく為、用紙搬送動作における搬送タイミングを安定させることが困難であった。又、上流と下流の2対の搬送ローラ105a,105bの間で弛んだ用紙を逃がす案内板101,101材の隙間103は、搬送経路100の曲率や、搬送経路100の合流点の有無によっては設けられない場合がある等、実際の搬送経路の形状・構造を前提とした場合には設計上の制約が多々存在した。
【0009】
本発明は、以上説明したような従来の用紙搬送装置における課題に鑑みてなされたものであり、弛んだ用紙を逃がすための隙間を設ける必要がないため、搬送経路の形状の如何に関わらず実現可能であり、しかも簡単な構成でありながら、複雑な動作制御が必要とされる用紙搬送工程においても用紙を損傷することなく円滑に搬送することができる用紙搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された用紙搬送装置は、
用紙を搬送するための搬送経路と、
前記搬送経路に沿って用紙を搬送する第1の搬送ローラと、
用紙の搬送方向に関して前記第1のローラの下流側に配置され、前記搬送経路に沿って用紙を搬送する第2の搬送ローラと、
前記第1の搬送ローラを駆動する第1の駆動源と、
前記第2の搬送ローラを駆動する第2の駆動源と、
前記第1の搬送ローラと前記第2の搬送ローラの間に配置され、用紙の有無を検出して検出信号を出力する検出手段と、
前記第1の駆動源前記第2の駆動源の駆動力を接続し又は切断するクラッチ部と、
前記検出手段が出力した前記検出信号に基づき、前記第1の搬送ローラと前記第2の搬送ローラによって同一の用紙が搬送されているタイミングで前記第1の駆動源及び前記第2の駆動源からの各駆動力を接続するように前記クラッチ部を制御する制御部と、
を具備することを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載された用紙搬送装置は、請求項1記載の用紙搬送装置において、
前記制御部は、前記検出手段が用紙の先端を検出して出力した先端検出信号を取得した場合に、前記第1の駆動源及び前記第2の駆動源からの各駆動力を接続するように前記クラッチを作動させる接続指令信号を前記クラッチ部に出力し、前記検出手段が用紙の後端を検出して出力した後端検出信号を取得した場合に、接続された前記各駆動力を切断するように前記クラッチを作動させる切断指令信号を前記クラッチ部に出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の用紙搬送装置によれば、上流と下流の各搬送ローラを介して用紙が搬送されていること、すなわち用紙が上流と下流の各搬送ローラによって同時に挟持されて搬送されていることを検出手段が検出した際には、制御部の制御により各搬送ローラの駆動力がクラッチ部によって接続され、各搬送ローラの駆動が同期して回転数を一致させることができる。このような搬送状況下で、上流と下流の各搬送ローラの一方に他方より大きな負荷が加わると、かかる負荷の相違に応じて、負荷が大きい方の搬送ローラを駆動する駆動源の負荷が増大するため、各搬送ローラにトルクを適切に分配することができる。これによって、用紙に張りやたるみを生じさせることなく用紙を搬送することができ、用紙の紙質やサイズ関わらず用紙の搬送タイミングを安定化させることが出来る。
【0013】
請求項2に記載の用紙搬送装置によれば、検出手段が用紙の先端を検出してから、用紙の後端を検出するまでの間、用紙が上流と下流の各搬送ローラによって同時に挟持されて搬送されているものとし、制御部の制御によって各搬送ローラの駆動力をクラッチ部により接続し、各搬送ローラの駆動を同期させて回転数を一致させる。このため、用紙の紙質やサイズ関わらず、用紙の搬送タイミングを安定化させる効果をより確実に達成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模式的構造図である。
図2】実施形態の画像形成装置における用紙搬送装置の一部を示す斜視図である。
図3】従来の画像形成装置における用紙搬送装置の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態は、用紙を搬送しながら当該用紙にインクジェットヘッドで画像を形成して排出する画像形成装置に係るものであり、特にその用紙搬送機構に特徴を有するものである。以下、画像形成装置の全体構成を示す図1と、画像形成装置の用紙搬送機構を示す図2を参照して、本実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置1は、装置の各部を収納する筐体2の内部や側面等に、枚葉状の記録媒体である用紙を収納して後述するインクジェットヘッドC、K、M、Yに供給する給紙部3を備えている。図1における給紙部3は、筐体2の側面に取り付けられる給紙トレイP(P1)と、筐体2の内部に設けられる複数段の給紙トレイP(P2及びP3)から構成される。これらの給紙台P1〜P3には、サイズの異なる複数種類の用紙が収納されている。
【0017】
これら給紙トレイPから給紙される用紙は、筐体2内に設けられた用紙搬送装置としての用紙搬送機構4によって搬送され、搬送途中でインクジェットヘッドC、K、M、Yによって両面又は片面に所望のモノクロ画像又はカラー画像を形成されて排出されるようになっている。
【0018】
図1に示すように、用紙搬送機構4は、搬送される用紙を案内して所定のルートに沿って移動させるための搬送経路5を備えている。この搬送経路5は、用紙を循環して搬送することができるループ状の搬送路5aを含んでいる。前述したインクジェットヘッドC、K、M、Yは、このループ状の搬送路5aの下半部において、搬送方向に沿って所定間隔で下向きに配置されている。また、ループ状の搬送路5aの下半部の水平部分において、インクジェットヘッドC、K、M、Yの上流側には、各給紙トレイPから導かれた搬送経路5としての導入路5bが接続されており、画像を形成するために選択された所望のサイズの用紙を搬送路5aに送り込めるようになっている。また、ループ状の搬送路5aの下半部の水平部分において、インクジェットヘッドC、K、M、Yの下流側には、ほぼ水平な方向で用紙をループ外に排出する搬送経路5である第1の排出路5cが分岐して設けられている。また、ループ状の搬送路5aの上半部には、用紙をループ外に排出する搬送経路5である第2の排出路5dが分岐して設けられている。さらに、第2の排出5d路と各給紙台Pからの導入路5bとの間には、搬送経路5であるスイッチバック路5eが分岐して設けられている。このスイッチバック路5eは、搬送路5aを搬送されてきた用紙を受け入れた後に逆行させて搬送路5aに戻すことにより、搬送路5a中における用紙の上下を反転させる手段である。このスイッチバック路5eを用い、用紙の上下面を逆転させて搬送路5aを2回通過させれば、インクジェットヘッドC、K、M、Yで用紙の上下両面にカラー画像を形成するカラー両面印刷を行なうことができる。
【0019】
図1に示すように、用紙搬送機構4は、以上説明した構造の搬送経路5に沿って用紙を移動させる搬送ローラ6を備えている。図1では、図示及び説明の便宜上、一部の搬送ローラ6のみを図示している。すなわち、図1において搬送ローラ6が図示されているのは、ループ状の搬送路5aと給紙トレイPをつなぐ搬送経路5である導入路5bの部分と、ループ状の搬送路5aから第2の排出路5dに至る部分の搬送経路5である。これらの部分において、各対の搬送ローラ6は、1対ごとに、又は2対以上ごとに、駆動源であるモータM1,M2にそれぞれ接続されており、各モータM1,M2はそれぞれ独立して制御部10によって制御されるようになっている。なお、図1における搬送ローラ6のモータM1,M2については、図示した搬送ローラ6のモータM1,M2のみを図示した。またこれらのモータM1,M2は図示の便宜上、模式的な表現で筺体2の外に示しているが、もちろん筺体2の内部に設けられており、制御部10に接続されている。
【0020】
図2は、以上説明した用紙搬送機構4において、筐体2の内部に設けられた給紙トレイP(P2及びP3)からの導入路5bの部分を拡大して示すものである。同図に示す搬送経路5は、用紙が通過する所定の間隔を置いて互いに平行に配置された平面状又は曲面状の一対の案内板11a,11bから構成されている。そして、搬送ローラ6は、搬送経路5内の用紙を挟むように対向して配置された駆動ローラ7aと従動ローラ7bの対で構成されており、これら搬送ローラ6は導入路5bの案内板11a,11bに形成された通孔を介して対向しており、搬送経路5内の用紙を挟持して回転することで用紙を搬送経路5に沿って図中矢印Aで示す搬送方向に移動させることができる。
【0021】
このように、導入路5bの部分や、搬送路5aから第2の排出路5dに至る部分のような搬送経路5の特定部分において、隣接する2対の搬送ローラ6,6がそれぞれ異なるモータM1,M2によって独立して駆動される構成とされているのは、搬送経路5の当該部分では、画像形成に伴う用紙の搬送態様が一様ではなく、用紙を加速し、減速し、又は一時停止させる等、複雑な制御を行なう必要があるからである。
【0022】
具体的には、給紙部分となる導入路5bの部分では、画像形成する用紙を速やかに搬送経路5に導入する必要がある一方、インクジェットヘッドC、K、M、Yの手前にあるレジストローラ12(図1参照)では用紙を突き当てて一端停止し、その後、インクジェットヘッドC、K、M、Yによる画像形成にタイミングと速度を合わせて用紙を搬送路5aに送り込む必要がある。また、ループ状の搬送路5aでは、インクジェットヘッドC、K、M、Yによる画像形成に合わせた速度で用紙を搬送しているが、排紙部分となる第2の排出路5dでは、作業効率上、なるべく速く用紙を排出する必要がある。
【0023】
なお、図1に示した搬送ローラ6以外にも、用紙を搬送するために必要な数の搬送ローラ6が適当な間隔で搬送経路5に沿って配置され、各搬送ローラ6の駆動ローラ7aにはモータM1,M2等が接続され、各モータM1,M2等は制御部10によって制御されるように構成されている。
【0024】
図1に示すように、用紙搬送機構4は、以上説明した搬送ローラ6に加えて、用紙の搬送手段として搬送コンベア13を備えている。この搬送コンベア13は、循環して移動するベルト13aと、このベルトに用紙を吸着させる図示しない吸着手段を備えており、ループ状の搬送路5aの下半部について、インクジェットヘッドC、K、M、Yと反対側に配置されている。この搬送コンベア13によれば、搬送路5aに案内されている用紙を吸着手段でベルト13aに吸着し、このベルト13aを移動させることによって用紙を搬送することができる。そして、搬送コンベア13によって用紙を搬送しながらインクジェットヘッドC、K、M、Yを駆動することにより、露出した用紙の上面に所望の画像を形成することができる。
【0025】
図1に示すように、前述した用紙の給紙部分と排紙部分には、隣接する2対の搬送ローラ6,6がそれぞれ異なるモータM1,M2によって独立して駆動される箇所が存在するが、これら2個のモータM1,M2の駆動力は、クラッチ部Cによって選択的に接続され、又は切断されるように構成されている。図1では、2つのモータM1,M2にクラッチ部Cが接続されているように表現したが、これは2個のモータM1,M2がそれぞれ発生する駆動力が直接的又は間接的に接続され、切断されることを示しており、2個のモータM1,M2の各出力軸がクラッチ部Cを介して直接的に連結されている機構のみを意味するものではない。
【0026】
図2に示すように、搬送経路5における用紙の給紙部分である導入路5bでは、2個のモータM1,M2にそれぞれ連動する2対の搬送ローラ6,6の各駆動ローラ7aの各駆動軸14が、クラッチ部Cにベルト15を介してそれぞれ連結されている。なお、図1では、クラッチ部Cは図示の便宜上、模式的な表現で筺体2の外に示されているが、実際には図2に示すように筺体2の内部に設けられており、制御部10に接続されて制御されるようになっている。なお、クラッチ部Cとしては、電磁クラッチを用いることができるが、その他、機械式クラッチをソレノイド等のアクチュエータで作動させるようにしてもよい。
【0027】
図1及び図2に示すように、異なるモータM1,M2によって駆動される隣接した2つの搬送ローラ6,6の間には、検出手段17が配置されている。この検出手段17は、搬送経路5である導入路5bの一方の案内板11aに設けられた通孔を介して用紙を検出できるようになっており、搬送ローラ6によって搬送される用紙の有無を検出して制御部10に検出信号を出力する。この実施形態では、検出手段17は用紙の先端を検出した場合に先端検出信号を出力し、用紙の後端を検出した場合に後端検出信号を出力し、それぞれ制御部10に出力する。なお、検出手段17による用紙の検出原理は問わない。
【0028】
図1に示す制御部10は、図示しない読み取り装置で読み取ったデータや、外部から供給されるデータ等を用い、ユーザーからの指示に従って装置の各部を統括的に制御し、用紙に画像を形成する。このような画像形成動作において、制御部10は、各搬送ローラ6の駆動ローラ7aを駆動して用紙を搬送経路5に沿って搬送するとともに、異なるモータM1,M2によって独立して駆動される隣接した2対の搬送ローラ6,6に一枚の用紙がかかっている状態では、検出手段17からの信号に応じて、これら上流及び下流の各搬送ローラ6,6の駆動力を接続するようにクラッチ部Cの制御を行なう。
【0029】
具体的には、検出手段17が先端検出信号を出力した場合にクラッチ部Cを制御して上流及び下流の各搬送ローラ6,6の駆動力を接続し、その後、検出手段17が後端検出信号を出力した時にクラッチ部Cを制御して上流及び下流の各搬送ローラ6,6の駆動力を切断する。このように、検出手段17が用紙の先端を検出してから、用紙の後端を検出するまでの間、用紙が上流と下流の各搬送ローラ6,6によって同時に挟持されて搬送されているものとし、制御部10の制御によって各搬送ローラ6,6の駆動力をクラッチ部Cにより接続し、各搬送ローラ6,6の駆動を同期させて回転数を一致させる。
【0030】
一枚の用紙を挟持して搬送している上流と下流の各搬送ローラ6,6が同一の回転数で回転している状況下において、上流と下流の各搬送ローラ6,6の一方に他方より大きな負荷が加わると、かかる負荷の相違に応じて、負荷が大きい方の搬送ローラ6を駆動するモータM1又はM2の負荷が増大するため、他方の搬送ローラ6のモータM2又はM1のトルクが相対的に減少し、用紙の搬送に必要なトルクを、各搬送ローラ6,6及び各搬送ローラ6,6を駆動する各モータM1,M2において適切に分配することができる。これによって、用紙に張りやたるみを生じさせることなく用紙を搬送することができ、用紙の紙質やサイズ関わらず用紙の搬送タイミングを安定化させることが出来る。なお、このような効果を、単一のクラッチ部Cと検出手段17という安価な構成で達成することができ、装置の製造コストを低く抑えることができるという効果も得られる。
【0031】
特に、本実施形態のような画像形成装置1では、先に述べた通り、用紙の導入路5bにおける用紙の速度制御及び位置制御は必ずしも容易ではなく、例えば腰の弱い用紙では、用紙の位置に数ミリのずれが生じたり、破れや折れ等の損傷が生じる場合もあった。ところが、本実施形態では、用紙の導入路5bにおいて、上流と下流の各搬送ローラ6,6に用紙がかかったときに各搬送ローラ6,6の各モータM1,M2の駆動力をクラッチ部Cで連結し、各搬送ローラ6,6のトルクを適宜に分配しながら一枚の用紙を同期搬送できるようにしたので、用紙の速度制御、位置制御が特に困難な給紙系において腰の弱い用紙を搬送する場合であっても用紙の損傷を避けることができ、用紙の搬送タイミングを確実に安定化することができる。
【0032】
また、本実施形態では、隣接する2対の搬送ローラ6,6がそれぞれ異なるモータM1,M2によって独立して駆動される排出路5dにも、上述した導入路5bと同様、上流と下流の各搬送ローラ6,6に用紙がかかったときに各搬送ローラ6,6の各モータM1,M2の駆動力を接続するクラッチ部Cを設けた。このため、排紙部分においても用紙の損傷を避けることができ、用紙の搬送タイミングを安定化することができる。すなわち、ループ状の搬送路5aでは、インクジェットヘッドC、K、M、Yによる画像形成速度及びタイミングに適合した最適な速度で用紙を搬送して画像形成を行い、第2の排出路5dでは画像形成済みの用紙を速やかに排出することができ、画像形成作業の効率を全体として上げることができる。
【0033】
また、本実施形態では、クラッチ部Cは、2対の搬送ローラ6,6の各駆動軸14,14を連結しているが、前述した通り、2対の搬送ローラ6,6の各モータM1,M2の各出力軸をクラッチ部Cで連結するようにしても略同様の効果を達成することは可能である。しかしながら、本実施形態のように各搬送ローラ6,6の各駆動軸14,14をクラッチ部Cで連結した方が、各搬送ローラ6,6の各モータM1,M2をクラッチ部Cで連結する構造よりも、クラッチ部Cから搬送ローラ6の駆動軸14に至る動力系のベルト15の長さがより短くなるため、各搬送ローラ6,6の回転数を一致させて共通の用紙を同期して搬送するためにはより有効である。
【0034】
また、本実施形態では、モータの駆動力を接続し、又は切断するクラッチ部Cを備えた用紙搬送装置として、画像形成装置1の用紙搬送機構4を例示したが、これはもちろん一例にすぎない。本発明の用紙搬送装置は、画像形成装置に限らず、特に用紙搬送において微妙な速度制御、位置制御等を必要とする各種産業用装置類において、簡単な構成でありながら、用紙を損傷することなく円滑に搬送できるという高い効果を達成することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…画像形成装置
4…用紙搬送装置としての用紙搬送機構
5…搬送経路
5a…搬送経路であるループ状の搬送路
5b…搬送経路である導入路
5c…搬送経路である第1の排出路
5d…搬送経路である第2の排出路
5e…搬送経路であるスイッチバック路
6…搬送ローラ
7a…駆動ローラ
7b…従動ローラ
10…制御部
11a,11b…搬送経路を構成する案内板
17…検出手段
M1,M2…駆動源としてのモータ
P(P1,P2,P3)…給紙トレイ
C,K,M,Y…インクジェットヘッド
C…クラッチ部
図1
図2
図3