(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収性本体と、該吸収性本体の非肌当接面側に配されて該吸収性本体を固定している外装体とを備え、且つ腹側部における該外装体の両側縁部と背側部における該外装体の両側縁部とが接合されて一対のサイドシール部が形成されているパンツ型吸収性物品であって、
前記サイドシール部は、前記腹側部における前記外装体を構成するシートの縁部と前記背側部における前記外装体を構成するシートの縁部とが重なった状態で融着した、シール縁部であり、
前記サイドシール部の延びる方向と直交する方向の断面視において、該サイドシール部の外縁が前記外装体の内方に向かって凸の弧状をなしているパンツ型吸収性物品。
前記外装体は、前記吸収性本体から相対的に遠い外層シートと該吸収性本体から相対的に近い内層シートとの積層構造を含む請求項1〜3の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
前記外装体は、前記外層シートと前記内層シートとの間にウエスト部弾性部材、胴回り部弾性部材及びレッグ部弾性部材が伸長状態で配されて構成されている請求項4又は5記載のパンツ型吸収性物品。
前記サイドシール部は、前記シートの縁部の形成材料が溶融一体化した融着部を有し、前記パンツ型吸収性物品の着用時において、該融着部は露出した状態である請求項1〜7の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
前記サイドシール部は、前記シートの縁部の形成材料が溶融一体化した融着部を有し、前記パンツ型吸収性物品の着用時において、前記腹側部側の前記外装体の側縁部の角部と前記背側部側の前記外装体の側縁部の角部とが接近し、該融着部は、両角部間に位置し、手で触れ難く且つ外部から視認し難い状態である請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
前記サイドシール部を横断する前記パンツ型吸収性物品の構成部材の色が、該サイドシール部よりも腹側と該サイドシール部よりも背側とで異なる請求項1〜9の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のシート融着体の製造方法を、該製造方法によりシート融着体を製造する工程を含む、本発明の吸収性物品の製造方法と共に、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の吸収性物品の製造方法の一実施態様である、レーザー式接合装置を用いたパンツ型使い捨ておむつの製造方法の概略が示されている。本発明の吸収性物品の製造方法は、「複数枚のシートの縁部が重なった状態で融着したシール縁部を有するシート融着体」を製造する工程を含んでいるところ、
図1に示す本実施態様のおむつの製造方法においては、斯かるシート融着体として、
図2及び
図3に示すように、一対のサイドシール部4,4を有する外装体3を具備するパンツ型使い捨ておむつ1を製造する。外装体3及びそれを含むおむつ1の何れも前記シート融着体である。
【0013】
おむつ1は、
図2及び
図3に示すように、吸収性本体2と、該吸収性本体2の非肌当接面側に配されて該吸収性本体2を固定している外装体3とを備え、且つ腹側部1Aにおける外装体3の両側縁部と背側部1Bにおける該外装体の両側縁部とが接合されて一対のサイドシール部4,4、ウエスト開口部8及び一対のレッグ開口部9,9が形成されているパンツ型使い捨ておむつであり、このサイドシール部4が、前記の「複数枚のシートの縁部が重なった状態で融着したシール縁部」に相当する部分である。
【0014】
本実施態様のおむつの製造方法においては、「複数枚のシートが重ねられた帯状のシート積層体」として、複数の枚葉のシート積層体(サイドシール部が形成されていないパンツ型使い捨ておむつの前駆体)が一方向に連なってなる、おむつ連続体10(吸収性物品連続体)を別途製造し、このおむつ連続体10を、
図1に示すように、レーザー光30の照射により、個々に分断するのと同時に、その分断によって生じた加圧状態にある複数枚のシートの切断縁部どうしを融着して、一対のサイドシール部4,4(シール縁部)を有する外装体3(シート融着体)を具備するパンツ型使い捨ておむつ1(シート融着体)を連続的に製造する。
【0015】
前記「複数枚のシートが重ねられた帯状のシート積層体」において、複数枚のシートの少なくとも一部のシートは、樹脂材を含み、該樹脂材を主成分として形成されていることが好ましく、具体的には例えば、樹脂材としてポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱融着性の合成樹脂を含み、不織布、フィルム、不織布とフィルムとのラミネートシート等からなることが好ましい。不織布としては、エアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。前記シート積層体は、該シート積層体を構成する複数枚のシートの全てが、樹脂材を含むことが好ましい。以下、先ず、おむつ連続体10(帯状のシート積層体)の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
【0016】
先ず、
図4に示すように、原反ロール(図示せず)から連続的に供給される帯状の外層シート31と、原反ロール(図示せず)から連続的に供給される帯状の内層シート32の間に、ウエストギャザーを形成するウエスト部弾性部材5、胴回りギャザーを形成する胴回り部弾性部材6及びレッグギャザーを形成するレッグ部弾性部材7を、所定の伸長率に伸長させた伸長状態で各々複数本配する。このとき、本実施態様においては、ウエスト部弾性部材5及び胴回り部弾性部材6には、接着剤塗工機(図示せず)によりホットメルト型接着剤を連続的あるいは間欠的に塗工し、レッグ部弾性部材7は、シートの流れ方向とは直交して往復運動する公知の揺動ガイド(図示せず)を介して、所定の脚周りパターンを形成しながら配される。また、帯状の外層シート31及び帯状の内層シート32には、それらを重ね合わせる前に、両シートの何れか一方又は双方の相対向する面の所定部位に、接着剤塗工機(図示せず)によりホットメルト型接着剤を塗工する。尚、ウエスト部弾性部材5、胴回り部弾性部材6等の弾性部材が、両シート31,32における、レーザー光の照射によって分断される部分(サイドシール部4の形成予定部分)(
図5中符号10Cで示す分断予定部分)を跨ぐように伸長状態で配されている場合、その分断後の該弾性部材の大幅な縮みや該弾性部材の抜け等の不都合を回避するために、該部分及びその近傍に接着剤を塗工しておくことが好ましい。
【0017】
そして、
図4に示すように、一対のニップロール11,11の間に、ウエスト部弾性部材5、胴回り部弾性部材6及びレッグ部弾性部材7を伸長状態で挟み込んだ帯状の外層シート31及び帯状の内層シート32を送り込んで加圧することにより、帯状シート31,32間に複数本の弾性部材5,6,7が伸長状態で配された帯状の外装体3を形成する。その後、本実施態様においては、弾性部材プレカット手段(図示せず)を用いて、後述する吸収性本体2を配する位置に対応させて、複数本の胴回り部弾性部材6及び複数本のレッグ部弾性部材7を押圧して、収縮機能が発現されないように個々複数個に分断する。前記弾性部材プレカット手段としては、例えば、特開2002−253605号公報に記載の複合伸縮部材の製造方法に用いる弾性部材分断部等が挙げられる。
【0018】
次いで、
図4に示すように、別工程で製造された吸収性本体2に予めホットメルト接着剤等の接着剤を塗工し、該吸収性本体2を90度回転させて、帯状の外装体3を構成する内層シート32上に間欠的に供給して固定する。尚、吸収性本体固定用の接着剤は、吸収性本体2ではなく、内層シート32における吸収性本体2の配置予定位置に予め塗工しても良い。
【0019】
次いで、
図4に示すように、吸収性本体2が配置された帯状の外装体3におけるレッグ部弾性部材7で環状に囲まれた環状部の内側にレッグホールLO’を形成する。このレッグホール形成工程は、ロータリーカッター、レーザーカッター等の従来からこの種の物品の製造方法における手法と同様の手法を用いて実施することができる。尚、本実施態様においては、帯状の外装体3に吸収性本体2を配置した後にレッグホールを形成しているが、吸収性本体2の配置前にレッグホールを形成しても良い。
【0020】
次いで、帯状の外装体3をその幅方向(外装体3の搬送方向と直交する方向)に折り畳む。より具体的には、
図4に示すように、帯状の外装体3の搬送方向に沿う両側部3a,3aを、吸収性本体2の長手方向両端部を覆うように折り返して吸収性本体2の長手方向両端部を固定した後、外装体3を吸収性本体2と共にその幅方向に2つ折りする。こうして、目的のおむつ連続体10(帯状のシート積層体)が得られる。
【0021】
本実施態様のおむつの製造方法においては、こうして別途製造されたおむつ連続体10(帯状のシート積層体)に対して、
図1に示すように、レーザー式接合装置20(複数枚のシートの縁部が重なった状態で融着したシール縁部を有するシート融着体の製造装置)を用いてレーザー光を照射して、一対のサイドシール部4,4(シール縁部)を有する外装体3(シート融着体)を具備するパンツ型使い捨ておむつ1(シート融着体)を連続的に製造する。
【0022】
レーザー式接合装置20について説明すると、レーザー式接合装置20は、
図1に示すように、矢印A方向に回転駆動される円筒状(環状)の支持部材21を備えた中空の円筒ロール23と、該支持部材21の中空部に配され、レーザー光30を照射する照射ヘッド35と、加圧手段として無端状の加圧ベルト24(押さえ部材)及び該加圧ベルト24が架け渡された状態で回転する複数本(3本)のロール25a,25b,25cを備えたベルト式加圧装置26とを備えている。レーザー式接合装置20は、環状の支持部材21の外周面(円筒ロール23の周面部)に巻き掛ける加圧ベルト24の張力を増減調整できる張力調整機構(図示せず)を備え、該張力の調整により、支持部材21と加圧ベルト24とによって、おむつ連続体10(シート積層体)に加える圧力を適宜調整することができる。
【0023】
支持部材21は、円筒ロール23の周面部(被加工物との当接部)を形成しており、円筒ロール23の左右両側縁部を形成する一対の環状の枠体22,22間に挟持固定されている。本実施態様においては、支持部材21は、環状の枠体22の周長と同じ長さの単一の環状部材から構成されており、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の金属材料又はセラミックス等の耐熱性を有する材料からなる。
【0024】
支持部材21は、レーザー光が通過可能な光通過部を有している。本実施態様における支持部材21は、
図1及び
図5に示すように、光通過部として、該支持部材21を厚み方向に貫通するスリット状の開口部27を有している。尚、
図5(
図5(b))では、説明容易の観点から、支持部材21及び加圧ベルト24(押さえ部材)並びにこれらに挟まれたおむつ連続体10(シート積層体)が、
図5中左側から右側に向かって水平移動しているかのように記載しているが、実際にはこれら各部材は、円筒ロール23の円筒状(環状)に対応した湾曲状態で回転移動している。開口部27は、平面視して矩形形状を有し、その長手方向を支持部材21の幅方向(
図5(a)中符号Xで示す方向。円筒ロール23の回転軸と平行な方向。)に一致させて、円筒状の支持部材21の周方向に所定間隔を置いて複数形成されている。支持部材21は、開口部27ではレーザー光を通過させる一方、開口部27以外の部分ではレーザー光を通過(透過)させない。支持部材21に開口部27を形成する方法としては、1)支持部材21の所定箇所にエッチング、パンチング、レーザー加工等により開口部27を穿設する方法の他、2)支持部材21として、単一の環状部材に代えて、湾曲した矩形形状の部材を複数用い、それら複数の部材を、一対の枠体22,22間に、該枠体22の周方向に所定間隔を置いて配置する方法が挙げられる。前記2)の方法では、隣接する2つの部材の間隔が、スリット状の開口部27となる。
【0025】
尚、レーザー式接合装置20(複数枚のシートの縁部が重なった状態で融着したシール縁部を有するシート融着体の製造装置)においては、レーザー光が通過可能な光通過部が、支持部材21を厚み方向に貫通する(スリット状の)開口部27からなるため、おむつ連続体10(シート積層体)における開口部27と重なる部分(分断予定部分10C)は、加圧ベルト24が当接するだけで、支持部材21と加圧ベルト24(押さえ部材)とで挟まれない。従って厳密に言えば、分断予定部分10Cには、両部材21,24で挟持されることにより発生する加圧力は発生しない。しかし、開口部27と重なる分断予定部分10Cは、それ自体は両部材21,24で挟持されなくとも、その近傍、即ち、おむつ連続体10における開口部27の近傍(開口縁部)と重なる部分は両部材21,24で挟持されるため、レーザー光の照射前後で動かず、従って、レーザー光の照射によるおむつ連続体10の分断によって生じた切断縁部は動かない。つまり、おむつ連続体10の分断予定部分10C(シート積層体における開口部27と重なる部分)は、両部材21,24での挟持による加圧力により拘束された部分であり、該加圧力が事実上影響する部分である。
【0026】
支持部材21は、
図5(b)に示すように、その外面(被加工物との当接面)に凹部28を有している。凹部28は、円筒状の支持部材21の周方向に所定間隔を置いて複数形成されており、隣接する2つの凹部28,28間に位置する領域(凸部)に、スリット状の開口部27が形成されている。開口部27は、前記凸部における円筒状の支持部材21の周方向の中央に形成されている。
【0027】
このように、支持部材21の外面に凹部28が形成されていることにより、おむつ連続体10(帯状のシート積層体)の厚みが均一でない場合は、該おむつ連続体10における相対的に厚みの大きい部分(例えば吸収性本体2の配置領域)が凹部28内に収まるように、該おむつ連続体10を支持部材21の外面上に導入することが可能となる。そして、おむつ連続体10をそのように支持部材21上に導入すると、
図5(b)に示すように、おむつ連続体10における加圧ベルト24(押さえ部材)との当接面(他方の面10b)が略平坦となるため、加圧ベルト24をおむつ連続体10に押し付けたときに、おむつ連続体10における、開口部27が形成された前記凸部上に位置する部分(
図5中符号10Cで示す分断予定部分及びその近傍)全体が、おむつ連続体10の支持部材21への所定のテンションでの巻きかけと加圧ベルト24とによって、所定の圧力でその厚み方向に均一に加圧されるようになり、こうしてレーザー光の照射による分断前から厚み方向に加圧された該部分に、レーザー光を照射して該部分を分断したときに、その分断された該部分を構成する複数枚のシートの切断縁部どうしをより確実に融着させることが可能となり、サイドシール部4(シール縁部)の融着強度の一層の向上が図られる。
【0028】
ベルト式加圧装置26は、無端状の加圧ベルト24(押さえ部材)及び該加圧ベルト24が架け渡された状態で回転する3本のロール25a,25b,25cを備えている。ロール25a,25b,25cは駆動ロールでも良く、円筒ロール23に連れ回りする従動ロールでも良い。加圧ベルト24は、ロール25a,25b,25cの何れか1以上を回転駆動して、円筒ロール23(支持部材21)と同速度で移動する。支持部材21及び加圧ベルト24は、空冷、水冷等により温度を所定の温度範囲に維持することが好ましい。
【0029】
加圧ベルト24(押さえ部材)としては、加工時に発生する熱に耐えうる耐熱性を有する金属又は樹脂製のベルトを用いることができ、本実施態様における加圧ベルト24は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料からなる。また、加圧ベルト24としては、通常、被加工物(おむつ連続体10)に対して照射されるレーザー光の透過性を有しないものが用いられるが、該透過性を有するものを用いることもできる。
【0030】
図1に示すように、中空の円筒ロール23(支持部材21)の中空部には、該円筒ロール23の周面部を形成する支持部材21に向けてレーザー光30を照射する照射ヘッド35が設けられている。照射ヘッド35は、レーザー光30を自在に走査するガルバノスキャナ(モータ軸にミラーが付いた装置)であり、レーザー光30を円筒ロール23の回転軸と平行な方向(
図5(a)中符号Xで示す方向)に進退させる機構、レーザー光30が支持部材21上のおむつ連続体10に当たる位置(照射点)を円筒ロール23の周方向に移動させる機構、円筒ロール23の周面上でレーザー光30のスポット径を一定にする機構等を備えている。レーザー照射機構は、このような構成を有することによって、レーザー光30の照射点を、円筒ロール23の周方向及び該周方向と直交する方向(
図5(a)中符号Xで示す方向。円筒ロール23の回転軸と平行な方向。)の両方向に任意に移動させることができる。
【0031】
図1に示すように、おむつ連続体10(帯状のシート積層体)は、図示しない案内ロール等によって、所定のテンションが掛けられた状態で、矢印A方向に回転駆動される円筒ロール23の周面部を形成する支持部材21の外面上に導入され、該支持部材21に巻き掛けられるようにして該円筒ロール23の回転によりその周方向に所定距離搬送された後、図示しない導出ロール及びニップロール等によって該支持部材21から離れる。このように、おむつ連続体10を、円筒ロール23の周面部を形成する支持部材21に所定のテンションで巻き掛け且つ加圧ベルト24によって圧接するようにして搬送することにより、おむつ連続体10における支持部材21と加圧ベルト24とに挟まれた部分及びその近傍は、レーザー光の照射による分断前からその厚み方向に加圧(圧縮)された状態となるため、おむつ連続体10が不織布を含む場合等に、該おむつ連続体10をより効率的に圧縮させることができ、結果として、斯かる圧縮中のおむつ連続体10に対してレーザー光を照射してこれを分断したときに、その分断された部分を構成する複数枚のシートの切断縁部どうしをより確実に融着させることが可能となり、サイドシール部4(シール縁部)の融着強度の一層の向上が図られる。
【0032】
おむつ連続体10が、支持部材21上に導入されてからこれを離れるまでの該支持部材21(円筒ロール23)の回転角度は、例えば、90〜270度とすることができ、より好ましくは120〜270度である。また、加圧ベルト24(押さえ部材)によりおむつ連続体10を支持部材21に圧接させる角度(圧接角度)の範囲は、円筒状の支持部材21(円筒ロール23)の周方向の全周に亘って圧接させる場合を360度とした場合に、90〜270度であることが好ましく、より好ましくは120〜270度である。
【0033】
本実施態様のおむつの製造方法においては、
図1及び
図5に示すように、おむつ連続体10(帯状のシート積層体)を連続搬送しつつ、その一方の面10aを、円筒ロール23の周面部を形成し且つレーザー光30が通過可能なスリット状の開口部27(光通過部)を有する、支持部材21の外面に当接させ、加圧状態となったおむつ連続体10に対して、支持部材21側から開口部27を介してレーザー光30を照射することにより、おむつ連続体10を分断するのと同時に、その分断によって生じた前記加圧状態にある複数枚のシートの切断縁部どうしを融着させて、サイドシール部4(シール縁部)を形成する。
【0034】
詳細には、
図1及び
図5に示すように、支持部材21に当接しているおむつ連続体10の他方の面10b(支持部材21との当接面である一方の面10aとは反対側の面)に、加圧ベルト24(押さえ部材)を押し付け、その状態のおむつ連続体10に対して、支持部材21側からスリット状の開口部27を介してレーザー光30を照射することにより、一対のサイドシール部4,4(シール縁部)を有する外装体3(シート融着体)を具備するおむつ1(シート融着体)を連続的に製造する。このように、レーザー光30の照射は、支持部材21と加圧ベルト24とに挟まれることによって加圧状態(圧縮状態)にあるおむつ連続体10に対して行うことが、該照射によって生じた複数枚のシートの切断縁部どうしを確実に融着させて、サイドシール部4の融着強度を向上させる観点から好ましい。
【0035】
図6は、レーザー式接合装置20を用いておむつ連続体10(帯状のシート積層体)を分断するのと同時にサイドシール部4(シール縁部)を形成する様子を説明する図であり、
図6(a)には、おむつ連続体10のレーザー光30による分断予定部分10C及びその近傍が模式的に示されている。本実施態様におけるおむつ連続体10の分断予定部分10Cは、
図5(a)に示すように、おむつ連続体10の吸収性本体2が配置されていない領域における長手方向(搬送方向A)の中央である。斯かる分断予定部分10Cは、ウエスト開口部8(
図2参照)の開口端部及びその近傍が、8枚のシートが重ねられた8層構造部分、それ以外の部分が、4枚のシートが重ねられた4層構造部分となっている。4層構造部分は、
図6(a)に示すように、腹側部1Aにおける1枚の外装体3を構成する2枚のシート(外層シート31及び内層シート32)と、背側部1Bにおける1枚の外装体3を構成する同じく2枚のシート31,32とからなり、これら4枚のシートが積層されて構成されている。一方、8層構造部分は、前述したように、おむつ連続体10の製造時に帯状の外装体3の両側部3a,3aが吸収性本体2の長手方向両端部を覆うように折り返されている(
図4参照)ことに起因して、腹側部1A及び背側部1Bそれぞれに外装体3が2枚存し且つこれら計4枚の外装体3,3が積層されているので、結果として8枚のシート31,32が積層されて構成されている。尚、4層構造部分及び8層構造部分それぞれにおいて、互いに重なり合うシート31,32間には、ウエスト部弾性部材5、胴回り部弾性部材6等の弾性部材が介在配置されている場合があるが、
図6では、説明容易の観点から、該弾性部材の図示を省略している。以下、主として、4層構造部分について説明するが、特に断らない限り、8層構造部分も4層構造部分と同様に構成されサイドシール部4が形成される。
【0036】
おむつ連続体10における4層構造の分断予定部分10Cにおいて、おむつ連続体10の一方の面10a(支持部材21との当接面)を構成する外層シート31及び一方の面10aを構成するシート以外のシート(内層シート32)は、何れか一方又は両方が、レーザー光30を吸収して発熱するシートである。本実施態様においては、分断予定部分10Cを構成する4枚のシート31,32の全てが、レーザー光30を吸収して発熱するシート(不織布)である。また、分断予定部分10C及びその近傍における互いに重なり合う2枚のシート間は、レーザー光30の照射前において、接着剤等により接合されていても良く、全く接合されていなくても良い。
【0037】
おむつ連続体10は、
図6(b)に示すように、一方の面10aが支持部材21に当接し且つ分断予定部分10Cがスリット状の開口部27上に位置するように、矢印A方向に回転する支持部材21上に導入されると共に、他方の面10bに加圧ベルト24(押さえ部材)が押し付けられることによって、矢印A方向に搬送されつつ厚み方向に加圧(圧縮)される。そして、斯かる搬送中且つ加圧状態の分断予定部分10Cに対して、支持部材21側から開口部27を介してレーザー光30が照射される。前述したように、レーザー光30の照射点は、円筒ロール23の周方向に任意に移動可能に構成されており、開口部27の該周方向に沿った移動に追従して移動するように設定されているので、該開口部27上に位置する分断予定部分10Cには、その搬送中にレーザー光30が一定時間連続的に照射される。
【0038】
4層構造の分断予定部分10Cにレーザー光30が照射されると、該分断予定部分10Cに存するシート31,32の形成材料(繊維等)は、レーザー光30の直射による発熱によって気化して消失し、該分断予定部分10Cの近傍に存する該形成材料は、レーザー光30によって間接的に熱せされて溶融する。その結果、
図6(c)に示すように、4層構造の分断予定部分10Cが溶断されて、おむつ連続体10から1つの枚葉のシート積層体(おむつ前駆体)が切り分けられる形で、該おむつ連続体10が分断されるのと同時に、その分断によって生じた該枚葉のシート積層体における4枚のシート31,32の切断縁部どうし、及び、切り分けられた該おむつ連続体10における4枚のシート31,32の切断縁部どうしが、それぞれ融着する。これらの切断縁部どうしは、それぞれ、その形成前(レーザー光30の照射によるおむつ連続体10の分断前)から、支持部材21と加圧ベルト24とに挟まれることによって加圧状態(圧縮状態)とされていたものである。本実施態様のおむつの製造方法によれば、このように、一回のレーザー光の照射で、帯状のシート積層体の分断と、その分断によって生じた2箇所の加圧状態にあるシートの切断縁部どうしの融着とを同時に実施するため、2箇所の融着箇所を二回のレーザー光の照射で融着する方法(本発明の範囲外の方法)に比べ、おおよそ半分のレーザー出力で融着と分断とを同一工程で実施でき、おむつ1を効率良く製造することができる。また、融着と分断とを同一工程で行えるため、シートの切断縁部どうしが融着されていない非シール縁部が発生しないので、材料の削減効果もある。
【0039】
シート31,32の切断縁部は、レーザー光30の照射中及び照射終了直後は、発熱して溶融状態となっているが、レーザー光30の照射によっておむつ連続体10から切り分けられた1つの枚葉のシート積層体(おむつ前駆体)及び該おむつ連続体10それぞれの、支持部材21と加圧ベルト24とによる加圧状態がされたまま、照射終了後からは支持部材21の接触により冷却され易くなり、外気や支持部材21・加圧ベルト24への伝熱によって速やかに冷却されて固化し、該切断縁部の形成材料(繊維等)が溶融一体化した融着部40となる。こうして、融着部40が形成されることによって、1個のおむつ1における一対のサイドシール部4,4のうちの一方が形成される(即ち、融着部40=サイドシール部4)。尚、必要に応じ、吸引装置、排気装置等の公知の冷却手段を用いてシート31,32の切断縁部を強制的に冷却し、融着部40の形成を促進しても良い。
【0040】
こうして1箇所の分断予定部分10Cが分断されると、レーザー光30は、その照射点が搬送方向Aとは逆方向に隣接する別の開口部27に当たるように移動され、該別の開口部27を介してその上に位置する別の分断予定部分10Cに照射される。これにより、別の分断予定部分10Cが前記と同様に分断・融着され、先に形成されたサイドシール部4と対をなす他方のサイドシール部4(融着部40)が形成される。以後、同様の操作を繰り返すことにより、一対のサイドシール部4,4(シール縁部)を有する外装体3(シート融着体)を具備するパンツ型使い捨ておむつ1(シート融着体)が連続的に製造される。このように、本実施態様のおむつの製造方法においては、おむつ1のサイドシール部(融着部)は、レーザー光の照射による融着法によって形成され、他の融着法によっては形成されない。
【0041】
尚、レーザー光30が照射されるスリット状の開口部27の幅W(
図6(b)参照。開口部27の、円筒ロール23の周方向に沿った長さ。)に比して、おむつ連続体10(帯状のシート積層体)におけるレーザー光30のスポット(レーザー光30が照射されている部分)の直径φが小さい場合(φ/Wが1未満の場合)には、
図7に示すように、レーザー光30の照射によって形成された一対のサイドシール部4,4(融着部40,40)は、おむつ連続体10における開口部27と重なる部位(平面視において、スリット状の開口部27の、搬送方向Aと直交する方向に沿う一対の開口縁部に挟まれた部位)に位置し得る。即ち、おむつ連続体10において、支持部材21と加圧ベルト24(押さえ部材)とで挟まれていない部位であっても、開口部27の近傍(開口縁部)、即ち前述したように、両部材21,24での挟持による加圧力が事実上影響する部位であれば、融着部40は形成され得る。
【0042】
こうして製造されたおむつ1の主たる特長部分の1つとして、サイドシール部4が挙げられる。
図6(c)又は
図7に示す如き、サイドシール部4の延びる方向(
図1中符号Xで示す方向)と直交する方向(おむつ1の幅方向)の断面視において、前記分断によって生じたサイドシール部4の外縁4aが、外装体3(シート融着体)の内方に向かって凸の弧状をなし、且つ外縁4aを含んでそれよりも外装体3の内方に、該外装体3を構成する4枚のシート31,32どうしの融着部40が形成され、該融着部40は、該外装体3の厚み方向(
図6(c)又は
図7の上下方向)の中央部が両端部(上端部及び下端部)に比して幅が広い。即ち、融着部40は、おむつ1の幅方向(レーザー光による分断方向と直交する方向)の断面視したときに、厚み方向において中央部に向けて融着部40の幅が徐々に広くなっており、所謂、三日月状又は半月状に形成されている〔
図6(c)又は
図7に示す融着部40は三日月状〕。
【0043】
サイドシール部4は、シートの形成材料が溶融固化してなる融着部40の存在により、おむつ1の他の部位に比して硬くて肌触りが悪く、おむつ1の着用感を低下させる原因となり得る部位であるところ、このように融着部40がおむつ1の幅方向の断面視において三日月状又は半月状に形成されていると、従来のサイドシール部における融着部のように同断面視において矩形形状に形成されている場合に比して、サイドシール部4を構成する外装体3の側縁部の角部3Sに存する融着部40の割合が減少し、これにより角部3Sが本来有する柔軟性、肌触り感が損なわれ難くなるため、従来品に比しておむつの着用感が向上する。一方、サイドシール部4の融着強度に大きな影響を及ぼす部位である、外装体3の側縁部の厚み方向の中央部(外装体3の一面側の角部3Sと他面側の3Sとに挟まれた部分)には、十分な量の融着部40が存しているため、サイドシール部4は実用上十分な融着強度を有し、おむつ1の着用中にサイドシール4が破れる等の不都合が生じ難い。
【0044】
また、サイドシール部4(融着部40)は、おむつ1の着用状態又は自然状態(収縮状態)において外部から視認し難いという特徴を有している。
図8には、おむつ1の着用時にウエスト開口部8が拡げられた状態における、サイドシール部4(融着部40)が示されている。ウエスト開口部8が拡げられた状態において、サイドシール部4は、通常は
図8(a)に示すように、融着部40が露出した状態となるが、サイドシール部4の外縁4aが外装体3の内方に向かって凸の弧状をなしていること、及び融着部40が従来のサイドシール部(融着部)に比して小さいこと等により、外部から視認し難い。特に、サイドシール部4の外縁4aが外装体3の内方に向かって凸の弧状をなしていることにより、シート31,32の形成材料如何によっては、
図8(b)に示すように、おむつ1の着用時にウエスト開口部8が拡げられた状態においては、腹側部1A側の外装体3の側縁部の角部3Sと背側部1B側の外装体3の側縁部の角部3Sとが接近し、両角部3S,3S間の離間距離が縮まる場合がある。そのため、両角部3S,3S間に位置する融着部40は、該融着部40よりもおむつ1の外方側に位置する、互いに近接した両角部3S,3Sによって、手で触れ難く且つ外部から視認し難い状態となり、それによって、おむつ1の着用感のみならず外観も向上する。
【0045】
尚、おむつ1の着用状態又は自然状態(収縮状態)においてサイドシール部4(融着部40)が外部から視認し難い状態となると、例えばおむつ1の使用後に、着用者である乳幼児からその保護者(例えば母親)がおむつを取り外す際にサイドシール部4を見つけ難く、おむつ1の取り外し作業に手間取るおそれがある。このような、サイドシール部4の視認性の低下に起因する不都合を解消する手段としては、例えば、サイドシール部4を横断するおむつ1の構成部材の色を、サイドシール部4よりも腹側(前側)と背側(後側)とで異ならせる方法が挙げられる。より具体的には例えば、おむつ1の腹側部1A(前見頃)と背側部1B(後見頃)とで、ウエスト部弾性部材5又は外装体3(外層シート31、内層シート32)の色を異ならせる方法が挙げられる。斯かる方法により、色の切り替え部分にサイドシール部4が位置するようになるため、サイドシール部4の目視による視認性が高まり、前記不都合の発生が効果的に防止される。
【0046】
このように、サイドシール部4の融着部40がおむつ1の幅方向の断面視において三日月状又は半月状に形成される理由は、
図6(b)及び
図6(c)(
図7)に示すように、おむつ連続体10の分断予定部分10Cへのレーザー光30の照射中及び照射直後に、不織布からなるおむつ連続体10(分断予定部分10C)が、金属材料からなる支持部材21と押さえ部材24との間に介在配置されているためと推察される。即ち、おむつ連続体10(外層シート31及び内層シート32)を上下から挟持する支持部材21及び押さえ部材24の主たる形成材料である金属材料の方が、シート31,32の主たる形成材料である不織布に比して熱伝導率が高いため、レーザー光30の照射によってシート31,32に発生した熱は、外気によって冷やされると同時に、該シート31,32に接する支持部材21又は押さえ部材24に速やかに吸収されやすいところ、レーザー光30の照射によっておむつ連続体10が分断されて形成された、サイドシール部4を構成する外装体3の側縁部の角部3Sは、該角部3Sに比して熱伝導率の高い支持部材21又は押さえ部材24に接しているため、該角部3に発生した熱は両部材21,24に速やかに吸収され、結果として、該角部3は、融着部40が形成される程の高温にはなり難く、そのため、融着部40の割合が極めて少ない部位となる。一方、外装体3の側縁部の厚み方向の中央部(外装体3の一面側の角部3Sと他面側の3Sとに挟まれた部分の中央部)は、熱伝導率の高い両部材21,24と接していないため、レーザー光30の照射によって該中央部に発生した熱は該中央部に留まって該中央部を溶融させ、結果として、該中央部に融着部40が多く偏在するようになる。
【0047】
従って、融着部40をおむつ1の幅方向の断面視において三日月状又は半月状に形成し前述した作用効果を奏させるようにするためには、本実施態様のように、支持部材21及び押さえ部材24は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の金属材料やセラミックスからなり、且つおむつ連続体10(帯状のシート積層体)を構成する複数枚のシート31,32の少なくとも一部のシート(特に外装体3の外面を形成する外層シート31)は、その一部に樹脂材を含むものであり、具体的には例えば、不織布からなることが好ましい。また、複数枚のシート31の全てのシートに樹脂材が含まれることが好ましい。不織布としては、当該技術分野において通常用いられているものを特に制限無く用いることができる。
【0048】
また、融着部40をおむつ1(シート融着体)の幅方向の断面視において確実に三日月状又は半月状に形成すると共に、サイドシール部4(シール縁部)に実用上十分な融着強度を付与する観点、及びシート融着体を製造するために必要な加工エネルギーを低減させる観点から、レーザー光30が照射されるスリット状の開口部27の幅W(
図6(b)参照。開口部27の、円筒ロール23の周方向に沿った長さ。)に対する、おむつ連続体10(帯状のシート積層体)におけるレーザー光30のスポット(レーザー光30が照射されている部分)の直径φの比(φ/W)は、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは8以下、更に好ましくは7以下、特に好ましくは2以下、より具体的には、好ましくは0.05〜8、更に好ましくは0.1〜7、特に好ましくは0.4〜2である。例えば、スリット状の開口部27の幅Wは0.1〜4.0mmである。
【0049】
ところで、前述したように、おむつ連続体10(シート積層体)における開口部27と重なる部分(分断予定部分10C)には、支持部材21と加圧ベルト24(押さえ部材)とに挟まれることにより発生する加圧力は発生しないが、該部分10Cは該加圧力が事実上影響する部分であるため、融着部40が形成される。融着部40がより安定的に形成されるようにするためには、両部材21,24での挟持による加圧力をより高める工夫が有効である。
【0050】
図9には、融着部40のより安定的な形成を可能にすべく、レーザー式接合装置20の一部を改良した変形例が示されている。
図9に示す変形例においては、おむつ連続体10が配される支持部材21の外面21aにおけるスリット状の開口部27の近傍(開口部27の縁部から35mm以内の領域)に、周辺部よりも該外面21a上のおむつ連続体10側(加圧ベルト24側)に突出した突出部45が形成されている。更に説明すると、突出部45は、支持部材21の外面21aにおける、複数の開口部27それぞれの長手方向(支持部材21の幅方向)に延びる一対の開口縁部それぞれに形成されている。各突出部45は、開口部27に沿ってその長手方向の全長に亘って連続しており、平面視して矩形形状を有している。各突出部45の突出高さ45h(周辺部からの突出高さ)は、該突出部45の全長に亘って変化せずに一定となっている。突出部45の頂部は、平坦でも良く、所定の曲率を有する曲面であっても良く、斯かる曲面は、円筒状の支持部材21の外面21aと平行であっても良い。
【0051】
このように、支持部材21の外面21aにおける開口部27の近傍(開口縁部)に突出部45を形成し、開口部27の近傍とその周辺部とで段差を設けることにより、該段差における相対的に高い位置にある突出部45の頂部に、おむつ連続体10における前記分断予定部分近傍が位置するようになるため、該開口部近傍対応部の前記加圧力が局所的に増加する。そのため、おむつ連続体10における局所的な加圧力の低下が効果的に防止され、おむつ連続体10の溶断がより一層安定的に行われるようになり、最終的に得られるおむつ1(シート融着体)におけるサイドシール部4(シール縁部)の融着強度が一層向上する。
【0052】
斯かる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、突出部45の突出高さ45h(
図9参照)は、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、好ましくは10mm以下、更に好ましくは8mm以下、より具体的には、好ましくは0.1mm以上10mm以下、更に好ましくは1mm以上8mm以下である。
また、突出部45の幅45w(
図9参照。支持部材21の幅方向と直交する方向の長さ。)は、好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上、そして、好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下、より具体的には、好ましくは1mm以上20mm以下、更に好ましくは2mm以上10mm以下である。
【0053】
図10には、
図1に示すレーザー式接合装置の他の変形例が示されている。この変形例については、前述したレーザー式接合装置20と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、レーザー式接合装置20についての説明が適宜適用される。
【0054】
図1に示すレーザー式接合装置20は、中空の円筒ロール23の中空部に設けられた照射ヘッド35から、該円筒ロール23の周面部を形成する支持部材21に向けて、レーザー光30を照射するように構成されていたのに対し、
図10に示すレーザー式接合装置20Aは、ベルト式加圧装置26の加圧ベルト24Aに囲まれた空間内に設けられた照射ヘッド35から、加圧ベルト24Aに向けて、レーザー光30を照射するように構成されている。更に説明すると、レーザー式接合装置20Aは、矢印A方向に回転駆動される円筒ロール23A(押さえ部材)と、無端状の加圧ベルト24Aを備えたベルト式加圧装置26とを備え、円筒ロール23Aが押さえ部材、加圧ベルト24Aが、レーザー光30が通過可能な光通過部(図示せず)を有する支持部材21である。円筒ロール23Aは中実の円筒状(環状)を有し、その周面部23Aaは平滑である。加圧ベルト24A(支持部材21)の図示しない光通過部は、レーザー式接合装置20における支持部材21(円筒ロール23の周面部)の開口部27と同様に、平面視して矩形形状のスリット状の開口部であり、その長手方向を加圧ベルト24Aの幅方向(加圧ベルト24Aが架け渡された3本のロール25a,25b,25cそれぞれの回転軸と平行な方向)に一致させて、加圧ベルト24Aの長さ方向に所定間隔を置いて複数形成されている。円筒ロール23A(押さえ部材)としては、レーザー式接合装置20における支持部材21と同様のものを用いることができ、また、加圧ベルト24A(支持部材21)としては、レーザー式接合装置20における押さえ部材としての加圧ベルト24と同様のものを用いることができる。
【0055】
レーザー式接合装置20Aを用いたパンツ型使い捨ておむつの製造方法においては、
図10に示すように、おむつ連続体10を、図示しない案内ロール等によって、その他方の面10bが円筒ロール23A(押さえ部材)の周面部23Aaと当接するように、該周面部23Aa上に導入し、円筒ロール23Aに巻き掛けられるようにして連続搬送しつつ、その一方の面10aを、レーザー光30が通過可能なスリット状の図示しない開口部(光通過部)を有する、加圧ベルト24A(支持部材21)の外面に当接させると共に、他方の面10bを円筒ロール23Aの周面部23Aaに押し付け、その状態(加圧状態)のおむつ連続体10に対して、加圧ベルト24A側から該開口部を介してレーザー光30を照射することにより、おむつ連続体10を分断するのと同時に、その分断によって生じた前記加圧状態にある複数枚のシートの切断縁部どうしを融着させて、一対のサイドシール部4,4(シール縁部)を有する外装体3(シート融着体)を具備するパンツ型使い捨ておむつ1(シート融着体)を連続的に製造する(
図2参照)。
【0056】
本発明に係るレーザー光について説明すると、シート積層体に照射するレーザー光としては、シート積層体を構成するシートに吸収され該シートを発熱させる波長のレーザー光を用いる。ここで、「シート積層体を構成するシート」は、シート積層体の一方の面(支持部材との当接面)を構成するシート(例えば前記実施態様では外層シート31)に限定されず、シート積層体を構成するシートであればどれであっても良い。シート積層体に照射するレーザー光が、該シート積層体を構成する個々のシートについて、該シートに吸収されて該シートを発熱させる波長であるか否かは、シートの材質と、使用するレーザー光の波長との関係で決まる。シート積層体を構成するシートが、前記実施態様のように、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品(サニタリー用品)の製造に汎用される合成樹脂製の不織布やフィルムである場合、レーザー光としては、CO
2レーザー、YAGレーザー、LDレーザー(半導体レーザー)、YVO4レーザー、ファイバーレーザー等を用いることが好ましい。また、シート積層体を構成するシートが、合成樹脂として、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等を含む場合、該シートに吸収され該シートを良好に発熱させ得る波長としては、例えば、8.0〜15μmを用いることが好ましく、高出力のレーザー装置が存在するCO
2レーザーの発振波長の9.0〜11.0μmを用いることが特に好ましい。レーザー光のスポット径、レーザー出力等は、シート積層体を構成するシートの材質や厚み等を考慮して適宜選択することができる。
【0057】
本発明で製造されるシート融着体は、そのまま、あるいは他の部材と一体化されて各種の物品として用いることができる。各種の物品としては、前述したパンツ型使い捨ておむつ以外の他の吸収性物品として、例えば、生理用ナプキン、失禁パッド等が挙げられ、また、吸収性物品以外には、床面清掃用のシート、身体清拭用のシート、身体加温用の発熱具等が挙げられる。例えば、吸収性物品を構成するシート融着体としては、a)吸収性物品の肌当接面を形成する表面シートと非肌当接面を形成する裏面シートとが、吸収体の周縁部より延出した部分で接合されているもの、b)生理用ナプキンにおける、表面シートとウイング部形成用シート、ウイング部形成用シートと裏面シート、表面シートとウイング部形成用シートと裏面シート、が融着したもの、等が挙げられる。
【0058】
特に、本発明で製造されるシート融着体は、シール縁部の柔軟性、肌触りに優れていることから、吸収性物品が生理用ナプキンである場合、シート融着体を製造する工程を、吸収体を介在させた表面シートと裏面シートとを生理用ナプキンの外周に沿って接合する外周シール部形成に用いても良い。また、シート融着体を製造する工程を、吸収体を介在させた表面シートと裏面シートとを、生理用ナプキンにおける本体部分(ウイングを除く部分)の外周に沿って接合する外周シール部形成に用いても良い。
【0059】
ところで、前記実施態様における光通過部は、
図6(b)に示す開口部27の如き、支持部材を厚み方向に貫通するスリット状の開口部であったが、本発明に係る光通過部はこれに限定されず、例えば
図11(a)に示すように、支持部材21の端部(外縁)21sの近傍(支持部材が存していない部分)を光通過部として利用することができる。その場合、シート積層体10(おむつ連続体)は、支持部材21と加圧ベルト24(押さえ部材)とに挟まれた部分10Aと、支持部材21に当接していない部分10Bとを有し、部分10A及びその近傍は、レーザー光の照射による分断前からその厚み方向に加圧(圧縮)された状態となり、部分10Bにおける、部分10Aの近傍を除く部分(支持部材21の端部21sから所定距離以上離間した部分)は、非加圧(非圧縮)状態となる。このような、レーザー光が照射される部分を基準として一方側のみが加圧された、片側加圧の状態のシート積層体10に対して、
図11(a)に示すように、レーザー光30を支持部材21の端部21sの近傍に照射して、おむつ連続体10を部分10A側と部分10B側とに分断した場合、部分10A側のシートの切断縁部どうしは、分断前から加圧状態にあるため融着するが、部分10B側のシートの切断縁部どうしは、分断前から非加圧状態にあるため融着しない。ここで、「支持部材21の端部(外縁)21sの近傍」は、支持部材21によってシート積層体10(おむつ連続体)が加圧状態となっている領域であり、より具体的には、支持部材21の端部21sから好ましくは2mm以内、更に好ましくは1mm以内の領域である。
【0060】
図11(a)に示すように、光通過部が支持部材21の端部21sの近傍であり、片側加圧の状態のシート積層体10(おむつ連続体)に対して該光通過部を介してレーザー光30を照射してこれを分断する場合、融着部40をシート融着体(おむつ1)の幅方向の断面視において確実に三日月状又は半月状に形成すると共に、サイドシール部4(シール縁部)に実用上十分な融着強度を付与する観点、及びシート融着体を製造するために必要な加工エネルギーを低減させる観点から、支持部材21の端部21sからシート積層体10におけるレーザー光30のスポット(レーザー光30が照射されている部分)の中心までの距離W’に対する、該スポットの直径φの比(φ/W’)は、好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.8以上、そして、好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは8以下、より具体的には、好ましくは0.1〜16、更に好ましくは0.2〜14、特に好ましくは0.8〜8である。
【0061】
図12には、
図11(a)に示す如き、いわゆる片側加圧の状態の帯状のシート積層体に対してレーザー光を照射する態様を利用した例として、生理用ナプキンの製造方法の一実施態様が示されている。
図12に示す生理用ナプキンの製造方法においては、帯状のシート積層体10を、その一方の面10aを支持部材21Aに当接させつつ矢印A方向に搬送させ、シート積層体10の他方の面(図示せず)に、加圧ベルト24(
図1参照)の如き押さえ部材(図示せず)を押し付け、その状態の帯状のシート積層体10に対して、支持部材21A側から光通過部を介してレーザー光を照射する。支持部材21Aの平面視形状は、製造目的物である生理用ナプキンの平面視形状と同じであり、複数の支持部材21Aが、各支持部材21Aの長手方向をシート積層体10の搬送方向Aに一致させて、搬送方向Aに所定間隔W1を置いて配されている。このように配された複数の支持部材21Aに帯状のシート積層体10を当接させつつ、支持部材21A側から各支持部材21Aの端部(外縁)21sに沿って帯状のシート積層体10にレーザー光を照射することにより、帯状のシート積層体10から1つの枚葉の生理用ナプキン(あるいはその前駆体)を切り分けることができる。その場合、搬送方向Aに隣接する2つの支持部材21A,21Aの間隔W1(
図12中、点線で囲まれた部分)は、
図5に示す開口部27と同様に光通過部として機能し、間隔W1を挟んで搬送方向Aの一方側のシートの切断縁部どうし及び他方側のシートの切断縁部どうしの何れも、その分断前から支持部材21Aと押さえ部材(図示せず)とに挟まれて加圧状態にあるため融着する。これに対し、帯状のシート積層体10における、各支持部材21Aの端部21sの近傍で且つ間隔W1が形成されていない部分(近傍に他の支持部材21Aの端部21sが存していない部分)は、
図11(a)に示す如き片側加圧の状態となっているため、
図12に示す如き平面視において支持部材21Aと重なっている側のシートの切断縁部どうしは、分断前から加圧状態にあるため融着するが、支持部材21Aと重なっていない側の切断縁部どうしは、分断前から非加圧状態にあるため融着しない。こうして切り分けられた枚葉の生理用ナプキンにおいては、該生理用ナプキン(シート積層体10)を構成する複数枚のシートどうしが、該生理用ナプキンの外周において互いに融着(接合)されており、外周シール部が形成されている。
【0062】
また、前記実施態様における押さえ部材としての加圧ベルト24(
図6(b)参照)は、
図11(b)に示すように、支持部材21側の開口部27(光通過部)に対応する部分に、開口部29を有していても良い。開口部29は、開口部27と平面視形状及びその寸法が同じである。このように、押さえ部材における、シート積層体10を挟んで開口部27(光通過部)と対向する部分に、開口部29が設けられていると、レーザー光の照射によって発生するガスの効率的な除去、押さえ部材の汚れ防止、押さえ部材の過熱抑制、押さえ部材の冷却促進、融着部40の冷却促進、等の効果が期待できる。
図11(b)に示すように、開口部27を介して帯状のシート積層体10にレーザー光30を照射してこれを分断した場合、開口部27を挟んで一方側のシートの切断縁部どうし及び他方側のシートの切断縁部どうしの何れも、その分断前から加圧状態にあるため融着する。
図10に示す円筒ロール23A(押さえ部材)も、その周面部23Aaにおける、加圧ベルト24A(支持部材21)側の図示しない開口部(光通過部)に対応する部分に、該開口部(光通過部)と平面視形状及び寸法が同じ開口部を有していても良い。
【0063】
以上、本発明をその実施態様に基づいて説明したが、本発明は、前記実施態様に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、シート積層体は、
図6(a)に示す如き4枚のシートが重ねられたものの他、2枚、3枚又は5枚以上のシートが重ねられたものであっても良い。また、おむつ連続体10(シート積層体)を円筒ロール23(支持部材21)に皴やたるみを発生させずに巻き掛けるために、レーザー式接合装置20に、おむつ連続体10のテンションを制御する機構を具備させても良い。また、レーザー式接合装置20は、押さえ部材24におけるおむつ連続体10との当接面に付着した樹脂等を除去するための機構を備えていても良い。また、前記実施態様では、円筒ロール上でシール縁部を形成する工程を実施していたが、斯かる工程は、円筒ロール上の他、任意の曲面上や平面上でも実施可能である。また、おむつ連続体10を加圧状態とするための加圧手段(加圧方法)は、前述した、支持部材21と加圧ベルト24(押さえ部材)とによるおむつ連続体10の挟持に制限されず、例えば、支持部材21側からのおむつ連続体10の吸引、支持部材21とは反対側(押さえ部材側)からのおむつ連続体10へのエアー吹き付け、おむつ連続体10の支持部材21へのテンション調整、静電気あるいは磁力を用いた加圧、等が挙げられる。前述した一の実施態様のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【0064】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記(シート融着体の製造方法、シート融着体、吸収性物品の製造方法)を開示する。
【0065】
<1>
複数枚のシートの縁部が重なった状態で融着したシール縁部を有するシート融着体の製造方法であって、
前記複数枚のシートの少なくとも一部のシートは樹脂材を含み、
複数枚のシートが重ねられた帯状のシート積層体の一方の面を、レーザー光が通過可能な光通過部を有する支持部材に当接させ、加圧状態となった該帯状のシート積層体に対して、該支持部材側から該光通過部を介して、該シート積層体を構成するシートに吸収され該シートを発熱させる波長のレーザー光を照射することにより、該帯状のシート積層体を分断するのと同時に、その分断によって生じた前記加圧状態にある複数枚のシートの切断縁部どうしを融着させて前記シール縁部を形成する工程を有する、シート融着体の製造方法。
【0066】
<2>
前記光通過部は、前記支持部材を厚み方向に貫通するスリット状の開口部からなる前記<1>記載のシート融着体の製造方法。
<3>
スリット状の前記開口部の幅Wに対する、前記シート積層体における前記レーザー光のスポットの直径φの比(φ/W)は、0.05以上8以下である前記<2>記載のシート融着体の製造方法。
<4>
スリット状の前記開口部の幅Wに対する、前記シート積層体における前記レーザー光のスポットの直径φの比(φ/W)は、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは8以下、更に好ましくは7以下、特に好ましくは2以下、より具体的には、好ましくは0.05〜8、更に好ましくは0.1〜7、特に好ましくは0.4〜2である前記<2>記載のシート融着体の製造方法。
<5>
前記シート積層体が配される前記支持部材の外面における前記開口部の近傍に、周辺部よりも該外面上の該シート積層体側に突出した突出部が形成されている前記<2>又は<3>記載のシート融着体の製造方法。
<6>
前記光通過部は、前記支持部材の端部の近傍であり、該支持部材の端部から前記シート積層体における前記レーザー光のスポットの中心までの距離W’に対する、該スポットの直径φの比(φ/W’)は、0.1以上16以下である前記<1>記載のシート融着体の製造方法。
<7>
前記光通過部は、前記支持部材の端部の近傍であり、該支持部材の端部から前記シート積層体における前記レーザー光のスポットの中心までの距離W’に対する、該スポットの直径φの比(φ/W’)は、好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.8以上、そして、好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは8以下、より具体的には、好ましくは0.1〜16、更に好ましくは0.2〜14、特に好ましくは0.8〜8である前記<1>記載のシート融着体の製造方法。
【0067】
<8>
前記複数枚のシートの一部は、熱融着性の合成樹脂を含むものであり、不織布、フィルム、不織布とフィルムとのラミネートシート等からなり、好ましくは複数枚のシートの全てのシートに樹脂材を含む前記<1>〜<7>の何れか1に記載のシート融着体の製造方法。
<9>
前記支持部材に当接している前記帯状のシート積層体の他方の面に、押さえ部材を押し付け、その状態の該帯状のシート積層体に対して、前記支持部材側から前記光通過部を介して前記レーザー光を照射する前記<1>〜<8>の何れか1に記載のシート融着体の製造方法。
<10>
前記支持部材及び前記押さえ部材の材料は、金属材料、樹脂又はセラミックスから選ばれる前記<9>記載のシート融着体の製造方法。
<11>
前記シート積層体は片側加圧の状態とされており、
前記片側加圧の状態のシート積層体は、前記支持部材と前記押さえ部材とに挟まれた部分と、該支持部材に当接していない部分とを有し、該挟まれた部分及びその近傍は、レーザー光の照射による分断前からその厚み方向に加圧(圧縮)された状態となり、該支持部材に当接していない部分における、該挟まれた部分の近傍を除く部分(該支持部材の端部から所定距離以上離間した部分)は、非加圧(非圧縮)状態となる前記<9>又は<10>記載のシート融着体の製造方法。
<12>
前記片側加圧の状態のシート積層体に対してレーザー光を照射して、該シート積層体を、前記支持部材と前記押さえ部材とに挟まれた部分側と、該支持部材に当接していない部分側とに分断した場合、該挟まれた部分側のシートの切断縁部どうしは、分断前から加圧状態にあるため融着するが、該支持部材に当接していない部分側のシートの切断縁部どうしは、分断前から非加圧状態にあるため融着しない前記<11>記載のシート融着体の製造方法。
<13>
前記片側加圧の状態のシート積層体に対して前記光通過部を介してレーザー光を照射してこれを分断する前記<11>又は<12>記載のシート融着体の製造方法。
【0068】
<14>
前記<1>〜<13>の何れか1に記載の製造方法により製造されたシート融着体であって、
前記シール縁部の延びる方向と直交する方向の断面視において、前記分断によって生じた該シール縁部の外縁が前記シート融着体の内方に向かって凸の弧状をなし、且つ該外縁を含んでそれよりも前記シート融着体の内方に、該シート融着体を構成するシートどうしの融着部が形成され、該融着部は、該シート融着体の厚み方向の中央部が両端部に比して幅が広いシート融着体。
【0069】
<15>
前記融着部は、その断面視において三日月状又は半月状に形成されている前記<14>記載のシート融着体。
【0070】
<16>
前記<1>〜<13>の何れか1に記載の製造方法により前記シート融着体を製造する工程を含む、吸収性物品の製造方法。
【0071】
<17>
前記吸収性物品は、吸収性本体と、該吸収性本体の非肌当接面側に配されて該吸収性本体を固定している外装体とを備え、且つ腹側部における該外装体の両側縁部と背側部における該外装体の両側縁部とが接合されて一対のサイドシール部が形成されているパンツ型使い捨ておむつであり、
帯状の前記外装体をその幅方向に折り畳み、折り畳まれた該外装体の所定箇所に前記レーザー光を照射することにより、帯状の該外装体を分断するのと同時に前記サイドシール部を形成して前記シート融着体とする、前記<16>記載の吸収性物品の製造方法。
<18>
一対のニップロール間に帯状の外層シート及び帯状の内層シートを送り込んで加圧することにより、両シート間に複数本の弾性部材が伸長状態で配された帯状の前記外装体を形成する工程を含む前記<17>記載の吸収性物品の製造方法。
<19>
一対のニップロールの間に、ウエスト部弾性部材、胴回り部弾性部材及びレッグ部弾性部材を伸長状態で挟み込んだ帯状の外層シート及び帯状の内層シートを送り込んで加圧することにより、両シート間に複数本の弾性部材が伸長状態で配された帯状の前記外装体を形成する工程を含む前記<17>記載の吸収性物品の製造方法。
<20>
吸収性物品連続体をレーザー光の照射により個々に分断する際の、その分断予定部分及びその近傍における互いに重なり合う2枚のシート間は、レーザー光の照射前において、接着剤等により接合されている前記<16>〜<19>の何れか1に記載の吸収性物品の製造方法。
<21>
レーザー光の照射による分断によって生じたシートの切断縁部は、レーザー光の照射終了後から前記支持部材の接触により冷却されて固化し、該切断縁部の形成材料(繊維等)が溶融一体化した融着部となる前記<16>〜<20>の何れか1に記載の吸収性物品の製造方法。
<22>
前記吸収性物品は、吸収性物品の肌当接面を形成する表面シートと非肌当接面を形成する裏面シートとが、吸収体の周縁部より延出した部分で接合されているものである、前記<16>〜<21>の何れか1に記載の吸収性物品の製造方法。
<23>
前記吸収性物品は生理用ナプキンであり、該生理用ナプキンにおける表面シートとウイング部形成用シート、又はウイング部形成用シートと裏面シート、又は表面シートとウイング部形成用シートと裏面シート、が融着したものである、前記<16>〜<21>の何れか1に記載の吸収性物品の製造方法。
【0072】
<24>
吸収性本体と、該吸収性本体の非肌当接面側に配されて該吸収性本体を固定している外装体とを備え、且つ腹側部における該外装体の両側縁部と背側部における該外装体の両側縁部とが接合されて一対のサイドシール部が形成されている吸収性物品であって、
前記サイドシール部は、帯状の前記外装体をその幅方向に折り畳み、折り畳まれた該外装体の所定箇所にレーザー光を照射することにより、帯状の該外装体を分断するのと同時に形成されており、
前記サイドシール部の外縁が前記外装体の内方に向かって凸の弧状をなしている吸収性物品。
<25>
前記サイドシール部は、シートの形成材料が溶融固化してなる融着部を有し、該融着部は、前記吸収性物品の幅方向の断面視において三日月状又は半月状に形成されている前記<24>記載の吸収性物品。
<26>
前記吸収性物品はウエスト開口部を有し、該吸収性物品の着用時に該ウエスト開口部が拡げられた状態においては、前記腹側部側の前記外装体の側縁部の角部と前記背側部側の該外装体の側縁部の角部とが接近し、両角部間の離間距離が縮まる前記<24>又は<25>記載の吸収性物品。
<27>
前記吸収性物品は、ウエストギャザーを形成するウエスト部弾性部材を有し、前記腹側部(前見頃)と前記背側部(後見頃)とで、該ウエスト部弾性部材の色が異なる前記<24>〜<26>の何れか1に記載の吸収性物品。
<28>
前記腹側部(前見頃)と前記背側部(後見頃)とで、前記外装体(外層シート、内層シート)の色が異なる前記<24>〜<27>の何れか1に記載の吸収性物品。
【0073】
<29>
前記<1>〜<13>の何れか1に記載の製造方法に用いられるレーザー式接合装置であって、
回転駆動される円筒状の支持部材を備えた中空の円筒ロールと、無端状の加圧ベルトを備えたベルト式加圧装置と、該円筒ロールの中空部に該円筒ロールの周面部を形成する該支持部材に向けてレーザー光を照射する照射ヘッドとを備え、
前記円筒ロールは、前記支持部材を厚み方向に貫通するスリット状の開口部を有しているレーザー式接合装置。
【0074】
<30>
前記<1>〜<13>の何れか1に記載の製造方法に用いられるレーザー式接合装置であって、
回転駆動される円筒ロールと、無端状の加圧ベルトを備えたベルト式加圧装置と、該ベルト式加圧装置の該加圧ベルトに囲まれた空間内に設けられたレーザー光の照射ヘッドとを備え、
前記加圧ベルトは、平面視して矩形形状のスリット状の開口部を有するレーザー式接合装置。
<31>
前記無端状の加圧ベルトは、前記円筒ロールと同速度で移動する前記<30>記載のレーザー式接合装置。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0076】
〔実施例1〕
前述した方法に従ってシート積層体に対してレーザー光を照射することにより、シール縁部を有するシート融着体を製造した。シート積層体として、下記の3種類のシート積層体1〜3を用いた。使用したレーザー式接合装置は、静止状態のシート積層体に対してレーザー光を照射する点以外は、
図1に示すレーザー式接合装置20と基本的に同様に構成されており、該レーザー式接合装置において、支持部材21は、厚み2mmのステンレス鋼(SUS304)からなり、押さえ部材24は、厚み0.75mmのステンレス鋼(SUS304H)からなり、支持部材におけるスリット状の開口部27(光通過部)の幅W(
図6(b)参照)0.5mm、支持部材21と加圧部材24とによるシート積層体への加圧力(面圧)150kPa、加圧部分における、レーザー光による分断方向(シート積層体の幅方向)の長さ200mmであった。レーザー光としては、CO
2レーザーを用い、レーザー出力24Wとした。レーザー光の走査速度は、レーザー光が照射される領域のエネルギー密度D(単位:J/mm
2)が一定になるように変えた。エネルギー密度Dは、照射されたレーザー光のエネルギーを照射領域の面積で割った値であり、下記式(1)によって算出される。式(1)中、Pはレーザー出力(W)、φはシート積層体におけるレーザー光のスポットの直径(mm)、vはレーザー光の走査速度(mm/s)である。エネルギー密度Dは、シート積層体の種類に応じて変更し、下記シート積層体1及び2に対しては0.40J/mm
2、下記シート積層体3に対しては0.80J/mm
2とした。エネルギー密度Dは、下記式(1)から明らかなようにレーザー光のスポットの直径φの変化に応じて変化するため、レーザー光の走査速度を適宜変更することにより、エネルギー密度Dが一定となるようにした。レーザー光の走査速度は、下記シート積層体1及び2に対してスポットの直径φを0.20mm、φ1.00mm、φ3.50mmと変えた場合は、走査速度300mm/s、59mm/s、14mm/sとし、下記シート積層体3に対してスポットの直径φを0.20mm、φ1.00mm、φ3.50mmと変えた場合は、走査速度150mm/s、29mm/s、6mm/sとした。
【0077】
【数1】
【0078】
・シート積層体1:ポリプロピレン製の合成繊維からなる坪量18g/m
2のスパンボンド不織布を4枚積層し、1枚目と2枚目との間及び3枚目と4枚目との間それぞれに、糸状の弾性部材をホットメルト型接着剤で固定したものを、シート積層体1とした。シート積層体1において、ホットメルト型接着剤の塗布坪量15g/m
2とし、弾性部材は、その長手方向をシート積層体1の長手方向に一致させて、該長手方向と直交するシート積層体1の幅方向(レーザー光による分断方向)に間隔6mmを置いて複数本固定した。
・シート積層体2:弾性部材を用いずにホットメルト型接着剤のみを塗布した以外はシート積層体1と同じ構成のものを、シート積層体2とした。
・シート積層体3:坪量3.9g/m
2の透明なポリエチレンフィルムを2枚積層したものを、シート積層体3とした。
【0079】
〔実施例2〜4及び参考例1〕
スリット状の開口部27(光通過部)の幅W、レーザー光のスポットの直径φを適宜変更した以外は、実施例1と同様。
【0080】
〔実施例5〕
図11(a)に示すように、片側加圧の状態の帯状のシート積層体に対してレーザー光を照射した以外は、実施例1と同様。
【0081】
〔実施例6〕
図11(b)に示すように、加圧ベルト24(押さえ部材)として、支持部材21側の開口部27(光通過部)に対応する部分に開口部29を有しているものを用いた以外は、実施例1と同様。
【0082】
〔比較例1〕
非加圧状態のシート積層体に対してレーザー光を照射した。
【0083】
〔評価〕
レーザー光照射後のシート積層体(シート融着体)について、融着性、融着強度をそれぞれ下記方法により評価した。その結果を下記表1に示す。尚、各実施例において、レーザー光照射後のシート積層体(シート融着体)における融着部(シール縁部)は、該融着部の延びる方向(即ちレーザー光による分断方向あるいはシート積層体の幅方向)と直交する方向(該シート積層体の長手方向)の断面視において、該シート積層体の厚み方向の中央部が両端部(上端部及び下端部)に比して幅が広く、三日月状又は半月状に形成されていた。
【0084】
<融着性の評価方法>
レーザー光照射後のシート積層体(シート融着体)におけるレーザー光による分断部分を目視観察し、その分断によって生じたシートの切断縁部どうしが融着している場合を○、融着していない場合を×とした。より具体的には、レーザー光照射後のシート積層体(シート融着体)において、レーザー光の照射部分(レーザー光の照射時にスリット状の開口部と重なっていた部分)を基準として、該シート積層体の搬送方向の一方側及び他方側それぞれについて融着性の評価を行い、両側が融着している場合を○/○、片側(レーザー光の照射時に加圧状態にあった側)のみ融着している場合を○/×、両側が融着していない場合を×/×とした。
【0085】
<融着強度の評価方法>
レーザー光照射後のシート積層体(シート融着体)から、レーザー光による分断部分を30mm幅で切り出して測定サンプルとし、この測定サンプルの融着強度(シール強度)を、引張試験機(エーアンドデイ社のテンシロン「RTCシリーズ」)を用いて測定する。この測定の際には、測定サンプルの長さ方向(シール縁部の延びる方向)の一端側を、該測定サンプルを構成する複数枚(シート積層体1及び2は4枚、シート積層体3は2枚)のシートの半数(シート積層体1及び2の場合は2枚・2枚、シート積層体3の場合は1枚・1枚)で剥離されるように、該測定サンプルの融着されていない2つの摘み部を、それぞれ、引張試験機のチャックに挟んで、180度反対方向に引っ張る(T字剥離)。その際、引張速度(チャック間距離の拡大速度)300mm/minで測定を行い、最大強度を求める。測定はn=20回行い、その最大強度の平均値を融着強度(単位:N/30mm)とする。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、比較例1で得られたレーザー光照射後のシート積層体は、レーザー光の照射による分断によって生じたシートの切断縁部どうしが融着しなかったのに対し、各実施例で得られたシート融着体は、該シートの切断縁部どうしが融着して融着部(シール縁部)を形成し、且つ該融着部が実用上十分な融着強度を有するものであった。また、参考例1は、シート積層体1を用いた場合に融着部が形成されなかったところ、その理由は、レーザー光が照射されるスリット状の開口部の幅Wに対する、シート積層体におけるレーザー光のスポットの直径φの比(φ/W)が0.05未満であり、各実施例のφ/Wに比して小さいため、レーザー光の照射による分断によって生じた複数枚のシートの切断縁部どうしが、その分断前から厚み方向に加圧された状態になかったためと推察される。このことから、実用上十分な融着強度を有するシート融着体をより確実に得るためには、φ/Wを0.1以上に設定することが好ましいことがわかる。