特許第6140585号(P6140585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140585
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】内歯車加工機械及び内歯車加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/16 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B23F5/16
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-193804(P2013-193804)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-58505(P2015-58505A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】三菱重工工作機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼瀬 吉言
(72)【発明者】
【氏名】増尾 光一
(72)【発明者】
【氏名】越智 政志
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第3399599(US,A)
【文献】 特開平1−159126(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0268523(US,A1)
【文献】 特開2011−42016(JP,A)
【文献】 米国特許第4066001(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク回転軸周りに回転可能な被加工内歯車と、カッタ回転軸周りに回転可能な歯車状カッタとを、噛み合わせて同期回転させながら、前記歯車状カッタに対して切り込み及び送りを与えることにより、前記被加工内歯車を前記歯車状カッタによって歯切りする内歯車加工機械において、
前記歯車状カッタを、ワーク回転軸方向と直交する切り込み軸方向に移動させるカッタ切り込み手段と、
前記歯車状カッタを、切り込み軸方向及びカッタ回転軸方向と直交する横軸方向に移動させるカッタ横移動手段と、
前記歯車状カッタを、ワーク回転軸方向と平行となる送り軸方向に移動させるカッタ送り手段と、
前記カッタ回転軸を、切り込み軸方向に延在するカッタ旋回軸周りに旋回させて、当該カッタ回転軸に対して、前記ワーク回転軸との間における軸交差角を与える旋回手段と、
前記軸交差角が与えられた前記カッタ回転軸における、横軸及び送り軸を含んだ第1平面に対する傾斜角を検出する検出手段とを備え、
歯切り加工に先立って、前記カッタ切り込み手段前記カッタ横移動手段と前記カッタ送り手段とによって、前記歯車状カッタを、前記検出手段が検出した前記傾斜角に応じて、水平面内において平行移動して、前記歯車状カッタにおける前記被加工内歯車との噛み合い位置を、当該歯車状カッタの周方向にずらす
ことを特徴とする内歯車加工機械。
【請求項2】
請求項1に記載の内歯車加工機械において、
前記歯車状カッタを円筒状に形成し、
前記カッタ回転軸が平行移動した前記歯車状カッタにおける噛み合い位置に、逃げ角が与えられる
ことを特徴とする内歯車加工機械。
【請求項3】
ワーク回転軸周りに回転可能な被加工内歯車と、カッタ回転軸周りに回転可能な歯車状カッタとを、噛み合わせて同期回転させながら、前記歯車状カッタに対して、ワーク回転軸方向と直交する切り込み軸方向への切り込みと、ワーク回転軸方向と平行となる送り軸方向への送りとを与えることにより、前記被加工内歯車を前記歯車状カッタによって歯切りするのに先立って、
前記カッタ回転軸を旋回させて、当該カッタ回転軸に対して、前記ワーク回転軸との間における軸交差角を与え、
前記軸交差角が与えられた前記カッタ回転軸における、切り込み軸方向及びカッタ回転軸方向と直交する横軸と、送り軸とを含んだ第1平面に対する傾斜角を検出し、
前記歯車状カッタを、前記傾斜角に応じて、水平面内において平行移動して、前記歯車状カッタにおける前記被加工内歯車との噛み合い位置を、当該歯車状カッタの周方向にずらす
ことを特徴とする内歯車加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピニオンカッタの傾きを相殺して、内歯車への歯切り加工を行うことができる内歯車加工機械及び内歯車加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ピニオンカッタを用いて、歯車をワークに創成歯切りするものとして、歯車加工機械が提供されている。このような歯車加工機械は、ピニオンカッタと同じく歯切り用工具となるホブでは加工することが困難となる内歯車等のワークを歯切りする際に使用されるものであって、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−218100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の歯車加工機械においては、ワークを歯切りする際に、ピニオンカッタをカッタ回転軸周りに回転させることになるが、そのカッタ回転軸が、機械の組み付け誤差等の要因から、意図しない方向に傾斜してしまうことがある。このように、ピニオンカッタの回転中心となるカッタ回転軸が、意図しない方向に傾斜した状態で、歯切り加工を行うと、加工精度の低下を招いてしまう。
【0005】
また、上記問題を解決するため、カッタ回転軸の傾斜角を調整することができる傾斜角調整機構を、歯車加工機械に設けることも考えられるが、機械の構成を複雑なものとするため、得策ではないと考えられる。
【0006】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、カッタ回転軸に生じた傾斜角を、既存の構成を用いて打ち消して、高精度な加工を行うことができる内歯車加工機械及び内歯車加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る内歯車加工機械によれば、
ワーク回転軸周りに回転可能な被加工内歯車と、カッタ回転軸周りに回転可能な歯車状カッタとを、噛み合わせて同期回転させながら、前記歯車状カッタに対して切り込み及び送りを与えることにより、前記被加工内歯車を前記歯車状カッタによって歯切りする内歯車加工機械において、
前記歯車状カッタを、ワーク回転軸方向と直交する切り込み軸方向に移動させるカッタ切り込み手段と、
前記歯車状カッタを、切り込み軸方向及びカッタ回転軸方向と直交する横軸方向に移動させるカッタ横移動手段と、
前記歯車状カッタを、ワーク回転軸方向と平行となる送り軸方向に移動させるカッタ送り手段と、
前記カッタ回転軸を、切り込み軸方向に延在するカッタ旋回軸周りに旋回させて、当該カッタ回転軸に対して、前記ワーク回転軸との間における軸交差角を与える旋回手段と、
前記軸交差角が与えられた前記カッタ回転軸における、横軸及び送り軸を含んだ第1平面に対する傾斜角を検出する検出手段とを備え、
歯切り加工に先立って、前記カッタ切り込み手段前記カッタ横移動手段と前記カッタ送り手段とによって、前記歯車状カッタを、前記検出手段が検出した前記傾斜角に応じて、水平面内において平行移動して、前記歯車状カッタにおける前記被加工内歯車との噛み合い位置を、当該歯車状カッタの周方向にずらす
ことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る内歯車加工機械によれば、
前記歯車状カッタを円筒状に形成し、
前記カッタ回転軸が平行移動した前記歯車状カッタにおける噛み合い位置に、逃げ角が与えられる
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る内歯車加工方法によれば、
ワーク回転軸周りに回転可能な被加工内歯車と、カッタ回転軸周りに回転可能な歯車状カッタとを、噛み合わせて同期回転させながら、前記歯車状カッタに対して、ワーク回転軸方向と直交する切り込み軸方向への切り込みと、ワーク回転軸方向と平行となる送り軸方向への送りとを与えることにより、前記被加工内歯車を前記歯車状カッタによって歯切りするのに先立って、
前記カッタ回転軸を旋回させて、当該カッタ回転軸に対して、前記ワーク回転軸との間における軸交差角を与え、
前記軸交差角が与えられた前記カッタ回転軸における、切り込み軸方向及びカッタ回転軸方向と直交する横軸と、送り軸とを含んだ第1平面に対する傾斜角を検出し、
前記歯車状カッタを、前記傾斜角に応じて、水平面内において平行移動して、前記歯車状カッタにおける前記被加工内歯車との噛み合い位置を、当該歯車状カッタの周方向にずらす
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
従って、本発明に係る内歯車加工機械及び内歯車加工方法によれば、歯切り加工に先立って、歯車状カッタを、カッタ回転軸の傾斜角に応じて、水平面内において平行移動して、歯車状カッタにおける被加工内歯車との噛み合い位置を、その周方向にずらすことにより、機械の組み付け誤差等の要因から、カッタ回転軸に傾斜角が生じても、その傾斜角を既存の構成を用いて打ち消して、高精度な加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る内歯車加工機械の全体斜視図である。
図2】本発明の一実施例に係る内歯車加工方法を示した斜視図である。
図3】ピニオンカッタのカッタ回転軸がYZ平面に対して傾斜する様子を示した図である。
図4】(a)カッタ回転軸が基準位置に配置されたピニオンカッタによってワークを歯切りする様子を示した平面図、(b)は同図(a)のI−I矢視断面図である。
図5】(a)カッタ回転軸がオフセット位置に配置されたピニオンカッタによってワークを歯切りする様子を示した平面図、(b)は同図(a)のII−II矢視断面図である。
図6図5のIII−III矢視断面図であって、ピニオンカッタに逃げ角が与えられた様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る内歯車加工機械及び内歯車加工方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、内歯車加工機械(例えば、歯車形削盤)1のベッド11上には、コラム(カッタ切り込み手段)12が、水平なX軸方向(切り込み軸方向)に移動可能に支持されている。また、コラム12の前面には、サドル(カッタ送り手段)13が、X軸方向と直交する鉛直なZ軸方向(送り軸方向)に昇降可能に支持されている。更に、サドル13の前面には、旋回ヘッド(旋回手段、軸交差角設定手段)14が、X軸方向に延在するカッタ旋回軸A周りに旋回可能に支持されている。
【0014】
また、旋回ヘッド14の前面には、スライドヘッド(カッタ横移動手段)15が、内歯車加工機械1の横方向(以下、機械横方向と称す)となるY軸方向(横軸方向)に移動可能に支持されている。更に、スライドヘッド15の前部には、カッタヘッド16が、そのスライドヘッド15から半円状に膨出するように形成されている。そして、カッタヘッド16内には、主軸16aが、X軸,Y軸方向と直交するカッタ回転軸B周りに回転可能に支持されており、この主軸16aの先端には、円筒状のピニオンカッタ(歯車状カッタ)17が着脱可能に装着されている。
【0015】
一方、ベッド11上におけるコラム12の正面側には、回転テーブル(ワーク回転手段)18が、Z軸方向に延在するワーク回転軸C周りに回転可能に支持されている。そして、回転テーブル18の上面には、円筒状の取付治具19が取り付けられており、この取付治具19の上端内周面には、ワーク(被加工内歯車)Wが、着脱可能に装着されている。なお、ワークWを取付治具19に装着すると、当該ワークWの中心は、回転テーブル18のワーク回転軸Cと同軸状となる。
【0016】
従って、コラム12及びサドル13を駆動させることにより、ピニオンカッタ17に対して、X軸方向への切り込み及びZ軸方向への送りを与えることができる。また、スライドヘッド15を駆動させることにより、ピニオンカッタ17をY軸方向に横移動させることができる。そして、カッタヘッド16の主軸16aを回転駆動させることにより、ピニオンカッタ17をB軸周りに回転させることができる一方、回転テーブル18を回転駆動させることにより、ワークWをワーク回転軸C周りに回転させることができる。
【0017】
更に、図1及び図2に示すように、旋回ヘッド14をカッタ旋回軸A周りに旋回させることにより、主軸16a及びピニオンカッタ17の回転中心となるカッタ回転軸Bの旋回角度を変更することができる。これにより、カッタ回転軸Bとワーク回転軸Cとの間の軸交差角Σが調整可能となっており、この軸交差角Σは、ワークWのねじれ角等に応じて調整されるようになっている。
【0018】
即ち、軸交差角Σは、Y軸及びZ軸を含んだYZ平面(第1平面、垂直面)内において、カッタ回転軸Bとワーク回転軸Cとによって形成される交差角度となっている。よって、歯切り加工時におけるピニオンカッタ17は、ワークWのワーク回転軸Cに対して軸交差角Σで交差するカッタ回転軸B周りに回転する。
【0019】
なお、上述したように、旋回ヘッド14をカッタ旋回軸A周りに旋回可能としているため、その旋回ヘッド14の旋回動作に伴って、主軸16a及びピニオンカッタ17の回転中心となるカッタ回転軸Bだけでなく、その旋回ヘッド14に支持されるスライドヘッド15の移動方向も、旋回する(傾く)ことになる。
【0020】
つまり、カッタ回転軸Bの旋回角度が、どのような角度であっても、ピニオンカッタ17は、機械横方向(スライドヘッド17の幅方向)となるY軸方向に移動することになり、そのカッタ回転軸Bは、常に、X軸,Y軸方向と直交するように配置されている。その中でも、カッタ回転軸Bの旋回角度が0°となる場合には、Y軸方向は、X軸,Z軸方向と直交することになり、カッタ回転軸Bは、Z軸方向に延在することになる(ワーク回転軸Cと平行になる)。
【0021】
ここで、上述したように、ピニオンカッタ17のカッタ回転軸Bは、YZ平面内において、旋回することになるが、内歯車加工機械1における各構成部材の組み付け誤差等の要因から、そのカッタ回転軸Bが、YZ平面と平行にならない場合がある。即ち、カッタ回転軸Bが、YZ平面に対して傾斜(交差)した状態となることがある。このような状態において、ワークWをピニオンカッタ17によって歯切りすると、その加工精度が低下するおそれがある。
【0022】
そこで、本発明に係る内歯車加工機械1においては、歯切り加工に先立って、カッタ回転軸BにおけるYZ平面に対する傾斜角φを検出し、ピニオンカッタ17を、その傾斜角φが打ち消されるような位置に配置する。
【0023】
具体的に、図3に示すように、内歯車加工機械1は、YZ平面に対するカッタ回転軸Bの傾斜角φを検出する検出機能(検出手段、検出器)を有している。そして、詳細は後述するが、先ず、内歯車加工機械1では、検出した傾斜角φに応じて、ワークWの中心位置(ワーク回転軸C)を座標原点としたオフセット位置Pb(X軸座標:Xb、Y軸座標:Yb)を、X軸及びY軸を含んだXY平面(第2平面、水平面)内において設定する。次いで、ピニオンカッタ17を、そのカッタ回転軸Bがオフセット位置Pbを通るように、XY平面内において水平移動させる。
【0024】
このように、YZ平面に対して傾斜角φで傾斜するカッタ回転軸Bを、その傾斜角φに応じて、XY平面内において平行移動させることにより、そのカッタ回転軸B周りに回転可能となるピニオンカッタ17を、傾斜角φが打ち消された状態にして、ワークWに噛み合わせることができる。
【0025】
次に、内歯車加工機械1の動作について、図2乃至図6を用いて説明する。
【0026】
先ず、ピニオンカッタ17をカッタ旋回軸A周りに旋回させて、そのカッタ回転軸Bに対して、軸交差角Σを与える。次いで、図3に示すように、ピニオンカッタ17を、X軸,Y軸,Z軸方向に移動させ、その傾斜角φが検出可能となる検出可能領域内に配置する。そして、YZ平面に対するカッタ回転軸Bの傾斜角φを検出する。
【0027】
ここで、検出した傾斜角φが0°となる場合には、ピニオンカッタ17のカッタ回転軸Bが、YZ平面と平行になっているため、XY平面内におけるピニオンカッタ17の歯切り開始位置を変更することなく、歯切りを行う。
【0028】
つまり、図4に示すように、ピニオンカッタ17を、X軸,Y軸,Z軸方向に移動させる。これにより、ピニオンカッタ17は、軸交差角Σが与えられた状態で、ワークWと噛み合うことになる。
【0029】
このとき、ピニオンカッタ17は、そのカッタ回転軸Bが、XY平面内において、ワークWの中心位置(ワーク回転軸C)を座標原点とした基準位置Pa(X軸座標:Xa、Y軸座標:Ya)を通るように配置されている。また、基準位置Paに配置されたピニオンカッタ17におけるワークWとの噛み合い位置17aは、XY平面内において、ワークWの中心位置(ワーク回転軸C)及び基準位置Pa(カッタ回転軸B)を通る直線上(X軸上)に配置されている。
【0030】
次いで、上述した噛み合い状態から、ピニオンカッタ17をカッタ回転軸B周りに回転させると共に、ワークWをワーク回転軸C周りに回転させる。そして、ピニオンカッタ17に対して、X軸方向への切り込みと、Z軸方向への送りとを与える。即ち、ピニオンカッタ17とワークWとを噛み合わせて同期回転させると共に、ピニオンカッタ17を、X軸方向に段階的に切り込ませながら、Z軸方向に往復移動させる。
【0031】
なお、Z軸方向に往復移動するピニオンカッタ17においては、下方に移動するときに、ワークWを歯切りする一方、上方に移動するときに、ワークWからX軸方向に離間して、当該ワークWに対する歯切りを行わないようになっている。
【0032】
これにより、ピニオンカッタ17とワークWとの間に、大きなすべりが発生すことになり、ピニオンカッタ17の刃面(歯面)によって、ワークWに内歯が歯切りされる。
【0033】
一方、検出した傾斜角φが0°を超える場合には、ピニオンカッタ17のカッタ回転軸Bが、YZ平面と平行になっていないため、歯切り加工に先立って、XY平面内におけるピニオンカッタ17の歯切り開始位置を変更してから、歯切りを行う。
【0034】
つまり、図2及び図5に示すように、ピニオンカッタ17を、X軸,Y軸,Z軸方向に移動させる。これにより、ピニオンカッタ17は、軸交差角Σが与えられた状態で、ワークWと噛み合うことになる。
【0035】
このとき、ピニオンカッタ17は、そのカッタ回転軸Bが、XY平面内において、ワークWの中心位置(ワーク回転軸C)を座標原点としたオフセット位置Pbを通るように配置されている。また、オフセット位置Pbに配置されたピニオンカッタ17におけるワークWとの噛み合い位置17bは、XY平面内において、ワークWの中心位置(ワーク回転軸C)及びオフセット位置Pb(カッタ回転軸B)を通る直線上に配置されると共に、ピニオンカッタ17の周方向において、噛み合い位置17aからずれた位置となっている。
【0036】
即ち、基準位置Paにおいて傾斜角φで傾斜するカッタ回転軸Bを、XY平面内において、その基準位置Paからオフセット位置Pbに平行移動させると共に、ピニオンカッタ17におけるワークWとの噛み合い位置を、噛み合い位置17aから噛み合い位置17bにずらすことにより、ピニオンカッタ17とワークWとの間におけるXY平面上の噛み合い方向を、ワークWの中心位置及び基準位置Paを通る基準軸方向から、ワークWの中心位置及びオフセット位置Pbを通るオフセット軸方向に変更する。
【0037】
また、図6に示すように、カッタ回転軸Bをオフセット位置Pbに配置すると共に、ピニオンカッタ17における噛み合い位置を噛み合い位置17bにずらすことにより、その噛み合い位置17bにおいては、その下端側がワークWと噛み合い、その上端側に向かうに従って離間することになる。即ち、ピニオンカッタ17における噛み合い位置17bに、逃げ角θが付与されることになる。
【0038】
次いで、上述した噛み合い状態から、ピニオンカッタ17をカッタ回転軸B周りに回転させると共に、ワークWをワーク回転軸C周りに回転させる。そして、ピニオンカッタ17に対して、X軸方向への切り込みと、Z軸方向への送りとを与える。即ち、ピニオンカッタ17とワークWとを噛み合わせて同期回転させると共に、ピニオンカッタ17を、X軸方向に段階的に切り込ませながら、Z軸方向に往復移動させる。
【0039】
なお、Z軸方向に往復移動するピニオンカッタ17においては、下方に移動するときに、ワークWを歯切りする一方、上方に移動するときに、ワークWからX軸方向に離間して、当該ワークWに対する歯切りを行わないようになっている。
【0040】
これにより、ピニオンカッタ17とワークWとの間に、大きなすべりが発生すことになり、ピニオンカッタ17の刃面(歯面)によって、ワークWに内歯が歯切りされる。
【0041】
従って、歯切り加工に先立って、ピニオンカッタ17を、カッタ回転Bの傾斜角φに応じて、当該カッタ回転軸BがXY平面内において平行移動するように配置して、ピニオンカッタ17におけるワークWとの噛み合い位置を、その周方向にずらすことにより、機械の組み付け誤差等の要因から、カッタ回転軸Bに傾斜角φが生じても、その傾斜角φを既存の構成を用いて打ち消して、高精度な加工を行うことができる。
【0042】
また、カッタ回転軸Bをオフセット位置Pbに配置すると共に、ピニオンカッタ17における噛み合い位置を噛み合い位置17bにずらすことにより、ピニオンカッタ17における噛み合い位置17bに対して逃げ角θを与えることができる。これにより、円筒状のピニオンカッタ17を用いても、逃げ角θを容易に与えることができ、テーパ形状のピニオンカッタを用いる必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、被加工内歯車をシェービングカッタ及び樽形ねじ状砥石によって加工する内歯車加工機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 内歯車加工機械
11 ベッド
12 コラム
13 サドル
14 旋回ヘッド
15 スライドヘッド
16 カッタヘッド
16a 主軸
17 ピニオンカッタ
17a,17b 噛み合い位置
18 回転テーブル
19 取付治具
W ワーク
A カッタ旋回軸
B カッタ回転軸
C ワーク回転軸
Σ 軸交差角
φ 傾斜角
θ 逃げ角
Pa 基準位置
Pb オフセット位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6