(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の回転に伴ってイグニッションコイルに誘起されるパルス信号に基づき、前記内燃機関に備えられた点火プラグに供給される電圧を前記イグニッションコイルに発生させる点火制御装置であって、
前記パルス信号に応答して前記イグニッションコイルを通電するためのスイッチ素子と、
前記パルス信号を検出する検出部と、
前記検出部により前記パルス信号を検出して得られる信号に応答して前記イグニッションコイルの通電の停止を制御するためのタイミングを取得し、前記タイミングに従って前記スイッチ素子をオフ状態に制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記内燃機関が失火制御状態にあるか否かを判定し、前記内燃機関が前記失火制御状態にある場合、前記検出部により前記パルス信号を検出して得られるパルスのうち、前記内燃機関が前記失火制御状態にある場合に消失するパルスを除いたパルスの発生順序に基づき前記タイミングの基準を取得する、点火制御装置。
前記制御部は、前記検出部により前記パルス信号を検出して得られるパルスのうち、前記内燃機関が前記失火制御状態にある場合に消失するパルスを除いたパルスが発生する都度、次に発生すべきパルスの発生待ち状態となる、請求項1に記載の点火制御装置。
前記検出部により前記パルス信号を検出して得られるパルスは、発生順に、第1パルス、第2パルス、第3パルスであり、前記第2パルスは、前記内燃機関が前記失火制御状態にある場合に消失するパルスであり、
前記制御部は、
正パルスが入力された場合、前記第1パルスの発生待ち状態であるか否かを判定し、前記第1パルスの発生待ち状態である場合、前記第1パルスに応答して実行すべき所定の処理を実行し、前記内燃機関が前記失火制御状態にあるか否かを判定し、前記内燃機関が前記失火制御状態にある場合、前記イグニッションコイルの通電を禁止した後、前記第3パルスの発生待ち状態となり、
正パルスが入力された場合、前記第1パルスの発生待ち状態であるか否かを判定し、前記第1パルスの発生待ち状態でない場合、前記第3パルスの発生待ち状態であるか否かを判定し、前記第3パルスの発生待ち状態である場合、前記イグニッションコイルの通電を許可し、前記第3パルスに応答して実行すべき所定の処理を実行した後、前記第1パルスの発生待ち状態となる、請求項1または2に記載の点火制御装置。
内燃機関の回転に伴ってイグニッションコイルに誘起されるパルス信号に基づき、前記内燃機関に備えられた点火プラグに供給される電圧を前記イグニッションコイルに発生させる点火制御方法であって、
検出部が前記パルス信号を検出する過程と、
制御部が前記検出部により前記パルス信号を検出して得られるパルスに応答して前記イグニッションコイルの通電の停止を制御するためのタイミングを取得し、前記タイミングに従って前記パルス信号に応答して前記イグニッションコイルを通電するためのスイッチ素子をオフ状態に制御する過程と、を含み、
前記制御部は、前記内燃機関が失火制御状態にあるか否かを判定し、前記内燃機関が前記失火制御状態にある場合、前記検出部により前記パルス信号を検出して得られるパルスのうち、前記内燃機関が前記失火制御状態にある場合に消失するパルスを除いたパルスの発生順序に基づき前記タイミングの基準を取得する点火制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による点火制御装置100の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図2は、本発明の実施形態による点火制御時のタイミングチャートである。
点火制御装置100の端子TIGNと端子TEとの間には、図示しない内燃機関に装着された1次巻線801が接続される。2次巻線802には点火プラグ900が接続される。コア803の両端部は、内燃機関が備える不図示のフライホイールの外周部に近接して配置され、コア803とフライホイールは閉磁路を形成する。
【0014】
不図示のフライホイールの外周部には凹部が形成されており、この凹部には、フライホイールの半径方向にS極とN極とが配列された状態で永久磁石が取り付けられている。永久磁石を備えたフライホイールが回転すると、コア803内の磁束の変化により、内燃機関の各回転周期において、後述の
図2に示す正パルスである第1パルスP1、負パルスである第2パルスP2、正パルスである第3パルスP3を含むパルス信号Pが、1次巻線801に順次誘起される。
【0015】
点火制御装置100は、内燃機関の回転に伴って1次巻線801に誘起されるパルス信号Pに基づき、上記内燃機関に備えられた点火プラグ900に供給される電圧を1次巻線801に発生させる。この点火制御装置100は、電源生成部110、正パルス信号生成部120、状態検出部130、負パルス信号生成部140、制御部150、駆動部160、バイアス部170、スイッチ素子180を備える。
【0016】
電源生成部110は、1次巻線801に誘起されたパルス信号Pの正パルスである第1パルスP1および第3パルスP3から点火制御装置100が動作するために必要とされる電源電圧VDDを生成する。電源生成部110には、端子TIGNおよび端子TEを介して1次巻線801が接続される。電源生成部110により生成された電源電圧VDDは、制御部150に供給される。電源電圧VDDは、第1パルスP1および第3パルスP3を用いて生成される電圧であるため、パルスが消失すれば、時間の経過とともに低下するが、各回転周期において制御部150が必要な制御動作を行うのに足りる電圧である。
なお、正パルス信号生成部120、状態検出部130、負パルス信号生成部140、駆動部160、バイアス部170の回路形式によっては、これらにも電源電圧VDDが供給されてもよい。
【0017】
正パルス信号生成部120は、1次巻線801に誘起されたパルス信号Pから正パルスを検出して正パルス信号PPを生成する。正パルス信号生成部120には、端子TIGNおよび端子TEを介して1次巻線801の正端子(+)と負端子(−)が接続される。本実施形態では、1次巻線801の負端子(−)は接地されている(以下、1次巻線801の負端子を、適宜、「基準端子」と称す)。正パルス信号生成部120は、端子TEの電位を基準として端子TIGNの電位が高くなったときに正パルスを検出して正パルス信号PPを生成する。正パルス信号生成部120により生成された正パルス信号PPには、正パルスである第1パルスP1と第3パルスP3が含まれる。本実施形態では、正パルス信号PPは、第1パルスP1および第3パルスP3の各立ち上がりエッジを示す信号として用いられる。
【0018】
状態検出部130は、スイッチ素子180のバイアス状態を検出する。状態検出部130は、スイッチ素子180がオン状態となるようにスイッチ素子180の制御端子がバイアスされた状態を検出し、その検出結果を示す検出信号SJを生成するように構成される。検出信号SJは負パルス信号生成部140に供給される。本実施形態では、状態検出部130は、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのコレクタ電流を模擬するためのダミートランジスタ131を備え、このダミートランジスタ131のコレクタ電流にスイッチ素子180のバイアス状態(オン状態)を反映させるように構成される。ここで、本実施形態では、ダミートランジスタ131は、スイッチ素子180と同様のnpn型トランジスタであり、このダミートランジスタ131のベースおよびエミッタは、それぞれ、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのベースおよびエミッタに接続される。
【0019】
これにより、ダミートランジスタ131のエミッタ・ベース間電圧が、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのベース・エミッタ間電圧と同じになり、このスイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのコレクタ電流がダミートランジスタ131のコレクタ電流に反映される。このように、状態検出部130は、ダミートランジスタ131を用いて、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのコレクタ電流を模擬し、ダミートランジスタ131のコレクタ電流を、オン状態にあるときのスイッチ素子180のバイアス状態を示す検出信号SJとして出力する。ただし、この例に限定されず、スイッチ素子180がオン状態となるときのバイアス状態を検出し得る限度において、状態検出部130の構成は任意である。
【0020】
負パルス信号生成部140は、状態検出部130の検出結果を示す検出信号SJから負パルス信号PNを生成する。本実施形態では、負パルス信号生成部140は、上述のダミートランジスタ131のコレクタ電流を検出する電流検出器として構成され、その検出結果として負パルス信号PNを発生させて制御部150に供給する。負パルス信号PNは、第1パルスP1に続く負パルスである第2パルスP2に対応するパルスP2’を含む。このパルスP2’の立ち
下がりエッジは第2パルスP2の立ち
下がりエッジと略一致し、その限りにおいてパルスP2’は第2パルスP2と同等の信号である。本実施形態では、負パルス信号PNは、第2パルスP2の立ち下がりエッジを示す信号として用いられる。
【0021】
制御部150は、ポート1とポート2を有し、ポート1が負パルス信号生成部140、ポート2が正パルス信号生成部120にそれぞれ接続されている。
制御部150は、正パルス信号PPおよび負パルス信号PNに応答してイグニッションコイル800の通電の停止を制御するためのタイミングを設定し、該タイミングに従ってスイッチ素子180をオフ状態に制御する。即ち、制御部150は、正パルス信号PPに含まれる第1パルスP1と負パルス信号PNに含まれる第2パルスP2(パルスP2’)とに応答して、イグニッションコイル800の通電の停止を制御するためのタイミングを設定するように構成される。本実施形態では、第1パルスP1は、通電の停止のタイミングを設定する際に参照される内燃機関の回転速度RSを算出するために用いることができる。また、第1パルスP1及び第2パルスP2は、通電の停止のタイミングを設定するための処理のトリガー信号として用いることができる。
【0022】
その場合、制御部150は、ポート2に入力された正パルス信号PPが第1パルスP1と第3パルスP3のいずれかであるかを識別する必要がある。そのため、制御部150は、パルス信号Pが入力される順番から、どのパルスが入力されたのか識別する。例えば、内燃機関が回転を始めると、
図2に例示するように、パルス信号Pとして、第1パルスP1、第2パルスP2、第3パルスP3の順であるパルス列が1次巻線801に誘起される。よって、制御部150は、負パルス信号PNを検出した直後に検出した正パルス信号PPを第3パルスP3とする。
【0023】
また、制御部150は、第3パルスP3を検出した直後に検出した正パルス信号PPを第1パルスP1とする。これより、制御部150は、正パルス信号PP及び負パルス信号PNを検出する順番によって、第1パルスP1と第2パルスP2と第3パルスP3との中でどのパルスが入力されたかを識別することができる。その際、制御部150は、負パルス信号生成部140と正パルス信号生成部120によりパルス信号Pを検出する都度、次に発生すべきパルスの発生待ち状態となる。
【0024】
パルスの発生待ち状態は、第1パルスP1と第2パルスP2と第3パルスP3との3つの信号の待ち状態がある。よって、3つの状態を識別する方法として、例えば、制御部150内の不図示のメモリに記憶領域を作成し、第1パルスP1の待ち状態の場合はメモリに1を記憶し、第2パルスP2の待ち状態の場合はメモリに2を記憶し、第3パルスP3の待ち状態の場合はメモリに3を記憶する。制御部150は、入力される正パルス信号PPと負パルス信号PNの順番に応じて、パルス信号Pの待ち状態をメモリに記憶することで、第1パルスP1と第2パルスP2と第3パルスP3との識別を行っている。
【0025】
また、制御部150は、内燃機関が失火制御状態にあるか否かを判定し、内燃機関が失火制御状態にある場合、第2パルスP2が消失するため(後述する)、第1パルスP1および第3パルスP3の発生順序に基づき、イグニッションコイル800の通電の停止を制御するためのタイミングを取得する。失火制御は、例えば内燃機関の回転速度RSが閾値(規定値)を越えた場合に、回転速度を規定値以下に抑えるために、点火制御を停止する。
【0026】
また、制御部150は、第1パルスP1に応答して、第1パルスP1の発生待ち状態であるか否かを判定し、第1パルスP1の発生待ち状態である場合、第1パルスP1に応答して実行すべき所定の処理を実行する。また、制御部150は、回転速度RSに基づいて内燃機関が失火制御状態にあるか否かを判定し、内燃機関が失火制御状態にある場合、イグニッションコイル800の通電を禁止した後、第3パルスP3の発生待ち状態となる。また、制御部150は、第3パルスに応答して、第1パルスP1の発生待ち状態であるか否かを判定し、第1パルスの発生待ち状態でない場合、第3パルスP3の発生待ち状態であるか否かを判定する。制御部150は、第3パルスP3の発生待ち状態である場合、イグニッションコイル800の通電を許可し、第3パルスP3に応答して実行すべき所定の処理を実行した後、第1パルスの発生待ち状態となる。
【0027】
一方、制御部150は、内燃機関が失火制御状態にない場合、第1パルスの発生待ちである場合、第2パルスP2の発生待ち状態となる。また、制御部150は、第1パルスP1の発生待ち状態でなく、かつ、第3パルスP3の発生待ち状態でない場合、パルス信号の異常を検出し、第2パルスP2に応答して、第2パルスの発生待ち状態であるか否かを判定する。制御部150は、第2パルスP2の発生待ち状態である場合、第2パルスP2に応答して実行すべき所定の処理を実行した後、第3パルスP3の発生待ち状態となる。また、制御部150は、第2パルスP2の発生待ち状態でない場合、パルス信号の異常を検出する。
【0028】
また、制御部150は、上記の設定したタイミングに従ってスイッチ素子180をオフ状態に制御するための点火制御信号SFを生成し、駆動部160の制御端子に供給する。制御部150は、例えば、点火制御に関する処理手順が記述された制御プログラムに従って動作するマイクロコンピュータ、または上記制御プログラムによる処理手順と同等の論理演算機能を有する専用のデジタル制御IC(Integrated Circuit)等により実現される。
【0029】
なお、本実施形態では、制御部150は、正パルス信号PPおよび負パルス信号PNの両方に応答して点火制御信号SFを生成するものとするが、通電の停止のタイミングの設定において内燃機関の回転速度RSを考慮する必要がなく、例えば通電の停止のタイミングとして固定されたタイミングを用いる場合には、正パルス信号PPには応答せずに、状態検出部130の検出結果を示す検出信号SJに基づく負パルス信号PNのみに応答して固定された所定のタイミングを用いて点火制御信号SFを生成してもよい。
【0030】
駆動部160は、制御部150から入力される点火制御信号SFに基づいてスイッチ素子180を駆動する。駆動部160は、点火制御信号SFの信号レベルに応じて、スイッチ素子180を駆動するための駆動信号SDを生成する。この駆動信号SDはスイッチ素子180の制御端子に供給される。駆動部160は、例えば、オープンコレクタ形式またはオープンドレイン形式の出力段を備えて構成される。イグニッションコイル800を通電させる場合、駆動部160の出力はハイインピーダンス(Hi−Z)となり、駆動部160は、駆動信号SDとして出力ハイインピーダンス時の不定信号(無信号)を出力する。
【0031】
この場合、後述するように、スイッチ素子180の制御端子がバイアス部170によりバイアスされた状態で第2パルスP2が誘起されたときに、スイッチ素子180がオン状態となる。これに対し、イグニッションコイル800の通電を停止する場合には、駆動部160は、スイッチ素子180の制御端子にローレベルの電圧を出力し、スイッチ素子180をオフ状態とする。このため、ダミートランジスタ131の制御端子もローレベルに遷移するため、検出信号SJが負パルス信号生成部140に入力されず、負パルス信号生成部140は、負パルス信号PNを生成することができない。よって、イグニッションコイル800の通電を停止している場合には、制御部150は、負パルス信号生成部140から負パルス信号PNを受信することができない。
【0032】
バイアス部170は、パルス信号Pの負パルスである第2パルスP2が誘起された際にスイッチ素子180がオン状態となるように、スイッチ素子180の制御端子をバイアスする。本実施形態では、バイアス部170は、スイッチ素子180を構成する後述のトランジスタのベースとコレクタとの間に接続された抵抗素子から構成される。バイアス部170を構成する抵抗素子の抵抗値は、制御部150の制御によりスイッチ素子180がオフ状態に制御されるまでスイッチ素子180をオン状態に維持するように制御端子をバイアスし、且つ、制御部150の制御によりスイッチ素子180をオフ状態とするときに、駆動部160によるスイッチ素子180の制御端子の駆動を阻害しないように設定される。
【0033】
スイッチ素子180は、1次巻線801を通電する。本実施形態では、スイッチ素子180はnpn型トランジスタから構成される。スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのエミッタは、端子TIGNを介して1次巻線801の一端(正極端子)に接続され、コレクタは、端子TEを介して1次巻線801の他端(負極端子)に接続され、ベース(制御端子)は、駆動部160の出力部に接続される。本実施形態では、端子TEは、1次巻線801および2次巻線802の各他端ならびにコア803と共に接地されている。従って、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのコレクタは接地される。
【0034】
ここで、負パルスである第2パルスP2が誘起された状態でスイッチ素子180がオンすると、1次巻線801の通電が開始され、スイッチ素子180がオフすると、イグニッションコイル800の通電が停止される。即ち、スイッチ素子180のオンおよびオフに応じてイグニッションコイル800の通電が制御される。スイッチ素子180を構成するトランジスタは、ダーリントン接続された多段構成のトランジスタが望ましい。その理由は、電流増幅度が大きいことに加え、見かけ上のVbeが大きくなるために、このトランジスタのベースとエミッタとの間の電圧から、スイッチ素子180がオン状態になるときのバイアス状態を検出することが容易になるためである。なお、この例に限らず、バイアス状態を検出し得ることを限度に、スイッチ素子180として任意のデバイスを用いることができる。
【0035】
次に、点火制御装置100の点火制御と失火制御の動作について、
図3、
図4に示すフローチャートに沿って
図2、
図5のタイミングチャートを参照しながら説明する。
図2は、点火制御状態を説明するためのタイミングチャートである。
図3は、制御部150に負パルス信号PNが入力された場合の制御部150の動作である。
図4は、制御部150に正パルス信号PPが入力された場合の制御部150の動作である。
図5は、失火制御状態説明をするためのタイミングチャートである。
【0036】
点火制御装置100の動作において、初期条件として、制御部150は、負パルス信号PNの発生待ち状態にする。
なお、本実施形態では、第1パルスP1と第2パルスP2(パルスP2’)と第3パルスP3とに応答して点火制御に関する動作が実施されるが、以下では、第1パルスP1に応答して実施される動作に関連する処理を第1処理と称し、第2パルスP2(パルスP2’)応答して実施される動作に関連する処理を第2処理と称し、第3パルスP3応答して実施される動作に関連する処理を第3処理と称す。
【0037】
<点火制御状態での動作の説明>
まず、点火制御装置100の点火制御状態での動作について説明する。
内燃機関の最初の回転周期では、ステップS101において、制御部150は、ポート1に負パルス信号PNが入力されると、負パルス信号PNの処理(
図3)を開始する。制御部150は、第2パルスP2の待ち状態であるか否かを判定する。制御部150は、第2パルスP2の待ち状態である場合(ステップS101:YES)、第2処理を実行する(ステップS102)。一方、制御部150は、第2パルスP2の待ち状態でない場合(ステップS101:NO)、ステップS104に進む。内燃機関の最初の回転周期では、第2パルスP2の待ち状態が設定されているので、制御部150は、第2パルスP2の待ち状態であると判定し(ステップS101:YES)、ステップS102に処理を進める。
【0038】
ステップS102において、制御部150は、回転速度RSに基づき点火制御信号SFを生成するための第2処理を行う。以下に第2処理について説明する。
第2処理では、イグニッションコイル800の通電を停止させるための処理(点火処理)が実施されるが、この第2処理と並行して、イグニッションコイル800を通電するための回路動作が実施される。ここでは、イグニッションコイル800を通電するための回路動作を先に説明し、その後、第2処理の詳細を説明する。
【0039】
1次巻線801に負パルスである第2パルスP2が誘起されると、端子TIGNを介して、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのエミッタに第2パルスP2が印加される。このとき、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのベースは、バイアス部170によりコレクタと同じ接地電位にバイアスされている。
このため、負パルスである第2パルスP2が誘起されると、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのエミッタ電位が低下する。この結果、そのベースとエミッタとの間の電圧がVbe(トランジスタがオン状態となる閾値電圧)を超え、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタが即座にオン状態になる。スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタがオン状態になると、1次巻線801の端子間がスイッチ素子180を介して短絡される。これにより、イグニッションコイル800の通電が実施される。この場合、第2パルスP2が誘起されても、1次巻線801の端子間の電圧変化が抑制され、
図2の矢印200に示すような負パルスP2が発生しない。
【0040】
負パルス信号生成部140は、状態検出部130から供給される検出信号SJに基づいて、第2パルスP2に対応したパルスP2’を含む負パルス信号PNを生成し、制御部150に出力する。具体的には、負パルス信号生成部140は、状態検出部130から検出信号SJとして入力されるダミートランジスタ131のコレクタ電流を検出して電圧信号である負パルス信号PNを生成する。この負パルス信号PNは、時刻T3の直後に第2パルスP2に応答してローレベルからハイレベルに遷移する。
【0041】
ここで、前述したように、時刻T3で1次巻線801に負パルスである第2パルスP2が誘起されると、バイアス部170により、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタが即座にオン状態に制御され、端子TIGNと端子TEとの間の電圧がゼロVに固定される。このため、第2パルスP2を電圧信号として検出することは困難である。そこで、本実施形態では、第2パルスP2が誘起された際に、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのコレクタ電流を、状態検出部130のダミートランジスタ131のコレクタ電流に反映させることにより、このダミートランジスタ131のコレクタ電流から第2パルスP2を検出することを可能にしている。
【0042】
上述のように、イグニッションコイル800の1次巻線801に負パルスである第2パルスP2が誘起されると、イグニッションコイル800の通電が開始されると共に、負パルス信号生成部140から制御部150に負パルス信号PNが出力される。制御部150は、次に説明するように、負パルス信号PNに応答して第2処理を実行する。
【0043】
制御部150は、内燃機関の最初の回転周期では、負パルス信号生成部140から入力された負パルス信号PNに応答して、回転速度RSに基づきイグニッションコイル800の通電の停止のタイミングを設定する。なお、制御部150は、内燃機関の2回目の回転周期では、正パルス信号生成部120から入力された第1パルスP1に応答して、回転速度RSに基づきイグニッションコイル800の通電の停止のタイミングを設定する。本実施形態では、制御部150は、時刻T4でハイレベルからローレベルに遷移するタイミングをイグニッションコイル800の通電の停止のタイミングとする。
制御部150は、この通電の停止のタイミングでイグニッションコイル800の点火を行う。
【0044】
通電の停止のタイミングは、内燃機関の回転速度RSに応じた点火時期として予め設定された所望のタイミングである。この通電の停止のタイミングを示すデータは、例えば、回転速度RSと対応づけられてテーブル化されて、制御内の不図示の記憶部に備えられる。制御部150は、回転速度RSに基づいて上記テーブルを参照することにより通電の停止のタイミングを取得する。ただし、この例に限らず、例えば、上記のテーブルに規定された回転速度RSと通電の停止のタイミングとの対応関係を記述する演算式を用いて回転速度RSから通電のタイミングを算出するなど、他の任意の手法を用いて通電の停止のタイミングを取得してもよい。また、点火制御における第2処理の初回時においては、回転速度RSは算出されていないため、通電の停止のタイミングを予め設定されている固定値を使用してもよい。
【0045】
続いて、制御部150は、設定した通電の停止のタイミングに基づいて点火時期に対応する時刻T4でハイレベルからローレベルに遷移する点火制御信号SFを生成して出力する。時刻T4で点火制御信号SFがローレベルになると、これを入力する駆動部160は、駆動信号SDとして端子TIGNの電位VIGNを出力する。これにより、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのベース電圧がエミッタ電圧と同じになり、時刻T4でスイッチ素子180がオフ状態になる。
【0046】
時刻T4においてスイッチ素子180がオフ状態になると、それまで1次巻線801を流れていた電流が遮断され、イグニッションコイル800の通電が停止される。このとき、1次巻線801のインダクタンスにより、1次巻線801を流れる電流の変化に比例した高電圧(例えば200V)が1次巻線801の端子間に発生する。1次巻線801に発生した高電圧は、1次巻線801と2次巻線802との間の巻数比に応じた更なる高電圧(点火プラグ900が放電可能な電圧)を2次巻線802に誘起させる。2次巻線802の高電圧は点火プラグ900に印加され、点火プラグ900に放電を発生させる。点火プラグ900が放電すると、この放電により内燃機関のシリンダー内の燃料混合気に点火される。これにより第2処理が終了する。
【0047】
上述の第2処理に続いて、ステップS103において
、制御部150はメモリに3を記憶することで第3パルスP3の待ち状態とし、負パルス信号PNの処理を終了する。
なお、前述のステップS101において、第2パルスP2の待ち状態でないと判定した場合(ステップS101:NO)、制御部150は異常処理を実行する(ステップS104)。この場合、メモリの値が第2パルスP2の待ち状態を示していないことになる。このように、ステップS101において否定的な判定が行われることは、パルスの異常が発生したことを意味する。この場合、ステップS104において、制御部150は、記憶部内のデータを初期化し、第2パルスP2の待ち状態を示す「2」がメモリに設定される。ただし、前述したように、最初の回転周期では、パルスの待ち状態を示すメモリには第2パルスP2の待ち状態が設定されているので、ステップS101では、否定的な判定が行われることはない。
【0048】
続いて、最初の回転周期において、イグニッションコイル800から正パルスである第3パルスP3が発生される。第3パルスP3が発生すると、正パルス信号生成部120は、正パルス信号PPを制御部150に出力する。
正パルス信号生成部120から正パルス信号PPが入力されると、制御部150は、正パルス信号PPの処理(
図4)を開始する。即ち、制御部150は、ポート2に正パルス信号PPが入力されると、第1パルスP1の待ち状態であるか否かを判定する(ステップS201)。具体的には、制御部150は、制御部150内の不図示のメモリから記憶値を読み出し、1であるか否かを判定する。制御部150は、メモリが1である場合(ステップS201:YES)、ステップS206に進む。
【0049】
一方、制御部150は、メモリが1ではない場合(ステップS201:NO)、ステップS202に進む。ここで、内燃機関の最初の回転周期において第3パルスP3が発生された時点では、上述したステップS103において第3パルスP3の待ち状態を示す「3」がメモリに格納されているので、制御部150は、メモリが「1」ではないと判定し(ステップS201:NO)、ステップS202に処理を進める。
【0050】
ステップS202において、制御部150は、第3パルスP3の待ち状態であるか否かを判定する。具体的には、制御部150は、制御部150内の不図示のメモリから記憶値を読み出し、3であるか否かを判定する。制御部150は、メモリが3である場合(ステップS202:YES)、ステップS203に進む。ここでは、上述したように、メモリは3であるから、制御部150は、ステップS203に処理を進める。一方、制御部150は、メモリが3ではない場合(ステップS202:NO)、ステップS205に進む。
【0051】
ステップS203において、制御部150は、第3処理を行う。以下、第3処理を説明する。時刻T5で第3パルスP3が誘起されると、制御部150は、点火制御信号SFをハイレベルに初期化し、次の回転周期の制御動作に備える。これにより、制御部150は、時刻T4から時刻T5までの期間においてローレベルを維持する信号を点火制御信号SFとして出力する。本実施形態では、点火制御信号SFのローレベルの期間は、イグニッションコイル800の通電が停止される期間に相当する。ただし、この例に限定されず、イグニッションコイル800の通電が停止される期間を特定し得ることを限度に、点火制御信号SFの信号形式は任意である。
【0052】
上述したように、ステップS201において、制御部150に入力した正パルス信号PPは、第3パルスP3に対応する信号である。また、制御部150は、ステップS103において、メモリに3を記憶し第3パルスP3の待ち状態とした。よって、ステップS202において、制御部150は、第3パルスP3に対応する正パルス信号PPが入力された場合、ステップS203に進み、第3パルスP3応答して実施される第3処理を行う。
【0053】
上述の第3処理に続いて、ステップS204において、制御部150はメモリに1を記憶することで第1パルスP1の待ち状態とし、正パルス信号PPの処理を終了する。
なお、前述のステップS202において、第3パルスP3の待ち状態でないと判定した場合(ステップS202:NO)、制御部150は異常処理を実行する(ステップS205)。この場合、メモリの値が第3パルスP3の待ち状態を示していないことになる。このように、ステップS202において否定的な判定が行われることは、パルスの異常が発生したことを意味する。この場合、ステップS205において、制御部150は、記憶部内のデータを初期化し、第2パルスP2の待ち状態を示す「2」がメモリに設定される。
【0054】
次に、内燃機関の回転周期が2周目に入り、正パルス信号生成部120から制御部150に正パルス信号PPが入力されると、制御部150は、正パルス信号PPの処理(
図4)を開始する。制御部150は、ポート2に正パルス信号PPが入力されると、第1パルスP1の待ち状態であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0055】
正パルス信号PPが入力されると、制御部150は、正パルス信号PPの処理を開始する。この時点では、上述したように、制御部150は、メモリに1を記憶しているため、第1パルスP1の待ち状態であると判定し(ステップS201:YES)、ステップS206に進む。
ステップS206において、制御部150は、第1処理を行う。以下に第1処理を説明する。制御部150は、正パルス信号生成部120から入力される正パルス信号PPに含まれる第1パルスP1に応答して内燃機関の回転速度RSを算出する。具体的には、制御部150は、第1パルスP1に応答して、現在の回転周期が開始する時刻T2(
図2)において、前回の回転周期における第1パルスP1の立ち上がりエッジから現在の回転周期における第1パルスP1の立ち上がりエッジまでの時間、即ち第1パルスP1の周期Tを検出し、この第1パルスP1の周期Tから内燃機関の回転速度RSを算出する。一般に、内燃機関の回転速度は、1分あたりの回転速度によって表されるが、内燃機関の回転速度RSは、第1パルスP1の周期Tと1対1に対応することから、第1パルスP1の周期Tを内燃機関の回転速度RSとして取り扱ってもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、第1パルスP1の周期Tから回転速度RSを算出するものとするが、この例に限定されることなく、イグニッションコイル800の通電の停止のタイミングに回転速度RSを反映させ得ることを限度として、パルス信号Pに含まれる任意のパルスを用いて回転速度RSを算出してもよい。例えば、第2パルスP2の周期から回転速度RSを算出してもよい。または、前回の回転周期における第1パルスP1〜P3の何れかのパルスの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと現在の回転周期における第1パルスP1の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジとの間の時間、前回の回転周期における第1パルスP1〜P3の何れかのパルスの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと現在の回転周期における第2パルスP1の立ち上がりエッジとの間の時間、現在の回転周期における第1パルスP1の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと第2パルスP2の立ち上がりエッジとの間の時間から回転速度RSを算出してもよい。
【0057】
上述の第1処理に続いて、ステップS207において、制御部150は、失火制御が行われているか否かを判定する。具体的には、制御部150は、回転速度RSが閾値以上か否か判定する。閾値は、例えば、内燃機関の過回転を防止する失火制御が行われていると判定する回転数の下限値である。ここでは、失火制御が行われていない通常の点火制御状態を想定しているので、回転速度RSは閾値未満である。制御部150は、回転速度RSが閾値未満である場合、失火制御が行われていないと判定し(S207:NO)、ステップS208に進む。
【0058】
上述したように、ステップS201において、第3パルスP3に対応する正パルス信号PPが入力された後に、制御部150に入力される正パルス信号PPは、第1パルスP1に対応する信号である。また、制御部150は、ステップS204において、メモリに1を記憶し第1パルスP1の待ち状態とした。よって、ステップS206において、制御部150は、第1パルスP1に対応する正パルス信号PPが入力された場合、ステップS206に進み、第1パルスP1応答して実施される第1処理を行う。
【0059】
ステップS207(NO)に続いて、ステップS208において、制御部150はメモリに2を記憶することで第2パルスP2の待ち状態とし、正パルス信号PPの処理を終了する。
【0060】
<失火制御状態での動作の説明>
次に失火制御状態での制御部150の動作について
図3、
図4に示すフローチャートに沿って
図5のタイミングチャートを用いて説明する。
失火制御状態では、スイッチ素子180は強制的にオフ状態に固定される。具体的には、駆動部160により、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのベース・エミッタ間電圧が約ゼロに固定される。このため、イグニッションコイル800に負パルスP2が誘起されたとしても、その回路構成上、負パルス信号PNは発生されない。よって、本実施形態では、正パルス信号である第1パルスP1と第3パルスP3とに基づいて第1処理および第3処理のみが継続され、第2処理は実施されない。
【0061】
第1パルスP1に基づく正パルス信号PPが正パルス信号生成部120から出力されると、制御部150には、第1パルスP1に対応する正パルス信号PPが入力される。この時点では、上述したように、制御部150は、メモリに1を記憶しているため、制御部150は、第1パルスP1に対応する正パルス信号PPが入力されると、正パルス信号PPの処理を開始し、ステップS201、S206の処理、つまり第1処理を実行し、ステップS207に進む。
ステップS207において、制御部150は、回転速度RSが閾値以上である場合(S207:YES)、失火制御が行われていると判定し、ステップS209に進む。
【0062】
ステップS209において、
図5に示すように、制御部150は、時刻T6で点火制御信号SFを通電禁止状態、つまりローレベルに遷移させる。点火制御信号SFがローレベルに遷移すると、スイッチ素子180を構成するnpn型トランジスタのエミッタ電位がローレベルとなり、スイッチ素子180はオフ状態となる。また、ダミートランジスタ131のベースとスイッチ素子180のベースは接続されているため、ダミートランジスタ131は、制御部150が点火制御信号SFを通電禁止状態にしている間、オフ状態になる。これにより、負パルス信号生成部140は、第2パルスP2が入力されないため、負パルス信号PNを生成することができない。よって、制御部150は、
図5の矢印201に示す負パルス信号PNを検出しない。よって、制御部150は、第2処理を実施しない。
【0063】
ステップS210において、制御部150はメモリに3を記憶し、第3パルスP3の待ち状態とし、正パルス信号PP処理を終了する。
【0064】
上述したように、制御部150は、失火制御が行われている場合、点火制御信号SFを通電禁止状態にするため、負パルス信号PNが消失する。よって、制御部150には、負パルス信号PNが入力されず、第3パルスP3に対応する正パルス信号PPが入力される。つまり、制御部150は、負パルス信号PNの処理を実行せず、正パルス信号PP処理を実行する。
続いて、第3パルスP3に対応する正パルス信号PPが入力されると、制御部150は、正パルス信号PP処理を実行する。
【0065】
ステップS201において、制御部150は、ポート2に正パルス信号PPが入力されると、制御部150は、第1パルスP1の待ち状態であるか否かを判定する。制御部150は、前回、メモリに3を記憶したため、第1パルスP1の待ち状態ではない。よって、ステップS202に進む。
ステップS202において、制御部150は、第3パルスP3の待ち状態であるか否かを判定する。前回、メモリに3を記憶したため、第3パルスP3の待ち状態である。よって、制御部150は、第3パルスP3の待ち状態であると判定し(ステップS202:YES)、上述したステップS203において、第3処理を実行する。
【0066】
制御部150は、ステップS203において第3処理を実行後、メモリに1を記憶することで第1パルスP1の待ち状態とし(ステップS204)、第3パルスP3に対応した正パルス信号PPの処理を終了する。
制御部150は、第3パルスP3に対応する正パルス信号PPが入力された後、第1パルスP1に対応する正パルス信号PPが入力される。この場合、メモリには第1パルスP1の待ち状態が設定されているので、制御部150は、上述したステップS201(YES)、S206を実施する。
また、制御部150は、ステップS207において、回転速度RSを算出し、回転速度RSが閾値以上であるか否かを判定する。回転速度RSが閾値以上の場合、制御部150は、回転速度を抑制する失火制御条件が成立していると判定し、上述したステップS209を実行し、通電を禁止する。そして、制御部150は、ステップS210において、制御部150はメモリに3を記憶し、第3パルスP3の待ち状態とする。
【0067】
上述したように、制御部150は、失火制御が行われている場合、点火制御信号SFを通電禁止状態にすることで、ダミートランジスタ131がオフ状態となり、負パルス信号PNが入力されない。よって、制御部150は、第1パルスP1に対応する正パルス信号PPが入力された後は、負パルス信号PNではなく、第1パルスP1に対応する正パルス信号PPが入力される。そのため、制御部150は、メモリに2を記憶することがなく、1または3を記憶し、第1パルスP1または第3パルスP3の待ち状態とする。これにより、制御部150は、失火制御が行われている場合、第1処理と第3処理を交互に繰り返し、上述したように、第2処理は行われない。
ここで、第1処理は、第1パルスP1に応答して実施され、第3処理は、第3パルスP3に応答して実施される。このことは、失火制御中に、第1パルスP1と第3パルスP3の順番が制御部150において管理されていることを意味する。
【0068】
また、制御部150は、失火制御が行われている際に、ステップS207において、回転速度RSが閾値未満となった場合、即ち失火制御が終了した場合、上述した点火制御状態での動作を行う。つまり、制御部150は、点火制御が行われていると判定し、点火制御信号SFを通電許可状態とする。よって、負パルス信号生成部140は、ダミートランジスタ131がオン状態になるため、第2パルスP2が入力され、負パルス信号PNを生成する。よって、消失していた負パルス信号PNが出現し、制御部150は、第1処理を実行後、負パルス信号PNを検出することで第2処理を行う。このように、失火制御から点火制御に移行する際、制御部150は、各パルス信号に応じた処理を実行する。このことは、失火制御から点火制御に移行する場合にも各パルス信号の順番が制御部150において管理されていることを意味する。
【0069】
次に、本実施形態の効果について説明する。点火制御装置において、失火制御を行う場合の動作として、次の3通りの通常的な方法が想定される。
図6は、失火制御の第1の方法を説明するためのタイミングチャートである。
図7は、失火制御の第2の方法を説明するためのタイミングチャートである。
図8は、失火制御の第3の方法を説明するためのタイミングチャートである。
【0070】
第1の方法として、
図6に示す通り、制御部は負パルス信号PNが入力した直後に、点火出力信号SFを時刻T10でローレベルにし、通電禁止状態にすることで失火制御を行う方法が考えられる。しかしながら、この方法では、通電禁止となるまでに、わずかなタイムラグT11があり、点火出力信号SFの通電禁止のタイミングで誤点火する可能性がある。
これに対し、上述したように、本実施形態によれば、失火制御を行う際に、制御部150は、負パルス信号PNが入力される前に、点火出力信号SFをローレベルにし、通電禁止状態にする。これにより、タイムラグT11が発生することがなく、点火出力信号SFの通電禁止のタイミングで誤点火することを防ぐことができる。
【0071】
第2の方法として、
図7に示す通り、点火出力信号を常に通電許可状態にすることで、通電禁止のタイミングでローレベルとなり点火することを防ぐ、失火制御を行うことが考えられる。しかしながら、従来の点火制御装置は、負パルス信号PNが入力している間、スイッチ素子(スイッチ素子180に対応する)のベース(制御端子)に電圧を印加しているため、イグニッションコイルの1次巻線の一端と他端が短絡状態となる。これにより、内燃機関の高回転時の失火制御中にイグニッションコイルに大電流が流れる可能性がある。
これに対し、上述したように、本実施形態によれば、失火制御中、制御部150は、点火出力信号SFをローレベルにし、通電禁止状態に維持することができる。よって、制御部150は、失火制御中、スイッチ素子180をオフ状態に制御できるため、イグニッションコイル800に大電流が流れることがなく、安全に失火制御を行うことができる。
【0072】
第3の方法として、
図8に示す通り、失火制御を行っている間、点火出力信号SFをローレベルにし、通電禁止状態にする失火制御を行うことが考えられる。しかしながら、従来の点火制御装置は、負パルス信号PNが入力されなくなるため、パルス信号P、つまり第1パルスP1、第2パルスP2、第3パルスP3の順序の管理ができなくなる。これにより、内燃機関の回転速度が閾値以下になった場合でも、失火制御から点火制御に復帰することができない。
【0073】
これに対し、上述したように、本実施形態によれば、制御部150は、失火制御を行った際に、メモリに3を記憶し、第3パルスP3の待ち状態とした。これにより、制御部150は、第1パルスP1に応じた正パルス信号PPが入力された後に、負パルス信号PNが入力されず、第3パルスP3に応じた正パルス信号PPが入力された場合でも、第1パルスP1、第3パルスP3の発生順序を管理することができる。また、制御部150は、失火制御中、第1パルスP1、第3パルスP3の発生順序を管理することで、内燃機関の回転を管理することができ、点火のタイミングの基準を知ることができる。また、制御部150は、点火のタイミングの基準を知ることができるため、失火制御を維持した後、失火制御から点火制御に復帰することが可能になる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更、修正、置換等が可能である。
例えば、上述の実施形態では、第1パルスP1の周期Tから回転速度RSを算出するものとするが、この例に限定されることなく、イグニッションコイル800の通電の停止のタイミングに回転速度RSを反映させ得ることを限度として、パルス信号Pに含まれる任意のパルスを用いて回転速度RSを算出してもよい。
【0075】
例えば、第2パルスP2の周期から回転速度RSを算出してもよい。または、前回の回転周期における第1パルスP1〜P3の何れかのパルスの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと現在の回転周期における第1パルスP1の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジとの間の時間、前回の回転周期における第1パルスP1〜P3の何れかのパルスの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと現在の回転周期における第2パルスP1の立ち上がりエッジとの間の時間、現在の回転周期における第1パルスP1の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと第2パルスP2の立ち上がりエッジとの間の時間から回転速度RSを算出してもよい。
【0076】
また、例えば、上述の実施形態では、第1パルスP1の周期Tから内燃機関の回転速度RSを算出し、この回転速度RSに応じて通電停止のタイミングを設定するものとしたが、この例に限定されることなく、例えば、パルス信号Pの電圧を参照して通電停止のタイミング等を設定してもよい。この場合、例えば、パルス信号Pの振幅のピーク値が回転速度RSに対応して変化する傾向を示すことに着目し、第1パルスP1の振幅のピーク値を参照して通電停止のタイミングを設定してもよい。
【0077】
上述した実施形態における制御部150をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。