【文献】
Tandem organic light-emitting diodes with an effective charge-generation connection structure,Solid State Communications,2010年,150,1683-1685
【文献】
Herbert B. Michaelson,The work function of the elements and its periodicity,Journal of Applied Physics,1977年 7月 6日,Vol48,No.11,4729-4733
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正極と前記負極との間に2個のスタックを含み、第1のスタックは前記正極と隣接し、第2のスタックは前記負極と隣接し、前記無機ドーパントは、前記p型電荷生成層内で前記第2のスタックに接してドーピングされたことを特徴とする、請求項1に記載の白色有機発光素子。
前記第1の有機物ホストは、ヘテロ環(heterocyclic)を含む縮合芳香族環(Fused Aromatic Ring)で電子輸送特性を有する化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の白色有機発光素子。
各スタックの発光層に隣接した正孔輸送層と電子輸送層の三重項準位は、発光層のホストの三重項準位より0.01eV〜0.4eV高いことを特徴とする、請求項1に記載の白色有機発光素子。
【背景技術】
【0002】
本格的な情報化時代に入ることによって、電気的情報信号を視覚的に表示するディスプレイ分野が急速に発展している。そこで、多様な平板表示装置に対して薄型化、軽量化及び低消費電力化などの性能を開発させるための研究が継続されている。
【0003】
このような平板表示装置の代表的な例としては、液晶表示装置(Liquid Crystal Display device:LCD)、プラズマ表示装置(Plasma Display Panel device:PDP)、電界放出表示装置(Field Emission Display device:FED)、電気発光表示装置(Electro Luminescence Display device:ELD)、電気湿潤表示装置(Electro−Wetting Display device:EWD)及び有機発光表示装置(Organic Light Emitting Display device:OLED)などを挙げることができる。
【0004】
このうち、別途の光源を要求しないものであって、装置のコンパクト化及び鮮明なカラー表示のための有機発光表示装置が競争力のあるアプリケーションとして考慮されている。
【0005】
このような有機発光表示装置には、有機発光層の形成が必須である。
【0006】
前記有機発光層を画素別にパターニングせず、互いに異なる色相の有機発光層を含むスタック構造を積層することによって白色を表示する有機発光表示装置が提案された。
【0007】
すなわち、白色有機発光表示装置は、発光ダイオードの形成時、正極と負極との間の各層をマスクなしで蒸着するものであって、有機発光層を含む各有機膜は、その成分を異ならせて真空状態で順次蒸着することを特徴とする。
【0008】
前記白色有機発光表示装置は、薄型光源、液晶表示装置のバックライトまたはカラーフィルターを採用したフルカラー表示装置への使用など、多くの用途を有している素子である。
【0009】
一方、従来の有機発光表示装置は、互いに異なる色相の光を発光する各スタックが正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を含む。そして、各発光層内には、単一ホスト及び発光する色相用ドーパントが含まれ、発光層内に流入した電子と正孔の結合作用によって該当の色相が発光される。また、各スタックに互いに異なる色相の発光層を含み、複数のスタックを積層して形成するが、この場合、各スタックの間に電荷生成層(CGL:Charge Generation Layer)を置き、隣接したスタックから電子を受け取ったり、あるいは隣接したスタックに正孔を伝達する。そして、前記電荷生成層は、n型電荷生成層とp型電荷生成層に区分されるが、従来の電荷生成層構造を適用したとき、駆動電圧と寿命が全て改善された例はなかった。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明の白色有機発光素子を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の白色有機発光表示素子を示した断面図である。
【0030】
図1に示すように、本発明の白色有機発光素子は、基板100上に互いに対向した正極110及び負極150と、前記正極110と負極150との間にそれぞれ正孔輸送層(
図5の123参照)、発光層(
図5の125参照)及び電子輸送層(
図5の127参照)を含む複数のスタック120、140と、互いに異なるスタック120、140の間にn型電荷生成層133及びp型電荷生成層137を含む電荷生成層130とからなる。
【0031】
そして、前記n型電荷生成層133は、第1の有機物ホストh1を含み、前記p型電荷生成層137は、前記第1の有機物ホストh1のLUMOエネルギー準位より小さいかまたは同じLUMOエネルギー準位を有する第2の有機物ホストh2と、1体積%〜20体積%の、金属を含む無機ドーパントd2とからなる。
【0032】
また、図面上には、前記n型電荷生成層133にn型ドーパントd1が含まれた状態を示したが、これに限定されることなく、単一の第1の有機物ホストh1のみでn型電荷生成層133が構成されることも可能である。
【0033】
図面上には2個のスタックのみを図示したが、これに限定されることなく、3個以上のスタックにも適用可能である。また、3個以上のスタックが備えられるとき、前記スタックは、同一の色相の発光層を含む発光ユニットが繰り返された構造を有することができる。
【0034】
一方、各スタックを下側から青色スタック、青色より長波長の色相の光を発光する燐光スタックとして順次備えるとき、最終的に負極150あるいは正極110方向に白色の光が出力されることが可能である。
【0035】
また、図示した図面には、前記基板100上に隣接して正極110を形成し、その上側に複数のスタックの間の電荷生成層と負極150を形成した状態を示したが、場合に応じて、基板100に隣接して負極を備え、これと離隔・対向して正極を備えた後、負極と正極との間に、
図1とは逆順にスタックと電荷生成層を配置することもできる。
【0036】
ここで、前記燐光スタックの燐光発光層は、少なくとも一つの正孔輸送物質のホストと、少なくとも一つの電子輸送物質のホストとを含むことができ、ここで、黄緑色(Yellow Green)または黄色がかかったグリーン(Yellowish Green)領域あるいは赤緑色(Red Green)領域の波長の光を発光するドーパントを含む。
【0037】
また、前記燐光スタックの燐光発光層に含まれるドーパントは、1個または2個であり、ドーパントが2個である場合、互いに異なるドーピング濃度を有することができる。
【0038】
一方、前記第1のスタック120が青色スタックである場合、内部に青色蛍光発光層を備えて具現するが、場合に応じて材料の開発が可能であれば、青色燐光発光層への変更が可能である。
【0039】
そして、前記p型電荷生成層137に含まれる無機ドーパントd2は、例えば、MgF
2、MgCl
2及びZnF
2のうちいずれか一つであり得る。このような無機ドーパントd2は、第2の有機ホストh2と共に、熱蒸着が可能な材料であり、約2.9eV〜5.5eVの仕事関数を有する金属と、これとイオン結合可能な元素とが結合した無機化合物である。
【0040】
そして、前記p型電荷生成層137に含まれる無機ドーパントd2が有する仕事関数値W2は、上述した数値に限定されなく、隣接したn型電荷生成層133に含まれたアルカリ金属またはアルカリ土類金属のn型ドーパントd1の仕事関数値W1と同じかまたはそれより大きく、p型電荷生成層137の主材料である第2の有機ホストh2のLUMO2値の絶対値より少なくとも小さいかまたは同じ値であり得る。
【0041】
場合に応じて、前記n型電荷生成層133は、金属成分のn型ドーパントを含まず、第1の有機ホストh1がn型の有機物成分のみからなり得るが、この場合、前記p型電荷生成層137に含まれる無機ドーパントd2に含まれた金属の仕事関数値は、前記第1の有機ホストh1のLUMOの絶対値より大きい値でなければならない。
【0042】
一方、前記p型電荷生成層137の第2の有機ホストh2は、例えば、キノン(Quinone)系列の化合物や下記化学式(1)のHAT−CN材料からなり得る。
【0044】
また、前記無機ドーパントd2は、前記p型電荷生成層137内で、前記n型電荷生成層133に接してドーピングされたものであり得る。あるいは、前記無機ドーパントd2は、前記p型電荷生成層137内で前記第2のスタック140に接してドーピングされたものであり得る。
【0045】
この場合、前記無機ドーパントd2は、前記p型電荷生成層137の全体厚さをLとしたとき、0.1L〜Lの厚さに分布されたものであり得る。
【0046】
場合に応じて、前記無機ドーパントd2は、前記p型電荷生成層137内で互いに離隔した複数の領域に分布されたものであり得る。
【0047】
一方、前記n型電荷生成層133の主成分である第1の有機物ホストh1は、ヘテロ環(heterocyclic)を含む縮合芳香族環(Fused Aromatic Ring)で電子輸送特性を有する化合物であり得る。
【0048】
前記n型電荷生成層133に金属成分のn型ドーパントが含まれるとき、これは、n型電荷生成層133の全体体積の0.4%〜3%の含量で含まれることが好ましい。
【0049】
また、各スタック120、140の発光層に隣接した正孔輸送層と電子輸送層の三重項準位は、発光層のホストの三重項準位より0.01eV〜0.4eV高いことが好ましい。
【0050】
そして、前記p型電荷生成層137に最も隣接した第2のスタック140の正孔輸送層は、隣接した発光層に発生した電子あるいは励起子が流入することを防止できる電子あるいは励起子阻止機能を有する正孔輸送物質からなる。あるいは、正孔輸送層の単一層や、これに発光層側に隣接した励起子阻止層を別途にさらに備えることもできる。
【0051】
以下、図面を参照して本発明の各実施例を具体的に説明する。
【0052】
図2A及び
図2Bは、比較例と本発明の第1の実施例に係る白色有機発光素子の発光スタックと、それらの間の電荷生成層のエネルギーバンドギャップを示した図である。
【0053】
図2A及び
図2Bに示すように、比較例に比べて、本発明の第1実施例は、p型電荷生成層137に無機ドーパントd2がドーピングされた点において差を有する。
【0054】
すなわち、
図2Aの比較例では、p型電荷生成層37が単一の有機ホストからなるが、
図2Bの本発明の第1の実施例は、約2.9eV〜5.5eVの仕事関数を有する金属を無機ドーパントd2に含ませ、結果的に、第2のスタック140から伝達された電子がp型電荷生成層137における第2の有機ホストh2のLUMOエネルギー準位から無機ドーパントの仕事関数だけジャンピングし、n型電荷生成層133への電子伝達が容易になる。
【0055】
また、この場合、前記p型電荷生成層137の無機ドーパントd2に含まれた金属の仕事関数W2は、n型ドーパントd1の仕事関数W1と同じかまたはそれより大きく、その絶対値は、第2の有機ホストh2のLUMOエネルギー準位の絶対値より小さい値を有し、p型電荷生成層137の電子がn型電荷生成層133に伝達されるにおいて、界面で有するエネルギーバリアEを低下させることができる。この場合、前記電子は、p型電荷生成層137の第2の有機ホストのLUMOエネルギー準位、無機ドーパントの仕事関数、n型電荷生成層133の仕事関数の順に段階式でジャンピングして伝達される。したがって、p型電荷生成層137とn型電荷生成層133との界面で電子が蓄積されることを防止し、電子蓄積で発生する正孔抑制も防止され得る。したがって、p型電荷生成層137とn型電荷生成層133との界面の電子蓄積防止によって一次的に駆動電圧を低下させることができ、全体的にn型電荷生成層133から第1のスタック120への電子伝達、p型電荷生成層137から第2のスタック140への正孔伝達が円滑になり、装置の寿命を向上させるという効果も得ることができる。
【0056】
ここで、
図2Bで説明していない図面符号110は正極を意味し、150は負極を意味する。
【0057】
また、
図2Bと比較される
図2Aで説明していない符号11、12、33、40、50は、それぞれ正極、第1のスタック、n型電荷生成層、第2のスタック及び負極を示す。
【0058】
このように、本発明の白色有機発光素子は、高効率を達成するために2個のスタックまたはそれ以上のスタックの積層構造を形成し、効率を向上させる構造を適用する。このような積層構造では、電荷の生成及び移動のために電荷生成層構造を適用する。電荷として、p型電荷生成層と2個のスタックの正孔輸送層との界面で正孔と電子が生成され、生成された電子は、n型電荷生成層のLUMOエネルギー準位にジャンピングされて移動するようになる。このとき、
図2Aに示すように、p型電荷生成層とn型電荷生成層のエネルギーギャップEが大きいと、界面に電子が蓄積され、蓄積された電子は、正孔の生成を妨害するようになる。このような理由により、電圧が上昇し、結果的に寿命が短縮される。このような積層構造の増加による駆動電圧の上昇は、白色有機発光素子の脆弱点であって、解決しなければならない課題として指摘されている。
【0059】
したがって、本発明の白色有機発光素子は、高効率を達成するために、2個のスタックまたはそれ以上のスタックの積層構造を形成し、効率を向上させる構造を適用する。このような積層構造では、電荷の生成及び移動のために電荷生成層(CGL:Charge Generation Layer)を適用する。
【0060】
p型電荷生成層と2個のスタックの正孔輸送層との界面で正孔と電子が生成され、生成された電子は、n型電荷生成層のLUMOにジャンピングされて移動するようになる。このとき、p型電荷生成層とn型電荷生成層との間のエネルギーギャップを減少させるために、p型電荷生成層にn型電荷生成層のLUMOエネルギー準位より小さいかまたは同じLUMOエネルギー準位を有する有機物ホスト以外に、1体積%〜20体積%の、金属を含む無機ドーパントを含ませ、電子がp型電荷生成層からn型電子生成層に移るステップを形成する。これにより、n型電荷生成層とp型電荷生成層との間の界面に電子が蓄積され、蓄積された電子は、ホール生成を妨害することを未然に防止することができ、結果的に、低電圧駆動と寿命向上を共に得ることができる。
【0061】
図3は、本発明の第2の実施例に係る白色有機発光素子の発光スタックと、それらの間の電荷生成層のエネルギーバンドギャップを示した図である。
【0062】
図3に示すように、本発明の第2の実施例に係る白色有機発光素子は、第1の実施例に比べて、p型電荷生成層237に含まれる無機ドーパントd2をn型電荷生成層133に隣接して形成した点においてのみ差を有し、残りの構造は同一であり、同一の部位に対する説明は省略する。
【0063】
図4は、本発明の第3の実施例に係る白色有機発光素子の発光スタックと、それらの間の電荷生成層のエネルギーバンドギャップを示した図である。
【0064】
図4に示すように、本発明の第3の実施例に係る白色有機発光素子は、第1の実施例に比べて、p型電荷生成層337に含まれる無機ドーパントd2を第2のスタック140に隣接して形成した点においてのみ差を有し、残りの構造は同一であり、同一の部位に対する説明は省略する。
【0065】
第1〜第3の実施例の場合、いずれも、約2.9eV〜5.5eVの仕事関数を有する金属を無機ドーパントd2に含ませ、結果的に、第2のスタック140から伝達された電子がp型電荷生成層137、237、337における第2の有機ホストh2のLUMOエネルギー準位から無機ドーパントの仕事関数だけジャンピングし、n型電荷生成層への電子伝達が容易になる。また、この場合、前記p型電荷生成層137、237、337の無機ドーパント137a、237a、337aは、n型ドーパントd1の仕事関数W1と同じかまたはそれより大きく、その絶対値は、第2の有機ホストh2のLUMOエネルギー準位の絶対値より小さい値を有し、p型電荷生成層137、237、337の電子がn型電荷生成層133、233、333に伝達されるにおいて、界面で有するエネルギーバリアを低下させることができる。
【0066】
図5は、本発明の白色有機発光素子の発光スタックの断面図である。
【0067】
図5は、本発明の白色有機発光素子の第1のスタック120を示したものであって、正孔輸送層123、発光層125及び電子輸送層127が順次積層されたことを基本構成として示したものである。
【0068】
白色有機発光素子の各スタックは、このような構成を有し、正極110に隣接した第1のスタック120の場合、正極110に接しながら正孔注入層(図示せず)を上述した正孔輸送層123の下部にさらに含むことができ、負極150に隣接した第2のスタック140の場合、負極150に接しながら電子注入層(図示せず)をさらに含むことができる。後者の場合、電子注入層は、該当の発光スタックの電子輸送層上に形成される。
【0069】
ここで、各スタック120の発光層125に隣接した正孔輸送層123と電子輸送層127の三重項準位は、発光層125のホストの三重項準位より0.01eV〜0.4eV高いことが好ましい。これは、各発光層に発生した励起子が該当の発光層に隣接した正孔輸送層や電子輸送層に移らないように制限するためである。
【0070】
以下、各実施例の効果を比較例と比較して説明する。
【0071】
以下で説明する第1のスタックは、青色スタックとして青色蛍光発光層を用いており、第1のスタックは、正極に隣接して正孔注入層、第1の正孔輸送層、青色蛍光発光層及び第1の電子輸送層の順に形成される。
【0072】
そして、第2のスタックは、前記p型電荷生成層137、237または337に隣接して第2の正孔輸送層、燐光発光層、第2の電子輸送層及び電子注入層の順に形成される。そして、燐光発光層が、例えば、黄緑色燐光発光層である場合を実験した。
【0073】
そして、第1〜第3の実施例において、p型電荷生成層内で無機ドーパントの位置を異ならせた点を除いては、正極から負極までの各層の成分を次のようにして実験した。
【0074】
第1のスタックの正孔注入層は、上記化学式(1)のHAT−CNを用いて形成し、第1の正孔輸送層は、下記化学式(2)の材料を用いて形成した。また、青色蛍光発光層には、下記化学式(3)のホスト成分と、下記化学式(4)の青色ドーパントとを含ませた。そして、続いて形成する第2の電子輸送層は、下記化学式(5)の材料を用いて形成した。
【0075】
続いて形成するn型電荷生成層は、下記化学式(5)の材料を第1の有機ホストとして用いて形成し、これに、LiやMgなどの少量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の成分をn型ドーパントとして含ませた。
【0076】
そして、p型電荷生成層の第2の有機ホストは、上記化学式(1)のHAT−CN成分とし、含まれる無機ドーパントとしては、上述したMgF
2、MgCl
2及びZnF
2の無機ドーパンドのうちMgF
2を選択して実験し、その含量としては、下記の表1〜4の含量を参照する。
【0077】
また、第2のスタックの第2の正孔輸送層は、下記化学式(2)の材料を用いて形成し、燐光発光層は、ホストとして下記化学式(6)の材料を含み、黄緑色ドーパントとして下記化学式(7)の材料を含んだ。
【0078】
続いて形成する第2の電子輸送層は、下記化学式(5)の材料を用いて形成し、電子注入層は、LiFの成分を用いて形成した。
【0079】
一方、このような第1のスタックの各層及び第2のスタックの各層の正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の材料は、これに制限されるものではなく、それぞれの正孔輸送と電子輸送特性を勘案して選択・変更可能である。また、発光層は、各スタックで望む発光色によって選択するドーパントを異ならせることができる。
【0086】
図6は、本発明の第1の実施例に係る白色有機発光素子の1次無機物質のドーピング量変更によって駆動電圧対電流密度の関係を示したグラフで、
図7は、本発明の第1の実施例に係る白色有機発光素子の1次無機物質のドーピング量変更によって輝度変化による寿命を示したグラフである。
【0088】
図6、
図7及び表1では、それぞれ比較例において、p型電荷生成層の材料をHAT−CNの単一材料とし、第1の実施例では、p型電荷生成層の第2の有機ホストをHAT−CNとし、無機ドーパントはMgF
2として実験した。ただし、無機ドーパントMgF
2の含量を3%、5%、10%に異ならせ、比較例と無機ドーパントの含量が異なる場合によって駆動電圧特性と寿命を検討した。
【0089】
図6を検討すると、無機ドーパントをp型電荷生成層にドーピングするとき、同一の電流密度に対して、駆動電圧が比較例の場合より相対的に減少することを確認することができた。駆動電圧が減少した程度は、無機ドーパントの含量が3%、5%であるとき、それぞれ比較例の94%程度であることが分かり(電流密度10mA/cm
2であるとき)、無機ドーパントの含量が10%に増加したときは、駆動電圧が比較例の96%程度に、少量ドーピングしたときより少し上回ったことが分かる。電流密度が50mA/cm
2であるときは、比較例に比べて、無機ドーパントの含量が10%である場合、比較例の99%に駆動電圧差が減少するが、このときも、比較例に比べて、本発明の第1の実施例の駆動電圧が小さいという条件を維持する。
【0090】
また、
図7に示すように、比較例と本発明の第1の実施例の無機ドーパントMgF
2の含量を3%、5%、10%に異ならせたとき、ドーピング量が増加する場合、寿命は少し向上することを確認することができた。
【0091】
そして、本発明の第1の実施例の無機ドーパントの含量が異なる場合と比較例の場合、効率(EQE)は同一であるか、本発明の第1の実施例の方が良く、寿命が向上し、電流密度が増加するにもかかわらず、比較例に比べて効率が低下しないことを確認することができた。
【0092】
図8は、本発明の第1の実施例に係る白色有機発光素子の2次無機物質のドーピング量変更によって駆動電圧対電流密度の関係を示したグラフで、
図9は、本発明の第1の実施例に係る白色有機発光素子の2次無機物質のドーピング量変更によって輝度変化による寿命を示したグラフである。
【0093】
この実験例では、表1に比べて、第1の実施例の無機ドーパントの含量を10%から15%に増加させたことを示す。
【0095】
図8、
図9及び表2は、無機ドーパントの含量を10%と15%にしたときの比較例と対比された駆動電圧と寿命特性を検討したものである。
【0096】
ここで、電流密度が10mA/cm
2であるとき、無機ドーパントの含量が15%に増加すると、駆動電圧が比較例に比べて101%上昇するが、この場合も、電流密度を50mA/cm
2に増加させると、むしろ比較例よりも駆動電圧が2%減少することを確認することができる。すなわち、高電流密度でドーピング量が10%より多いとしても、駆動電圧を減少させ得るという効果があることを確認した。
【0097】
図9の寿命特性は、比較例と第1の実施例の無機ドーパントのドーピング量10%、15%でほぼ同じ特性を示したものであり、これは、
図7の寿命グラフと比較して、実験時間を増加させ、初期輝度L0の70%の値に輝度が低下するまで実験したものである。
図7の実験では、初期輝度L0の90%まで低下するのにかかる時間を測定し、実際の比較例と無機ドーパントのドーピング量が10%である場合は、初期輝度L0が100%から90%の範囲では
図7と
図9が同じ特性を示す。
【0098】
図10は、本発明の第1〜第3の実施例に係る白色有機発光素子の1次無機物質の同一のドーピング量によって駆動電圧対電流密度の関係を示したグラフで、
図11は、本発明の第1〜第3の実施例に係る白色有機発光素子の1次無機物質の同一のドーピング量によって輝度変化による寿命を示したグラフである。
【0100】
図10及び
図11と表3を検討すると、第1〜第3の実施例において、無機ドーパントの含量を5%に均一に維持し、ただし、無機ドーパント分布領域をp型電荷生成層の全体とする場合(第1の実施例)と、無機ドーパントをn型電荷生成層に隣接して分布させる場合(第2の実施例)と、無機ドーパントを第2のスタックに隣接して分布させる場合(第3の実施例)の場合において、それぞれ電流密度10mA/cm
2及び50mA/cm
2で駆動電圧特性と寿命を検討した。
【0101】
図10及び表3に示すように、電流密度が10mA/cm
2である場合、駆動電圧は、第1の実施例で比較例の89%、第2の実施例で比較例の86%、第3の実施例で比較例の83%であって、いずれも駆動電圧減少効果が比較例に比べて優れることを確認することができる。この場合、各実施例の量子効率(EQE)は、比較例に比べて100%、101%、99%であって、誤差範囲が1%としてほぼ同一の効率を示すことを確認することができる。
【0102】
また、電流密度が50mA/cm
2である場合も、駆動電圧は、第1の実施例で比較例の88%、第2の実施例で比較例の87%、第3の実施例で比較例の79%であって、いずれも駆動電圧減少効果が比較例に比べて優れることを確認することができる。
【0103】
この場合、寿命は、
図11に示すように、初期輝度L0の95%に低下するまでの時間が、比較例の25時間に比べて第1〜第3の実施例ではいずれも30時間以上になり、少なくとも初期輝度(L0)の95%に低下するまで、比較例に比べて各実施例では20%以上寿命が向上することが分かる。また、初期輝度が約95%でない、90%、75%、50%である場合は、比較例との差がいずれも著しいことを予想することが分かる(
図7と
図9の比較参照)。特に、第3の実施例の場合、寿命が初期輝度L0の95%になるまで約35時間になり、比較例より約40%以上寿命が向上したことを示す。
【0104】
図12は、本発明の第1〜第3の実施例に係る白色有機発光素子の2次無機物質の同一のドーピング量によって駆動電圧対電流密度の関係を示したグラフで、
図13は、本発明の第1〜第3の実施例に係る白色有機発光素子の2次無機物質の同一のドーピング量によって輝度変化による寿命を示したグラフである。
【0106】
図12及び
図13と表4を検討すると、第1〜第3の実施例において、無機ドーパントの含量を10%に均一に維持し、ただし、無機ドーパント分布領域をp型電荷生成層の全体とする場合(第1の実施例)と、無機ドーパントをn型電荷生成層に隣接して分布させる場合(第2の実施例)と、無機ドーパントを第2のスタックに隣接して分布させる場合(第3の実施例)において、それぞれ電流密度10mA/cm
2及び50mA/cm
2で駆動電圧特性と寿命を検討した。
【0107】
図12及び表4に示すように、電流密度が10mA/cm
2である場合、駆動電圧は、第1の実施例で比較例の100%、第2の実施例で比較例の100%、第3の実施例で比較例の100%であって、電流密度が10mA/cm
2の水準である場合、比較例と各実施例との間の差は微々たるものであった。
【0108】
しかし、電流密度が50mA/cm
2である場合も、駆動電圧は、第1の実施例で比較例の98%、第2の実施例で比較例の98%、第3の実施例で比較例の93%であって、いずれも駆動電圧減少効果が比較例に比べて優れることを確認することができる。
【0109】
この場合、
図13に示すように、初期輝度L0の95%に低下するまでの時間が、比較例の28時間に比べて第1〜第3の実施例ではいずれも32時間以上になり、少なくとも初期輝度(L0)の95%に低下するまで、比較例に比べて各実施例で14%以上寿命が向上することが分かる。また、初期輝度が約95%でない、90%、75%、50%である場合は、比較例との差がいずれも著しいことを予想することが分かる(
図7と
図9の比較参照)。特に、第3の実施例の場合、寿命が初期輝度L0の95%になるまで約40時間になり、比較例に比べて約40%以上寿命が向上したことを示す。
【0110】
例えば、n型電荷生成層に使用されるLiなどのn型ドーパントは、2.9eVの仕事関数を有し、p型電荷生成層に用いられる有機物(本発明の第2の有機ホスト)成分であるHAT−CNは、−5.5eVのLUMOを有する。本発明の白色有機発光素子では、p型電荷生成層に無機ドーパントを20%以下でドーピングし、p型電荷生成層のHAT−CN成分のLUMO値である−5.5eVからn型電荷生成層のn型ドーパントの仕事関数である2.9eVへの電子の伝達を助けることができる中間ステップを形成することによって、電子の蓄積による正孔生成抑制を防止し、2個のスタックの間での寿命減少を防止することができる。併せて、n型電荷生成層への電子の移動を助け、電子をさらに注入させることによって、電子の流れを円滑にできるようにカスケード構造を構成した。無機物ドーピングを適用することによって、電圧減少及び寿命上昇効果を得ることができる。
【0111】
白色有機発光素子の高性能具現のためにタンデム素子構造の適用が必須であるが、積層構造の増加と共に、駆動電圧が上昇する傾向がある。本発明は、タンデム素子構造に必須的に適用される電荷生成層に無機物質の共蒸着層を使用してカスケード構造を適用することによって、白色有機発光素子の高効率を達成可能にし、低電圧を具現することを目的とする。
【0112】
本発明の白色有機発光素子は、電荷生成層に無機物質の共蒸着を通じて低電圧素子を具現することができる。
【0113】
一方、以上で説明した本発明は、上述した実施例及び添付の図面に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であることが、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明白であろう。