特許第6140698号(P6140698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140698
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/26 20060101AFI20170522BHJP
   C08G 64/34 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C08G65/26
   C08G64/34
【請求項の数】15
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-520637(P2014-520637)
(86)(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公表番号】特表2014-520940(P2014-520940A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012063980
(87)【国際公開番号】WO2013011015
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年7月16日
(31)【優先権主張番号】11174412.4
(32)【優先日】2011年7月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エルンスト・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ギュルトラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ヴォハーク
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・アフザル・スブハニ
(72)【発明者】
【氏名】マウリス・コーゼマンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター・ライトナー
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−516796(JP,A)
【文献】 特開2006−055847(JP,A)
【文献】 特開平05−271218(JP,A)
【文献】 特表2001−525878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/26
C08G 64/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複金属シアン化物触媒の存在下において、1種類以上のH官能性スターター化合物、1種類以上のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素からポリエーテルカーボネートポリオールを製造する方法であって、
(α)複金属シアン化物触媒およびH官能性スターター物質または少なくとも2つのH官能性スターター物質の混合物をまず反応容器に導入し、
(β)活性化のために、部分量(工程(β)および(γ)において用いられるアルキレンオキシドの量の全量を基準とする)の1種類以上のアルキレンオキシドを、工程(α)から生じる混合物に添加し、ここで活性化のために工程(β)を複数回行ってもよく、
(γ)1種類以上のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素を、工程(β)から生じる混合物に連続的に計量添加し(「共重合」)、ここで共重合のために用いられるアルキレンオキシドは工程(β)において用いられるアルキレンオキシドと同一または異なり、
工程(γ)において、
(i)底部から反応器中の反応混合物にガッシングし、
(ii)中空シャフト攪拌機を用い、
(iii)(i)および(ii)による計量添加操作を組み合わせ、および/または
(iv)複数の段階において設置される攪拌機ユニットを用いることによって液体の表面にわたってガッシングすることによって二酸化炭素を混合物に通入することを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(β)において、部分量の1種類以上のアルキレンオキシドの添加を、不活性ガス/二酸化炭素混合物雰囲気下または二酸化炭素雰囲気下において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(α)は、
(α)(α1)複金属シアン化物触媒および1種類以上のH官能性スターター化合物をまず反応器に導入し、
(α2)不活性ガス、不活性ガス/二酸化炭素混合物または二酸化炭素を50〜200℃の温度において反応器に通入し、同時に不活性ガスまたは二酸化炭素を除去することによって反応器において10mbar〜800mbarの減圧(絶対)を達成することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(β)を50〜200℃の温度において行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(β)において用いられる1種類以上のアルキレンオキシドの量は、0.1〜25.0重量%(工程(α)において用いられるスターター化合物の量を基準とする)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(α)において
(α1)H官能性スターター化合物または少なくとも2つのH官能性スターター化合物の混合物をまず反応容器に導入し、
(α2)50〜200℃の温度において不活性ガス、不活性ガス/二酸化炭素混合物または二酸化炭素を複金属シアン化物触媒および1種類以上のH官能性スターター化合物の生成混合物に通入し、同時に不活性ガスまたは二酸化炭素の除去によって10mbar〜800mbarの減圧(絶対)を達成し、ここで、工程(α1)において、またはすぐに続く工程(α2)において、複金属シアン化物触媒を、H官能性スターター物質または少なくとも2つのH官能性スターター物質の混合物に添加する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アルゴンおよび/または窒素を不活性ガスとして用いる、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(β)および/または(γ)において、送込管、ガッシング環または送込管もしくはガッシング環と気体分配攪拌機との組み合わせを通して底部から反応器中の反応混合物をガッシングすることによって、二酸化炭素を混合物に通入する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
種類以上の攪拌機段階を気体分配攪拌機上の攪拌機シャフトに設置する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(β)および/または(γ)において、管式攪拌機または中空翼を備える傾斜翼タービンを通じて二酸化炭素を混合物に通入する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
用いられるH官能性スターター物質は、アルコール、アミン、チオール、アミノアルコール、チオアルコール、ヒドロキシエステル、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリエチレンイミン、ポリエーテル-アミン、ポリテトラヒドロフラン、ポリエーテルチオール、ポリアクリレートポリオール、ヒマシ油、リシノール酸のモノグリセリドまたはジグリセリド、脂肪酸のモノグリセリド、および脂肪酸の化学修飾モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドならびに1分子当たり平均少なくとも2つのOH基を含むC1〜C24-アルキル脂肪酸エステルからなる群から少なくとも1つ選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
用いられるH官能性スターター物質は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、2および3官能性ポリエーテルポリオールからなる群から少なくとも1つ選択され、ここで、ポリエーテルポリオールは、2もしくは3価のH官能性スターター物質およびプロピレンオキシドまたは2もしくは3価のH官能性スターター物質、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドから構成され、ポリエーテルポリオールは、62〜4,500g/モルの範囲の分子量Mnおよび2〜3の官能価を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
用いられる複金属シアン化物触媒は、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノイリジウム(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛およびヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト(II)からなる群から選択される少なくとも1つの複金属シアン化物化合物を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
用いられる複金属シアン化物触媒はさらに、脂肪族エーテル、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび3-メチル-3-オキセタン-メタノールからなる群から選択される少なくとも1つの有機錯化配位子を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
管式反応器、攪拌槽またはループ型反応器において行う、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のH官能性スターター物質の存在下における二酸化炭素(CO)とアルキレンオキシドとの触媒共重合によってポリエーテルカーボネートポリオールを製造するための、二酸化炭素雰囲気において複金属シアン化物(DMC)触媒を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
H官能性スターター物質(「スターター」)の存在下におけるアルキレンオキシド(エポキシド)と二酸化炭素との触媒反応によるポリエーテルカーボネートポリオールの製造は、40年以上精力的に研究されている(例えばInoueら、Copolymerization of Carbon Dioxide and Epoxide with Organometallic Compounds;Die Makromolekulare Chemie 第130号、第210〜220頁、1969年)。この反応は、式(I):
【化1】
〔式中、Rは、有機基、例えばアルキル、アルキルアリールまたはアリールを表し、それぞれヘテロ原子、例えばO、S、Si等を含んでもよく、eおよびfは整数を表す〕において図式形態で示され、式(I)においてポリエーテルカーボネートポリオールについて示される生成物は単に、示された構造を有するブロックは、得られるポリエーテルカーボネート中に原則として見出されるが、ブロックの順序、数および長さならびにスターターのOH官能価は変化してよく、式(I)に示されるポリエーテルカーボネートポリオールに限定されないことを意味すると理解される。この反応(式(I)参照)は、CO等の温室効果ガスのポリマーへの転化を示すので環境保護的に極めて有利である。式(I)において示される環式カーボネート(例えばR=CHに対してプロピレンカーボネート)は、更なる生成物、実際には副生成物として形成される。
【0003】
場合によりCOおよび/またはH官能性スターター化合物の存在下において、部分量のアルキレンオキシド化合物をDMC触媒に添加し、次いでアルキレンオキシド化合物の添加を中断し、ここで、次の発熱化学反応によって、温度ピーク(「ホットスポット」)を引き起こし得る発熱、およびアルキレンオキシドと場合によりCOとの反応によって反応器において圧力降下が観察される工程は、この発明に関しては活性化と呼ばれる。必要に応じて複数の個々の工程において、部分量のアルキレンオキシド化合物の添加を行ってよく、一般に各工程において発熱の発生が期待される。活性化の処理工程は、必要に応じてCOの存在下における、DMC触媒への部分量のアルキレンオキシド化合物の添加の開始から発熱の発生までの期間を含む。複数の個々の工程において部分量のアルキレンオキシド化合物を添加する場合、活性化の処理工程は、それぞれ発熱の発生まで段階的に部分量のアルキレンオキシド化合物を添加する全ての期間を含む。一般に、活性化工程の前に、昇温下および/または減圧下において、適当な場合には反応混合物に不活性ガスを通入しながら、DMC触媒および、適当な場合には、H官能性スターターを乾燥するための工程を行ってよい。
【0004】
EP-A 0222453には、DMC触媒および硫酸亜鉛等の助触媒の触媒系を用いてアルキレンオキシドおよび二酸化炭素からポリカーボネートを製造する方法が開示されている。この方法において、別個に部分量のアルキレンオキシドを触媒系に接触させることによって重合が開始される。その後初めて、残りの量のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素を同時に計量添加する。EP-A 0222453に記載された、実施例1〜7における活性化工程のための、H官能性スターター化合物に対して60重量%のアルキレンオキシド化合物の量は多く、アルキレンオキシド化合物の単独重合の発熱性が高いために、これは、大規模の工業的使用に関するある安全性リスクを示すという不利な点を有する。
【0005】
WO-A 2003/029325には、高分子量脂肪族ポリエーテルカーボネートポリオール(30,000g/モルより大きい重量平均分子量)の製造方法が開示され、ここで、カルボン酸亜鉛および無水の複金属シアン化物化合物からなる群からの触媒を用い、アルキレンオキシドを添加する前に、これをまず少なくとも部分量の二酸化炭素と接触させる。150bar以下のCOの最終圧力は、反応器および安全性について非常に高い要件を課す。150barの非常に高い圧力によってさえ、約33重量%のCOから最大42重量%のCOしか組み込まれなかった。提示されている実施例には、溶媒(トルエン)の使用が記載されており、これは、反応後に加熱によって再度分離しなければならず、これによって時間および費用支出の増加がもたらされる。さらに、そのポリマーは、不均質性または多分散度2.7以上を有し、非常に広い分子量分布を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0222453号明細書
【特許文献2】国際公開第2003/029325号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Inoueら、Copolymerization of Carbon Dioxide and Epoxide with Organometallic Compounds;Die Makromolekulare Chemie 第130号、第210〜220頁、1969年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、ポリマー中に組み込まれたCOの高い含有量をもたらすポリエーテルカーボネートポリオールの製造方法を提供することであった。本発明の好ましい実施態様において、生成するポリエーテルカーボネートポリオールの有利な選択性(すなわち、ポリエーテルカーボネートポリオールに対する環式カーボネートの低い比率)にも同時に影響し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本発明による目的は、DMC触媒の存在下において1以上のH官能性スターター化合物、1以上のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素からポリエーテルカーボネートポリオールを製造する方法であって、
(α)H官能性スターター物質または少なくとも2つのH官能性スターター物質の混合物をまず反応容器に導入し、適当な場合には、昇温および/または減圧によって水および/または他の易揮発性化合物を除去し(「乾燥」)、ここで乾燥前または乾燥後に、DMC触媒をH官能性スターター物質または少なくとも2つのH官能性スターター物質の混合物に添加し、
(β)活性化のために、部分量(工程(β)および(γ)において用いられるアルキレンオキシドの量の全量を基準とする)の1以上のアルキレンオキシドを、工程(α)から生じる混合物に添加し、ここで、部分量のアルキレンオキシドのこの添加を、COおよび/または不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン等)の存在下において場合により行ってよく、活性化のために工程(β)を複数回行ってもよく、
(γ)1以上のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素を、工程(β)から生じる混合物に連続的に計量添加し(「共重合」)、ここで共重合のために用いられるアルキレンオキシドは、工程(β)において用いられるアルキレンオキシドと同一または異なり、
工程(γ)において、
(i)底部から反応器における反応混合物にガッシングし(gassing)、
(ii)中空シャフト攪拌機を用い、
(iii)(i)および(ii)による計量添加操作を組み合わせ、および/または
(iv)複数の段階において設置される攪拌機ユニットを用いることによって液体の表面にわたってガッシングする
ことによって、二酸化炭素を混合物に通入することを特徴とする方法
によって達成されることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明の好ましい実施態様の目的は、ポリマー中に組み込まれたCOの高い含有量をもたらし、同時に生成するポリエーテルカーボネートポリオールの有利な選択性(すなわち、ポリエーテルカーボネートポリオールに対する環式カーボネートの低い比率)にも影響するポリエーテルカーボネートポリオールの製造方法を提供することであった。驚くべきことに、この好ましい実施態様の目的は、DMC触媒の存在下において1以上のH官能性スターター化合物、1以上のアルキレンオキシドおよび二酸化炭素からポリエーテルカーボネートポリオールを製造する上述の方法であって、工程(β)において、部分量の1以上のアルキレンオキシドの添加を、不活性ガス/二酸化炭素混合物(例えば窒素/二酸化炭素混合物またはアルゴン/二酸化炭素混合物)雰囲気下または二酸化炭素雰囲気下において、50〜200℃、好ましくは80〜160℃、特に好ましくは125〜135℃の温度において行うことを特徴とする方法によって達成されることを見出した。
【0011】
好ましい実施態様において、工程(β)での活性化において用いられる1以上のアルキレンオキシドの量は、0.1〜25.0重量%、好ましくは1.0〜20.0重量%、特に好ましくは2.0〜16.0重量%である(工程(α)において用いられるスターター化合物の量を基準とする)。アルキレンオキシドは、1つの工程において、または段階的に複数の部分量を添加してよい。好ましくは、DMC触媒は、生成するポリエーテルカーボネートポリオール中のDMC触媒の含有量が、10〜10,000ppm、特に好ましくは20〜5,000ppm、非常に好ましくは50〜500ppmであるような量で用いられる。
【0012】
工程(α):
工程(α)における個々の成分の添加は、同時にまたは連続的に任意の所望の順番で行ってよい;好ましくは、工程(α)においてDMC触媒をまず最初に反応容器に導入し、H官能性スターター化合物を同時にまたは連続的に添加する。
【0013】
好ましい実施態様は、工程(α)において
(α1)DMC触媒および1以上のH官能性スターター化合物をまず反応器に導入し、
(α2)50〜200℃、好ましくは80〜160℃、特に好ましくは125〜135℃の温度において、不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン等の希ガス)、不活性ガス/二酸化炭素混合物または二酸化炭素を反応器に通入し、同時に不活性ガスまたは二酸化炭素を除去することによって(例えばポンプを用いて)、反応器において10mbar〜800mbar、好ましくは40mbar〜200mbarの減圧(絶対)を達成する(「乾燥」)
方法を提供する。
【0014】
更なる好ましい実施態様は、工程(α)において
(α1)H官能性スターター化合物または少なくとも2つのH官能性スターター化合物の混合物を、場合により不活性ガス雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)下、不活性ガス/二酸化炭素混合物雰囲気下または純粋な二酸化炭素雰囲気下において、特に好ましくは不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)雰囲気下において、反応容器にまず導入し、
(α2)不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン等の希ガス)、不活性ガス/二酸化炭素混合物または二酸化炭素、特に好ましくは不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)を、50〜200℃、好ましくは80〜160℃、特に好ましくは125〜135℃の温度において、DMC触媒および1以上のH官能性スターター化合物の生成混合物に通入し、同時に不活性ガスまたは二酸化炭素を除去することによって(例えばポンプを用いて)、反応器において10mbar〜800mbar、好ましくは40mbar〜200mbarの減圧(絶対)を達成し、
ここで、工程(α1)において、またはすぐに続く工程(α2)において、複金属シアン化物触媒をH官能性スターター物質または少なくとも2つのH官能性スターター物質の混合物に添加する
方法を提供する。
【0015】
DMC触媒は、固体形状またはH官能性スターター化合物における懸濁液として添加してよい。DMC触媒を懸濁液として添加する場合、好ましくは工程(α1)においてこれを1以上のH官能性スターター化合物に添加する。
【0016】
工程(β):
活性化工程(工程(β))は、COおよび/または不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン等)の存在下において行うことができる。好ましくは、不活性ガス/二酸化炭素混合物(例えば窒素/二酸化炭素混合物またはアルゴン/二酸化炭素混合物)雰囲気下または二酸化炭素雰囲気下、特に好ましくは二酸化炭素雰囲気下において工程(β)を行う。不活性ガス/二酸化炭素混合物(例えば窒素/二酸化炭素混合物またはアルゴン/二酸化炭素混合物)雰囲気または二酸化炭素雰囲気の確立および1以上のアルキレンオキシドの計量添加は、原理上、様々な方法で行うことができる。初期圧は、好ましくは二酸化炭素を通入することによって確立し、ここでその圧力(絶対)は、10mbar〜100bar、好ましくは100mbar〜50bar、好ましくは500mbar〜50barである。アルキレンオキシドの計量添加の開始は、減圧から、または予め選択した初期圧下において行ってよい。工程(β)において、好ましくは、10mbar〜100bar、好ましくは100mbar〜50bar、好ましくは500mbar〜50barの範囲を、不活性ガス/二酸化炭素混合物(例えば窒素/二酸化炭素混合物またはアルゴン/二酸化炭素混合物)雰囲気または二酸化炭素雰囲気および場合によりアルキレンオキシドの全圧(絶対)として確立する。アルキレンオキシドの計量添加中または計量添加後に、適当な場合には更なる二酸化炭素を通入することによって、圧力を調節し、ここで圧力(絶対)は10mbar〜100bar、好ましくは100mbar〜50bar、好ましくは500mbar〜50barである。
【0017】
工程(γ):
1以上のアルキレンオキシドの計量添加の計量添加および二酸化炭素の計量添加は、同時に、交互に、または連続して行ってよく、二酸化炭素の全量を、一度にそろって、または反応時間にわたって計量添加することによって添加してよい。アルキレンオキシドの添加中において、CO圧を、徐々にまたは段階的に、増加または減少してよく、または一定に保ってよい。好ましくは、二酸化炭素を充填することによって反応中において全圧を一定に維持する。1以上のアルキレンオキシドまたはCOの計量添加を、二酸化炭素の計量添加と同時、または交互または連続的に行う。一定の計量添加速度でアルキレンオキシドを計量添加してよく、または計量添加速度を徐々にまたは段階的に増加または減少させてよく、またはアルキレンオキシドを分けて添加してよい。好ましくは、一定の計量添加速度でアルキレンオキシドを反応混合物に添加する。ポリエーテルカーボネートポリオールの合成のために複数のアルキレンオキシドを用いる場合、別個にまたは混合物としてアルキレンオキシドを計量添加してよい。アルキレンオキシドの計量添加は、それぞれ別個の計量添加操作(添加)によって、または1以上の計量添加操作によって、同時に、交互に、または連続的に行ってよく、別個にまたは混合物としてアルキレンオキシドを計量添加してよい。アルキレンオキシドおよび/または二酸化炭素の計量添加の性質および/または順序により、ランダム、交互、ブロック状またはグラジエント状のポリエーテルカーボネートポリオールを合成することができる。
【0018】
好ましくは、二酸化炭素の反応が遅いために過剰の二酸化炭素が有利であるので、ポリエーテルカーボネートポリオールに組み込まれる二酸化炭素の計算上の量を基準として過剰の二酸化炭素を用いる。二酸化炭素の量は、特定の反応条件下における全圧によって決定することができる。ポリエーテルカーボネートポリオールの製造のための共重合に対する全圧(絶対)として、0.01〜120bar、好ましくは0.1〜110bar、特に好ましくは1〜100barの範囲が有利であることが見出されている。連続的にまたは不連続的に二酸化炭素を供給してよい。これは、いかに速くアルキレンオキシドおよびCOが消費されるか、および生成物が場合によりCO不含有のポリエーテルブロックまたはCO含有量を変えたブロックを含むかどうかに依存する。二酸化炭素の量(圧力として記載)は、同様にアルキレンオキシドの添加中に変えてよい。選択した反応条件に応じて、気体、液体または超臨界状態でCOを反応器に通入することができる。COは、固体として反応器に添加してもよく、その場合、選択した反応条件下において気体、溶解、液体および/または超臨界状態に移行し得る。
【0019】
ポリエーテルカーボネートポリオールの製造のための共重合(工程(γ))は、50〜150℃、好ましくは60〜145℃、特に好ましくは70〜140℃、非常に特に好ましくは90〜130℃において行うことが有利であることが、本発明による方法においてさらに見出されている。50℃未満においては、反応は非常にゆっくりにしか進行しない。150℃より高い温度においては、望ましくない副生成物の量が非常に増加する。
【0020】
工程(γ)において、および場合により工程(β)においても、
(i)底部から反応器における反応混合物をガッシングし(例えば、送込管または攪拌機翼下に気体を導くガッシング環(ディストリビュータ環)によって)、および気体の充填に応じて、気体分配攪拌機(例えばディスク型攪拌機、パドル型攪拌機、ラッシュトン型タービン(例えばLightnin R-100(登録商標)、Ekato PHASE-JET(登録商標)、Philadelphia Mixing Solutions製のSmith Turbine(登録商標)、Chemineer BT-6(登録商標)またはCD-6(登録商標)攪拌機翼)と場合により組み合わせて、さらなる攪拌機ユニット(任意の所望の型、例えば、1.0〜10.0の範囲、好ましくは1.5〜7.0の範囲の反応器の細長比(=反応器高さ/反応器直径による)H/Dによって、軸方向輸送タービン、内部冷却表面への熱伝達を補助し、および/または液体表面を通して物質輸送を促進する攪拌機ユニット)を場合により攪拌機シャフトに配置する;2以上の攪拌機ユニットの組み合わせは、反応混合物の表面における気体の液相への物質輸送が改善されるという技術的な利点を有する;
(ii)中空シャフト攪拌機を用いる(すなわちジェット吸引原理によって)、例えば管状攪拌機、中空翼を備える傾斜翼タービンとして、Ekato GASJET(登録商標)、「br」シリーズのPREMEX実験室用ガッシング攪拌機、Parr Instruments製の実験室用ガッシング攪拌機を用いる;中空シャフト攪拌機の使用は、気体層に蓄積する気相を、中空シャフトを通して吸引し、再度底部から反応混合物に導入する効果を有する;
(iii)(i)および(ii)による計量添加操作の組み合わせ、これは、反応器における一定の充填レベルでの操作に有利である;例えば、(i)および(ii)による計量添加操作の組み合わせは、(i)において既述した考えられる実施形態の一つによる底部からの反応器中の反応混合物のガッシングと、(ii)による中空シャフト攪拌機(例えば第2分散段階としてこの上に配置されたジェット吸引ユニットを備えた気体分配攪拌機等)とを、好ましくは気体が中空シャフト攪拌機の下において底部から通入するような方法で、組み合わせることによって達成し得る;および/または
(iv)一般的に多段階設定の適当な攪拌機ユニット(例えばMIGまたはEkato MIG/INTERMIG(登録商標)等)を用いて、または液体表面に作用する攪拌機ユニット(例えば格子状攪拌機)によって、液体表面にわたってガッシングする
ことによって、二酸化炭素を混合物に通入する。
【0021】
攪拌条件の設定は、例えば底部からガッシングされる攪拌機ユニットのオーバーフローを確実に避けるために、または所望のエネルギー導入および/またはガッシング状態における物質輸送を確実にするために、反応条件(例えば液相の粘度、気体の充填、表面張力)に応じて、攪拌の最新技術によって場合に応じて当業者によって決定される。反応器は、例えばバッフルおよび/または冷却表面(管、コイル、プレートとして、または同様の形状で設定される)、ガッシング環および/または送込管等の既設の部品を場合により含む。更なる熱交換器表面をポンプ循環において設置してよく、その場合、反応混合物は適当なポンプ(例えばスクリューポンプ、遠心力またはギアポンプ)によって輸送される。ここで循環流は、例えば噴出ノズルによって、反応器に逆送りすることもでき、その結果、気体層の一部は吸引され、物質輸送を改善するために液相と強く混合される。
【0022】
(i)による反応器における反応混合物のガッシングは、好ましくはガッシング環、ガッシングノズルまたは気体送込管によって行われる。ガッシング環は、好ましくはガッシングノズルの1つの環状配置または2以上の環状配置であり、これは、好ましくは反応器の底部および/または反応器の側壁に配置される。
【0023】
中空シャフト攪拌機は、好ましくは攪拌機の中空シャフトによって気体を反応混合物に通入する攪拌機である。反応混合物における攪拌機が回転することによって(すなわち混合中)、中空シャフトに接続された攪拌機翼の末端において減圧が発生し、その結果、気相(COおよび場合により消費されていないアルキレンオキシドを含む)が反応混合物上の気体層から吸引され、攪拌機の中空シャフトによって反応混合物に通入される。
【0024】
(i)、(ii)、(iii)または(iv)による反応混合物のガッシングは、それぞれ新たに計量添加される二酸化炭素を用いて行うことができる(および/または反応混合物上の気体層からの気体の吸引および次の気体の再加圧を組み合わせる)。例えば、反応混合物上の気体層から吸引され、加圧され、場合により新たな二酸化炭素および/またはアルキレンオキシドと混合された気体を、(i)、(ii)、(iii)および/または(iv)による反応混合物に通入する。好ましくは、共重合中において反応生成物への二酸化炭素およびアルキレンオキシドの組み込みによって生じる圧力降下を、新たに計量添加する二酸化炭素によって補う。
【0025】
アルキレンオキシドは、別個にまたはCOと一緒に、液体表面を通してまたは直接にいずれでも、液相に通入することができる。好ましくは、アルキレンオキシドは液相に直接通入するが、これは、導入するアルキレンオキシドは素早く液相と混合され、アルキレンオキシドの局所濃度ピークはこのようにして避けられるという利点を有するためである。液相への導入は、1以上の送込管、1以上のノズルまたは複合計量添加ポイントの1以上の環状配置によって行うことができ、これらは好ましくは反応器の底部および/または反応器の側壁に設置される。
【0026】
3つの工程α、βおよびγは、同一の反応器において行ってよく、またはそれぞれ異なる反応器において別個に行ってよい。特に好ましい反応器型は、攪拌槽、管式反応器およびループ型反応器である。反応工程α、βおよびγを異なる反応器において行う場合、各工程に対して異なる反応器型を用いてよい。
【0027】
ポリエーテルカーボネートポリオールは、攪拌槽において製造することができ、ここで攪拌槽は、操作の方法や実施態様に応じて、反応器ジャケット、内部冷却表面および/またはポンプ循環における冷却表面によって冷却される。生成物を反応終了後にしか取り出さない半回分式操作、および生成物を連続的に取り出す連続式操作のいずれの場合においても、特にアルキレンオキシドの計量添加速度に対して注意を払うべきである。二酸化炭素の抑制作用にも関わらずアルキレンオキシドが十分に速く完全に反応するように、これを調節すべきである。活性化工程(工程β)中の反応混合物における遊離アルキレンオキシドの濃度は、好ましくは>0ないし100重量%、特に好ましくは>0ないし50重量%、非常に好ましくは>0ないし20重量%(それぞれ反応混合物の重量を基準とする)である。反応(工程γ)中の反応混合物における遊離アルキレンオキシドの濃度は、好ましくは>0ないし40重量%、特に好ましくは>0ないし25重量%、非常に好ましくは>0ないし15重量%(それぞれ反応混合物の重量を基準とする)である。
【0028】
共重合(工程γ)のための攪拌槽(バッチ)における更なるあり得る実施態様は、1以上のH官能性スターター化合物を反応中において反応器に連続的に計量添加することによって特徴付けられる。半回分式操作においてこの方法を行う場合、反応中に反応器に連続的に計量添加されるH官能性スターター化合物の量は、好ましくは少なくとも20当量モル%、特に好ましくは70〜95当量モル%(それぞれH官能性スターター化合物の全量を基準とする)である。この方法を連続的に行う場合、反応中に反応器に連続的に計量添加するH官能性スターター化合物の量は、好ましくは少なくとも80当量モル%、特に好ましくは95〜105当量モル%(それぞれH官能性スターター化合物の全量を基準とする)である。
【0029】
好ましい実施態様において、工程αおよびβによって活性化された触媒/スターター混合物は、同一の反応器においてアルキレンオキシドおよび二酸化炭素とさらに反応する。更なる好ましい実施態様において、工程αおよびβによって活性化された触媒/スターター混合物は、異なる反応容器(例えば攪拌槽、管式反応器またはループ型反応器)においてアルキレンオキシドおよび二酸化炭素とさらに反応する。更なる好ましい実施態様において、工程αによって乾燥された触媒/スターター混合物は、異なる反応器(例えば攪拌槽、管式反応器またはループ型反応器)において工程βおよびγによってアルキレンオキシドおよび二酸化炭素と反応する。
【0030】
管式反応器において反応を行う場合、工程αによって乾燥された触媒/スターター混合物または工程αおよびβによって活性化された触媒/スターター混合物および適当な場合には更なるスターターならびにアルキレンオキシドおよび二酸化炭素を、管を通して連続的に送り出す。工程αによって乾燥された触媒/スターター混合物を用いる場合、工程βによる活性化を管式反応器の第1部分において行い、工程βによる共重合を管式反応器の第2部分において行う。反応相手のモル比率は、所望のポリマーによって変わる。好ましい実施態様において、各成分の最適な混和を可能とするために、ここで液体または超臨界状態で二酸化炭素を計量添加する。反応器の入り口において、および/または反応器に沿って設置された計量添加ポイントを通して、二酸化炭素を反応器に導入してよい。反応器の入り口において、部分量のエポキシドを導入してよい。エポキシドの残りの量は、好ましくは、反応器に沿って配置された複数の計量添加ポイントを通して反応器に導入する。反応相手とのより良い完全な混合のために、例えばEhrfeld Mikrotechnik BTS GmbHによって市販されているような混合部材、または混合と熱除去を同時に改良した混合機−熱交換機部材を取り付けるのが有利である。好ましくは、計量添加するCOおよび/またはアルキレンオキシドを、混合部材によって反応混合物と混合する。別の実施態様においては、反応混合物の種々の体積要素を互いに混合する。
【0031】
同じくループ型反応器をポリエーテルカーボネートポリオールの製造に用いることができる。これは一般に、物質を内部的および/または外部的に再循環する反応器を含み(循環に配置される熱交換器表面を場合により有する)、例えば連続的に操作することもできる、ストリームループ型反応器、ジェットループ型反応器もしくはベンチュリー(Venturi)ループ型反応器、または反応混合物を循環するのに適当な装置を備えたループ状に設定された管式反応器または直列に接続された複数の管式反応器または直列に接続された複数の攪拌槽のループである。
【0032】
完全な転化を実現するために、工程γを行う反応装置の下流に、更なる槽または管(「ドゥエルチューブ(dwell tube)」)を接続することが多く、ここで反応後に存在する遊離アルキレンオキシドの残留濃度が反応する。好ましくは、この下流の反応器における圧力は、反応工程γを行う反応装置と同じ圧力である。しかし、下流の反応器における選択圧力は、より高くても低くてもよい。更なる好ましい実施態様において、反応工程γ後、全てまたは一部の二酸化炭素を抜き、標準圧下またはわずかに増加させた圧力下において下流の反応器を操作する。下流の反応器における温度は、好ましくは10〜150℃、好ましくは20〜100℃である。下流の反応器の終端においては、反応混合物は好ましくは0.05重量%未満のアルキレンオキシドを含む。
【0033】
本発明によって得られるポリエーテルカーボネートポリオールは、少なくとも0.8、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6、非常に特に好ましくは2〜4のOH官能価(すなわち1分子当たりのOH基の平均数)を好ましく有する。その分子量は、少なくとも400、好ましくは400〜1,000,000g/モル、特に好ましくは500〜60,000g/モルである。
【0034】
一般に、2〜45個の炭素原子を有するアルキレンオキシド(エポキシド)を本発明による方法に用いることができる。2〜45個の炭素原子を有するアルキレンオキシドは例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2,3-ブテンオキシド、2-メチル-1,2-プロペンオキシド(イソブテンオキシド)、1-ペンテンオキシド、2,3-ペンテンオキシド、2-メチル-1,2-ブテンオキシド、3-メチル-1,2-ブテンオキシド、1-ヘキセンオキシド、2,3-ヘキセンオキシド、3,4-ヘキセンオキシド、2-メチル-1,2-ペンテンオキシド、4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、2-エチル-1,2-ブテンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド、1-ドデセンオキシド、4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロヘプテンオキシド、シクロオクテンオキシド、スチレンオキシド、メチルスチレンオキシド、ピネンオキシド、モノ-、ジ-およびトリグリセリドとしてのモノ-またはポリエポキシ化脂肪、エポキシ化脂肪酸、エポキシ化脂肪酸のC1〜C24エステル、エピクロロヒドリン、グリシドール、およびグリシドールの誘導体、例えばメチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等ならびにエポキシド官能性アルキルオキシシラン、例えば3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン等からなる群から選択される1以上の化合物である。好ましくは、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド、特にプロピレンオキシドをアルキレンオキシドとして用いる。
【0035】
アルコキシル化に対して活性なH原子を有する化合物を、適当なH官能性スターター化合物として用いることができる。活性H原子を有し、アルコキシル化に対して活性な基は例えば、-OH、-NH2(第1級アミン)、-NH-(第2級アミン)、-SHおよび-CO2Hであり、-OHおよび-NH2が好ましく、-OHが特に好ましい。用いられるH官能性スターター物質は、として例えば、単価または多価アルコール、多官能性アミン、多官能性チオール、アミノアルコール、チオアルコール、ヒドロキシエステル、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカーボネート、ポリエチレンイミン、ポリエーテルアミン(例えばいわゆるHuntsman製のJeffamine(登録商標)、例えばD-230、D-400、D-2000、T-403、T-3000、T-5000等またはBASFの対応製品、例えばポリエーテルアミンD230、D400、D200、T403、T5000等)、ポリテトラヒドロフラン(例えばBASFのPolyTHF(登録商標)、例えばPolyTHF(登録商標)250、650S、1000、1000S、1400、1800、2000等)、ポリテトラヒドロフランアミン(BASF製品ポリテトラヒドロフランアミン1700)、ポリエーテルチオール、ポリアクリレートポリオール、ヒマシ油、リシノール酸のモノグリセリドまたはジグリセリド、脂肪酸のモノグリセリド、脂肪酸の化学変性モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリド、および1分子当たり平均少なくとも2個のOH基を含むC1〜C24-アルキル脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の化合物を用いる。例えば、1分子当たり平均少なくとも2個のOH基を含むC1〜C24-アルキル脂肪酸エステルは、Lupranol Balance(登録商標)(BASF AG)、Merginol(登録商標)型(Hobum Oleochemicals GmbH)、Sovermol(登録商標)型(Cognis Deutschland GmbH & Co. KG)およびSoyol(登録商標)TM型(USSC Co.)等の市販製品である。
【0036】
用いることができる単官能性スターター化合物は、アルコール、アミン、チオールおよびカルボン酸である。用いることができる単価アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、3-ブテン-1-オール、3-ブチン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-メチル-2-プロパノール、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、フェノール、2-ヒドロキシビフェニル、3-ヒドロキシビフェニル、4-ヒドロキシビフェニル、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジンである。あり得る単官能性アミンは、ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、アニリン、アジリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンである。用いることができる単官能性チオールは、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-ブテン-1-チオール、チオフェノールである。挙げらることができる単官能性カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、アクリル酸である。
【0037】
H官能性スターター物質として適当な多価アルコールは、例えば、2価アルコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、メチルペンタンジオール(例えば3-メチル-1,5-ペンタンジオール等)、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ビス-(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン(例えば1,4-ビス-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコールおよびポリブチレングリコール等);3価アルコール(例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ヒマシ油等);4価アルコール(例えばペンタエリスリトール等);ポリアルコール(例えばソルビトール、ヘキシトール、スクロース、デンプン、デンプン加水分解物、セルロース、セルロース加水分解物、ヒドロキシ官能化脂肪およびオイル、特にヒマシ油等)、および上記アルコールと種々の量のε−カプロラクトンとの変性生成物である。
【0038】
H官能性スターター物質は、ポリエーテルポリオール、特に100〜4,000g/モルの範囲の分子量Mを有するポリエーテルポリオールの物質種から選択することもできる。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド繰り返し単位から構成されたポリエーテルポリオールが好ましく、好ましくは35〜100%のプロピレンオキシド単位の含有量を有し、特に好ましくは50〜100%のプロピレンオキシド単位の含有量を有する。これらは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダムコポリマー、グラジエントコポリマー、交互またはブロックコポリマーであってよい。プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド繰り返し単位から構成された適当なポリエーテルポリオールは、例えばBayer MaterialScience AGのDesmophen(登録商標)、Acclaim(登録商標)、Arcol(登録商標)、Baycoll(登録商標)、Bayfill(登録商標)、Bayflex(登録商標)、Baygal(登録商標)、PET(登録商標)およびポリエーテルポリオール(例えばDesmophen(登録商標)3600Z、Desmophen(登録商標)1900U、Acclaim(登録商標)Polyol 2200、Acclaim(登録商標)Polyol 4000I、Arcol(登録商標)Polyol 1004、Arcol(登録商標)Polyol 1010、Arcol(登録商標)Polyol 1030、Arcol(登録商標)Polyol 1070、Baycoll(登録商標)BD 1110、Bayfill(登録商標)VPPU 0789、Baygal(登録商標)K55、PET(登録商標)1004、Polyether(登録商標)S180等)である。更なる適当なホモポリエチレンオキシドは、例えばBASF SEのPluriol(登録商標)Eブランドであり、適当なホモポリプロピレンオキシドは、例えばBASF SEのPluriol(登録商標)Pブランドであり、適当なエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの混合コポリマーは、例えばBASF SEのPluronic(登録商標)PEまたはPluriol(登録商標)RPEブランドである。
【0039】
H官能性スターター物質は、ポリエステルポリオール、特に200〜4,500g/モルの範囲の分子量Mを有するポリエステルポリオールの物質種から選択することもできる。少なくとも2官能性のポリエステルをポリエステルポリオールとして用いる。ポリエステルポリオールは、好ましくは交互の酸およびアルコール単位を含む。用いることができる酸成分は、例えばコハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、無水フタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸または上記の酸および/または無水物の混合物である。用いるアルコール成分は、例えばエタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス-(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールまたは上記のアルコールの混合物である。2価または多価ポリエーテルポリオールをアルコール成分として用いる場合、ポリエーテルカーボネートポリオールの製造のためのスターター物質として同様に機能することができるポリエステルエーテルポリオールが得られる。好ましくは、M=150〜2,000g/モルを有するポリエーテルポリオールを、ポリエステルエーテルポリオールの製造に用いる。
【0040】
H官能性スターター物質として、ポリカーボネートジオール、特に150〜4,500g/モル、好ましくは500〜2,500g/モルの範囲の分子量Mを有するポリカーボネートジオールをさらに用いることができ、これらは例えばホスゲン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはジフェニルカーボネートおよび2価アルコールまたはポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールの反応によって製造される。ポリカーボネートの例は、例えばEP-A 1359177に見出される。例えば、ポリカーボネートジオールとして、Bayer MaterialScience AGのDesmophen(登録商標)C型、例えばDesmophen(登録商標)C 1100またはDesmophen(登録商標)C 2200等を用いることができる。
【0041】
本発明のさらなる実施態様においては、H官能性スターター物質としてポリエーテルカーボネートポリオールを用いることができる。特に、ここに記載された本発明による方法によって得ることができるポリエーテルカーボネートポリオールが用いられる。H官能性スターター物質として用いるこのポリエーテルカーボネートポリオールは、別個の反応工程においてこのために予め調製される。
【0042】
H官能性スターター物質は、一般に1〜8、好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4のOH官能価(すなわち1分子当たりの、重合に活性なH原子の数)を有する。H官能性スターター物質は、単独または少なくとも2つのH官能性スターター物質の混合物としてのいずれかで用いられる。
【0043】
好ましいH官能性スターター物質は、一般式(II):
HO−(CH−OH (II)
〔式中、xは、1〜20の数、好ましくは2〜20の偶数である〕
のアルコールである。式(II)によるアルコールは、例えばエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールおよび1,12-ドデカンジオールが挙げられる。更なる好ましいH官能性スターター物質は、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、式(II)によるアルコールとε−カプロラクトンとの反応生成物、例えばトリメチロールプロパンとε−カプロラクトンとの反応生成物、グリセロールとε−カプロラクトンとの反応生成物およびペンタエリスリトールとε−カプロラクトンとの反応生成物である。さらに好ましく用いられるH官能性スターター化合物は、水、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヒマシ油、ソルビトールおよびポリアルキレンオキシド繰り返し単位から構成されるポリエーテルポリオールである。
【0044】
H官能性スターター物質は、特に好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、2官能性および3官能性ポリエーテルポリオールからなる群から選択される1以上の化合物であり、ここでポリエーテルポリオールは、ジ−またはトリ−H官能性スターター化合物およびプロピレンオキシドから構成されるか、またはジ−またはトリ−H官能性スターター化合物、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドから構成される。ポリエーテルポリオールは、好ましくは2〜4のOH官能価、および62〜4,500g/モルの範囲の分子量M、特に62〜3,000g/モルの範囲の分子量Mを有する。
【0045】
ポリエーテルカーボネートポリオールの製造は、二酸化炭素およびアルキレンオキシドのH官能性スターター物質への触媒付加によって行う。本発明に関して、「H官能性」とは、アルコキシル化に対して活性であるスターター化合物の1分子当たりのH原子の数を意味すると理解される。
【0046】
アルキレンオキシドの単独重合に用いるDMC触媒は原理上、従来技術から既知である(例えばUS-A 3404109、US-A 3829505、US-A 3941849およびUS-A 5158922参照)。例えばUS-A 5470813、EP-A 700949、EP-A 743093、EP-A 761708、WO 97/40086、WO 98/16310およびWO 00/47649に記載されているDMC触媒は、非常に高い活性を有し、非常に低い触媒濃度においてポリエーテルカーボネートポリオールの製造が可能となる。代表的な例は、EP-A 700949に記載されている高活性DMC触媒であり、これは、複金属シアン化物化合物(例えばヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛)および有機錯化配位子(例えばtert-ブタノール)に加えて、500g/モルより大きい数平均分子量を有するポリエーテルも含む。
【0047】
本発明によるDMC触媒は、好ましくは
(a)第1工程において、1以上の有機錯化配位子、例えばエーテルまたはアルコールの存在下において、金属塩の水溶液を金属シアン化物塩の水溶液と反応させ、
(b)第2工程において、既知の技術(例えば遠心分離またはろ過)によって、(i)から得られた懸濁液から固体を分離し、
(c)適当な場合には、第3工程において、有機錯化配位子の水溶液を用いて、分離した固体を洗浄し(例えば再懸濁し、次いでろ過または遠心分離による新たな分離により)、
(d)次に、得られた固体を、適当な場合には粉状化後に、一般に20〜120℃の温度、一般に0.1mbar〜標準圧(1013mbar)の圧力下において乾燥し、
ここで、第1工程において、または複金属シアン化物化合物の沈殿(第2工程)直後に、1以上の有機錯化配位子、好ましくは過剰に(複金属シアン化物化合物を基準とする)、および必要に応じて更なる錯化成分を添加する
手順によって得られる。
【0048】
本発明によるDMC触媒に含まれる複金属シアン化物化合物は、水溶性金属塩と水溶性金属シアン化物塩との反応生成物である。
【0049】
例えば、塩化亜鉛(好ましくは、例えばヘキサシアノコバルト酸カリウム等の金属シアン化物塩を基準として過剰)の水溶液およびヘキサシアノコバルト酸カリウムを混合し、その後、ジメトキシエタン(グライム)またはtert-ブタノール(好ましくは、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛を基準として過剰)を、形成した懸濁液に添加する。
【0050】
複金属シアン化物化合物の調製に適当な金属塩は、好ましくは一般式(III):
M(X) (III)
〔式中、
Mは、金属カチオンZn2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Sr2+、Sn2+、Pb2+およびCu2+から選択され、好ましくは、MはZn2+、Fe2+、Co2+またはNi2+であり、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、nは1であり、および
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、nは2である〕
を有し、
または、適当な金属塩は一般式(IV):
(X) (IV)
〔式中、
Mは、金属カチオンFe3+、Al3+、Co3+およびCr3+から選択され、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、rは2であり、および
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、rは1である〕
を有し、
または、適当な金属塩は一般式(V):
M(X) (V)
〔式中、
Mは、金属カチオンMo4+、V4+およびW4+から選択され、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、sは2であり、
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、sは4である〕
を有し、
または、適当な金属塩は一般式(VI):
M(X) (VI)
〔式中、
Mは、金属カチオンMo6+およびW6+から選択され、
Xは、1以上の(すなわち異なる)アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンの群から選択されるアニオンである;
X=硫酸イオン、炭酸イオンまたはシュウ酸イオンの場合、tは3であり、
X=ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオンまたは硝酸イオンの場合、tは6である〕
を有する。
【0051】
適当な金属塩として、例えば塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト(II)、塩化ニッケル(II)および硝酸ニッケル(II)が挙げられる。種々の金属塩の混合物を用いることもできる。
【0052】
複金属シアン化物化合物の調製に適当な金属シアン化物塩は、好ましくは一般式(VII):
(Y)M’(CN)(A) (VII)
〔式中、
M’は、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)およびV(V)からなる群から選択される1以上の金属カチオンであり、好ましくは、M’はCo(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)およびNi(II)からなる群の1以上の金属カチオンであり、
Yは、アルカリ金属(すなわちLi、Na、K、Rb)およびアルカリ土類金属(すなわちBe2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+)からなる群から選択される1以上の金属カチオンであり、
Aは、ハロゲン化物イオン(すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、アジ化物イオン、シュウ酸イオンまたは硝酸イオンからなる群から選択される1以上のアニオンであり、
a、bおよびcは整数であり、ただしa、bおよびcの価数は、金属シアン化物塩が電気的中性を有するように選択される;aは好ましくは1、2、3または4である;bは好ましくは4、5または6である;cは好ましくは価数0を有する〕
を有する。
【0053】
適当な金属シアン化物塩として、例えばヘキサシアノコバルト(III)酸ナトリウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(III)酸カルシウムおよびヘキサシアノコバルト(III)酸リチウムが挙げられる。
【0054】
本発明によるDMC触媒が含む好ましい複金属シアン化物化合物は、一般式(VIII):
[M’x’(CN) (VIII)
〔式中、
Mは、式(II)〜(VI)において規定され、
M’、は式(VII)において規定され、および
x、x’、yおよびzは、整数であり、複金属シアン化物化合物が電気的中性を有するように選択される〕
の化合物である。
【0055】
好ましくは、
x=3、x’=1、y=6およびz=2、
M=Zn(II)、Fe(II)、Co(II)またはNi(II)および
M’=Co(III)、Fe(III)、Cr(III)またはIr(III)である。
【0056】
適当な複金属シアン化物化合物a)として、例えばヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノイリジウム(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛およびヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト(II)が挙げられる。適当な複金属シアン化物化合物の更なる例は、例えばUS-A 5158922(第8欄、第29〜66行)に見られる。ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛が特に好ましく用いられる。
【0057】
DMC触媒の調製において添加される有機錯化配位子は、例えばUS 5158922(特に第6欄、第9〜65行参照)、US 3404109、US 3829505、US 3941849、EP 700949、EP 761708、JP 4145123、US 5470813、EP-A 743093およびWO-A 97/40086に開示されている。例えば、酸素、窒素、リンまたは硫黄等のヘテロ原子を有する水溶性有機化合物は、複金属シアン化物化合物と錯体を形成することができ、有機錯化配位子として用いられる。好ましい有機錯化配位子は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、ウレア、ニトリル、スルフィドおよびこれらの混合物である。特に好ましい有機錯化配位子は、脂肪族エーテル(例えばジメトキシエタン)、水溶性脂肪族アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、2-メチル-3-ブテン-2-オールおよび2-メチル-3-ブチン-2-オール)、および脂肪族または脂環式エーテル基と脂肪族ヒドロキシル基との両方を含む化合物(例えばエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルおよび3-メチル-3-オキセタン-メタノール等)である。非常に好ましい有機錯化配位子は、ジメトキシエタン、tert-ブタノール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルおよび3-メチル-3-オキセタン-メタノールからなる群から選択される1以上の化合物である。
【0058】
本発明によるDMC触媒の調製において必要に応じて用いられるのは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアルキレングリコールソルビタンエステル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸)、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリ(N-ビニルピロリドン-co-アクリル酸)、ポリビニルメチルケトン、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリ(アクリル酸-co-スチレン)、オキサゾリンポリマー、ポリアルキレンイミン、マレイン酸およびマレイン酸無水物コポリマー、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリアセタールの化合物種、またはグリシジルエーテル、グリコシド、多価アルコールのカルボン酸エステル、胆汁酸もしくはそれらの塩、エステルもしくはアミド、シクロデキストリン、リン化合物、α,β-不飽和カルボン酸エステルもしくはイオン界面活性もしくは接合面活性化合物の化合物類からの1以上の錯化成分である。
【0059】
好ましくは、本発明によるDMC触媒の調製における第1工程において、金属シアン化物塩に基づいて化学量論上過剰(少なくとも50モル%)に用いた金属塩(例えば塩化亜鉛)(すなわち少なくとも金属塩対金属シアン化物塩のモル比が2.25対1.00)および金属シアン化物塩(例えばヘキサシアノコバルト酸カリウム)の水溶液を有機錯化配位子(例えばtert-ブタノール)の存在下において反応させ、複金属シアン化物化合物(例えばヘキサシアノコバルト酸亜鉛)、水、過剰の金属塩および有機錯化配位子を含む懸濁液が生成させる。
【0060】
これに関して、有機錯化配位子は、金属塩および/もしくは金属シアン化物塩の水溶液に存在してよく、または複金属シアン化物化合物の沈殿後に得られる懸濁液に直接添加される。金属塩および金属シアン化物塩の水溶液および有機錯化配位子を強く攪拌して混合するのが有利であると見出されている。次に、第1工程において生成した懸濁液を、更なる錯化成分を用いて必要に応じて処理する。これに関して、錯化成分は、好ましくは水および有機錯化配位子を有する混合物において用いる。第1工程(すなわち懸濁液の生成)を行うための好ましい方法は、混合ノズルを用いて行い、特に好ましくはWO-A 01/39883に記載されているようなジェット分散器を用いて行う。
【0061】
第2工程において、遠心分離またはろ過等の既知の技術によって、固体(すなわち本発明による触媒の前駆体)を懸濁液から分離する。
【0062】
好ましい実施態様の別例においては、第3工程において、次に、有機錯化配位子の水溶液を用いて、分離した固体を洗浄する(例えば再懸濁し、次にろ過または遠心分離による再分離によって)。このように、例えば、塩化カリウム等の水溶性副生成物を本発明による触媒から除去することができる。好ましくは、洗浄水溶液中の有機錯化配位子の量は、溶液全体を基準として40〜80重量%である。
【0063】
第3工程において、全溶液を基準として、好ましくは0.5〜5重量%の範囲の更なる錯化成分を洗浄水溶液に必要に応じて添加する。
【0064】
分離した固体を1回より多く洗浄することがさらに有利である。好ましくは、第1洗浄工程(iii−1)において、この方法で本発明に係る触媒から、例えば水溶性副生成物、例えば塩化カリウムを除去するために不飽和アルコールを含む水溶液を用いて洗浄を行う(例えば再懸濁し、次いでろ過または遠心分離による新たな分離により)。特に好ましくは、洗浄水溶液の不飽和アルコールの量は、第1洗浄工程の全溶液を基準にして40〜80重量%である。更なる洗浄工程(iii−2)においては、第1洗浄工程を1回または数回、好ましくは1〜3回繰り返すか、または好ましくは非水溶液、例えば不飽和アルコールおよび更なる錯体形成性成分の混合物または溶液(好ましくは、工程(iii−2)の洗浄溶液の全量を基準にして0.5〜5重量%の範囲)を洗浄溶液として用い、これを用いて固体を1回または数回、好ましくは1〜3回洗浄するかいずれかである。
【0065】
分離して任意に洗浄した固体を、必要であれば粉状化後に、一般に20〜100℃の温度、一般に0.1mbar〜標準圧(1013mbar)の圧力下において、次に乾燥する。
【0066】
ろ過、ろ過ケーキ洗浄および乾燥によって、懸濁液から本発明によるDMC触媒を分離する好ましい方法は、WO-A 01/80994に記載されている。
【0067】
本発明による方法によって得ることができるポリエーテルカーボネートポリオールは、問題なく処理することができ、特に、ジ−および/またはポリイソシアネートとの反応によってポリウレタン、特に軟質ポリウレタンフォームが得られる。ポリウレタン使用のため、少なくとも2の官能価を有するH官能性スターター化合物に基づくポリエーテルカーボネートポリオールが好ましく用いられる。本発明による方法によって得ることができるポリエーテルカーボネートポリオールは、洗剤および洗浄剤配合物の用途、掘削液体、燃料添加物、イオン性および非イオン性界面活性剤、滑剤、製紙または繊維製品製造用のプロセス薬品または化粧品配合物の用途に用いることができる。特定の使用分野に応じて、用いるポリエーテルカーボネートポリオールを、特定の物性、例えば分子量、粘度、官能価および/またはヒドロキシル価等に適合させなければならないことは当業者に知られている。
【実施例】
【0068】
用いたH官能性スターター化合物(スターター):
PET-1 112mgKOH/gのOH価を有する2官能性ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
PET-2 261mgKOH/gのOH価を有する2官能性ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
PET-3 400mgKOH/gのOH価を有する3官能性ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
【0069】
DMC触媒は、WO-A 01/80994の実施例6に従って調製した。
【0070】
実施例において用いた300ml容の圧力反応器は、高さ(内部)10.16cmおよび内径6.35cmを有した。この反応器は、電気加熱ジャケット(510ワット最大加熱出力)を備えていた。カウンタ冷却は、外径6mmを有するU形に曲がった浸漬管を含み、これは、反応器に底部から5mm上まで差し込まれ、約10℃の冷却水が流された。水流は、電磁弁によってオンオフを切り替えた。この反応器は、さらに送込管および反応器に底部から3mm上まで差し込まれた直径1.6mmの熱電対を備えていた。
【0071】
活性化[工程(β)]中における電気加熱ジャケットの加熱出力は、平均で最大加熱出力の約20%であった。加熱出力は、調節によって最大加熱出力の±5%前後で変わった。触媒活性化[工程(β)]中におけるプロピレンオキシドの急速な反応に起因する反応器における発熱の増加の発生は、加熱ジャケットの加熱出力の減少、カウンタ冷却のオンおよび、適当な場合には、反応器における温度の上昇によって観察された。反応[工程(γ)]中におけるプロピレンオキシドの連続的な反応に起因する反応器における発熱の発生は、加熱ジャケットの出力を最大加熱出力の約8%に減少させた。加熱出力は、調節によって最大加熱出力の±5%前後で変わった。
【0072】
実施例において用いた中空シャフト攪拌機は、攪拌機の中空シャフトによって反応混合物に気体を通入する中空シャフト攪拌機であった。中空シャフトに取り付けられた攪拌機本体は、直径35mmおよび高さ14mmを有する4つのアームを備えていた。直径3mmを有する2つの気体出口は、アームの各末端に取り付けられていた。攪拌機が回転することによって、減圧が発生し、その結果、反応混合物上の気体(COおよび場合によりアルキレンオキシド)が吸引され、攪拌機の中空シャフトによって反応混合物に通入された。
【0073】
実施例において用いたインペラ攪拌機(impeller stirrer)は、直径35mmおよび高さ10mmを有するそれぞれ4つの攪拌機翼(45°)を備えた全部で2つの攪拌機段階が7mmの距離で攪拌機シャフトに設置された傾斜翼タービンであった。
【0074】
共重合において、環式プロピレンカーボネートに加えて、一方で式(IXa):
【化2】
に示されるポリカーボネート単位を含み、および他方で、式(IXb):
【化3】
に示されるポリエーテル単位を含むポリエーテルカーボネートポリオールが生成した。
【0075】
反応混合物は、1H-NMR分光法およびゲル浸透クロマトグラフィによって特性を明らかにした:
【0076】
ポリエーテルカーボネートポリオールに対する環式プロピレンカーボネートの量比(選択性)およびポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比(比率e/f)および反応したプロピレンオキシドの量(C、モル%)を、1H-NMR分光法によって測定した。試料をそれぞれ重水素クロロホルムに溶解し、ブルカー分光計(AV400、400MHz)において測定した。積分に用いた1H-NMRスペクトル(TMS=0ppmを基準とする)における関連する共鳴は、次のとおりである:
I1: 1.11〜1.17:ポリエーテル単位のメチル基、3つのH原子に対応する共鳴領域
I2: 1.25〜1.32:ポリカーボネート単位のメチル基、3つのH原子に対応する共鳴領域
I3: 1.45〜1.49:環式カーボネートのメチル基、3つのH原子に対応する共鳴領域
I4: 2.95〜2.99:遊離の未反応プロピレンオキシドに対するCH基、1つのH原子に対応する共鳴領域
【0077】
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるカーボネート単位に対する環式プロピレンカーボネートの量のモル比(選択性、g/e)およびポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比(e/f)および反応したプロピレンオキシドの含有量(C、モル%)について述べる。
【0078】
相対強度を考慮し、値を次のとおり算出した:
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるカーボネート単位に対する環式プロピレンカーボネートの量のモル比(選択性、g/e):
g/e=I3/I2 (X)
ポリマーにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比(e/f):
e/f=I2/I1 (XI)
反応したプロピレンオキシドのモル含有量(C、モル%)を、活性化および共重合において用いたプロピレンオキシドの総量を基準として、式:
C=[((I1/3)+(I2/3)+(I3/3))/((I1/3)+(I2/3)+(I3/3)+I4)]*100% (XII)
に従って算出し、試料において97.8ないし>99.9%の間であった。
【0079】
生成したポリマーの数平均分子量Mおよび重量平均分子量Mは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって測定した。手順は、DIN 55672-1に従った:「ゲル浸透クロマトグラフィ、パート1−溶離剤としてのテトラヒドロフラン」(PSS Polymer Service製のSECurity GPC System、流速1.0ml/分;カラム:2×PSS SDV linear M、8×300mm、5μm;RID検出器)。ここでは既知の分子量のポリスチレン試料を校正に用いた。
【0080】
OH価(ヒドロキシル価)は、DIN 53240-2に従って測定したが、THF/塩化メチレンに代えて、N-メチルピロリドンを溶媒として用いた。0.5モル濃度のKOHエタノール溶液を用いて滴定を行った(電位差測定法による終点検出)。証明書により特定されたOH価を有するヒマシ油は試験物質として機能した。「mg/g」で記載された単位は、mg[KOH]/g[ポリエーテルカーボネートポリオール]に関する。
【0081】
次の実施例1〜5は、PET-1をスターターとして用いて行った。記載した圧力は絶対圧に関する。
【0082】
実施例1:アルゴン下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中においてCOを充填するによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。この時間中での反応器における一時的な発熱の増加の発生によって、触媒の活性化が確認された[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに81gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.06であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは20.1/79.9であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=5,756g/モル、M=13,076g/モルおよび多分散度2.27を有した。
得られた混合物のOH価は、26.6mgKOH/gであった。
【0083】
実施例2:CO雰囲気下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、COの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびCOの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中においてCOを充填するによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに81gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.07であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは20.5/79.5であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=6,730g/モル、M=15,686g/モルおよび多分散度2.33を有した。
得られた混合物のOH価は、25.1mgKOH/gであった。
【0084】
実施例3:COを用いずに乾燥し、COを用いずに活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、わずかに減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。2.5barのアルゴンを押し入れた。次にHPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、アルゴン圧を下げ、15barのCOを押し入れた。次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。攪拌しながら、HPLCポンプを用いてさらに81gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.08であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは18.1/81.9であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=5,644g/モル、M=9,576g/モルおよび多分散度1.70を有した。
得られた混合物のOH価は、25.0mgKOH/gであった。
【0085】
実施例4:COを用いて乾燥し、COを用いずに活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、COの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、わずかに減圧(50mbar)およびCOの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)。次にCO流を切ることによって圧力を5mbarまで下げた[工程(α)]。2.5barのアルゴンを押し入れた。次にHPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、アルゴン圧を下げ、15barのCOを押し入れた。次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。攪拌しながら、HPLCポンプを用いてさらに81gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.07であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは18.5/81.5であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=5,905g/モル、M=10,757g/モルおよび多分散度1.82を有した。
得られた混合物のOH価は、25.8mgKOH/gであった。
【0086】
比較実施例5:COを用いずに乾燥し、COを用いずに活性化したDMC触媒を用い、インペラ攪拌機を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(30g)との混合物を、インペラ攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbar(絶対)に調節した。反応器を130℃に加熱し、わずかに減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。2.5barのアルゴンを押し入れた。次にHPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、アルゴン圧を下げ、15barのCOを押し入れた。次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。攪拌しながら、HPLCポンプを用いてさらに81gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.08であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは17.5/82.5であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=6,474g/モル、M=9,413g/モルおよび多分散度1.45を有した。
得られた混合物のOH価は、28.2mgKOH/gであった。
【0087】
【表1】
【0088】
比率e/fは、ポリマー鎖への二酸化炭素の組み込みの効率の評価基準である:この比率の値が高いほど、ポリマーに組み込まれた反応混合物中の二酸化炭素の含有量が高くなる。実施例3と比較実施例5とを比較することで、インペラ攪拌機を用いる場合よりも、中空シャフト攪拌機を使用することによってCOの組み込みが高くなることが示される。実施例1と実施例3とを比較することで、CO雰囲気下において活性化(工程β)を行う場合に、より高いCOの組み込みに有利であるという更なる改善が達成されるということが示される。これは、実施例2と実施例4との比較によっても確認される。
【0089】
スターターとしてPET-1を用いて、次の実施例6〜9を行った。記載した圧力は絶対圧に関する。
【0090】
実施例6:アルゴン下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用い、低回転速度で中空シャフト攪拌機を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(60g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(800rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(800rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(800rpm)。この時間中での反応器における一時的な発熱の増加の発生によって、触媒の活性化が確認された[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに42gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(800rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.09であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは14.1/85.9であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=2,954g/モル、M=6,437g/モルおよび多分散度2.18を有した。
得られた混合物のOH価は、48.6mgKOH/gであった。
【0091】
実施例7:アルゴン下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用い、高回転速度で中空シャフト攪拌機を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(60g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)。この時間中での反応器における一時的な発熱の増加の発生によって、触媒の活性化が確認された[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに42gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.15であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは13.5/86.5であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=2,380g/モル、M=2,398g/モルおよび多分散度1.01を有した。
得られた混合物のOH価は、48.6mgKOH/gであった。
【0092】
比較実施例8:アルゴン下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用い、低回転速度でインペラ攪拌機を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(60g)との混合物を、インペラ攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(800rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(800rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(800rpm)。この時間中での反応器における一時的な発熱の増加の発生によって、触媒の活性化が確認された[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに42gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(800rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、反応混合物が未反応プロピレンオキシドをまだ含むことが示された。
選択性g/eは0.14であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは11.2/88.8であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=1,830g/モル、M=2,170g/モルおよび多分散度1.18を有した。
得られた混合物のOH価は、56.5mgKOH/gであった。
【0093】
比較実施例9:アルゴン下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用い、高回転速度でインペラ攪拌機を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.8mg)とPET-1(60g)との混合物を、インペラ攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。この時間中での反応器における一時的な発熱の増加の発生によって、触媒の活性化が確認された[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに42gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、反応混合物が未反応プロピレンオキシドをまだ含むことが示された。
選択性g/eは0.17であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは10.3/89.7であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=1,840g/モル、M=2,062g/モルおよび多分散度1.12を有した。
得られた混合物のOH価は、55.0mgKOH/gであった。
【0094】
【表2】
【0095】
比率e/fは、ポリマー鎖への二酸化炭素の組み込みの効率の評価基準である:この比率の値が高いほど、ポリマーに組み込まれる反応混合物中の二酸化炭素の含有量が高くなる。実施例6および7と比較実施例8および9とを比較することで、インペラ攪拌機を用いる場合よりも、中空シャフト攪拌機を使用することによってCOの組み込みが高くなり、選択性が改善されること(すなわち環式カーボネートがより少ないこと)が示される。
【0096】
スターターとしてPET-2を用いて、次の実施例10〜14を行った。記載した圧力は絶対圧に関する。
【0097】
実施例10:アルゴン下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(27.9mg)とPET-2(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。この時間中での反応器における一時的な発熱の増加の発生によって、触媒の活性化が確認された[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに100.5gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.13であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは15.9/84.1であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=3,036g/モル、M=4,899g/モルおよび多分散度1.61を有した。
得られた混合物のOH価は、56.2mgKOH/gであった。
【0098】
実施例11:CO雰囲気下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(27.9mg)とPET-2(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、COの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、減圧(50mbar)およびCOの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながらHPLCポンプを用いてさらに100.5gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.14であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは15.0/85.0であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=3,187g/モル、M=4,770g/モルおよび多分散度1.50を有した。
得られた混合物のOH価は、56.9mgKOH/gであった。
【0099】
実施例12:COを用いずに乾燥し、COを用いずに活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(27.9mg)とPET-2(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbar(絶対)に調節した。反応器を130℃に加熱し、わずかに減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。2.5barのアルゴンを押し入れた。次に、HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、アルゴン圧を下げ、15barのCOを押し入れた。次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。攪拌しながら、HPLCポンプを用いてさらに100.5gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.16であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは14.6/85.4であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=3,067g/モル、M=4,474g/モルおよび多分散度1.46を有した。
得られた混合物のOH価は、57.9mgKOH/gであった。
【0100】
実施例13:COを用いて乾燥し、COを用いずに活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(27.9mg)とPET-2(30g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、COの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbarに調節した。反応器を130℃に加熱し、わずかに減圧(50mbar)およびCOの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)。次にCO流を切ることによって圧力を5mbarに下げた[工程(α)]。2.5barのアルゴンを押し入れた。次に、HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、アルゴン圧を下げ、15barのCOを押し入れた。次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。攪拌しながら、HPLCポンプを用いてさらに100.5gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.15であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは12.2/87.8であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=3,180g/モル、M=5,116g/モルおよび多分散度1.61を有した。
得られた混合物のOH価は、55.5mgKOH/gであった。
【0101】
比較実施例14:COを用いずに乾燥し、COを用いずに活性化したDMC触媒を用い、インペラ攪拌機を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(27.9mg)とPET-2(30g)との混合物を、インペラ攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入した。反応器を閉じ、反応器中の圧力を5mbarまで5分間減圧した。次に、Arの緩流を適用し、同時にポンプを用いて気体を除去することによって反応器中の圧力を50mbar(絶対)に調節した。反応器を130℃に加熱し、わずかに減圧(50mbar)およびArの緩流下、130℃において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。2.5barのアルゴンを押し入れた。次に、HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)[工程(β)]。100℃に冷却後、アルゴン圧を下げ、15barのCOを押し入れた。次の工程中において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。攪拌しながら、HPLCポンプを用いてさらに100.5gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。次に反応混合物を室温まで冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.13であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは9.1/90.9であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=1,979g/モル、M=3,045g/モルおよび多分散度1.54を有した。
得られた混合物のOH価は、56.7mgKOH/gであった。
【0102】
【表3】
【0103】
比率e/fは、ポリマー鎖への二酸化炭素の組み込みの効率の評価基準である:この比率の値が高いほど、ポリマーに組み込まれる反応混合物における二酸化炭素の含有量が高くなる。実施例12と比較実施例14とを比較することで、インペラ攪拌機を用いる場合よりも、中空シャフト攪拌機を使用することによってCOの組み込みが高くなることが示される。実施例10と実施例12とを比較することで、CO雰囲気下において活性化(工程β)を行う場合に、より高いCOの組み込みに有利であるという更なる改善が達成されるということが示される。これは、実施例11と実施例13との比較によっても確認される。
【0104】
スターターとしてPET-3を用いて、次の実施例15を行った。記載した圧力は絶対圧に関する。
【0105】
実施例15:アルゴン下において乾燥し、CO雰囲気下において活性化したDMC触媒を用いた、プロピレンオキシドとCOとの重合
DMC触媒(23.6mg)とPET-3(12.6g)との混合物を、中空シャフト攪拌機を備えた300ml容の圧力反応器にまず導入し、130℃において、わずかに減圧(50mbar)およびArの緩流下において混合物を30分間攪拌した(1,500rpm)[工程(α)]。15barのCOを押し入れ、その結果、反応器中の温度がわずかに下がった。温度を130℃に調節し、次の工程において、COを充填することによって反応器中の圧力を15barに維持した。HPLCポンプを用いて1.3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物を20分間攪拌した(1,500rpm)。次に、さらに2回HPLCポンプを用いて1.3gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をそれぞれ20分間攪拌した(1,500rpm)。この時間中での反応器における一時的な発熱の増加の発生によって、触媒の活性化が確認された[工程(β)]。100℃に冷却後、攪拌しながら、HPLCポンプを用いてさらに103.6gのプロピレンオキシドを計量添加し(1.5ml/分)、反応混合物をさらに攪拌した(1,500rpm)。混合物を100℃において、プロピレンオキシドの添加の開始から合計で3時間攪拌した[工程(γ)]。反応器を氷浴において冷却することによって反応を終了させ、増加した圧力を下げ、生じた生成物を分析した。
反応[工程(γ)]中においてホットスポットは観測されなかった。
反応混合物のNMR分光分析により、プロピレンオキシドの完全転化が示された。
選択性g/eは0.18であった。
ポリエーテルカーボネートポリオールにおけるエーテル基に対するカーボネート基のモル比e/fは21.2/73.3であった。
得られたポリエーテルカーボネートポリオールは、分子量M=5,460g/モル、M=14,320g/モルおよび多分散度2.62を有した。
得られた混合物のOH価は、40.6mgKOH/gであった。