特許第6140730号(P6140730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エルムの特許一覧

<>
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000003
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000004
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000005
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000006
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000007
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000008
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000009
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000010
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000011
  • 特許6140730-蛍光体層の作成方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140730
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】蛍光体層の作成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20170522BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20170522BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20170522BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20170522BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20170522BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170522BHJP
【FI】
   H01L33/50
   F21S2/00 100
   F21V9/16 100
   C09K11/08 J
   C09K11/00 A
   C09K11/08 Z
   F21Y101:02
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-551752(P2014-551752)
(86)(22)【出願日】2012年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2012081944
(87)【国際公開番号】WO2014091539
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】392000486
【氏名又は名称】株式会社エルム
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 登美夫
(72)【発明者】
【氏名】宮原 隆和
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−041077(JP,A)
【文献】 特開2009−060094(JP,A)
【文献】 特開2003−298120(JP,A)
【文献】 再公表特許第2012/144030(JP,A1)
【文献】 特開2000−208815(JP,A)
【文献】 特開2011−249573(JP,A)
【文献】 特開2008−270781(JP,A)
【文献】 特開2011−192738(JP,A)
【文献】 特開2011−176276(JP,A)
【文献】 特開2012−060097(JP,A)
【文献】 特表2012−527742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子の光取り出し面の上に蛍光体層が形成されて成る発光装置に用いられ、前記蛍光体層は、蛍光体含有フィルムを構成し、前記蛍光体含有フィルムは、面方向に複数の領域に分割された蛍光体含有フィルム片から構成され、少なくとも一部の蛍光体含有フィルム片間で、相互に異なる蛍光体を含有する、そのような蛍光体層の作成方法であって、
色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれかの第1蛍光体粉末と樹脂とを混合してペースト状にし、該ペーストをフィルム状に塗布し、それを硬化させて第1蛍光体含有フィルム片を形成する工程1と、
前記第1蛍光体含有フィルム片の一部の領域から、ダイサーカットによって第1蛍光体含有フィルムを取り除く工程2と、
前記一部の領域に青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれかの第2蛍光体粉末と樹脂とを混合してペースト状にした該ペーストを塗り込み、硬化させて第2蛍光体含有フィルム片の領域を形成する工程3とからなることを特徴とする蛍光体層の作成方法。
【請求項2】
前記工程2と前記工程3とに相当する工程を複数回繰り返し、複数の蛍光体含有フィルム片による分割領域を形成することを特徴とする請求項記載の蛍光体層の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明等に用いられる発光装置に用いられ、特に青色光、紫色光、紫外光を発する半導体発光素子からの光を白色光に変換する蛍光体作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDを用いた照明装置が実用化され、白熱電球や蛍光灯をはじめ水銀灯やハロゲン灯にも置き換わりつつある。その理由は、低消費電力で同等輝度が得られ、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量を大幅に削減できるエコ商品の切り札となるからである。例えば、60W級の白熱電球の同等輝度は、9WのLED電球で実現できている。このように、すべての照明がLED照明に代われば、二酸化炭素排出量の削減目標は容易に達成できるのであるが、これを阻んでいるのが、2つの照明装置の価格差がまだ大きいことである。寿命を考慮すれば、その価格差はかなり小さくなっているので、特殊な場所の照明は、それを交換する人件費も削減できるため、LED照明に置き換えられつつある。
【0003】
店舗のダウンライトやスポット照明に使用されるハロゲン灯は、白熱電球と同じくフィラメントに通電し、これを白熱させた際の発光を利用するので、色再現性を評価する演色評価数が高く、また一般の白熱電球よりフィラメントの温度を高くできるため、50%程度明るくすることができる。また、寿命も長持ちする。その理由は、フィラメントの材質はタングステンであり、白熱するとタングステンは昇華し、一般の白熱電球では、電球のガラスに析出する。しかしハロゲン灯は電球内に不活性ガスとともにハロゲンガスが微量封入されているので、ハロゲン化タングステンとなり、この物質は蒸気圧が高く析出せずにフィラメント付近で再度タングステンとハロゲンに分離し、タングステンがフィラメントに戻るというハロゲンサイクルを繰り返すためである。
【0004】
ハロゲン灯の色温度は、2700Kから3000K程度で、演色性はランプの中では、最もよく、色再現性が重要な場所では、この光源が用いられる。
【0005】
ハロゲン灯(ハロゲンランプとも記する)をLED電球で置き換える場合、ハロゲンランプの用途が、店舗の照明や演出照明など色再現性が重要な場所の照明に用いられるため、課題になるのは、輝度と演色性である。輝度は、LED素子の発光効率が上がり、照明用LEDデバイス(照明用LED電子部品)の実力値で150lm/W(5000K)や100lm/W(3000K)に達しているので問題はないように思えるが、演色性を考慮に入れると発光効率は下がってくる。例えば、色温度が3000Kの照明用LEDデバイスで、平均演色評価数Ra=80のデバイスは、発光効率が100lm/Wが可能であるが、Ra=85のデバイスは、80lm/Wと低くなる。つまり演色性を良くすれば、発光効率は下がってくるのである。
【0006】
半導体発光素子(LED素子とも記する)を用いた白色光を得る方法として、第1ステップとして、青色光で青色と補色の関係にある黄色の光を発するYAG系の蛍光体粉末が用いられていた。しかし、このLED素子の青色光とYAG蛍光体の黄色光で作られる疑似の白色光は、平均演色評価数Raの値が70台程度と低く、その照明で物の自然な色を再現するには無理があった。Raが低い原因は、光の赤成分が少ないためである。
【0007】
そこで、第2ステップとして、LED素子の青色光で光の3原色である緑色と赤色の光を発する蛍光体粉末が用いられるようになり、LED素子の青色光と2種の蛍光体からのブロードな光スペクトルを持つ緑色光と赤色光により、白色光を構成し、その平均演色評価数Raの値は93と改善され、その照明による色再現性もかなり良くなっている。しかし、白色光としての明るさは前述したように下がってくる。その原因は後述する。
【0008】
この先、第3ステップとして、紫色光や紫外光を発する半導体発光素子の高輝度化が進めば、紫色光や紫外光で光の3原色を発する3種の蛍光体粉末が用いられ、Raの値はハロゲンランプと同等の100になることが期待できる。
【0009】
LED電球に用いられる照明用LEDデバイスは現段階では前記第2ステップにあり、青色光を発光するLED素子とその青色光で励起されブロードな緑色光を発する緑色系蛍光体と青色光で励起されブロードな赤色光を発する赤色系蛍光体から構成されている。光の明るさは、人間の視感度にも影響されるので、視感度を考慮した光束で表され、単位はlm(ルーメン)が用いられる。人間の視感度は、波長555nmの黄色系の光が最も高く、青色系や赤色系の光は低くなる。そのため、蛍光体による赤色系の光成分が多くなればルーメン値は低くなる。演色性を良くするためには、一般的に、赤色系の光のなかでも長波の赤色光が必要で、その分、ルーメン値は低くなるのである。
【0010】
図7に色温度が約3000Kの照明用LEDデバイスの平均演色評価数がRa=80のものとRa=90以上のものの光のスペクトルを比較する。図7に示したSample1はRa=96.4で明るさは60.6lm、Sample2はRa=81.9で明るさは70.1lmである。Sample1のスペクトルは、Sample2のスペクトルより長波の赤色光の成分が多くなっており、その分、ルーメン値は低くなっていることがわかる。
【0011】
このように、演色性を良くすると光束値が下がる第1の要因は、上記した理由によるものであるが、それ以外に重要な第2の要因がある。それを以下に記述する。
【0012】
一般的に、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体は色温度を再現できる配合比で混合されて利用される。図7の照明用LEDデバイスの場合も蛍光体は混合されてLED素子の周りに配置されている。このように緑色系蛍光体と赤色系蛍光体を混合して使用する場合、蛍光体間で相互作用が生じている。つまり、LED素子からの青色光で励起された緑色系蛍光体からブロードな緑色光が発光されるが、その光の一部は赤色系蛍光体の励起光にもなりうるのである。
【0013】
図8にこのような相互作用の顕著な例を示す。図8のSample3は、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体を同じ量だけ混合した場合のスペクトルで、Sample4は、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の単独のスペクトルを加算したもの(つまり、両者の蛍光体間で相互作用がない場合のスペクトル)である。両スペクトルの光特性値は、Sample3は、光束値=69.0lm,Ra=69.0,色温度=2300K、Sample4は、光束値=72.2lm,Ra=93.5,色温度=4096.9Kである。
【0014】
この発光スペクトルデータNo3からわかるように、同じ量だけ混合した場合(すなわち緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の混合比を1:1にした場合)は、緑色光成分は全く現れずに赤色光成分だけが大きくなっている。すなわち、緑色光は赤色系蛍光体に再吸収されて赤色光に変換されているのである。その結果、色温度は赤っぽく2300Kとなり、色再現性もRa=69.0と悪くなり、さらに光束値も小さくなっている。
【0015】
この例から次の2つのことが理解できる。
【0016】
まず第1に、蛍光体を混合したSample3は、LED素子が発する青色光から緑色系蛍光体によりブロードな緑色光に変換され、更にこの光が赤色系蛍光体によりブロードな赤色光に変換されるという2段階の変換を経由した光となるため、2段階の変換による損失が伴っている。すなわちトータルとしての白色光の発光効率に損失分が発生していること。
【0017】
第2に、緑色光成分の消失は、色温度の変化はもちろんであるが、平均演色評価数Raを大きく損なっていること。
【0018】
このような蛍光体間の相互作用は、演色性を落とすとともに、発光効率も悪くする作用があるのである。すなわち、前記したハロゲンランプのような高演色性で高輝度な光源をLED電球で置き換えるためには、蛍光体間の相互作用をなくす構造にすることが重要であることがわかる。
【0019】
相互作用をなくす一つの方法は、構造的に緑色系蛍光体の領域と赤色系蛍光体の領域に分割してLED素子の周りに配置すれば良い。このような例は、特許文献1や特許文献2に示されている。特許文献1の場合は、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体を分割して青色LED素子に配置する構造や青色系蛍光体と緑色系蛍光体と赤色系蛍光体を分割して紫外LED素子に配置する構造が示されている。また特許文献2の場合も青色系蛍光体と緑色系蛍光体と赤色系蛍光体を分割して紫外LED素子に配置する構造が示されている。
【0020】
しかし、どちらの文献においても異なる蛍光体間の相互作用などについての議論はなく、特許文献1においては、各発光分担領域の面積や蛍光体層の色度等の調整により加算混色を微調整し易く、理想的な白色光に近づけやすいことが記され、特許文献2においては、各蛍光体の分量比を面積比で制御できるので、混合する場合より発光色のバラツキを小さくすることができることが記されている。従来の各文献では相互作用による光の特性についての影響などは議論されていないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第3978514号公報
【特許文献2】特開2005−72129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ハロゲンランプを前記した第2ステップの照明用LEDデバイスで再現する場合、3000K以下の色温度で、演色性がRa=90以上の値で、発光効率が100lm/Wのものが理想的である。これまでの照明用LEDデバイスは、青色光を発光するLED素子に、色温度や演色性を再現するための蛍光体を混合して、LED素子の光取り出し面上に配置する構造が主であり、蛍光体間の相互作用までを考慮して、最適条件にした照明用LEDデバイスや、LED電球は存在していない。上記した理想的な照明用LEDデバイスを実現するためには、LED素子の発光効率や蛍光体粉末の変換効率(青色光で励起され固有の色の光を発する効率)の向上とともに、蛍光体間の相互作用をなくす照明用LEDデバイスの構造やLED電球の機構的な設計が重要である。
【0023】
また、この先、紫LED素子や紫外LED素子の高輝度化と低コスト化が進み、蛍光体として青色系蛍光体が用いられるようになっても、青色系蛍光体、緑色系蛍光体、黄色系蛍光体、および赤色系蛍光体間の相互作用もこれまで以上に考慮する必要が生じてくることは同じである。
【0024】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、特に、照明用LEDデバイス、あるいはLED電球などのLED照明装置に用いられ、蛍光体間の相互作用をなくし、特性も向上し、さらに安価な蛍光体層作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明は、
青色光、紫色光、または紫外光を発する半導体発光素子と該半導体発光素子の光で励起され固有の光を発する蛍光体からなる発光装置において、
前記固有の光として、
青色系の光を発する青色系蛍光体、
緑色系の光を発する緑色系蛍光体、
黄色系の光を発する黄色系蛍光体、および、
赤色系の光を発する赤色系蛍光体
の中から、異なる発光色の蛍光体が2種類以上用いられ、
前記2種類以上の蛍光体は互いに上下に重ならない状態で横方向に配置されて、蛍光体間の相互作用が抑制される特定構造すなわち蛍光体分離型構造とされていることを特徴としている。
【0026】
また、本発明では、
前記蛍光体分離構造を構成する蛍光体で構成される蛍光体層の厚みが500μm以下であることを特徴としている。
【0027】
図8に示した発光スペクトルデータNo3から明らかなように、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体を同じ質量だけ混合して、青色光を発光するLED素子の光取り出し面上に配置した場合、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体間で生じる相互作用(すなわちLED素子からの青色光で励起された緑色系蛍光体から発されたブロードなスペクトルを持つ緑色系の光は、赤色系蛍光体によって再吸収され、ブロードなスペクトルを持つ赤色系の光に変換される)は、トータル光である白色光の発光効率や演色性に好ましくない重大な影響を及ぼしている。すなわち、前記したように、2段階の変換を経由した光となり、2段階の変換による損失が伴うため発光効率が悪くなること。および、緑色光成分の消失は、色温度の変化はもちろんであるが、平均演色評価数Raを大きく損なっていることである。
【0028】
より具体的なデータとして、図6に色温度が同じ場合の、緑色系蛍光体と赤色蛍光体間で相互作用がある場合(混合型サンプル/3B2D(7)73:1)と相互作用がない場合(分離型サンプル/3B2D(2)(1)L7)のスペクトルを示す。同じ色温度3000K近傍で、光特性値は、混合型で光束=70.1lm,Ra=81.9,R9=5.3、分離型で光束=73.8lm,Ra=85.2,R9=25.4である。このデータから、相互作用がない分離型サンプルの方が、白色光としての発光効率と演色性が良くなっていることがわかる。
【0029】
その他の蛍光体においても、赤色系蛍光体間で同様な相互作用があり、特に青色系蛍光体は、緑色系蛍光体や黄色系蛍光体間でも相互作用がある。
【0030】
このように、蛍光体間の相互作用が抑制された特定構造にすることにより、演色性が良くて高輝度な照明が実現できる。ここで、特定構造とは、具体的には蛍光体分離型構造を示しており、異なる発光色の蛍光体を混合せずに、分離した構造で、分離した境界面での相互作用が微小にできるように境界の厚みを500μm以下(さらに好ましくは、300μm以下)にしている。
【0031】
さらにまた、本発明では、
前記発光装置を、青色光、紫色光、または紫外光を発光する半導体発光素子と該半導体発光素子の光取り出し面の上に形成された蛍光体層により光を発するように構成し、
前記蛍光体層を層面と垂直に複数分割し、分割した領域ごとに、青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれかの蛍光体を1つ割り当てて、前記蛍光体層を構成し、該蛍光体層の全面積のうち、赤色系蛍光体が占める総面積の割合が最も大きくなるように前記特定構造を構成したことを特徴とする。
【0032】
ハロゲンランプをLEDデバイスで実現するためには、演色性が良くて高輝度なLEDデバイスが必要である。このような目的のためには、蛍光体層に使用する複数の蛍光体間で相互作用が殆どないような構造にする必要がある。その1つの方法として、蛍光体層を層面と垂直な面で複数に分割し、分割した領域ごとに、青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれかの蛍光体を1つ割り当てて、蛍光体層を構成すれば、蛍光体間の相互作用を殆どなくすことができる。
【0033】
また、ハロゲンランプの色温度は、3000K以下であり、そのような色温度とするためには、赤色系蛍光体の分割領域の面積を他の蛍光体の分割領域の面積より最も広くする必要がある。
【0034】
図6の色温度が3000Kのサンプルで具体的に記述すると、蛍光体間の相互作用がある混合型サンプルの場合、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の重量比は、3:1で、緑色系蛍光体の重量を赤色系蛍光体の重量の3倍に多くしなければならないが、相互作用が殆どない分離型サンプルでは、重量比で1:1.66と赤色系蛍光体の重量が多く、また蛍光体層の分割領域の面積比では、緑色系蛍光体の分割領域の面積と赤色系蛍光体の分割領域の面積の比は、7:17と赤色系蛍光体の分割領域の面積を2.4倍以上広く取っている。
このように、蛍光体間の相互作用をなくした構造では、ハロゲンランプや電球色の光源とするためには、赤色系蛍光体の分割領域の面積を他の蛍光体の分割領域の面積より、最も広くすることが重要である。
好ましくは、前記赤色系蛍光体には、スペクトル特性調整のための異なる発光色の蛍光体が含まれていることを特徴とする。
【0035】
図8で示したように、赤色系蛍光体に同量の緑色系蛍光体を混合しても、混合した蛍光体からの発光色は赤色系の色になるが、そのスペクトル形状は赤色系蛍光体が単体の場合に比べて、ピーク値や裾野の形状が異なってくる。それは当然のことで、LED素子からの青色光で(緑色系蛍光体により)変換された緑色系の光がすべて赤色系に変換されるのではなく、変換されない光は、裾野の形状を変えるのである。これを利用して、若干の2重変換による損失は生じるが、演色性の観点から、または製造方法の観点から、その方が良好な場合がある。その場合は、これを利用しても良いのである。つまり、赤色系蛍光体にスペクトル形状調整のために異なる発光色の蛍光体を混ぜても良いのである。
【0036】
このことは、赤色系蛍光体に限らず、青色系蛍光体、緑色系蛍光体、および黄色系蛍光体についても同じで、母体となる蛍光体の固有光の色区分の範囲内で、スペクトルのピーク値や裾野の形状を調整する程度に異なる発光色の蛍光体を混ぜたものも、該母体となる蛍光体の固有光を発する蛍光体に属する。
さらにまた、本発明は、
前記発光装置は、青色光、紫色光、または紫外光を発光する半導体発光素子と該半導体発光素子の光取り出し面の上に形成された蛍光体層により、光を発するように構成され、前記発光装置の発光スペクトルの波長520nmの発光強度成分値S1に対する波長530nmの発光強度成分値S2の増加率、すなわち(S2―S1)/S1が負の値、または正の値で6%以下であることを特徴とする。
【0037】
図6の混合型サンプルと分離型サンプルのスペクトルで特徴的に異なる部分は、緑色系の光のスペクトルの部分である。これは、蛍光体間の相互作用の有無による差であることは、繰り返し述べていることであるが、任意の色温度(特に3000Kから6000Kの範囲)で、発光スペクトルの波長520nmの発光強度成分値S1に対する波長530nmの発光強度成分値S2の増加率、すなわち(S2―S1)/S1が負の値、または正の値で6%以下を満たせば、演色性が良くて、高輝度な照明用LEDデバイスとすることができることを示している。
また本明は、青色光、紫色光、または紫外光を発光し、対向する2つの主面を持ち、一方の主面を光取り出し面とし、他方の主面を電極形成面とする半導体発光素子の上に、前記光取り出し面と同等もしくは大きな対向する2つの主面を持ち、一方の主面を入光面とし、他方の主面を出光面とする蛍光体含有フィルム片が、前記光取り出し面と前記入光面を対向するように重ねて配置されて構成され、前記蛍光体含有フィルム片を主面と垂直に複数分割し、分割した領域(分割領域と記する)ごとに、青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれかの蛍光体を1つ割り当てて、前記蛍光体含有フィルム片を構成して、前記特定構造を構成したことを特徴とする。
【0038】
蛍光体間の相互作用を殆どなくす構造として、単体の照明用LEDデバイスとして実現するには、蛍光体フィルム片を形成する構造が最も実現的である。例えば、スクリーン印刷法でプラスチックシート上に赤色系蛍光体粉末をシリコン樹脂中に混ぜてペースト状にしたものを印刷し、硬化させ、フィルム状の蛍光体含有フィルム片を形成する。その後、ダイサーを用いてブレード幅の溝を複数ライン入れ、蛍光体含有フィルム片の一部を研削し、蛍光体を取り除く。その後、この取り除いた赤色系蛍光体の部分に、緑色系蛍光体粉末をシリコン樹脂中に混ぜてペースト状にしたものを塗りこみ硬化させる。このようにして赤色系蛍光体の領域と緑色系蛍光体の領域を分離して形成した蛍光体含有フィルム片ができる。これを半導体発光素子(LED素子)の光取り出し面上に配置すれば赤色系蛍光体と緑色系蛍光体間で殆ど相互作用のない発光装置ができる。これに青色系蛍光体や黄色系蛍光体の領域を加えるためには、上記方法を繰り返せばよい。
好ましくは、前記蛍光体含有フィルム片の領域を1つとし、該領域に青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれか1種類の蛍光体を割り当てたことを特徴とする。
【0039】
前記蛍光体含有フィルム片を分割せずに、これに青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、何れか1種類の蛍光体を用いれば、もちろん蛍光体間の相互作用は生じない。このような青色系、緑色系、赤色系、黄色系の光を発する発光装置を複数個用いてトータルとして白色光を発するLED電球とすれば、蛍光体間の相互作用の抑制された照明装置となる
【0040】
上述の構成を1または複数個用いて、トータルとして白色光を発するLED電球および線状光源や面状光源とすれば、蛍光体間の相互作用が抑制された電球状および線状や面状のLED照明装置とすることができる。
そして本発明は、このように半導体発光素子の光取り出し面の上に蛍光体層が形成されて成る発光装置に用いられ、前記蛍光体層は、蛍光体含有フィルムを構成し、前記蛍光体含有フィルムは、面方向に複数の領域に分割された蛍光体含有フィルム片から構成され、少なくとも一部の蛍光体含有フィルム片間で、相互に異なる蛍光体を含有する、そのような蛍光体層の作成方法であって、青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれかの第1蛍光体粉末と樹脂とを混合してペースト状にし、該ペーストをフィルム状に塗布し、それを硬化させて第1蛍光体含有フィルム片を形成する工程1と、前記第1蛍光体含有フィルム片の一部の領域から、ダイサーカットによって第1蛍光体含有フィルムを取り除く工程2と、前記一部の領域に青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体のうち、いずれかの第2蛍光体粉末と樹脂とを混合してペースト状にした該ペーストを塗り込み、硬化させて第2蛍光体含有フィルム片の領域を形成する工程3とからなることを特徴とす
【0041】
具体的に記述すると、工程1の蛍光体粉末と混合する樹脂は透明なシリコン樹脂を用いペースト状にし、該ペーストを塗布する方法は、メタルマスクを用いたスクリーン印刷法で行う。また、工程2の第1蛍光体含有フィルム片の部分領域から第1蛍光体含有フィルムを取り除く方法は、厚みが例えば200μmのダイシングブレードを用いて、ダイサーにより目的の幅だけ削り取る方法が良い。また、工程3の取り除いた部分領域に第2蛍光体含有のペーストを塗り込む方法は、ディスペンサーを用いて行い、最後に面一の面になるようにレべリングを行い硬化させることにより、分離型蛍光体含有フィルム片が製造できる。
また好ましくは、前記工程2と前記工程3に相当する工程を複数回繰り返し、複数の蛍光体含有フィルム分割領域を形成することを特徴とする。
【0042】
光学特性(光束値や色温度や演色性)を良好にするためには、複数の前記分割領域の形成が必要になるが、工程2と工程3を異なる種類の蛍光体で繰り返せば、複数の分割領域を持つ分離型蛍光体含有フィルム片が形成され、蛍光体間の相互作用が抑制された発光装置ができる。
【0043】
なお、材料は異なるが、同色系の光を発する蛍光体同士を混合しても、蛍光体間の相互作用は発生しないので、前記分割領域に該混合蛍光体を用いても良い。
【発明の効果】
【0044】
本発明の蛍光体層の作成方法は、照明装置に使用されている蛍光体間の相互作用を抑制した構造にできるため、従来では、例えば、緑色系蛍光体と赤色系蛍光体の場合で記述するとLED素子が発する青色光から緑色系蛍光体によりブロードな緑色光に変換され、更にこの光が赤色系蛍光体によりブロードな赤色光に変換されるという2段階の変換の相互作用が存在し、それによる損失が伴うが、その損失をなくすことができる。
【0045】
第2に、相互作用により、緑色光成分が消失し、そのため色温度の変化はもちろんであるが、平均演色評価数Raが大きく損なわれる。その損失もなくすことができる。
【0046】
このようなに蛍光体間の相互作用は、演色性を落とすとともに、発光効率も悪くする作用があるのであるが、相互作用を抑制することにより、これらの損失を大きく減らし、高輝度で高演色なLED電球などのLED照明装置を作ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の第1実施形態の発光装置の図であって、(a)は上から見た平面図、(b)は下から見た平面図、(c)は線A−Aでの断面図である。
図2】本発明の第2実施形態の発光装置の図であって、(a)は上から見た平面図、(b)は下から見た平面図、(c)は線B−Bでの断面図である。
図3】本発明の発光装置に用いる蛍光体含有フィルム片の図である。
図4】本発明の第5実施形態の発光装置の平面図である。
図5】本発明の分離型蛍光体含有フィルム片の製造方法を示す図である。
図6】発光装置の発光スペクトルデータNo1である。
図7】発光装置の発光スペクトルデータNo2である。
図8】発光装置の発光スペクトルデータNo3である。
図9】発光装置の発光スペクトルデータNo4である。
図10】発光装置の発光スペクトルデータNo5である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の発光装置の実施形態について、第1から第3実施形態の順に、図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
まず、第1実施形態の発光装置を図1に示す。
【0050】
この発光装置1は、青色光を発光し、光取り出し面2−1が電極形成面2−2より小さい台形状で、側面が傾斜しており、この面からの光取り出しも考慮されているLED素子2で、該LED素子2の電極形成面2−2のn側電極とp側電極の表面層に3μmの厚みのAuSn層を形成し、+電極E1および−電極E2としている。該LED素子2の光取り出し面2−1上には、蛍光体粉末を含んだ分離型蛍光体含有フィルム片3(すなわち赤色系蛍光体粉末を含む領域3aと3c、緑色系蛍光体粉末を含む領域3b)が蛍光体分離構造として配置され、該LED素子2の側面には、分離型蛍光体含有フィルム片3を底面とする逆四角錐形状の透明樹脂部6を形成し、さらに該LED素子2の電極形成面2−2の全面または電極形成面2−2の+電極E1と−電極E2部と、トータルな白色光を発する分離型蛍光体含有フィルム片3の出光面3−1以外の露出した面を被覆している反射壁5で構成される。
【0051】
この発光装置1は、従来の構造の基板に相当するものはなく、LED素子2の電極(表面には3μmの厚みのAuSn層が形成されている+電極E1と−電極E2)が直接実装基板に半田で実装される。そのため、デバイスとしての熱抵抗は小さく抑えられるし、高価な基板の材料費がいらないので、低価格にすることができる。
【0052】
また、この構造の発光装置1の輝度(光束:ルーメン値)は、分離型蛍光体含有フィルム片3の大きさ(広さ)に大きく依存する。例えば、3W級のLED素子2の場合は、分離型蛍光体含有フィルム片3の大きさは、一辺が2.4mmから3.0mmの正方形の時に最も光の取り出し効率が良くなり明るく(ルーメン値が大きく)なる。それ以下では、光の取り出し効率が悪くなり暗く(ルーメン値が小さく)なる。
【0053】
LED素子2は、透光性結晶基板(例えば、サファイア基板、SiC基板、GaN基板など)の面上に、GaN系化合物半導体膜を基板側から、バッファ層、n型層、青色光を発する発光層、およびp型層の順に積層し、p型層の面上にp側電極を、p型層及び発光層を部分的に選択エッチングしn型層を露出した部分にn側電極を形成したもので、p側電極とn側電極は、ほぼ同一面上に形成されている。これらの電極の表面は、3μmの厚みのAuSn層が形成されている。
【0054】
分離型蛍光体含有フィルム片3は、蛍光体層として3つの領域に分割されており、3aと3cの領域は赤色系蛍光体粉末を例えばレジンタイプのシリコーンに混ぜ合わせてフィルム状に塗布し硬化させた領域、3bの領域は緑色系蛍光体を前記と同じように硬化させた領域である。具体的な製造方法は、後述するが、メタルマスクを用いたスクリーン印刷法で赤色系蛍光体含有フィルムを形成し、その一部(分割領域)のフィルムをダイサー等を用いて研削除去し、除去した分割領域にディスペンサー等を用いて緑色系蛍光体含有フィルムを形成する。
【0055】
ここで、緑色系蛍光体は、例えば、CaSc2O4:Ceで、1種類の緑色系蛍光体であっても良いし、2種類以上の緑色系蛍光体を混ぜたものであっても良い。また、赤色系蛍光体は、例えば、(SrCa)AlSiN3:Euで、1種類の蛍光体であっても、2種類以上の赤色系蛍光体を混ぜたものでも良い。配合量は、例えば約3000Kの色温度のものは、分割領域3a,3cの赤色系蛍光体含有フィルムの場合は、蛍光体粉末の重量濃度は37.0%で、占める面積は全体の70.8%であり、分割領域3bの緑色系蛍光体含有フィルムの場合は、蛍光体粉末の重量濃度は54.1%で、占める面積は全体の29.2%であ。色温度は、重量比を変えても、また面積を変えても調整できるが、演色性が良くて光束値が大きい条件を選択する。この場合も赤色系蛍光体含有フィルムの分割領域が最も広くなる。
【0056】
赤色系蛍光体の分割領域と緑色系蛍光体の分割領域の境界面の長さは2.4mm〜3.0mm程度となるので、その境界面での相互作用を最小限にするためには、分離型蛍光体含有フィルム片3の厚み(蛍光体層の厚み)は、約100μm程度としている。
【0057】
緑色系蛍光体の分割領域の幅は、約500μm程度になることもあるので、蛍光体層の厚みは、500μm以下にする必要が生じる。好ましくは300μm以下であることが好ましい。500μmを越えると相互作用が大きくなり不適である。
【0058】
レジンタイプのシリコーンは、高屈折率(1.5〜1.55)で、硬さがShoreD(40〜70、好ましくは60〜70)で、透明性の良い(例えば、光透過性が波長450nmの青色光に対し、樹脂の厚みが1mmの場合、95%以上、好ましくは99%以上)ものを使用する。
【0059】
逆四角錐形状の透明樹脂部6は、LED素子2の傾斜面から取り出される青色光を効率よく上面にある分離型蛍光体含有フィルム片3に入れるための光伝搬層の役目をする。そのため、この部分にも例えばレジンタイプのシリコーンの高屈折率(1.5〜1.55)で、硬さがShoreD(40〜70程度)で、透明性の良い(例えば、光透過性が波長450nmの青色光に対し、樹脂の厚みが1mmの場合、95%以上、好ましくは99%以上)ものを使用する。
【0060】
LED素子2と分離型蛍光体含有フィルム片3との接着は、透明樹脂部6と同じレジンタイプのシリコーンを用いる。このシリコン樹脂の中に色度や色温度補正用の前記蛍光体を適量混ぜても良い。
【0061】
反射壁5は、粒子径が0.21μmの酸化チタン微粉末を例えばレジンタイプのシリコーンに混ぜ合わせて硬化させたものである。酸化チタンは、誘電率が大きく光反射率が高いので、反射壁によく利用されるが、光触媒の性質があるため、紫外光や青色光により励起され、周囲の水分や酸素に作用し、O2HラジカルやOHラジカルを作り、シリコン樹脂を劣化変色させる。そのため青色LED素子の周囲の反射壁(白色)が変色し、数十時間で80%以下に輝度劣化してしまう。そのためここで使用する酸化チタン微粒子は、その表面をシリカやアルミナでコートしたりシロキサン処理により、光触媒の性質を防いだものを使用する。また、シリコン樹脂との配合比は、顔料体積濃度で5〜30%程度とし、密集効果による反射率の低下を防ぐことも必要である。
【0062】
また、レジンタイプのシリコーンは、高屈折率(1.5〜1.55)で、硬さがShoreD(50〜70、好ましくは60〜70)で、透明性の良い(例えば、光透過性が波長450nmの青色光に対し、樹脂の厚みが1mmの場合、95%以上、好ましくは99%以上)ものを使用する。厚みは、蛍光体含有フィルム片3の側面は60μm程度で、LED素子2の側面側はそれより徐々に厚くなる傾斜面を形成し、分離系蛍光体含有フィルム片3に向かう光が多くなるような反射壁を形成する。
【0063】
本実施例の発光装置1を用いたこれまでの検討結果から、分離型蛍光体含有フィルム片3に用いる蛍光体として、赤色系蛍光体は、(SrCa)AlSiN3:Eu(これを2D蛍光体と記する),CaAlSi(ON)3:Eu(これを3A蛍光体と記する)、緑色系蛍光体は、CaSc2O4:Ce(これを3B蛍光体と記する)、黄色系蛍光体は、一般式
M1−aSi2O2−1/2nXnN2:Eua(これを3S蛍光体と記する)の種類を用いて分離型蛍光体含有フィルム片3を構成した場合、色温度が2500Kから4200Kまでの範囲で、平均演色評価数Raが90以上となったサンプルのフィルム片3の構成内容を以下に記する。
【0064】
【表1】
【0065】
ここで、増加率は、発光スペクトルの波長520nmの発光強度成分値S1に対する波長530nmの発光強度成分値S2の増加率、すなわち(S2―S1)/S1である。
【0066】
この結果から、色温度4000K以下では、赤色系蛍光体が占める面積占有率(2Dと3Aの合計の占有率)が他の蛍光体が占める面積占有率より最も広いことがわかる。また、増加率は、3000K以上であれば、6%以下であることがわかる。
【0067】
次に、第2実施形態の発光装置を図2に示す。
【0068】
この発光装置10は、青色光を発光し、n側電極(−電極)とp側電極(+電極)が形成されている電極形成面とは反対側の面(光取り出し面)から光を取り出すフリップチップタイプの3W級のLED素子12を、セラミックの酸化アルミ基板(または窒化アルミ基板)11のチップ搭載電極(F1、G1)上にAuスタッドバンプ(Auワイヤーを用いて作ったバンプ)を介して実装し、2重構造体にする。この基板11のサイズは、放熱を考慮して、厚みは約0.5mm、大きさは(コストも考慮して)一辺が約2mmの正方形でLEDチップよりやや大きくする。2重構造体の基板に形成されたチップ搭載電極(F1、G1)と外部基板実装電極(F2、G2)のF1−F2間、およびG1−G2間は、スルーホールで導通接続されている。
【0069】
この2重構造体のLED素子12の上面(光取り出し面)に、第1実施形態で記述したものと同じ分離型蛍光体含有フィルム片13の入光面をシリコン樹脂で接着する。分離型蛍光体含有フィルム片13のサイズは、厚みが約0.1mmで、大きさは、一辺が約2.4mmの正方形である。
【0070】
LED素子12の側面には、シリコン樹脂で、分離型蛍光体含有フィルム片13を底面とする逆四角錐形状の透明樹脂部16を形成する。
【0071】
さらに、2重構造体の基板11の外部基板実装電極形成面と分離型蛍光体含有フィルム片13の出光面以外の露出面を酸化チタン微粉末をシリコン樹脂に混ぜた白色樹脂で被覆し、反射壁15を形成し発光装置10とする。
【0072】
この構造は、基板11を白樹脂内に埋め込んだ形状で、従来の基板上にすべての樹脂構造を形成するものとは異なっている。基板11は、LED素子12を搭載し、LED素子12で発生する熱を放熱するために必要な最小の大きさに止めており、高価な基板の材料費を抑えることができる。
【0073】
また、この構造の発光装置10の輝度(光束:ルーメン値)は、分離型蛍光体含有フィルム片13の大きさ(広さ)に大きく依存する。例えば、3W級のLED素子12の場合は、分離型蛍光体含有フィルム片13の大きさは、一辺が2.4mmから3.0mmの正方形の時に最も光の取り出し効率が良くなり明るく(ルーメン値が大きく)なる。それ以下では、光の取り出し効率が悪くなり暗く(ルーメン値が小さく)なる。つまり、分離型蛍光体含有フィルム片13は、基板より大きくする必要がある。
【0074】
また、分離型蛍光体含有フィルム片13の厚みは、蛍光体分割領域の境界面での相互作用を小さくするための蛍光体分離構造として、約100μm程度にしている。
【0075】
LED素子12は、透光性結晶基板(例えば、サファイア基板、SiC基板、GaN基板など)の面上に、GaN系化合物半導体膜を基板側から、バッファ層、n型層、青色光を発する発光層、およびp型層の順に積層し、p型層の面上にp側電極を、p型層及び発光層を部分的に選択エッチングしn型層を露出した部分にn側電極を形成したもので、p側電極とn側電極は、数μmの段差はあるが、ほぼ同一面上に形成されている。これらの電極の表面はAu膜である。
【0076】
分離型蛍光体含有フィルム片13は、第1実施形態のものと同じである。また、図3に示すように前記分割領域の形状を四角形や円形や十字形など様々な形にしても良い。またこれらの形状を小型にして複数個形成しても良い。ただし、前記分割領域が小型になれば、その境界面での相互作用が大きな影響を与えてくるので、分離型蛍光体含有フィルム片13の厚みは薄くする必要がある。
【0077】
次に、第3実施形態の発光装置として、第1実施形態の発光装置1の分離型蛍光体含有フィルム3の分割領域を一つにしたもの、すなわち青色系蛍光体、緑色系蛍光体、赤色系蛍光体、黄色系蛍光体の中から1種類の蛍光体を蛍光体含有フィルム片全体に用いた発光装置で、1種類の蛍光体固有の光とLED素子の青色光が混ざった色調になる。黄色系蛍光体を用いた場合は、初期の疑似白色となるが、蛍光体の濃度を高くすれば、蛍光体固有の色の光となる。
【0078】
また、第4実施形態の発光装置は、第2実施形態の発光装置10に第3実施形態で記述した蛍光体含有フィルム片を用いた発光装置である。
【0079】
次に、第5実施形態の発光装置を図4に示す。
この発光装置40は、光源が直径12.5mm内41に収まるように設計されたもので、その中は、第1実施形態の発光装置で、サイズが1辺が約2.6mmの正方形で高さが約0.5mmの発光装置42が9個と、第3実施形態の発光装置で、サイズが約2.6×1.8mmの長方形で高さが約0.5mmで、蛍光体含有フィルム片として赤色系蛍光体を含有した発光装置43が2個と、緑色系蛍光体を含有した発光装置44が2個から構成されている。
この発光装置40の構成であれば、発光装置全体としても蛍光体間の相互作用を大きく抑制することができ、高演色で高輝度なLED電球が設計できる。
【0080】
この発光装置40の光特性は、光束値=804.1lm/11.3W,Ra=91.5,R9=44.6,色温度=3521.3Kである。また、光のスペクトルを図10に示す。
【0081】
次に、第6実施形態として、分離型蛍光体含有フィルム片3の製造方法について図5に従って説明する。
【0082】
まず、赤色系蛍光体を第1蛍光体としてシリコン樹脂と適量混ぜ合わせて第1蛍光体含有樹脂ペーストを、緑色系蛍光体を第2蛍光体としてシリコン樹脂と適量混ぜ合わせて第2蛍光体含有樹脂ペーストを準備する。
【0083】
次に図5(a)に示すように、メタルマスク52を用いたスクリーン印刷法で第1蛍光体含有樹脂ペースト50を耐熱性プラスチックシート(例えばPETシート)51上にスキジー53で均一なフィルム状になるように塗布した後、硬化炉で150℃,1時間の条件で硬化させ、第1蛍光体含有フィルム片を作製する(工程1)。
【0084】
次に図5(b)に示すように、ブレード幅が約200μmのダイシングブレード54を用いて、ダイサーにより、ストライプ状に適量な幅(前記分割領域に相当する部分)だけ第1蛍光体含有フィルムを除去する(工程2)。
【0085】
次に図5(c)に示すように、除去したストライブ状の部分(前記分割領域に相当する部分)に、例えばディスペンサー55を用いて第2蛍光体含有樹脂ペーストを塗り込んだ後、硬化炉で150℃,1時間の条件で硬化させ第2蛍光体含有フィルム分割領域56を形成する(工程3)。この場合、ディスペンサー55で第2蛍光体含有樹脂ペーストを塗り込んだ後に、図5(d)で示すように、スキジー53を用いて面一な面になるようにレべリングをして硬化させても良い。
【0086】
上記の製造方法により、均一な分離型蛍光体フィルム片が製造可能である。
【0087】
また、上記工程2と工程3を第3蛍光体、第4蛍光体、と繰り返せば、複数の蛍光体含有フィルム分割領域を形成することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,10,40,42,43,44 発光装置
2,12 半導体発光素子(LED素子)
3,13,33 蛍光体含有フィルム片
5,15,35 反射壁
6,16 透明樹脂部
11 基板
50,56 蛍光体含有樹脂ペースト
3a,3b,3c,13a,13b,13c 蛍光体含有フィルム分割領域
33a,33b 蛍光体含有フィルム分割領域
E1,E2,F1,F2,G1,G2 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10