(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図7を参照して説明する。
図1乃至
図7は、本発明の実施の形態を示す図である。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
【0018】
(射出成形機の構成)
まず、
図1および
図2により、射出成形機(成形品の製造装置、成形装置)の構成について説明する。
図1は、本実施の形態による射出成形機を示す部分断面概略正面図であり、
図2は、金型内部の構成を示す概略断面図である。
【0019】
図1に示すように、射出成形機10は、ベース11と、ベース11上に設けられた射出装置20と、ベース11上に設けられた型締装置30と、射出成形機10全体を制御するコントローラ60とを備えている。
【0020】
このうち射出装置20は、射出機構21と、射出機構21から水平方向に延びるバレル22とを備えている。バレル22内にはスクリュ23が設けられている。また、バレル22の先端にはノズル24が設けられている。射出装置20は、ベース11上で型締装置30に対して接離する方向(X方向)に移動可能に設けられている。
【0021】
型締装置30には、固定金型41と移動金型42とを含む金型40が保持されている。
この型締装置30は、ベース11上に固定された受圧盤31と、固定金型41を支持するとともにベース11に固定された固定プラテン32と、固定プラテン32に対向して設けられ、移動金型42を支持するとともに固定プラテン32に対して進退自在に配置された移動プラテン33とを有している。
【0022】
また固定プラテン32と受圧盤31とは、複数(例えば4本)のタイバー34によって所定の間隔を空けて結合されている。移動プラテン33は、タイバー34に沿って固定プラテン32に対して接近又は離反する方向に進退自在となっている。
【0023】
移動プラテン33が固定プラテン32に対して接近する方向(型閉じ方向)へ移動することにより、固定金型41及び移動金型42の型閉じが行われる。また、移動プラテン33が固定プラテン32から離反する方向(型開き方向)へ移動することにより、固定金型41及び移動金型42の型開きが行われる。
【0024】
また、金型40の周囲には、後述するインサート材80を搬送する取出機またはロボット等の組込装置87が設けられている。
【0025】
次に、
図1および
図2を参照して、金型40の構成について説明する。
【0026】
上述したように、金型40は、固定金型41と移動金型42とを有している。固定金型41には、射出装置20から供給された樹脂材料(成形材料、成形材)が流入するゲート43が設けられている。移動金型42は、移動プラテン33によって固定金型41に接離する方向(X方向)に移動可能である。
【0027】
また、金型40は、樹脂材料が充填されるキャビティ44と、当該キャビティ44内で進退可能な遮蔽板(遮蔽部材)45とを有している。このうちキャビティ44は、固定金型41と移動金型42との間に形成されており、後述する成形品70に対応する形状を有している。
【0028】
遮蔽板45は、図示しない駆動機構により移動金型42から出没可能となっており、コントローラ(制御装置)60によって制御されることにより、キャビティ44内に進入した遮蔽位置(
図1参照)と、移動金型42内に引き込まれた退避位置とをとることができる。具体的には、後述するように、コントローラ60は、射出装置20によって樹脂材料を射出充填する(射出する)際、射出装置20を制御するとともに、射出充填(射出)の初期段階では遮蔽板45によってキャビティ44内における樹脂材料の流動を規制し、その後、遮蔽板45を移動金型42の内部に引き込むように、遮蔽板45を制御する。
【0029】
遮蔽板45が遮蔽位置となった場合、遮蔽板45は、キャビティ44を横切って固定金型41に接触する位置まで進行する。また、ゲート43は、遮蔽板45の一方(上方)に位置している。このため、ゲート43からの樹脂材料は、遮蔽板45によってキャビティ44内での流動が規制される。具体的には、樹脂材料は、遮蔽板45の一方(上方)のみに流動可能となり、遮蔽板45の他方(下方)にはゲート43から直接流入しない。
【0030】
一方、遮蔽板45が退避位置となった場合、遮蔽板45は移動金型42内に完全に引き込まれる。このとき、ゲート43からの樹脂材料は、遮蔽板45によって遮蔽されることなく、キャビティ44内において流動する。具体的には、樹脂材料は、遮蔽板45の一方(上方)だけでなく他方(下方)にも流動可能となる。なお、遮蔽板45は、固定金型41から出没可能となっていても良い。
【0031】
なお、本実施の形態では、遮蔽板45は、
図2に示すように、垂直断面(YZ平面に平行な断面)では長方形の板状に形成されているが、これに限らない。例えば、遮蔽板45は、垂直断面(YZ平面に平行な断面)では三角形状、楕円形状等に形成されていても良い。
【0032】
また、キャビティ44内において、固定金型41と移動金型42との間に一対の円柱状の軸部材46が延設されている。この軸部材46は、固定金型41にそれぞれ連結されている。一対の軸部材46には、後述するように金型40内に樹脂材料を射出充填する際、インサート材80が巻装される。なお、遮蔽板45は、一方の軸部材46から他方の軸部材46まで水平方向(Y方向)に延びている。さらに、固定金型41は、軸部材46より下方に位置する突起部47を有している。この突起部47は、後述するように金型40内に樹脂材料を射出充填する際、インサート材80の一方の端部81と他方の端部82とを重ね合わせた状態で載置するために用いられる。
【0033】
図2に示すように、キャビティ44は、ゲート43が設けられるとともに樹脂材料が流れ込む樹脂流入空間(成形材流入空間)51と、樹脂流入空間51の下流側に連通するとともに樹脂材料が分岐する位置に設けられた分岐空間52と、分岐空間52から分岐してそれぞれ樹脂材料が流れ込む一対の流路53a、53bとを有している。また、一対の流路53a、53bは、分岐空間52より下流側の位置にある交差部54で連通している。
【0034】
分岐空間52と一対の流路53a、53bと交差部54とは、全体として円環形状を構成しており、当該円環によって上述した軸部材46が取り囲まれている。なお、
図2に示すように、突起部47の幅(Y方向の長さ)は、樹脂流入空間51の幅と同一であるか又は樹脂流入空間51の幅よりも短い。
【0035】
この場合、キャビティ44は、樹脂流入空間51の水平方向(Y方向)両側に設けられた一対の分岐空間52を有しているが、これに限らず、分岐空間52の数は1つ又は3つ以上であっても良い。
【0036】
コントローラ60は、例えば、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を有するコンピュータを含んで構成されていても良い。このコントローラ60は、入力された各種の情報に基づいて、射出装置20、型締装置30、遮蔽板45、および組込装置87の動作等を制御する。コントローラ60に入力される情報は、例えば、ユーザや外部の機器により入力される制御指令、金型情報等である。この場合、コントローラ(制御部)60は射出成形機10全体を制御するように構成されているが、本実施形態では少なくとも射出装置20および遮蔽板45を制御可能なものであれば良い。
【0037】
(成形品の構成)
次に、
図3により、上述した射出成形機10によって作製された成形品の構成について説明する。
図3は、本実施の形態による成形品70を示す正面図である。
【0038】
図3に示すように、成形品70は、例えば炭素繊維強化樹脂(CFRP)又はガラス繊維強化樹脂(GFRP)等の繊維強化樹脂が用いられた部材であり、合成樹脂(素材)を含む合成樹脂部(素材部)71と、合成樹脂部71に一体化されたインサート材(プリプレグ、インサート部材、強化部材、強化材)80とを有している。
【0039】
このうち、合成樹脂部71は、成形品本体部73と、成形品本体部73の両端にそれぞれ設けられた一対の分岐部74とを備えている。各分岐部74からは一対の枝部75a、75bが分岐しており、一対の枝部75a、75bは、連結部76において互いに連結されている。
【0040】
成形品本体部73は、成形品70の中央部に位置しており、上述した金型40の樹脂流入空間51に対応している。また成形品本体部73は、金型40のゲート43に対応するゲート対応部72を有している。分岐部74、枝部75a、75bおよび連結部76は、それぞれ金型40の分岐空間52、流路53a、53bおよび交差部54に対応している。
【0041】
また、分岐部74と一対の枝部75a、75bと連結部76とは、全体として円環形状を構成しており、当該円環内には円形の貫通孔77が形成されている。この貫通孔77は、金型40の軸部材46に対応する形状を有している。
【0042】
この場合、成形品70の成形品本体部73には、射出成形時に樹脂材料が合流することによってウェルドラインWが形成されている。このウェルドラインWは、上述した金型40の遮蔽板45に対応する位置近傍に設けられている。すなわち、ウェルドラインWは、キャビティ44の樹脂流入空間51内を樹脂材料が流れる方向であって、成形品本体部73の長手方向(Y方向)に沿って形成されている。また、ウェルドラインWは、成形品本体部73のうち、遮蔽板45に対してゲート対応部72の反対側の位置で、成形品本体部73の幅方向(Z方向)に沿って形成されている。
【0043】
一方、一対の枝部75a、75bと連結部76とにはウェルドラインWが形成されていない。このため、ウェルドラインWを、強度の低くなりやすい枝部75a、75bおよび連結部76の周辺から遠ざけることができ、枝部75a、75bおよび連結部76の強度を向上させることができる。
【0044】
また、インサート材(インサート部材、強化部材、強化材)80は、シート状の部材からなり、曲げられた状態で合成樹脂部71の外周を取り囲むように設けられている。また、インサート材80は、一方の端部81と他方の端部82を有しており、一方の端部81を他方の端部82に重ね合わせた状態で合成樹脂部71と一体化されている。すなわちインサート材80の長さは、成形品70の外周の長さよりも長い。
【0045】
インサート材80の一方の端部81と他方の端部82とが重ね合わされる箇所は、例えば成形品本体部73の周囲であり、本実施の形態では成形品本体部73の長手方向(Y方向)略中央部である。このように、インサート材80の端部81、82同士を接着することにより、成形品70における局所的な強度低下を防ぐことができる。また、インサート材80の端部81、82同士が重ね合わされていることにより、インサート材80の継ぎ目における強度低下を抑えることができる。さらに、ウェルドラインWは、インサート材80の端部81、82同士が重ね合わされた領域にも設けられているので、ウェルドラインW周辺の強度を高めることができる。
【0046】
なお、インサート材80の一方の端部81が重ね合わせている部分は、インサート材80の一部であれば良く、必ずしも他方の端部82上でなくても良い。例えば、
図3において一方の端部81をY方向マイナス側に延長し、一方の端部81が、貫通孔77の近傍でインサート材80に重ね合わされていても良い。あるいは、一方の端部81と他方の端部82とが重なり合っているか否かに拘わらず、一方の端部81(又は他方の端部82)自身を折り返すことにより、一方の端部81(又は他方の端部82)の強度を高めても良い。
【0047】
なお、合成樹脂部71を構成する合成樹脂(樹脂材料、成形材料、成形材)としては、例えばエポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、インサート材80としては、炭素繊維又はガラス繊維等の連続繊維または長繊維を樹脂に含浸させたシートを挙げることができる。
【0048】
成形品70は、インサート材80がインサートされていることにより、合成樹脂単体で作製した射出成形品以上の機械的強度を得ることができる。このような成形品70は、例えば、自動車部品、航空機部品、建築部品、産業機材部品として用いられても良い。
【0049】
(成形品の製造方法)
次に、成形品の製造方法、具体的には、
図1および
図2に示す射出成形機10を用いて
図3に示す成形品70を作製する方法について説明する。
【0050】
まず、射出成形工程全体について簡単に説明する。
図4に示すように、本実施の形態による射出成形機10を用いて作製される成形品70は、射出成形サイクルS100を行うことにより成形される。具体的には、射出成形サイクルS100は、型締工程S101、射出工程S102、保圧及び冷却工程S103、型開き工程S104、製品取出工程S105を含み、これらの工程を順に繰り返すことで多数の成形品70が製造される。
【0051】
次に、成形品70を作製する方法について、
図5(a)〜(g)を用いて更に説明する。
図5(a)〜(g)は、本実施の形態による成形品の製造方法を示す概略図であり、このうち
図5(b)〜(g)は、それぞれ
図2に略対応する図である。なお、以下に説明する射出成形サイクルS100の各制御は、コントローラ60によって実行される。
【0052】
はじめに、シート状のインサート材80を準備する。このインサート材80を、上述した射出成形サイクルS100とは別に、予め加熱装置85のヒータ86によりその軟化温度以上に加熱しておく(
図5(a)参照)。
【0053】
また、型締工程S101を行う前に、移動プラテン33に支持された移動金型42を、固定プラテン32に支持された固定金型41に対して離反させておく(型開きをさせておく)(
図1参照)。
【0054】
この状態で、取出機またはロボット等の組込装置(搬送装置)87を用いて、加熱されたインサート材80を搬送し(搬送工程)、インサート材80を金型40内に配置する。この場合、インサート材80は、固定金型41の一対の軸部材46上に載置され、次いで組込装置87によって金型40内で折り曲げられて変形される(
図5(b)参照)。このとき、インサート材80の一方の端部81と他方の端部82とは、それぞれ軸部材46から下方に垂れ下がっている。
【0055】
なお、本実施の形態では、インサート材80は、固定金型41の一対の軸部材46上に載置され、次いで組込装置87によって金型40内で折り曲げられて変形されるとしたが、これに限らない。例えば、一対の軸部材46がそれぞれ移動金型42に連結され、インサート材80は移動金型42の一対の軸部材46上に載置され、次いで組込装置87によって金型40内で折り曲げられて変形されるようにしても良い。
【0056】
続いて、組込装置87により、インサート材80は、金型40のキャビティ44内部の所定位置に組込まれる。すなわち、まず組込装置87により、インサート材80の他方の端部82側を一方の軸部材46の周囲に巻き付けるように折り曲げ、他方の端部82を突起部47上に配置する(
図5(c)参照)。続いて、組込装置87により、インサート材80の一方の端部81側を他方の軸部材46の周囲に巻き付けるように折り曲げ、一方の端部81を突起部47上に配置する(
図5(d)参照)。このとき、インサート材80の一方の端部81が他方の端部82上に重ね合わされる。また、
図5(b)、(c)、(d)で表される動作を組込装置87で金型40内にインサート材80を配置する配置工程、または、組込装置87により金型40内でインサート材80を変形させる変形工程と呼ぶことがある。
【0057】
なお、本実施の形態では、組込装置87が加熱されたインサート材80を搬送する搬送装置を兼ねているが、これに限らず、インサート材80を搬送する搬送装置と組込装置87とが、別個の装置からなっていても良い。この場合、組込装置87は、スライドコア等の金型40の動作によりインサート材80をキャビティ44内部に組込むものであっても良い。
【0058】
上述したように、インサート材80の一方の端部81が重ね合わせている部分は、インサート材80の一部であれば良く、必ずしも他方の端部82上でなくても良い。また、インサート材80の一方の端部81(又は他方の端部82)自身を折り返し、この折り返された一方の端部81(又は他方の端部82)を接着することにより、その強度を高めても良い。
【0059】
続いて、移動金型42が固定金型41側に移動し、固定金型41に対して密着することにより、移動金型42と固定金型41とが型締めされる(型締工程S101)(
図5(e)参照)。このとき、固定金型41に設けられたゲート43は、インサート材80によって囲まれた環の内部に位置する。
【0060】
次に、図示しない駆動機構により、遮蔽板45をキャビティ44内に向けて進行させ、遮蔽板45を退避位置から遮蔽位置に移動させる(
図5(f)参照)(遮蔽工程)。このとき、遮蔽板45は、一対の軸部材46、46間に延びるように配置される。
【0061】
続いて、樹脂材料を射出充填する射出工程S102を実行することにより、インサート材80を含む成形品70が成形される。この射出工程S102では、移動金型42と固定金型41とが型締された状態で、射出装置20のノズル24から溶融された樹脂材料を射出し、樹脂材料が金型40内に充填される。
【0062】
なお、本実施の形態では、樹脂材料を射出する直前に、遮蔽板45を退避位置から遮蔽位置に移動させるとしたが、これに限らない。例えば、インサート材80を金型40内に配置する時に遮蔽板45を退避位置から遮蔽位置に移動させたり、インサート材80を金型40内に配置する時にはすでに遮蔽板45が遮蔽位置に位置していたりするようにしても良い。つまり、樹脂材料を射出する前に遮蔽板45が遮蔽位置に位置していれば良い。
【0063】
射出工程S102において、射出充填の初期段階には、遮蔽板45によってキャビティ44内での樹脂材料の流動が規制される。すなわち、まず樹脂材料は、ゲート43からキャビティ44内に流入し、遮蔽板45の一面(上面)に沿って樹脂流入空間51内を水平方向(Y方向)に流動する。次いで、樹脂材料は、遮蔽板45によって規制されることにより、分岐空間52から一方の流路53a(上側の流路53a)に向けて流入する(
図5(f)の矢印参照)。一方、樹脂材料は、分岐空間52から他方の流路53b(下側の流路53b)には直接流入しない。このようにして、樹脂材料は、一方の流路53a、交差部54および他方の流路53bを順次介して、遮蔽板45の他面(下面)に沿って、樹脂流入空間51に流入する。
【0064】
この間、インサート材80は、キャビティ44内を流れる樹脂材料によって周囲に向けて拡がるように移動し、キャビティ44の内面に沿って所定位置に配置される(
図5(f)参照)。このとき、インサート材80の一方の端部81と他方の端部82とは、その重なり幅が小さくなるように相対的に移動するが、樹脂材料の充填が完了した後も一方の端部81と他方の端部82とが重ね合わされた状態を維持する。このため、キャビティ44内が樹脂材料で満たされると、一方の端部81と他方の端部82とが重なった部分は樹脂材料の圧力で押され、接着する(圧着する)。そのため、射出工程S102を接着工程と呼ぶことがある。
【0065】
次に、図示しない駆動機構により、遮蔽板45を移動金型42内に引き込み、遮蔽板45を退避位置に移動させる(
図5(g)参照)。遮蔽板45を退避位置に移動させるタイミングは、例えばキャビティ44のうち遮蔽板45を除く空間が、全て樹脂材料によって充填されたときである。このタイミングは、具体的には、バレル22内のスクリュ23の位置や、ノズル24から樹脂材料を射出してからの時間によって制御されても良い。
【0066】
その後、射出装置20による射出動作を継続することにより、樹脂材料は、キャビティ44のうち遮蔽板45が存在していた空間内(
図5(g)の二点鎖線内)にも流し込まれる。これにより、遮蔽板45に対してゲート43の反対側の位置、および遮蔽板45に対応する位置で樹脂材料がそれぞれ合流し、ウェルドラインW(
図3参照)が形成される。
【0067】
その後、保圧及び冷却工程S103を経ることにより、
図3に示す成形品70が成形される。その後、型開き工程S104において、金型40を開き、製品取出工程S105において、成形品70を移動金型42から押出し(突出し)、成形品70を取り出すことで、射出成形サイクルS100が完了する。ここで、射出工程S102及び/又は保圧及び冷却工程S103は成形工程の一例である。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態によれば、射出工程S102において、射出充填の初期段階では遮蔽板45によってキャビティ44内における樹脂材料の流動を規制し、その後、遮蔽板45を移動金型42の内部に引き込む。これにより、ウェルドラインWを、成形品70のうち強度の低くなりやすい部分(例えば枝部75a、75bおよび連結部76)の周辺から遠ざけることができ、当該部分の強度を向上させることができる。この結果、ウェルドラインWによる成形品70の局所的な強度低下を防ぐことができる。また、ウェルドラインWの位置をずらすために、試行錯誤して、最適な成形条件(ランナー及びゲートの位置、形状、実効通路断面積、流動状態の材料(樹脂)の温度、流速等)を探し出す必要がないので、成形品70の成形条件を容易に設計することが可能となる。さらに、射出充填中、ウェルドラインWを構成する部分(遮蔽板45が存在していた空間)にも溶融樹脂による乱流が生じるので、総じて、成形品70全体の強度が低下することを防ぐことができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、インサート材80の一方の端部81を他方の端部82に重ね合わせた状態で、金型40内に樹脂材料を射出充填し、重ね合わされた一方の端部81と他方の端部82とを接着する。これにより、成形品70における局所的な部分の強度低下を防ぐことができ、かつインサート材80の継ぎ目におけるほつれ等による強度低下を抑えることができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、金型40内でインサート材80を変形させて配置し、この状態で金型40内に樹脂材料を射出充填することにより、インサート材80を含む成形品70を成形する。これにより、シート状のインサート部材80を金型40に配置する際に、インサート部材80を変形させて所定位置に容易に配置することができる。また、軟化状態のインサート部材80に対して樹脂材料が射出されるため、インサート部材80と樹脂材料との接着強度(より具体的には、インサート部材80と樹脂材料との接合面での接着強度)を向上させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、成形品70を成形する際、インサート部材80を金型40内に搬送し、これを金型40内で変形した後、金型40内に樹脂材料を射出充填する。
このため、プレス成形等によりインサート部材80を賦形する工程と、賦形されたインサート部材80を金型40内にインサートする工程との2工程を実施する場合と比較して、成形品70を作製する工程を簡略化することができる。
【0072】
(変形例)
上記成形品70において、インサート材80が合成樹脂部71の周囲を取り囲む場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。例えば、
図6に示すように、インサート材80が合成樹脂部71の内部に配置されても良い。
【0073】
図6において、成形品70は、合成樹脂を含む合成樹脂部71と、合成樹脂部71の内部において一体化されたインサート材80とを有している。
【0074】
このうちインサート材80は、成形品本体部73の幅方向(Z方向)略中央部において、成形品本体部73の長手方向(Y方向)に沿って延設されている。この場合、成形品70には、ウェルドラインWが全く形成されてないか、又はわずかしか形成されない。これにより、ウェルドラインWによる成形品70の局所的な強度低下を防ぐことができる。また、インサート材80は、一対の貫通孔77を取り囲むように配置されているので、貫通孔77周辺の強度を向上させることができる。さらに、インサート材80の一方の端部81と他方の端部82とは、成形品本体部73の内部において重ね合わせた状態で互いに溶着されている。
【0075】
図6に示す成形品70を作製する場合、インサート材80を一対の軸部材46の周囲に巻き付けた後、例えば組込装置87を用いて、インサート材80の上部を下方に向けて押下する(
図7(a)参照)(押下工程)。これにより、ゲート43は、環状のインサート材80の外方に位置する(
図7(b)参照)。なお、
図7(a)(b)は、それぞれ
図5(d)(e)に対応する図である。
【0076】
この状態で射出充填を行うことにより、樹脂材料は、インサート材80の周囲に沿って流れ、一方の流路53a、交差部54および他方の流路53bを順次介して、インサート材80の下方に流入する。この間、インサート材80は、キャビティ44内を流れる樹脂材料によって中央に向けて移動され、
図6に示す所定位置に配置される。このとき、インサート材80の一方の端部81と他方の端部82とが重なった部分は、樹脂材料の圧力で押されて接着する(圧着する)。
【0077】
図6に示す成形品70を作製する場合、遮蔽板45を用いても良く、あるいは用いなくても良い。遮蔽板45を用いない場合、ゲート43からキャビティ44内に流入した樹脂材料は、インサート材80によって、インサート材80の一面(上面)に沿って一方の流路53aに向けて流動するように規制される。この場合、インサート材80を用いて、ウェルドラインWによる成形品70の局所的な強度低下を防ぐことができる。
【0078】
なお、本実施の形態における成形品の製造装置としては、射出成形機に限られるものではない。例えば、ダイカストマシン(成形品の製造装置、成形装置)等の金属成形機(成形品の製造装置、成形装置)であってもよいし、トランスファー成形機(成形品の製造装置、成形装置)等の他のプラスチック成形機(成形品の製造装置、成形装置)であってもよい。
【0079】
上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組み合わせることも可能である。あるいは、上記実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。