特許第6140746号(P6140746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140746
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ロールコータ
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20170522BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B05C1/08
   F16C13/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-43539(P2015-43539)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-159286(P2016-159286A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年6月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】松尾 慎也
(72)【発明者】
【氏名】茂垣 悦男
(72)【発明者】
【氏名】成松 紘史
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−274765(JP,A)
【文献】 実公昭46−006242(JP,Y1)
【文献】 特開2009−056447(JP,A)
【文献】 特開平04−071657(JP,A)
【文献】 特開昭63−172186(JP,A)
【文献】 特開昭63−145471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00−3/20
B05D1/00−7/26
F16C13/00−15/00
B29B11/16
B29B15/08−15/14
C08J5/04−5/10
C08J5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が互いに接するように配置された第1及び第2ロールを備え、第1及び第2ロールのいずれか一方は外周面が被塗装材に接するように配置されており、前記第1及び第2ロール間の接触圧により前記第1及び第2ロールの前記一方から被塗装材への塗料の転写量が制御されるロールコータであって、
前記第1及び第2ロールの少なくとも一方が、中空の外周ロールと、前記外周ロールの内側に配置され、軸方向中央部が前記外周ロールの内周面に接触されるとともに、軸方向側部が前記外周ロールの内周面に非接触とされている内周ロールと、前記内周ロールの軸方向両端から突出された回転軸とを有する二重ロールによって構成されており、
前記二重ロールは、
前記軸方向側部における前記外周ロールと前記内周ロールとの間の空隙を塞ぐ封止体と、
軸方向に沿う前記封止体の外側に配置され、前記軸方向に沿う外方への前記封止体の変位を規制する規制体と
をさらに有している
ことを特徴とするロールコータ。
【請求項2】
第1ロールと、前記第1ロールの外周面に接する外周面を有する第2ロールと、前記第2ロールの外周面に接する外周面を有する第3ロールとを備え、前記第3ロールは外周面が被塗装材に接するように配置されており、前記第1及び第2ロール間の接触圧により前記第2ロールから前記第3ロールへの塗料の転写量が制御されるロールコータであって、
前記第1ロールの少なくとも1つが、中空の外周ロールと、前記外周ロールの内側に配置され、軸方向中央部が前記外周ロールの内周面に接触されるとともに、軸方向側部が前記外周ロールの内周面に非接触とされている内周ロールと、前記内周ロールの軸方向両端から突出された回転軸とを有する二重ロールによって構成されており、
前記二重ロールは、
前記軸方向側部における前記外周ロールと前記内周ロールとの間の空隙を塞ぐ封止体と、
軸方向に沿う前記封止体の外側に配置され、前記軸方向に沿う外方への前記封止体の変位を規制する規制体と
をさらに有している
ことを特徴とするロールコータ。
【請求項3】
前記二重ロールは、前記封止体と前記規制体との間に介在された押板をさらに有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロールコータ。
【請求項4】
前記規制体は、前記二重ロールに対して着脱可能とされている、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のロールコータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1及び第2ロール間の接触圧により第1及び第2ロールのいずれか一方から被塗装材への塗料の転写量が制御されるロールコータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種のロールコータとしては、例えば下記の特許文献1等に示されている構成を挙げることができる。すなわち、従来のロールコータは、外周面が互いに接するように配置された第1及び第2ロールを備えている。第1及び第2ロールのいずれか一方は外周面が被塗装材に接するように配置されており、第1及び第2ロール間の接触圧により第1及び第2ロールの一方から被塗装材への塗料の転写量が制御される。第1及び第2ロールは、1つの円筒体と、この円筒体の軸方向両端から突出された回転軸とを有する一重ロールによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−160535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のロールコータでは、第1及び第2ロールが1つの円筒体と円筒体の軸方向両端から突出された回転軸とを有する一重ロールによって構成されているので、以下のような問題が生じる。すなわち、第1及び第2ロールの接触圧は、各ロールの円筒体を互いに押し付けるように各ロールの回転軸に荷重をかけることで得られている。このような荷重が回転軸にかけられた場合、軸方向中央部が互いに退くように円筒体にたわみが生じ、軸方向中央部の接触圧が弱くなり、軸方向中央部の塗料が不必要に多くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軸方向中央部の塗料が不必要に多くなることを回避できるロールコータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロールコータは、外周面が互いに接するように配置された第1及び第2ロールを備え、第1及び第2ロールのいずれか一方は外周面が被塗装材に接するように配置されており、第1及び第2ロール間の接触圧により第1及び第2ロールの一方から被塗装材への塗料の転写量が制御されるロールコータであって、第1及び第2ロールの少なくとも一方が、中空の外周ロールと、外周ロールの内側に配置され、軸方向中央部が外周ロールの内周面に接触されるとともに、軸方向側部が外周ロールの内周面に非接触とされている内周ロールと、内周ロールの軸方向両端から突出された回転軸とを有する二重ロールによって構成されており、二重ロールは、軸方向側部における外周ロールと内周ロールとの間の空隙を塞ぐ封止体と、軸方向に沿う封止体の外側に配置され、軸方向に沿う外方への封止体の変位を規制する規制体とをさらに有している。
【0007】
また、本発明に係るロールコータは、第1ロールと、第1ロールの外周面に接する外周面を有する第2ロールと、第2ロールの外周面に接する外周面を有する第3ロールとを備え、第3ロールは外周面が被塗装材に接するように配置されており、第1及び第2ロール間の接触圧により第2ロールから第3ロールへの塗料の転写量が制御されるロールコータであって、第1ロールの少なくとも1つが、中空の外周ロールと、外周ロールの内側に配置され、軸方向中央部が外周ロールの内周面に接触されるとともに、軸方向側部が外周ロールの内周面に非接触とされている内周ロールと、内周ロールの軸方向両端から突出された回転軸とを有する二重ロールによって構成されており、二重ロールは、軸方向側部における外周ロールと内周ロールとの間の空隙を塞ぐ封止体と、軸方向に沿う封止体の外側に配置され、軸方向に沿う外方への封止体の変位を規制する規制体とをさらに有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明のロールコータによれば、第1及び第2ロールの少なくとも一方又は第1〜第3ロールの少なくとも1つが、中空の外周ロールと、外周ロールの内側に配置され、軸方向中央部が外周ロールの内周面に接触されるとともに、軸方向側部が外周ロールの内周面に非接触とされている内周ロールと、内周ロールの軸方向両端から突出された回転軸とを有する二重ロールによって構成されている。このような二重ロールでは、第1及び第2ロール間の接触圧を得るために回転軸に荷重をかけても、外周ロールのたわみが小さく抑えられる。これにより、軸方向中央部の塗膜が不必要に厚くなることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1によるロールコータを示す構成図である。
図2図1のピックアップロールを示す断面図である。
図3図1のアプリケーターロールを示す断面図である。
図4図1のピックアップロール及びアプリケーターロールを示す平面図である。
図5図4のピックアップロールのたわみ量を示すグラフである。
図6図4のアプリケーターロールのたわみ量を示すグラフである。
図7図2及び図3のピックアップロール及びアプリケーターロールを用いた際の金属帯の膜厚差を示すグラフである。
図8】本発明の実施の形態2によるロールコータを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるロールコータを示す構成図である。図において、本実施の形態のロールコータ1は、被塗装材である金属帯2の表面に塗装を施すものである。ロールコータ1には、塗料パン10、ピックアップロール11、アプリケーターロール12及びバックアップロール13が設けられている。
【0011】
塗料パン10は、塗料10aが溜められた容器である。ピックアップロール11は、外周面の一部が塗料パン10の塗料10aに浸かるように配置されている。塗料パン10の塗料10aは、回転駆動されるピックアップロール11によって汲み上げられる。
【0012】
アプリケーターロール12は、ピックアップロール11の外周面及び金属帯2の表面に外周面が接するように配置されている。すなわち、本実施の形態では、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12は、外周面が互いに接するように配置された第1及び第2ロールを構成している。アプリケーターロール12は、ピックアップロール11によって汲み上げられた塗料10aを金属帯2に転写する。バックアップロール13は、アプリケーターロール12との間に金属帯2を挟持するように配置されている。
【0013】
アプリケーターロール12から金属帯2に転写される塗料10aは、ピックアップロール11とアプリケーターロール12との接触位置Pを超えてアプリケーターロール12の外周面に残っている塗料10aである。アプリケーターロール12の外周面に残る塗料10aの量、すなわちアプリケーターロール12から金属帯2への塗料の転写量は、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12間の接触圧により制御される。ピックアップロール11及びアプリケーターロール12間の接触圧は、各ロール11,12の外周面を互いに押し付けるように各ロール11,12の回転軸112,122に荷重がかけられることで得られる。
【0014】
次に、図2は、図1のピックアップロール11を示す断面図である。図2に示すように、ピックアップロール11は、外周ロール110、内周ロール111、回転軸112、封止体113、規制体114及び押板115を有する二重ロールによって構成されている。
【0015】
外周ロール110及び内周ロール111は、中空の円筒体により構成されている。内周ロール111は、焼嵌め等により外周ロール110内に挿入されて固定されている。回転軸112は、内周ロール111の軸方向両端から突出されるように、焼嵌め等により内周ロール111内に挿入されて固定されている。
【0016】
内周ロール111は、軸方向中央部が外周ロール110の内周面に接触されるとともに、軸方向側部が外周ロール110の内周面に非接触とされている。すなわち、内周ロール111の軸方向中央部には、直径が拡大された拡径部111aが設けられており、内周ロール111は拡径部111aのみで外周ロール110の内周面に接触されている。拡径部111aの端部間距離111d(軸方向に沿って拡径部111aが外周ロール110の内周面に接する距離)は、軸方向に沿う外周ロール110の長さよりも小さい。端部間距離111dは、軸方向に沿う外周ロール110の長さの例えば1/3程度とすることができる。
【0017】
封止体113は、例えば輪状の弾性体等により構成されるものであり、軸方向側部における外周ロール110と内周ロール111との間の空隙110aを塞いでいる。封止体113が空隙110aを塞ぐことで、空隙110aへの塗料の進入が防止されている。
【0018】
規制体114は、軸方向に沿う押板115の外側に配置されており、軸方向に沿う外方への封止体113の変位を規制している。本実施の形態では、規制体114は、回転軸112に取り付けられたスナップリングによって構成されている。しかしながら、規制体の態様はこれに限定されず、例えば回転軸又は内周ロールの外周面から突出された突起等により構成することもできる。
【0019】
押板115は、封止体113と規制体114との間に介在された板であり、規制体114との接触により封止体113が損傷することを回避するために設けられている。押板115は、例えば鋼板等により構成することができる。
【0020】
次に、図3は、図1のアプリケーターロール12を示す断面図である。図3に示すように、アプリケーターロール12は、外周ロール120、内周ロール121、回転軸122、封止体123、規制体124、押板125及び外装体126を有する二重ロールによって構成されている。
【0021】
上述のピックアップロール11(図2参照)では外周ロール110及び内周ロール111の両方が中空の円筒体により構成されていたが、図3に示すアプリケーターロール12では、外周ロール120が中空の円筒体によって構成される一方で、内周ロール121が中実の円筒体によって構成されている。内周ロール121は、焼嵌め等により外周ロール120内に挿入されて固定されている。回転軸123は、内周ロール121の軸方向両端から突出されるように内周ロール121と一体に形成されている。
【0022】
内周ロール121は、軸方向中央部が外周ロール120の内周面に接触されるとともに、軸方向側部が外周ロール120の内周面に非接触とされている。すなわち、内周ロール121の軸方向中央部には、直径が拡大された拡径部121aが設けられており、内周ロール121は拡径部121aのみで外周ロール120の内周面に接触されている。拡径部121aの端部間距離121d(軸方向に沿って拡径部121aが外周ロール120の内周面に接する距離)は、軸方向に沿う外周ロール120の長さよりも小さい。端部間距離121dは、軸方向に沿う外周ロール120の長さの例えば1/5程度とすることができる。
【0023】
アプリケーターロール12の封止体123、規制体124及び押板125は、ピックアップロール11の封止体113、規制体114及び押板115に対応する構成である。すなわち、封止体123は、例えば輪状の弾性体等により構成されるものであり、軸方向側部における外周ロール120と内周ロール121との間の空隙120aを塞いでいる。封止体123が空隙120aを塞ぐことで、空隙120aへの塗料の進入が防止されている。規制体124は、軸方向に沿う押板125の外側に配置されており、軸方向に沿う外方への封止体123の変位を規制している。本実施の形態では、規制体124は、回転軸122に取り付けられたスナップリングによって構成されている。しかしながら、規制体の態様はこれに限定されず、例えば回転軸又は内周ロールの外周面から突出された突起等により構成することもできる。押板125は、封止体123と規制体124との間に介在された板であり、規制体124との接触により封止体123が損傷することを回避するために設けられている。押板125は、例えば鋼板等により構成することができる。
【0024】
外装体126は、外周ロール120の外周面に取り付けられた円筒体であり、例えばゴム等の柔軟な素材によって構成されている。外装体126の外周面は、ピックアップロール11及び金属帯2に押し当てられる。
【0025】
次に、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12を二重ロールによって構成することによる作用を説明する。図4は、図1のピックアップロール11及びアプリケーターロール12を示す平面図である。
【0026】
図4に示すように、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12の回転軸112,122には、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12間の接触圧を得るために、各ロール11,12の外周面を互いに押し付けるように荷重がかけられる。この荷重により、各ロール11,12は、各ロール11,12の軸方向中央部が互いに退くように撓もうとする。このたわみの大きさは、荷重がかかる位置の離間距離(支点間距離)に応じて変化する。
【0027】
仮に、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12が、図2及び図3で示した二重ロールでなく、1つの円筒体と円筒体の軸方向両端から突出された回転軸とからなる一重ロール(従来構成)であるとすると、荷重がかかる位置の離間距離は軸方向に沿う円筒体の長さそのものになる。
【0028】
これに対して、本実施の形態のようにピックアップロール11及びアプリケーターロール12を図2及び図3で示した二重ロールとした場合、荷重がかかる位置の離間距離は、拡径部111a,121aの端部間距離111d,121dとなる。このため、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12を二重ロールとすることで、外周ロール110,120のたわみを小さく抑えることができる。
【0029】
図5は、図4のピックアップロール11のたわみ量を示すグラフである。本発明者は、以下の式1,2を用いて、ピックアップロール11のたわみ量を算出した。
【0030】
【数1】
【0031】
【数2】
【0032】
なお、式1,2の各変数は以下の通りである。
σ:たわみ量[mm]
ω:線圧[kg/m](=W/L)
W:総荷重[kg]
L:支点間距離[m]
E:内周ロールヤング率[Pa]
I:断面係数[m
:内周ロール内径[m]
:内周ロール外径[m]
【0033】
図5には、内周ロールヤング率Eを2060843964[Pa]とし、断面係数Iを0.00006369[m]とし、内周ロール内径dを0.228[m]とし、内周ロール外径dを0.250[m]として、総荷重Wを1000[kg]から3000[kg]まで変化させて求めたたわみ量を示している。なお、発明例である二重ロールの支点間距離Lは0.450[m]とし、従来例である一重ロールの支点間距離Lは1.420[m]としている。
【0034】
図5に示すように、総荷重Wが3000[kg]であるとき、一重ロールのたわみ量が0.084mmであるのに対して、二重ロールのたわみ量は0.012mmであった。この結果から、ピックアップロール11を二重ロールによって構成することで、たわみ量を86%も低く抑えることができることが分かる。
【0035】
次に、図6は、図4のアプリケーターロール12のたわみ量を示すグラフである。本発明者は、上記の式1,2を用いて、アプリケーターロール12のたわみ量も算出した。
【0036】
図6には、内周ロールヤング率Eを2060843964[Pa]とし、断面係数Iを0.00006369[m]とし、内周ロール内径dを0.141[m]とし、内周ロール外径dを0.180[m]として、総荷重Wを1000[kg]から3000[kg]まで変化させて求めたたわみ量を示している。なお、発明例である二重ロールの支点間距離Lは0.450[m]とし、従来例である一重ロールの支点間距離Lは1.420[m]としている。
【0037】
図6に示すように、総荷重Wが3000[kg]であるとき、一重ロールのたわみ量が0.276mmであるのに対して、二重ロールのたわみ量は0.022mmであった。この結果から、アプリケーターロール12を二重ロールによって構成することで、たわみ量を92%も低く抑えることができることが分かる。
【0038】
図5に示すピックアップロール11のたわみ量と、図6に示すアプリケーターロール12のたわみ量との相違は、ロール構造に起因するものである。図2に示すように二重ロールの内周ロール111を中空の円筒体とすることで、二重ロール全体としての重量を軽くすることができ、交換等の作業に要する労力を低減できる。
【0039】
次に、図7は、図2及び図3のピックアップロール11及びアプリケーターロール12を用いた際の金属帯2の膜厚差を示すグラフである。本発明者は、図2及び図3のピックアップロール11及びアプリケーターロール12(二重ロール)と、従来例の一重ロールとを用いて金属帯2に塗装を施して、以下の式3で表される金属帯2の膜厚差Rを調査した。
【0040】
【数3】
【0041】
なお、式3において、TCNはピックアップロール11及びアプリケーターロール12の軸方向中央部における金属帯2の塗膜の厚み[μm]であり、TE1はピックアップロール11及びアプリケーターロール12の軸方向に沿う第1端側(ドライブサイド)の金属帯2の塗膜の厚み[μm]であり、TE2はピックアップロール11及びアプリケーターロール12の軸方向に沿う第2端側(ワークサイド)の金属帯2の塗膜の厚み[μm]である。
【0042】
軸体にかける荷重を大きくするほど、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12のたわみが大きくなり、膜厚差Rが大きくなる。図7に示すように、総荷重が2600kg程度であるとき、一重ロールの膜厚差Rが0.83μm程度であるのに対して、二重ロールの膜厚差Rが0.1μm程度であった。この結果から、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12を二重ロールによって構成することで、軸方向中央部の塗膜が不必要に厚くなることを回避できることが分かる。
【0043】
このようなロールコータ1では、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12が外周ロール110,120のたわみを小さく抑えることができる二重ロールによって構成されているので、軸方向中央部の塗膜が不必要に厚くなることを回避できる。
【0044】
また、軸方向側部における外周ロール110,120と内周ロール111,121との間の空隙110a,120aを塞ぐ封止体113,123が設けられているので、空隙110a,120aへの塗料の進入を防止できる。
【0045】
さらに、軸方向に沿う封止体113,123の外側には、軸方向に沿う外方への封止体113,123の変位を規制する規制体114,124が配置されているので、回転軸112,122への荷重により繰り返しわずかなたわみが生じても、空隙110a,120aから封止体113,123が抜け出ることを回避することができる。
【0046】
さらにまた、内周ロール111が中空の円筒体により構成されているので、二重ロール全体としての重量を軽くすることができ、交換等の作業に要する労力を低減できる。
【0047】
また、内周ロール121を中実の円筒体により構成することもできる。
【0048】
なお、実施の形態1ではピックアップロール11及びアプリケーターロール12の両方が二重ロールによって構成されるように説明したが、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12の一方のみを二重ロールとし、他方を一重ロールとしてもよい。この構成でも、ピックアップロール11及びアプリケーターロール12の両方を一重ロールとする構成との対比においては、軸方向中央部の塗膜が不必要に厚くなることを回避できる。すなわち、外周面が互いに接するように配置された第1及び第2ロールの少なくとも一方が二重ロールであればよい。
【0049】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2によるロールコータを示す構成図である。本実施の形態2のロールコータ1は、実施の形態1のロールコータ1にミータリングロール14が追加されたものである。ミータリングロール14とピックアップロール11との間の接触圧により、ピックアップロール11からアプリケーターロール12への塗料10aの転写量が制御される。ピックアップロール11及びミータリングロール14の少なくとも一方が、実施の形態1で説明した二重ロールによって構成される。また、アプリケーターロール12が二重ロールによって構成されていてもよい。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0050】
このように、ミータリングロール14を含む構成においても本発明を適用することができる。
【0051】
なお、実施の形態1,2では、ピックアップロール11によって汲み上げた塗料10aをアプリケーターロール12によって金属帯2に転写するように説明しているが、塗料の供給態様はこれに限定されず、例えば、外周面が互いに接するように配置された2つのロールの間に滴下により塗料を供給する等の他の態様を採ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ロールコータ
2 金属帯(被塗装材)
11 ピックアップロール
12 アプリケーターロール
14 ミータリングロール
110,120 外周ロール
110a,120a 空隙
111,121 内周ロール
111a,121a 拡径部
112,122 回転軸
113,123 封止体
114,124 規制体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8