【課題を解決するための手段】
【0003】
第一の形態において、本発明は、ヒトインターロイキン−6受容体(hIL−6R)と特異的に結合するヒト抗体、好ましくは組換えヒト抗体を提供する。これらの抗体は、高親和性で、かつ遅い解離速度でhIL−6Rに結合すること、および、IL−6活性を中和する能力を特徴とする。本抗体は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)であってもよいし、または、抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)
2またはscFv
フラグメント)だけを含んでいてもよいし、例えば、残留したエフェクター機能を除去するような官能性が付与されるように改変されていてもよい(Reddy等(2000)J.Immunol.164:1925〜1933)。好ましい実施態様において、本発明は、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約500pMまたはそれ未満のK
Dでヒ
トIL−6受容体(配列番号1)と結合する、抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを提供する。より具体的な実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、300pM未満または200pM未満のK
Dを有し、または、100pM未満ものK
Dを有する。様々な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、ルシフェラーゼによる生物学的試験によって測定したところ250pMまたはそれ未満のIC
50でhIL−6活性をブロックする。より具体的な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、150pMまたはそれ未満のIC
50を示す。
【0004】
関連する形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、サルIL−6Rへの結合よりも少なくとも2倍高い親和性でhIL−6Rと結合する。より好ましい実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、サルIL−6Rへの結合よりも約3倍(またはそれ以下の倍率で)高い親和性で、L−6Rタンパク質(配列番号1)(配列番号251に示されている、カニクイザル(Macaca fascicularis)の細胞外ドメイン)と結合する。
【0005】
一実施態様において、本発明の抗体、または、本発明の抗体の抗原結合部分は、配列番号3、227、19、231、35、51、67、83、99、115、131、147、239、241、163、179、235、195、および、211、または、それらの実質的に類似した配列からなる群より選択された重鎖可変領域(HCVR)を含む。より具体的な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、配列番号11、229、27、233、43、59、75、91、107、123、139、155、171、187、237、203、および、219、または、それらの実質的に類似
した配列からなる群より選択された軽鎖可変領域(LCVR)をさらに含む。具体的な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、配列番号3/11;227/229;19/27;231/233;35/43;51/59;67/75;83/91;99/107;115/123;131/139;147/155;239/155;241/155;163/171;179/187;235/237;195/203;および、211/219、または、それらの実質的に類似した配列からなる群より選択されたHCVR/LCVR対を含む。
【0006】
第二の形態において、本発明は、本発明の抗体または抗体の抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子を提供する。一実施態様において、本発明の核酸分子は、上述のようなHCVRを含む抗体またはそれらのフラグメントをコードする。具体的な実施態様において、HCVRをコードする核酸分子は、配列番号2、226、18、230、34、50、66、82、98、114、130、146、238、240、162、178、234、194、および、210、または、それらの実質的に同一な配列からなる群より選択される。関連する形態において、本発明は、上述のようなLCVRをコードする単離された核酸分子を提供する。具体的な実施態様において、LCVRをコードする核酸分子は、配列番号10、228、26、232、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、236、202、および、218、または、それらの実質的に同一な配列からなる群より選択されたヌクレオチド配列である。
【0007】
第三の形態において、本発明は、重鎖の相補性決定領域3(CDR3)ドメイン、および、軽鎖のCDR3ドメインを含む抗体または抗原結合フラグメントを特徴とし、ここにおいて:
重鎖のCDR3ドメインは、式X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10
−X
11−X
12−X
13−X
14−X
15−X
16−X
17−X
18−X
19(配列番号247)で示されるアミノ酸配列を含み(ここにおいてX
1=Ala、X
2=Lys、X
3=Gly、X
4=Arg、X
5=Asp、X
6=Ser、または、Ala、X
7=Phe、X
8=Asp;X
9=
Ile、X
10=Pro、または、存在せず、X
11=Phe、または、存在せず、X
12=Val、または、存在せず、X
13=Tyr、または、存在せず、X
14=Tyr、または、存在せず、X
15=Tyr、または、存在せず、X
16=Gly、または、存在せず、X
17=Met、または、存在せず、X
18=Asp、または、存在せず、および、X
19=Val、または、存在せず);および、
軽鎖のCDR3ドメインは、式X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9(配列
番号250)で示されるアミノ酸配列を含む(ここにおいてX
1=Gln、X
2=GlnまたはHis、X
3=Ala、X
4=AsnまたはTyr、X
5=Ser、X
6=Phe、X
7
=Pro、X
8=Pro、および、X
9=Thr)。
【0008】
より具体的な実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、以下をさらに含む:
式X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8(配列番号245)で示されるアミノ酸配列を含む重鎖のCDR1ドメイン(ここにおいてX
1=Gly、または、Arg、X
2=Phe、X
3=Thr、X
4=Phe、X
5=Asp、X
6=Asp、X
7=Tyr、および、
X
8=Ala);
式X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8(配列番号246)で示されるアミノ酸配列を含む重鎖のCDR2ドメイン(ここにおいてX
1=Ile、または、Val、X
2=Ser、X
3=Trp、X
4=Asn、X
5=Ser、X
6=Gly、X
7=Ser、および、
X
8=Ile);
式X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8(配列番号248)で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR1ドメイン(ここにおいてX
1=Gln、X
2=Gly、X
3=Il
e、X
4=Ser、X
5=Ser、および、X
6=Trp);および、
式X
1−X
2−X
3(配列番号249)で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR2ド
メイン(ここにおいてX
1=Gly、または、Ala、X
2=Ala、および、X
3=Se
r)。
【0009】
第四の形態において、本発明は、以下を含む抗体または抗原結合フラグメントを特徴とする:
配列番号25、153、9、185、41、57、73、89、105、121、137、169、201、および、217からなる群より選択された重鎖のCDR3ドメイン;および、
配列番号33、161、17、193、49、65、81、97、113、129、145、177、209、および、225からなる群より選択された軽鎖のCDR3ドメイン。
【0010】
より具体的な実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、以下をさらに含む:
配列番号21、149、5、181、37、53、69、85、101、117、133、165、197、および、213からなる群より選択された重鎖のCDR1ドメイン;
配列番号23、151、7、183、39、55、71、87、103、119、135、167、199、および、215からなる群より選択された重鎖のCDR2ドメイン;
配列番号29、157、13、189、45、61、77、93、109、125、141、173、205、および、221からなる群より選択された軽鎖のCDR1ドメイン;および、
配列番号31、159、15、191、47、63、79、95、111、127、143、175、207、および、223からなる群より選択された軽鎖のCDR2ドメイン
**。
【0011】
具体的な実施態様において、本抗原または抗原結合フラグメントは、重鎖のCDR配列である配列番号21、23、25、および、軽鎖のCDR配列である配列番号29、31、33;重鎖のCDR配列である配列番号149、151、153、および、軽鎖のCDR配列である配列番号157、159、161;重鎖のCDR配列である配列番号5、7、9、および、軽鎖である配列番号13、15、17;および、重鎖のCDR配列である配列番号181、183、185、および、軽鎖のCDR配列である配列番号189、191、193を含む。
【0012】
第五の形態において、本発明は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子を特徴とし、ここにおいて本抗体またはそれらのフラグメントは、以下を含む:
配列番号24、152、8、184、40、56、72、88、104、120、136、168、200、および、216からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた重鎖のCDR3ドメイン;および、
配列番号32、160、16、192、48、64、80、96、112、128、144、176、208、および、224からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖のCDR3ドメイン;加えて、それらの実質的に同一な核酸配列。
【0013】
より具体的な実施態様において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子が提供され、ここにおいて、該抗体またはそれらのフラグメントは、以下を含む:
配列番号20、148、4、180、36、52、68、84、100、116、13
2、164、196、および、212からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた重鎖のCDR1;
配列番号22、150、6、182、38、54、70、86、102、118、134、166、198、および、214からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた重鎖のCDR2ドメイン;
配列番号28、156、12、188、44、60、76、92、108、124、140、172、204、および、220からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖のCDR1ドメイン;および、
配列番号30、158、14、190、30、46、62、78、94、110、126、142、174、206、および、222からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖のCDR2ドメイン;加えて、それらの実質的に同一な核酸配列。
【0014】
本発明は、改変された糖付加パターンを有する、抗hIL−6R抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを包含する。いくつかの用途において、望ましくない糖付加部位を除去するための改変が有用である可能性があり、または、オリゴ糖鎖上のフコース部分が欠失した抗体も、例えば抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を高めるためには有用である可能性がある(Shield等(2002)JBC277:26733を参照)。その他の用途において、補体依存性細胞障害活性(CDC)を改変するために、ガラクトシル化の改変を施すこともあり得る。
【0015】
さらなる形態において、本発明は、本発明の核酸分子を有する組換え発現ベクター、および、このようなベクターが導入された宿主細胞を提供し、同様に、本発明の宿主細胞を培養することにより得られた本発明の抗体または抗原結合フラグメントの製造方法も提供する。このような宿主細胞は、原核細胞でもよいし、または真核細胞でもよく、好ましくはこのような宿主細胞は、E.coli細胞、または、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞である。
【0016】
さらなる形態において、本発明は、hIL−6Rと特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合フラグメント、および、製薬上許容できる担体を含む医薬組成物を特徴とする。
【0017】
さらなる形態において、本発明は、本発明の抗体またはそれらの抗原結合部分を用いてヒトIL−6活性を阻害する方法を特徴とする。一実施態様において、本発明は、IL−6活性の阻害によって治療または改善される障害に罹ったヒト被検体に、本発明の抗体またはそれらのフラグメントを投与することを含む、治療方法を包含する。このような障害は、例えば、関節炎、例えば慢性リウマチ様関節炎;炎症性腸疾患、例えばクローン病、および、潰瘍性大腸炎;全身性エリテマトーデス;および、炎症性疾患であり得る。
【0018】
さらなる形態において、本発明は、ヒトにおいてIL−6−が介在する病気または障害を弱めたり、または、抑制したりするのに使用する医薬品の製造における、上記で定義されたような抗体または抗体の抗原結合フラグメントの使用を提供する。関連する形態において、本発明は、ヒトにおけるIL−6−が介在する病気または障害の低減または抑制に使用するための、上記で定義されたような抗体または抗体の抗原結合フラグメントを提供する。
【0019】
その他の目的および利点は、続く詳細な説明の総論から明らかになると予想される。
【0020】
詳細な説明
本発明の方法を説明する前に、当然のことながら本発明は、説明されている具体的な方
法および実験条件に限定されることはなく、従ってこれらの方法および条件は様々であってよい。また当然ながら、本明細書において用いられる用語は、単に具体的な実施態様を説明するためだけのものであり、限定することは目的ではなく、従って、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されると予想される。
【0021】
特に他の指定がない限り、本明細書において用いられる全ての専門用語や科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同様の意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書において説明されているものと類似した、または、等価なあらゆる方法および材料を用いることができるが、以下で、好ましい方法および材料を説明する。
【0022】
本明細書で用いられる用語「ヒトIL6R」(hIL−6R)は、インターロイキン−6(IL−6)と特異的に結合するヒトサイトカイン受容体を意味することとする。配列番号1に、hIL−6Rの細胞外ドメインを示す。
【0023】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合で相互に連結された2つの重(H)鎖、および、2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を意味することとする。重鎖はそれぞれ、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略記される)、および、重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。軽鎖はそれぞれ、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略記される)、および、軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)で構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細かく分類することができ、この領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより高度に保存された領域内に散在している。VHおよびVLはそれぞれ、3つのCDR、および、4つのFRで構成されており、これらはアミノ末端からカルボキシ末端への方向で以下の順番で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0024】
本明細書で用いられる抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」または「抗体フラグメント」)という用語は、抗原(例えば、hIL−6R)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはそれ以上のフラグメントを意味する。このような抗体の抗原に結合する機能は、全長抗体のフラグメントが発揮することができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL1およびCH1ドメインからなる1価のフラグメント;(ii)F(ab')
2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋で連結された2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward等(1989)Nature 241:544〜546);および、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え法を用いて、VLおよびVH領域が対をなして1価の分子が形成されるように、それらを単一の連続した鎖にすることができる合成リンカーによって合体させることができる(単鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird等(1988)Science 242:423〜426;および、Huston等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879〜5883を参照)。このような単鎖抗体も抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることとする。また、単鎖抗体のその他の形態、例えば二重特異性抗体も包含される(例えば、Holliger等(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA90:6444〜6448を参照)。
【0025】
本明細書で用いられる抗体「を中和すること」または「をブロックすること」は、hIL−6Rに結合して、hIL−6の生物活性の阻害を引き起こす抗体を意味することとする。このようなhIL−6の生物活性の阻害は、hIL−6によって誘導された細胞の活性化、および、hIL−6のhIL−6Rへの結合(以下の実施例を参照)のような、当分野で知られているhIL−6の生物活性に関する1種またはそれ以上の指標を測定することによって評価することができる。
【0026】
「CDR」または相補性決定領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより高度に保存された領域内に散在している超可変性の領域である。本発明の抗hIL−6R抗体またはフラグメントの様々な実施態様において、FRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよいし、または、自然に、または、人工的に改変されていてもよい。CDR群は、アミノ酸コンセンサス配列と定義することもできる;例えば、一実施態様において、本発明の抗hIL−6R抗体または抗原結合フラグメントは、式X
1−X
2−X
3−X
4−X
5
−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11−X
12−X
13−X
14−X
15−X
16−X
17−X
18−X
19(配列番号247)で示されるアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメイン(ここにおいてX
1=Ala、X
2=Lys、X
3=Gly、X
4=Arg、X
5=Asp、X
6=Ser、または、Ala、X
7=Phe、X
8=Asp;X
9=Ile、X
10=Pro、または、存
在せず、X
11=Phe、または、存在せず、X
12=Val、または、存在せず、X
13=Tyr、または、存在せず、X
14=Tyr、または、存在せず、X
15=Tyr、または、存在せず、X
16=Gly、または、存在せず、X
17=Met、または、存在せず、X
18=Asp、または、存在せず、および、X
19=Val、または、存在せず);および、式X
1
−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9(配列番号250)で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメイン(ここにおいてX
1=Gln、X
2=GlnまたはHis、X
3=Ala、X
4=AsnまたはTyr、X
5=Ser、X
6=Phe、X
7=Pro、X
8=Pro、および、X
9=Thr)を含むものと説明することもできる。
【0027】
本明細書で用いられる用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばビアコア(Biacore
TM)システム(ファルマシア・バイオセンサー社(Pharmacia Biosensor AB))を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度変化を検出することによってリアルタイムの相互作用の解析を可能にする光学現象を意味する。
【0028】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域内の特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原決定基である。単一の抗原が、1種より多くのエピトープを有していることもある。エピトープは、コンフォメーショナルエピトープ、または、リニアーエピトープのいずれでもよい。コンフォメーショナルエピトープは、空間的に並列させたアミノ酸によって、直鎖状のポリペプチド鎖の異なるセグメントから生産される。リニアーエピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって生産されたものである。所定の環境において、エピトープは、抗原上に糖部分、ホスホリル基またはスルホニル基を含んでいてもよい。
【0029】
用語「実質的な同一性」または「実質的に同一な」は、核酸またはそれらのフラグメントに対して用いられる場合、その他の核酸(またはその相補鎖)と共に、適切なヌクレオチドを挿入または欠失させて最適に並べた場合、以下で考察されているように、FASTA、BLASTまたはGapのような配列同一性に関する周知のアルゴリズムのいずれかによって測定したところ、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%または99%のヌクレオチド配列の同一性があることを示す。
【0030】
ポリペプチドに用いられているように、用語「実質的な類似性」または「実質的に類似した」は、2つのペプチド配列が、例えばGAPまたはBESTFITのようなプログラ
ムで、デフォルトのギャップウェイトを用いて最適に並べた場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%、または、99%の配列同一性を共有していることを意味する。同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換のために異なっていることが好ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、側鎖(R基)と類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有するその他のアミノ酸残基で置換されていることである。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させないものと予想される。2種またはそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換のために相違している場合は、配列同一性、または、類似性の程度のパーセントを上方調整して、保存的な性質の置換に関して修正してもよい。この調節を行う手段は、当業者周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307〜331を参照。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸のグループの例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、および、イソロイシン;2)脂肪族−ヒドロキシル側鎖:セリン、および、スレオニン;3)アミドを含む側鎖:アスパラギン、および、グルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、および、トリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、および、ヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパルテート、および、グルタマート、および、7)硫黄を含む側鎖、システイン、および、メチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタマート−アスパルテート、および、アスパラギン−グルタミンである。あるいは、保存的な置換は、Gonnet等(1992)Science 256:144345で開示されたPAM250の対数尤度マトリックスにおいて陽性の値を示すあらゆる変化である。「中度に保存的」な置換は、PAM250の対数尤度マトリックスにおいて負ではない値を示すあらゆる変化である。
【0031】
ポリペプチドに関する配列類似性(また、配列同一性とも称される)は、一般的には、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換などの様々な置換、欠失およびその他の改変に割り当てられた類似性の尺度を用いて、類似の配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアは、GapおよびBestfitのようなプログラムを含み、このようなソフトウェアは、デフォルトパラメーターを用いて、異なる生物種由来の相同ポリペプチドのような密接に関連したポリペプチド間の、または、野生型タンパク質とそれらの突然変異蛋白質との間の配列相同性、または、配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照。またポリペプチド配列は、FASTAで、デフォルトパラメーター、または、推奨されたパラメーター、GCGバージョン6.1内のプログラムを用いて比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2、および、FASTA3)は、クエリーと検索配列との間の最大にオーバーラップしている領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する(上記のPearson(2000))。本発明の配列を異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合、その他の好ましいアルゴリズムは、コンピュータープログラムのBLAST、特にblastpまたはtblastn(デフォルトパラメーターを使用)である。例えば、Altschul等(1990)J.Mol.Biol.215:403410、および、Altschul等(1997)Nucleic Acids Res.25:3389402を参照。
【0032】
ヒト抗体の製造
ヒト抗体の生成法としては、例えば、ベロシミューン(Veloclmmune
TM)(リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Regeneron Pharmaceuticals))、キセノマウス(XenoMouse)
TMテクノロジー(Green等(1994)Nature Genetics 7:13〜21;アブジェニックス(Abgenix))、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチ、および、ファージディスプレイ(および、例えばUS5,545,807、US6,787,637を参
照)が挙げられる。ベロシミューン
TMテクノロジー(US6,596,541)は、選択された抗原に対する高い特異性の完全ヒト抗体の生成法を包含する。この技術は、マウスが、抗原性の刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を生産するように、内因性のマウス定常領域遺伝子座に機能するように連結したヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成に関する。このような抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、ヒト重鎖および軽鎖の定常領域をコードするDNAに機能するように連結する。続いてそのDNAを、完全ヒト抗体を発現することことができる細胞で発現させる。具体的な実施態様において、上記細胞は、CHO細胞である。
【0033】
抗体は、補体の固定(補体依存性細胞障害活性)(CDC)、および、関与する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によって細胞を死滅させるというのではなく、リガンド−受容体相互作用をブロックすること、または、受容体成分の相互作用を阻害することにおいて治療上有用であり得る。抗体の定常領域は、補体を固定したり、細胞依存性細胞傷害を媒介したりする抗体の能力に関して重要である。従って、抗体のアイソタイプは、抗体にとって細胞毒性を媒介することが望ましいかどうかに基づき選択されることもある。
【0034】
ヒト免疫グロブリンは、ヒンジの異質性を伴う2つの形態で存在することができる。1つの形態において、免疫グロブリン分子は、約150〜160kDaの安定な4つの鎖コンストラクトを含み、鎖間の重鎖ジスルフィド結合によって二量体が一緒に保持される。第二の形態において、この二量体は鎖間のジスルフィド結合で連結されておらず、共有結合によって連結された軽鎖および重鎖(半抗体)で構成されている約75〜80kDaの分子が形成される。これらの形態は、親和性によって精製した後でさえ分離が極めて困難であった。様々な無傷のIgGアイソタイプにおける第二の形態の出現頻度は、これらに限定されないが、抗体のヒンジ領域のアイソタイプに関連する構造的な差によるものである。実際に、ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第二の形態の出現を、ヒトIgG1ヒンジを用いて通常観察されるレベルに有意に減少させることができる(Angal等(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、CH2またはCH3領域に1種またはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含し、このような抗体は、例えば生産の際に、望ましい抗体の形態の収量を改善することが望ましい場合がある。
【0035】
本発明の抗体は、好ましくは、ベロシミューン
TMテクノロジーを用いて製造される。内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域が、それに対応するヒト可変領域で置換されているトランスジェニックマウスを対象の抗原で刺激して、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(例えば、B細胞)を回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞系と融合させて不死化したハイブリドーマ細胞系を製造してもよいし、このようなハイブリドーマ細胞系をスクリーニングし、選択し、対象の抗原に特異的な抗体を生産するハイブリドーマ細胞系を同定してもよい。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプの定常領域に連結させてもよい。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞中で生産することもできる。あるいは、抗原特異的なキメラ抗体、または、軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。
【0036】
一実施態様において、このようなトランスジェニックマウスは、18個以下の機能的なヒト可変重鎖遺伝子、および、12個の機能的なヒト可変カッパ軽鎖遺伝子を含む。その他の実施態様において、このようなトランスジェニックマウスは、39個以下のヒト可変重鎖遺伝子、および、30個のヒト可変カッパ軽鎖遺伝子を含む。さらにその他の実施態様において、このようなトランスジェニックマウスは、80個以下のヒト可変重鎖遺伝子
、および、40個のヒト可変カッパ軽鎖遺伝子を含む。
【0037】
一般的に、本発明の抗体は、固相に固定した状態または液相中のいずれかで抗原への結合を測定した場合、典型的には約10
-9〜約10
-12MのK
Dを示す極めて高い親和性を有する。
【0038】
まず、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。以下で説明するように、この抗体は、hIL−6Rに対する結合親和性、hIL−6をブロックする能力、および/または、ヒトタンパク質に対する選択性などの望ましい特徴に関して特徴付けられ、さらに選択される。マウス定常領域は望ましいヒト定常領域で置換され、本発明の完全ヒト抗体、例えば野生型または改変型のIgG4またはIgG1(例えば、配列番号242、243、244)を生成する。選択された定常領域は具体的な用途に従って様々であってよいが、高親和性の抗原結合、および、標的特異性の特徴は可変領域に存在する。
【0039】
エピトープマッピングおよび関連技術
特定のエピトープに結合する抗体に関してスクリーニングするために、例えばAntibodies:A Laboratory Manual[1988,コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory),HarlowおよびLane編集]で説明されているような慣例的なクロスブロッキング分析(cross−blocking assay)を行ってもよい。その他の方法としては、アラニンスキャニング突然変異体、ペプチドブロット(Reineke(2004)Methods Mol Biol 248:443〜63)、または以下の実施例で説明されているようなペプチド切断による解析が挙げられる。それに加えて、エピトープの切り出し、エピトープの抽出、および、抗原の化学修飾のような方法を用いてもよい(Tomer(2000)Protein Science:9:487〜496)。
【0040】
改変援用プロファイリング(Modification−Assisted Profiling:MAP)は、抗原構造ベースの抗体プロファイリング(Antigen Structure−based Antibody Profiling:ASAP)としても知られており、これは、同じ抗原に対して向けられた膨大な数のモノクローナル抗体(mAb)を、化学的または酵素的に改変された抗原表面への抗体それぞれの結合プロファイルの類似性に従って類別する方法である(米国特許出願公開番号2004/0101920)。それぞれカテゴリは、その他のカテゴリによって提示されるエピトープと明確に異なる固有のエピトープを特徴とするものもあるし、または、それらと部分的にオーバーラップしている固有のエピトープを特徴とするものもある。この技術によって、遺伝学的に同一な抗体の迅速なフィルタリングが可能になり、従って、遺伝学的に別個の抗体に焦点を合わせて特徴付けできるようになる。ハイブリドーマのスクリーニングに適用した場合、MAPは、望ましい特徴を有する希少なハイブリドーマクローンの同定を容易にする可能性がある。MAPを用いて、結合するエピトープごとに分類した抗体のグループに本発明のhIL−6R抗体を分類してもよい。
【0041】
固定化された抗原の構造を変更するのに有用な物質は、例えばタンパク質分解酵素のような酵素、および、化学物質である。抗原タンパク質は、バイオセンサーチップ表面、または、ポリスチレンビーズのいずれかに固定されていてもよい。後者は、例えば、多重式のルミネックス(Luminex)
TM検出分析(ルミネックス社(Luminex Corp.),テキサス州)のような分析で処理することができる。ルミネックス
TMは、100種までの異なるタイプのビーズを用いて多重分析を実施できる能力があるため、ルミネックス
TMは、ほぼ無限の様々な改変を有する抗原表面を提供するため、抗体エピトーププ
ロファイリングにおいてバイオセンサー分析を超える改善された解決法となっている。
【0042】
治療のための投与および調合物
本発明に係る治療用物質の投与は、適切な担体、賦形剤、および、改善された移動、送達、耐性などを提供するために調合物に包含されるその他の物質と共に投与されると予想される。多数の適切な調合物が、あらゆる薬剤師に知られている処方集である:Remington’s Pharmaceutical Sciences(第15版,マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company),イーストン,ペンシルベニア州,1975)、具体的にはそのなかのBlaug、Seymourによる第87章で確認することができる。このような調合物としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)を含む小胞(例えば、リポフェクチン(Lipofectin
TM))、DNA複合体、無水の吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルション、エマルション状のカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、および、カーボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。調合物中の活性成分が調合によって不活性化されず、調合物が生理学的に適合するものであり、投与経路に耐性を有するものであれば、前述のあらゆる混合物が、本発明に係る治療および療法において適切であり得る。Powell等.PDA(1998)J Pharm Sci Technol.52:238〜311、および、そのなかの、薬剤師にとって周知の賦形剤および担体に関する追加の情報についての用例も参照。
【0043】
本発明の方法および組成物をどのように製造し使用するかについての詳細な開示および説明が当業者に提供されるように、以下の実施例を記載するが、発明者等が彼等の発明とみなすものの範囲を限定することは目的としない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にするための努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差および偏差も含まれると予想される。特に他の指定がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏度であり、圧力は、大気圧かまたはほぼ大気圧である。