特許第6140777号(P6140777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140777ヒトIL−6受容体に対する高親和性抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140777
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ヒトIL−6受容体に対する高親和性抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170522BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170522BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20170522BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170522BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61P29/00 101
   !C07K16/28ZNA
   !C12N15/00 A
   !C12P21/08
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-171640(P2015-171640)
(22)【出願日】2015年9月1日
(62)【分割の表示】特願2013-102655(P2013-102655)の分割
【原出願日】2007年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-26171(P2016-26171A)
(43)【公開日】2016年2月12日
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】60/810,664
(32)【優先日】2006年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/843,232
(32)【優先日】2006年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・スティーヴンス
(72)【発明者】
【氏名】タミー・ティー・フワーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウエル・エイチ・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット・エル・フェアハースト
(72)【発明者】
【氏名】アシク・ラフィク
(72)【発明者】
【氏名】エリク・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ジェイ・ポバースキ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジェイ・パパドプーロス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ピー・ファンドル
(72)【発明者】
【氏名】ガン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット・カロウ
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−139293(JP,A)
【文献】 国際公開第95/009873(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02694767(FR,A1)
【文献】 J. Immunol. (1989) vol.143, no.9, p.2900-2906
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 16/28
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における関節リウマチ(RA)に関連する症状を低減するための製剤であって、当該製剤は、ヒトインターロイキン−6受容体(hIL−6R)と特異的に結合する、治療に有効な量のヒト抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、ここで当該ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号21−23−25のアミノ酸配列を有する重鎖CDRs(HCDR1−HCDR2−HCDR3)を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び、配列番号29−31−32のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRs(LCDR1−LCDR2−LCDR3)を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、製剤。
【請求項2】
ヒト抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR及び配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連技術の説明
インターロイキン−6(IL−6)は、免疫反応、急性期反応および造血の調節において重要な役割を果たす、免疫および非免疫細胞によって生産される多面発現性のサイトカインである。これらが可溶性で細胞膜結合型のIL−6R(α鎖)に結合して二元複合体を形成し、この複合体は、細胞膜結合型のgp130(β鎖)と相互作用して、IL−6、IL−6Rおよびgp130のそれぞれ2種を含むシグナル伝達複合体の形成を誘導することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
hIL−6Rに対する抗体は、US5,670,373、5,795,965、5,817,790、6,410,691、および、EP409607B1で説明されている。治療方法は、US5,888,510、および、6,723,319で説明されている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
第一の形態において、本発明は、ヒトインターロイキン−6受容体(hIL−6R)と特異的に結合するヒト抗体、好ましくは組換えヒト抗体を提供する。これらの抗体は、高親和性で、かつ遅い解離速度でhIL−6Rに結合すること、および、IL−6活性を中和する能力を特徴とする。本抗体は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)であってもよいし、または、抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2またはscFv
フラグメント)だけを含んでいてもよいし、例えば、残留したエフェクター機能を除去するような官能性が付与されるように改変されていてもよい(Reddy等(2000)J.Immunol.164:1925〜1933)。好ましい実施態様において、本発明は、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約500pMまたはそれ未満のKDでヒ
トIL−6受容体(配列番号1)と結合する、抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを提供する。より具体的な実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、300pM未満または200pM未満のKDを有し、または、100pM未満ものKDを有する。様々な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、ルシフェラーゼによる生物学的試験によって測定したところ250pMまたはそれ未満のIC50でhIL−6活性をブロックする。より具体的な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、150pMまたはそれ未満のIC50を示す。
【0004】
関連する形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、サルIL−6Rへの結合よりも少なくとも2倍高い親和性でhIL−6Rと結合する。より好ましい実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、サルIL−6Rへの結合よりも約3倍(またはそれ以下の倍率で)高い親和性で、L−6Rタンパク質(配列番号1)(配列番号251に示されている、カニクイザル(Macaca fascicularis)の細胞外ドメイン)と結合する。
【0005】
一実施態様において、本発明の抗体、または、本発明の抗体の抗原結合部分は、配列番号3、227、19、231、35、51、67、83、99、115、131、147、239、241、163、179、235、195、および、211、または、それらの実質的に類似した配列からなる群より選択された重鎖可変領域(HCVR)を含む。より具体的な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、配列番号11、229、27、233、43、59、75、91、107、123、139、155、171、187、237、203、および、219、または、それらの実質的に類似
した配列からなる群より選択された軽鎖可変領域(LCVR)をさらに含む。具体的な実施態様において、本抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、配列番号3/11;227/229;19/27;231/233;35/43;51/59;67/75;83/91;99/107;115/123;131/139;147/155;239/155;241/155;163/171;179/187;235/237;195/203;および、211/219、または、それらの実質的に類似した配列からなる群より選択されたHCVR/LCVR対を含む。
【0006】
第二の形態において、本発明は、本発明の抗体または抗体の抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子を提供する。一実施態様において、本発明の核酸分子は、上述のようなHCVRを含む抗体またはそれらのフラグメントをコードする。具体的な実施態様において、HCVRをコードする核酸分子は、配列番号2、226、18、230、34、50、66、82、98、114、130、146、238、240、162、178、234、194、および、210、または、それらの実質的に同一な配列からなる群より選択される。関連する形態において、本発明は、上述のようなLCVRをコードする単離された核酸分子を提供する。具体的な実施態様において、LCVRをコードする核酸分子は、配列番号10、228、26、232、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、236、202、および、218、または、それらの実質的に同一な配列からなる群より選択されたヌクレオチド配列である。
【0007】
第三の形態において、本発明は、重鎖の相補性決定領域3(CDR3)ドメイン、および、軽鎖のCDR3ドメインを含む抗体または抗原結合フラグメントを特徴とし、ここにおいて:
重鎖のCDR3ドメインは、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10
−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19(配列番号247)で示されるアミノ酸配列を含み(ここにおいてX1=Ala、X2=Lys、X3=Gly、X4=Arg、X5=Asp、X6=Ser、または、Ala、X7=Phe、X8=Asp;X9
Ile、X10=Pro、または、存在せず、X11=Phe、または、存在せず、X12=Val、または、存在せず、X13=Tyr、または、存在せず、X14=Tyr、または、存在せず、X15=Tyr、または、存在せず、X16=Gly、または、存在せず、X17=Met、または、存在せず、X18=Asp、または、存在せず、および、X19=Val、または、存在せず);および、
軽鎖のCDR3ドメインは、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列
番号250)で示されるアミノ酸配列を含む(ここにおいてX1=Gln、X2=GlnまたはHis、X3=Ala、X4=AsnまたはTyr、X5=Ser、X6=Phe、X7
=Pro、X8=Pro、および、X9=Thr)。
【0008】
より具体的な実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、以下をさらに含む:
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号245)で示されるアミノ酸配列を含む重鎖のCDR1ドメイン(ここにおいてX1=Gly、または、Arg、X2=Phe、X3=Thr、X4=Phe、X5=Asp、X6=Asp、X7=Tyr、および、
8=Ala);
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号246)で示されるアミノ酸配列を含む重鎖のCDR2ドメイン(ここにおいてX1=Ile、または、Val、X2=Ser、X3=Trp、X4=Asn、X5=Ser、X6=Gly、X7=Ser、および、
8=Ile);
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号248)で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR1ドメイン(ここにおいてX1=Gln、X2=Gly、X3=Il
e、X4=Ser、X5=Ser、および、X6=Trp);および、
式X1−X2−X3(配列番号249)で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR2ド
メイン(ここにおいてX1=Gly、または、Ala、X2=Ala、および、X3=Se
r)。
【0009】
第四の形態において、本発明は、以下を含む抗体または抗原結合フラグメントを特徴とする:
配列番号25、153、9、185、41、57、73、89、105、121、137、169、201、および、217からなる群より選択された重鎖のCDR3ドメイン;および、
配列番号33、161、17、193、49、65、81、97、113、129、145、177、209、および、225からなる群より選択された軽鎖のCDR3ドメイン。
【0010】
より具体的な実施態様において、本抗体または抗原結合フラグメントは、以下をさらに含む:
配列番号21、149、5、181、37、53、69、85、101、117、133、165、197、および、213からなる群より選択された重鎖のCDR1ドメイン;
配列番号23、151、7、183、39、55、71、87、103、119、135、167、199、および、215からなる群より選択された重鎖のCDR2ドメイン;
配列番号29、157、13、189、45、61、77、93、109、125、141、173、205、および、221からなる群より選択された軽鎖のCDR1ドメイン;および、
配列番号31、159、15、191、47、63、79、95、111、127、143、175、207、および、223からなる群より選択された軽鎖のCDR2ドメイン**
【0011】
具体的な実施態様において、本抗原または抗原結合フラグメントは、重鎖のCDR配列である配列番号21、23、25、および、軽鎖のCDR配列である配列番号29、31、33;重鎖のCDR配列である配列番号149、151、153、および、軽鎖のCDR配列である配列番号157、159、161;重鎖のCDR配列である配列番号5、7、9、および、軽鎖である配列番号13、15、17;および、重鎖のCDR配列である配列番号181、183、185、および、軽鎖のCDR配列である配列番号189、191、193を含む。
【0012】
第五の形態において、本発明は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子を特徴とし、ここにおいて本抗体またはそれらのフラグメントは、以下を含む:
配列番号24、152、8、184、40、56、72、88、104、120、136、168、200、および、216からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた重鎖のCDR3ドメイン;および、
配列番号32、160、16、192、48、64、80、96、112、128、144、176、208、および、224からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖のCDR3ドメイン;加えて、それらの実質的に同一な核酸配列。
【0013】
より具体的な実施態様において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子が提供され、ここにおいて、該抗体またはそれらのフラグメントは、以下を含む:
配列番号20、148、4、180、36、52、68、84、100、116、13
2、164、196、および、212からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた重鎖のCDR1;
配列番号22、150、6、182、38、54、70、86、102、118、134、166、198、および、214からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた重鎖のCDR2ドメイン;
配列番号28、156、12、188、44、60、76、92、108、124、140、172、204、および、220からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖のCDR1ドメイン;および、
配列番号30、158、14、190、30、46、62、78、94、110、126、142、174、206、および、222からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖のCDR2ドメイン;加えて、それらの実質的に同一な核酸配列。
【0014】
本発明は、改変された糖付加パターンを有する、抗hIL−6R抗体またはそれらの抗原結合フラグメントを包含する。いくつかの用途において、望ましくない糖付加部位を除去するための改変が有用である可能性があり、または、オリゴ糖鎖上のフコース部分が欠失した抗体も、例えば抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を高めるためには有用である可能性がある(Shield等(2002)JBC277:26733を参照)。その他の用途において、補体依存性細胞障害活性(CDC)を改変するために、ガラクトシル化の改変を施すこともあり得る。
【0015】
さらなる形態において、本発明は、本発明の核酸分子を有する組換え発現ベクター、および、このようなベクターが導入された宿主細胞を提供し、同様に、本発明の宿主細胞を培養することにより得られた本発明の抗体または抗原結合フラグメントの製造方法も提供する。このような宿主細胞は、原核細胞でもよいし、または真核細胞でもよく、好ましくはこのような宿主細胞は、E.coli細胞、または、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞である。
【0016】
さらなる形態において、本発明は、hIL−6Rと特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合フラグメント、および、製薬上許容できる担体を含む医薬組成物を特徴とする。
【0017】
さらなる形態において、本発明は、本発明の抗体またはそれらの抗原結合部分を用いてヒトIL−6活性を阻害する方法を特徴とする。一実施態様において、本発明は、IL−6活性の阻害によって治療または改善される障害に罹ったヒト被検体に、本発明の抗体またはそれらのフラグメントを投与することを含む、治療方法を包含する。このような障害は、例えば、関節炎、例えば慢性リウマチ様関節炎;炎症性腸疾患、例えばクローン病、および、潰瘍性大腸炎;全身性エリテマトーデス;および、炎症性疾患であり得る。
【0018】
さらなる形態において、本発明は、ヒトにおいてIL−6−が介在する病気または障害を弱めたり、または、抑制したりするのに使用する医薬品の製造における、上記で定義されたような抗体または抗体の抗原結合フラグメントの使用を提供する。関連する形態において、本発明は、ヒトにおけるIL−6−が介在する病気または障害の低減または抑制に使用するための、上記で定義されたような抗体または抗体の抗原結合フラグメントを提供する。
【0019】
その他の目的および利点は、続く詳細な説明の総論から明らかになると予想される。
【0020】
詳細な説明
本発明の方法を説明する前に、当然のことながら本発明は、説明されている具体的な方
法および実験条件に限定されることはなく、従ってこれらの方法および条件は様々であってよい。また当然ながら、本明細書において用いられる用語は、単に具体的な実施態様を説明するためだけのものであり、限定することは目的ではなく、従って、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されると予想される。
【0021】
特に他の指定がない限り、本明細書において用いられる全ての専門用語や科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同様の意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書において説明されているものと類似した、または、等価なあらゆる方法および材料を用いることができるが、以下で、好ましい方法および材料を説明する。
【0022】
本明細書で用いられる用語「ヒトIL6R」(hIL−6R)は、インターロイキン−6(IL−6)と特異的に結合するヒトサイトカイン受容体を意味することとする。配列番号1に、hIL−6Rの細胞外ドメインを示す。
【0023】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合で相互に連結された2つの重(H)鎖、および、2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を意味することとする。重鎖はそれぞれ、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略記される)、および、重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。軽鎖はそれぞれ、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略記される)、および、軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)で構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細かく分類することができ、この領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより高度に保存された領域内に散在している。VHおよびVLはそれぞれ、3つのCDR、および、4つのFRで構成されており、これらはアミノ末端からカルボキシ末端への方向で以下の順番で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0024】
本明細書で用いられる抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」または「抗体フラグメント」)という用語は、抗原(例えば、hIL−6R)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはそれ以上のフラグメントを意味する。このような抗体の抗原に結合する機能は、全長抗体のフラグメントが発揮することができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL1およびCH1ドメインからなる1価のフラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋で連結された2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward等(1989)Nature 241:544〜546);および、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え法を用いて、VLおよびVH領域が対をなして1価の分子が形成されるように、それらを単一の連続した鎖にすることができる合成リンカーによって合体させることができる(単鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird等(1988)Science 242:423〜426;および、Huston等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879〜5883を参照)。このような単鎖抗体も抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることとする。また、単鎖抗体のその他の形態、例えば二重特異性抗体も包含される(例えば、Holliger等(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA90:6444〜6448を参照)。
【0025】
本明細書で用いられる抗体「を中和すること」または「をブロックすること」は、hIL−6Rに結合して、hIL−6の生物活性の阻害を引き起こす抗体を意味することとする。このようなhIL−6の生物活性の阻害は、hIL−6によって誘導された細胞の活性化、および、hIL−6のhIL−6Rへの結合(以下の実施例を参照)のような、当分野で知られているhIL−6の生物活性に関する1種またはそれ以上の指標を測定することによって評価することができる。
【0026】
「CDR」または相補性決定領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより高度に保存された領域内に散在している超可変性の領域である。本発明の抗hIL−6R抗体またはフラグメントの様々な実施態様において、FRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよいし、または、自然に、または、人工的に改変されていてもよい。CDR群は、アミノ酸コンセンサス配列と定義することもできる;例えば、一実施態様において、本発明の抗hIL−6R抗体または抗原結合フラグメントは、式X1−X2−X3−X4−X5
−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19(配列番号247)で示されるアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメイン(ここにおいてX1=Ala、X2=Lys、X3=Gly、X4=Arg、X5=Asp、X6=Ser、または、Ala、X7=Phe、X8=Asp;X9=Ile、X10=Pro、または、存
在せず、X11=Phe、または、存在せず、X12=Val、または、存在せず、X13=Tyr、または、存在せず、X14=Tyr、または、存在せず、X15=Tyr、または、存在せず、X16=Gly、または、存在せず、X17=Met、または、存在せず、X18=Asp、または、存在せず、および、X19=Val、または、存在せず);および、式X1
−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号250)で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメイン(ここにおいてX1=Gln、X2=GlnまたはHis、X3=Ala、X4=AsnまたはTyr、X5=Ser、X6=Phe、X7=Pro、X8=Pro、および、X9=Thr)を含むものと説明することもできる。
【0027】
本明細書で用いられる用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばビアコア(BiacoreTM)システム(ファルマシア・バイオセンサー社(Pharmacia Biosensor AB))を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度変化を検出することによってリアルタイムの相互作用の解析を可能にする光学現象を意味する。
【0028】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域内の特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原決定基である。単一の抗原が、1種より多くのエピトープを有していることもある。エピトープは、コンフォメーショナルエピトープ、または、リニアーエピトープのいずれでもよい。コンフォメーショナルエピトープは、空間的に並列させたアミノ酸によって、直鎖状のポリペプチド鎖の異なるセグメントから生産される。リニアーエピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって生産されたものである。所定の環境において、エピトープは、抗原上に糖部分、ホスホリル基またはスルホニル基を含んでいてもよい。
【0029】
用語「実質的な同一性」または「実質的に同一な」は、核酸またはそれらのフラグメントに対して用いられる場合、その他の核酸(またはその相補鎖)と共に、適切なヌクレオチドを挿入または欠失させて最適に並べた場合、以下で考察されているように、FASTA、BLASTまたはGapのような配列同一性に関する周知のアルゴリズムのいずれかによって測定したところ、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%または99%のヌクレオチド配列の同一性があることを示す。
【0030】
ポリペプチドに用いられているように、用語「実質的な類似性」または「実質的に類似した」は、2つのペプチド配列が、例えばGAPまたはBESTFITのようなプログラ
ムで、デフォルトのギャップウェイトを用いて最適に並べた場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%、または、99%の配列同一性を共有していることを意味する。同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換のために異なっていることが好ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、側鎖(R基)と類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有するその他のアミノ酸残基で置換されていることである。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させないものと予想される。2種またはそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換のために相違している場合は、配列同一性、または、類似性の程度のパーセントを上方調整して、保存的な性質の置換に関して修正してもよい。この調節を行う手段は、当業者周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307〜331を参照。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸のグループの例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、および、イソロイシン;2)脂肪族−ヒドロキシル側鎖:セリン、および、スレオニン;3)アミドを含む側鎖:アスパラギン、および、グルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、および、トリプトファン;5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、および、ヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパルテート、および、グルタマート、および、7)硫黄を含む側鎖、システイン、および、メチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタマート−アスパルテート、および、アスパラギン−グルタミンである。あるいは、保存的な置換は、Gonnet等(1992)Science 256:144345で開示されたPAM250の対数尤度マトリックスにおいて陽性の値を示すあらゆる変化である。「中度に保存的」な置換は、PAM250の対数尤度マトリックスにおいて負ではない値を示すあらゆる変化である。
【0031】
ポリペプチドに関する配列類似性(また、配列同一性とも称される)は、一般的には、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換などの様々な置換、欠失およびその他の改変に割り当てられた類似性の尺度を用いて、類似の配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアは、GapおよびBestfitのようなプログラムを含み、このようなソフトウェアは、デフォルトパラメーターを用いて、異なる生物種由来の相同ポリペプチドのような密接に関連したポリペプチド間の、または、野生型タンパク質とそれらの突然変異蛋白質との間の配列相同性、または、配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照。またポリペプチド配列は、FASTAで、デフォルトパラメーター、または、推奨されたパラメーター、GCGバージョン6.1内のプログラムを用いて比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2、および、FASTA3)は、クエリーと検索配列との間の最大にオーバーラップしている領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する(上記のPearson(2000))。本発明の配列を異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合、その他の好ましいアルゴリズムは、コンピュータープログラムのBLAST、特にblastpまたはtblastn(デフォルトパラメーターを使用)である。例えば、Altschul等(1990)J.Mol.Biol.215:403410、および、Altschul等(1997)Nucleic Acids Res.25:3389402を参照。
【0032】
ヒト抗体の製造
ヒト抗体の生成法としては、例えば、ベロシミューン(VeloclmmuneTM)(リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Regeneron Pharmaceuticals))、キセノマウス(XenoMouse)TMテクノロジー(Green等(1994)Nature Genetics 7:13〜21;アブジェニックス(Abgenix))、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチ、および、ファージディスプレイ(および、例えばUS5,545,807、US6,787,637を参
照)が挙げられる。ベロシミューンTMテクノロジー(US6,596,541)は、選択された抗原に対する高い特異性の完全ヒト抗体の生成法を包含する。この技術は、マウスが、抗原性の刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を生産するように、内因性のマウス定常領域遺伝子座に機能するように連結したヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成に関する。このような抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、ヒト重鎖および軽鎖の定常領域をコードするDNAに機能するように連結する。続いてそのDNAを、完全ヒト抗体を発現することことができる細胞で発現させる。具体的な実施態様において、上記細胞は、CHO細胞である。
【0033】
抗体は、補体の固定(補体依存性細胞障害活性)(CDC)、および、関与する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によって細胞を死滅させるというのではなく、リガンド−受容体相互作用をブロックすること、または、受容体成分の相互作用を阻害することにおいて治療上有用であり得る。抗体の定常領域は、補体を固定したり、細胞依存性細胞傷害を媒介したりする抗体の能力に関して重要である。従って、抗体のアイソタイプは、抗体にとって細胞毒性を媒介することが望ましいかどうかに基づき選択されることもある。
【0034】
ヒト免疫グロブリンは、ヒンジの異質性を伴う2つの形態で存在することができる。1つの形態において、免疫グロブリン分子は、約150〜160kDaの安定な4つの鎖コンストラクトを含み、鎖間の重鎖ジスルフィド結合によって二量体が一緒に保持される。第二の形態において、この二量体は鎖間のジスルフィド結合で連結されておらず、共有結合によって連結された軽鎖および重鎖(半抗体)で構成されている約75〜80kDaの分子が形成される。これらの形態は、親和性によって精製した後でさえ分離が極めて困難であった。様々な無傷のIgGアイソタイプにおける第二の形態の出現頻度は、これらに限定されないが、抗体のヒンジ領域のアイソタイプに関連する構造的な差によるものである。実際に、ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第二の形態の出現を、ヒトIgG1ヒンジを用いて通常観察されるレベルに有意に減少させることができる(Angal等(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、CH2またはCH3領域に1種またはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含し、このような抗体は、例えば生産の際に、望ましい抗体の形態の収量を改善することが望ましい場合がある。
【0035】
本発明の抗体は、好ましくは、ベロシミューンTMテクノロジーを用いて製造される。内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域が、それに対応するヒト可変領域で置換されているトランスジェニックマウスを対象の抗原で刺激して、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(例えば、B細胞)を回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞系と融合させて不死化したハイブリドーマ細胞系を製造してもよいし、このようなハイブリドーマ細胞系をスクリーニングし、選択し、対象の抗原に特異的な抗体を生産するハイブリドーマ細胞系を同定してもよい。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプの定常領域に連結させてもよい。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞中で生産することもできる。あるいは、抗原特異的なキメラ抗体、または、軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。
【0036】
一実施態様において、このようなトランスジェニックマウスは、18個以下の機能的なヒト可変重鎖遺伝子、および、12個の機能的なヒト可変カッパ軽鎖遺伝子を含む。その他の実施態様において、このようなトランスジェニックマウスは、39個以下のヒト可変重鎖遺伝子、および、30個のヒト可変カッパ軽鎖遺伝子を含む。さらにその他の実施態様において、このようなトランスジェニックマウスは、80個以下のヒト可変重鎖遺伝子
、および、40個のヒト可変カッパ軽鎖遺伝子を含む。
【0037】
一般的に、本発明の抗体は、固相に固定した状態または液相中のいずれかで抗原への結合を測定した場合、典型的には約10-9〜約10-12MのKDを示す極めて高い親和性を有する。
【0038】
まず、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。以下で説明するように、この抗体は、hIL−6Rに対する結合親和性、hIL−6をブロックする能力、および/または、ヒトタンパク質に対する選択性などの望ましい特徴に関して特徴付けられ、さらに選択される。マウス定常領域は望ましいヒト定常領域で置換され、本発明の完全ヒト抗体、例えば野生型または改変型のIgG4またはIgG1(例えば、配列番号242、243、244)を生成する。選択された定常領域は具体的な用途に従って様々であってよいが、高親和性の抗原結合、および、標的特異性の特徴は可変領域に存在する。
【0039】
エピトープマッピングおよび関連技術
特定のエピトープに結合する抗体に関してスクリーニングするために、例えばAntibodies:A Laboratory Manual[1988,コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory),HarlowおよびLane編集]で説明されているような慣例的なクロスブロッキング分析(cross−blocking assay)を行ってもよい。その他の方法としては、アラニンスキャニング突然変異体、ペプチドブロット(Reineke(2004)Methods Mol Biol 248:443〜63)、または以下の実施例で説明されているようなペプチド切断による解析が挙げられる。それに加えて、エピトープの切り出し、エピトープの抽出、および、抗原の化学修飾のような方法を用いてもよい(Tomer(2000)Protein Science:9:487〜496)。
【0040】
改変援用プロファイリング(Modification−Assisted Profiling:MAP)は、抗原構造ベースの抗体プロファイリング(Antigen Structure−based Antibody Profiling:ASAP)としても知られており、これは、同じ抗原に対して向けられた膨大な数のモノクローナル抗体(mAb)を、化学的または酵素的に改変された抗原表面への抗体それぞれの結合プロファイルの類似性に従って類別する方法である(米国特許出願公開番号2004/0101920)。それぞれカテゴリは、その他のカテゴリによって提示されるエピトープと明確に異なる固有のエピトープを特徴とするものもあるし、または、それらと部分的にオーバーラップしている固有のエピトープを特徴とするものもある。この技術によって、遺伝学的に同一な抗体の迅速なフィルタリングが可能になり、従って、遺伝学的に別個の抗体に焦点を合わせて特徴付けできるようになる。ハイブリドーマのスクリーニングに適用した場合、MAPは、望ましい特徴を有する希少なハイブリドーマクローンの同定を容易にする可能性がある。MAPを用いて、結合するエピトープごとに分類した抗体のグループに本発明のhIL−6R抗体を分類してもよい。
【0041】
固定化された抗原の構造を変更するのに有用な物質は、例えばタンパク質分解酵素のような酵素、および、化学物質である。抗原タンパク質は、バイオセンサーチップ表面、または、ポリスチレンビーズのいずれかに固定されていてもよい。後者は、例えば、多重式のルミネックス(Luminex)TM検出分析(ルミネックス社(Luminex Corp.),テキサス州)のような分析で処理することができる。ルミネックスTMは、100種までの異なるタイプのビーズを用いて多重分析を実施できる能力があるため、ルミネックスTMは、ほぼ無限の様々な改変を有する抗原表面を提供するため、抗体エピトーププ
ロファイリングにおいてバイオセンサー分析を超える改善された解決法となっている。
【0042】
治療のための投与および調合物
本発明に係る治療用物質の投与は、適切な担体、賦形剤、および、改善された移動、送達、耐性などを提供するために調合物に包含されるその他の物質と共に投与されると予想される。多数の適切な調合物が、あらゆる薬剤師に知られている処方集である:Remington’s Pharmaceutical Sciences(第15版,マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company),イーストン,ペンシルベニア州,1975)、具体的にはそのなかのBlaug、Seymourによる第87章で確認することができる。このような調合物としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)を含む小胞(例えば、リポフェクチン(LipofectinTM))、DNA複合体、無水の吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルション、エマルション状のカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、および、カーボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。調合物中の活性成分が調合によって不活性化されず、調合物が生理学的に適合するものであり、投与経路に耐性を有するものであれば、前述のあらゆる混合物が、本発明に係る治療および療法において適切であり得る。Powell等.PDA(1998)J Pharm Sci Technol.52:238〜311、および、そのなかの、薬剤師にとって周知の賦形剤および担体に関する追加の情報についての用例も参照。
【0043】
本発明の方法および組成物をどのように製造し使用するかについての詳細な開示および説明が当業者に提供されるように、以下の実施例を記載するが、発明者等が彼等の発明とみなすものの範囲を限定することは目的としない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にするための努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差および偏差も含まれると予想される。特に他の指定がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏度であり、圧力は、大気圧かまたはほぼ大気圧である。
【実施例】
【0044】
実施例1.ヒトIL−6受容体に対するヒト抗体の生成
齧歯類の免疫化は、当業界既知のあらゆる方法によって行うことができる(例えば、上記のHarlowおよびLane(1988);MalikおよびLillehoj,Antibody techniques:アカデミックプレス(Academic Press),1994,カリフォルニア州)を参照。その他の好ましい実施態様において、hIL−6R抗原を、ヒトIg重鎖可変領域とカッパ軽鎖可変領域との両方をコードするDNA遺伝子座を含むマウス(ベロシミューンTM、リジェネロン・ファーマシューティカルズ社;US6,596,541)に、免疫反応を刺激するためのアジュバントと共に直接投与した。このようなアジュバントとしては、完全および不完全フロインドアジュバント、MPL+TDMアジュバント系(シグマ(Sigma))、または、RIBI(ムラミールジペプチド)(Human Press(2000,ニュージャージー州)によるO'HaganのVaccine Adjuvantを参照)が挙げられる。このような
アジュバントは、局所的なデポー剤中に抗原を隔離することによってポリペプチドの迅速な分散を予防することができ、さらにこれらは、宿主の免疫反応を刺激することができる因子を含んでいてもよい。一実施態様において、hIL−6Rは、hIL−6R遺伝子を含み、宿主細胞のタンパク質発現機構を用いてhIL−6Rを発現してインビボで抗原ポリペプチドを生産することができるDNAプラスミドとして間接的に投与される。両方のアプローチにおいて、免疫化のスケジュールは、2〜3週間の間隔で数回の投与を必要とする。抗体免疫反応は、標準的な抗原特異的なイムノアッセイによってモニターされる。動物がそれらの最大の免疫反応に達したら、抗体を発現するB細胞を回収し、それらの生存能力を保存するためにマウス骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成した。
機能的に望ましいモノクローナル抗体を選択するために、ハイブリドーマ細胞、または、トランスフェクションされた細胞の調整培地を、特異性、抗原−結合親和性、および、hIL−6Rに結合するhIL−6をブロックする効力に関してスクリーニングした(以下で説明する)。
【0045】
実施例2.脾細胞からの直接的な単離によって生成した抗hIL6R抗体
VHおよびVLドメインをコードするDNAは、単一の抗原陽性のB細胞から直接単離することができる。簡単に説明すると、hIL−6Rαで免疫化されたトランスジェニックマウスを殺し、脾細胞を回収した。溶解させて赤血球を除去し、続いて回収した脾細胞をペレット化した。まず再懸濁した脾細胞をヒトIgG、FITC−抗mFc、および、ビオチン−IL6Raのカクテルと1時間インキュベートした。染色した細胞をPBSで2回洗浄し、次にヒトおよびラットIgG、APC−抗mIgM、および、SA−PEのカクテルで1時間染色した。染色した細胞をPBSで一回洗浄し、MoFlo(サイトメーション(Cytomation))でのフローサイトメトリーによって解析した。各IgG陽性、IgM陰性、および、抗原陽性のB細胞を選別し、96ウェルプレートの別個のウェルで平板培養した。これらのB細胞に関する抗体遺伝子のRT−PCRを、Wang等(2000)(J Immunol Methods 244:217〜225)によって説明されている方法に従って行った。簡単に説明すれば、それぞれ単一のB細胞に関するcDNAをRT−PCRによって合成した。次に、それぞれ生じたRT産物をより分け、2つの96ウェルプレート上の2つの対応するウェルに移した。まず、得られたRT産物の一方のセットを、ヒトIgG重鎖可変領域のリーダー配列に特異的な5'ディジ
ェネレートプライマーと、マウス重鎖の定常領域に特異的な3'プライマーとを用いたP
CRによって増幅し、アンプリコンを形成した。次にこのアンプリコンを、ヒトIgG重鎖可変領域の配列のフレームワーク1に特異的な5'ディジェネレートプライマーセット
と、マウス重鎖の定常領域に特異的なネステッド3'プライマーとを用いて再度PCRで
増幅した。得られたRT産物の他方のセットを、まず、ヒトカッパ軽鎖可変領域のリーダー配列に特異的な5’ディジェネレートプライマーと、マウスカッパ軽鎖の定常領域に特異的な3’プライマーとを用いてPCRで増幅し、アンプリコンを形成した。次にこのアンプリコンを、ヒトカッパ軽鎖可変領域の配列のフレームワーク1に特異的な5’ディジェネレートプライマーセットと、マウスカッパ軽鎖の定常領域に特異的なネステッド3’プライマーとを用いて再度PCRで増幅した。重鎖および軽鎖のPCR産物を、それぞれIgG1重鎖の定常領域、および、カッパ軽鎖の定常領域を含むSapI−直線状抗体ベクターにクローニングした。重鎖プラスミドは、重鎖発現カセットの両端にlox2272部位、および、lox511部位を有する。加えて、重鎖プラスミド中のlox2272のすぐ下流に、プロモーター、および、開始ATGが欠失したハイグロマイシン耐性遺伝子がある。またハイグロマイシン耐性遺伝子は、下流のeGFP遺伝子にIRES配列を介して転写可能に連結している。軽鎖プラスミドは、軽鎖発現カセットの両端にloxP部位、および、lox2272部位を有する。加えて、軽鎖プラスミドは、lox2272部位におけるATGの直前にSV40プロモーターを有しており、これは、適切な宿主細胞に統合されたら、軽鎖プラスミドからのlox2272の近位にあるSV40プロモーターおよび開始ATGが、適切なリーディングフレーム内の重鎖プラスミド中でハイグロマイシン耐性遺伝子と隣接し、ハイグロマイシン耐性およびeGFP遺伝子の転写および翻訳が可能になるようにするためである。次に、重鎖可変領域の配列を有する精製した組換えプラスミド、および、同じB細胞由来の軽鎖可変領域の配列を有するプラスミドを連結し、Creリコンビナーゼを発現するプラスミドと共に改変されたCHO宿主細胞系にトランスフェクションさせた。改変されたCHO宿主細胞系は、5’から3’にかけて、転写活性を有する遺伝子座にloxP部位、eCFP、lox2272部位、DsRed、および、lox511部位を含む。その結果、宿主であるCHO細胞は、フローサイトメトリーによって、青色が陽性細胞、赤色が陽性細胞、および、緑色が陰性細胞のように単離することができる。重鎖および軽鎖遺伝子を発現する組換えプラスミドが、Cr
eリコンビナーゼを発現するプラスミドと共にトランスフェクションされると、Creリコンビナーゼが介在する部位特異的な組換えにより、lox部位を含む染色体の遺伝子座における抗体プラスミドの統合、および、eCFPおよびDsRed遺伝子の置換が起こる。次に組換え体を、フローサイトメトリーによって、青色が陰性細胞、赤色が陰性細胞、および、緑色が陽性細胞のように単離することができる。従って、重鎖可変領域の配列を有する組換えプラスミド、および、同じB細胞由来の軽鎖可変領域の配列を有するプラスミドでトランスフェクションされたCHO細胞を、フローサイトメトリーによってより分け、青色の陰性、赤色の陰性、および、緑色の陽性表現型を示す適切な組換え体を単離し、単離されたクローンから安定な組換え抗体を発現するCHO細胞系を確立した。
【0046】
実施例3.抗原結合親和性の決定
上述の選択された抗体に結合する抗原のKDを、リアルタイムのバイオセンサー表面プ
ラズモン共鳴分析(ビアコアTM)での表面動力学によって決定した。より具体的には、ビアコア(R)2000またはビアコア(R)3000を用いてヒトIL−6Rに対する抗体の親和性を測定した。抗体を抗マウスIgGの表面で捕捉し、様々な濃度の組換えhIL−6Rタンパク質に単量体または二量体の形態のいずれかで晒した。BIAevaluationTMソフトウェアを用いた動態解析を行い、会合および解離速度定数を得た。
【0047】
また、ハイブリドーマ調整培地または精製したタンパク質のいずれかに関するhIL−6Rに対する抗体の結合親和性もプレートベースの競合イムノアッセイで測定した。ウシIgGを枯渇させたハイブリドーマ細胞の調整培地(インビトロジェン(Invitrogen))から、タンパク質Gアフィニティークロマトグラフィーを用いて抗体タンパク質を精製した。競合ELISAに関して、簡単に説明すれば、異なるレベルの一定量の抗体を、抗原タンパク質であるhIL−6R−hFcの連続希釈液と0〜10μg/mlの範囲で予備混合し、室温で2時間インキュベートし、抗体と抗原との間の偽性の結合平衡を達成した。次にこれらの溶液を、96ウェルのhIL−6R−hFcでプレコーティングしたプレートに移して、混合物中の遊離の抗体を、hIL−6R−hFcで被覆したプレートに結合させた。このプレートを典型的にPBS溶液中の1〜2μg/mlのhIL−6R−hFcタンパク質で4℃で一晩コーティングして、続いてBSAで非特異的にブロックした。溶液中の過量の抗体を洗浄して取り除いた後、プレートに結合した抗体を、HRP結合ヤギ抗マウスIgGまたはIgAポリクローナル抗体試薬で検出し、比色基質または化学発光基質のいずれかを用いて発現させた。シグナルの溶液中の抗原濃度に対する依存性を、プリズム(PrismTM)ソフトウェア(グラフパッド(Graph Pad))を用いた4−パラメートルの適合解析で解析し、IC50として報告した。さらに、定常状態の液相によるKinexaTM機器(サピダイン社(Sapidyne Inc.))を用いて競合イムノアッセイも行った。
【0048】
表1に、結果を示す(コントロール:ヒトIL−6Rに対するヒト化モノクローナル抗体(米国特許第5,817,790号の配列番号69および71)。抗体(HCVRおよびLCVRアミノ酸配列):VQ8A9−6(3、11);VQ8F11−21(19、27);VV7G4−1(35、43);VV7G4−10(51、59)VV6C10−1(67、75);VV6C10−3(83、91);VV6C10−4(99、107);VV6F12−11(115、123);VV9A6−11(131、139);VV6A9−5(147、155)、VV3D8−4(163、171);VV1G4−7(179、187);248982−13−1−E5(195、203);248982−13−2−A9(211、219)。単量体および二量体のKDは、ビアコアTMによ
って決定し;溶液のKDはKinexaTMによって決定し;IC50はELISA分析によ
って決定した(n.d.=未測定)。
【表1】
【0049】
実施例4.hIL−6活性の中和
本発明の抗hIL−6R抗体のhIL−6をブロックする活性を、hIL−6をブロックするイムノアッセイ、インビトロでのhIL−6依存性の細胞増殖に関する生物学的試験、および、表面プラズモン共鳴(ビアコアTM)によってスクリーニングした。イムノアッセイを用いて、試験された抗体の、hIL−6Rに結合するhIL−6をブロックする能力をスクリーニングし、さらに、インビトロでの生物学的試験を用いて、抗体の、hIL−6Rが介在する細胞シグナル伝達を中和する効力を決定した。
【0050】
イムノアッセイに関して、hIL−6組換えタンパク質を、PBS緩衝液中で96ウェルプレート上に4℃で一晩コーティングした。このプレートを用いて、抗体サンプル溶液から遊離のhIL−6R−hFcを捕捉し、捕捉されたhIL−6R−hFcの量を標準曲線に従って定量した。このサンプル溶液は、一定量のhIL−6R−hFc組換えタンパク質(100pM)、および、様々な量の抗体(未精製のハイブリドーマ調整培地中で、または、0〜約50nMの範囲の連続希釈液中の精製した抗体タンパク質としてのいずれかで)で構成される。この抗体−抗原混合物を室温で〜2時間インキュベートして、抗体−抗原結合を平衡状態にした。次に、遊離のhIL−6R−hFcを測定するために、平衡化させたサンプル溶液をhIL−6でコーティングしたプレートに移した。結合させてから1時間後、プレートを洗浄し、結合したhIL−6R−hFcを、HRP結合ヤギ抗hFcポリクローナル抗体(ジャクソン・イムノ・リサーチ(Jackson lmmuno Research))を用いて検出し、TMB基質(BDファーミンゲン(BD
Pharmigen))を用いて展開させた。IC50を、プレートに結合したhIL−6リガンドに対する検出可能なIL−6R−hFcを50%減少させるのに必要な抗体の量として決定した。表2の第一行に結果を示す。
【0051】
加えて、試験された抗体の、hIL−6R受容体に結合するhIL−6をブロックする能力を表面プラズモン共鳴を用いて決定した。精製した抗原hIL−6R−hFc分子を、アミンカップリングを介してCM−5表面に250RUの密度で固定されたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体によって捕捉した。受容体表面上にhIL−6溶液(0.25
ml,50nM)を注入し、結合したhIL−6を記録した(第一のIL−6注入)。次に、3MのMgCl2のパルスを用いて結合したhIL−6を除去し、続いて緩衝液を調
整した。ハイブリドーマ調整培地中の抗hIL6R抗体を捕捉された受容体表面上に注入し、続いてhIL−6の第二の注入を行った。予め形成された抗体と受容体との複合体に起因するhL−6結合の減少のパーセントを、hIL−6ブロッカーを非ブロッカーと区別するためのスコアとして用いた(表2の第二行)。
【表2】
【0052】
hIL−6R抗体の、インビトロでhIL−6活性をブロックする能力を、hIL−6依存性の骨髄腫系XG−1で測定した。hIL−6を含む培地中で維持したXG−1細胞をhIL−6非含有の培地で2回洗浄し、hIL−6非含有の培地中で〜24時間培養し、残留したhIL−6を枯渇させた。次に、この飢餓細胞を沈降させ、培地中に4×105細胞/mlで再懸濁し、96ウェルの組織培養プレートで20,000細胞/ウェルで
平板培養した。精製した抗体タンパク質を培地で連続希釈し、0〜50nMの範囲の濃度で平板培養した細胞に添加した。その後、このウェルに組換えhIL−6を8pMの最終濃度になるまで添加した。加湿した5%CO2インキュベーター中で細胞を37℃で〜7
2時間増殖させた。増殖期間の最後に、CCK−8キット(同仁堂化学研究所(Dojindo),日本)を用いて生きた細胞を測定した。上述のようにしてIC50を決定し、表2の第三行に報告した。
【0053】
また、hIL−6R抗体の、hIL−6活性をブロックする能力も、インビトロでhIL−6反応性のヒト肝癌細胞系のHepG2で測定した。HepG2細胞を、ルシフェラーゼ遺伝子に連結したSTAT3(転写物3のシグナルトランスデューサー、および、アクチベーター)反応要素を含むレポータープラスミドでトランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞をトリプシン処理し、沈降させ、培地に約2.5×105
胞/mlで再懸濁し、96−ウェルの組織培養プレート中で20,000細胞/ウェルで平板培養した。精製した抗体タンパク質を培地で連続希釈し、平板培養した細胞に0〜100nMの範囲の濃度で添加した。その後、このウェルに組換えhIL−6を50pMの最終濃度になるまで添加した。加湿した5%CO2インキュベーター中で細胞を37℃で
6時間インキュベートした後に応答を測定した。Steady−GloTMルシフェラーゼ分析システム(プロメガ(Promega))を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。上述のようにしてIC50を決定し、表2の第四行に報告した。
【0054】
実施例5.結合するエピトープの多様性
抗体結合の競合イムノアッセイを、コントロールとしてヒトIL−6Rに対するヒト化抗体を用いて行った。簡単に説明すれば、96ウェルの免疫吸着プレートを、20ng/ウェルのhIL−6R組換えタンパク質で4℃で一晩コーティングした。BSAで非特異的な結合をブロックした後、プレートの半分には、ウェルあたりコントロール500ngを添加することによってhIL−6R結合部位をコントロール抗体の結合で飽和させ、プレートのもう一方の半分には、結合緩衝液だけを添加した。室温で3時間結合させた後、精製した抗体を、ウェル中に(元から存在するコントロール抗体を含んで、および、それらを含まないで)最終濃度50ng/mlで注入した。さらに1時間結合させた後、遊離の抗体を洗浄して除き、プレートに結合した抗体を、HRP結合ヤギ抗マウスIgGまたはIgA、ポリクローナル抗体で検出し、発色性のHRP基質を用いてプレートを発現させ、450nmにおける吸光度を記録した。以下の表3に、抗hIL−6R抗体の結合からコントロール抗体の存在を差し引いたパーセンテージを列挙した。類似の実験を、表面プラズモン共鳴技術を用いて行った(表3)。両方の方法から、矛盾のない結果が得られた。抗体VQ8F11、VV3D8、VV6A9、VV6C10−1は、コントロール抗体とオーバーラップするエピトープと結合した;一方で、抗体VQ8A9、VV1G4、VV6F12、VV7G4、VV9A6、および、VV6C10−3は、抗原との結合が、コントロール抗体によってブロックされなかったため、別個のエピトープと結合しているようであった。部分的な競合は、エピトープがオーバーラップしていない可能性があるとしても、第一の抗体結合による立体障害の結果生じた可能性がある。
【表3】
【0055】
実施例6.異種間の結合特性
サルIL−6R組換えタンパク質に対する交叉反応性に関して、4種の抗体をビアコアTM技術を用いて試験した。簡単に説明すれば、抗hIL−6Rモノクローナル抗体を約75RUの密度で提示させるために、表面にヤギ抗マウスFcポリクローナル抗体が固定されたバイオセンサーチップを用いた。組換えヒトまたはサルの単量体IL−6Rタンパク質(カニクイザル(Macaca fasciculahs),細胞外ドメイン;配列番号251)を1.25〜40nMの範囲の濃度で抗体表面上に注入した。これら抗体に対する受容体の結合、および、結合した複合体の解離をリアルタイムでモニターした。会合速度定数(ka)、および、解離速度定数(kd)の両方を得て、KDを計算した(表4
)。
【表4】
【0056】
4種の試験された抗体のなかでも、VQ8F11、VV6A9およびVQ8A9がサル受容体に強く反応しており、KD値は、それぞれヒト受容体結合とは約1.5〜約3倍ま
での差があった。VV1G4は、コントロール抗体でブロックされなかったものであり(表3)、241pMのKDでヒト受容体に強く結合するにもかかわらずサル受容体への結
合を示さなかった。
【0057】
実施例7.結合親和性における定常領域の作用
マウスIgG、ヒトIgG1またはヒトIgG4(野生型、および、改変型)を有する4種の抗体の単量体のhIL−6Rに対する結合親和性を上述のようなビアコアTMを用いてを決定した(ただし、hIgG抗体を捕捉するためにヤギ抗ヒトFcポリクローナル抗体表面を用いた)。単量体のhIL−6Rを12.5、6.25、3.12および1.56nMの濃度で注入した。さらに、抗体の、hIL−6−依存性HepG2/STAT3シグナル伝達を中和する能力もルシフェラーゼ分析(IC50)で決定した。異なるIgGアイソタイプのIC50は類似しており、これは、抗原への抗体親和性にアイソタイプの影響がないことを示唆している。
【表5】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]