特許第6140781号(P6140781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140781蒸気を加熱媒体とする成形装置およびその被加熱部の流路のドレン除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140781
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】蒸気を加熱媒体とする成形装置およびその被加熱部の流路のドレン除去方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/34 20060101AFI20170522BHJP
   B30B 7/02 20060101ALI20170522BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B30B15/34 A
   B30B7/02
   B29C33/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-186434(P2015-186434)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-60956(P2017-60956A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
(72)【発明者】
【氏名】泉田 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】吉川 伸一
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−275600(JP,A)
【文献】 特開2004−98071(JP,A)
【文献】 特開2006−175448(JP,A)
【文献】 特開2003−154499(JP,A)
【文献】 特開平11−37648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/34
B29C 33/04
B30B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置において、
前記複数の被加熱部の流路へそれぞれ接続される蒸気供給側の分岐流路と、
前記蒸気供給側の分岐流路に配設される開閉バルブと、
前記被加熱部の加熱制御時に少なくとも選択された開閉バルブを一時的に閉鎖しその後に選択された開閉バルブのみを開放する制御装置とが備えられたことを特徴とする蒸気を加熱媒体とする成形装置。
【請求項2】
前記複数の被加熱部は多段プレス成形装置の各熱板であり、
蒸気発生・供給手段に接続される主流路と、
前記主流路に接続される蒸気供給側のマニホールドブロックと、
前記蒸気供給側のマニホールドブロックから前記熱板内の流路に接続される蒸気供給側の分岐流路と、
前記熱板内の流路に接続される蒸気排出側の分岐流路と、
前記排出側の分岐流路に接続される排出側のマニホールドブロックと、
前記排出側のマニホールドブロックとに接続される排出側の主流路と、
前記排出側の主流路に直接的または間接的に接続される開閉バルブとが備えられたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気を加熱媒体とする成形装置。
【請求項3】
蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置の流路のドレン除去方法において、
前記複数の被加熱部の流路へそれぞれ接続される蒸気供給側の分岐流路と、
前記蒸気供給側の分岐流路に配設される開閉バルブとが備えられ、
前記被加熱部の加熱時に少なくとも選択された被加熱部の流路に接続される蒸気供給側の分岐流路の開閉バルブを一時的に閉鎖し、
その後に選択された開閉バルブのみを開放することを特徴とする蒸気を加熱媒体とする成形装置の被加熱部の流路のドレン除去方法。
【請求項4】
全ての蒸気供給側の分岐流路の開閉バルブを一時的に閉鎖し、
その後に選択された被加熱部の流路に接続される蒸気供給側の分岐流路の開閉バルブのみを開放することを特徴とする請求項3に記載の蒸気を加熱媒体とする成形装置の被加熱部の流路のドレン除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置およびその被加熱部の流路のドレン除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置としては、特許文献1および特許文献2のホットプレス装置が知られている。特許文献1は図1に示されるように、蒸気圧発生器7によって発生させた蒸気を入口マニホールド5から耐熱・可撓性のホースを介して複数の熱板4(被加熱部)へ均等に分配している。そして各熱板4を加熱した蒸気は、出口マニホールド6に収集されスチームトラップ8に導かれるようになっている。
【0003】
また特許文献2についても第5図に示されるように、各熱板5には蒸気入口配管20と蒸気出口配管21とが接続されている。各蒸気入口配管20には蒸気滞留室22に貯留された蒸気が供給され、該蒸気滞留室22には図示しない蒸気発生装置に連結された蒸気管32が接続されている。そして第5図に示されるように各蒸気入口配管20および各出口配管21にはそれぞれ弁が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−154499号公報(0007、図1
【特許文献2】特開昭62−275600号公報(第8頁右上欄〜左下欄、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2を含めこれらの蒸気を加熱媒体とするホットプレス装置の場合、熱板加熱時に熱板内部の流路において蒸気が冷やされて結露が生じて水が溜まることがある。そして熱板内部の流路に水が溜まると熱板の加熱が良好に行われなくなるという問題があった。これらの熱板内部の流路に水が溜まる現象は、昇温工程や比較的低温(一例として100〜150℃)での加熱保持工程で発生することが多い。またこれら熱板内に水が溜まる問題は特定の熱板のみに発生することが多く、各熱板の温度が一定しないため均一な成形品を成形する際の障害となっていた。また特に長年のホットプレス装置の使用により、熱板の流路および可撓性ホース内壁にスケールが溜まる。それによって蒸気の抜けがよい所と悪い所が生じ、各熱板の温度が一定しない問題もある。
【0006】
従来は熱板内部の流路に水が滞留する問題の対策として、所定時間毎に排出側の主管路に接続されるブローバルブを開き、全ての熱板内部の流路のブローを同時に行っていた。しかしながら前記の方法では、熱板内部の流路に十分な圧力と流速の蒸気を供給することができず、熱板内部の水を良好に除去できない場合があった。また前記の方法は、ブロー時に全ての熱板内部の蒸気を無駄に排出してしまうので、省エネルギーの観点から見るとあまり好ましくない。
【0007】
本発明では上記の問題を鑑みて、蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置において、無駄に蒸気を排出させずに被加熱部の流路のドレンの除去を良好に行うことができる成形装置および成形装置の被加熱部内の流路のドレン除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の成形装置は、蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置において、前記複数の被加熱部の流路へそれぞれ接続される蒸気供給側の分岐流路と、前記蒸気供給側の分岐流路に配設される開閉バルブと、前記被加熱部の加熱制御時に少なくとも選択された開閉バルブを一時的に閉鎖しその後に選択された開閉バルブのみを開放する制御装置とが備えられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の成形装置は、請求項1において、前記複数の被加熱部は多段プレス成形装置の熱板であり、蒸気発生・供給手段に接続される主流路と、前記主流路に接続される蒸気供給側のマニホールドブロックと、前記蒸気供給側のマニホールドブロックから前記熱板内の流路に接続される蒸気供給側の分岐流路と、前記熱板内の流路に接続される蒸気排出側の分岐流路と、前記排出側の分岐流路に接続される排出側のマニホールドブロックと、前記排出側のマニホールドブロックとに接続される排出側の主流路と、前記排出側の主流路に直接的または間接的に接続される開閉バルブとが備えられたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載の成形装置の被加熱部内の流路のドレン除去方法は、蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置の流路のドレン除去方法において、前記複数の被加熱部の流路へそれぞれ接続される蒸気供給側の分岐流路と、前記蒸気供給側の分岐流路に配設される開閉バルブとが備えられ、前記被加熱部の加熱時に少なくとも選択された被加熱部の流路に接続される蒸気供給側の分岐流路の開閉バルブを一時的に閉鎖し、その後に選択された開閉バルブのみを開放することを特徴とする
【0011】
本発明の請求項4に記載の成形装置の被加熱部内の流路のドレン除去方法は、請求項3において、全ての蒸気供給側の分岐流路の開閉バルブを一時的に閉鎖し、その後に選択された被加熱部の流路に接続される蒸気供給側の分岐流路の開閉バルブのみを開放することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形装置は、蒸気を加熱媒体として複数の被加熱部が加熱される成形装置において、前記複数の被加熱部の流路へそれぞれ接続される蒸気供給側の分岐流路と、前記蒸気供給側の分岐流路に配設される開閉バルブと、前記被加熱部の加熱制御時に少なくとも選択された開閉バルブを一時的に閉鎖しその後に選択された開閉バルブのみを開放する制御装置とが備えられているので、被加熱部の流路のドレンの除去を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の多段プレス成形装置の概略説明図である。
図2】本実施形態の多段プレス成形装置の成形工程の工程図である。
図3】本実施形態の多段プレス成形装置のドレン除去制御のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態である多段プレス成形装置11について、図1を参照して説明する。成形装置の一種である多段プレス成形装置11は、上固定盤12と下可動盤13の間に複数の被加熱部である熱板14a,14b,14c,14d,14e,14f(以下14a〜14fと記載)が配置されている。そして下可動盤13の下側には油圧機構により作動される型締シリンダ16のラム16aが固定され、ラム16aを昇降させることにより下可動盤13と下可動盤13に固定された熱板14fが昇降可能となっている。そして熱板14eの更なる上昇に伴って熱板14e,14d、14c、14bも上固定盤12に固定された熱板14aに向けて上昇可能となっている。また本実施形態の多段プレス成形装置11は、真空チャンバ17内に収納され、図示しない真空ポンプが接続されている。なお多段プレス成形装置11の熱板の数は、複数であればよく上記の5枚に限定されない。また真空チャンバ17と真空ポンプは多段プレス成形装置11にとって必須のものではなく無くてもよい。
【0015】
多段プレス成形装置11の複数の熱板14a〜14fは、蒸気を加熱媒体として加熱される被加熱部であってそれぞれ温度センサ15a,15b,15c,15d,15e,15f(以下15a〜15fと記載)を備える。熱板14a〜14fを加熱制御する蒸気加熱システムについて説明すると、多段プレス成形装置11には蒸気ユニット18が併設されている。蒸気ユニット18の蒸気発生・供給手段19はボイラを含み、図示しない圧力センサにより蒸気圧力を検出し、蒸気圧力および温度がクローズドループ制御可能となっている。また蒸気発生・供給手段19には蒸気の供給量をクローズドループ制御する供給制御部が含まれる。そして蒸気発生・供給手段19に接続される主流路20(管路)には開閉バルブ21が設けられている。主流路20は多段プレス成形装置11の蒸気供給側のマニホールドブロック22に接続されている。また前記蒸気供給側のマニホールドブロック22には各熱板内部の流路23a,23b,23c,23d,23e,23f(以下23a〜23fと記載)にそれぞれ接続される蒸気供給側の分岐流路24a,24b,24c,24d,24e,24f(以下24a〜24fと記載)がそれぞれ接続されている。供給側の分岐流路24a〜24fは可撓性を備えたホースであり、それぞれ開閉バルブv1,v2,v3,v4,v5,v6(以下v1〜v6と記載)を備えている。開閉バルブv1〜v6については他の開閉バルブ21等と同様に後述する制御装置25からの信号により開閉制御される。なお開閉バルブv1〜v6は蒸気供給側のマニホールドブロック22の出口および熱板14a〜14fの入口に固定されたものも蒸気供給側の分岐流路24a〜24fに設けられたものに含まれる。
【0016】
それぞれの熱板14a〜14fは内部に蒸気が流通する流路23a〜23fがそれぞれ設けられている。熱板14a〜14fの各流路23a〜23fは屈曲して設けられているため流動抵抗が大きく、入口側から送られた蒸気等の媒体の圧力および流速が出口側に到達するまでに失われやすい。そして流路23a〜23fの屈曲部などには蒸気が送られた場合にドレンが滞留しやすくなっている。また熱板14a〜14fの流路23a〜23fには排出側の分岐流路26a,26b,26c,26d,26e,26f(以下26a〜26fと記載)がそれぞれ接続されている。排出側の分岐流路26a〜26fも可撓性を備えたホースである。本実施形態では排出側の分岐流路26a〜26fにはそれぞれ開閉バルブは設けられていないが、開閉バルブを設けてもよい。そして排出側の分岐流路26a〜26fには、排出側のマニホールドブロック27が接続されている。そして排出側のマニホールドブロック27の下側側面には排出側の主流路28(管路)が接続されている。また蒸気供給側のマニホールドブロック22と排出側のマニホールドブロック27は共に最下部にスチームトラップ29,30を備えている。なおスチームトラップは、蒸気ユニット18の内部にのみ設けられたものでもよい。
【0017】
排出側の主流路28によって多段プレス成形装置11と蒸気ユニット18は接続されている。蒸気ユニット18には、主に熱板内部の流路23a〜23fのドレンの排水用の開閉バルブ32(ブローバルブ)が設けられている。更に排出側の主流路28から分岐した流路(管路)には冷却水供給手段33が開閉バルブ34を介して接続されている。また供給側の主流路20から分岐した流路からは、冷却水の排水用の流路37が別に分岐して設けられ、前記排水用の流路37には開閉バルブ38が設けられている。そして前記冷却水供給手段33から送られた冷却水は、熱板内部の流路23a〜23f等を経て排水用の流路37を介して放出される。またそれとは別に供給側の主流路20から分岐した流路には、加圧エア供給手段35が開閉バルブ36を介して接続されている。
【0018】
制御装置25は、PLC等のコントローラであり演算装置、記憶装置、タイマ等を備えている。制御装置25は、熱板14a〜14fにそれぞれ設けられた温度センサ15a〜15fに接続されている。また制御装置25は多段プレス成形装置11や蒸気ユニット18の各開閉バルブ21,32,34,38やその他の装置にも接続されている。更に制御装置25は図示しない油圧機構や設定画面等にも接続されている。
【0019】
次に本実施形態の多段プレス成形装置11の熱板14a〜14fの流路23a〜23fのドレン除去方法について図2の成形工程の工程図および図3のドレン除去制御のフローチャートにより説明する。多段プレス成形装置11の各熱板14b〜14fの上に成形品が搬入されると真空チャンバ17が閉鎖され内部が図示しない真空ポンプにより減圧される。次に油圧機構により型締シリンダ16のラム16aが作動され下可動盤13と熱板14fが上昇され、更に熱板14e、14d,14c,14bも連動して上昇され、各熱板14a〜14fの間で成形品が加圧される。加圧の開始と同時か僅かに前後して開閉バルブ21を開いて各熱板14a〜14fの流路23a〜23fに蒸気ユニット18の蒸気発生・供給手段19で発生させた蒸気を送る。
【0020】
図2に示されるように多段プレス成形装置11の成形工程は、熱板14a〜14fの温度を設定温度に応じて上昇させる昇温工程、熱板14a〜14fの温度を設定温度に応じて維持させる加熱保持工程、熱板14a〜14fの温度を冷却する冷却工程からなる。そして蒸気ユニット18の蒸気発生・供給手段19で発生され、多段プレス成形装置11へ送られて使用される蒸気は飽和蒸気である。そして蒸気ユニット18の蒸気発生・供給手段19では、設定温度になるように蒸気圧をクローズドループ制御することにより、各熱板温度が制御される。なお熱板14a〜14fの温度センサ15a〜15fの温度を直接検出して熱板14a〜14fが設定温度となるように前記飽和蒸気の圧力制御を行うようにしてもよい。そして調整された蒸気圧の飽和蒸気が、多段プレス成形装置11の熱板14a〜14fへ送られる。
【0021】
前記昇温工程、加熱保持工程における熱板加熱制御では、蒸気供給側の分岐流路24a〜24fの開閉バルブv1〜v6は開放状態となっており、ブロー用の開閉バルブ32は閉鎖されている。そして蒸気発生ユニット18から送られた蒸気は、蒸気供給側のマニホールドブロック22を介してバルブv1〜v6の開放された各蒸気供給側の分岐流路24a〜24fを経て各熱板14a〜14fの流路23a〜23fに送られる。そして熱板14a〜14f等を加熱することにより熱が奪われて発生する水は、スチームトラップ29,30により排出される。なお加熱保持工程においては蒸気の供給量を低下させるか一時的に中断するようにしてもよい。
【0022】
昇温工程、加熱保持工程の両方の工程では、制御装置25から開閉バルブv1〜v6等を制御して熱板14a〜14fの流路23a〜23fのドレン除去制御が行われる。特に昇温工程では熱板14a〜14fがまだ昇温されておらず蒸気の温度と乖離があるので流路23a〜23fに結露が生じやすい。昇温工程の熱板加熱制御が開始されると(s1)、所定時間t1経過毎に(s2)、全熱板14a〜14fの温度を温度センサ15a〜15fにより計測され制御装置25へ送られる(s3)。この際の所定時間t1は、これに限定されるものではないが一例として30秒〜300秒に設定される。そして制御装置25において検出温度が設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した熱板14a〜14fが無いかを判断する(s4)。そして設定温度よりも所定の閾値x℃以上乖離した熱板14a〜14fが無い場合(s4=N)は、そのまま昇温工程等の熱板加熱制御を継続する(s1)。また設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した熱板14a〜14fが有りの場合(s4=Y)、次に設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した熱板が所定の枚数以下かを判断する(s5)。
【0023】
そして設定温度よりも所定の閾値x℃以上乖離した熱板が所定の枚数以下(s5=Y)であり例えば熱板14aのみであった場合について説明すると、次に熱板14aに接続される蒸気供給側の分岐流路14aを含む蒸気供給側の分岐流路24a〜24fの開閉バルブv1〜v6を全て閉鎖する(s6)。このことにより蒸気ユニット18側から熱板14a〜14fの流路への蒸気の供給は全て断ち切られ次の現象が起こる。即ち蒸気供給側のマニホールドブロック22内は、蒸気ユニット18からの蒸気の供給が継続されるので開閉バルブv1〜v6の閉鎖前よりも昇圧される。また熱板14a〜14fの内部の流路23a〜23fは蒸気圧が低下する。この点についてボイル・シャルルの法則によれば、次の式で表される。
P1・V1/T1=P2・V2/T2
即ち「気体の圧力P は体積V に反比例し絶対温度T に比例する」ので、蒸気圧の低下に伴い体積の収縮が起こり蒸気は水になる。(1molの水は18ml(g)。1molの気体は22,400ml(g)なので、蒸気が液化すると体積は1,240分の1となる。)また流路23a〜23fの圧力は減圧が進行する。蒸気供給側の分岐流路24a〜24fの開閉バルブv1〜v6を閉鎖している所定時間t2は流路23a〜23fの容積等にもよるが、これに限定されるものではないが一例として1〜30秒が望ましい。この際のバルブ閉鎖時間が長すぎると設定温度から所定の閾値x℃以上乖離していない熱板14b〜14fまで圧力下降による結露等が生じてしまう。またこの際のバルブ閉鎖時間が短すぎると、で熱板14aの内部の流路23aを十分に減圧できず、蒸気供給側のマニホールドブロック22の内部との間で差圧を用いたブロー制御を良好に行うことができない。
【0024】
次に蒸気供給側の分岐流路24a〜24fの開閉バルブv1〜v6を全て閉鎖してから所定時間t2が経過したら(s7)、設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した熱板14aに接続される開閉バルブv1のみを開放する(s8)。この際前記したように、蒸気供給側のマニホールドブロック22内の蒸気圧(動圧)と、熱板14aの流路23aの圧力(静圧)には差圧が発生しているので、蒸気供給側のマニホールドブロック22の側から熱板14a内に向けてドレンをブローするために十分な蒸気の抜ける力が得られる。またこの際に全ての開閉バルブv1〜v6を開放するのと比較して開閉バルブv1だけ開放することにより蒸気が流れる流路23aの断面積を絞ることができることも相俟って、十分な蒸気の速度が得られる。この際にブロー用の開閉バルブ32は開放しない。ただし場合によってはブロー用の開閉バルブ32は開放してもよい。
【0025】
次に所定時間t3が経過すると(s9)、蒸気供給側の分岐流路24b〜24fの残りの開閉バルブv2〜v6も開放する。この際、所定時間t3については熱板14a〜14fの大きさや流路23a〜23fの形状等によるが、これに限定されるものではないが一例として1〜10秒が望ましい。そして昇温工程・加熱保持工程が終了するまで(s14)は、所定時間t1毎にドレン除去制御を行いつつ熱板加熱制御を継続する(s1)。本実施形態においては、熱板14aのみが温度が低下した例について示しているが、全ての熱板14a〜14fではなく所定枚数以下の複数の熱板(例えば14a,14b,14c)の温度が設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した場合にも、少なくとも熱板14a14b,14cに接続される蒸気供給側の分岐流路24a,24b,24cの開閉バルブv1,v2,v3を含む全ての蒸気供給側の分岐流路24a〜24fの開閉バルブv1〜v6を閉鎖した後、設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した複数の熱板14a,14b,14cに接続される蒸気供給側の分岐流路24a、24b、24cの開閉バルブv1、v2、v3のみを開放して熱板14a,14b,14cの流路23a,23b,23cのドレンをブローするようにしてもよい。また設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した熱板が所定枚数よりも多い(これに限定されるものではないが一例として過半数)か全部の熱板14a〜14fである場合、開閉バルブv1〜v6の閉鎖は行わずに、ブロー用の開閉バルブ32を開いて全ての熱板14a〜14fの流路のブローを一斉に行う(s11)。そして次に所定時間t4が経過したら(s12)、ブロー用の開閉バルブ32を閉鎖する(s13)。そして加熱保持工程が終了するまで(s14=N)、昇温工程または加熱保持工程の熱板加熱制御を再開する(s1)。
【0026】
前記ドレン除去制御は、昇温工程と加熱保持工程の間行われることは上記した通りであるが、昇温工程と比較して加熱保持工程では熱板14a〜14fの温度は蒸気の温度に近似しているので、流路23a〜23f内に結露が生じる可能性は低くなる。しかし加熱保持工程では熱板14a〜14fの温度が設定温度と乖離すると成形品により一層影響が出やすい場合は、昇温工程における熱板14a〜14f内のブローを行う際の閾値よりも加熱保持工程における熱板14a〜14f内のブローを行う際の閾値を小さくしてもよい。
【0027】
図2に示される加熱保持工程から冷却工程へ移行する際は、蒸気ユニット18の開閉バルブ21が閉鎖され多段プレス成形装置11への蒸気の供給は停止される。そして所定時間を計時して熱板14a〜14f内の蒸気圧を低下させる。なおこの際に加圧エアにより熱板14a〜14f内の蒸気やドレンをブローするようにしてもよい。そして次に冷却水供給手段33の入口側の開閉バルブ34と冷却水の出口側の開閉バルブ38を開放して熱板14a〜14f内に冷却水を供給して冷却工程を実施する。冷却工程が終了すると排水工程へ移行する。排水工程では、前記開閉バルブ34,38を閉鎖した上で、開閉バルブ36を開放し、加圧エア供給手段35から加圧エアを供給する。そして熱板14a〜14f内等に残存する冷却水をスチームトラップ29,30から排水する。
【0028】
なお図3に示されるフローチャートでは、熱板14a〜14fの温度を検出し、設定温度から所定の閾値x℃以上乖離した熱板が所定枚数以下である場合に、開閉バルブv1〜v6を一旦閉鎖して差圧を用いてブローを行った。しかしながら本発明は、熱板14a〜14fの検出温度に関係なく、一定時間毎に全ての蒸気供給側の分岐流路24a〜24fの開閉バルブv1〜v6を一時的に閉鎖し、その後に選択された少なくとも一枚の熱板(例えば14a)の流路23aに接続される蒸気供給側の分岐流路24aの開閉バルブv1のみを開放するものであってもよい。その場合選択される熱板は、最も設定温度との乖離が大きい熱板14a(複数枚でもよい)に接続される開閉バルブv1を開放してブローを行うようにしてもよく、ドレンが滞留しやすい熱板に接続される開閉バルブを選択的に開放してブローを行うようにしてもよい。更には開閉バルブv1〜v6を一時的に閉鎖するごとに、順番に異なる熱板(例えば14a,14b,14c,14d,14d,14e,14fの順に一枚づつ)を選択して、選択された熱板14a等に接続される開閉バルブv1等を開放してブローを行うものでもよい。
【0029】
また別の実施形態として、多段プレス成形装置11の熱板14a〜14fに接続される排出側の分岐流路26a〜26fにも開閉バルブが設けられ、全ての熱板14a〜14fが独立して圧力制御できるようにした場合において、次のように熱板14a〜14fのブローを行ってもよい。設定温度から所定温度以上乖離した少なくとも1枚の熱板(例えば14a)があると、その熱板14aのみの蒸気供給側の分岐流路24aの開閉バルブv1と排出側の分岐流路26aの開閉バルブを閉鎖する。この際に設定温度から乖離していない他の熱板14b〜14fは通常通りに流路に蒸気が供給され熱板加熱制御が行われる。所定時間が経過して熱板14a内の流路23aの圧力が低下すると蒸気供給側のマニホールドブロック22内部と差圧が発生する。次に他の熱板14b〜14fの排出側の分岐流路26b〜26fの開閉バルブを閉鎖する。そして排出側のマニホールドブロック27内部の圧力を低下させる。この状態で内部の流路23aの圧力が低下した熱板14aの蒸気供給側の分岐流路24aの開閉バルブv1と排出側の分岐流路26aの開閉バルブを同時に開放すると、熱板14aの流路23a内を蒸気供給側のマニホールドブロック22から排出側のマニホールドブロック27に向けて蒸気が急速に流通し、熱板14a内の流路23aのドレンのブローが良好に行える。この別の実施例のドレン除去制御であれば、最初に一時的に閉鎖する開閉バルブは、全部の開閉バルブv1〜v6ではなく、少なくとも選択された開閉バルブ(例えばv1のみ)であってもよい。
【0030】
いずれの方法を採用するにしても、熱板等の被加熱部の加熱制御時に少なくとも選択された熱板等に接続される蒸気供給側の分岐流路に配設される開閉バルブを一時的に閉鎖し、蒸気の供給が絶たれて冷やされた熱板等の内部の流路と、開閉バルブよりも蒸気供給側の流路の蒸気の圧力に差を発生させ(熱板等の内部の流路の方を低圧にし)、その後に選択された開閉バルブのみを開放することにより蒸気を急速に選択された熱板内に供給することができる。
【0031】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本発明の成形装置としては、射出成形装置(射出成形機)、金属成形を行うダイカスト成形装置、他の加熱プレス成形装置、ブロー成形装置、発泡成形装置、真空成形装置などであってもよい。これらにおいて一つの金型等の内部に複数の加熱系統が存在するものも本発明における「複数の被加熱部」に含まれる。
【0032】
また特に射出成形装置の場合、熱硬化性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂で金型に流通させる媒体の温度が100℃以上求められ、蒸気を加熱に用いる場合にも本発明が用いることができる。更には射出成形装置の場合、加熱筒や材料供給部など別の被加熱部を蒸気で加熱するものでもよい。
【符号の説明】
【0033】
11 多段プレス成形装置
14a,14b,14c,14d,14e,14f 熱板
18 蒸気ユニット
19 蒸気発生・供給手段
22 蒸気供給側のマニホールドブロック
23a,23b,23c,23d,23e,23f 流路
24a,24b,24c,24d,24e,24f 蒸気供給側の分岐流路
25 制御装置
26a,26b,26c,26d,26e,26f 排出側の分岐流路
27 排出側のマニホールドブロック
v1,v2,v3,v4,v5,v6,32,21,34,36 開閉バルブ
図1
図2
図3