特許第6140794号(P6140794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6140794
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】スタンド
(51)【国際特許分類】
   B43K 23/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B43K23/00 200C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-235084(P2015-235084)
(22)【出願日】2015年12月1日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】515333891
【氏名又は名称】有限会社メディアキューブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】久田 充浩
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−053934(JP,U)
【文献】 韓国公開実用新案第20−2013−0000691(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/00
B43K 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細り形状の先端部を有する物品の当該先端部が差し込まれる差込孔が設けられ、少なくとも、前記差込孔を形成する孔内面が弾性材料によって形成された本体を有し、
前記差込孔は、その孔の延びる方向に直交する断面での孔面積が、差込口の側から孔の奥側に向かって小さくなるように形成され、
かつ、前記孔内面は、孔の延びる方向に沿った孔中心線側に向けて凸となる連続した弧状に形成されているとともに、曲率が孔の奥側に向かうにつれて徐々に小さくなっていることを特徴とするスタンド。
【請求項2】
前記本体には、前記差込孔の差込口とは反対側の底面に粘着部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタンド。
【請求項3】
前記底面は、前記本体の平面視における外形の面積よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスタンド。
【請求項4】
前記粘着部材はシート状に形成され、
前記本体は、前記粘着部材の厚さ方向の少なくとも一部が収容される収容凹部を有し、
前記粘着部材は、前記収容凹部の内周面に密着して設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のスタンド。
【請求項5】
前記粘着部材は粘弾性を有するジェル素材によって形成され、前記収容凹部から突出した状態で前記本体に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具等の物品を保持するスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペンや鉛筆等の筆記具を収納したり、保持したりする筆記具スタンド、いわゆるペンスタンド(ペン立て)が一般に知られている。代表的なものとしては、複数の筆記具を立てた状態で収納する箱状のものや、一本の筆記具を差し込む差込孔を備えたものが存在する。後者の筆記具スタンドの場合、これまで、特定の筆記具の形状に合わせた差込孔を備えたものが一般的であった。
【0003】
しかしながら、そのような特定の筆記具専用となる筆記具スタンドでは、他の形状やサイズの筆記具を差し込むことができなかったり、差し込むことはできても安定して保持できなかったりするといった問題があり、汎用性に欠けるという不都合があった。そこで、異なる形状やサイズを有するペンを保持できるようにした筆記具差込孔を、筆記具スタンドの本体に形成したものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3079978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の筆記具スタンドは、筆記具差込孔の内部に径の異なる部分が複数設けられており、筆記具差込孔に差し込まれたペンの先端部が、その径の異なる2カ所のエッジ部分で支持される構成となっている。また、その筆記具差込孔は、そこに差し込まれたペンが、傾斜した状態で保持されるように形成されている。このような従来の筆記具スタンドの構成では、2カ所のエッジ部分でペンが支持されるだけである。そのため、ペンを安定して保持するという点では、いまだ工夫の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、筆記具等、先細り形状の先端部を有する物品を安定して保持することができるスタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明は、先細り形状の先端部を有する物品の当該先端部が差し込まれる差込孔が設けられ、少なくとも、前記差込孔を形成する孔内面が弾性材料によって形成された本体を有し、前記差込孔は、その孔の延びる方向に直交する断面での孔面積が、差込口の側から孔の奥側に向かって小さくなるように形成され、かつ、前記孔内面は、孔の延びる方向に沿った孔中心線側に向けて凸となる連続した弧状に形成されているとともに、曲率が孔の奥側に向かうにつれて徐々に小さくなっていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】筆記具スタンドの斜視図。
図2】筆記具スタンドの平面図。
図3図2におけるA−A断面図。
図4】筆記具差込孔に筆記具の先端部が差し込まれた状態を示す断面図。
図5】筆記具スタンドの使用態様を示す斜視図。
図6】別例の筆記具スタンドを示す縦断面図。
図7】別例の筆記具スタンドを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、一本の筆記具を保持する筆記具スタンドに具体化したものである。なお、この筆記具スタンドによって保持される筆記具としては、鉛筆、シャープペンシル、ボールペン(一色、多色、多機能など)、サインペン、万年筆、マーカー、蛍光ペン、筆ペンなど各種のものがあり、その種類は限定されない。また、ノック式及びキャップ式のいずれを使用することも可能である。
【0010】
図1図3の各図に示すように、本実施形態の筆記具スタンド10は、本体11と粘着部材21とを備えている。
【0011】
本体11は、その正面視及び縦断面において略長円形状をなし、平面視において円形状をなす形状を有している。本体11は、その全てが弾性材料であるゴム素材により形成されている。ゴム素材としては、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムのほか、天然ゴム、発泡ゴムなどが用いられる。その硬度は、「JISK6253」規格のデュロメータタイプAによる測定値で、A25〜A40の範囲に設定することが好ましく、本実施形態ではA35とされている。
【0012】
なお、弾性材料としては、前述したゴム素材の他に、例えば、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリエステル系などの熱可塑性エラストマー材料を用いてもよい。また、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネイトなどの合成樹脂材料も挙げられる。これら材料を複数混合したものを用いることも可能である。
【0013】
図2及び図3に示すように、本体11は底面12を有している。図2に示すように、底面12は、その平面視において円形状をなすように形成され、その平面視における中央部は、本体11の平面形状である円の中央部と一致している。そして、前述したように、本体11は、その正面視及び縦断面において略長円形状をなしているため、底面12の面積は、本体11の平面視における外形(円形)の面積よりも小さくなっている。
【0014】
図3に示すように、本体11の底面12は、その全域が反底面側へ凹んだ状態となっている。この凹みによって、本体11の底面12の側には凹部13が形成されている。凹部13には、前記粘着部材21が収容されている。このため、本実施形態では、凹部13が収容凹部に相当する。
【0015】
粘着部材21は、粘弾性を有するジェル素材により形成されている。また、粘着部材21は、凹部13の平面形状(円形状)及び平面寸法と同一となるシート状、つまり円板状をなすように形成されている。この場合、ジェル素材としては、例えば、ウレタンジェル、シリコンジェルなどの弾力性と粘着性との両者を兼ね備えた合成樹脂材料が用いられる。このジェル素材は、本体11を形成する弾性材料よりも硬度が低く、より高い弾力性能を有するものが用いられている。また、埃等の汚れが付着することによって粘着部材21の粘着性能が低下した場合は、その汚れを水で洗い流すことにより、粘着性能を回復させることが可能となっている。
【0016】
粘着部材21は凹部13から突出した状態で、その凹部13に収容されている。凹部13には、粘着部材21が隙間なく入り込んだ状態となっており、凹部13を形成する底面12及び壁面(内周面)と接着剤を用いて粘着部材21が接着されている。これにより、粘着部材21のうち凹部13に入り込んだ部分では、その表面が、凹部13を形成する底面12及び壁面に密着している。
【0017】
また、粘着部材21が突出していることにより、筆記具スタンド10では、本体11の底面12ではなく、粘着部材21の突出面によって被載置面31が形成されている。そして、粘着部材21が有する粘着性能により、筆記具スタンド10は、その被載置面31が机上等の載置面に粘着することでその載置面上に保持される。
【0018】
なお、この実施形態では、円板状をなす粘着部材21の厚さDが、凹部13における凹みの高さHの約2倍となるように設定されている。具体的には、凹部13における凹みの高さHは約1mm、粘着部材21の厚さDは約2mmに設定されている。もっとも、凹部13における凹みの高さHを約0.5mm、粘着部材21の厚さDを約1mmに設定してもよい。
【0019】
次に、図2及び図3に示すように、本体11には、差込孔としての筆記具差込孔14が形成されている。筆記具差込孔14は、筆記具Pの先端部Psが差し込まれる孔である。筆記具差込孔14は、底面12とは反対側となる反底面側で開口している。図示の状態では、上方に向かって開口している。筆記具差込孔14の開口部15は、平面視において円形状をなし、その中心部は本体11の中心部と一致している。筆記具差込孔14は、この開口部15から、底面12に対して垂直をなす方向に沿って、底面12の側に至るまで延びている。筆記具差込孔14には、この開口部15から筆記具Pの先端部Psが差し込まれるため、開口部15が差込口となっている。
【0020】
図3に示すように、筆記具差込孔14の開口部15の周縁部分は、弧状(アール)をなすように形成されている。その開口部15から孔の奥側(底面12の側)に向けた孔内面16は、本体11の縦断面において、孔の延びる方向に沿った孔中心線側に向けて凸となる弧状をなすように形成されている。孔内面16によって形成される弧は、孔の延びる方向の全域にわたって形成され、孔の上方から下方に向かって滑らかに連続している。
【0021】
また、孔内面16のうち、孔の奥側では、開口部15の側よりも曲率は小さくなっており、本体11の横断面における筆記具差込孔14の大きさ(孔の延びる方向に直交する断面での孔面積)は、徐々に小さくなっている。つまり、筆記具差込孔14は、筆記具差込孔14の開口部15における径がもっとも大きく形成され、そこから孔の奥側に向かって徐々に径が小さくなっている。
【0022】
筆記具差込孔14の奥側は、貫通孔32によって、本体11及び粘着部材21を貫通している。貫通孔32は、本体11の平面視における円の中心部に設けられており、本体11に形成された第1孔17と、粘着部材21に形成された第2孔22とで構成されている。第1孔17は、凹部13の中心部に形成され、第2孔22は粘着部材21の中心部に形成されている。粘着部材21には、その製造段階で第2孔22が形成されている。そのため、このドーナツ状をなす粘着部材21が、本体11の凹部13に収容されて一体化される。その一体化により、本体11の第1孔17と粘着部材21の第2孔22とで貫通孔32が形成される。なお、この実施形態では、貫通孔32の直径は約1〜1.5mmに設定されている。
【0023】
図4は、筆記具差込孔14に、筆記具Pの先端部Psが差し込まれた状態を示す断面図である。この図4に示すように、筆記具差込孔14には、その上方から筆記具Pの先端部Psが差し込まれる。この差込において、筆記具Pの先端部Psが、ゴム素材よりなる孔内面16の弾力に抗して差し込まれると、先端部Psにはその周方向にわたる面に復元力が作用し、それによって先端部Psが支えられる。これにより、筆記具Pは本体11の筆記具差込孔14に差し込まれて起立した状態で保持される。
【0024】
以上のような構成の筆記具スタンド10を用いて場合、使用態様の一例として次に説明するように、筆記具Pが起立した状態で保持される。図5は、筆記具スタンド10によって筆記具Pを保持する一例を示した斜視図である。なお、この図5には、ノック式の多色ボールペンが筆記具Pの一例として図示されている。
【0025】
まず、筆記具スタンド10を所望する机上等の載置面に置く。この時、筆記具スタンド10は、その被載置面31が載置面に粘着することによって載置面上に保持される。筆記具スタンド10の設置箇所を変更する場合には、被載置面31で粘着した状態の筆記具スタンド10を引きはがし、別の所望する位置の載置面に置き、被載置面31を粘着させればよい。このように、筆記具スタンド10は、その被載置面31を粘着させたり引きはがしたりすることによって、所望の設置位置に変更することが可能である。
【0026】
こうして筆記具スタンド10を載置面に置いた状態で、図5(a)に示すように、筆記具Pのペン先側を下向きにし、筆記具Pの先端部Psを筆記具差込孔14の開口部15に上方から差し込む。その際、筆記具差込孔14の孔内面16から受ける復元力に抗しつつ、その先端部Psを差し込む。そうすると、図4に示すように、筆記具Pは、その先端部Psが筆記具差込孔14の孔内面16によって支持され、図5(b)に示すように、起立した状態で保持される。
【0027】
このように支持された筆記具Pを使用する場合、筆記具差込孔14から筆記具Pの先端部Psを引き抜く。この引き抜きの際には、筆記具Pの先端部Psを支持する力に抗するだけの力が必要となるが、筆記具スタンド10の被載置面31が載置面に粘着して保持されているため、筆記具スタンド10が筆記具Pに追従せず、筆記具Pだけを引き抜くことが可能となる。
【0028】
本実施形態の筆記具スタンド10は、以上に説明したとおりのものである。そして、まとめると、この筆記具スタンド10によれば以下に示す効果が得られる。
【0029】
(1)筆記具スタンド10の本体11はゴム素材により形成され、筆記具差込孔14を有している。そして、筆記具差込孔14を形成する孔内面16は、本体11の縦断面において、孔側に向けて凸となる連続した弧状に形成されている。このため、本体11の孔内面16より受ける復元力に抗しながら、筆記具Pの先端部Psが筆記具差込孔14に差し込まれると、その先端部Psには周方向にわたる面に復元力が作用し、それによって先端部Psが支えられる。これにより、先端部Psが筆記具差込孔14に差し込まれ状態で、起立した筆記具Pを安定して保持することができる。
【0030】
(2)このように筆記具Pが起立した状態で保持されるため、筆記具Pを保持する上での省スペース化を図ることができる。また、筆記具Pは、その先端部Psのみが筆記具差込孔14に差し込まれ、先端部Psを除く大部分が露出した状態で起立して保持される。このため、気に入った筆記具Pを差し込んで保持すれば、その露出した部分を鑑賞したり、ディスプレイとして楽しんだりすることができる。
【0031】
(3)筆記具差込孔14は、上方(開口部15の側)から下方(底面12の側)に向かって徐々に径が小さくなっており、孔内面16の弾力によって、筆記具Pの先端部Psが保持される。このため、孔内面16によって保持することが可能な筆記具Pは、その先端部Psの形状やサイズを問わない。そして、筆記具差込孔14は、孔内面16の曲率が孔の奥側に向かうにつれて徐々に小さくなっているため、様々な形状やサイズの先端部Psを有する筆記具Pを、起立した状態でしっかりと保持することができる。このため、汎用性が高く、確実な保持力を備えた筆記具スタンド10を得ることができる。
【0032】
(4)本体11の底面12には、粘着部材21が設けられている。このため、筆記具スタンド10は、その被載置面31が机上等の載置面に粘着した状態で保持される。これにより、筆記具差込孔14に先端部Psが差し込まれ、起立した状態にある筆記具Pが、外力を受けて倒れてしまうおそれを低減できる。
【0033】
筆記具差込孔14に先端部Psが差し込まれた状態から筆記具Pを引き抜く場合でも、被載置面31が載置面に粘着しているため、筆記具スタンド10が筆記具Pの引き抜きに追従するおそれを低減できる。これにより、筆記具Pのみが引き抜かれる可能性を高めることができる。
【0034】
本体11の底面12は、本体11の平面視における外形の面積よりも小さく形成されているため、載置面から本体11の重心が離れて不安定となる。この場合でも、被載置面31が載置面に粘着しているため、筆記具スタンド10をぐらつくことなく安定した状態に保持することができる。これにより、起立した状態で保持された筆記具Pが、外力を受けて倒れるおそれを低減できる。
【0035】
その上、本体11の底面12全域に粘着部材21が設けられ、被載置面31はその略全域が粘着部材21によって形成されている。このため、起立した状態で保持された筆記具Pが、外力を受けて倒れるおそれの低減、筆記具Pのみの引き抜きといった上記各効果をより高めることができる。
【0036】
(5)ここで、凹部13が形成されず、シート状の粘着部材21のすべてが当該底面12から突出し、その突出面によって被載置面31が形成された構成を想定する。この構成では、被載置面31を載置面に粘着した状態から引きはがす際、粘着部材21の外周縁部には、本体11の底面12から剥がれるような力が作用し、その外周縁部で剥がれが生じやすくなる。そのため、筆記具スタンド10の引きはがしを繰り返すにつれて、粘着部材21の外周縁部に底面12からの剥がれが生じ、その部分を起点として粘着部材21が本体11の底面12から剥がれてしまうという問題がある。
【0037】
その点、この筆記具スタンド10の場合、シート状をなす粘着部材21は、その厚さDの半分程度が本体11の凹部13に収容され、かつ凹部13の内周面に密着している。その凹部13の内周面への密着により、引きはがしの際の力が、粘着部材21と底面12と接着部分にかかることを抑制し、粘着部材21がその外周縁部で底面12から剥がれることを抑制できる。
【0038】
(6)粘着部材21はジェル素材によって形成されているため、被載置面31を載置面に粘着させたり、それを引きはがして別の箇所に粘着させたりすることを繰り返し行うことができる。これにより、特定の位置に固定するのではなく、必要に応じて所望する位置に筆記具スタンド10を設置することができる。そして、粘着と引きはがしを繰り返したことにより、埃等の汚れが付着して粘着部材21の粘着性能が低下しても、その汚れを水で洗い流すことによりその粘着性能を回復させることができる。
【0039】
(7)粘着部材21を形成するジェル素材は、本体11よりも高い弾力性能を有するとともに、その粘着部材21は、凹部13から突出した状態で本体11に設けられている。そのため、起立した状態で保持された筆記具Pが外力を受けても、粘着部材21の変形によってその外力を吸収することが可能なため、筆記具Pが倒れるおそれをより一層低減できる。また、本体11の凹部13や粘着部材21の寸法に製造誤差があっても、粘着部材21の弾力によってその誤差が吸収される。これにより、粘着部材21を、本体11の凹部13に隙間なく取り付けることができる。
【0040】
(8)筆記具差込孔14は、本体11の底面12に対して垂直をなす方向に沿って形成されている。そのため、筆記具差込孔14に差し込まれた筆記具Pは、底面12に対して垂直に起立した状態で保持される。仮に、筆記具Pを底面12に対して斜めに保持する構成とした場合、筆記具差込孔14の孔内面16には筆記具Pの自重を受ける部分に力が集中する。そのため、先端部Psはその周方向にわたる面で孔内面16からの復元力を受けづらくなり、ひいては、筆記具Pの安定した支持も困難となる。その点、この筆記具スタンド10のように、筆記具Pを垂直に起立した状態で保持する構成では、先端部Psにはその周方向にわたる面全体で孔内面16からの復元力を受けやすくなり、筆記具Pを安定して保持することができる。
【0041】
(9)筆記具差込孔14の奥には、貫通孔32が形成されている。例えば鉛筆やシャープペンシル等を筆記具Pとし、その芯を出した状態で筆記具差込孔14に先端部Psを差し込んだ場合、差込み時や引き抜き時に芯が折れ、筆記具差込孔14の内部に折れた芯が残ってしまうおそれがある。そのような場合に、筆記具差込孔14や貫通孔32に細いピンや爪楊枝等を差し込み、孔内部に残った芯を押し出すことにより、その芯を反対側の開口部分から容易に取り出すことができる。
【0042】
なお、本発明を具体化した実施の形態は、上記した筆記具スタンド10の形態に限られるものではなく、例えば次のように変更して実施されてもよい。
【0043】
(a)上記実施の形態では、筆記具差込孔14の孔内面16は、本体11の縦断面において、その全域が、孔側に向けて凸となる連続した弧状をなすように形成されている。これに代えて、孔内面16のうち、弧状をなすように形成されるのは開口部15が形成された開口側領域だけとし、孔の奥側(例えば、本体11の高さ方向中央部より底面12の側)を、縦断面において直線状をなすように形成してもよい。この場合の直線形状は、底面12に対して垂直であっても、傾斜していてもよい。
【0044】
(b)上記実施の形態では、筆記具差込孔14の孔内面16が、その奥側で、開口部15の側よりも曲率が小さくなるように形成されているが、孔内面16の曲率を変化させることなく、一律の曲率を有する形状としてもよい。
【0045】
(c)上記実施の形態では、本体11の底面12に粘着部材21が設けられているが、この粘着部材21を省略し、本体11の底面12を筆記具スタンド10の被載置面31とする構成を採用してもよい。もっとも、粘着部材21が設けられることで、前述したように、起立した状態で保持された筆記具Pが、外力を受けて倒れるおそれの低減、筆記具Pのみの引き抜きといった効果が得られる以上、粘着部材21が設けられた構成を採用することが好ましい。
【0046】
(d)上記実施の形態では、本体11はその全体が弾性材料であるゴム素材により形成されているが、図6に示す筆記具スタンド40のように、少なくとも、筆記具差込孔14の孔内面16を形成する部分が弾性材料によって形成されていれば足りる。この図示の例では、本体41が、例えば金属、木材、合成樹脂等の非弾性材料によって形成された基部42と、弾性材料によって形成された内面形成部43とを有して構成されている。このような構成によっても、内面形成部43が弾性材料により形成されているため、上記実施形態と同様、筆記具差込孔14に差し込まれた筆記具Pの先端部Psには、その周方向にわたる面に孔内面16の復元力が作用する。これにより、筆記具Pを起立した状態で安定して保持することができる。
【0047】
また、この構成では、基部42を金属等の比較的重量のある材料によって形成すれば、その自重により、本体41の底面41aを机上等の載置面に置くだけで、筆記具スタンド10を安定して保持することができる。このため、本体11の全てを弾性材料によって形成した上記実施形態とは異なり、粘着部材21を省略しても、筆記具Pが倒れるおそれを低減したり、筆記具Pのみが引き抜かれる可能性を高めることができたりする。
【0048】
(e)上記実施の形態では、筆記具スタンド10の本体11は、その正面視及び縦断面において略長円形状をなしているが、それ以外にも各種の形状を採用することができる。一例として、半球状のほか、図7(a)に示した筆記具スタンド51のような柱状の本体52、図7(b)に示した筆記具スタンド53のような壺形状の本体54、動物、植物、乗り物等を模した形状などが考えられる。また、図7(a)のように、本体52を柱状に形成した場合、その横断面形状は、例えば円形や楕円、四角形等の角形状等を採用することができ、その種類は問わない。
【0049】
(f)上記実施の形態では、本体11に一つの筆記具差込孔14が設けられているが、本体11に複数の筆記具差込孔14が設けられ、一つの筆記具スタンド10に複数本の筆記具Pを保持することが可能な構成を採用してもよい。一例として、図7(c)に示した筆記具スタンド55のように、3つの筆記具差込孔14a〜14cが一列に設けられた構成が考えられる。
【0050】
(g)上記実施の形態では、本体11の底面12の全域が凹むことにより凹部13が形成されている。これに代えて、例えば、先の図7(a)に示すように、底面12の一部に凹部13を形成し、そこに粘着部材21が収容される構成を採用してもよい。この構成でも、粘着部材21によって、筆記具スタンド10の被載置面31が形成される。
【0051】
このように底面12の一部に凹部13を形成する構成では、粘着部材21の平面形状を底面12の平面形状と一致させる必要はなく、各種の形状を採用することができる。一例として、平面形状が円形状をなす上記実施の形態の底面12に、平面形状が四角形状等の角形状をなすシート状の粘着部材21が設けられた構成を採用してもよい。また、本体11の底面12に一枚の粘着部材21が設けられた上記実施の形態とは異なり、底面12に複数枚の粘着部材21が設けられた構成を採用してもよい。
【0052】
(h)上記実施の形態では、本体11の底面12について、その平面形状を円形状としたが、四角形状等の角形状や楕円形状など、他の形状に形成してもよい。
【0053】
(i)上記実施の形態では、粘着部材21はその厚さDの半分程度が本体11の凹部13に収容されているが、そのすべてが凹部13に収容される構成を採用してもよい。それとは逆に、本体11に凹部13を形成することなく、粘着部材21のすべてが底面12から突出して設けられた構成を採用してもよい。もっとも後者の構成では、前述したように、粘着部材21がその外周縁部から剥がれやすくなるため、少なくとも一部が収容されていた上記実施形態の構成を採用することが好ましい。
【0054】
(j)上記実施の形態では、粘着部材21が粘弾性を有するジェル素材によって形成されているが、両面テープ等の接着部材を粘着部材21として採用してもよい。もっとも、両面テープ等の接着部材では、筆記具スタンド10をいったん所定箇所に設置した状態から引きはがすと、接着能力が失われてしまい、繰り返しの接着が困難となる。その意味では、粘着及び引きはがしを繰り返し行えるジェル素材を用いることが好ましい。
【0055】
(k)上記実施の形態では、筆記具差込孔14は、本体11の底面12に対して垂直をなす方向に沿って形成されている。これに代えて、筆記具差込孔14が、底面12に対し傾斜した方向に沿って形成された構成を採用してもよい。例えば、先の図7(c)に示すように、複数の筆記具差込孔14が設けられた構成において、一部の筆記具差込孔14a,14cを傾斜した方向に沿って形成してもよい。この構成によると、筆記具Pを扇のような形状で保持するなど、筆記具Pを用いて所定の形状を形成することができる。
【0056】
(l)上記実施の形態では、筆記具差込孔14の奥に貫通孔32が形成されているが、この貫通孔32を省略してもよい。この貫通孔32を省略した構成としては、一例として、粘着部材21に第2孔22が形成されていない構成や、本体11に第1孔17が形成されず、筆記具差込孔14が底面12に至る前の途中で閉じた状態となっている構成などが考えられる。
【0057】
(m)上記実施の形態では、スタンドを筆記具スタンド10に具体化して説明したが、スタンドによって保持される物品としては、筆記具Pに限定されない。例えば、タッチパネル用のペン(スタイラスペン)、ペン型消しゴム等といった先細り形状の先端部を有する物品であればよい。その他、スタンドによって保持される物品としては、はさみ等も想定される。
【符号の説明】
【0058】
10…筆記具スタンド、11…本体、12…底面、13…凹部(収容凹部)、14…筆記具差込孔(差込孔)、15…開口部、21…粘着部材、P…筆記具、Ps…先端部。
【要約】
【課題】筆記具等、先細り形状の先端部を有する物品を安定して保持することができるスタンドを提供すること。
【解決手段】筆記具スタンド10は、弾性材料であるゴム素材によって全体が形成された本体11を有している。本体11には、筆記具の先端部が差し込まれる筆記具差込孔14を備えている。筆記具差込孔14を形成する本体11の孔内面16は、当該本体11の縦断面において、孔側に向けて凸となる連続した弧状に形成されている。この弧状をなす孔内面16によって、筆記具差込孔14に差し込まれた筆記具の先端部が支持され、筆記具は起立した状態で安定して保持される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7