【文献】
Br. J. clin. Pharmac., 1994, vol.38, p.357-362
【文献】
J. Med. Chem., 2007, vol.50, p.374-380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、CF101、即ち活性成分がN
6−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(IB−MECA、CF101)である試験医薬組成物を、中等度から重度のドライアイ疾患の患者に経口投与するという第3相(無作為化、二重マスク化、プラセボ対照)臨床試験に基づいている。この試験において、一部の患者は勃起又は性欲の増加を経験し、これにより、IB−MECAなどのA
3アデノシン受容体アゴニストが性機能不全を治療するための有効な薬剤であるという結論に至った。
【0015】
本開示は、A
3ARアロステリックエンハンサー、即ちN−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−シクロヘキシル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(LUF6000、CF602)で治療したマウスに勃起が見られたという発見に基づくものでもある。
【0016】
したがって、本開示は、その第1の態様により、性機能不全の治療に使用するためのA
3ARリガンドを提供する。
【0017】
お判りのように、本発明は、以下の詳細な説明の中で、性機能不全の治療に使用するためのA
3ARリガンドに関して記載するものであるが、当然のことながら、本開示は、性機能不全を治療するためのA
3ARリガンドの使用、前記治療のためのA
3ARリガンドを含む医薬組成物、及び前記リガンドを使用する性機能不全の治療方法も包含する。
【0018】
本開示の内容において、「性機能不全」という用語は、男性又は女性の性行為に、性行為の何れかの段階で悪影響を及ぼす任意の状態を表す。機能不全は、生涯持続性、獲得性、状況性、又は汎発性である可能性があり、状態にかかわらず発生する。
【0019】
原因(心理的、肉体的又はその組合せ)に関係なく、性機能不全は、性別に依って、勃起不全、早漏、射精不全、遅漏、性欲障害(例えば、性的関心欠損症、性的欲求低下障害、性嫌悪障害)、性的興奮障害(例えば、腟液の分泌の欠乏又は減少、腟の膨張の減少又は欠乏、筋緊張の減少、色情的感覚の欠乏又は減少)、オルガスム障害、及び性交痛障害からなる群から選択される任意の状態を包含する。
【0020】
A
3ARリガンドによる「治療」については、治療した対象の性反応(性機能)を改善する任意の所望の薬理学的及び生理学的効果を指すものと理解されるべきである。性反応の改善は、性欲の増加、性的興奮の改善、オルガスムの刺激又は改善、及び性交痛の減少又は除去のうち任意の1つ又は組合せとすることができる。性機能の改善は、主観的、即ち治療した対象の感じ方に基づくものでも、客観的、即ち生理学的なパラメーター、例えば、陰茎への血流の増加、精子運動性の増加、腟の筋緊張及び腟組織の健康の改善、腟液の分泌の増強に基づくものでもよい。
【0021】
一部の例示的な実施形態では、A
3ARリガンドは、勃起を惹起又は改善するのに有効である。他の一部の例示的な実施形態では、A
3ARリガンドは、性欲を惹起又は改善するのに有効である。
【0022】
A
3ARリガンドは、性機能不全を治療するのに有効な量、即ち、治療した対象の性機能を改善する、又は性感を改善する効果を発揮する量で使用される。「有効量」は、本発明によれば、複数名の試験対象に種々の量のA
3ARリガンドを投与し、次いで反応(例えば、数種の有益な効果を組み合わせた)を量の関数としてプロットすることによって容易に決定することができる。場合により、使用すべき量は、種々の要因、例えば、投与方法、対象の年齢、体重、体表面積、性別、健康状態及び遺伝因子、投与した他の薬物などに依存することがある。
【0023】
「A
3アデノシン受容体リガンド」又は「A
3ARリガンド」については、直接的に(例えば受容体結合部位によって)又は間接的に(例えばアロステリック結合部位によって)A
3アデノシン受容体の活性を調節することが可能な任意の化合物を意味するものと理解されるべきであり、これにはA
3アデノシン受容体の完全な又は部分的な活性化が含まれる。したがって、A
3ARリガンドは、A
3ARの活性化が受容体結合部位によるか、アロステリック結合部位によるかに関係なく、A
3ARの活性を増強することによってその主要な効果を発揮する分子である。これが意味するのは、A
3ARリガンドは、これが投与されようとする用量で、A
3ARのみに本質的に作用するということである。
【0024】
一般に、「調節」という用語は、受容体活性の増強(活性化)又は抑制を包含するが、本開示の内容においては、調節とは主として増強のことである。
【0025】
本開示の内容において、「A
3アデノシン受容体リガンド」とは、A
3ARアゴニスト又はA
3ARアロスタリック(allostaric)エンハンサーを包含する。
【0026】
「A
3アデノシン受容体アゴニスト」又は「A
3ARアゴニスト」についての言及は、A
3アデノシン受容体に特異的に結合し、それによって完全に又は部分的にA
3アデノシン受容体を活性化することが可能な任意のリガンドを意味するものと理解されるべきである。したがって、A
3ARアゴニストは、A
3ARに結合し、A
3ARを活性化することによってその主要な効果を発揮する分子である。これが意味するのは、A
3ARアゴニストは、これが投与されようとする用量で、A
3ARのみに本質的に結合し、活性化するということである。
【0027】
一実施形態において、A
3ARアゴニストは、100nM未満、通常50nM未満、好ましくは20nM未満、より好ましくは10nM未満、理想的には5nM未満の範囲で、ヒトA
3ARに対する結合親和性(K
i)を有する。特に好ましいのは、2nM未満、望ましくは1nM未満でヒトA
3Rに対するK
iを有するA
3ARアゴニストである。
【0028】
しかし、当然のことながら、より低い親和性(即ち、より高いKi)ではあるが、他の受容体と相互作用し、活性化することもできるA
3ARアゴニストもある。
【0029】
ある分子のA
3ARに対する親和性が、他のどのアデノシン受容体(即ちA
1、A
2a及びA
2b)に対する親和性よりも、少なくとも3倍高い(即ちそのA
3ARに対するKiが少なくとも3倍低い)、好ましくは10倍、望ましくは20倍、最も好ましくは少なくとも50倍高い場合に、その分子は、本開示の内容におけるA
3ARアゴニスト(即ちA
3ARに結合し活性化することによってその主要な効果を発揮する分子)とみなされることになる。
【0030】
ヒトA
3ARに対するA
3ARアゴニストの親和性及び他のヒトアデノシン受容体に対するその相対的親和性は、結合アッセイなどの複数のアッセイによって決定することができる。結合アッセイの例には、受容体を含有する膜を用意し、結合した放射性アゴニストにA
3ARアゴニストが置き換わる能力を測定すること、それぞれのヒトアデノシン受容体を発現する細胞を利用し、機能アッセイにおいて、場合により、cAMPレベルの増加又は減少によって測定されるアデニル酸シクラーゼに対する効果など、下流のシグナル伝達事象をA
3ARアゴニストが活性化又は不活性化する能力を測定することなどが含まれる。明白なことであるが、投与するA
3ARアゴニストのレベルを増加させることによって、その血中レベルがA
1、A
2a及びA
2bアデノシン受容体のKiレベルに近いレベルに到達するような場合、かかる投与の後、A
3ARの活性化に加えて、これらの受容体の活性化が生じる場合がある。したがって、A
3ARアゴニストは、その血中レベルが本質的にA
3ARのみが活性化されることになるような用量で投与されることが好ましい。
【0031】
一部の実施形態において、A
3ARアゴニストはプリン骨格を有する分子である。ある実施形態では、プリンを含有する化合物を、許容される構造機能活性アッセイに基づいてA
3ARアゴニストと定義することができる。
【0032】
一部のA
3ARアゴニストの特徴及びその調製方法が、とりわけ、米国特許第5,688,774号明細書、米国特許第5,773,423号明細書、米国特許第5,573,772号明細書、米国特許第5,443,836号明細書、米国特許第6,048,865号明細書、国際公開第95/02604号パンフレット、国際公開第99/20284号パンフレット、国際公開第99/06053号パンフレット、国際公開第97/27173号パンフレット及び国際公開第01/19360号パンフレットに詳細に記載されており、これらの全てを参照によって本明細書に組み込むものとする。
【0033】
本開示の一部の実施形態によれば、A
3ARアゴニストは一般式(I)の範囲内にあるプリン誘導体である。
式中、
− R
11は、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル若しくはシアノアルキル又は次の一般式(II)の基を表し、
[式中、
− Yは、酸素、硫黄又はCH
2を表し、
− X
11は、H、アルキル、R
eR
fNC(=O)−又はHOR
g−を表し、
{式中、
− R
e及びR
fは、同一であっても異なっていてもよく、水素、アルキル、アミノ、ハロアルキル、アミノアルキル、BOC−アミノアルキル及びシクロアルキルからなる群から選択され、又は一緒になって2〜5個の炭素原子を含有する複素環を形成し、
− R
gは、アルキル、アミノ、ハロアルキル、アミノアルキル、BOC−アミノアルキル及びシクロアルキルからなる群から選択される。}
− X
12は、H、ヒドロキシル、アルキルアミノ、アルキルアミド又はヒドロキシアルキルであり、
− X
13及びX
14は、独立に、水素、ヒドロキシル、アミノ、アミド、アジド、ハロ、アルキル、アルコキシ、カルボキシ、ニトリロ、ニトロ、トリフルオロ、アリール、アルカリル、チオ、チオエステル、チオエーテル、−OCOPh、−OC(=S)OPhを表し、又はX
13とX
14の両方が酸素であって、>C=Sに結合して五員環を形成し、又はX
12とX
13とが式(III)の環を形成する。
{式中、R’及びR’’は、独立にアルキル基を表す。}]
− R
12は、水素、ハロ、アルキルエーテル、アミノ、ヒドラジド、アルキルアミノ、アルコキシ、チオアルコキシ、ピリジルチオ、アルケニル、アルキニル、チオ及びアルキルチオからなる群から選択され、
− R
13は、式−NR
15R
16の基である。
[式中、
− R
15は、水素原子、又はアルキル、置換アルキル若しくはアリール−NH−C(Z)−(ZはO、Sである)若しくはNR
a(R
eは上記の意味を有する)から選択される基であり、R
15が水素である場合、
− R
16は、非置換、又は1つ若しくは複数の位置で、アルキル、アミノ、ハロ、ハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシル、アセトアミド、アルコキシ及びスルホン酸若しくはそれらの塩からなる群から選択される置換基で置換されている、R−及びS−1−フェニルエチル、ベンジル、フェニルエチル、又はアニリドの各基、ベンゾジオキサンメチル、フルリル(fururyl)、L−プロピルアラニル−アミノベンジル、β−アラニルアミノ−ベンジル、T−BOC−β−アラニルアミノベンジル、フェニルアミノ、カルバモイル、フェノキシ又はシクロアルキルからなる群から選択され、又はR
16は、次式(IV)の基であり、
或いはR
15がアルキル又はアリール−NH−C(Z)−である場合、R
16は、ヘテロアリール−NR
a−C(Z)−、ヘテロアリール−C(Z)−、アルカリル−NR
a−C(Z)−、アルカリル−C(Z)−、アリール−NR−C(Z)−及びアリール−C(Z)−からなる群から選択され、Zは酸素、スルホル(sulfor)又はアミンを表す。]
【0034】
例としてのA
3ARアゴニスト(米国特許第5,688,774号明細書の第4欄67行〜第6欄16行、第5欄40〜45行、第6欄21〜42行、第7欄1〜11行、第7欄34〜36行及び第7欄60〜61行に開示されている)は以下の通りである。
N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン、
N
6−(3−ヨードベンジル)−9−ヒドロキシエチルアデニン、
R−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン、
S−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン、
N
6−(3−ヨードベンジルアデニン−9−イル)酢酸、
N
6−(3−ヨードベンジル)−9−(3−シアノプロピル)アデニン、
2−クロロ−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン、
2−アミノ−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン、
2−ヒドラジド−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン、
N
6−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−メチルアデニン、
2−ジメチルアミノ−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン、
N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−プロピルアミノアデニン、
2−ヘキシルアミノ−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン、
N
6−(3−ヨードベンジル)−2−メトキシ−9−メチルアデニン、
N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−メチルチオアデニン、
N
6−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−(4−ピリジルチオ)アデニン、
(1S、2R、3S、4R)−4−(6−アミノ−2−フェニルエチルアミノ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール、
(1S、2R、3S、4R)−4−(6−アミノ−2−クロロ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール、
(±)−9−[2α,3α−ジヒドロキシ−4β−(N−メチルカルバモイル)シクロペンタ−1β−イル)]−N
6−(3−ヨードベンジル)−アデニン、
2−クロロ−9−(2’−アミノ−2’,3’−ジデオキシ−β−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
2−クロロ−9−(2’,3’−ジデオキシ−2’−フルオロ−β−D−5’−メチル−アラビノフロンアミド)−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
9−(2−アセチル−3−デオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N
6(3−ヨードベンジル)アデニン、
2−クロロ−9−(3−デオキシ−2−メタンスルホニル−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
2−クロロ−9−(3−デオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
2−クロロ−9−(3,5−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキシル−β−D−5−リボフラノシル)−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
2−クロロ−9−(2’,3’−O−チオカルボニル−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
9−(2−フェノキシチオカルボニル−3−デオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
1−(6−ベンジルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N,4−ジメチル−β−D−リボフラノシドウロンアミド、
2−クロロ−9−(2,3−ジデオキシ−β−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N
6ベンジルアデニン、
2−クロロ−9−(2’−アジド−2’,3’−ジデオキシ−β−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N
6−ベンジルアデニン、
2−クロロ−9−(β−D−エリトロフラノシド)−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
N
6−(ベンゾジオキサンメチル)アデノシン、
1−(6−フルフリルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N−メチル−β−D−リボフラノシドウロンアミド、
N
6−[3−(L−プロリルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、
N
6−[3−(β−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、
N
6−[3−(N−T−Boc−β−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、
6−(N’−フェニルヒドラジニル)プリン−9−β−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド、
6−(O−フェニルヒドロキシルアミノ)プリン−9−β−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド、
9−(β−D−2’,3’−ジデオキシエリトロフラノシル)−N
6−[(3−β−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン、
9−(β−D−エリトロフラノシド)−2−メチルアミノ−N
6−(3−ヨードベンジル)アデニン、
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2−テトラヒドロフリル)−9H−プリン−6−アミン、
2−クロロ−(2’−デオキシ−6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン、及び
2−クロロ−(6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン。
【0035】
他に例となるA
3ARアゴニストは、米国特許第5,773,423号明細書に開示されている、式(V)の化合物である。
式中、
X
1はR
aR
bNC(=O)であり、R
a及びR
bは、同一であっても異なっていてもよく、水素、C
1〜C
10アルキル、アミノ、C
1〜C
10ハロアルキル、C
1〜C
10アミノアルキル及びC
3〜C
10シクロアルキルからなる群から選択され、
R
2は、水素、ハロ、C
1〜C
10アルコキシ、アミノ、C
2〜C
10アルケニル及びC
2〜C
10アルキニルからなる群から選択され、
R
5は、R−及びS−1−フェニルエチル、非置換のベンジル基、並びに1つ又は複数の位置で、C
1〜C
10アルキル、アミノ、ハロ、C
1〜C
10ハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アセトアミド、C
1〜C
10アルコキシ及びスルホからなる群から選択される置換基で置換されているベンジル基からなる群から選択される。
【0036】
より特定した化合物には、上記式[式中、R
a及びR
bは、同一であっても異なっていてもよく、とりわけR
2が水素又はハロ、特に水素である場合、水素及びC
1〜C
10アルキルからなる群から選択される]のものが含まれる。
【0037】
さらなる特定の化合物は、とりわけR
5が非置換のベンジルである場合、R
aが水素であり、R
2が水素である化合物である。
【0038】
より特定した化合物は、R
bがC
1〜C
10アルキル又はC
3〜C
10シクロアルキル、特にC
1〜C
10アルキル、より特定するとメチルであるような化合物である。
【0039】
殊のほか特定的なものは、R
aが水素であり、R
bが、C
1〜C
10アルキル又はC
3〜C
10シクロアルキルであり、R
5が、R−若しくはS−1−フェニルエチル、又は1つ若しくは複数の位置で、ハロ、アミノ、アセトアミド、C
1〜C
10ハロアルキル及びスルホ(スルホ誘導体がトリエチルアンモニウム塩などの塩である)からなる群から選択される置換基で置換されているベンジルである、化合物である。
【0040】
米国特許第5,773,423号明細書に開示されている特に好ましい化合物の一例は、N
6−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−[5−(メチルアミド)−β−D−リボフラノシル]−アデニン、別名N
6−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、若しくは別名1−デオキシ−1−[6−[[(3−ヨードフェニル)メチル]アミノ]−9H−プリン−9−イル]−N−メチル−D−リボフラヌロンアミド、又は略称IB−MECAである。
【0041】
さらに、R
2が、式R
d−C=C−(R
dはC
1〜C
8アルキルである)のC
2〜C
10アルケニレンである化合物も特に、米国特許第5,773,423号明細書に記載されている。
【0042】
やはり特定的であるのは、R
2が水素以外の化合物、特にR
2が、ハロ、C
1〜C
10アルキルアミノ又はC
1〜C
10アルキルチオであり、より好ましくは、さらにR
aが水素の場合、R
bがC
1〜C
10アルキルであり、且つ/又はR
5が置換ベンジルである化合物である。
【0043】
米国特許第5,773,423号明細書に開示されている、さらに例となるA
3ARアゴニストは、式(VI)を有する修飾キサンチン−7−リボシドである。
式中、
XはOであり、
R
6は、R
aR
bNC(=O)[式中、R
a及びR
bは、同一であっても異なっていてもよく、水素、C
1〜C
10アルキル、アミノ、C
1〜C
10ハロアルキル、C
1〜C
10アミノアルキル及びC
3〜C
10シクロアルキルからなる群から選択される]であり、
R
7及びR
8は、同一であっても異なっていてもよく、C
1〜C
10アルキル、R−及びS−1−フェニルエチル、非置換のベンジル基、並びに1つ又は複数の位置で、C
1〜C
10アルキル、アミノ、ハロ、C
1〜C
10ハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アセトアミド、C
1〜C
10アルコキシ及びスルホからなる群から選択される置換基で置換されているベンジル基からなる群から選択され、
R
9は、ハロ、ベンジル、フェニル及びC
3〜C
10シクロアルキルからなる群から選択される。
【0044】
国際公開第99/06053号パンフレットは、実施例19から33において、以下から選択される化合物を開示している。
N
6−(4−ビフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(2,4−ジクロロベンジル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(4−メトキシフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(4−クロロフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(フェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(ベンジルカルバモイルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(4−スルホンアミド−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(4−アセチル−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−((R)−α−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−((S)−α−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(l,3,4−チアジアゾール−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−(4−n−プロポキシ−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
N
6−ビス−(4−ニトロフェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、及び
N
6−ビス−(5−クロロ−ピリジン−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド。
【0045】
より特定的に開示されている化合物には、以下が含まれる。
2−クロロ−N
6−(3−ヨードベンジル)−9−[5−(メチルアミド)−β−D−リボフラノシル]−アデニン、別名2−クロロ−N
6−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、又は略称Cl−IB−MECA、
N
6−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−[5−(メチルアミド)−β−D−リボフラノシル]−アデニン、別名N
6−(3−ヨードベンジル)−アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド、若しくは別名1−デオキシ−1−[6−[[(3−ヨードフェニル)メチル]アミノ]−9H−プリン−9−イル]−N−メチル−D−リボフラヌロンアミド、又は略称IB−MECA、
N
6−2−(4−アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、
N
6−(4−アミノ−3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−(N−メチルウロンアミド)(AB−MECA)。
【0046】
特定の一実施形態において、IB−MECAは、本開示に従って、性機能不全の治療に使用される。
【0047】
「A
3ARアロステリック増強」への言及は、アロステリックエフェクター分子が受容体のアロステリック部位(内因性リガンド又はそのアゴニストの結合部位とは異なる場合のある)で結合することによる、受容体活性のポジティブな制御、活性化又は増加のことであると理解されるべきである。
【0048】
一部の実施形態において、「A
3ARアロステリック増強」は、イミダゾキノリン誘導体によるものである。即ち、アロステリックエンハンサーはイミダゾキノリン誘導体である。
【0049】
これに関連して、「増強」という用語は、受容体に対するエフェクター化合物の効果を表すものと理解されるべきであり、その効果は、エフェクター化合物が受容体のアロステリック部位に結合することによるA
3アデノシン受容体の活性における少なくとも15%の増加、及び/又はアデノシン若しくはA
3ARアゴニストのオルソステリック結合部位に対する解離速度の低下によって示される。
【0050】
一部の実施形態において、A
3ARエンハンサー又はイミダゾキノリン誘導体は、次の一般式(VII):
[式中、
− R
1は、C
1〜C
10アルキル、ハロ、C
1〜C
10アルカノール、ヒドロキシル、C
1〜C
10アシル、C
1〜C
10アルコキシル、C
1〜C
10−アルコキシカルボニ(alkoxycarbony)
、C
1〜C
10アルコキシルアルキル、C
1〜C
10チオアルコキシ、C
1〜C
10アルキルエーテル、アミノ、ヒドラジド、C
1〜C
10アルキルアミノ、ピリジルチオ、C
2〜C
10アルケニル、C
2〜C
10アルキニル、チオ及びC
1〜C
10アルキルチオ、アセトアミド、スルホン酸から選択される置換基で、任意選択で、芳香環のところで1回又は複数回置換されているアリール又はアルカリルを表し、又は前記置換基が、前記アリールに縮合して一緒にシクロアルキル又はシクロアルケニルを形成することができ、当該シクロアルキル又はシクロアルケニルは、任意選択で1つ又は複数のヘテロ原子を含むが、ただし前記アリールは非置換のフェニル基ではなく、
− R
2は、水素、若しくはC
1〜C
10アルキル、C
2〜C
10アルケニル、C
2〜C
10アルキニル、C
4〜C
10シクロアルキル、C
4〜C
10シクロアルケニル若しくは五員〜七員の複素芳香環、C
5〜C
15縮合シクロアルキル、二環式芳香族若しくは芳香族複素環から選択される置換基、又はC
1〜C
10アルキルエーテル、アミノ、ヒドラジド、C
1〜C
10アルキルアミノ、C
1〜C
10アルコキシ、C
1〜C
10−アルコキシカルボニ(alkoxycarbony)、C
1〜C
10アルカノール、C
1〜C
10アシル、C
1〜C
10チオアルコキシ、ピリジルチオ、チオ及びC
1〜C
10アルキルチオ、アセトアミド、スルホン酸を表す]
及び薬学的に許容されるその塩を有する。
【0051】
一部の実施形態によれば、A
3RMのR
1置換基は、次の一般式(VIII)を有する。
式中、nは0又は1〜5から選択される整数であり、好ましくは、nは0、1又は2であり、
− X
1及びX
2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、ハロゲン、アルキル、アルカノール又はアルコキシ、インダニル、ピロリンから選択されるが、ただし前記nが0の場合、X
1及びX
2は水素ではない。
【0052】
他のさらなる一部の実施形態では、A
3RMのR
1は、上記の式(VIII)を有する置換基であり、X
1又はX
2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、クロロ、メトキシ、メタノール、又は次式(VIIIa)若しくは(VIIIb)を有する置換基から選択される。
式中、YはN又はCHから選択される。
【0053】
他のさらなる一部の実施形態では、A
3RMのR
2は、H、C
1〜10アルキル、C
4〜10シクロアルキルから選択され、当該アルキル鎖は、直鎖でも分岐鎖でもよいし、四員〜七員のシクロアルキル環を形成してもよい。
【0054】
他のさらなる一部の実施形態では、A
3RMのR
2は、五員〜七員の複素芳香環から選択される。
【0055】
一部の実施形態において、A
3RMのR
2置換基は、H、n−ペンチル、又は次式(IX)を有する五員複素芳香環から選択される。
式中、Zは、O、S又はNHから選択され、好ましくはOである。
【0056】
一部の実施形態によれば、A
3RMのR
2は、特に二環式置換基を形成するための、1つ又は複数の縮合環を含む。
【0057】
本発明の内容において、置換基を形成するために使用することができる二環式化合物の非限定的な例には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボン酸、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−2−カルボン酸、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸及びビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸が含まれる。
【0058】
さらに他の一部の実施形態によれば、A
3RMのR
2は、2−シクロヘキセン及び3−シクロヘキセンから選択することができる。
【0059】
A
3ARのアロステリックエフェクターとして使用することができる特定のイミダゾキノリン誘導体の一覧は以下の通りである。
N−(4−メチル−フェニル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(4−メトキシ−フェニル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(4−クロロ−フェニル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3−メタノール−フェニル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−([3,4−c]インダン)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(1H−インダゾール−6−イル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(4−メトキシ−ベンジル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(1H−インドール−6−イル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(ベンジル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(フェニルエチル)−2−シクロペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−シクロヘプチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−フリル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−シクロブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−シクロヘキシル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン。
【0060】
上記のイミダゾキノリン誘導体は、一方で、A
1及びA
2A、A
2Bアデノシン受容体のオルソステリック結合部位に対する親和性があるとすればそれは低く、A
3アデノシン受容体のオルソステリック結合部位に対する親和性も低く、他方で、A
3アデノシン受容体のアロステリック部位に対する親和性は高いことが示されたため、アロステリックエフェクター(活性を調節する)であると考えられている[国際特許出願、国際公開第07/089507号パンフレット、これを参照によって本明細書に組み込む]。
【0061】
一部の実施形態において、上記のイミダゾキノリン誘導体は、A
3ARの活性を増加させる種類のものである。したがって、一部の好ましい実施形態によれば、調節はA
3AR活性の増強に関する。この意味で、イミダゾキノリン誘導体はA
3AR活性化剤又はエンハンサーと考えられている。これに関連して、「増強」という用語は、受容体に対するイミダゾキノリン誘導体の効果を表すものと理解されるべきであり、その効果は、イミダゾキノリンが受容体のアロステリック部位に結合することによるA
3アデノシン受容体の活性における少なくとも15%の増加、及び/又はアデノシン若しくはA
3ARアゴニストのオルソステリック結合部位に対する解離速度の低下によって示される。
【0062】
本開示による特に好ましいイミダゾキノリン誘導体は、N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−シクロヘキシル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(略称LUF6000又はCF602で呼ばれることもある)であり、これはアロステリックエンハンサーである。
【0063】
本明細書に開示している一般式に関連して、種々の用語については以下の意味が考慮されるべきである。
【0064】
「アルキル」という用語は、本明細書では、1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖を指す場合に使用し、以下に限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル、オクチルなどを含む。
【0065】
同様に、「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、それぞれ、2〜10個、又は3〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜6個又は3〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖を表し、アルケニル又はアルキニルは少なくとも1つの不飽和結合を有する。
【0066】
アルキル、アルケニル又はアルキニルの各置換基は、ヘテロ原子を含有する基と置換される場合がある。したがって、当然のことながら、明記されていなくても、上記及び下記に定義したアルキル修飾体、例えば、アルキルチオ、アルコキシ、アカノール(akanol)、アルキルアミンなどのうちいずれもが、対応するアルケニル又はアルキニル修飾体、例えば、アケニルチオ(akenylthio)、アケニルオキシ(akenyloxy)、アルケノール、アルケニルアミン、又はそれぞれ、アキニルチオ(akynylthio)、アルキニルオキシ、アルキノール、アルキニルアミンを含んでもいる。
【0067】
「アリール」という用語は、炭素原子数が5〜14個で、単環(例えばフェニル)又は多環式縮合環(例えばナフチル又はアントリル)を有する不飽和の芳香族炭素環基を表す。好ましいアリールには、フェニル、インダニル、ベンゾイミダゾールが含まれる。
【0068】
「アルカリル」という用語は、好ましくは1〜10個の炭素原子をアルキレン部分に、6〜14個の炭素原子をアリール部分に有する−アルキレン−アリール基を指す。かかるアルカリル基の例示として、ベンジル、フェネチルなどがある。
【0069】
「置換アリール」という用語は、上記で定義した通り、1〜3個の置換基で置換されている芳香族部分を指す。当業者が認めるように、種々の置換基が利用可能である。それでもなお、一部の好ましい置換基には、以下に限定はしないが、ハロゲン、(置換)アミノ、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ又はアルカノール、スルホニル、スルフィニルが含まれる。
【0070】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指し、好ましくはクロロを指す。
【0071】
「アシル」という用語は、H−C(O)−基及びアルキル−C(O)−基を指す。
【0072】
「アルカノール」という用語は、−COH基及びアルク−OH基を指し、「アルク」とは、アルキレン、アルケニレン又はアルキニレン鎖を表す。
【0073】
「アルコキシ」という用語は、本明細書では、−O−アルキルを意味する場合に使用し、以下に限定はしないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシなどを含む。
【0074】
「アルキルチオ」という用語は、本明細書では、−S−アルキルを意味する場合に使用し、以下に限定はしないが、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオなどを含む。
【0075】
「アルコキシアルキル」という用語は、本明細書では、−アルキル−O−アルキルを意味する場合に使用し、以下に限定はしないが、メトキシメチル、エトキシメチル、n−プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、n−ブトキシメチル、イソブトキシメチル、t−ブトキシメチルなどを含む。
【0076】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書では、環状炭化水素基を意味する場合に使用し、以下に限定はしないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含む。
【0077】
「アルコキシカルボニル」という用語は、本明細書では、−C(O)O−アルキルを意味する場合に使用し、以下に限定はしないが、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニルなどを含む。
【0078】
「縮合シクロアルキル」という用語は、本明細書では、単一の原子のところで(スピロ環部分を形成)、2つの互いに結合した原子のところで、又は原子の配列をまたいで(橋頭)連結している少なくとも2つの脂肪族環を含む、任意の化合物又は置換基を意味する場合に使用する。縮合環には、任意の二環式、三環式及び多環式の部分が含まれてもよい。本開示の一部の実施形態によれば、二環式置換基が好ましい。
【0079】
本開示は、上記に開示している化合物などの、A
3ARリガンドの生理学的に許容される塩も使用する。「生理学的に許容される塩」とは、製薬業界で広く使用されている、任意の無毒性の、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩を指し、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウムアンモニウム塩及びプロタミン亜鉛塩を含み、これらは当技術分野において公知の方法で調製される。この用語は無毒性の酸付加塩も含み、これは一般に、リガンドを好適な有機酸又は無機酸と反応させて調製する。酸付加塩は、遊離塩基の生物学的効果及び定性的性質を保持し、毒性のないものであり、そうでなければ望ましくない。例として、とりわけ、鉱酸由来の酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸などが含まれる。有機酸には、とりわけ、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、グリコール酸、グルコン酸、ピルビン酸、コハク酸、サリチル酸及びアリールスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸が含まれる。
【0080】
以下において、別段の指定のない限り、投与量は、1剤形当たりの重量、又は重量/Kgで示し、1回の投与で、治療した対象の体重1キログラム当たりに投与したA
3ARリガンドの重量を意味する(例えば、mg/Kg及びμg/Kgは、それぞれ、治療した対象の体重1キログラム当たりに投与したリガンドのミリグラム及び投与したリガンドのマイクログラムを表す)。
【0081】
したがって、A
3ARアゴニストをリガンドとして包含する一部の実施形態において、有効量は、約1mg/kg体重未満、特に約500μg/kg未満、若しくはさらに約200μg/kg体重未満、若しくは場合により約100μg/kg体重未満であり、又は約50μg/kg体重未満よりさらに少ない。A
3ARリガンドが受容体のアロステリックエンハンサーである一部の実施形態によれば、類似の量が、場合により同じ量が使用されることになる。
【0082】
有効量は、単位剤形で定義することもできる。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物用の、単一の投与量として好適な、物理的に個別の単位を指し、各単位は、好適な医薬添加剤と共同して所望の治療効果を生むように計算された所定量の活性材料を含有する。
【0083】
したがって、アゴニストIB−MECAについては、有効量は、好ましくは1日1回投与で1用量当たり5mg未満(即ち、個々の平均体重を約70kgと仮定して、用量は約70μg/kg体重未満)、1日2回投与で1用量当たり約4mg未満(即ち約57μg/kg体重未満)である。IB−MECAの用量は、1日1回又は2回投与で、より好ましくは1用量当たり約2mg未満、通常は1用量当たり約0.1〜1mgの間、(体重当たりの重量に相当する投与量は、それぞれ約29μg/kg体重及び約1.5〜15μg/kg体重である)。
【0084】
アロステリックエンハンサーをリガンドとして包含する他の一部の実施形態によれば、単位剤形中の有効量は、約0.5mgから500mgまでで変動してもよい。
【0085】
個体へのA
3ARリガンドの投与は、特定の投与方法に好適な剤形を形成するための薬学的に許容される担体を伴うものとすることができる。「薬学的に許容される担体」という用語は、A
3ARリガンドと反応せず、希釈剤又は担体として、又は製剤に形態又は稠度を付与するために製剤に添加することができる、不活性、無毒性の材料のうち任意の1種を意味する。
【0086】
したがって、剤形とは、A
3ARリガンドを必要とする対象に投与されることになる組成物中に使用されるA
3ARリガンドの物理的な形態である。したがって、本開示の内容において、生理学的に許容される担体、及び活性薬としてのA
3ARリガンドを含む医薬組成物も提供する。
【0087】
組成物は、経口投与及び局所(局部)投与を含む種々の投与形態に配合することができる。
【0088】
投与が経口である場合、担体は、経口投与に好適な剤形の調製に許容されるものとする。投与が局所的である場合、担体は、局所投与に好適な剤形の配合に許容されるものとする。
【0089】
経口製剤は、丸剤、カプセル剤の形態、シロップ剤、乳剤、芳香散剤の形態、及び種々の他の形態とすることができる。担体は、場合により、製剤の所望の形態に基づいて選択される。担体は、場合により、薬物の安定性を高め、クリアランス速度を遅くし、徐放性を付与し、望ましくない副作用などを低減するために、標的組織への活性成分の送達又は浸透を向上させる効果を有するものとすることもできる。担体は、製剤に可食の香味などを付与するために、製剤を安定化する物質(例えば防腐剤)とすることもできる。担体は、従来から使用されている任意のものとすることができ、溶解性、及びA
3ARリガンドとの反応性の欠乏などの化学的・物理的要件によって、及び投与経路によってのみ限定を受ける。担体には、添加物、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、保湿剤、防腐剤、香味剤及び薬理学的に適合する担体を含めることができる。さらに、担体は、定義上、予測通りに活性成分の作用に影響する物質である補助薬とすることができる。
【0090】
経口投与に好適な担体の代表的な例には、(a)適切な液体中懸濁剤又は乳剤、例えばクレモフォールRH40又はメチルセルロース(例えばMethocel A4M Premium)、(b)カプセル剤(例えば、界面活性剤、滑沢剤及び不活性充填剤などを含有する、通常のハードシェル又はソフトシェルのゼラチンタイプ)、錠剤、ロゼンジ剤(活性物質がスクロース及びアラビアゴム又はトラガントなどの香味剤中にある、又は活性物質がゼラチン又はグリセリンなどの不活性基剤中にある)、及び各々が所定量のトラガントを固形又は顆粒として含有するトローチ剤、(c)散剤、(d)通常可溶化増強剤と組み合わされる場合の溶液剤、(e)リポソーム製剤、その他が含まれる。
【0091】
経口投与形態のA
3ARリガンドの非限定的な一例であるIB−MECAは、以下の成分及び量を含んで錠剤の形態に配合される。
【0092】
組成物が局所(局部)投与用に配合される場合、組成物は、陰茎への施用に好適な形態、例えば以下に限定はしないが、クリーム剤、ゲル剤又は貼付剤、或いは女性生殖管の壁の部分へ、好ましくは腟内壁の部分への施用に好適な形態、例えば以下に限定はしないが、腟坐剤、リガンドを含む組成物を含浸させたタンポン、クリーム剤又はゲル剤(自己投与用避妊薬泡沫剤で使用されるものなどのアプリケーターを用いて施用する)の形態とすることができる。
【0093】
局所投与においては、担体は、好ましくはA
3ARリガンドの組織浸透を増強するものの中から選択され、以下に限定はしないが、グリセリン、滑沢剤、オリーブ油、ニトログリセリン、モノカプリル酸グリセリル、ジデカン酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリカプリル酸グリセリル、モノカプリル酸ソルビタン及びこれらの混合物を含むことができる。医薬クリーム剤、粘稠液剤、又は油相及び水系層を含有する半固体乳剤は、「Remington:the science and practice of pharmacy」第21版 出版社:Lippincott Williams & Wilkins,(2005)の中でPhilip P.Gerbinoが記載している通りに調製することができる。
【0094】
投与方法に関係なく、リガンドの施用、即ち治療は、例えば性交前などの急性治療、又は長期治療とすることができる。
【0095】
本明細書で使用する場合、「ある(a)」、「ある(an)」及び「前記(the)」という形態は、文脈上、明らかに他の意味が示されていない限り、単数及び複数の意味を含む。例えば、「ある(an)A
3ARリガンド」という用語は、直接又は間接的に、完全に又は部分的に、A
3ARの活性に特異的に影響を及ぼすことが可能な1種又は複数種の化合物を含む。
【0096】
さらに、本明細書で使用する場合、「含む」という用語は、組成物が、記載した活性薬、即ちA
3ARリガンドを含むが、他の要素、例えば、生理学的に許容される担体及び添加剤並びに他の活性薬を除外しないことを意味するものである。「から実質的になる」という用語は、ぶどう膜炎の治療に本質的意義を有する場合のある記載した要素を含むが、他の要素を除外する組成物を定義するために使用する。したがって、「からなる」は、他の要素のうちわずかな要素であっても除外することを意味するものである。これらの移行部の用語の各々により定義される実施形態は、本発明の範囲内とする。
【0097】
さらに、全ての数値は、例えばA
3ARリガンドを活性成分として含む組成物を構成する要素の量又は範囲を示す場合、表示値から20%まで、場合により10%まで、プラス又はマイナスに変動する近似値である。常に明示されているわけではなくとも、全ての数字の表示には「約」という用語が先行しているものと理解されるべきである。
【0098】
ここで本発明を、本発明に従って実施した以下の実施例を説明しながら例示することとする。当然のことながら、これらの実施例は本質的に例示を目的としており、限定する意図はない。上記の教示に照らしてこれらの実施例の多くの変更形態及び変形形態が可能であることは明らかである。したがって、当然のことながら、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、以下に具体的に記載した通りでなくても実施することがいくらでも可能である。
【実施例】
【0099】
非限定的な実施例
実施例1:IB−MECA(CF101)、A
3ARアゴニストを用いた臨床試験(I)
臨床試験(「試験」)は、中等度から重度のドライアイ疾患、乾性角結膜炎(KCS)の患者に連日経口投与したCF101の安全性及び有効性についての、第3相、無作為化、二重マスク化、プラセボ対照、用量設定、平行群間試験とした。CF101は、活性成分がIB−MECAの試験医薬組成物である。試験には2つの主目的があった。即ち(i)0.1mg又は1.0mg(即ち1投与につき、それぞれIB−MECA 0.1mg及び1mg)の用量で、1日2回24週間、KCSの患者に投与した場合、プラセボと比較して、経口投与したCF101の有効性を判定すること、及び(ii)患者におけるこの薬物の安全性を判定することであった。
【0100】
患者を無作為化して、CF101 0.1mg、CF101 1.0mg、又は対応するプラセボの丸剤を、経口で1日2回(BID)24週間投与した。4週間までのスクリーニング期間には2週間の導入期間が含まれ、その後24週間の治療期間とし、続いて2週間のフォローアップ期間とした。
【0101】
試験に登録した患者は、(i)18歳以上であること、(ii)容認できる臨床基準によって定義された、中等度から重度の涙液減少型ドライアイ(シェーグレン症候群ドライアイを含む)の診断を受けていること、及び(iii)他の種々の基準を含む、複数の組み入れ基準(即ちヒト対象が試験に参加するために合致しなければならない基準)を満たしていなくてはならないものとした。一定の眼科的状態及び他の薬物の使用に関する一定の除外基準を満たした患者。
【0102】
KCS症状の改善における臨床成績は、関連する種々の眼科のパラメーターによって判定した。さらに、試験中ずっと各患者について有害事象を記録し、患者の報告による全ての効果について報告書を作成した。
【0103】
本特許出願を提出する時点までに、試験はまだ続いていた。しかし、以下に記載しているのは、それぞれ異なる患者から報告のあった、患者に関連した2件のイベントであり、本開示が提供する通りの臨床効果を示している。なお、これらのイベントが報告されたこの段階では、試験はまだマスクされていた。即ち、当該患者らがCF101を受けたのかプラセボを受けたのか、且つCF101であれば、薬物の用量よりなのかは知られていない。しかし、報告のあった効果は、当該患者らがCF101を0.1mg又は1mgの用量で(試験期間中1日2回)受けたことを示唆している。
【0104】
第1の患者(コード104507で呼ばれる患者)は71歳の患者であった。この患者からは、CF101の摂取に関連した性的能力の増加の報告があった。
【0105】
第2の患者は36歳の患者であった。この患者は、CF101の摂取後に非挑発性勃起を報告した。患者は、このイベントがCF101によって直接的に惹起されたと強く思うと指摘した。この患者は、10日間毎日CF101を摂取する度にその約30分後に非挑発性勃起があったと記録した。
【0106】
実施例2:IB−MECA(CF101)、A3ARアゴニストを用いた臨床試験(II)
毎週のメトトレキサート(MTX)に追加して、経口投与のCF101と平行治療した、活動性関節リウマチ(RA)の患者における第2相試験(無作為化、二重盲検、プラセボ対照)。患者に、CF101の0.1mg錠若しくは1mg錠又はプラセボ錠を、経口で12時間毎に12週間投与した。生物学的薬剤を含む他の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)のウォッシュアウトを投与の前に実施した。
【0107】
この試験において、一部の患者がCF101での治療中に勃起又は性欲の増加を経験した。
【0108】
さらなる第2相試験では、無作為化、二重盲検、用量範囲探索、プラセボ対照試験を実施して、中等度から重度の尋常性乾癬(PS)の患者における、経口投与したCF101の安全性及び活性を判定した。CF101を1mg、2mg及び4mgで1日2回12週間投与した。
【0109】
この試験に登録した患者には、全身性のレチノイドもコルチコステロイドも免疫抑制薬も、試験開始前の6週間以内には投与しなかった。
【0110】
この試験において、一部の患者がCF101での治療中に勃起又は性欲の増加を経験した。
【0111】
上記各試験は、CF101の投与の本来の理由(即ちCF101で治療すべき本来の状態)に関係なく、無視できない数の患者が勃起又は性欲の増加を経験したことを示している。
【0112】
実施例3:アロステリックエンハンサーCF602を用いた動物モデル治療
雄のC57BL/6jマウス、8週齢に、コンカナバリンA(Con.A)(20mg/kg)を静脈(尾静脈)注射した。Con.A注射の24時間後、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスピラートアミノトランスフェラーゼ(aspirate aminotransferase)(AST)のレベルを血清中で測定した。
【0113】
アロステリック化合物、Luf6000(別名N−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2−シクロヘキシル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン)を、100μg/kgの用量で、Con.A投与から8時間後、及び終了の2時間前に経口投与した。
【0114】
結果
実験終了前に、Luf6000治療群には勃起が確認され、対照での非治療群には勃起の徴候は見られなかった。