特許第6140909号(P6140909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140909停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れを管理する電子債権システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6140909
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れを管理する電子債権システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20170529BHJP
【FI】
   G06Q40/02
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-570902(P2016-570902)
(86)(22)【出願日】2016年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2016075022
【審査請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-171834(P2015-171834)
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515096996
【氏名又は名称】Tranzax株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 隆志
(72)【発明者】
【氏名】深澤 亮一
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−44070(JP,A)
【文献】 米国特許第7124101(US,B1)
【文献】 株式会社日本電子記録債権研究所 電子記録債権とは?,[online],2015年 4月10日,[2016年6月7日検索],インターネット,URL,https://web.archive.org/web/20150410082301/http://www.densai.co.jp/about.html
【文献】 ”ちいさな企業”未来部会 第三回 法制検討ワーキンググループ配付資料 資料4:電子記録債権を活用した中,[online],2012年10月10日,[2016年6月7日検索],インターネット,URL,http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/miraibukai/2012/download/1010Haifu-4.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発注企業で用いられる第1の端末と、納入企業で用いられる第2の端末と、前記納入企業の金融機関で用いられる第3の端末と、電子債権記録機関において電子的な記録原簿データを記録する原簿記録装置と、通信可能に接続されており、
電子契約機能により、受注から納品・検収までの停止条件付き電子記録債権の発注登録を前記第1の端末から受信し前記第2の端末から前記発注登録に対する第1の承認登録を受信した場合、又は、前記停止条件付き電子記録債権の受注登録を前記第2の端末から受信し前記第1の端末から前記受注登録に対する第2の承認登録を受信した場合に、前記原簿記録装置へ前記停止条件付き電子記録債権の受注時の発生記録請求データを送信する第1の管理部と、
前記第2の端末から前記第3の端末へ前記停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡依頼が送信され、その後前記第3の端末から前記第2の端末へ前記譲渡依頼に対応する承認が送信され、さらに、前記第3の端末から前記停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡担保登録を受信した場合に、前記停止条件付き電子記録債権が譲渡担保として差入れられたことを示す情報を含む譲渡記録請求データを前記原簿記録装置へ送信する第2の管理部と、
前記停止条件付き電子記録債権の明細を示し前記第1の承認登録又は前記第2の承認登録及び前記譲渡依頼を含む債権明細データ、を記録装置に記録する第3の管理部と、
前記第3の端末、前記金融機関とは異なる他の金融機関で用いられる第4の端末、又は、保証会社で用いられる第5の端末に対して、前記記録装置に記録されている前記債権明細データに含まれるデータを送信する第4の管理部と、
を具備し、
前記債権明細データは、前記記録原簿データより詳しいデータであり、前記納入企業に対応する複数の停止条件付き電子記録債権の発生当初から現時点までの履歴データを含み、
前記複数の履歴データは、前記複数の停止条件付き電子記録債権ごとに、前記納入企業から前記発注企業への納品・検収前の債権発生、譲渡、支払期間の延長又は短縮、債権額の変更、停止条件の解除、債権回収のうち、現時点で発生済みの情報を含み、
前記第2の管理部は、前記第1乃至前記第3の端末のいずれかから前記停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を受信した場合に、前記停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を示す情報を含む変更記録請求データを前記原簿記録装置へ送信し、
前記第3の管理部は、前記原簿記録装置が前記停止条件付き電子記録債権の支払を記録し前記第2の端末から債権回収登録を受信した場合に、前記債権回収登録に基づいて前記債権明細データを更新し、前記第1乃至前記第3の端末のいずれかから前記停止条件の解除を受信した場合に、前記停止条件の解除に基づいて前記債権詳細データを更新し、
前記第4の管理部は、前記第3の端末、前記第4の端末、又は、前記第5の端末から受信したモニタリング依頼で指定された前記納入企業に対応する前記複数の履歴データを、前記モニタリング依頼で指定された前記納入企業の債務履行能力を判定するためのデータとして、前記第3の端末、前記第4の端末、又は、前記第5の端末に送信する、
電子債権システム。
【請求項2】
電子債権システムによる停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れの管理方法であって、
前記電子債権システムは、発注企業で用いられる第1の端末と、納入企業で用いられる第2の端末と、前記納入企業の金融機関で用いられる第3の端末と、電子債権記録機関において電子的な記録原簿データを記録する原簿記録装置と、通信可能に接続されており、
前記電子債権システムは、
電子契約機能により、受注から納品・検収までの前記停止条件付き電子記録債権の発注登録を前記第1の端末から受信し前記第2の端末から前記発注登録に対する承認登録を受信した場合、又は、前記停止条件付き電子記録債権の受注登録を前記第2の端末から受信し前記第1の端末から前記受注登録に対する承認登録を受信した場合に、前記原簿記録装置へ前記停止条件付き電子記録債権の受注時の発生記録請求データを送信することと、
前記第2の端末から前記第3の端末へ前記停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡依頼が送信され、その後前記第3の端末から前記第2の端末へ前記譲渡依頼に対応する承認が送信され、さらに、前記第3の端末から前記停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡担保登録を受信した場合に、前記停止条件付き電子記録債権が譲渡担保として差入れられたことを示す情報を含む譲渡記録請求データを前記原簿記録装置へ送信することと、
前記停止条件付き電子記録債権の明細を示し前記第1の承認登録又は前記第2の承認登録及び前記譲渡依頼を含む債権明細データ、を記録装置に記録することと、
前記第3の端末、前記金融機関とは異なる他の金融機関で用いられる第4の端末、又は、保証会社で用いられる第5の端末に対して、前記記録装置に記録されている前記債権明細データに含まれるデータを送信することと、
を実行し、
前記債権明細データは、前記記録原簿データより詳しいデータであり、前記納入企業に対応する複数の停止条件付き電子記録債権の発生当初から現時点までの履歴データを含み、
前記複数の履歴データは、前記複数の停止条件付き電子記録債権ごとに、前記納入企業から前記発注企業への納品・検収前の債権発生、譲渡、支払期間の延長又は短縮、債権額の変更、停止条件の解除、債権回収のうち、現時点で発生済みの情報を含み、
前記第1乃至前記第3の端末のいずれかから前記停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を受信した場合に、前記停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を示す情報を含む変更記録請求データを前記原簿記録装置へ送信することと、
前記原簿記録装置が前記停止条件付き電子記録債権の支払を記録し前記第2の端末から債権回収登録を受信した場合に、前記債権回収登録に基づいて前記債権明細データを更新し、前記第1乃至前記第3の端末のいずれかから前記停止条件の解除を受信した場合に、前記停止条件の解除に基づいて前記債権詳細データを更新することと、
前記第3の端末、前記第4の端末、又は、前記第5の端末から受信したモニタリング依頼で指定された前記納入企業に対応する前記複数の履歴データを、前記モニタリング依頼で指定された前記納入企業の債務履行能力を判定するためのデータとして、前記第3の端末、前記第4の端末、又は、前記第5の端末に送信することと、
をさらに実行する、
管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータによるネットワークを利用し、停止条件付き(抗弁付き)電子記録債権の譲渡担保差入れを管理する電子債権システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設業や造船業等の請負企業のように、受注から完成して納品するまでに多くの日数を費やす業種がある。このような業種の企業では生産過程において多額の資金が必要となる。通常、納品するまで代金支払いはない。従って、複雑な機材の受注生産、システム開発、建設等のような受注から納品までに時間のかかる事業は、受注から納品までの間のコストの負担がベンチャー企業、中小企業にとって重く、また、納品・引渡以前の抗弁のある請負債権を担保とすることは大変難しかった。
【0003】
近年、電子記録債権法が成立、公布され、平成20年12月に施行された。上記電子記録債権法に関連し、例えば、特許文献1(特許第5663626号公報)に開示されているように、電子記録債権を利用した与信先破綻管理方法及びシステムなる技術が存在する。この技術は、取引先(与信先)が破綻した場合に、銀行決済口座を債権者口座とする既存の電子記録債権を一括して留置することができ、また、破綻情報を登録しておくことで、新規に発生した電子記録債権も自動的に譲渡させ、留置することができ、それに係る事務手続き及び事後管理の負担を軽減するものである。
【0004】
また、上記した電子記録債権の割引に関しては、特許文献2(特許第5362867号公報)に開示されているように、電子記録債権の支払企業「原債務者」と割引依頼人の双方の信用力に基づいて、電子記録債権の割引実行の可否を自動的に判定するシステム及び方法なる技術が存在する。この技術では、原債務者の許容極度額及び割引依頼人の割引極度額に基づいて電子記録債権の割引実行可否を判定し、原債務者と割引依頼人の双方の信用力を考慮し、電子記録債権の割引実行の可否を自動的、且つ、迅速に判定することができる。
【0005】
POは「Purchase Order(発注)」の略である。受発注時点融資は、POをもとに金融機関等が発注企業を審査し、発注企業からPOを受けた下請企業に対して融資を行う仕組みである。受発注時点融資は、融資先企業が技術力・履行能力を持つことを前提として、PO発行元である発注企業の信用に基づき下請企業に信用を供与するスキームであるという特徴と、発注・受注という商取引の比較的早い段階での融資を実現するという特徴を持つ。
【0006】
受発注時点融資の基本スキームとしては、先ず、下請企業(一次)は発注企業からの注文情報を受取り、当該注文情報をもとに金融機関に融資の申し込みを行う。金融機関は申込人である下請企業(一次)を審査するとともに、注文情報から特定できる発注企業を審査する。審査では、下請企業(一次)に、技術力等の注文内容を履行する能力が備わっていること等が判断される。金融機関による審査の結果が合格であれば、下請企業に融資が実行される。下請企業(一次)は運転資金を得ることができ、下請企業(二次)への発注を行うことができる。下請企業(一次)は、下請企業(二次)からの納品の後、検収した製品又は部品の代金を支払う。下請企業(一次)は検収した製品又は部品を用いて完成品を製造し、完成品を発注企業へ納品する。発注企業は完成品の代金を下請企業(一次)へ支払い、下請企業(一次)は代金をもとに融資した金融機関への返済を行う。このように、金融機関から融資された資金は、下請企業(一次)が更にその下請けの企業へ支払いを行うことを円滑化するだけでなく、雇用、給与の支払い等にも充当され、当該企業にとつて事業継続のための資金繰りを改善する。言い換えると、POは、サプライチェーン上の資金の流動性を向上させるとともに、サプライチェーン上の各企業の資金繰りを改善する効果を発揮する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、例えば建設業や造船業等の請負企業のような、受注から完成して納品するまでに多くの日数を費やす企業は多くある。このような企業では生産過程において多額の資金が必要となる。資金面に余裕のある企業ならば問題ないが、中小企業、資金面に余裕のない企業、不動産等の担保のない企業は、銀行等からの借受ができない場合がある。また、検収前の段階での債権譲渡は、債務者の承諾を得ることが困難であった。そこで、近年において、電子記録債権を発生させ、電子記録債権を譲渡担保として銀行等から資金を借り受けるというニーズが高まってきていた。
【0008】
しかしながら、特許文献1は破綻情報登録を目的としており、特許文献2は電子記録債権の割引実行可否の自動的判定を目的としているだけであって、PO発行元である発注企業からPOを受けた下請企業に対して融資を行う仕組みは、上記した電子記録債権に対して未だ有効に活用されていない。
【0009】
また、中小企業庁による新たな中小企業政策の導入の一環として中小企業信用保険法の改正が成立し、信用保証協会の保証制度(流動資産担保融資保証)で電子記録債権の取り扱いが認められた一方、売掛債権(ABL)促進の現状での課題として、(1)全体:金融機関内でのモニタリング体制等の未整備、(2)動産:動産担保の評価の困難さ及び評価に要するコスト、金融機関による継続的なモニタリングの実施及びコスト、動産担保の権利関係の不安定性、(3)債権:売掛債権に譲渡禁止特約が付されている場合の解除の困難性等があった。
【0010】
本発明は上記のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、POをもって電子記録債権を発生させることを目的とする。すなわち、本発明では、発注の最初から電子記録債権を発生させることで、受注時において金融の対象とすることを可能とし、更に、受注時から停止条件付きの電子記録債権を取り扱えるようにする。さらに、本発明は、停止条件付きの電子記録債権を担保にする場合において、金融機関内でのモニタリング体制を整備することにより当該担保としての金銭的評価を容易にし、かつ、コンピュータ処理によって停止条件付きの電子記録債権の更新(売掛債権に譲渡禁止特約が付されている場合の解除を含む)を容易にし、受発注時点融資での電子記録債権による資金繰りを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る電子債権システムは、発注企業で用いられる第1の端末と、納入企業で用いられる第2の端末と、納入企業の金融機関で用いられる第3の端末と、電子債権記録機関において電子的な記録原簿データを記録する原簿記録装置と、通信可能に接続されている。電子債権システムは、第1の管理部と第2の管理部とを含む。第1の管理部は、電子契約機能により、停止条件付き電子記録債権の発注登録を第1の端末から受信し第2の端末から発注登録に対する第1の承認登録を受信した場合、又は、停止条件付き電子記録債権の受注登録を第2の端末から受信し第1の端末から受注登録に対する第2の承認登録を受信した場合に、原簿記録装置へ停止条件付き電子記録債権の発生記録請求データを送信する。第2の管理部は、第2の端末から第3の端末へ停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡依頼が送信され、その後第3の端末から第2の端末へ譲渡依頼に対応する承認が送信され、さらに、第2の端末から前記停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡担保登録を受信した場合に、停止条件付き電子記録債権が譲渡担保として差入れられたことを示す情報を含む譲渡記録請求データを原簿記録装置へ送信する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、POをもって電子記録債権を発生させる、すなわち発注の最初から電子記録債権を発生させることで、受注時において金融の対象とすることを可能とし、更に、受注時から停止条件付きの電子記録債権を取り扱えるようにすることができる。
【0013】
すなわち、従来においては、通常、納品するまで代金支払いはないので、複雑な機材の受注生産、システム開発、建設等のような受注から納品までに時間のかかる事業は、受注から納品までの間のコストの負担がベンチャー企業、中小企業にとって重く、また、納品・引渡以前の抗弁のある請負債権を担保とすることは大変難しかった。しかしながら、電子記録債権の利用で上記のような困難を解消することが可能となる。中小企業信用保険法の改正により信用保証協会で電子記録債権が取り扱えるようになったことから、電子記録債権の担保としての評価も優良なものになり得る。中小企業信用保険法施行規則の一部を改正する省令では、取り扱う電子記録債権を「電子記録債権(商品又は役務の提供並びに機械類その他の物品を使用させる契約に基づいて発生したものに限る)」と定義しており、受注時点で発生させた電子記録債権も取扱い可能となった(2013年9月20日施行)。また、信用保証協会の流動資産担保保証制度では、完工前、納品前の請負債権(抗弁のある債権)を保証できる。
【0014】
さらに、本発明によれば、停止条件付きの電子記録債権を担保にする場合において、当該担保としての金銭的評価を容易にし、かつ、停止条件付きの電子記録債権の更新も容易となる。例えば、停止条件付きの電子記録債権には期限(180日間)があるが、形式上一旦清算し、更新することで、期間延長することができる。さらに、本発明によれば、電子記録債権によるABL(売掛債権)の活性化、すなわち売掛債権の電子記録債権化により、譲渡が容易となる(上記(3)の課題を解消する)ことで、中小企業の資金調達を円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムの一例を示す概念図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムの業務フローの全体の一例を示す概念図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムの電子契約・受発注機能の概略の一例を示す概念図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムの売掛買掛照合機能及び請求代行機能の概略の一例を示す概念図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムによる電子債権記録請求機能の概略の一例を示す概念図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムの回収登録機能の概略の一例を示す概念図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムの収納代行機能の概略の一例を示す概念図である。
図8図8は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムのモニタリング機能の概略の一例を示す概念図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るモニタリングサービスシステムの電子文書管理サービスの概略の一例を示す概念図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、第2の実施形態に係るコンピュータシステムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明に係るコンピュータ処理によって対応可能とした受発注時点融資での電子記録債権による資金繰りの改善システム及び資金繰りの改善方法について詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
<電子記録債権の意義>
電子記録債権の発生及び譲渡の効力要件は、電子債権記録機関(電子債権(記録)サービス)のシステムの記録原簿に電子的に記録を行うことである(図5参照)。例えば、発注企業(支払企業)1の端末が、電子記録債権の債権金額、支払期日、債権者等を指定し、電子債権記録機関Cのシステムへ発生記録請求を行うと、電子債権記録機関Cのシステムは、記録原簿に電子記録債権の発生を記録する。これにより、発注企業1が債務者となる電子記録債権が発生する。電子記録債権の支払期日が到来すると、その債権金額が発注企業1の口座から自動的に引き落とされ、債権者である納入企業(受注企業)2の口座へ自動的に振込みが行われる(図7参照)。振込みが行われると、電子債権記録機関Cのシステムは支払が完了した旨を支払等記録として記録原簿に記録する(図2図6参照)。また、納入企業2の端末は、金融機関(例えば取引銀行など)を通じて電子債権記録機関Cのシステムに譲渡記録を請求し、記録原簿に譲渡を記録することで、電子記録債権を譲渡することもできる。また、納入企業2は、金融機関に電子記録債権を担保とした借入依頼を申し込むことができる。
【0018】
<本実施形態の概要>
今般の法改正で、売掛債権の電子記録債権化により、債権に係るABL促進の課題が解消されることが期待できる。一方で、全体の課題として上げられている「金融機関内でのモニタリング体制等の未整備」は、中小企業取引が多い地域金融機関(後述する金融機関E1,E2)に顕著と思われる。従って、本実施形態においては、これらの地域金融機関E1,E2をターゲットとして、電子記録債権を利用し、省力化に結び付くモニタリングサービスシステムP(以後、本システムPと云う)を構築する(図1図2参照)。
【0019】
図2に示す信用保証協会Gの保証制度には、個別保証と根保証がある。個別保証については、納入企業2提携の金融機関E2にとっては、通常の電子記録債権割引(担保)の事務手続の範疇で管理可能であり、本システムPの利用余地は少ない。一方、根保証については、信用保証協会GはCRD(中小企業信用リスク情報データベース)のスコアリングを基に保証上限額を決定し1年間は見直しを行わない方式を採用する。このことから、借手側の中小企業にとっては利用価値が高い一方で、納入企業2提携の金融機関E2は売掛債権(電子記録債権)残高の推移をモニタリングする必要があるため、本システムPの利用価値がある。従って、本システムPでは、受発注契約段階からデータを蓄積し、受注高推移・債権残高推移等の情報を提供する仕組みを含む。
【0020】
また、本システムPでは、利用する中小企業に利便性がなければ、データ精度に問題が発生する可能性があるため、受発注から決済までの一連の業務をWebベースで利用できるようにし、事務合理化を実現し、例えば、電子契約、電子請求書発行、文書管理、仕訳情報提供等のサービスを提供する。
【0021】
電子債権記録機関Cは、利用者側が希望すれば、電子債権(記録)をネットワーク上で利用可能なシステムを備える。電子債権記録機関Cでは、停止条件付き電子記録債権の取り扱いができること、及び、信用保証協会Gの保証制度は未発生の売掛債権を対象としていることから、電子債権記録機関Cを使うことで、利用者の利便性は高まる。従って、本システムPは、電子債権記録機関Cとのデータ交換可能とする。
【0022】
尚、本システムPは、信用保証協会Gの保証制度を利用する機能に限らず、民間保証会社Fの利用モデルに対応する機能又はポートフォリオ評価型モデルを利用する機能を含む。
【0023】
<システムの概要>
図1は、本実施形態における受発注時点融資の電子記録債権を利用した省力化に結び付く本システムの概念図である。本実施形態では、納入企業2提携の金融機関E2内での電子記録債権の残高推移をモニタリングする事務代行会社のWebクライアント200(以下、モニタリングサービス端末200と称す)に、本システムPが連携基盤17として接続(内包)されている。また、利用者のWebクライアント100(以下、利用者端末100と称す)は、後述する発注企業1、納入企業2、金融機関EP,E1,E2、民間保証会社F(FAX・Eメールを含む)等の各端末であり、インターネットを介して認証部18による任意の認証に基づき本システムPに接続され、各種情報を送受信する。
【0024】
モニタリングサービス端末200は、利用者向けのフロントサービス群5と内部処理用の基幹業務群6と、データベース(DB)群7とに分けて構築されている。フロントサービス群5は、コア機能とオプション機能とを含む。また、基幹業務群6は、基本的な内部処理機能であり、フロントサービス群5のコア機能と同時に起動する。フロントサービス群5は、電子契約・受発注機能51、売掛買掛照合機能52、請求代行機能53、電子債権記録請求機能54、回収登録機能55、収納代行機能56、モニタリング機能、電子文書管理58を含む。基幹業務群6は、システム制御61、基本データ管理61、契約・受発注管理63、債権明細・履歴管理64、記録請求管理65、入金履歴・延滞管理66、手数料徴収管理67等の各種機能を含む。データベース群7は、制御系データベース71を含み、社員データ72、金融機関データ73、利用者データ74、受発注明細データ75、債権明細データ(履歴データ)76、電子文書データ77、手数料管理簿データ78等の各種のデータ又は情報を格納している。
【0025】
<業務フローの全体イメージ>
図2は、本実施形態に係る本システムPの業務フローの全体の一例を示す概念図である。図2に示すように、本システムPは、納入企業2の端末に、受注登録と納品・請求登録を実行する。また、本システムPと納入企業2の端末との間で、債権情報提供、入金確認登録、回収履歴情報提供、記録請求情報提供が実行される。納入企業2の端末は、当該納入企業2の金融機関E2の端末に対して電子記録債権・担保借入申込及びモニタリング情報提出を実行する。納入企業2の金融機関E2の端末と本システムPとの間でモニタリング情報照会が実行され、金融機関E2は納入企業2に融資を実行する。納入企業2の金融機関E2の端末は、信用保証協会Gの端末に保証の申込を実行し、信用保証協会Gは納入企業2の金融機関E2の端末に保証書を交付する。信用保証協会Gに代えて民間保証会社Fを利用することも可能とする。納入企業2の金融機関E2の端末と電子債権記録機関Cのシステムとの間で譲渡記録請求が実行される。本システムPは、発注企業1の端末に、発注確認登録と請求書受領を実行する。これを受けて発注企業1の端末は、本システムPに、支払通知登録を実行する。発注企業1の端末と当該発注企業1の金融機関E1の端末との間で、発生記録承諾依頼及び承諾が実行される。発注企業1の金融機関E1の端末と電子債権記録機関Cのシステムとの間で、発生記録承諾取次及び期日資金決済が実行される。
【0026】
<業務フローの概略>
図3は、本実施形態に係る本システムPの電子契約・受発注機能51の概略の一例を示す概念図である。フロントサービス群5の電子契約・受発注機能51は、電子契約により売買注文書、同請書の受渡しを文書管理システム内で完結する。この場合、印紙税不要となり、また国税対応の電子証明書・タイムスタンプの自動付与が行われる。また、受発注登録により、発注登録・受注登録は、発注企業1の端末と納入企業2の端末とのうちのいずれかが登録し、相手方は承認登録を行う。具体的には、図3に示すように、本システムPと納入企業2の端末との間で注文請書登録又は請負契約書確認が実行され、本システムPと発注企業1の端末との間で売買注文書又は請負契約書登録が実行される。
【0027】
<売掛買掛照合サービス及び請求代行サービス>
図4は、本実施形態に係る本システムPの売掛買掛照合機能52及び請求代行機能53の概略の一例を示す概念図である。売掛買掛照合機能52は、納入企業2の端末から納品検収の完了を受信した後に、売掛債権明細を登録する。但し、電子契約・受発注機能51が利用された場合には、売掛買掛照合機能52は、売掛債権明細を自動登録する。発注企業1の端末は、売掛債権明細の登録内容を確認後、買掛債務承認の入力を実行する。納入企業2の端末が電子記録債権化を要望した場合、発注企業1の端末は、債務者承諾を入力する。これにより、自動的に電子記録債権記録請求機能54が実行される。また、請求代行機能53は、発注企業1の端末からの債務承認入力を契機として、予め登録済の請求書フォームで電子請求書(PDF文書)を発注企業1の端末へ発行する。この場合、電子証明書及びタイムスタンプが電子請求書へ自動付与される。発注企業1の端末は、電子請求書を取り出し、印刷する。具体的には、図4に示すように、本システムPと納入企業2の端末との間で納品・検収及び売掛債権登録が実行され、本システムPと発注企業1の端末との間で買掛債務承認が実行される。また、本システムPは発注企業1の端末に電子請求書を発行する。
【0028】
<電子債権記録請求サービス>
図5は、本実施形態に係る本システムPの電子債権記録請求機能54の概略の一例を示す概念図である。電子債権記録請求機能54は、納入企業2の端末が納入企業2の取引金融機関E2の端末に対して発生記録請求依頼を行うために必要な様式又はデータを作成し、作成した様式又はデータを納入企業2の端末が金融機関E2の端末へ送信又はアップロード可能とするための機能を提供する。図5に示すように、電子債権記録機関Cのシステムは、発注企業1の提携する金融機関E1の端末へ承諾依頼を通知し、発注企業1の端末が承諾することにより、電子記録債権を記録する。本システムPは、自動的に電子債権記録機関Cの記録機関へ発生記録請求を送信する。また、納入企業2と金融機関E2との間で、担保差入れのために譲渡記録請求が行われるが、本システムPでは特定の発注企業1向け債権が譲渡担保として差入れられた事実を債権明細に登録する。
【0029】
具体的には、図5に示すように、本システムPは、納入企業2の端末に発生記録請求書を送信する。納入企業2の端末は金融機関E2の端末に発生記録請求を実行する。電子債権記録機関Cのシステムと納入企業2の金融機関E2の端末との間で発生記録請求が実行される。電子債権記録機関Cのシステムと、発注企業1の金融機関E1の端末との間で発生記録承諾取次が実行される。発注企業1の端末と当該発注企業1の金融機関E1の端末との間で発生記録承諾依頼と承諾が実行される。電子債権記録機関Cのシステムと、納入企業2の金融機関E2の端末との間で譲渡記録請求が実行される。納入企業2の金融機関E2の端末は、本システムPに譲渡担保登録を行う。これと同時に、本システムPと電子債権記録機関Cのシステムとの間で、発生記録請求が実行され、納入企業2の金融機関E2の端末と電子債権記録機関Cのシステムとの間で譲渡記録請求が実行される。
【0030】
<回収登録サービス>
図6は、本実施形態に係る本システムPの回収登録機能55の概略の一例を示す概念図である。回収登録機能55は、納入企業2の端末によって売掛金の入金が確認された後、債権回収を登録する。その際に、発注企業1の端末が回収登録機能55に対して必要に応じて領収書の発行入力を行うと、回収登録機能55は、発注企業1宛ての電子領収書を発注企業1の端末へ送信する。具体的には、図6に示すように、発注企業1の金融機関E1の端末は、納入企業2の金融機関E2の端末に期日資金決済を実行する。金融機関E1の端末は、電子債権記録機関Cのシステムへ支払通知を行う。納入企業2の金融機関E2の端末は、納入企業2の端末に入金を通知し、納入企業2の端末は、本システムPに債権回収登録を実行する。本システムPは、発注企業1の端末に領収書を発行する。
【0031】
<収納代行サービス>
図6は、本実施形態に係る本システムPの収納代行機能56の概略の一例を示す概念図である。収納代行機能56は、電子記録債権を利用しない場合に利用されてもよく、電子債権記録機関Cを利用してもよい。本システムPを利用する場合、納入企業2は、当社提携先の提携金融機関EPに専用口座を開設する。収納代行機能56は、発注企業1宛て請求書に当該口座を振込先口座として指定する。従って、収納代行機能56を利用する場合には、事前に発注企業1の同意が必要となる。本システムPの収納代行機能56は、専用口座への入金情報を請求情報と照合し、照合できた場合は債権明細に回収済み登録を行い、納入企業2の端末へ債権回収を通知する。収納金は、速やかに、納入企業2の預金口座へ手数料差引の上振り込まれる。但し、当該債権が譲渡担保となっている場合は、収納金が貸出金融機関口座へ振り込まれることも可能とする。
【0032】
具体的には、図7に示すように、収納代行機能56は、発注企業1の端末に電子請求書を発行する。すると、発注企業1の端末は当該発注企業1の金融機関E1の端末に期日振込依頼を行う。発注企業1の金融機関E1の端末は、当社提携先の提携金融機関EPのシステムの専用口座に振込を実行する。提携金融機関EPのシステムは、本システムPに入金確認を行い、本システムPは、提携金融機関EPのシステムに収納金振込依頼を実行する。提携金融機関EPのシステムは、納入企業2の金融機関E2の預金口座に振込を実行する。これと同時に納入企業2の金融機関E2の端末は、納入企業2の端末に入金を通知する。本システムPは、納入企業2の端末へ債権回収を通知する。
【0033】
<モニタリング情報サービス>
図8は、本実施形態に係る本システムPのモニタリング機能57の概略の一例を示す概念図である。モニタリング機能57は、債権回収状況、債務者別債権残高、残高推移等の情報を納入企業2の端末へ提供する。また、モニタリング機能57は、当事者間で合意がある場合には、貸出の金融機関E2の端末又は民間保証会社Fの端末に対して、同様の情報の照会及びレポート提供を行う。具体的には、図8に示すように、本システムPのモニタリング機能57と納入企業2との間で、債権情報提供及び回収履歴情報提供が実行される。納入企業2の端末は、当該納入企業2の金融機関E2の端末に債権残高報告書の提出を実行する。本システムPのモニタリング機能57は、納入企業2の金融機関E2の端末及び民間保証会社Fの端末にモニタリング情報照会とレポート提供を実行する。
【0034】
<電子文書管理サービス>
図9は、本実施形態に係る本システムPの電子文書管理58の概略の一例を示す概念図である。電子文書管理58は、国税対応仕様の電子文書管理システムを標準機能として提供する。電子文書管理58は、例えば、電子証明書、タイムスタンプ付きPDF文書保管を行う。本システムPの電子文書管理58は、利用される契約文書、受発注書類、請求書、領収書、報告書類等を利用者別のフォルダに格納し、10年超の長期保存可能とする。電子文書管理58による利用者間の文書の受渡しは、利用者フォルダ内の文書参照又はダウンロードによって実行される。利用者が希望する場合、電子文書管理58は、他の取引文書類を登録可能とする。具体的には、図9に示すように、本システムPの電子文書管理58は、納入企業2の端末との問及び発注企業1の端末との間で、電子文書登録・取出し・照会を実行する。
【0035】
<第1の実施形態のシステム及び方法の例>
第1の実施形態に係るコンピュータシステムは、電子記録債権を担保にする場合における金融機関内での電子記録債権の残高推移をモニタリングする本システムPと、発注企業1の端末、納入企業2の端末、金融機関E2の端末、民間保証会社Fの端末を含む利用者端末が、インターネット接続されてなる受発注時点融資での電子記録債権による資金繰りの改善システムである。本システムPは、電子契約・受発注機能51、売掛買掛照合機能52、請求代行機能53、電子債権記録請求機能54、回収登録機能55、収納代行機能56、モニタリング機能57等の各機能を含む利用者向けのフロントサービス群5と、システム制御61、基本データ管理62、契約・受発注管理63、債権明細・履歴管理64、記録請求管理65、入金履歴・延滞管理66、手数料徴収管理67等の各機能を含む内部処理用の基幹業務群61と、を備える。
【0036】
第1の実施形態に係るコンピュータシステムは、本システムPに、発注企業1の端末、納入企業2の端末、金融機関E2の端末及び電子債権記録機関Cのシステムがインターネット接続されてなる受発注時点融資での電子記録債権による資金繰りの改善システムである。コンピュータシステムは、発注企業1の端末と納入企業2の端末との間で受発注契約の確認行為を行い記録請求データを作成して電子債権記録機関Cのシステムに伝送する記録請求管理部と、納入企業2の端末と金融機関E2の端末との間で債権譲渡に関する確認行為を行い記録請求データを作成して電子債権記録機関Cのシステムに伝送する記録請求管理部と、を備える。電子債権記録機関Cのシステムは、記録請求データに基づく記録結果データをメッセージ交換機能で伝送するとともに、発注企業1の端末、納入企業2の端末、金融機関E2の端末へ記録完了の通知を行う。
【0037】
第1の実施形態に係る第1の方法は、電子記録債権を担保にする場合における金融機関内での電子記録債権の残高推移をモニタリングする本システムPと、発注企業1の端末、納入企業2の端末、金融機関E2の端末、民間保証会社Fの端末を含む利用者端末が、インターネット接続されてなる受発注時点融資での電子記録債権による資金繰りの改善方法である。第1の方法において、本システムPは、発注企業1の端末と納入企業2の端末とによる受発注契約段階からデータを蓄積するステップと、受注高推移・債権残高推移の情報を金融機関E2の端末及び民間保証会社Fの端末にモニタリング情報として照会するステップと、を含む。
【0038】
第1の実施形態に係る第2の方法は、本システムPに、発注企業1の端末、納入企業2の端末、金融機関E2の端末及び電子債権記録機関Cのシステムがインターネット接続されてなるコンピュータシステムによる受発注時点融資での電子記録債権による資金繰りの改善方法である。第2の方法は、納入企業2の端末と発注企業1の端末との間で納品・検収・請求書発行・売掛買掛照合・回収登録を行うステップと、電子債権記録機関Cのシステムへ停止条件解除(抗弁の切断)に係る記録請求を行うステップと、電子債権記録機関Cのシステムが記録請求に基づく記録結果データを作成するステップと、電子債権記録機関Cのシステムから記録結果データを伝送するステップと、電子債権記録機関Cのシステムが発注企業1の端末、納入企業2の端末又は金融機関E2の端末へ記録完了の通知を行うステップと、を含む。
【0039】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、上記第1の実施形態の一部をより具体的に説明する。なお、本実施形態において、上記の第1の実施形態で説明した構成要素と同様の構成要素については、同じ符号を付して説明を省略するか、又は、簡単に説明する。
【0040】
図10は、本実施形態に係るコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
コンピュータシステム8は、電子債権システム9、端末10〜13、原簿記録装置14を備えている。コンピュータシステム8において、電子債権システム9、端末10〜13、原簿記録装置14のそれぞれは、互いに通信可能とする。電子債権システム9、端末10〜13、原簿記録装置14の間では、例えばデータ、信号、リクエスト、コマンド、情報などが通信される。
【0042】
端末10は、発注企業1で用いられる。端末11は、納入企業2で用いられる。端末12は、納入企業2と提携している金融機関E2で用いられる。端末13は、例えば、電子記録債権の債権明細データ15をモニタするために用いられる。原簿記録装置14は、電子債権記録機関Cで管理されており、電子的な記録原簿データ16を記録する。本実施形態において、電子債権システム9は上記第1の実施形態の本システムPに相当する。端末10〜12は、それぞれ上記第1の実施形態の発注企業1の端末、納入企業2の端末、金融機関E2の端末に相当する。原簿記録装置14は、電子債権記録機関Cのシステムに相当する。
【0043】
端末10は、例えばコンピュータであり、プロセッサ10a、プログラム10bを記録するメモリ10c、通信部10dを含む。
【0044】
プロセッサ10aは、メモリ10cに記録されているプログラム10bを実行することで、通信部10d経由で外部装置とデータを通信可能である。プログラム10bは、例えばオペレーティング・システムとブラウザでもよい。
【0045】
端末11に備えられるプロセッサ11a、プログラム11bを記録するメモリ11c、通信部11d、端末12に備えられるプロセッサ12a、プログラム12bを記録するメモリ12c、通信部12d、端末13に備えられるプロセッサ13a、プログラム13bを記録するメモリ13c、通信部13dのそれぞれは、上記端末10に備えられるプロセッサ10a、プログラム10bを記録するメモリ10c、通信部10dと同様であるため、説明を省略する。
【0046】
端末13は、端末10,11のいずれかでもよい。端末13は、例えば、金融機関E2で用いられる端末12でもよく、発注企業1が提携している金融機関E1などのような他の金融機関で用いられる端末でもよく、民間保証会社Fで用いられる端末でもよい。
【0047】
原簿記録装置14は、例えばデータベース・システムであり、プロセッサ14a、プログラム14b及び記録原簿データ16を記録する記録装置14c、通信部14dを含む。プロセッサ14aは、プログラム14bを実行することで、通信部14d経由で外部装置とデータを送受信可能であり、記録原簿データ16を管理する原簿管理部141(例えば登録、更新、読み出しなど)として機能する。
【0048】
電子債権システム9は、例えばコンピュータ又はデータベース・システムであり、プロセッサ9a、プログラム9b及び債権詳細データ15を記録する記録装置9c、通信部9dを含む。プロセッサ9aは、プログラム9bを実行することで、通信部9d経由で外部装置とデータを送受信可能であり、第1乃至第4の管理部91〜94として機能する。
【0049】
第1の管理部91は、電子契約機能、すなわち上記第1の実施形態における電子契約・受発注機能51を含む。第1の管理部91は、電子契約機能により、停止条件付き電子記録債権の発注登録を端末10から通信部9d経由で受信し、端末11から発注登録に対する第1の承認登録を通信部9d経由で受信する。あるいは、第1の管理部91は、停止条件付き電子記録債権の受注登録を端末11から通信部9d経由で受信し、端末10から受注登録に対する第2の承認登録を通信部9d経由で受信する。そして、第1の管理部91は、第1の承認登録又は第2の承認登録を受信した場合に、停止条件付き電子記録債権の発生記録請求データを原簿記録装置14へ通信部9d経由で送信する。
【0050】
第2の管理部92は、端末11から端末12へ停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡依頼が送信され、その後端末12から端末11へ譲渡依頼に対応する承認が送信され、さらに、第2の管理部92が端末12から通信部9d経由で譲渡担保登録を受信した場合に、停止条件付き電子記録債権が譲渡担保として差入れられたことを示す情報を含む譲渡記録請求データを通信部9d経由で原簿記録装置14へ送信する。
【0051】
さらに、第2の管理部92は、端末10〜12のいずれかから通信部9d経由で停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を受信した場合に、停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を示す情報を含む変更記録請求データを通信部9d経由で原簿記録装置14へ送信する。
【0052】
第3の管理部93は、端末10〜12から通信部9d経由で停止条件付き電子記録債権に関するデータを受信した場合に、受信したデータに基づいて、記録装置9cに債権明細データ15を記録するか、又は、記録装置9cに記録されている債権明細データ15を更新する。債権明細データ15は、例えば、停止条件付き電子記録債権の明細を示すデータである。債権明細データ15は、例えば、第1の承認登録又は第2の承認登録と、譲渡依頼と、受信日時とを含む履歴データを含むとしてもよい。債権明細データ15は、例えば、納入企業2ごとに、1又は2以上の停止条件付き電子記録債権の発生当初から現時点までの詳細な状態情報(履歴データ)を含む。より具体的には、債権明細データ15は、停止条件付き電子記録債権ごとに、例えば、債権発生、変更(例えば、譲渡、残高変更、支払期間の延長又は短縮、債権額の変更、停止条件の解除)、商品の状態(出荷、納品、検収)、債権回収(例えば、代金受領、債権消滅)などのうち、現時点で発生済みの情報を含む。例えば、停止条件付き電子記録債権に対する支払は、検収の終了後に実行される。債権明細データ15は、記録原簿データ16とは別のデータであり、記録原簿データ16よりも詳しい情報を含む。
【0053】
例えば、債権回収の際には、発注企業1の金融機関E1の端末が納入企業2の金融機関E2の端末12に期日資金決済を実行し、金融機関E1の端末が原簿記録装置14へ支払を送信し、納入企業2の金融機関E2の端末12が納入企業2の端末11に入金通知を送信し、納入企業2の端末11が電子債権システム9に債権回収登録を実行する。すると、第3の管理部93は、端末11からの債権回収登録に基づいて、記憶装置9cに記録されている債権詳細データ15を更新する。
【0054】
また、第3の管理部93は、端末10〜12のいずれかから通信部9d経由で停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を受信した場合に、停止条件の解除に基づいて、記憶装置9cに記録されている債権詳細データ15を更新する。なお、第3の管理部93は、原簿記録装置14から通信部9d経由で停止条件付き電子記録債権の停止条件の解除を受信してもよい。
【0055】
第4の管理部94は、モニタリングを行う端末13から通信部9d経由でモニタリング依頼を受信し、受信したモニタリング依頼に基づいて、記録装置9cに記録されている債権明細データ15に含まれるデータを読み出す。そして、第4の管理部94は、読み出したデータを通信部9d経由で端末13へ送信する。
【0056】
例えば、モニタリング依頼は複数の納入企業のうち任意の納入企業2を指定しており、債権明細データ15は、納入企業2に対応する複数の停止条件付き電子記録債権の履歴データを含むとしてもよい。この場合、第4の管理部94は、モニタリング依頼で指定された納入企業2に対応する複数の履歴データを、納入企業2の債務履行能力を判定するためのデータとして、通信部9d経由で端末13へ送信する。
【0057】
図11は、本実施形態に係るコンピュータシステム8の動作の一例を示すシーケンス図である。この図11の説明においては、説明を簡略化するために、電子債権システム9、端末10〜13、原簿記録装置14の間の通信が通信部9d〜14dを用いて行われることの説明は省略する。
【0058】
ステップS1aにおいて、端末10は、停止条件付き電子記録債権の発注登録を電子債権システム9へ送信する。電子債権システム9の第1の管理部91は、端末10からの発注登録を受信する。
【0059】
ステップS2aにおいて、端末11は、発注登録に対する第1の承認登録を電子債権システム9へ送信する。電子債権システム9は、端末11からの第1の承認登録を受信する。
【0060】
あるいは、ステップS1bにおいて、端末11は、停止条件付き電子記録債権の受注登録を電子債権システム9へ送信する。電子債権システム9の第1の管理部91は、端末11からの受注登録を受信する。
【0061】
ステップS2bにおいて、端末10は、受注登録に対する第2の承認登録を電子債権システム9へ送信する。電子債権システム9の第1の管理部91は、端末10からの第2の承認登録を受信する。
【0062】
次に、ステップS3において、電子債権システム9の第1の管理部91は、原簿記録装置14へ停止条件付き電子記録債権の発生記録請求データを送信する。原簿記録装置14の原簿管理部141は、発生記録請求データに基づいて、停止条件付き電子記録債権の発生を記録原簿データ16に記録する。加えて、電子債権システム9の第3の管理部93は、第1の承認登録又は第2の承認登録に基づいて、記録装置9cに記録されている債権明細データ15を更新する。
【0063】
ステップS4において、端末11は、停止条件付き電子記録債権の譲渡担保差入れのための譲渡依頼を端末12へ送信する。端末12は、譲渡依頼を端末12から譲渡依頼を受信する。
【0064】
ステップS5において、端末12は、譲渡依頼に対応する承認を端末11へ送信する。端末11は、端末12から譲渡依頼に対応する承認を受信する。
【0065】
さらに、ステップS6において、端末12は、譲渡担保登録を電子債権システム9へ送信する。電子債権システム9は、譲渡担保登録を端末12から受信する。
【0066】
ステップS7において、電子債権システム9は、譲渡担保登録を端末12から受信した場合に、譲渡記録請求データを原簿記録装置14へ送信する。原簿記録装置14の原簿管理部141は、電子債権システム9から受信した停止条件付き電子記録債権の譲渡記録請求データに基づいて、記録装置14cに記録されている記録原簿データ16を更新する。加えて、電子債権システム9の第3の管理部93は、譲渡記録請求データに基づいて、記録装置9cに記録されている債権明細データ15を更新する。
【0067】
ステップS8において、端末13は、電子債権システム9へモニタリング依頼を送信する。電子債権システム9の第4の管理部94は、端末13から受信したモニタリング依頼に基づいて、記録装置9cに記録されている債権明細データ15に含まれるデータを読み出す。
【0068】
ステップS9において、電子債権システム9の第4の管理部94は、読み出されたデータを、端末13へ送信する。端末13は、電子債権システム9からのデータを受信し、受信されたデータを表示する。
【0069】
本実施形態においては、端末10から端末11へのデータ送信、端末10から原簿記録装置14へのデータ送信、端末11から端末10へのデータ送信、端末11から原簿記録装置14へのデータ送信、端末12から原簿記録装置14へのデータ送信を、電子債権システム8が中継する。このため、電子債権システム9は、原簿記録装置14に記録されている記録原簿データ16よりも詳細な、電子記録債権に関する状態情報(ライフサイクルデータ)、及び、履歴データを含む債権明細データ15を記録することができる。そして、端末13は、記録原簿データ16よりも詳細な債権明細データ15をモニタすることができる。
【0070】
本実施形態においては、支払期日になると、原簿記録装置14に記録された債権回収を電子債権システム9の債権明細データ15に記録し、停止条件付き電子記録債権の履歴データの一部として管理することができる。
【0071】
本実施形態においては、指定された納入企業2に対応する複数の受注から現時点までの履歴データを債権明細データ15として記録しており、指定された納入企業2に対応する複数の履歴データをモニタリング可能であるため、納入企業2の債務履行能力の判定をサポートすることができる。
【0072】
本実施形態においては、停止条件付き電子記録債権に対する停止条件の解除を、原簿記録装置14の記録原簿データ16へ記録するとともに、電子債権システム9の債権明細データ15に記録することができる。
【0073】
本実施形態においては、端末12から原簿記録装置14へのデータ送信を、電子債権システム8が中継している。しかしながら、上記第1の実施形態でも説明したように、これに代えて、端末12は、電子債権システム8を経由することなく原簿記録装置14へデータを送信してもよい。ただし、この場合には、端末12は、原簿記録装置14へデータ送信を行ったことを示す報告データを電子債権システム8へ送信し、電子債権システム8は、端末12から原簿記録装置14へのデータ送信に関する報告データに基づいて、債権明細データ15を更新する。あるいは、原簿記録装置14は、端末12からデータ受信を行ったことを示す報告データを電子債権システム8へ送信し、電子債権システム8は、原簿記録装置14からのデータ受信に関する報告データに基づいて、債権明細データ15を更新する。
【0074】
以上説明した本実施形態においては、発注当初から停止条件付き電子記録債権を記録原簿データ16に登録することができる。さらに、本実施形態においては、記録原簿データ16とは別に、記録原簿データ16よりも詳しいデータであり停止条件付き電子記録債権の発生当初から現時点までの状態情報を含む債権詳細データ15を記録し、この債権詳細データ15を確認することができる。これにより、停止条件付き電子記録債権を発生当初から容易に譲渡可能なシステム環境を提供することができ、停止条件付き電子記録債権を担保として扱うことができる。本実施形態においては、金融機関E2が記録原簿データ16よりも詳細な債権明細データ15を容易に確認することができるため、例えば金融機関E2は、納入企業2へ融資するか否かを容易かつ迅速に判断することができる。
【0075】
上記各実施形態は、自由に組み合わせることができる。また、上記各実施形態は、自由に変更可能であり、各構成要素は適宜分割してもよく、組み合わせてもよい。
【要約】
本実施形態に係るシステムは、発注企業の第1の端末と、納入企業の第2の端末と、前記納入企業の金融機関の第3の端末と、記録原簿データを記録する原簿記録装置と、通信可能であり、第1及び第2の管理部を含む。第1の管理部は、停止条件付き電子記録債権の発注登録を第1の端末から受信し第2の端末から発注登録に対する承認登録を受信した場合、又は、停止条件付き電子記録債権の受注登録を第2の端末から受信し第1の端末から受注登録に対する承認登録を受信した場合に、原簿記録装置へ停止条件付き電子記録債権の発生記録請求を送信する。第2の管理部は、第2の端末から譲渡担保登録を受信した場合に、停止条件付き電子記録債権が譲渡担保として差入れられたことを示す譲渡記録請求を原簿記録装置へ送信する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11