(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
  関心領域内の位置は、固形組織あるいは他の種類の材料として分類される。固形組織領域では、より高精度に剪断を測定することができる。他の種類、例えば、流体あるいは流体組織は、剪断速度の測定の精度が劣る。固形組織に関連した位置は、剪断イメージングに含められ、他の位置は、剪断波伝播領域のイメージングからあらかじめ除外されうる。分類は、代替としてあるいは追加として、剪断波イメージングから除外するために、シャドーイング領域および/またはハイポエコー(hypo echoic)領域に関連付けられた領域を識別する。
 
【0012】
  関心領域は、流体(例えば、血液あるいは尿)、骨、組織を含むことができる。組織は、組織のような流体(すなわち、流体組織)あるいは固形組織を含むことができる。固形組織は、筋肉、脂肪、臓器、流体および骨より比較的弾性力のある特性を有する他の構造を含む。嚢胞あるいは他の組織構造は、流動性の高い内容物を含むことができる。剪断波イメージングにおける誤りを低減するために、流体組織あるいは流体は、固形組織から分離される。
 
【0013】
  固形組織および流体組織がインパルス力によって励起されると、両方の組織は変位する。経時的な変位プロファイルの特性は、組織の種類によって異なる。固形組織における変位は、剪断波方程式によって支配され、流体組織における変位は、ナビエ・ストークス方程式によって支配されている。流体組織における結果として生ずる変位プロファイルは、固形組織における変位プロファイルと比較して、著しいノイズを示す。エコー信号の信号対雑音比(SNR)もまた、変位プロファイルのSNRに寄与する。
 
【0014】
  SNRに加えて、あるいは、SNRの代わりに、変位プロファイルの他のパラメータを用いて分類することもできる。例えば、変位プロファイルにおける最大変位は、流体あるいは流体組織を、固形組織のハイポエコー領域から識別することができる。SNRおよび最大変位は、ともに用いられ、流体および流体組織を、軟固形組織および硬固形組織から識別することができる。
 
【0015】
  インパルス励起によって導入された組織変位が推定される。変位プロファイルの特性を示す少なくとも1つのパラメータが推定される。組織は、導出されたパラメータに基づいて、複数のカテゴリから少なくとも1つのカテゴリに分類される。一例では、変位プロファイルのSNRおよび最大値を用いて、組織を流体あるいは固形組織という種類に分類する。他の例では、他の特性、例えば、エコー信号の統計(例えば、平均あるいは高次統計)を、SNRおよび最大変位とともに分類のために用いる。
 
【0016】
  図1は、医用超音波剪断波イメージングに用いられる分類前処理の方法を示す。方法は、
図7のシステムあるいは異なるシステムによって実行される。異なる動作を追加しても良いし、削減してもよい。例えば、動作30を実行せず、ストレス源を、体によって、手動で、サンパー(thumper)を用いて、あるいは他のメカニズムによって供給してもよい。他の例では、動作36におけるSNRおよび/または動作38における最大変位の代わりに、変位の異なるパラメータを計算する。動作40は任意である。さらに他の例では、動作44および/または動作46は提供されず、分類は他の目的のために用いられる。動作は、図示の順番で実行されるが、他の順番で実行されてもよい。
 
【0017】
  図1の方法は、
図2に示される例と関連して説明される。
図2は、乳房組織の2次元領域のBモードイメージすなわちエコーイメージを示す。方法は、他の臓器に用いることもできる。領域は、嚢胞(位置Bの周辺の暗い領域)を含む。その領域では、複数の嚢胞が存在してもよいし、存在しなくてもよい。領域は、他の種類の材料、例えば、骨や流体を含むことができる。2つの代表的な位置A、Bが図示されている。位置Aは固形組織領域内にあり、位置Bは流体組織内にある。方法は1つ以上の位置に対して実行される。一実施形態では、方法は、視野全体あるいは関心領域において、Bモードあるいは走査サンプル位置の各々に対して実行される。より濃いあるいはより薄いサンプルを用いてもよい。
 
【0018】
  図1の動作30では、音響励起を患者内に伝送する。音響励起は、インパルス励起として機能する。例えば、パワー、すなわち、ピーク振幅レベルが、組織をイメージングするためのBモード伝送と同一あるいはより高い、400サイクルの伝送波形を伝送する。一実施形態では、伝送は、視野に与えられる放射力のシーケンスである。任意の音響放射力イメージング(ARFI)シーケンスを用いることができる。
 
【0019】
  伝送は、パワー、振幅、タイミングあるいは、1つ以上の位置において組織を変位させるのに十分な、組織に与えられるストレスの他の特性によって構成されている。例えば、伝送力は、底部近くの視野の中央に位置付けられ、視野全体にわたる変位を生じさせる。伝送は、複数の小領域に対して繰り返してもよい。
 
【0020】
  励起を、超音波トランスデューサから伝送する。励起は音響エネルギーである。音響エネルギーを集中し、3次元のビームプロファイルを形成する。励起を、フェイズドアレイおよび/または機械的焦点を用いて集中する。励起は1次元、例えば上位の次元には集中されなくてもよい。励起を、患者の組織内に伝送する。
 
【0021】
  動作32では、患者内の応答の変位プロファイルを決定する。例えば、位置A、Bに対する変位プロファイルが
図3に示される。励起は組織の変位を生じさせる。剪断波は、焦点領域(focal region)から発生し伝播する。剪断波が組織を通って伝播すると、組織は変位する。変位を生じさせる縦波あるいは他の波を用いることもできる。組織は、患者内で移動させられる。
 
【0022】
  力あるいはストレスによって生じた変位を測定する。変位を、時間をかけて1つ以上の位置において測定する。ストレスあるいはインパルスが終了する前に、例えば、異なる周波数やコーディングを用いて、変位測定を開始することができる。あるいは、インパルスの終了後に変位測定を開始する。ストレスの点あるいは領域から離れた、組織内の変位を生じさせる、剪断波(横波)、縦波、他の波は、伝播するのに時間がかかるので、
図3に示すように、弛緩状態あるいは部分的にストレスがかかった状態の変位から、最大変位まで、そして再び弛緩状態に戻った変位を測定することができる。あるいは、変位は、組織が弛緩して最大を形成している間だけ測定される。
 
【0023】
  変位の量あるいは大きさを測定する。組織は任意の方向に移動する。最大に移動する方向に沿って測定することができる。動きベクトルの大きさを決定する。あるいは、組織が他の方向にどのくらい変位するかに関係なく、所定の方向に沿って、例えば、走査線に垂直に測定する。
 
【0024】
  超音波走査を用いて変位を検出する。領域、例えば、関心領域、視野全体、関心小領域を、超音波で走査する。所定の時間、超音波を組織あるいは関心領域に伝送する。現在知られているあるいは将来開発される変位イメージングを用いることができる。例えば、1〜5サイクルの持続時間を有し、強度が720mW/cm
2未満のパルスを用いる。他の強度のパルスを用いることもできる。
 
【0025】
  伝送からのエコーすなわち反射を受信する。エコーはビーム成形され、ビーム成形されたデータは1つ以上の位置を表す。変位を検出するために、超音波エネルギーを、変位を経験している組織に伝送し、エネルギーの反射を受信する。任意の伝送および受信シーケンスを用いることができる。
 
【0026】
  伝送および受信を複数回実行することによって、異なる時点における1次元、2次元あるいは3次元領域を表すデータを受信する。伝送および受信を複数回実行し、変位による変化を決定する。超音波で繰り返し走査することによって、異なる時点における組織の位置を決定する。
 
【0027】
  エコーを、Bモードあるいはドップラー検出を用いて検出する。変位を、各空間的位置に対する差異から検出する。例えば、速度、分散、強度パターンにおけるシフト(例えば、スペックルトラッキング)、他の情報を、受信データから変位として検出する。
 
【0028】
  一実施形態では、Bモードデータを用いて、種々の走査からのデータを相互に関連付ける。例えば、現在のデータセットを、参考のデータセットと複数回関連付ける。2つのデータセット間の、異なる相対的な移動(relative translation)および/または回転を実行する。参考セット内の所定の位置に集中されたデータのサブセットの位置を、現在のセットにおいて識別する。
 
【0029】
  参考は、データの第1セットあるいは他の走査からのデータである。同一の参考を、全変位検出に用いる、あるいは、参考データは、進行するあるいは移動するウィンドウにおいて変化する。
 
【0030】
  相関は、1次元、2次元、あるいは、3次元である。例えば、トランスデューサから離れる方向および向かう方向の走査線に沿った相関を用いる。2次元走査では、移動は、2軸に沿って、回転の有無を伴う。3次元走査では、移動は、3軸に沿っており、3軸以下の軸の周りの回転の有無を伴う。種々のオフセットの各々におけるデータの類似性あるいは関連のレベルを計算する。最大の相関を伴う移動および/または回転は、参考と比較される現在のデータに関連付けされた時間に対する動きベクトルあるいはオフセットを表す。
 
【0031】
  現在知られているあるいは将来開発される任意の相関、例えば、相互相関、パターンマッチング、絶対差の最小和を用いることができる。組織構造および/またはスペックルは相関されている。ドップラー検出を用いて、クラッタフィルタは、移動する組織に関連付けられた情報を通過させる。組織の速度を、複数のエコーから導出する。速度を用いて、トランスデューサに近づく方向および離れる方向の変位を決定する。あるいは、相関あるいは種々の位置における速度間の差異は歪(strain)あるいは変位を示すことができる。
 
【0032】
  図3は、変位プロファイルの2つの例を示す。経時的な動きベクトルの参考データからの距離の大きさが示されている。分析の期間は、約10μs超であるが、それより長くても短くてもよい。固形組織に関連した位置Aのための変位プロファイルは、流体組織に関連した位置Bのための変位プロファイルより滑らかな外観である。他の変位プロファイルは可能である。
 
【0033】
  動作34では、変位プロファイルの特性を計算する。任意の特性を用いることができる。複数の特性を計算することもできる。
図1の例では、変位プロファイルのSNR(動作36)および最大変位(動作38)を計算する。異なる、追加の、あるいはより少ない特性を計算することもできる。
 
【0034】
  動作36では、変位プロファイルのSNRを決定する。経時的なあるいは時間の関数としての変位のSNRを、プロファイルからノイズを識別することによって決定する。任意の方法、例えば、プロファイルの高周波数成分を選択することによって、ノイズを識別することができる。フーリエ変換を用いて、高周波ノイズを決定することができる。
 
【0035】
  ノイズを識別するための一実施形態では、変位プロファイルはフィルタリングされる。ローパスフィルタ、例えば、バターワースフィルタがプロファイルに適用される(すなわち、時間フィルタリング)。フィルタは、無限インパルス応答(IIR)フィルタ、あるいは、有限インパルス応答(FIR)フィルタである。フィルタリングされた経時的な変位を、フィルタリング前の経時的な変位から減算する。その差がノイズを表す。
 
【0036】
  図4の左側は、フィルタリング前後の位置A、Bの変位プロファイルを示す。フィルタリングされていない変位曲線もまた、
図4の左側に破線で示されている。フィルタリングされた変位プロファイルでは、高周波数情報は除去される、あるいは、低減される。
図4の右側は、フィルタリングされていない変位曲線からフィルタリングされた変位曲線を減算して得られたノイズを示す。ノイズの振幅は、流体組織に関連した位置Bの方が、固形組織に関連した位置Aよりも変化し、かつ、大きい。
 
【0037】
  SNRを計算するために、ノイズ情報を定量化する。ノイズ信号の二乗平均平方根(RMS)を計算し、ノイズレベルを表す。他の計算、例えば、ピークの絶対値の平均を用いることもできる。
 
【0038】
  SNRを決定するために、信号レベルを計算する。一実施形態では、信号レベルは、フィルタリングされた変位プロファイルの下の領域によって表される。フィルタリングされた変位の積分を計算する。他の信号レベルの測定を用いることもできる。
 
【0039】
  SNRは、信号(例えば、フィルタリングされた変位の積分)をノイズ(例えば、ノイズのRMS)によって除算することによって得られる。他の変数を含む他の関数を用いることもできる。
図4の例では、2つの位置A、Bに関してSNRを計算する。他の位置に関してSNRを計算してもよい。
 
【0040】
  動作38では、最大変位を計算する。最大変位を、変位プロファイルから計算する。平面内あるいは体積内で線に沿って、動きのピークあるいは最大量あるいは組織によるシフトの大きさを計算する。滑らかな、すなわち、フィルタリングされた変位曲線を、最大計算に用いる。他の実施形態では、未加工の、すなわち、フィルタリングされていない変位曲線を用いることができる。プロファイル全体あるいはプロファイルの部分における最大値を識別あるいは決定する。
図4の例では、0.9μmの最大変位が、位置Aに対して約1.7msで発生し、1.3μmの最大変位が、位置Bに対して約0.8msで発生する。
 
【0041】
  任意の動作40では、変位プロファイル以外のパラメータを計算する。
図1の例では、他のパラメータはエコー情報の統計、エコー信号の信号対雑音比および/または経時的なエコー信号の非相関測定を含むことができる。例えば、変位プロファイルに用いられる、同じ期間にわたる位置に対するBモードの平均を計算する。代わりに、あるいは、追加として、高次の統計を計算することができる。任意の統計あるいは他のパラメータを分類に用いることもできる。統計は、空間的および/または時間的とすることができる。エコー信号のSNRは、伝送を有する受信信号強度と有さないものとの比として計算可能である。ARFIあるいは他の励起ビームの前後に検出されたエコー信号の正規化した相関係数を、1からマイナスして、非相関係数を計算することができる。
 
【0042】
  動作42では、1つ以上の位置を分類する。各位置における組織あるいは他の材料を、独立に、すなわち、別個に分類する。各位置のための分類は、その位置に関するデータに基づき、他の位置に関するデータには基づかない。代替実施形態では、空間フィルタリングあるいは隣接位置からの情報を用いて、所定位置を分類することができる。
 
【0043】
  分類は材料を識別する。任意の種類の材料を識別することができる。一実施形態では、分類は、位置を流体(流体組織を含むカテゴリあるいは種類)、固形組織、その他(例えば、特定不能)として識別する。位置を1つのグループとして分類する。グループは、例えば、(a)流体あるいは流体組織と(b)固形組織との間で選択する、多少の選択肢あるいはクラスを含むことができる。
 
【0044】
  分類は、固形組織を他の材料、例えば、流体組織および他のクラスから識別する。プロセッサは、ユーザ選択あるいは入力なしに、分類を実行する。プロセッサは、他の情報あるいはパラメータを用いて、あるいは、用いずに、変位プロファイルの特性を使用する。例えば、プロセッサは、SNR、最大変位、あるいは、SNRおよび最大変位の関数として分類する。SNRおよび最大変位を用いた分類は、流体組織、固形組織、およびその他の、すなわち特定不能物を識別することができる。
 
【0045】
  図5は、2つのパラメータ、すなわち、変位プロファイルのSNRおよび最大変位を用いた分類の一実施形態を示す。ジッタノイズレベルを用いて、「特定不能」のカテゴリを分類する。最大変位が低い場合、情報が不十分であるか、非組織あるいは流体材料が存在しうる。低い最大変位に対して、分類は存在しない、すなわち、クラスは「特定不能」のカテゴリである。低いSNRおよび高い変位に対しては、その位置における材料は流体あるいは流体組織として分類される。2つのパラメータの他の組み合わせに対しては、その位置における材料は固形組織として分類される。
図5に示したもの以外の関数を用いることもできる。
 
【0046】
  分類関数は、実験、数学関数、統計、他の情報に基づく。例えば、ファジー理論が分類に用いられる。この方法では、各組織種類のメンバーシップ関数は、実験的に、各パラメータ(例えば、SNR、最大変位)に対して定義され、位置における入力パラメータが与えられた各メンバーシップ関数の出力は合算され、組織種類の可能性を生成する。合計の最大値は、割り当てられる組織種類に対応する。他の例として、クラスに関する既知のグラウンドトルースを伴って、訓練サンプルあるいはデータの収集からの機械学習を用いて、統計、あるいは、分類用の行列関数を決定する。確率関数は所定の位置に対する各クラスの可能性を示し、最高確率を有するクラスが選択される。ルックアップテーブル、ファジー理論関数、プログラム関数、行列関数を用いて分類を実行する。
 
【0047】
  再び
図1を参照すると、動作42から動作32へのフィードバックは、複数の位置に関する分類の繰り返しを表す。例えば、変位プロファイルおよび変位プロファイルのための特性は、視野における各位置に対して決定される。繰り返しは、動作30における、同一の、あるいは、異なる伝送を用いる。関心領域が十分に小さい場合、1つのインパルスが用いられる。異なる位置における変位は、各位置の中心にあるウィンドウを用いて決定される。各位置に対して、ウィンドウあるいはカーネルは、位置にわたって集中される。ウィンドウ内の空間的位置を表すデータが相関に用いられる。変位は別個に各位置に対して決定される。他の実施形態では、伝送動作30が繰り返される。1つ、複数、あるいは、関心領域の部分集合に対する変位は、動作30の各伝送に応答して決定される。
 
【0048】
  変位プロファイルを、任意の大きさの領域にわたって検出する。一実施形態では、診断されるべき組織を含む可能性が高い関心領域において、変位を検出し、関心領域は、例えば、Bモードイメージング用の完全な走査領域の約1/3から1/2である。より大きいかより小さい関心領域、あるいは、関心領域を用いずに、全イメージング領域にわたる変位を検出してもよい。関心領域が狭いと、動作30の励起波形を伝送する繰り返しを少なくして、変位を検出することができる。形成可能な受信ビームの数およびサンプル濃度に依存して、繰り返しなし、あるいは1つ以上の繰り返しを用いることができる。
 
【0049】
  全Bモードサンプル位置における変位をサンプリングすることのような完全なサンプリングを用いることができる。Bモード走査格子に比較して、より多いあるいはより少ない(例えば、まばらな)変位のサンプリングを用いることができる。
図6は、BモードイメージおよびSNRイメージを同一のサンプリング密度で示す。SNR情報は、嚢胞をより良く表す。SNRイメージはユーザに示してもよいし示さなくてもよい。
 
【0050】
  動作44では、分類を用いて、剪断波情報を空間的にマスクする。剪断波情報を、固形組織の位置に対して表示することができる。他の位置に対して、例えば、流体組織あるいは特定不能な位置に対しては、剪断波情報を表示しない。位置をマスクする。マスキングに基づいて、決定された剪断波情報を表示しない、あるいは、剪断波情報を計算さえしない。流体あるいは流体組織からの不確かな剪断情報は、混乱を避けるために、ユーザに対してイメージに表示されない。
 
【0051】
  動作46では、剪断波イメージングを実施する。剪断速度、係数、あるいは、剪断波に対する組織の応答から決定された他の情報を検出する。任意の剪断イメージングを用いることができる。動作44のマスキングにより、表示されたイメージは固形組織領域の剪断波情報を表し、流体あるいは流体組織の領域の情報を表さない。
 
【0052】
  剪断情報を、同一の位置に対して変位として検出する。変位計算よりも、異なる伝送および走査を、剪断イメージングのために用いる。あるいは、同一の伝送および変位プロファイルさえも、剪断イメージング用に分類用として用いる。剪断波が出発点(例えば、伝送焦点領域)から位置まで伝わる時間を決定する。最大変位あるいは変位プロファイルの他の部分は、剪断波の到着の時間を表す。剪断波の速度をタイミング情報から計算する。
 
【0053】
  剪断波イメージングに対して、インパルス励起は、空間的位置における剪断波を生成する。励起が十分に強い場合、剪断波は生成される。剪断波は、組織を通り、音波放射方向に縦波よりゆっくりと伝播する。剪断波は、ストレスが与えられた方向に垂直な方向も含め、様々な方向に伝播する。剪断波の変位は、剪断波が生成した位置に近接した位置ほど大きい。
 
【0054】
  超音波データを得る。超音波データの少なくとも一部は、剪断波を表す。関心領域を監視し、剪断波を検出する。関心領域は任意の大きさ、例えば、横方向に6mm、軸方向に10mmである。この検出領域を、超音波によって監視する。例えば、Bモード走査を実行し、剪断波によって生じた組織変位を検出する。ドップラー、カラーフロー、あるいは他の超音波モードを用いて、剪断波を監視することができる。
 
【0055】
  監視を、任意数の走査線に対して実行する。例えば、4つの受信ビームを、各伝送に応答して形成する。励起を伝送し、剪断波を生成した後、単一の走査線、および、4つの隣接した走査線に沿った受信に沿って、それぞれ、Bモード伝送を実行する。他の実施形態では、各伝送に応答して、単一の受信ビーム、あるいは、他の数の受信ビームを形成する。任意数、例えば、約120回の繰り返しを用いることができる。超音波データの一部、例えば、繰り返しの初めと終わりは、剪断波に応答しなくてもよい。
 
【0056】
  剪断波は走査線を通って伝播するので、Bモード強度は、組織の変位によって変化しうる。監視された走査線に関して、剪断波から生じた、組織の動きの時間プロファイルを表す一連のデータが与えられる。例えば、(例えば、走査線に沿った)複数の空間的位置からのデータは、時間の関数として相関される。任意の弾性的な検出を用いることができる。各深さあるいは空間的位置に対して、複数の深さあるいは空間的位置に関する相関が実行される(例えば、64深さのカーネル、中心深さは、プロファイルが計算されるための点である)。2次元あるいは空間における3次元の変位を用いることができる。走査線あるいはビームとは異なる方向に沿った1次元の変位を用いることもできる。
 
【0057】
  所定の時点における最大あるいは十分な相関を有する空間的なオフセットは、変位量を示す。変位は、異なる時点における所定の位置に対して決定される。所定の位置に対する時間的なプロファイルは、剪断波の検出を示す。プロファイルは、ノイズなしの、あるいは、変化の一例のために分析される。時間的なローパルフィルタリングを有する、あるいは、有さないプロファイルのピークは、剪断波面の通過を示す。最大変位が選択されるが、平均あるいは他の変位統計を用いることもできる。所定位置における最大剪断を検出する。あるいは、平均あるいは他の剪断を検出する。
 
【0058】
  より広い領域を監視するために、監視している伝送ビームに応答して、追加の受信ビームを形成する。あるいは、他の剪断波を生成し、伝送ビームおよび受信ビームを、剪断波が生成した点から異なる距離において供給する。上述した6mm×10mmの例では、36本の受信走査線を供給することができる。伝送ビームごとの4つの受信ビームでは、異なる横方向の空間に対して9回の工程を繰り返す。各受信ビームの位置に対して、動き情報の時間プロファイルが与えられ、超音波データによって表される。同一の剪断波を監視するための異なる走査線に沿った伝送は、時間プロファイルの形成の間回避され、より高次の時間分解能を提供するが、インタリーブあるいはシフティング走査位置を提供することもできる。
 
【0059】
  上述した議論は、1つの深さに対するものである。サンプリングは、関心領域の全軸範囲をカバーする1つのゲートを提供するように構成可能である。他の実施形態では、サンプルは、各受信ビームに対して複数の深さで得られる。横方向位置と同様に各軸深さに対して、別個の時間プロファイルが提供される。5mmに対して約200、10mmに対して400のような任意数の深さを用いることができる。
 
【0060】
  関心領域の異なる位置を表す超音波データが得られる。超音波データは、走査によりリアルタイムで得られる、あるいは、メモリから得られる。各位置に対して、動き情報は、異なる時点における応答を表す。他の走査、監視、技術を用いて、音波データを得て、剪断の大きさを推定することができる。
 
【0061】
  剪断速度を、組織の異なる空間的位置に対して検出する。各位置に対して、時間の関数としての変位を決定する。剪断速度は、剪断波の生成から異なる地点における剪断波の検出までの時間を決定することによって得られる。時間および位置までの距離が速度を決定する。距離は、走査線空間(例えば、剪断波を生成するための伝送ビームの位置および剪断波を検出するための受信ビームの位置)から分かる。時間は、剪断波の発生と検出との間の相対時間から分かる。
 
【0062】
  他の技術を用いて、プロファイルにおけるピークを検出することができる。例えば、回帰が適用される。剪断波速度は線形であるので、外れ値の自動検出を伴うロバスト線形回帰は、剪断波速度を示すことができる。関心領域におけるサンプル点の全てに対する超音波データは、時間の関数として距離に対して、あるいは、時間および距離によってプロットされる。線形回帰はプロットあるいはデータに適用され、データに合う線を提供する。線の傾きは剪断波速度を表す。
 
【0063】
  剪断波情報は、カラーオーバーレイあるいは表示値の他の調節のために用いられる。例えば、剪断波情報はBモード情報の上に、あるいは、ともに表示される。変位データは、表示フォーマットである、あるいは、表示フォーマットに走査変換されうる。変位データは、カラーあるいはグレースケールデータであるが、グレースケールあるいはカラースケールでマッピングする前のデータとすることもできる。情報を、線形にあるいは非線形に表示値にマップすることができる。
 
【0064】
  イメージは変位情報、例えば、異なる位置に対する剪断あるいは係数(剪断弾性係数)を表す。関心領域あるいは視野における格子点の全てに対して値が決定される場合、表示のピクセルは、その領域に対する剪断速度を表す。表示格子は、走査格子および/または変位が計算されるための格子とは異なってもよい。色、明度、輝度、色相、他の特性は、変位の関数として調節される。
 
【0065】
  イメージは、他のデータを含むことができる。例えば、Bモードデータあるいは同一の領域において組織、流体、造影剤を表す他のデータが含まれる。変位データは他のデータのオーバーレイに、あるいは、組み合わせに用いられる。他のデータは、ユーザが取り扱うべき組織に対するビームの位置を決定するのを支援する。
 
【0066】
  図7は、医用超音波剪断波イメージングにおける分類前処理用のシステム10の一実施形態を示す。システム10は、
図1の方法あるいはその他の方法を実施する。システム10は、伝送ビームフォーマ12と、トランスデューサ14と、受信ビームフォーマ16と、イメージプロセッサ18と、ディスプレイ20と、メモリ22と、を含む。さらに多くのあるいは少ないコンポーネントを設けることもできる。例えば、ユーザがシステムと対話するためのユーザ入力装置を設けることもできる。
 
【0067】
  システム10は、超音波イメージングの医用診断システムである。代替実施形態では、システム10は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、 PACSステーション、同位置またはネットワーク上に分散したリアルタイムまたは遅延型の画像収集のその他の装置である。
 
【0068】
  伝送ビームフォーマ12は、超音波伝送器、メモリ、パルサ(pulser)、アナログ回路、デジタル回路、あるいはその組み合わせである。伝送ビームフォーマ12は、種々の振幅、遅延および/または位相を有する、複数チャネル用の波形を生成するように動作する。生成した波形に応答して、トランスデューサ14から音波を伝送すると、1または複数のビームが形成される。一連の伝送ビームが生成され、2次元または3次元の領域を走査する。セクター、ベクター(登録商標)、リニアーあるいは他の走査形式を用いることができる。同一領域は複数回走査される。フローあるいはドップラーイメージングおよび剪断イメージングのために、一連の走査が用いられる。ドップラーイメージングでは、シーケンスは、隣接した走査線を走査する前に、同一の走査線に沿った複数のビームを含む。剪断イメージングでは、走査あるいはフレームインターリーブが用いられる(すなわち、再走査する前に全領域を走査する)。代替実施形態では、伝送ビームフォーマ12は、より高速走査のために平面波あるいは発散波を生成する。
 
【0069】
  同一の伝送ビームフォーマ12は、インパルス励起あるいは音響エネルギーを生成するための電気波形を生成し、変位を生じさせる。代替実施形態では、異なる伝送ビームフォーマがインパルス励起を生成するために設けられる。伝送ビームフォーマ12は、トランスデューサ14に、高密度焦点式超音波の波形を生成させる。
 
【0070】
  トランスデューサ14は、電気波形から音響エネルギーを生成するためのアレイである。アレイでは、相対遅延が音響エネルギーを集中させる。所定の伝送イベントは、実質的に同時に遅延が与えられた複数の要素による音響エネルギーの伝送に対応する。伝送イベントは、組織を変位させるための超音波エネルギーのパルスを供給する。パルスはインパルス励起である。インパルス励起は多数のサイクル(例えば、500サイクル)を有する波形を含むが、比較的短い時間で発生し、組織をより長い時間で変位させる。
 
【0071】
  トランスデューサ14は、圧電性あるいは容量性の膜要素の1次元、1.25次元、1.5次元、1.75次元、あるいは2次元のアレイである。トランスデューサ14は、音響エネルギーと電気エネルギーとを変換する複数の要素を含む。受信信号は、トランスデューサ14の要素に衝突する超音波エネルギー(エコー)に応答して発生する。要素は、伝送ビームフォーマ12と受信ビームフォーマ16のチャネルを接続する。あるいは、機械的焦点を有する単一要素が用いられる。
 
【0072】
  受信ビームフォーマ16は、振幅、遅延および/または位相回転を有する複数のチャネルと、1つ以上の加算器と、を含む。各チャネルは、1つ以上のトランスデューサ要素を接続する。受信ビームフォーマ16は、ハードウェアまたはソフトウェアによって構成され、相対遅延、位相および/またはアポディゼーションを適用し、各イメージング伝送に応答して、1つ以上の受信ビームを形成する。受信動作は、組織を変位させるのに用いるインパルス励起からのエコーに対して生じない。受信ビームフォーマ16は、受信信号を用いて、空間的位置を表すデータを出力する。相対遅延および/または位相と、異なる要素からの信号の加算は、ビーム形成を提供する。代替実施形態では、受信ビームフォーマ16は、フーリエ変換あるいはその他の変換を用いて、サンプルを生成するためのプロセッサである。
 
【0073】
  受信ビームフォーマ16は、フィルタ、例えば、第2高調波あるいは伝送周波数帯域に対する他の周波数帯域で情報を分離するためのフィルタを含むことができる。このような情報は、所望の組織、造影剤および/またはフロー情報を含むことが多い。他の実施形態では、受信ビームフォーマ16は、メモリすなわちバッファと、フィルタと、加算器と、を含むことができる。2つ以上の受信ビームが結合され、所望の周波数帯域で、例えば、第2高調波、第3高調波、あるいは他の帯域において、情報が分離される。
 
【0074】
  伝送ビームフォーマ12と連携して、受信ビームフォーマ16は、複数の時点における領域を表すデータを生成する。音響インパルス励起の後、受信ビームフォーマ16は、複数の時点における種々の線あるいは位置を表すビームを生成する。対象領域を超音波で走査することによって、データ(例えば、ビーム形成サンプル)は生成される。
 
【0075】
  受信ビームフォーマ16は、空間的位置を表すビーム加算データを出力する。単一位置に対するデータ、線に沿った位置、面積用の位置、体積用の位置が出力される。動的集束が提供可能である。データは、種々の目的のためである。例えば、種々の走査が、変位用ではなく、Bモードあるいは組織データ用に実行される。あるいは、Bモードデータを用いて、変位を決定することもできる。他の例として、変位に基づく分類用のデータおよび剪断イメージングは、一連の共有された走査とともに実行され、Bモードあるいはドップラー走査は別個に、あるいは、同一データの一部を用いて実行される。
 
【0076】
  プロセッサ18は、Bモード検出器、ドップラー検出器、パルス波ドップラー検出器、相関プロセッサ、フーリエ変換プロセッサ、特定用途向け集積回路、汎用プロセッサ、制御プロセッサ、イメージプロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、デジタル信号プロセッサ、アナログ回路、デジタル回路、その組み合わせ、ビーム形成された超音波サンプルから表示用の情報を検出および処理するための現在知られている、あるいは、将来開発される装置である。一実施形態では、プロセッサ18は、1つ以上の検出器と、別個のプロセッサと、を含む。別個のプロセッサは、制御プロセッサ、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、ネットワーク、サーバー、プロセッサ群、データパス、その組み合わせ、変位を決定し、変位プロファイル特性を計算するための現在知られている、あるいは、将来開発される装置である。例えば、別個のプロセッサは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアによって構成され、
図1に示す1つ以上の動作の組み合わせを実行する。
 
【0077】
  プロセッサ18は、音響インパルス励起によって導入された組織変位を推定するように構成されている。相関、トラッキング、動き検出、他の変位測定を用いて、組織の位置のシフト量が推定される。推定は、期間中、例えば、インパルスによって組織が動く前から組織が大部分あるいは完全に弛緩状態(例えば、インパルス励起によるストレスから回復した状態)に戻った後までの期間、複数回実行される。
 
【0078】
  プロセッサ18は、組織変位のプロファイルの特性を表す少なくとも1つのパラメータを導出するように構成されている。例えば、変位プロファイルの信号対雑音比が導出される。他の例として、変位プロファイルの最大変位が導出される。プロセッサ18は他のパラメータ、例えば、時間、空間、時間および空間におけるデータの統計を計算することもできる。例えば、各位置に対する時間および/または空間にわたる、平均Bモードあるいは音響インピーダンス値が計算される。
 
【0079】
  プロセッサ18は、領域中の組織を分類するように構成されている。組織は、流体組織あるいは固形組織とすることができる。組織の種類の間、組織と流体の間、組織の種類と1つ以上の他のクラスとの間で分類される。一実施形態では、プロセッサ18は、ある位置の材料を流体/流体組織、固形組織、他/非限定物として分類する。
 
【0080】
  分類は、少なくとも1つのパラメータに基づく。例えば、分類は、変位プロファイルの1つ以上の特性の値に基づく。信号対雑音比および最大変位は、このような特性の2つである。他の情報、例えば、他のデータの統計を分類に用いることもできる。
 
【0081】
  プロセッサ18はファジー理論、確率関数、ルックアップテーブル、あるいは他のプロセスを実施する。入力特性(例えば、変位プロファイルの特性)はプロセスに適用され、位置が分類(label)されるべきカテゴリが決定される。
 
【0082】
  プロセッサ18は、メモリ22あるいは医用超音波剪断波イメージングにおける分類前処理用の他のメモリに記憶された命令に従って動作する。プロセッサ18は、高密度焦点式超音波用のフィードバックを提供するようにプログラムされている。メモリ22は持続性コンピュータ可読記憶媒体である。本明細書に記載のプロセス、方法および/または技術を実行するための命令は、コンピュータ可読記憶媒体あるいはメモリ、例えば、キャッシュ、バッファ、RAM、リムーバブルメディア、ハードドライブ、他のコンピュータ可読記憶媒体で提供される。コンピュータ可読記憶媒体は、各種の揮発性および不揮発性の記憶媒体を含む。図面および明細書に記載された機能、動作、タスクは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶された1つ以上の命令セットに応答して実行される。機能、動作、タスクは、特定の種類の命令セット、記憶媒体、プロセッサ、プロセッシングストラテジには無関係であり、ソフトウェア、ハードウェア、集積回路、ファームウェア、マイクロコード等によって単独であるいは組み合わせて実行可能である。同様に、プロセッシングストラテジは、マルチプロセッシング、マルチタスキング、パラレルプロセッシング等を含むことができる。一実施形態では、命令は、ローカルシステムあるいはリモートシステムによって読み出されるリムーバブルメディア装置に記憶される。他の実施形態では、命令は、コンピュータネットワークあるいは電話線を介して伝送される遠隔地に記憶される。さらに他の実施形態では、命令は所定のコンピュータ、CPU、GPUあるいはシステム内に記憶される。
 
【0083】
  ディスプレイ20は、CRT、LCD、プロジェクタ、プラズマ、あるいは2次元画像または3次元画像を表示するその他のディスプレイである。ディスプレイ20は、プロセッサ18あるいはその他の装置によって、イメージとして表示されるべき信号を入力されるように構成されている。ディスプレイ20は、対象領域における異なる位置に対する剪断を表すイメージ、あるいは、全イメージを表示する。分類を用いて位置を分離する。固形組織に関連した位置は、調節され、剪断用の情報を含む。他の位置はマスクされ、剪断用の情報を含まない。その代わりに、他の位置は、剪断情報のより多いフィルタリングを被る。
 
【0084】
  以上のとおり、各種実施形態を参照して、本発明を説明したが、多数の変更および修正が、本発明の範囲を逸脱することなく可能であるということを理解されたい。それゆえ、詳細な説明は、制限するものではなく、例示的であり、本発明の精神を規定するものと意図しているのは、以下の特許請求の範囲であるということを理解されたい。