特許第6140978号(P6140978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6140978航空宇宙機ヨー発生システムおよび関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6140978
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】航空宇宙機ヨー発生システムおよび関連方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 9/02 20060101AFI20170529BHJP
   B64C 9/12 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B64C9/02 A
   B64C9/12
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-244567(P2012-244567)
(22)【出願日】2012年11月6日
(62)【分割の表示】特願2008-518185(P2008-518185)の分割
【原出願日】2006年6月2日
(65)【公開番号】特開2013-63769(P2013-63769A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2012年12月4日
【審判番号】不服2015-18737(P2015-18737/J1)
【審判請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】11/158,198
(32)【優先日】2005年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハリガン,ジェフリー・エス
(72)【発明者】
【氏名】ボーフレール,ヘンリー・エル
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 小原 一郎
【審判官】 一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5375793(US,A)
【文献】 米国特許第6491261(US,B1)
【文献】 米国特許第5564652(US,A)
【文献】 米国特許第4146200(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00- 1/70
B64C 1/00- 99/00
B64D 1/00- 47/08
B64F 1/00- 5/00
B64G 1/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分(112)と第2の部分(114)とを備えた胴体(110)とヨー発生システム(100)とを有する宇宙航空機 (101)であって、該ヨー発生システム(100)は
可動な制御表面(142)であって、収納されたとき、略水平面に広がり、該宇宙航空機(101)が流れ場(F)に位置したとき該制御表面(142)は偏向位置に可動であり、該位置では該制御表面(142)が該胴体(110)に隣接した流れパターンを発生するように位置し、該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、該流れパターンが圧力差(P1)を発生するように位置し、第1と第2の部分(112、114)とは該圧力差(P1)が該宇宙航空機(101)上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置した宇宙航空機 (101)において、
該制御表面(142)が第1の制御表面(142a)を含み、
該システムはさらに、第2の制御表面(142b)を有し、収納されたとき、略水平面に広がり、第1と第2の制御表面(142a、142b)が該胴体(110)に対して少なくとも略対称に位置し、第1の制御表面(142a)が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面(142b)が選択された位置に位置づけ可能であり、
第1のウィングセクション(120a)が該胴体(110)に結合され、第1の制御表面(142a)が第1のウィングセクション(120a)に結合され、
第2のウィングセクション(120b)が第1のウィングセクション(120a)とはほぼ反対に該胴体(110)に結合され、第2の制御表面(142b)が第2のウィングセクション(120b)に結合され、
第1の制御表面(142a)の該偏向位置において、かつ第2の制御表面(142b)の該選択された位置において、
第1の制御表面(142a)は、いくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させ、圧力差(P1)を発生するように流れパターンを生成するように位置づけられ、前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及び第2のウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置したスポイラであり、該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成されることを特徴とする、宇宙航空機。
【請求項2】
ヨー発生方法であって、該方法は、
宇宙航空機(101)の胴体(110)に隣接して、可動な制御表面(142)を位置づけることであって、該胴体(110)は、第1の部分(112)と第2の部分(114)とを有し、
該可動な制御表面(142)は収納されたとき、略水平面に広がり、偏向された位置に可動であり、該偏向された位置において該制御表面(142)が、該宇宙航空機(101)が流れ場(F)に位置したとき流れパターンを発生するように位置し、該流れパターンは該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、圧力差(P1)を発生するように位置づけられており、該胴体(110)の第1と第2の部分(112、114)は該圧力差(P1)が該宇宙航空機(101)の上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置した、該可動な制御表面(142)を位置づけることを含んでおり、
−該可動な制御表面(142)は、第1と第2の制御表面(142a、142b)を含み、該第1と第2の制御表面(142a、142b)が、該胴体(110)に対して水平面内に、少なくとも略対称に位置し、第1の制御表面(142a)が該偏向位置に置かれたとき、第2の制御表面(142b)が選択された位置に位置づけ可能であり、該方法はさらに、
−第1の制御表面(142a)を第1のウィングセクション(120a)に結合することと、第1のウィングセクション(120a)を該胴体(110)に結合することと、
第2のウィングセクション(120b)を該胴体(110)に該胴体(110)に対して第1のウィングセクション(120a)のほぼ反対に結合することと、第2の制御表面(142b)を第2のウィングセクション(120b)に結合することとを含み、
−該偏向位置において、該制御表面(142)が該胴体(110)の第1の部分(112)と該胴体(110)の第2の部分(114)との間で、圧力差(P1)を発生するように位置した流れパターンを生成し、該宇宙航空機(101)の上にヨーモーメント(Ym1)を生成するように位置づけられることは、第1の制御表面(142a)がいくつかの領域では、流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静的な圧力を減少させ、さらに該流れの他の部分を減速させて、動圧を低減し局部的圧力または静的な圧力を増加させるように位置づけられることを含み、前記第1及び第2の制御表面が該胴体からそれぞれ前記第1及びの第2ウイングセクションの先端に向かって3分の1内に位置したスポイラであり、該スポイラの制御によってのみ、該流れパターン、該圧力差(P1)及び該ヨーモーメント(Ym1)が生成されることを特徴とした、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スポイラ表面を使用して航空宇宙機の胴体に低圧力領域を発生させてヨーイングモーメントを引き起こすことを含む、航空宇宙機ヨー発生システムおよび関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
航空機は概ね、一定の方向安定性および制御特性を有することが求められる。これらの特性を達成するために、航空機は概ね垂直安定板および方向舵を有する。大型の複数エンジン航空機の垂直安定板のサイズ、方向舵(単数、複数)のサイズ、および方向舵アクチュエータのパワー(関連油圧システム(単数、複数)のサイズおよび/または動作圧力を含む)は一定のエンジンアウト可制御性必須条件により決定されることが多い。例えば航空機認可時に、政府機関(例えば、連邦航空局)は、選択状態におけるエンジン不具合に対する地上および飛行中の最低制御速度を決定するように製造業者に求めていることが多い。
【0003】
飛行中の最低制御速度は、臨界発動機が突然動作不能になったとき、特定動作状態時に飛行機の制御を維持することが可能である較正対気速度を含み得る。地上での最低制御速度は、選択動作状態時に突然臨界発動機が動作不能となったときに、通常のパイロット技術を使用しつつ、方向舵制御だけを使用して飛行機の制御を維持することが可能である、離陸滑走時の較正対気速度を含み得る。概して、航空機がより高い最低制御速度を有するほど、航空機は離陸および/または着陸に対してより多くの滑走路が必要である。従って、低い最低制御速度を有するように航空機を設計することが望ましい。
【0004】
低い最低制御速度は概ね、大きな垂直安定表面、より大きな方向舵表面、およびパワーのある方向舵アクチュエータ(例えば、高速移動および/または強力方向舵アクチュエータ)を必要とする。より大きな表面および/またはパワーのあるアクチュエータは航空機の重量を増し、多くの場合、複雑性および製造コストを上げる。加えて、より大きな表面は飛行の種々の局面において(例えば、巡航飛行)抗力を増加させて、燃料使用およびコストを上げることになる。
【0005】
本明細書に参照として完全に組み込まれる、1994年12月27日に発行された米国特許第5,375,793号に記載されるように、製造業者はフライバイワイヤ飛行制御システムを使用して瞬時に補助翼および/またはスポイラを偏向してウィング上に抗力を引き起こし、それによりヨーイングモーメントを生じさせ、一定のエンジンアウト状態時において方向舵により引き起こされるヨーイングモーメントを補うようにすることを考えた。従って、ヨーイングモーメントは引き起こされる抗力の量と、流体抵抗が加わる場所と重力における航空機中心(c.g.)との間の距離とに比例する。ヨーイングモーメントを増加させるためには抗力を増加させなければならない、および/またはさらにc.g.から力を加えなければならない。この解決策の問題点は、抗力の増加により航空機の推力対抗力(thrust−to−drag)の比率が低減し、これによりエンジンアウト性能(例えば、航空機が加速する能力)を落とし得るということである。この解決に対する別の問題点は、航空機のc.g.からさらに流体抵抗を生み出すには、ウィングの外側(outboard)部分のスポイラまたは補助翼の偏向が必要であり、これは多くの場合、航空機上にローリングモーメントを生成する。このローリングモーメントを補償するために、他の飛行制御表面が偏向されなければならず、パイロットの作業負荷を増加させ、飛行制御複雑性および/または全航空機抗力を増大させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,375,793号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は概ね、スポイラ表面を使用して、航空宇宙機の胴体の第1の部分と第2の部分との間に圧力差を発生させることを含む、ヨー発生システムおよび関連方法に向けられている。延いては圧力差はヨーイングモーメントを引き起こし得る。本発明の態様は、第1の部分と第2の部分とを備えた胴体を有する航空宇宙機を含み得る、ヨー発生システムに向けられている。システムは、胴体に連結されて概ね水平面上に延びる可動制御表面をさらに含み得る。制御表面は、航空宇宙機が流れ場に位置すると、胴体に隣接した流れパターンを引き起こすように制御表面が位置付けられる偏向位置に移動可能であり得る。流れパターンは、胴体の第1の部分と胴体の第2の部分との間に圧力差を引き起こすように位置付けられ得る。第1および第2の部分は、圧力差が航空宇宙機上にヨーイングモーメントを生成するように位置し得る。
【0008】
本発明の他の態様は、航空宇宙機の胴体に隣接して可動制御表面を位置させる工程を含み得るヨー発生システムを作る方法に向けられている。胴体は第1の部分と第2の部分とを有し得る。方法は可動制御表面を胴体に連結する工程をさらに含み得る。制御表面は概ね水平面上に延び得、偏向位置に移動可能であり得る。偏向位置では、航空宇宙機が流れ場に位置すると、制御表面が流れパターンを引き起こすように位置付けされ得る。流れパターンは、胴体の第1の部分と胴体の第2の部分との間に圧力差を引き起こすように位置し得る。胴体の第1および第2の部分は圧力差が航空宇宙機上にヨーイングモーメントを生成するように位置し得る。
【0009】
本発明のさらに他の態様では、流れ場に航空宇宙機を置く工程を含み得る、ヨーイングモーメントを引き起こす方法に向けられている。方法は偏向位置に制御表面を位置付けて、胴体の第1の部分と胴体の第2の部分との間に圧力差を引き起こし、航空宇宙機上にヨーイングモーメントを生成する工程をさらに含み得る。制御表面は胴体に連結され得、かつ(a)概ね水平面上に延びるか、(b)制御表面が胴体の表面に概ね揃えられる収納位置と、制御表面が胴体の第1の側面から外側に向かって第1の側面に対向した胴体の第2の側面から離れて延び得る偏向位置との間で移動可能であるか、または(c)(a)と(b)の両方であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態によるヨーイングモーメントを引き起こすためのシステムの等角図である。
図2図1に示されるシステムの飛行制御システム部の概略図である。
図3】推力非対称がなく、方向舵表面偏向がなく、また第1の制御表面および第2の制御表面は共に第1の選択位置にある、図1に示されたシステムの一部の等角図である。
図4】第1の制御表面が第1の偏向位置にあり、第2の制御表面は第1の選択位置にある、図3に示されたシステムの一部の等角図である。
図5】第1の制御表面が第2の偏向位置にあり、第2の制御表面は第2の選択位置にある、図3に示されたシステムの一部の等角図である。
図6】長い線6−6に沿った図5に示されたシステムの一部の部分的概略断面図である。
図7】長い線7−7に沿った図5に示されたシステムの一部の部分的概略断面図である。
図8】本発明の他の実施形態による、航空宇宙機の胴体に連結された制御表面でヨーイングモーメントを引き起こすためのシステムの等角図である。
図9】第1の制御表面が偏向位置にあり、第2の制御表面は選択位置にある、図8に示されたシステムの等角図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態による、航空宇宙機の胴体に連結された他の制御表面でヨーイングモーメントを引き起こすためのシステムの等角図である。
図11】第1の制御表面が偏向位置にあり、第2の制御表面は選択位置にある、図10に示されたシステムの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示は、スポイラ表面を使用して航空宇宙機の胴体の第1の部分と第2の部分との間に圧力差を発生させて、ヨーイングモーメントを引き起こすことを含む、航空宇宙機ヨー発生システムおよび関連方法を記載する。本発明のある実施形態の徹底した理解を提供するように、本発明のいくつかの特定の詳細が以下の説明および図1乃至図7において述べられる。しかしながら、当業者は、本発明がさらなる実施形態を有し、本発明の他の実施形態は下記に記載される特定の特徴のいくつかがなくても実践され得ることを理解するであろう。
【0012】
図1は、制御表面を使用して、航空宇宙機の胴体の第1の部分と第2の部分との間に圧力差を発生させ、ヨーイングモーメントを引き起こすシステムの実施形態を図示する。図2乃至図7は、図1に示されるシステムの動作のさらなる詳細を図示する。下記に記載される本発明のある実施形態は、選択動作状態時において(例えば、離陸時のエンジン損失時)、航空機ヨー制御および/または方向安定性を増大させるのに使用され得る。
【0013】
図1では、ヨー発生システム100は、胴体110を備える航空宇宙機101と、複数のウィングセクション120と、飛行制御システム130と、胴体110上に圧力差を引
き起こして航空宇宙機101上にヨーイングモーメントを生成するように構成される少なくとも1つの制御表面を含む制御装置(単数、複数)140とを含む。図示される実施形態では、胴体110は、第1の側面111と、図1におけるX−Z面(例えば、ロールおよびヨー軸によって定義される胴体に対する垂直平面)に対して第1の側面111に概ね対向する第2の側面113とを含む。第1のウィングセクション120aは胴体110の第1の側面111に隣接して位置し、第2のウィングセクション120bは胴体110の第2の側面113に隣接して位置する。
【0014】
他の実施形態では、システム100は、より多くのもしくはより少ないウィングセクション(単数、複数)120および/または他の構成を有するウィングセクション(単数、複数)120を含み得る。例えば、ウィングセクション120は、概ね横方向に延び(例えば、表面は上反角もしくは下反角を有して、または有さずに図1に示すY軸に概ね平行して延び得る)、流れ場Fに置かれると揚力を発生させるように構成される、任意の表面または翼セクションの一部を含み得る。例えばある実施形態では、システム100は、先尾翼の部分および/または主翼の部分を含む他のウィングセクションを含むウィングセクション120を含み得る。他の実施形態では、ウィングセクション(単数、複数)120は胴体110に直接接続されずに胴体110に連結される。例えばウィングセクション120は、胴体110の上部または下部に吊り下げられる翼セクション(例えば、複葉機または三葉機構成)を含み得る。
【0015】
図示される実施形態では、制御装置140は、動作時または飛行時において航空宇宙機101を制御するようにモーメントまたは力を発生し得る装置(例えば、姿勢スラスタ(attitude thruster)、空気力学的表面、および推力偏向ノズル)を含む。図1では、制御装置140は、制御表面142と、方向舵表面141と、他の制御装置143とを含む。他の実施形態では、システム100はより多くのまたはより少ない制御装置140を含み得る。
【0016】
図1では、制御表面142は、第1のウィングセクション120aに連結される第1の制御表面142aと第2のウィングセクション120bに連結される第2の制御表面142bとを含む。図示される実施形態では、第1および第2の制御表面142a、142bは、少なくともおおよそ胴体に対してX−Y面(例えば、水平面)上に対称的に位置するスポイラ表面を含む。他の実施形態では、システム100は制御表面142の他の配置と、他のタイプの制御表面142と、より多くのまたはより少ない制御表面142とを含み得る。例えば他の実施形態では、制御表面142はフラップまたは補助翼表面を含み得る。
【0017】
図1では、第1の制御表面142aは偏向位置において示されている。偏向位置では、第1の制御表面142aは、航空宇宙機101が流れ場Fに位置すると、胴体110に隣接して少なくとも1つの流れパターンを引き起こすように位置付けられる。図示された実施形態では、第1の制御表面142aは、翼幅(例えば、胴体から先端)の3分の1内に位置し、胴体110の第1の部分112と胴体110の第2の部分114との間に第1の圧力差P1を引き起こすように位置付けられた、胴体110に隣接した第1の流れパターンを引き起こしている。図示される実施形態では、胴体の第1および第2の部分112、114は、第1の圧力差P1が航空宇宙機101の“c.g.”(重心)から若干離れて第1の横力S1を生成し、航空宇宙機101のヨー軸Z回りに第1のヨーイングモーメントYm1を生成するように位置する。図示される実施形態では、第1の横力S1はc.g.の後部に位置する。他の実施形態では(例えば、第1の制御表面142aは先尾翼上に位置する)、第1の横力S1はc.g.の前に位置して、反対方向に第1のヨーイングモーメントYm1を生成し得る。
【0018】
図示される実施形態では、胴体110の第1の部分112は胴体110の第1の側面111上に位置し、胴体110の第2の部分114は胴体110の側面113上に位置するが、第1および第2の部分は互いに直接対向して位置しない。他の実施形態では、第1および第2の部分112、114は、X−Z面に対して互いに直接対向して位置付けられる。さらに別の実施形態では、第1および第2の部分112、114は、ヨーイングモーメントYm1を生成する他の位置を有し得る。上述のように、図1では第1の制御表面142aは翼幅の3分の1内に位置するが、第1の制御表面142aは偏向位置が胴体上で第1の圧力差を引き起こし得る他の場所を有し得ることが理解される。
【0019】
ある実施形態では、第1の制御表面142aは、航空宇宙機101が流れ場Fに位置すると、偏向位置に位置付けられて流れ体102(例えば、方向安定板(directional stabilizer)、垂直尾翼、V尾翼、方向舵表面または垂直尾翼)に隣接した第2の流れパターンを引き起こす。本明細書で使用されるように、流れ体102は胴体以外の航空宇宙機101上の任意の流れ体102を示す。第2の流れパターンは、流れ体102の第1の部分103と流れ体102の第2の部分104との間に第2の圧力差P2を引き起こすように位置付けられ得る。図示される実施形態では、流れ体102の第1および第2の部分103、104は、第2の圧力差P2が航空宇宙機101のc.g.から幾分離れて第2の横力S2を生成し、航空宇宙機101上に第2のヨーイングモーメントYm2を生成するように位置する。
【0020】
図1では、流れ体102は、航空宇宙機101のc.g.の後部に位置する垂直安定板を含む。従って、第2の横力S2はc.g.の後部に位置する。他の実施形態では、第2の横力S2はc.g.の前に位置して、反対方向に第2のヨーイングモーメントYm2を生成し得る(例えば、第1の制御表面142aが先尾翼に位置し、流れ体102がc.g.の前方に位置付けられている場合)。
【0021】
ある実施形態では、第1の制御表面142aにより引き起こされた第1のヨーイングモーメントYm1または第1および第2のヨーイングモーメントYm1、Ym2を使用して、選択動作状態時において航空宇宙機101の方向安定性および/または方向制御を提供または増強し得る。選択動作状態は、航空機に対する選択流れ場状態(例えば、対気速度、迎え角、横滑り角、高度、および環境気圧)、選択航空機構成(例えば、種々の飛行制御表面の位置および/または種々のシステムの操作性)、選択操作者コマンド(例えば、パイロットからの制御入力)、および/または航空宇宙機101が地上にあるかまたは飛行中であることを含み得る。
【0022】
例えば、選択実施形態では第1のヨーイングモーメントYm1を使用して、全飛行エンベロープを通じて垂直安定表面なしで航空機の方向安定性および制御を提供し得る。他の実施形態では、方向舵システムが部分的または完全に故障した場合に、第1のヨーイングモーメントYm1または第1および第2のヨーイングモーメントYm1、Ym2を使用して、垂直安定板および方向舵システムで、航空機の方向安定性および/または方向制御を提供し得る。さらに他の実施形態では、さらなる安定性および/または制御が必要な場合に、第1のヨーイングモーメントYm1または第1および第2のヨーイングモーメントYm1、Ym2を使用して、飛行エンベロープの選択コーナーにおいて航空機の方向安定性および/または方向制御を増強し得る。
【0023】
またさらに他の実施形態において、第1のヨーイングモーメントYm1または第1および第2のヨーイングモーメントYm1、Ym2を使用して、非対称推力状態(例えば、推力損失、エンジン故障またはエンジンアウト状態)にある航空機の方向安定性および/または方向制御を提供し得る。図1では、航空宇宙機101は地上150にあり、右エンジン105b上の推力を損失して非対称推力状態を引き起こしている。左エンジン105a
は尚、推力Tを生成している。推力Tは航空宇宙機101のc.g.から側方に幾分離れて位置するので、推力Tは航空宇宙機101上に推力ヨーイングモーメントYmtを引き起こす。共に流れ体102に連結される上部方向舵表面141aおよび下部方向舵表面141bは偏向されていて、航空宇宙機101のc.g.後方に方向舵横力Srを引き起こし、それにより概ね推力ヨーイングモーメントYmtに対向する方向舵ヨーイングモーメントYmrを生成する。
【0024】
また、第1の制御表面142aを使用して、推力ヨーイングメモーメントYmtに対向するようにヨーイングモーメントを生成する。図1では、第1の制御表面142aは偏向されており、上述のように第1および第2ヨーイングモーメントYm1、Ym2を生成するが、これも推力ヨーイングモーメントYmtに概ね対向する。加えて、偏向位置において第1の制御142aはまた流れ場Fと相互作用して流体抵抗Dを生成し得る。流体抵抗はc.g.から側方に幾分離れて位置するので、流体抵抗Dは抗力ヨーイングモーメントYmdを引き起こし得、これもまた概ね推力ヨーイングモーメントYmtに対向している。ある実施形態では、抗力ヨーイングモーメントYmdは第1のヨーイングモーメントYm1および/または第2のヨーイングモーメントYm2よりも小さい。選択動作状態時においては、第1のヨーイングモーメントYm1と第2のヨーイングモーメントYm2と方向舵ヨーイングモーメントYmrと抗力ヨーイングモーメントYmdは、ネットヨーイングモーメントYmnetがバランスを取れるように、またはゼロ値をとるように、推力ヨーイングモーメントYmtに対抗し得る。
【0025】
他の実施形態では、航空宇宙機101はより多くのもしくはより少ないエンジン150および/またはより多くのもしくはより少ない方向舵表面141を有し得る。さらに他の実施形態では、航空宇宙機はヨー軸Z回りに作用するより多くのまたはより少ないヨーイングモーメントを有し得、および/またはヨーイングモーメントは異なる方向を有し得る。例えばある実施形態では、故障したエンジンはまたさらなるヨーイングモーメントを引き起こす流体抗力を生成し得、および/または第1の制御表面142aは第2のヨーイングモーメントYm2を生成しない。さらに他の実施形態では、システム100は制御表面142を1つだけ含み、離陸時の臨界発動機の損失時に方向制御を提供するのに他の制御装置(単数または複数)140を補助する。本明細書で使用するように、臨界発動機はエンジンが離陸時に損失して、かつ離陸が続行される場合に、滑走路中心線からの最大逸脱を引き起こす複合エンジン航空機上のエンジンを含む。図1では地上の航空宇宙機101が示されているが、他の実施形態では航空宇宙機101は飛行中で、このとき第1の制御表面142aは第1のヨーイングモーメントYm1または第1および第2のヨーイングモーメントYm1、Ym2を引き起こすように偏向される。
【0026】
ある実施形態では、第1の制御表面142aは航空宇宙機101のロール軸X周りにネットローリングモーメントRmnetを引き起こさずに第1および/または第2のヨーイングモーメントYm1、Ym2を生成し得る。例えば、図1では第1の制御表面142aが偏向位置にある場合、第1のウィングセクション120aにより引き起こされる第1の量の揚力L1は第2のウィングセクション120bにより引き起こされる第2の量の揚力L2よりも小さい。従って、揚力ローリングモーメントRmlが引き起こされ得る。従って、第1の横力S1、第2の横力S2、および方向舵横力Srは、航空宇宙機101のc.g.より上部に位置付けられるので第1のローリングモーメントRm1、第2のローリングモーメントRm2および方向舵ローリングモーメントRmrがそれぞれ生じる。図示された実施形態では、第1のローリングモーメントRm1、第2のローリングモーメントRm2および方向舵ローリングモーメントRmrは概ね揚力ローリングモーメントRmlと対向し、その結果バランスの取れた、またはゼロ値を有するネットローリングモーメントRmnetが生じる。この特徴は、航空宇宙機が地上またはその付近で操作される場合、および/またはコックピットの作業負荷が高い場合に特に有利であり得る。
【0027】
他の実施形態では、航空機はロール軸X回りに作用するより多くのまたは少ないローリングモーメントを有し得、および/またはローリングモーメントが異なる方向を有し得る。例えば、ある実施形態において、第1の制御表面142aは偏向位置に移動される際に揚力の損失がないように構成され得る。他の実施形態では、第1の横力S1、第2の横力S2および/または方向舵横力Srはローリングモーメントを全く引き起こさないか、または図1に示すのとは異なる方向にローリングモーメントを引き起こすように位置し得る。さらに他の実施形態では、他の制御装置140を使用してネットローリングモーメントRmnetのバランスを取り得る(例えば、補助翼または姿勢スラスタ)。
【0028】
図1において、第1の制御表面142aは制御システム130に連結される。図2は、コンピュータ135(例えば、プログラム可能飛行制御コンピュータ)、インセプタ131(例えば、パイロット操縦桿またはヨーク)、センサ132および種々のアクチュエータ133を含む制御システム130のさらに詳細を示す部分的概略図である。制御システム130は、電気制御システム、機械制御システム、または両者の組み合わせを含み得る。制御システム130は、着陸ギアシステム106および制御装置140を含む種々の航空機システムに連結され得る。制御装置140は、制御表面142および方向舵表面141(図1を参照して上述された)ならびに姿勢スラスタ、推力偏向ノズルおよび空気力学的表面を含む他の制御装置143を含み得る。例えば他の空気力学的表面は後縁フラップ、前縁装置、補助翼表面、スポイラ表面、昇降舵表面およびスピードブレーキを含み得る。
【0029】
図2において、コンピュータ135は第1のアクチュエータ133aおよび第2のアクチュエータ133bを介して上部方向舵表面141aに連結されて、上部方向舵表面に冗長を提供する。例えば、上部方向舵表面141aに連結された各アクチュエータ133は別個の動力システム(例えば、別個の油圧システム)により動作され得、一方の動力システムが故障しても他方の動力システムは尚上部方向舵表面141aを動かすようにアクチュエータを動作し得る。同様に、コンピュータ135は第3のアクチュエータ133cおよび第4のアクチュエータ133dを介して下部方向舵表面141bに連結される。加えて、コンピュータ135は第5のアクチュエータ133eにより第1の制御表面142aに、および第6のアクチュエータ133fにより第2の制御表面142bに連結され得る。ある実施形態では、1つ以上の方向舵表面の制御が失われるかまたは悪化しても、第1および第2の制御表面142a、142bがヨー制御を提供し得るので、各方向舵表面141上のアクチュエータ133の数が低減され得る。
【0030】
図示された実施形態では、センサ132はコンピュータ135に情報を提供し得、コンピュータ135はこの情報を使用して制御装置140に対するコマンドを決定し得る。例えば、ある実施形態では、センサ132は対気速度、高度、温度、制御装置位置、迎え角、横滑り角、姿勢、慣性軌道および/または種々の航空宇宙機システムの状態を含むパラメータを検知し得る。他のセンサ132(例えば、アップロックセンサ、ダウンロックセンサ、および/またはホイールセンサ上の重み)は、着陸ギアシステムの状態に関する情報を提供し得る。インセプタ131はコンピュータ135への所望の航空機応答を表す操作者コマンドを提供し得る。コンピュータ135はこれらのコマンドおよびデータをセンサ132から受信して、制御装置140に対するコマンドを決定し得る。
【0031】
飛行制御システムは、航空宇宙機の動作状態および/またはコマンドに基づいて、制御表面142をいつ偏向位置に移動させるべきか、偏向位置に関連付けられた制御偏向量および/または制御表面142が偏向位置に留まっている時間量を決定し得る。例えば、第1および/または第2の制御表面142a、142bは、インセプタ131を介して行われた操作者選択に応答して、または飛行制御システムにより自動的に送信された信号に応
答して、またはその両方に応答して、偏向位置に移動され得る。他の実施形態では、第1および/または第2の制御表面142a、142bは、飛行制御システム130により自動的に制御されるだけで、選択状態時においてのみ(例えば、航空宇宙機が選択対気速度範囲で動作していて、飛行中および/または地上にあるときの非対称推力状態時においてのみ)動作する。さらに他の実施形態では、第1および第2の制御表面142a、142bは、インセプタ131による操作者入力を介してのみ偏向位置へ移動される。
【0032】
さらに他の実施形態では、飛行制御システム130はより多くのまたは少ないインセプタ131、センサ132、アクチュエータ133、コンピュータ135および/または他の素子を含むより多くのまたは少ない素子を有し得、より多くのまたは少ない制御装置140に連結され得る。例えば、ある実施形態では飛行制御システム130はコンピュータ135を含まず、インセプタ(単数、複数)は制御表面142または制御表面142に連結されたアクチュエータ133への直接入力(例えば、機械的または電気的)を提供するように構成される。アクチュエータ133は、機械的、電気的、油圧式および/または空気圧式アクチュエータを含む、任意のタイプのアクチュエータを含み得る。他の実施形態では、制御表面142はアクチュエータを使用せずにインセプタ131に機械的にリンクされる。
【0033】
胴体110および流れ体102に隣接した、制御表面により引き起こされた流れパターンについては、図3乃至図5を参照してさらに詳細に説明される。図3は、推力非対称がなく、方向舵表面偏向がなく、かつ制御表面も図1を参照して上述したような偏向位置にない、図1に示されるシステムの一部の等角図である。図3においては、第1および第2の制御表面142a、142bは第1および第2のウィングセクション120a、120bに対してそれぞれ対称的に位置付けられる。流れ線160は、胴体110および流れ体102に隣接する流れパターンが図1を参照して述べられたX−Z面に対して少なくともおおよそ対称的であることを示す。
【0034】
図4では、第1の制御表面142aは第1の偏向位置に移動され、一方第2の制御表面142bは静止したままである。図示された実施形態では、第2の制御表面は第1の選択位置(例えば、非偏向、揃えられた、収縮した、および/または収納された位置)にある。本明細書で使用されるように、選択位置は偏向位置において第1の制御表面142aが第1のヨーイングモーメントYM1を発生する胴体110に隣接した少なくとも1つの流れパターンを引き起こすことを可能とする、第2の制御表面142bの任意の位置であり得る。図4の流れ線160により示されるように、第1の制御表面142aはいくつかの領域(例えば流れ線160が共に密接している場所)では流体の流れの一部を加速し、それにより動圧を増加させ、局部的圧力または静圧を減少させる。流れの他の部分は減速されて、動圧を低減し局部的圧力または静圧を増加させ得る。従って、胴体110の第1の部分112と胴体110の第2の部分114との間に圧力差を引き起こす流れパターンが胴体110に隣接して引き起こされる。圧力差は第1の横力S1を引き起こし、第1の横力S1は延いては第1のヨーイングモーメントY1を生成する(図1に示す)。同様に、第1の制御表面142aは流れ体102に隣接した流れパターンを引き起こし、流れ体102の第1の部分103と流れ体102の第2の部分104との間に圧力差を引き起こす。圧力差は第2の横力S2を引き起こし、第2の横力S2は第2のヨーイングモーメントYm2を生成する(図1に示す)。他の実施形態では、第1の偏向位置にある第1の制御表面142aは、単一の横力しか引き起こさない(例えば、第1の横力S1しか引き起こさない)。さらに他の実施形態では、第1の偏向位置における第1の制御表面142aは、航空宇宙機の他の選択部分に隣接した流れパターンに影響を及ぼすことにより、航空宇宙機の他の選択位置上に横力と対応モーメントとを引き起こし得る。
【0035】
他の実施形態では、第1および第2の制御表面142a、142bは複数の選択および
/または偏向位置を有し得る。例えば、図5図3に示すシステム100の一部の等角図であり、第1の制御表面142aは第2の偏向位置(例えば、図4に示されるものより大きな偏向を有する偏向位置)にあり、第2の制御表面142bは第2の選択位置(例えば、非収縮または揃っていない位置)にある。図6は、線6−6に沿った図5に示されるシステム100の一部の部分的概略断面図である。図7は、線7−7に沿った図5に示されるシステム100の一部の部分的概略断面図である。第2の偏向位置では、第1の制御表面142aは第1のウィングセクション120aに対して第1の量144aだけ偏向される(図6)。第2の選択位置では、第2の制御表面142bは第2のウィングセクション120bに対して第2の量144bだけ偏向される(図7)。第2の制御表面142bが第2の選択位置にあり、第1の制御表面142aが第2の偏向位置ある状態で、第1の制御表面142aはやはり胴体110に隣接する流れパターンを引き起こし、圧力差を引き起こす。延いては、圧力差は航空宇宙機101上にヨーイングモーメントを生成する。
【0036】
例えば、図6および図7に示すように、第2の偏向量144bは第1の偏向量144aよりも小さくあり得、それ故に胴体に隣接する流れパターン(単数、複数)への影響をより少なくし得る。第1および第2の偏向量144a、144bは、種々のタイプの単位を使用して測定し得る。例えば、ある実施形態では第1の偏向量144aは第1の制御表面142aに関連付けられた基準(例えば、制御表面翼弦線)と第1のウィングセクション120aに関連付けられた基準(例えば、ウィングセクション翼弦線)との間の第1の角度量A1(図6)を含み得る。他の実施形態では、偏向の第1の量144aは第1の制御表面142aに関連付けられた基準とウィングセクション120aに関連付けられた基準との間の第1の直線または曲線距離d1(図6)を含む。第2の偏向量も、概ね同様の方法、例えば、第2の角度量A2(図7)または第2の距離d2(図7)で測定し得る。
【0037】
ある実施形態では、図5乃至図7を参照して上述された特徴により、なお方向安定性および/または制御を提供しつつ、他の目的に第1および第2の制御表面を使用することを可能とし得る。例えば、第1および第2の制御表面142a、142bがスポイラ表面を含む場合、スポイラ表面は胴体のX−Z面に対して対称的に偏向され、ヨーイングモーメントを引き起こさずに抗力を提供する、または揚力を低減し得る。スポイラ表面はまた、図5に示すように種々に偏向され、ヨーイングモーメントを生成しつつ抗力を提供、または揚力を低減し得る。例えば、抗力を提供するために制御表面が拡げられる場合、(a)一方の表面上の偏向は低減され得る(例えば、選択位置へ)が、一方他の表面は拡張位置(例えば偏向位置)に固定されたままであるか、(b)一方の表面の偏向は増加され得(例えば、偏向位置へ)、他方の表面は拡張位置(例えば、選択位置へ)に固定されたままであるか、または(c)一方の表面の偏向は低減され得(例えば、選択位置へ)、他方の表面の偏向は増加され得(例えば、偏向位置へ)、航空宇宙機上のヨーイングモーメントを提供し得る。
【0038】
他の実施形態では、システムは異なる配置を有し得る。例えば、ある実施形態では胴体に隣接する流れパターンは非対称であり得るが、第1または第2の制御表面142a、142bが偏向位置に移動する前はヨー軸回りのネットヨーイングモーメントがバランスを取るように位置付けられ得る。さらに他の実施形態では、第1の制御表面142aは第3の偏向位置まで下向き方向に偏向され、胴体の底部または航空宇宙機の他の部分に隣接した流れパターンに影響を与えて横力を発生させるかまたはヨーイングモーメントを生成し得る。例えば、第1の制御表面142aは、下向き方向に偏向されて横力を発生させてヨーイングモーメントを生成するフラップを含み得るであろう。ある実施形態では、第1の制御表面142aは図4に示すように第1の偏向位置まで上向きに偏向され、第2の制御表面142bは第3の偏向位置まで下向きに偏向されて、胴体110の種々の部分上に1つ以上の流れパターンを引き起こして、航空宇宙機上に1つ以上のヨーイングモーメントを生成し得る。
【0039】
上述の実施形態の少なくともいくつかにおける特徴は、ウィングセクションに連結された制御表面を使用して、航空宇宙機上にヨーイングモーメントを生成し得ることである。例えば、スポイラ表面を使用して、1つ以上の選択動作状態時に方向安定性および/または制御を提供し得る。ある実施形態では、スポイラ表面を使用して低対気速度で非対称推力状態時にヨー制御を増強し得るので、この特徴により垂直尾翼サイズの低減または最低制御速度(例えば、地上または飛行機)の低減が可能となり得る。例えば、航空機が離陸ロール時に低速度でエンジンを損失した場合、胴体上に圧力差を引き起こすように制御表面は偏向位置まで移動され得る。延いては、圧力差は、エンジンアウト状態により発生したヨーイングモーメントに対向する際に方向舵および垂直尾翼表面を補助するヨーイングモーメントを引き起こし得る。航空機が離陸ロール時に加速し続けて方向舵および垂直尾翼表面がより効果的になると、スポイラ表面は収納され得る。この特徴に対する利点は、より低い最低制御速度により航空機がより大きな重みで離陸可能となり得ることである。この特徴の別の利点は、同じ最低制御速度を維持しつつ、航空機の垂直尾翼サイズが低減され得、さらに大きい垂直尾翼を必要とする航空機と比較すると垂直尾翼を生産する材料が少なくて済み、これにより製造コストおよび航空機重量を低減し得るということである。また、より小さい垂直尾翼は少ない抗力を生じ、作業コストを低減する。最大限、尾翼を無くし得る。
【0040】
方向舵アクチュエータのパワーも、航空機に関連付けられた最低制御速度に影響し得る。例えば特定の状況において、より大きなパワーの方向舵アクチュエータはより小さいパワーのアクチュエータよりも、エンジン損失を補償するのに必要な位置に方向舵表面をすばやく移動させ得る。加えて、ある例ではより大きなパワーの方向舵アクチュエータは、より小さいパワーの方向舵アクチュエータよりも特定空力的負荷に対してより大きい量で方舵表面を偏向し得、これにより大きいヨーイングモーメントを提供してエンジン損失によって引き起こされるヨーを補償し得る。上述の実施形態のいくつかにおける特徴は、制御表面が偏向位置に移動され、胴体上に圧力差を引き起こし得ることである。延いては、差圧は、方向舵表面によって引き起こされたヨーイングモーメントを補助するヨーイングモーメントを引き起こし得る。従って、特定の環境において、本発明の種々の実施形態により、同じ最低制御速度(単数、複数)を維持しながら、特定航空機上でより小さいパワーの方向舵アクチュエータを使用することが可能となり得る。この特徴の利点は、より小さいパワーのアクチュエータは生産および維持するのにより安価で、製造および維持コストを低減することが可能となり得ることである。場合によっては、アクチュエータ(例えば、冗長アクチュエータ)を無くし得、代わりに、バックアップヨー制御および/または安定性を提供するのに、胴体上に差圧を引き起こすように使用される制御表面に頼り得る。
【0041】
制御表面を使用して胴体上に圧力差を引き起こし、これによりヨーイングモーメントを引き起こし得るので、(a)より小さいエンジンに関連付けられた同じ最低制御速度(単数、複数)を保持しつつ、かつ(b)垂直尾翼表面のサイズを増加させることなく、方向舵表面のサイズおよび方向舵アクチュエータのパワーを保持しつつ、より大きなエンジンを航空機に搭載し得る。例えば、特定の環境において飛行制御コンピュータは制御表面の使用のスケジュールを変更するようにプログラミングし得る(プログラムし直す)、および/または飛行制御コンピュータは推力の増加を担うようにプログラミングし得る。この特徴の利点は、垂直尾翼、方向舵表面および/または方向舵アクチュエータを修正するという関連費用なしで、より大きなエンジンを搭載し得ることである。
【0042】
他の実施形態では、制御表面(単数、複数)を使用して種々の動作状態時において種々の安定性表面のサイズを低減し得る。例えば、制御表面(単数、複数)を使用して方向安定性を増強する、および/または極度の動作状態(例えば、飛行エンベロープのコーナー
)時において、または種々のシステム故障に関して方向制御を提供し得る。サイズを低減するか、または種々の安定性表面または制御装置を無くすことにより、航空機重量および抗力が低減され、作業コストの節約を提供し得る。
【0043】
他の実施形態では、ヨー発生システムは他の配置を有し得る。例えば、ヨー発生システム800は、ウィングセクション820に接続されずに航空宇宙機801の胴体810に連結される制御表面842を有し得る。図8では、ヨー発生システム800は、胴体810の第1の側面811に連結された第1の制御表面824aおよび胴体810の第2の側面813に連結された第2の制御表面824bとして示されるように、2つの制御表面842を含む。図示される実施形態では、制御表面842は概ね水平面上に延在し得、ウィングセクション820の上部に位置付けられ得る。例えば、制御表面842は、概ね下半角もしくは上半角を備えた、または備えないX−Y面上に延在し得る(例えば、制御表面は概ね、垂直方向よりも水平方向に延在し得る)。図8では、制御表面842は胴体に対して対称的に位置付けられ、流れ場Fにより引き起こされる流れ線860は、胴体810および流れ体802(例えば、垂直尾翼)に隣接した流れパターンが少なくともおおよそX−Z面に対して対称的であることを示す。
【0044】
図9では、第1の制御表面842aは偏向位置に移動されており、一方第2の制御表面842bは静止したままである。図4を参照して上述したように、第2の制御表面842bは選択位置にあり、第1の制御表面842aは胴体810の第1の部分812と胴体810の第2の部分814との間に第1の圧力差を引き起こす、胴体810に隣接した流れパターンを引き起こし得る。第1の圧力差は、胴体810の第2の側面813から外側に向かって胴体810の第1の側面811から離れて延びる第1の横力S1を引き起こす。延いては、第1の横力S1は第1のヨーイングモーメントYm1を生成し得る。同様に、第1の制御表面842aは、流れ体802に隣接した第2の流れパターンを引き起こし、流れ体802の第1の部分803と流れ体802の第2の部分804との間に圧力差を引き起こし得る。第2の圧力差は、第2のヨーイングモーメントYm2を生成し得る第2の横力S2を(例えば、第1の横力S1と同じ方向に)引き起こし得る。
【0045】
図8乃至図9に示すヨー発生システム800は図1乃至図7を参照して上述したものと同様の特徴および/または利点を有し得る。例えば、他の実施形態においてヨー発生システム800はより多くのまたはより少ない制御表面842を含み得、および/または制御表面842はさらなる位置(例えば、さらなる選択および/または偏向位置)を有し得る。加えて、他の実施形態では制御表面842は胴体810および/またはウィングセクション820に対して他の位置を有し得る。例えば、図示される実施形態では、制御表面842は高エネルギー気流があり得るウィングセクション820の上表面に隣接して位置付けられる(例えば、制御表面842は空気力学的にウィングセクション820に連結される)が、他の実施形態では、制御表面842はウィングセクションから離れて位置付けられる。
【0046】
図10は、さらに別の配置を有するヨー発生システム1000の等角図である。図10では、ヨー発生システム1000は胴体1010の第1の側面1011に連結された第1の制御表面1042aおよび胴体1010の第2の側面1013に連結された第2の制御表面1042bを含む。制御表面1042は収納位置と偏向位置との間で移動し得る。収納位置では、制御表面1042は胴体1010の表面1016と概ね揃えられ得る。例えば、制御表面1042が胴体1010回りの概ね流線形の流れにほとんど干渉しないように、制御表面1042は胴体1010内または胴体1010に立てかけて収縮され、胴体1010の表面1016と同一平面上に収縮され、および/または胴体1010に隣接して位置付けられ得る。図示される実施形態では、第1の制御表面1042aは概ね第1の表面1016aに揃えられ、第2の表面1042bは概ね胴体1010の第2の表面1016bに揃えられる。第1および第2の制御表面1042a、1042bは胴体に対して対称的に位置付けられるので、流れ場Fにより引き起こされる流れ線1060は、胴体1010および流れ体1002(例えば、垂直尾翼)に隣接した流れパターンが少なくともおおよそX−Z面に対して対称的であることを示す。
【0047】
図11では、第1の制御表面1042aは、制御表面1042aが胴体1010の第1の側面1011から外側に向かって胴体1010の第2の側面1013から離れて延びる偏向位置に移動されている。図11では、第2の制御表面1042bは収納位置のままであり、これも図4を参照して上述したように選択位置である。従って、偏向位置では、第1の制御表面1042aは、胴体1010の第1の部分1012と胴体1010の第2の部分1014との間に第1の圧力差を引き起こす、胴体1010に隣接した流れパターンを引き起こし得る。第1の圧力差は胴体1010の第2の側面1013から外側に向かって第1の側面1011から離れて延びる第1の横力S1を引き起こす。延いては、第1の横力S1は第1のヨーイングモーメントYm1を生成し得る。同様に、第1の制御表面1042aは、流れ体1002に隣接する第2の流れパターンを引き起こし、流れ体1002の第1の部分1003と流れ体1002の第2の部分1004との間に圧力差を引き起こし得る。第2の圧力差は、第2のヨーイングモーメントYm2を生成する第2の横力S2を(例えば、第1の横力S1と同じ方向に)引き起こす。
【0048】
図10乃至図11に示されるヨー発生システム1000は、図1乃至図9を参照した上述のものと同様の特徴および/または利点を有し得る。例えば、他の実施形態において、ヨー発生システム1000は、より多くのまたはより少ない制御表面1042を含み得、および/または制御表面1042はさらなる位置(例えば、さらなる選択および/または偏向位置)を有し得る。例えば、ある実施形態では制御表面1042は対称的に延在し、航空宇宙機1001上にヨーイングモーメントを引き起こすことなくスピードブレーキとして作用し得、また非対称的に延在して胴体上に抗力およびヨー生成流れパターンを提供し得る(上述のように)。加えて、図8乃至図9を参照してすでに述べたように、他の実施形態では、制御表面1042は胴体1010および/またはウィングセクション1020に対して他の位置を有し得る。
【0049】
上述から、本発明の特定実施形態は本明細書において例示の目的で説明されているが、本発明から逸脱することなく種々の変形がなされ得ることは理解されるであろう。加えて、詳細な実施形態のコンテキストにおいて説明される本発明の態様は他の実施形態において組み合わせる、または除去され得る。例えば、上記の実施形態のいくつは1つのウィングセクション上に単一の制御表面を示すが、他の実施形態では1つのウィングセクションは同じまたは異なる偏向位置を有する複数の制御表面を有し得る。本発明のある実施形態に関連付けられた利点は、これらの実施形態のコンテキストにおいて説明されたが、他の実施形態もかかる利点を呈し得る。加えて、すべての実施形態がかならずしも、本発明の範囲に入るためにかかる利点を呈す必要はない。従って、本発明は添付の請求項による場合以外は限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11