(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141045
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】複合発電システム及び複合発電システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20170529BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20170529BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20170529BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20170529BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20170529BHJP
F02C 6/08 20060101ALI20170529BHJP
F02C 6/10 20060101ALI20170529BHJP
F01K 23/02 20060101ALI20170529BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20170529BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20170529BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/00 Z
H01M8/04 Y
H01M8/04 Z
F02C6/00 E
F02C6/08
F02C6/10
F01K23/02 Z
F01K23/10 Z
!H01M8/12
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-37387(P2013-37387)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-211265(P2013-211265A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-40335(P2012-40335)
(32)【優先日】2012年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】大澤 弘行
【審査官】
笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−022430(JP,A)
【文献】
特開2009−205932(JP,A)
【文献】
特開2009−205930(JP,A)
【文献】
特開2010−146934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
F01K 23/02
F01K 23/10
F02C 6/00
F02C 6/08
F02C 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び空気の供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池から発電後に排出される排燃料及び排出空気の供給を受けて運転されるガスタービンと、
前記燃料電池の燃料極へ前記燃料ガスを供給する流路に燃料入口弁を設けた燃料ガス供給ラインと、
前記燃料電池の空気極へ前記ガスタービンの圧縮機で圧縮した空気を供給する流路に空気入口弁を設けた圧縮空気供給ラインと、
前記燃料極と前記燃料ガス供給ラインとの間を接続して前記排燃料を循環させる流路に上流側から順に排燃料循環元弁、昇圧部及び排燃料循環出口弁を設けた排燃料再循環ラインと、
前記空気極から前記ガスタービンの燃焼器へ前記排出空気を供給する流路に排出空気出口弁を設けた排出空気供給ラインと、
前記排燃料循環元弁と前記昇圧部との間で前記排燃料再循環ラインから分岐して前記排燃料の一部を前記燃焼器へ供給する流路に排燃料供給元弁を設けたガスタービン燃料供給ラインと、
前記排燃料循環元弁の上流で前記排燃料再循環ラインから分岐させた流路に排燃料放出元弁を設けた排燃料大気放出ラインと、
前記排出空気出口弁の上流で前記排出空気供給ラインから分岐させた流路に排出空気放出元弁を設けた排出空気大気放出ラインと、
前記排燃料放出元弁の下流及び前記排燃料循環元弁の下流で前記排燃料大気放出ラインと前記排燃料再循環ラインとの間を接続する流路にバイパス開閉弁を設けた排燃料放出バイパスラインと、
を備えていることを特徴とする複合発電システム。
【請求項2】
燃料ガス及び空気の供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池から発電後に排出される排燃料及び排出空気の供給を受けて運転されるガスタービンと、
前記燃料電池の燃料極へ前記燃料ガスを供給する流路に燃料入口弁を設けた燃料ガス供給ラインと、
前記燃料電池の空気極へ前記ガスタービンの圧縮機で圧縮した空気を供給する流路に空気入口弁を設けた圧縮空気供給ラインと、
前記燃料極と前記燃料ガス供給ラインとの間を接続して前記排燃料を循環させる流路に上流側から順に排燃料循環元弁、昇圧部及び排燃料循環出口弁を設けた排燃料再循環ラインと、
前記空気極から前記ガスタービンの燃焼器へ前記排出空気を供給する流路に排出空気出口弁を設けた排出空気供給ラインと、
前記排燃料循環元弁と前記昇圧部との間で前記排燃料再循環ラインから分岐して前記排燃料の一部を前記燃焼器へ供給する流路に排燃料供給元弁設けたガスタービン燃料供給ラインと、
前記排燃料循環元弁の上流で前記排燃料再循環ラインから分岐させた流路に上流側から順に圧損体及び排燃料放出元弁を設けた排燃料大気放出ラインと、
前記排出空気出口弁の上流で前記排出空気供給ラインから分岐させた流路に排出空気放出元弁を設けた排出空気大気放出ラインと、
前記圧損体及び前記排燃料放出元弁の間及び前記排燃料循環元弁の下流で前記排燃料大気放出ラインと前記排燃料再循環ラインとの間を接続する流路の排燃料放出バイパスラインと、を備えていることを特徴とする複合発電システム。
【請求項3】
前記圧縮空気供給ラインが、前記空気入口弁の下流に接続された流路に元弁を設けた冷却空気供給ラインを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の複合発電システム。
【請求項4】
前記排燃料再循環ラインが、前記排燃料循環出口弁の上流側及び下流側に接続された流路にそれぞれ元弁を設けた置換ガス供給ラインを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合発電システム。
【請求項5】
燃料電池と、前記燃料電池から排出される排燃料及び排出空気の供給を燃焼器に受けて運転されるガスタービンとを具備してなる複合発電システムの運転方法であって、
前記燃料電池への燃料及び空気の供給を停止するとともに、
前記燃料電池の燃料ガス供給ラインと排燃料再循環ラインとのガスの流通を遮断し、
前記燃料ガス供給ライン及び前記排燃料再循環ラインの燃料ガス及び排燃料ガスを外部に放出させることで燃料電池を減圧停止させることを特徴とする複合発電システムの運転方法。
【請求項6】
前記燃料電池の燃料ガス供給ラインと排燃料再循環ラインとのガスの流通を遮断するのと同時に、前記燃料電池の空気供給ラインと排出空気供給ラインとのガスの流通を遮断し、
前記空気供給ラインの空気を外部に放出させることで燃料電池を減圧停止させることを特徴とする請求項5に記載の複合発電システムの運転方法。
【請求項7】
前記排燃料は、高温側の圧力を低温側よりも高圧に維持しながら放出されることを特徴とする請求項5に記載の複合発電システムの運転方法。
【請求項8】
前記燃料電池を減圧停止させた後に前記燃料ガス供給ラインに第1置換ガスを供給する第1段階冷却手段と、
前記第1段階冷却の後に前記燃料ガス供給ラインに第2置換ガスを供給する第2段階冷却手段を有することを特徴とする請求項5または6に記載の複合発電システムの運転方法。
【請求項9】
前記第1置換ガスが不活性ガスであり、前記第2置換ガスが空気であることを特徴とする請求項8に記載の複合発電システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温型燃料電池と高圧縮比のガスタービンとを組み合わせた複合発電システムである燃料電池・ガスタービン発電システムに係り、特に、高温型燃料電池の運転停止に伴う劣化防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応による発電方式を利用した発電装置であり、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このため、21世紀を担う都市型のエネルギー供給システムとして、実用化に向けた研究開発が進んでいる。
このような燃料電池は、燃料側の電極である燃料極と、空気(酸化剤)側の電極である空気極と、これらの間にありイオンのみを通す電解質とにより構成されており、電解質の種類によって様々な形式が開発されている。
【0003】
このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」と呼ぶ)は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられ、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転される燃料電池である。このSOFCは、イオン伝導率を高めるために作動温度が約900〜1000℃程度と高く、用途の広い高効率な高温型燃料電池として知られている。
このようなSOFCにおいては、発電停止に伴う空気極の還元や燃料極の酸化による劣化を防止するため、燃料電池の運転停止後に燃料極側に窒素等の不活性ガスを通ガスさせて燃料電池を保護することが行われている。
【0004】
また、下記の特許文献1に開示された燃料電池システム及びその運転方法には、真空付近まで減圧することで燃料系を空気でガス置換する方法が記載されている。
一方、上述したSOFCは、排出される排燃料のガス温度が高いため、たとえば下記の特許文献2に開示されているように、排燃料の熱エネルギーをガスタービン及び蒸気タービン等のボトミングサイクルにより回収して発電に利用することで、システム損失を小さくして高い発電効率を得ることが可能になる。すなわち、SOFCは、燃料電池とガスタービンとを組み合わせて発電を行う燃料電池−ガスタービン発電設備や、さらにガスタービンの排熱を回収する排熱回収ボイラを設けて蒸気を生成し、この蒸気により蒸気タービンを駆動して発電する複合発電設備に利用できる。
【0005】
図5は、複合発電システム1の運転停止過程における従来の減圧例を示す系統図であり、各開閉弁は開状態が白抜きで示され、閉状態が黒塗りで示されている。
図5の複合発電システム1′の場合、排燃料再循環ライン50と排燃料大気放出ライン80の系統には排燃料放出元弁81しか設けられていない。このため、
図5(b)の停止過程においては、高温部の燃料極11が低温部の排熱再循環ライン50と連通した状態にある。
【0006】
従って、排燃料再循環系統50では、初期温度が低く熱容量も小さいことから、減圧による温度低下に伴ってドレンが発生する。こうして排燃料再循環系統50で発生したドレンは、減圧過程における排燃料の流れ(図中の矢印fを参照)により、一部が連通する燃料極11内を通過して大気に放出される。このため、排燃料再循環系統50で発生したドレンが燃料極11内に流入し、SOFC10の劣化や、高温部位の燃料極11に流入したドレンによる影響が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−120385号公報
【特許文献2】特開2004−119239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SOFCを用いた燃料電池及びガスタービンによる複合発電システムでは、SOFC停止時における空気極の還元や燃料極の酸化による劣化が懸念されるため、燃料極側を不活性ガスとして、例えば窒素でパージしている。このような窒素によるパージは、燃料電池の冷却、燃料極側への酸素侵入防止に加えて、燃料電池の停止後に燃料電池内から可燃性の燃料ガスを追い出すものであるから、安全性確保の効果もある。
【0009】
しかし、燃料電池・ガスタービン発電システムが大出力化されると、燃料極側を窒素等の不活性ガスで置換するために必要となる不活性ガス量も増大するので、窒素の場合は大容量の窒素ガスを供給可能な液体窒素方式の窒素ガス供給設備が必要となる。このような窒素ガス供給設備の場合、窒素ガスの供給可能圧力は0.9MPa以下であり、従って、高圧縮比のガスタービンと組み合わせたSOFC(1MPa以上)では、高圧の窒素ガス供給用として圧縮機等が必要である。
【0010】
すなわち、上述した従来技術は、SOFCの停止時に大量の高圧不活性ガスを必要とするため、不活性ガス供給設備が複雑になることに加えて不活性ガス消費量も過大となる。このため、システム全体のイニシャルコストやランニングコストが増すという問題を有している。なお、上述した不活性ガスは、数十Nm
3/h/SOFC−MW程度(SOFC100MWのプラントで2000〜5000Nm
3/h程度)必要と推定される。
【0011】
このような背景から、SOFCの停止時に高圧不活性ガスを不要もしくは使用量を削減した燃料電池・ガスタービン発電システムが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、SOFCの停止時に高圧不活性ガスを不要もしくは使用量を削減した燃料電池・ガスタービン発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の請求項1に係る複合発電システムは、燃料ガス及び空気の供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池から発電後に排出される排燃料及び排出空気の供給を受けて運転されるガスタービンと、前記燃料電池の燃料極へ前記燃料ガスを供給する流路に燃料入口弁を設けた燃料ガス供給ラインと、前記燃料電池の空気極へ前記ガスタービンの圧縮機で圧縮した空気を供給する流路に空気入口弁を設けた圧縮空気供給ラインと、前記燃料極と前記燃料ガス供給ラインとの間を接続して前記排燃料を循環させる流路に上流側から順に排燃料循環元弁、昇圧部及び排燃料循環出口弁を設けた排燃料再循環ラインと、前記空気極から前記ガスタービンの燃焼器へ前記排出空気を供給する流路に排出空気出口弁を設けた排出空気供給ラインと、前記排燃料循環元弁と前記昇圧部との間で前記排燃料再循環ラインから分岐して前記排燃料の一部を前記燃焼器へ供給する流路に排燃料供給元弁を設けたガスタービン燃料供給ラインと、前記排燃料循環元弁の上流で前記排燃料再循環ラインから分岐させた流路に排燃料放出元弁を設けた排燃料大気放出ラインと、前記排出空気出口弁の上流で前記排出空気供給ラインから分岐させた流路に排出空気放出元弁を設けた排出空気大気放出ラインと、前記排燃料放出元弁の下流及び前記排燃料循環元弁の下流で前記排燃料大気放出ラインと前記排燃料再循環ラインとの間を接続する流路にバイパス開閉弁を設けた排燃料放出バイパスラインと、を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成された複合発電システムによれば、排出空気出口弁の上流で排出空気供給ラインから分岐させた流路に排出空気放出元弁を設けた排出空気大気放出ラインと、排燃料放出元弁の下流及び排燃料循環元弁の下流で排燃料大気放出ラインと排燃料再循環ラインとの間を接続する流路にバイパス開閉弁を設けた排燃料放出バイパスラインとを備えているので、燃料電池の運転停止と同時に、開状態となっていた燃料入口弁、排燃料循環元弁、排燃料循環出口弁、空気入口弁及び排出空気出口弁を閉じ、燃料電池の内部(燃料極や空気極等)及び周辺の高温部と燃料電池の外部低温部との間で燃料、圧縮空気、排燃料及び排出空気の流通を遮断することが可能になる。
さらに、燃料電池の運転停止と同時に、閉状態となっていた排燃料放出元弁、バイパス開閉弁及び排出空気放出元弁を開いて、高温部内から排燃料及び排出空気を外部へ放出して急速に減圧させることができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る複合発電システムは、燃料ガス及び空気の供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池から発電後に排出される排燃料及び排出空気の供給を受けて運転されるガスタービンと、前記燃料電池の燃料極へ前記燃料ガスを供給する流路に燃料入口弁を設けた燃料ガス供給ラインと、前記燃料電池の空気極へ前記ガスタービンの圧縮機で圧縮した空気を供給する流路に空気入口弁を設けた圧縮空気供給ラインと、前記燃料極と前記燃料ガス供給ラインとの間を接続して前記排燃料を循環させる流路に上流側から順に排燃料循環元弁、昇圧部及び排燃料循環出口弁を設けた排燃料再循環ラインと、前記空気極から前記ガスタービンの燃焼器へ前記排出空気を供給する流路に排出空気出口弁を設けた排出空気供給ラインと、前記排燃料循環元弁と前記昇圧部との間で前記排燃料再循環ラインから分岐して前記排燃料の一部を前記燃焼器へ供給する流路に排燃料供給元弁設けたガスタービン燃料供給ラインと、前記排燃料循環元弁の上流で前記排燃料再循環ラインから分岐させた流路に上流側から順に圧損体及び排燃料放出元弁を設けた排燃料大気放出ラインと、前記排出空気出口弁の上流で前記排出空気供給ラインから分岐させた流路に排出空気放出元弁を設けた排出空気大気放出ラインと、前記圧損体及び前記排燃料放出元弁の間及び前記排燃料循環元弁の下流で前記排燃料大気放出ラインと前記排燃料再循環ラインとの間を接続する流路の排燃料放出バイパスラインと、を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
このように構成された複合発電システムによれば、排燃料循環元弁の上流で排燃料再循環ラインから分岐させた流路に上流側から順に圧損体及び排燃料放出元弁を設けた排燃料大気放出ラインと、排出空気出口弁の上流で排出空気供給ラインから分岐させた流路に排出空気放出元弁を設けた排出空気大気放出ラインと、圧損体及び排燃料放出元弁の間及び排燃料循環元弁の下流で排燃料大気放出ラインと排燃料再循環ラインとの間を接続する流路の排燃料放出バイパスラインを備えているので、燃料電池の運転停止と同時に、開状態となっていた燃料入口弁、排燃料循環元弁、排燃料循環出口弁、空気入口弁及び排出空気出口弁を閉じ、燃料電池の内部及び周辺の高温部と燃料電池の外部低温部との間で燃料、圧縮空気、排燃料及び排出空気の流通を遮断することが可能になる。さらに、燃料電池の運転停止と同時に、閉状態となっていた排燃料放出元弁及び排出空気放出元弁を開いて、高温部内から排燃料及び排出空気を外部へ放出して急速に減圧させることができる。このとき、排燃料大気放出ラインに圧損体が設けられているので、放出流路の圧損が大きい高温部の圧力を低温側よりも高圧に維持しながら、すなわち、放出する排燃料の流れが低温(低圧)側から高温(高圧)側へ入り込まないようにして、排燃料を大気へ放出することができる。
【0016】
上記の複合発電システムにおいて、前記圧縮空気供給ラインは、前記空気入口弁の下流に接続された流路に元弁を設けた冷却空気供給ラインを備えていることが好ましく、これにより、燃料電池の減圧停止後に冷却空気を流すことで、高温部の空気極系統で冷却を促進できる。
【0017】
上記の複合発電システムにおいて、前記排燃料再循環ラインは、前記排燃料循環出口弁の上流側及び下流側に接続された流路にそれぞれ元弁を設けた置換ガス供給ラインを備えていることが好ましく、これにより、燃料電池の減圧停止後に置換ガスを流すことで、高温部の燃料系統の冷却促進や可燃性ガス、水蒸気の置換を行なうことができる。
この場合、置換ガスとして窒素等の不活性ガス及び空気の二種類を用意し、段階的に選択切り替えすることが考えられる。具体的には、減圧停止後の高温時に不活性ガスで冷却をし、ある程度温度が低下してから空気を用いて冷却する。
【0018】
本発明の請求項5に係る複合発電システムの運転方法は、燃料電池と、前記燃料電池から排出される排燃料及び排出空気の供給を燃焼器に受けて運転されるガスタービンとを具備してなる複合発電システムの運転方法であって、前記燃料電池への燃料及び空気の供給を停止するとともに、前記燃料電池の燃料ガス供給ラインと排燃料再循環ラインとのガスの流通を遮断し、前記燃料ガス供給ライン及び前記排燃料再循環ラインの燃料ガス及び排燃料ガスを外部に放出させることで燃料電池を減圧停止させることを特徴とするものである。
【0019】
このような複合発電システムの運転方法によれば、燃料電池への燃料及び空気の供給を停止するとともに、燃料電池の燃料ガス供給ラインと排燃料再循環ラインとのガスの流通を遮断し、燃料ガス供給ライン及び前記排燃料再循環ラインの燃料ガス及び排燃料ガスを外部に放出させることで燃料電池を減圧停止させるようにしたので、高温で熱容量の大きい高温部と外部低温部との間の縁切りした状態で、高温部の速やかな減圧が可能になる。
【0020】
このため、燃料電池の高温部では、運転停止と同時に系内ガス(排燃料及び排出空気)が大気等の系外に放出されるので、系内ガスの急速な減圧による圧力低下と系内ガスの膨張による温度低下とにより、燃料電池の劣化条件(圧力及び温度)を速やかに通過させて劣化を抑制することができる。なお、燃料電池の劣化すなわち空気極の還元や燃料極の酸化は、系内ガスの圧力や温度が低いほど抑制できる。
また、燃料電池の外部低温部でドレンが発生しても、縁切りされた燃料電池の内部及び周辺の高温部に流入するようなことはない。
【0021】
上記の発明において、前記燃料電池の燃料ガス供給ラインと排燃料再循環ラインとのガスの流通を遮断するのと同時に、前記燃料電池の空気供給ラインと排出空気供給ラインとのガスの流通を遮断し、前記空気供給ラインの空気を外部に放出させることで燃料電池を減圧停止させることが好ましい。
【0022】
上記の発明において、前記燃料電池を減圧停止させた後に前記燃料ガス供給ラインに第1置換ガスを供給する第1段階冷却手段と、前記第1段階冷却の後に前記燃料ガス供給ラインに第2置換ガスを供給する第2段階冷却手段を有することが好ましい。
この場合、前記第1置換ガスが不活性ガスであり、前記第2置換ガスが空気であることが好ましく、これにより、不活性ガスの使用量を最小限に抑えて冷却することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
上述した本発明によれば、SOFCのような高温型の燃料電池を停止する際に高圧の窒素ガスが不要もしくは使用量の削減になるので、燃料電池・ガスタービン発電システム全体のイニシャルコストやランニングコストを低減できる。
また、燃料電池の停止時には、燃料電池の内部を速やかに減圧して温度低下させることができ、しかも、ドレンが燃料電池内部に発生することや外部から侵入することも防止できるので、燃料電池の劣化(空気極の還元や燃料極の酸化)を抑制して保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る複合発電システムの一実施形態を示す系統図であり、(a)は発電中のバルブ開閉状態を示し、(b)は停止過程(燃料電池停止時)のバルブ開閉状態を示している。
【
図2】
図1に示した複合発電システムの第1変形例として、(a)は発電中のバルブ開閉状態を示し、(b)は燃料電池の停止過程のバルブ開閉状態を示し、(c)は配管系の停止過程のバルブ開閉状態を示している。
【
図3】
図1に示した複合発電システムの第2変形例を示す系統図である。
【
図4】本発明に係る複合発電システムの他の実施形態を示す系統図であり、(a)は発電中のバルブ開閉状態を示し、(b)は停止過程(燃料電池停止時)のバルブ開閉状態を示している。
【
図5】複合発電システムにおける従来の減圧例を示す系統図であり、(a)は発電中のバルブ開閉状態を示し、(b)は停止過程(燃料電池停止時)のバルブ開閉状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る複合発電システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態の燃料電池・ガスタービン発電システム(以下、「複合発電システム」と呼ぶ)1は、高温型の燃料電池10と、ガスタービン20とを組み合わせて効率のよい発電を行うものである。すなわち、燃料ガス及び空気の供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電する燃料電池10に加えて、燃料電池10から発電後に排出される高温の排燃料や排出空気を導入してガスタービン20を運転し、ガスタービン20の出力軸に連結された発電機(不図示)を駆動して発電を行うものである。
さらに、ガスタービン20から排出される高温の燃焼排ガスを排熱回収ボイラに導入すれば、蒸気タービンによる発電も組み合わせた複合発電システムの構築も可能である。
【0026】
以下では、上述した高温型の燃料電池10として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を採用した複合発電システム1について説明する。このSOFC10は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスを用い、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転(発電)するものであり、イオン伝導率を高めるため、作動温度が約900〜1000℃程度と高く設定されている。
【0027】
図示のSOFC10は、複数の燃料極11と空気極12とを備え、全体が圧力容器13の内部に格納されている。
燃料極11には、燃料ガス供給ライン30から天然ガス等の燃料が供給され、電気化学反応に利用された高温の排燃料の一部が排燃料再循環ライン50へ流れる。なお、燃料ガス供給ライン30には、燃料ガスが流れる流路の開閉を行う燃料入口弁31が設けられ、排燃料再循環ライン50には、後述する排燃料循環出口弁51、昇圧部52及び排燃料循環出口弁53が設けられている。
【0028】
空気極12には、圧縮空気供給ライン40から空気が供給され、電気化学反応に利用された高温の排出空気が排出空気供給ライン60へ排出される。圧縮空気供給ライン40は、後述するガスタービン20の圧縮機21と接続され、排出空気供給ライン60は、ガスタービン20の燃焼器22に接続されている。なお、圧縮空気の流路となる圧縮空気供給ライン40には、流路を開閉する空気入口弁41が設けられ、排出空気の流路となる排出空気供給ライン60には、流路を開閉する排出空気出口弁61が設けられている。
【0029】
ガスタービン20は、圧縮機21と、燃焼器22と、タービン23とを具備して構成される。この場合、ガスタービン20は、SOFC10から排出される高温の排燃料及び排出空気の供給を受けて運転される。
圧縮機21は、タービン23の出力で駆動され、空気(外気)を吸引して圧縮した圧縮空気を圧縮空気供給ライン40で接続されたSOFC10の空気室12に供給する。従って、圧縮空気供給ライン40は、圧縮機21で圧縮した空気を空気極12へ供給するための流路である。
【0030】
燃焼器22には、排出空気供給ライン60から排出空気が供給されるとともに、排燃料再循環ライン50から分岐するガスタービン燃料供給ライン70から高温の排燃料が供給される。この燃焼器22は、排出空気を用いて排燃料を燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成してタービン23へ供給する。なお、燃料供給ライン70には、排燃料を流す流路を開閉する排燃料供給元弁71が設けられている。
タービン23は、燃焼器22から供給された燃焼ガスのエネルギーを軸出力に変換して出力する。なお、タービン23の軸出力は、圧縮機21及び図示しない発電機の駆動に用いられる。
【0031】
排燃料再循環ライン50は、燃料極11と燃料ガス供給ライン30との間を接続して排燃料を循環させる流路であり、上流側となる燃料極11から順に、排燃料循環元弁51、昇圧部52及び排燃料循環出口弁53が設けられている。すなわち、排燃料再循環ライン50は、SOFC10で発電に使用された後に燃料極11から排出された燃料ガスを、排燃料として再循環させるための流路であり、一部の排燃料が途中から分流してガスタービン20の燃焼器22に供給されるとともに、残りの排燃料が燃料ガス供給ライン30を通って供給される燃料ガスに合流して再利用される。
【0032】
排燃料循環元弁51及び排燃料循環出口弁53は、排燃料を流す流路の開閉を行うために設けた開閉弁である。
昇圧部52は、排燃料を昇圧して燃料ガスに合流させるために設けた送風機または圧縮機である。この昇圧部52で昇圧された排燃料は、排燃料より高圧で燃料ガス供給ライン30を流れる燃料ガスの流れに押し込まれるようにして合流する。
【0033】
上述した排燃料再循環ライン50には、排燃料循環元弁51の上流で分岐する排燃料大気放出ライン80が接続されている。この排燃料大気放出ライン80は、SOFC10の運転停止時に燃料極11及びその周辺部から高温の排燃料を外部へ放出するための流路であり、流路を開閉するための排燃料放出元弁81を備えている。図示の構成例では、排燃料放出元弁81を開くことにより、排燃料が排燃料大気放出ライン80に接続された煙突82から大気へ放出されるようになっている。
【0034】
また、上述した排出空気供給ライン60には、排出空気出口弁61の上流で分岐する排出空気大気放出ライン90が接続されている。この排出空気大気放出ライン90は、SOFC10の運転停止時に空気極12及びその周辺部から排出空気を外部へ放出するための流路であり、流路を開閉するための排出空気放出元弁91を備えている。図示の構成例では、排出空気放出元弁91を開くことにより、排出空気が排出空気大気放出ライン90に接続された煙突92から大気へ放出されるようになっている。
【0035】
そして、排燃料放出元弁81の下流及び排燃料循環元弁51の下流では、排燃料大気放出ライン80と排燃料再循環ライン50との間が排燃料放出バイパスライン100によって接続されている。この排燃料放出バイパスライン100は、SOFC10運転停止時に排燃料再循環ライン50内の排燃料を外部へ放出するための流路であり、流路を開閉するためのバイパス弁101を備えている。図示の構成例では、バイパス弁101を開くことにより、排燃料が排燃料大気放出ライン80に接続された煙突82から大気へ放出されるようになっている。
【0036】
このように構成された複合発電システム1は、
図1(a)に示す「発電中」において、排燃料放出元弁81、排出空気放出元弁91及びバイパス弁100が閉(黒塗りで表示)となっており、図示した他の弁類は全て開(白抜きで表示)となっている。
このような「発電中」の状態では、SOFC10の燃料極11に燃料ガス及び排燃料が供給され、かつ、空気極12に圧縮空気が供給されて発電が行われる。
また、ガスタービン20においても、燃焼器22に排燃料及び排出空気が供給されるため、高温高圧の燃焼ガスによりタービン23が回転し、この軸出力により発電機を駆動して発電が行われている。
【0037】
しかし、複合発電システム1の運転が停止された場合には、
図1(b)に示す「停止過程」のように、各開閉弁の開閉状態が切り換えられる。
具体的に説明すると、「発電中」に開の燃料入口弁31、空気入口弁41、排燃料循環元弁51、排燃料循環出口弁53、排出空気出口弁61及び排燃料供給元弁71が閉じられ、この閉操作と略同時に、閉状態の排燃料放出元弁81、排出空気放出元弁91及びバイパス弁100が開かれる。
【0038】
この結果、高温部の排燃料は、すなわち燃料極11及び周辺流路内(燃料入口弁31,排燃料循環元弁51及び排燃料循環出口弁53で囲まれた範囲内)の高温排燃料は、排燃料大気放出ライン80を通って煙突82から大気に放出される。従って、燃料極11の内部は、高温排燃料の放出により急速に減圧される。
さらに、低温部の排燃料が、すなわち排燃料循環元弁51と排燃料循環出口弁53との間にある排燃料再循環ライン50内の排燃料が、排燃料バイパスライン100及び排燃料大気放出ライン80を通って煙突82から大気に放出される。従って、空気極12の内部は、高温排出空気の放出により急速に減圧される。
【0039】
一方、高温部の排出空気は、すなわち空気極12及び周辺流路内の高温排出空気は、排出空気大気放出ライン90を通って煙突92から大気に放出される。
なお、発電部及びその近傍の高温部と比較すれば、高温部に接続された周辺配管部である低温部の排燃料及び排出空気の温度は低くなる。
【0040】
このように、上述した構成の複合発電システム1においては、SOFC10の運転停止と同時に各開閉弁を操作して、SOFC10の内部及び周辺の高温部と、SOFC10の外部低温部との間で、燃料、圧縮空気、排燃料及び排出空気の流通を遮断し、かつ、高温部内から排燃料及び排出空気を外部へ放出して減圧停止させることができ、このような操作が複合発電システム1停止方法として有効である。
【0041】
すなわち、空気極12の還元や燃料極11の酸化は、圧力が低いほど、そして、温度が低いほど抑制されるので、運転停止と同時にSOFC10から高温の排燃料及び排出空気を系外へ放出することにより、燃料極11や空気極12及び周辺を急速に減圧することができる。従って、上述した複合発電システム1は、急速な減圧による圧力低下に加え、圧力低下に伴う排燃料(ガス)の膨張による温度低下により、SOFC10の劣化条件となる圧力や温度を速やかに通過させた低温低圧の減圧停止状態とすることができるので、燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0042】
また、減圧による温度低下により、排燃料再循環ライン50のように元々温度の低い低圧部においては、飽和温度以下まで温度が低下し、ドレンを発生する可能性がある。さらに、SOFC10の内部にドレンが発生または流入すると、SOFC10に劣化が発生する原因となる。
【0043】
このため、上述した複合発電システム1及びその燃料電池保護方法では、温度が高く減圧してもドレンを発生しないSOFC10の内部(高温部)と、その周囲で温度が低くドレン発生の化可能性を有する低温部との間を、各ラインに設けた開閉弁の開閉操作により縁切りしてから減圧するようにしたので、SOFC10の内部でドレンが発生することを防止できる。従って、SOFC10及びこれを備えた複合発電システム1は、耐久性や信頼性が向上する。
【0044】
上述した本実施形態の複合発電システム1及び燃料電池保護方法は、排燃料再循環ライン50の排燃料循環元弁51及び排燃料循環出口弁53と、バイパス弁101を設けた排燃料放出バイパスライン100が追設されたことにより、排燃料再循環系統50で発生したドレンが燃料極11内に流入することを防止し、SOFC10の劣化や、高温部位の燃料極11に流入したドレンによる影響を払拭している。
【0045】
ところで、上述したSOFC停止時の排燃料放出は、たとえば
図2に示す第1変形例のように、2段階に分けて実施してもよい。すなわち、SOFC10内の高温部(主に燃料極11)から放出される第1段階放出と、SOFC10外の周辺低温部(主に排燃料再循環ライン50)から放出される第2段階放出の順に放出されることが好ましい。
【0046】
具体的に説明すると、
図2(b)に示した「停止過程(燃料電池のみ)」の第1段階放出では、排燃料放出バイパスライン100のバイパス弁を閉じ、排燃料大気放出ライン80との間が縁切りされている。このため、第1段階放出では、排燃料大気放出ライン80に連通する燃料極11内の高温排燃料が大気に放出されることとなる。
図2(c)に示した「停止過程(配管系)」の第2段階放出では、排燃料放出元弁81を閉じるとともに、排燃料放出バイパスライン100のバイパス弁を開くことで、燃料極11と排燃料大気放出ライン80との間が縁切りされ、排燃料再循環ライン50が排燃料放出バイパスライン100を介して排燃料大気放出ライン80と連通している。このため、第2段階放出では、排燃料大気放出ライン80に連通する排燃料再循環ライン50内の低温排燃料が大気に放出されることとなる。
【0047】
このような2段階放出を行うことにより、排燃料再循環ライン50はSOFC停止時に減圧せず、加圧保持による高圧での劣化が懸念されるSOFC10のみ減圧することで、排燃料再循環ライン50におけるドレンの発生を防止できる。
すなわち、排燃料再循環ライン50は、SOFCの運転停止時に減圧せず、加圧保持による高圧での劣化が懸念されるSOFC10の燃料極11のみ第1段階放出で減圧する。この結果、排燃料再循環ライン50では圧力及び温度が維持されるため、ドレンの発生を防止でき、排燃料再循環ライン50が自然放熱によりドレンを発生する前に、排燃料再循環ライン50の流路内を加圧状態のまま第2段階放出を行えば、ドレンの発生を確実に防止できる。
【0048】
また、上述した実施形態の複合発電システム1は、たとえば
図3に示すような第2変形例の構成も可能である。なお、
図3に示す第2変形例では、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図3に示す複合発電システム1Aは、圧縮空気供給ライン40が、空気入口弁41の下流に接続された流路に元弁66を設けた冷却空気供給ライン65を備えている。この圧縮空気供給ライン65は、高温部の空気極系統で冷却を促進するため、ファン67等の送風手段により減圧停止後の空気極12内に外気等の冷却空気を供給するものである。このような冷却空気供給ライン65は、冷却時間の短縮に有効である。
【0049】
また、
図3に示す第2変形例の複合発電システム1Aは、排燃料再循環ライン50が、排燃料循環出口弁53の上流側及び下流側に接続された流路にそれぞれ元弁56,57を設けた置換ガス供給ライン55を備えている。この置換ガス供給ライン55は、高温部の燃料極系統で冷却を促進するため、不活性ガスや冷却空気を上述した実施形態の複合発電システム1を減圧停止させた後の燃料極11内や排燃料再循環ライン50内に置換ガスを供給するものである。このような置換ガス供給ライン55は、SOFCの減圧停止後に置換ガスを流し、各ラインを置換することで、可燃性ガスの置換と減圧停止後の温度低下に起因したドレン発生の防止に有効である。置換ガスはSOFC10の圧力が0.9MPa以下に減圧停止された状態で供給されることが望ましい。
【0050】
この場合に使用する置換ガスは、窒素等の不活性ガス及び空気の二種類を用意し、段階的に選択切り替えて供給することで燃料電池の停止を早めることも可能である。すなわち、減圧停止後に、高温部の燃料極系統に不活性ガスを流してSOFC10を冷却し、燃料極が再酸化しない温度まで低下してから空気を用いて冷却する2段階冷却を行うことが考えられる。このような2段階冷却は、高温の状態(300〜600℃未満)で不活性ガスによる第1段階冷却を行うとともに、ある程度温度が低下した状態(例えば、300℃未満)で空気による第2段階冷却を行うので、冷却によるドレンの発生を防止し、不活性ガスによる冷却で高い安全性が得られるとともに、温度低下後の空気使用によって不活性ガスの使用量を最小限に抑えた冷却が可能になる。なお、燃料電池を減圧停止させることで燃料電池の温度を燃料極が再酸化させない温度まで低下させていれば、燃料電池に空気を供給することで冷却させることも可能である。
また、図示の構成例では、置換ガス供給ライン55及び冷却空気供給ライン65の両方を備えているが、たとえば置換ガス供給ライン55のみを設けた構成など、適宜選択が可能である。
【0051】
次に、上述した発電システム及び燃料電池保護方法について、他の実施形態を
図4に示して説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態で説明する複合発電システム1Bは、排燃料循環元弁51の上流で排燃料再循環ライン50から分岐させた流路の排燃料大気放出ライン80Aに、上流側から順にオリフィス(圧損体)83及び排燃料放出元弁81を設けている。また、排燃料大気放出ライン80Aにおけるオリフィス83及び排燃料放出元弁81の間と、排燃料再循環ライン50における排燃料循環元弁51の下流とが、排燃料大気放出ライン80Aと排燃料再循環ライン50との間を接続する流路の排燃料放出バイパスライン100Aにより接続されている。この場合、上述した実施形態のバイパス弁101は設けられていない。
【0052】
このような構成の複合発電システム1Bでは、SOFC停止後の排燃料が、高温側の圧力を低温側よりも高圧に維持しながら放出される燃料電池保護方法となる。
すなわち、SFC10の運転停止と同時に、開状態となっていた燃料入口弁31、排燃料循環元弁51、排燃料循環出口弁53、空気入口弁41及び排出空気出口弁61を全て閉じ、SOFC10の内部及び周辺の高温部と燃料電池の外部低温部との間で燃料、圧縮空気、排燃料及び排出空気の流通を遮断する。
【0053】
さらに、SOFC10の運転停止と同時に、閉状態となっていた排燃料放出元弁81及び排出空気放出元弁91を開いて、高温部内から排燃料及び排出空気を外部へ放出して急速に減圧させる。このとき、排燃料大気放出ライン80Aにオリフィス83が設けられているので、放出流路の圧損が大きい燃料極11側の高温部は、圧力が低温側よりも高圧に維持される。すなわち、流路にオリフィス83が設けられているので、放出する排燃料の流れが低温(低圧)側から高温(高圧)側へ入り込まないようにして、排燃料を大気へ放出することができる。
この結果、低温側の排燃料再循環ライン50でドレンが発生しても、高温側の燃料極11に流入することを防止できる。
【0054】
上述した本実施形態及び変形例によれば、SOFC10のような高温型の燃料電池を停止する際に高圧の不活性ガスが不要もしくは使用量の削減になる。このため、複合発電システム1,1A,1Bにおいては、システム全体のイニシャルコストやランニングコストを低減できる。
また、SOFC10の停止時には、SOFC内部を速やかに減圧して温度低下させることができ、しかも、ドレンが燃料電池内部に発生することや外部から侵入することも防止できるので、SOFC10のような高温型燃料電池の劣化を抑制して保護することが可能になる。
【0055】
すなわち、上述した本実施形態及び変形例によれば、窒素設備等のように不活性ガスを供給する設備の簡略化によるコストダウン効果に加えて、電源喪失時にもSOFCの保護が可能であり、劣化の抑制とともに信頼性や耐久性の向上に顕著な効果を奏する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえばSOFC以外の高温・高圧燃料電池にも適用可能であるなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 燃料電池・ガスタービン発電システム
10 SOFC(燃料電池)
11 燃料極
12 空気極
20 ガスタービン
21 圧縮機
22 燃焼器
23 タービン
30 燃料ガス供給ライン
31 燃料入口弁
40 圧縮空気供給ライン
41 空気入口弁
50 排燃料再循環ライン
51 排燃料循環元弁
52 昇圧部
53 排燃料循環出口弁
60 排出空気供給ライン
61 排出空気出口弁
70 ガスタービン燃料供給ライン
71 排燃料供給元弁
80,80A 排燃料大気放出ライン
81 排燃料放出元弁
83 オリフィス(圧損体)
90 排出空気大気放出ライン
91 排出空気放出元弁
100,100A 排燃料放出バイパスライン
101 バイパス開閉弁