特許第6141063号(P6141063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 創研株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6141063-脱臭剤、脱臭装置及び脱臭方法 図000003
  • 特許6141063-脱臭剤、脱臭装置及び脱臭方法 図000004
  • 特許6141063-脱臭剤、脱臭装置及び脱臭方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141063
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】脱臭剤、脱臭装置及び脱臭方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20170529BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20170529BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
   A61L9/01 P
   A61L9/14
   !C12N1/20 E
   !C12N1/20 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-57112(P2013-57112)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-230353(P2013-230353A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】502080173
【氏名又は名称】創研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117145
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 純
(72)【発明者】
【氏名】三浦 博
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−185658(JP,A)
【文献】 特開2005−058901(JP,A)
【文献】 特開平06−327969(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0318292(US,A1)
【文献】 特開平09−275975(JP,A)
【文献】 実開昭63−003839(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−22
C12N 1/00−7/08
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生活環境における不快臭を取り除く脱臭方法であって、過酸化水素水を含んだ水溶性溶液と酸性の非イオン水とを混合した液状又は半流動状の洗浄剤を塗布及び/又は噴霧する工程の後に、芽胞状態の枯草菌と、シュードモナス・スタッツェリ(Psuedomonas stutzeri)に属する微生物菌体と、を含有した液状又は半流動状の脱臭剤を塗布及び/又は噴霧する工程を有することを特徴とする脱臭方法。
【請求項2】
前記脱臭剤が、更に極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーを含有することを特徴とする請求項に記載された脱臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服、寝具、住宅や病院や老人ホーム等居住空間、トイレ臭、ペット臭、生ゴミ臭、下水臭等の生活環境における不快臭を取り除く脱臭剤に関し、特に悪臭の原因物質を吸着するとともに、吸着された物質を分解することによって持続性のある優れた消臭効果を有する消臭剤及びその消臭剤を用いた消臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、衣服、寝具、住宅や病院や老人ホーム等居住空間、工場や職場等の屋内、また日常生活において生じるトイレ臭、ペット臭、生ゴミ臭、下水臭等による悪臭環境が問題になっている。このような悪臭の原因となる物質は、アンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタン類等である。
そして、これらの悪臭を取り除く方法としては、芳香剤を噴霧して消臭する方法、アルコール、O3(オゾン)、酸やアルカリを使用した洗浄方法、活性炭やビオライトやベントナイト等を使用した悪臭の原因となる物質を吸着する方法、グラフト重合を利用した吸着方法等が知られている。
例えば、特許文献1のような吸着剤が公知となっている。特許文献1には、極性物質の吸着能を有する官能基として、親水性基及びカチオン性解離基並びに/又はアニオン性解離基を含有するマクロモノマーが、グラフト重合により結合したポリアクリロニトリル系、ポリオレフィン系又はセルロース系基体からなる、悪臭物質の吸着剤材料が開示されている。
【0003】
上記の方法には、確かに消臭効果が認められるものもあるが、例えば、芳香剤を噴霧して消臭する方法では、悪臭の種類によっては、芳香剤と混ざって別の不快臭を発生させることが知られている。
また、活性炭やビオライトやベントナイト等を使用した悪臭の原因となる物質を吸着する方法では、悪臭の原因となる物質が活性炭等の吸着材に触れた場合に限って、悪臭の原因となる物質が吸着されることから、悪臭が取り除かれる範囲が狭いという問題があった。
さらにグラフト重合を利用した吸着方法については、リトマスグラフィ測定器の測定結果によると、悪臭の原因となるアンモニア、アミン類、硫化水素、メルカプタン類等の数値が減少していることが分かった。しかし、簡易嗅覚測定法(環境省推薦の測定方法、二点式試験とも呼ばれる。)による官能試験の結果によると、人の嗅覚に与える影響として悪臭がそれほど減っていないことが分かった。
本発明者は、グラフト重合を利用した吸着方法について問題点を調査したところ、悪臭の原因となるホルム系のガスはグラフト重合により吸着されるのであるが、吸着された固形物が壁に付着したり、床に散乱した状態となり、一定期間経過後にヨウ素等の腐敗臭が発生することが原因であることを見出した。
【0004】
また、悪臭の検知閾値は、物質によってはPPt(1兆分の1)の単位で表記される。消臭の必須条件である化学反応においては、薄めてしまうと分子同士の接触頻度がほとんどないことから、臭気を感じることのないレベルまで悪臭の原因物質を低濃度にすることは不可能である。
また悪臭は多成分による複合臭気である。例えば、化学的な手法でアルカリ性を示す臭気物質に対して、酸性を示す消臭原体で中和反応を起こすことにより、消臭作用が起こる。しかし、酸性を示す臭気物質に対して、アルカリの中和反応による消臭作用は起こらない。その結果、酸性臭気物質に起因する臭気が残り、悪臭の質的変化は起こるが、消臭という目的は完全には達成されない。
他にも(H+)(O2-)イオンをプラズマ放電により空気中に放出して、OHラジカルに変化させる方法や、ストリーマ放電により消臭する方法が知れている。しかし、これらの方法を使用しても人の嗅覚では完全に脱臭できたという感覚が生じないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−327969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生活環境における不快臭を、簡易嗅覚測定法による感応試験においても満足な結果を得るレベルで取り除くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の問題点を解決するため、グラフト重合を利用した吸着方法を基礎として、更に吸着された固形物を微生物の生物学的浄化作用により分解することにより、生活環境における不快臭を取り除くことができることを見出した。そのため本発明者は、以下の構成を有する脱臭剤、脱臭装置及び脱臭方法を採用した。
(1)生活環境における不快臭を取り除く脱臭剤であって、少なくとも、芽胞状態の枯草菌と、シュードモナス・スタッツェリ(Psuedomonas stutzeri)に属する微生物菌体と、を含有した液状又は半流動状であることを特徴とする脱臭剤である。
(2)前記脱臭剤が、更に極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーを含有することを特徴とする上記(1)に記載された脱臭剤である。
(3)上記(1)又は(2)に記載された液状の脱臭剤を給水タンクに充填し、送風機を使用して給水タンクより居住空間へ前記脱臭剤を供給することを特徴とする脱臭装置である。
【0008】
(4)生活環境における不快臭を取り除く脱臭方法であって、芽胞状態の枯草菌と、シュードモナス・スタッツェリ(Psuedomonas stutzeri)に属する微生物菌体と、を含有した液状又は半流動状の脱臭剤を塗布及び/又は噴霧する工程を有することを特徴とする脱臭方法である。
(5)前記脱臭剤が、更に極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーを含有することを特徴とする上記(4)に記載された脱臭方法である。
(6)前記脱臭剤を塗布及び/又は噴霧する工程の前に、芽胞状態の枯草菌を含有した液状又は半流動状の洗浄剤を塗布する工程を有することを特徴する上記(4)又は(5)に記載された脱臭方法である。
(7)前記洗浄剤を塗布する工程の前に、過酸化水素水を含んだ水溶性溶液と酸性の非イオン水とを混合した液状又は半流動状の洗浄剤を塗布及び/又は噴霧する工程と、植物系の界面活性剤を含有した液状又は半流動状の洗浄剤を塗布する工程とを有することを特徴とする上記(6)に記載された脱臭方法である。ここで、植物系の界面活性剤を含有した液状又は半流動状の洗浄剤には、シュードモナス・スタッツェリ(Psuedomonas stutzeri)に属する微生物菌体を含有させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る脱臭剤、脱臭装置及び脱臭方法は、生活環境における不快臭を、簡易嗅覚測定法による感応試験においても満足な結果を得るレベルで取り除くという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係る消臭効果の試験方法を示した図である。
図2】本発明の比較例に係る消臭効果の試験方法を示した図である。
図3】本発明の脱臭装置の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る脱臭剤は、芽胞状態の枯草菌と、シュードモナス・スタッツェリ(Psuedomonas stutzeri)に属する微生物菌体との二種類の菌を含有することを特徴とする。
更に本発明に係る脱臭剤は、上記脱臭剤に極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーを混合しても良い。
ここで芽胞状態の枯草菌とは、Bacillus subtilisと言われる真正細菌の一種であり、0.7〜0.8μm×2.0〜3.0μmの好気性のグラム陽性桿菌で、芽胞状態となったものをいう。Bacillus subtilisは、土壌中や、空気中に飛散している常在細菌(空中雑菌)の一つで、枯れた草の表面などからも分離されることが多い。培養には細心の注意が必要となるが、本発明者は、トリプトソイ寒天培地に土壌中に広く存在する枯草菌を植え、37±1℃で3日間培養した後、低温に放置し、希釈液に懸濁して回収することによって培養している。ただし、本発明に係る芽胞状態の枯草菌は、他の方法によって培養しても良く、上記培養方法に限定されるものではない。
このようにして得られた芽胞状態の枯草菌を希釈して洗浄剤としても良い。例えば、芽胞状態の枯草菌を植物系の界面活性剤で希釈して洗浄剤を製造しても良い。例えば、ヤシ油、パーム種子油、サトウキビ、キンセンカ、カモミール等で芽胞状態の枯草菌を希釈することができる。
【0012】
次にシュードモナス・スタッツェリ(Psuedomonas stutzeri)とは、グラム陰性桿菌で、好気性真正細菌の一属である。臭気の原因となる菌等を分解する作用を有するものであればいずれの菌株を用いても良いが、本発明者が現在認識している菌株の中では、シュードモナス属NBRC(NITE Biological Resource Center)14165、菌数2.9×109/mlを使用するのが最も好ましい。かかる菌株は、増殖可能であり、安全レベルはハザードレベル1である(ハザードレベル1とは、一般需要者にも取扱い可能なレベルである。)。もちろん本発明は、前記菌株に限定するものではなく、人工合成有機物を処理する能力がある菌株であれば良い。
【0013】
更に、極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーとは、オリゴマーの重合度と、ポリマーの重合度との中間の重合度を有する重合体をいう。本発明に係るマクロモノマーの重合度は約50〜100である。すなわち、本発明に係るマクロモノマーは、好ましくは極性物質の吸着能を有する官能基を含む反応性単量体を重合したものであって、その重合度が約10〜100のものである。
本発明に係る極性物質の吸着能を有する官能基には、例えば、親水性基、カチオン性解離基及びアニオン性解離基がある。好ましくは、官能基は、親水性基並びにカチオン性解離基及び/又はアニオン性解離基からなる。すなわち、マクロモノマーは、親水性基及びカチオン及びアニオン性解離基を含む。ただし、マクロモノマー中における親水性基を有する反応性単量体と、カチオン及び/又はアニオン性解離基を有する反応性単量体との配列状態に特に制限はない。
【0014】
また親水性基としては、例えば、水酸基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基又はピロリドニル基が挙げられる。好ましい親水性基は、水酸基やヒドロキシルアルキル基である。マクロモノマー中に、1種又は2種以上の親水性基を導入しても良い。そして、そのような親水性基を有する反応性単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、エチレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びトリエチレングリコールメタクリレートが挙げられる。好ましい反応性単量体は、ヒドロキシエチルメタクリレートやビニルピロリドンである。
【0015】
本発明に係る脱臭剤は、芽胞状態の枯草菌と、シュードモナス・スタッツェリに属する微生物菌体との混合物からなる。より両物質の効果を発揮させるには、極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーを更に混合した脱臭剤を使用するのが好ましい。また前記脱臭剤の効果を最大限に発揮させるためには、芽胞状態の枯草菌を含有した液状又は半流動状の洗浄剤で脱臭する箇所を前もって洗浄しておくのが好ましい。さらに過酸化水素水を含んだ水溶性溶液と酸性の非イオン水とを混合した液状又は半流動状の洗浄剤や、植物系の界面活性剤を含有した液状又は半流動状の洗浄剤を併用して使用するのが好ましい。
【0016】
次に本発明に係る脱臭剤の作用効果について、トイレにおける不快臭の除去を例に説明する。
トイレの不快臭の原因物質としては、アンモニア(NH3)、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチルが挙げられる。ここでNH3は、し尿の臭気が問題となる場合の原因物質の一つである。NH3に水をかけると、水中の水素イオン(H+)と結合してアンモニウムイオン(NH4+)となって水に溶入する。しかし、水に溶け込んだNH3は逆放出(気化)することにより、かえって悪臭の濃度が上昇する。水に取り込む量には限度があり、水100gにNH3は89.9g溶入することができる。そのため、単に水や化学合成洗剤でトイレの床などを清掃しても、悪臭が強力に発生することになる。室外に向けて換気することができれば、気化した悪臭を軽減することができるが、場所によっては設備に多大な経費やメンテナンス費用が発生することがある。
ここで発明者は、悪臭の原因は微生物が産出する臭気物質であることを見出した。このような悪臭の原因となる微生物を市販の消毒液や化学合成洗剤で除去することは困難である。
【0017】
そこでトイレの床、壁及び室内に、芽胞状態の枯草菌と、シュードモナス・スタッツェリに属する微生物菌体と、を含有した洗浄剤を塗布及び噴霧する。すると、芽胞状態の枯草菌の作用である微生物の発育を阻害する真菌発育抑制効果により、悪臭の原因となる微生物に接触し、増殖を開始する。かかる増殖の過程で生じる分解酵素(油脂分解酵素リパーゼ、タンパク質分解酵素プロテアーゼ、炭水化物分解酵素アミラーゼ、繊維質分解酵素セルラーゼ等)の作用によって、微生物を分解し、悪臭や悪性病原菌を抑制する。枯草菌の増殖は、約4ヶ月で最盛期を迎え、約6ヶ月間にわたりトイレの床、壁及び体気中における悪臭の原因となる微生物を抑制する効果が持続する。
またシュードモナス・スタッツェリに属する微生物菌体、特に好ましくはシュードモナス属NBRC14165、菌数2.9×109/mlを使用することで、人工合成有機化合物を分解、消滅することができる。特に硫酸塩、硝酸塩、動物性の膠といった有機化合物を、付着している壁材等の素材を損傷させることなく分解、消滅することができる点に優れた効果を発揮する。
シュードモナス属NBRC14165は、芽胞状態の枯草菌が産生するプロテアーゼとは異なるプロテアーゼを産生する事ができる。そのため、芽胞状態の枯草菌とシュードモナス属NBRC14165とを混合して使用することにより、生活環境における不快臭を、簡易嗅覚測定法による感応試験においても満足なレベルまで除去することができるのである。
【0018】
次に極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーは、脱臭剤の水素イオン(H+)濃度は水との比較において非常に大きい。またマクロモノマーには、NH3等の不快臭の原因物質を大量に吸着するとともに再放出しないという特性がある。その他の有機臭は、無臭の他の物質に変化し元の状態に戻ることはない。下記の化学式は、かかる特性を化学式で表わしたものである。
化学式例:
4CH3SH+O2 → 2(CH32S+2H2O,
2H2S+O2 →2S+2H2
【0019】
本発明に係る脱臭剤は、トイレの他にも、浴室、流し台、掃除機、空気清浄機、エアコン、洗面所、ベッド、家具(内外)、天井(裏も)、カーペット、カーテン、下駄箱、窓廻り、ビニールクロス、布クロス、排水管、その他臭気のあるあらゆる箇所に使用できる。本発明が消臭する対象は、例えば、タバコ臭、動物(ペット)臭、ヒト加齢臭(体臭)、糞尿臭(トイレ)、腐敗臭(生ゴミ、排水管、グリストラップ等)、VOCガス臭(車の排気、ガソリン、エポキシ、接着剤、塗料等の揮発性有機ガス臭、建材、家具の臭い)、火災臭、カビ臭、化粧品、香水臭、芳香剤、アロマ(樹液)、生活臭、ヒトの腐敗臭等が挙げられる。
【0020】
実施形態1
悪臭を取り除く箇所(トイレ)において、以下の脱臭方法を実施した。
(第一工程)
過酸化水素水を含んだ水溶性溶液と酸性の非イオン水とを以下の割合で混合した第一洗浄剤を用意した。
22を含有した水溶液 0.15重量%
酸性の非イオン水 99.85重量%
(上記の成分及び割合は、温度、湿度等の環境条件や臭気の原因物質の種類や程度によって変わる場合があり、本発明がこれに限定されるものではない。以下の洗浄剤及び脱臭剤においても同様である。)
かかる第一洗浄剤は、弱酸性、水溶性であり、約6時間で水と酸素に化学分解(気化)するため、二次汚染の危険性がない。
上記第一洗浄剤を水道水で稀釈した後、便器、床、壁に塗布した。第一洗浄剤は漂白を目的とする次亜塩素剤ではないので、床や壁等の色調を変化させることはない。
【0021】
(第二工程)
植物系の界面活性剤を以下の割合で混合した第二洗浄剤を用意した。
酸性の非イオン水 99.0重量%
植物系の界面活性剤 1.0重量%
上記第二洗浄剤を、便器、床、壁に塗布した。
(第三工程)
芽胞状態の枯草菌を以下の割合で混合した第三洗浄剤を用意した。
石鹸水にアミゾールCDE,PEG 約1重量%
芽胞状態の枯草菌 初期添加量0.03重量%
枯草菌培養濾液(DM3000) 初期添加量0.01重量%
純水 98.96重量%
上記第三洗浄剤を、便器、床、壁に塗布した。
【0022】
(第四工程)
芽胞状態の枯草菌と、シュードモナス・スタッツェリに属する微生物菌体と、極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーを以下の割合で混合した第四洗浄剤を用意した。
芽胞状態の枯草菌(109/mg) 初期添加量 0.03重量%
シュードモナス培養液(2.9×109/ml)初期添加量 0.03重量%
グラフト重合リキッド 0.1重量%
純水 0.84重量%
上記第四洗浄剤をコンプレッサーでトイレ室内に噴霧する。
(第五工程)
加湿機(KAZ社製 製品名KAZ)の本体内部の外気吸引面にSHシート(グラフト不織布)を巻きつけ、グラフト(NFL)と萌芽状態の枯草菌0.03重量%を添加したものを注入し、作業完了まで稼動させた。
【0023】
(第六工程)
紫外線ランプを稼動し、加湿機で室内を35℃以上にする。ここで使用された紫外線ランプは、波長254nm以上の紫外線を照射できる装置である。特にH−Cl結合に対して有効であり、波長エネルギー(K.J/mol)472の熱量が適当である。紫外線ランプの照射を開始してから10分程度で脱臭効果が確認された。すなわち紫外線ランプを照射することによって、枯草菌及びシュードモナスによる消臭効果について速効性が得られることが分かった。
(第七工程)
吸引ポンプ(公定法に準拠)にて、におい袋(公定法に準拠)に環境空気(室内の空気)を3リットル×3袋充填する。
簡易嗅覚測定法(環境省の簡易嗅覚想定法マニュアルに準拠。「二点式試験による感応試験」とも言う。)による測定値を検査したところ、消臭効果が確認された。
【0024】
実施例1
図1は、本発明の実施例1に係る消臭効果の試験方法を示した図である。
図1(a)に示す如く、におい紙の両端にスカトールとイソ吉草酸を付着させる。
図1(b)に示す如く、吸着紙(ペーパータオル)ににおい紙をのせる。
図1(c)に示す如く、上記実施形態1で使用した第一洗浄剤、第二洗浄剤、第三洗浄剤を、順番に注射器を使用してにおい紙に噴射塗布する。
図1(d)に示す如く、ペーパータオルを中心で折り畳んでにおい紙上の余分な水分を拭き取る。
図1(e)に示す如く、新しいペーパータオル上に上記におい紙を載置する。
上記ペーパータオルに載置されたにおい紙(以下、「試験体」と記載する。)を45リットルのポリエチレン製の袋に入れる。
さらに上記袋の内部には、加湿機(KAZ社製 製品名KAZ)及び波長254nm以上の紫外線を照射できる紫外線ランプを設置する。
さらに袋の開口部よりノズルを差込み、無臭空気製造機で無臭空気(公定法に準拠する。)を45リットル注入し開口部を封止する。
その後、上記実施形態1で使用した第四洗浄剤を注射器を使用して袋の表面から刺して注入する。袋の表面にできた針跡はセロテープで封止する。
その状態で、10分間、加湿機を稼動させる。さらに10分間、紫外線ランプを稼動させる。
加湿機及び紫外線ランプを停止した後、ハンド吸引ポンプ(公定法に準拠する。)で、袋の中から空気を3リットル吸引する。試験体の入っていた袋から吸引した空気が入っている袋を実施例1とする。
【0025】
比較例1
図2は、本発明の比較例に係る消臭効果の試験方法を示した図である。
図2に示す如く、上記実施例1で作成したものと同じにおい紙を45リットルの袋に入れ、袋の開口部よりノズルを差込み、無臭空気製造機で無臭空気(公定法に準拠する。)を45リットル注入し開口部を封止する。
次に図2に示す如く、ファブリーズ(P&G社製)を注射器を使用して袋の表面から刺して注入する。袋の表面にできた針跡はセロテープで封止する。
次に、ハンド吸引ポンプ(公定法に準拠する。)で、袋の中から空気を3リットル吸引する。試験体の入っていた袋から吸引した空気が入っている袋を比較例1とする。
【0026】
比較例2
上記比較例1と同様ににおい紙を45リットルの袋に入れ、袋の開口部よりノズルを差込み、無臭空気製造機で無臭空気を45リットル注入し開口部を封止する。
図2に示す如く、天使の水(株式会社エスディエヌ製)を注射器を使用して袋の表面から刺して注入する。袋の表面にできた針跡はセロテープで封止する。
次に、ハンド吸引ポンプで、袋の中から空気を3リットル吸引する。試験体の入っていた袋から吸引した空気が入っている袋を比較例2とする。
【0027】
比較例3
上記比較例1と同様ににおい紙を45リットルの袋に入れ、袋の開口部よりノズルを差込み、無臭空気製造機で無臭空気を45リットル注入し開口部を封止する。
図2に示す如く、ニオイノンノ(株式会社フローラ製)を注射器を使用して袋の表面から刺して注入する。袋の表面にできた針跡はセロテープで封止する。
次に、ハンド吸引ポンプで、袋の中から空気を3リットル吸引する。試験体の入っていた袋から吸引した空気が入っている袋を比較例3とする。
【0028】
比較例4
上記比較例1と同様ににおい紙を45リットルの袋に入れ、袋の開口部よりノズルを差込み、無臭空気製造機で無臭空気を45リットル注入し開口部を封止する。
図2に示す如く、オゾンオイル(販売者:グローバル貿易)を注射器を使用して袋の表面から刺して注入する。袋の表面にできた針跡はセロテープで封止する。
次に、ハンド吸引ポンプで、袋の中から空気を3リットル吸引する。試験体の入っていた袋から吸引した空気が入っている袋を比較例4とする。
−簡易嗅覚測定法(二点式試験)による感応試験−
試験を行う室内の空気をサンプリングした袋を用意する。さらに無臭空気製造機で製造した無臭空気を3リットル入れた袋を無臭袋とする。
2名の被験者A及びBには、まず室内の空気が封入されている袋の臭いを嗅いでもらう。次に実施例1の臭いを嗅いでもらう。さらに室内の空気をサンプリングした袋及び無臭袋の臭いを嗅いでもらう。その後、比較例1〜4について順に嗅いでもらい、それぞれの消臭効果を判定した。そして臭いの強度を5段階で判断してもらう。強度は、1がほとんど感じない、2がかすかに臭いを感じる、3が中くらい臭い感じる、4が強く感じる、5は強烈に強く感じる、である。なお、下記表1における「付臭/回答」はオペレータの便宜のため、臭気を入れた袋の番号を記憶するために付した番号である。
更に上記の判断についての確信度を判断してもらう。その結果をまとめた表が、下記の表1である。
【0029】
【表1】
上記表1の「強度」の欄よりより明らかなように、2名の被験者(A及びB)のいずれもが実施例1の臭気袋についてはほとんど臭いが残っていないと判断しているのに対し、比較例1〜4については、いずれも臭気が残存していることが分かった。
【0030】
実施形態2
図2は、本発明の実施形態1に係る脱臭装置である。
実施形態に係る脱臭装置10は、液体状の脱臭剤が充填された給水タンク1から、送風機2により脱臭剤を居住空間へ霧状Aに飛散させることができる。
充填された給水タンク1から霧化室4に供給される脱臭剤は、芽胞状態の枯草菌を含有した第一脱臭剤か、または極性物質の吸着能を有する官能基を含むマクロモノマーである。第一脱臭剤と第二脱臭剤とを混合しても良いが、個別に2台の脱臭装置10に充填した方が好ましい。
霧化室4に供給された脱臭剤は、フロートスイッチ5により常に一定の水位を保持する。水位は霧化量調整器3で調整することができる。霧化室4の底には圧電振動子7が設置されている。圧電振動子は円盤状の圧電セラミックプレートの両面に金属電極をめっきで形成した素子によって形成されている。駆動回路8から高周波の電圧が加わると、圧電振動子7は超音波振動子として機能し、その振動エネルギーが水面に集中し水柱が立ち、表面張力が大幅に低下した水柱の先端部から脱臭剤の微粒子が飛散する。ここで送風ファン9のエアフローによって、脱臭装置10より霧状Aに大気中へ飛散する。
【符号の説明】
【0031】
1 給水タンク
2 送風機
4 霧化室
7 圧電振動子
9 送風ファン
10 脱臭装置
図1
図2
図3