特許第6141081号(P6141081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141081
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   A47J27/00 109R
   A47J27/00 109F
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-85672(P2013-85672)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-204931(P2014-204931A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】大竹 彩斗
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−253424(JP,A)
【文献】 特開2001−161549(JP,A)
【文献】 特開2008−067899(JP,A)
【文献】 特開2005−198866(JP,A)
【文献】 実開昭52−157356(JP,U)
【文献】 特開2002−360421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に上部に開口を有して設けられ、底部中央に底部から空洞状態で当該開口側に延びる凸部を有する中容器と、
前記中容器内に取り出し自在に収容され、底部中央に前記中容器の凸部が挿入される凸収容部を有する内釜と、
前記本体に設けられ、前記中容器の開口を開閉する蓋体と、
前記中容器の凸部の内周上部に設けられた凸部加熱コイルと、
前記中容器の底部に設けられた底部加熱コイルと、
前記内釜の底部温度を検出する底部温度センサーと、
前記内釜の側面温度を検出する側面温度センサーと、
前記内釜の内部温度を検出する内部温度センサーと、
前記底部加熱コイルおよび前記凸部加熱コイルへの通電を制御し、前記内釜を誘導加熱させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、予め前記内釜を誘導加熱する前の内部温度に応じて炊飯量判定用の設定底部温度、設定側面温度および設定内部温度がそれぞれ設定されたテーブルを有し、前記内釜を誘導加熱する前に前記底部温度、前記側面温度および前記内部温度を読み込み、前記内釜を誘導加熱してから一定時間経過後に再び、前記底部温度、前記側面温度および前記内部温度を読み込んで、前記内釜を誘導加熱する前の前記底部温度、前記側面温度および前記内部温度とでそれぞれの温度変化値を算出し、その後、前記内釜を誘導加熱する前に読み込んだ前記内部温度に設定された設定底部温度、設定側面温度および設定内部温度を前記テーブルから抽出して、前記各温度変化値とそれぞれ比較し、その比較結果から前記内釜内の炊飯量を判定することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
本体に上部に開口を有して設けられ、底部中央に底部から空洞状態で当該開口側に延びる凸部を有する中容器と、
前記中容器内に取り出し自在に収容され、底部中央に前記中容器の凸部が挿入される凸収容部を有する内釜と、
前記本体に設けられ、前記中容器の開口を開閉する蓋体と、
前記中容器の凸部の内周上部に設けられた凸部加熱コイルと、
前記中容器の底部に設けられた底部加熱コイルと、
前記内釜の底部温度を検出する底部温度センサーと、
前記内釜の側面温度を検出する側面温度センサーと、
前記内釜の凸収容部の上面温度を検出する非接触型温度センサーと、
前記底部加熱コイルおよび前記凸部加熱コイルへの通電を制御し、前記内釜を誘導加熱させる制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記内釜を誘導加熱する前に前記底部温度、前記側面温度および前記上面温度を読み込み、前記内釜を誘導加熱してから一定時間経過後に、前記底部温度、前記側面温度および前記上面温度を読み込んで、前記内釜を誘導加熱する前の前記底部温度、前記側面温度および前記上面温度とでそれぞれの温度変化値を算出し、各温度変化値から前記内釜内の炊飯量を判定することを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
前記内釜の内部温度を検出する内部温度センサーを備え、
前記制御手段は、予め前記内釜を誘導加熱する前の内部温度に応じて炊飯量判定用の設定底部温度、設定側面温度および設定上面温度がそれぞれ設定されたテーブルを有し、前記内釜を誘導加熱する前に読み込んだ前記内部温度に対応する設定底部温度、設定側面温度および設定上面温度を前記テーブルから抽出して、前記各温度変化値とそれぞれ比較し、その比較結果から前記内釜内の炊飯量を判定することを特徴とする請求項記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御手段は、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を有し、前記炊飯量が前記内釜で多量とする範囲内にあるときには、前記各工程で前記底部加熱コイルと前記凸部加熱コイルの両方に通電することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を有し、前記炊飯量が前記内釜で中量とする範囲内にあるときには、前記各工程のうち予熱工程では前記凸部加熱コイルの通電時間を前記底部加熱コイルよりも短くし、炊きあげ工程および沸騰維持工程では前記凸部加熱コイルの通電時間を予熱工程時の通電時間から徐々に長くすることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記制御手段は、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を有し、前記炊飯量が前記内釜で少量とする範囲内にあるときには、前記各工程のうち予熱工程では前記底部加熱コイルのみに通電し、炊きあげ工程および沸騰維持工程では前記凸部加熱コイルにも通電し、その通電時間を前記底部加熱コイルへの通電時間よりも短くすることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御手段は、予熱工程、炊きあげ工程及び沸騰維持工程の各工程において、前記底部加熱コイルと前記凸部加熱コイルの通電を交互に行うことを特徴とする請求項4又は5記載の炊飯器。
【請求項8】
前記制御手段は、炊きあげ工程及び沸騰維持工程の各工程において、前記底部加熱コイルと前記凸部加熱コイルの通電を交互に行うことを特徴とする請求項6記載の炊飯器。
【請求項9】
前記内釜の凸収容部の高さを、当該内釜における炊飯量の最多を示す目盛り以上とすることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項10】
前記底部加熱コイルは、前記内釜における炊飯量の最少を示す目盛りの高さまで巻かれていることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内釜を誘導加熱する前に内釜内の炊飯量を判定して炊飯動作を行う炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器として、内釜の底部中央に内側に突出して形成された凸底部を加熱する凸部加熱コイルと、その内釜の凸底部を除く周囲の底部を加熱する底部加熱コイルと、内釜の凸底部の温度を検出する凸部温度センサーと、内釜の底部の温度を検出する底部温度センサーと、各温度センサーの検出温度に応じて凸部加熱コイルと底部加熱コイルを同時あるいは交互に通電する制御手段とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−161549号公報(第2−3頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の炊飯器では、少量あるいは中量の炊飯物を炊飯する場合、炊飯物(米と水)の高さよりも内釜の凸底部が高くなって露出してしまう。このような場合、凸部加熱コイル近傍の凸部温度センサおよび底部加熱コイル近傍の底部温度センサの検出温度だけでは、少量又は中量の炊飯量の判定が難しく、炊飯量に応じた最適な制御が炊飯開始からはできず、電力供給が不足したり、過剰な電力を供給したりする可能性がある。
【0005】
最適な炊飯量が判定できない状態で、予熱工程から温度ムラを低減すべく凸部加熱コイルで積極的に加熱する場合は、内釜の凸底部が空焼き状態となって加熱ロスが生じ、省エネの観点からも課題がある。また、内釜の凸底部の温度が不必要に高くなり、内釜など本体の耐久性の低下が加速される懸念がある。
【0006】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、加熱ロスや内釜の凸収容部の不必要な温度上昇を抑制できる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、本体に上部に開口を有して設けられ、底部中央に底部から空洞状態で当該開口側に延びる凸部を有する中容器と、中容器内に取り出し自在に収容され、底部中央に中容器の凸部が挿入される凸収容部を有する内釜と、本体に設けられ、中容器の開口を開閉する蓋体と、中容器の凸部の内周上部に設けられた凸部加熱コイルと、中容器の底部に設けられた底部加熱コイルと、内釜の底部温度を検出する底部温度センサーと、内釜の側面温度を検出する側面温度センサーと、内釜の内部温度を検出する内部温度センサーと、底部加熱コイルおよび凸部加熱コイルへの通電を制御し、内釜を誘導加熱させる制御手段とを備え、制御手段は、予め内釜を誘導加熱する前の内部温度に応じて炊飯量判定用の設定底部温度、設定側面温度および設定内部温度がそれぞれ設定されたテーブルを有し、内釜を誘導加熱する前に底部温度、側面温度および内部温度を読み込み、内釜を誘導加熱してから一定時間経過後に再び、底部温度、側面温度および内部温度を読み込んで、内釜を誘導加熱する前の底部温度、側面温度および内部温度とでそれぞれの温度変化値を算出し、その後、内釜を誘導加熱する前に読み込んだ内部温度に設定された設定底部温度、設定側面温度および設定内部温度をテーブルから抽出して、各温度変化値とそれぞれ比較し、その比較結果から内釜内の炊飯量を判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、内釜を誘導加熱する前に底部温度、側面温度および内部温度を読み込み、内釜を誘導加熱してから一定時間経過後に、底部温度、側面温度および内部温度を読み込んで、内釜を誘導加熱する前の底部温度、側面温度および内部温度とでそれぞれの温度変化値を算出し、各温度変化値から内釜内の炊飯量を判定するようにしている。これにより、内釜の底部中央に設けられた凸収容部の高さよりも炊飯物が低い場合であっても、正確に内釜内の炊飯量を判定できるため、電力供給が不足したり、過剰な電力供給を行うことなく、最適な電力を供給することができる。また、加熱ロスや内釜の凸収容部の不必要な温度上昇を抑制でき、このため、内釜など本体の耐久性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す縦断面図。
図2】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の動作を示すフローチャート。
図3】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の概略構成を示す縦断面図。
図4】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の動作を示すフローチャート。
図5】本発明の実施の形態3に係る炊飯器の概略構成を示す縦断面図。
図6】本発明の実施の形態3に係る炊飯器の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略構成を示す縦断面図である。
図1において、炊飯器は、上部に開口が設けられた中容器6を有する本体1と、本体1の中容器6内に取り出し自在に収容される内釜2と、本体1の中容器6の開口を開閉する蓋体3とを備えている。中容器6の底部中央には、底部から空洞状態で開口側に延びる略円柱形状の凸部6aが設けられている。
【0011】
内釜2の材料として、磁性金属材、磁性金属材と非磁性の高伝導金属材とのクラッド、電気抵抗の高い非磁性体、例えば炭素材が用いられている。内釜2の底部中央には、中容器6の凸部6aが挿入される略円柱形状の凸収容部2aが設けられている。その凸収容部2aの高さは、内釜2における最多の炊飯量を示す目盛りと略同じである。なお、内釜の形状の凸部分については、特に鉛直方向に加熱面積を大きくする目的が達成されれば、円柱形であっても山形であっても構わない。
【0012】
本体1は、中容器6の凸部6aの内周上部に設けられた凸部加熱コイル4と、中容器6の底部に設けられた底部加熱コイル5と、内釜2の底部温度を検出する底部温度センサー7と、内釜2の側面温度を検出する側面温度センサー8と、蓋体3の中容器6の開口側の面とに設けられ、内釜2の内部温度を検出する蓋温度センサー9(内部温度センサー)と、底部加熱コイル5および凸部加熱コイル4への通電を制御し、内釜2を誘導加熱させる制御装置10とを備えている。
【0013】
底部温度センサー7、側面温度センサー8および蓋温度センサー9には、例えばサーミスタが用いられている。底部加熱コイル5は、内釜2における最少の炊飯量を示す目盛りの高さまで巻かれている。側面温度センサー8は、中量の炊飯量を示す目盛りの高さに設置されている。なお、加熱手段として、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5とを用いているが、これに代えて、中容器6の凸部6aの内周上部および中容器6の底部にシーズヒータを設けて、内釜2を加熱するようにしても良い。
【0014】
制御装置10は、炊飯を開始する際、即ち内釜2を誘導加熱する前に底部温度、側面温度および内部温度を読み込む。次いで、制御装置10は、内釜2を誘導加熱してから一定時間経過後に再び、底部温度、側面温度および内部温度を読み込んで、内釜2を誘導加熱する前の底部温度、側面温度および内部温度とでそれぞれの温度変化値を算出し、各温度変化値から内釜2内の炊飯量を判定する。
【0015】
具体的には、制御装置10は、予め内釜2を誘導加熱する前の内部温度に応じて炊飯量判定用の設定底部温度、設定側面温度および設定内部温度がそれぞれ設定されたテーブル(図示せず)を有し、内釜2を誘導加熱する前に読み込んだ内部温度に設定された設定底部温度、設定側面温度および設定内部温度を前記テーブルから抽出する。そして、制御装置10は、抽出した設定底部温度、設定側面温度および設定内部温度と各温度変化値とをそれぞれ比較し、その比較結果(各部の温度の大小)から内釜2内の炊飯量を判定する。その後、制御装置10は、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程およびむらし工程の各工程を、判定した炊飯量に応じて実施する。
【0016】
なお、制御装置10は、上記の機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成しても良いし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成しても良い。
【0017】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器の炊飯動作を図1および図2を用いて説明する。図2は本発明の実施形態1に係る炊飯器の炊飯動作を示すフローチャートである。
本体1の中容器6の中に炊飯物(水と米)の入った内釜2を入れて蓋体3を閉じ、そして、蓋体3に設けられた炊飯スイッチ(図示せず)をオン操作すると、制御装置10は、炊飯を開始する(S1)。
【0018】
この時、制御装置10は、内釜2を誘導加熱することなく、底部温度センサー7により検出された内釜2の底部温度、側面温度センサー8により検出された内釜2の側面温度、および蓋温度センサー9により検出された内釜2の内部温度の各温度を読み込み、炊飯開始t0時における底部初期温度Tb0、側面初期温度Ts0、内部初期温度Ti0として記憶する(S2)。次いで、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5とに高周波電流が流れるように、各インバーター回路(図示せず)を制御し(S3)、内釜2を誘導加熱させる。
【0019】
制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電開始から一定時間t(例えば数秒間)を経過したときに(S4)、底部温度センサー7により検出された内釜2の底部温度Tb、側面温度センサー8により検出された内釜2の側面温度Ts、および蓋温度センサー9により検出された内釜2の内部温度Tiをそれぞれ読み込む(S5)。
【0020】
そして、制御装置10は、一定時間t経過時の各温度Tb、Ts、Tiから炊飯開始t0時の各温度Tb0、Ts0、Ti0を減算してそれぞれの温度変化値を算出する(S6)。つまり、制御装置10は、底部温度Tbから底部初期温度Tb0を減算して底部温度変化値ΔTbを求め、側面温度Tsから側面初期温度Ts0を減算して側面温度変化値ΔTsを求め、内部温度Tiから内部初期温度Ti0を減算して内部温度変化値ΔTiを求める。
【0021】
その後、制御装置10は、炊飯開始t0時の内部初期温度Ti0に応じて設定された炊飯量判定用の設定底部温度ΔTbj、設定側面温度ΔTsjおよび設定内部温度ΔTijをそれぞれテーブルから抽出する(S7)。これは、炊飯開始の際の周囲環境、例えば気温であったり、一度炊飯した後の温度であったり、また、保温をした直後の本体1内の温度によっては、内部初期温度Ti0が異なるため、その内部初期温度Ti0に応じた炊飯量判定用の設定底部温度ΔTbj、設定側面温度ΔTsjおよび設定内部温度ΔTijを抽出している。
【0022】
そして、制御装置10は、ΔTb<ΔTbjで、かつΔTs<ΔTsjであるか否かを判定する(S8)。これは、内釜2内の炊飯物が所定の高さまで入っていないために起こる、空焼き状態による急激な温度上昇で炊飯量を判定する方法である。制御装置10は、ΔTb>ΔTbjで、かつΔTs≧ΔTsjのときには、内釜2内の炊飯量が「少量」と判定してS20に進むが、ΔTb<ΔTbjで、かつΔTs<ΔTsjのときには、ΔTi<ΔTijか否かを判定する(S9)。
【0023】
制御装置10は、S9において、ΔTi<ΔTijのときには、内釜2内の炊飯量が「多量」と判定して、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を継続させて(S10)、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S11〜S14)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S25)。
【0024】
制御装置10は、予熱工程においては、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度まで上昇するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御し、炊飯物の温度が予熱温度に達したときには、その状態が保持されるように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御する。制御装置10は、炊きあげ工程においては、炊飯物の温度が98℃(米をα化させる温度)まで上昇するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御する。
【0025】
更に、制御装置10は、沸騰維持工程においては、炊飯物の温度が沸騰温度に達するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御し、この状態を米がα化するまで沸騰を維持する。制御装置10は、むらし工程においては、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を停止し、炊飯量に応じたむらし時間が経過するまで炊飯物(米飯)をむらす。なお、各工程において、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を交互に行うようにして、内釜の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにし、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにしても良い。
【0026】
制御装置10は、S9において、ΔTi≧ΔTijのときには、内釜2内の炊飯量が「中量」と判定して、凸部加熱コイル4への通電を停止させ、底部加熱コイル5のみ通電を継続させて(S15)、前述したように、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S16〜S19)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S25)。
【0027】
制御装置10は、予熱工程においては、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度まで上昇するように、底部加熱コイル5への通電を制御し、炊飯物から露出している凸収容部2aが異常な温度にならない程度に、凸部加熱コイル4への通電を短時間行う。これは、できる限り鉛直方向に熱源を持たせて、炊飯物の米の吸水ムラを抑制するためである。
【0028】
制御装置10は、炊きあげ工程・沸騰維持工程においては、米が水をある程度吸って、体積が増えた段階で、凸部加熱コイル4への通電時間を予熱工程時よりも徐々に長くなるようにする。この場合、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5の両方に略同時に通電、あるいは交互に通電させて、内釜の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにして、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにする。
【0029】
また、制御装置10は、S8において、ΔTb<ΔTbjで、かつΔTs≧ΔTsjのときには、内釜2内の炊飯量が「少量」と判定して、凸部加熱コイル4への通電を停止させ、底部加熱コイル5のみ通電を継続させて(S20)、前述したように、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S21〜S24)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S25)。
【0030】
制御装置10は、予熱工程においては、底部加熱コイル5のみ通電させて、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度になるようにする。制御装置10は、炊きあげ工程・沸騰維持工程においては、米が水をある程度吸って、体積が増えた段階で、炊飯物から露出している凸収容部2aが異常な温度にならない程度に、凸部加熱コイル4への通電を短時間行う。これは、できる限り鉛直方向に熱源を持たせて、炊飯物の米の吸水ムラを抑制するためである。この場合、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5の両方に略同時に通電、あるいは交互に通電させて、内釜2の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにして、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにする。
【0031】
以上のように実施の形態1によれば、炊飯開始t0の際(内釜2を誘導加熱する前)に、底部初期温度Tb0、側面初期温度Ts0、内部初期温度Ti0を読み込み、内釜2を誘導加熱してから一定時間t経過後に、底部温度Tb、側面温度Tsおよび内部温度Tiを読み込んで、内釜2を誘導加熱する前の底部初期温度Tb0、側面初期温度Ts0および内部初期温度Ti0とでそれぞれの温度変化値ΔTb、ΔTs、ΔTiを算出する。そして、内釜2を誘導加熱する前に読み込んだ内部初期温度Ti0(内部温度Ti0)に対応して設定された設定底部温度ΔTbj、設定側面温度ΔTsjおよび設定内部温度ΔTijをテーブルから抽出して、各温度変化値ΔTb、ΔTs、ΔTiとそれぞれ比較し、その比較結果から内釜2内の炊飯量を判定するようにしている。
これにより、内釜2の底部中央に設けられた凸収容部2aの高さよりも炊飯物が低い場合、つまり炊飯量が少量あるいは中量であっても、正確に内釜2内の炊飯量を判定できる。このため、電力供給が不足したり、過剰に電力を供給したりすることがなくなり、最適な電力を供給することができる。また、加熱ロスや内釜2の凸収容部2aの不必要な温度上昇を抑制でき、このため、内釜2など本体1の耐久性の低下を抑えることができる。
【0032】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2に係る炊飯器の概略構成を示す縦断面図である。
実施の形態2に係る炊飯器は、図3に示すように、内釜2の直下部に内釜2と内釜2内の炊飯物の重量を検出する重量センサー11を備えており、炊飯量を検知する目的の一つとして使用していた側面温度センサー8が省略された構成となっている。その他の部品は、実施の形態1と同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
制御装置10は、内釜2を誘導加熱する前に底部温度と内部温度とを読み込むと共に、内釜2の重量を読み込み、読み込んだ底部温度と内部温度とに応じて重量を補正し、補正した重量を基に内釜2内の炊飯量を判定する。具体的には、制御装置10は、予め内釜2を誘導加熱する前の底部温度および内部温度に応じて補正値がそれぞれ設定されたテーブル(図示せず)を有し、内釜2を誘導加熱する前に読み込んだ底部温度および内部温度に設定された補正値をテーブルから選択して、内釜2を誘導加熱する前に読み込んだ重量を補正し、補正した重量を基に内釜2内の炊飯量を判定する。その後、制御装置10は、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程およびむらし工程の各工程を、判定した炊飯量に応じて実施する。
【0034】
次に、実施の形態2に係る炊飯器の炊飯動作を図3および図4を用いて説明する。図4は本発明の実施の形態2に係る炊飯器の動作を示すフローチャートである。
本体1の中容器6の中に炊飯物(水と米)の入った内釜2を入れて蓋体3を閉じ、そして、蓋体3に設けられた炊飯スイッチ(図示せず)をオン操作すると、制御装置10は、炊飯を開始する(S31)。
【0035】
この時、制御装置10は、内釜2を誘導加熱することなく、底部温度センサー7により検出された内釜2の底部温度、および蓋温度センサー9(内部温度センサー)により検出された内釜2の内部温度の各温度を読み込み、炊飯開始t0時における底部初期温度Tb0、内部初期温度Ti0として記憶する(S32)。次いで、制御装置10は、重量センサー11によって検出された重量を読み込んで、底部初期温度Tb0および内部初期温度Ti0に設定された補正値を前記テーブルから抽出して、先に読み込んだ重量を補正値で補正し、補正した重量を基に内釜2内の炊飯量を選択する(S33)。重量センサー11によって検出される重量は、炊飯開始の際の周囲環境、例えば気温であったり、一度炊飯した後の温度であったり、また、保温をした直後の本体1内の温度によって異なるため、底部初期温度Tb0および内部初期温度Ti0に設定された補正値を抽出して、重量を補正している。
【0036】
その後、制御装置10は、選択した炊飯量が多量か否かを判定する(S34)。この判定は、予め設定された第1閾値および第1閾値よりも低い第2閾値と比較して判定する。例えば、炊飯量が第1閾値を超えるときには多量とし、第1閾値以下で第2閾値を超えるときには中量とし、また、炊飯量が第2閾値以下のときには少量とする。
【0037】
制御装置10は、前述した方法により炊飯量が「多量」と判定したときには、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を開始して(S35)、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S36〜S39)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S51)。
【0038】
制御装置10は、予熱工程においては、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度まで上昇するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5とへの通電を制御し、炊飯物の温度が予熱温度に達したときには、その状態が保持されるように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御する。制御装置10は、炊きあげ工程においては、炊飯物の温度が98℃(米をα化させる温度)まで上昇するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御する。
【0039】
更に、制御装置10は、沸騰維持工程においては、炊飯物の温度が沸騰温度に達するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御し、この状態を米がα化するまで沸騰を維持する。制御装置10は、むらし工程においては、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を停止し、炊飯量に応じたむらし時間が経過するまで炊飯物(米飯)をむらす。なお、各工程において、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を交互に行うようにして、内釜の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにし、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにしても良い。
【0040】
制御装置10は、S34において、炊飯量が「多量」でないと判定したときには、その炊飯量が「中量」か否かを判定する(S40)。制御装置10は、炊飯量が「中量」と判定したときには、底部加熱コイル5のみ通電を開始して(S41)、前述したように、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S42〜S45)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S51)。
【0041】
制御装置10は、予熱工程においては、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度まで上昇するように、底部加熱コイル5への通電を制御し、炊飯物から露出している凸収容部2aが異常な温度にならない程度に、凸部加熱コイル4への通電を短時間行う。これは、できる限り鉛直方向に熱源を持たせて、炊飯物の米の吸水ムラを抑制するためである。
【0042】
制御装置10は、炊きあげ工程・沸騰維持工程においては、米が水をある程度吸って、体積が増えた段階で、凸部加熱コイル4への通電時間を予熱工程時よりも徐々に長くなるようにする。この場合、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5の両方に略同時に通電、あるいは交互に通電させて、内釜2の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにして、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにする。
【0043】
制御装置10は、S40において、炊飯量が「少量」と判定したときには、底部加熱コイル5のみ通電を開始して(S46)、前述したように、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S47〜S50)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S51)。
【0044】
制御装置10は、予熱工程においては、底部加熱コイル5のみ通電させて、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度になるようにする。制御装置10は、炊きあげ工程・沸騰維持工程においては、米が水をある程度吸って、体積が増えた段階で、炊飯物から露出している凸収容部2aが異常な温度にならない程度に、凸部加熱コイル4への通電を短時間行う。これは、できる限り鉛直方向に熱源を持たせて、炊飯物の米の吸水ムラを抑制するためである。この場合、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5の両方に略同時に通電、あるいは交互に通電させて、内釜2の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにして、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにする。
【0045】
以上のように実施の形態2によれば、炊飯開始t0の際(内釜2を誘導加熱する前)に、底部初期温度Tb0と内部初期温度Ti0とを読み込むと共に、内釜2の重量を読み込み、読み込んだ底部初期温度Tb0と内部初期温度Ti0に設定された補正値をテーブルから選択して、内釜2を誘導加熱する前に読み込んだ重量を補正し、補正した重量を基に内釜2内の炊飯量を判定するようにしている。
これにより、内釜2の底部中央に設けられた凸収容部2aの高さよりも炊飯物が低い場合、つまり炊飯量が少量あるいは中量であっても、周囲温度に影響されることなく、正確に内釜2内の炊飯量を判定できる。このため、電力供給が不足したり、過剰に電力を供給したりすることがなくなり、最適な電力を供給することができる。また、加熱ロスや内釜2の凸収容部2aの不必要な温度上昇を抑制でき、このため、内釜2など本体1の耐久性の低下を抑えることができる。
【0046】
実施の形態3.
図5は本発明の実施の形態3に係る炊飯器の概略構成を示す縦断面図である。
実施の形態3に係る炊飯器は、図5に示すように、蓋体3の裏面に内釜2の凸収容部2aの上面温度を検出する非接触型温度センサー12を備えた構成となっている。その他の部品は、実施の形態1と同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。なお、非接触型温度センサー12を蓋体3の裏面に設けているが、内釜2の凸収容部2aの上面温度を検出することができれば、蓋体3に設けなくても良い。
【0047】
制御装置10は、炊飯を開始する際、即ち内釜2を誘導加熱する前に底部温度、側面温度および上面温度を読み込み、内釜2を誘導加熱してから一定時間経過後に、底部温度、側面温度および上面温度を読み込んで、内釜2を誘導加熱する前の底部温度、側面温度および上面温度とでそれぞれの温度変化値を算出し、各温度変化値から内釜2内の炊飯量を判定する。
【0048】
具体的には、制御装置10は、予め内釜2を誘導加熱する前の内部温度に応じて炊飯量判定用の設定底部温度、設定側面温度および設定上面温度がそれぞれ設定されたテーブル(図示せず)を有し、内釜2を誘導加熱する前に読み込んだ内部温度に対応する設定底部温度、設定側面温度および設定上面温度を前記テーブルから抽出して、各温度変化値とそれぞれ比較し、その比較結果から内釜2内の炊飯量を判定する。その後、制御装置10は、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程およびむらし工程の各工程を、判定した炊飯量に応じて実施する。
【0049】
次に、実施の形態3に係る炊飯器の炊飯動作を図5および図6を用いて説明する。図6は本発明の実施の形態3に係る炊飯器の動作を示すフローチャートである。
本体1の中容器6の中に炊飯物(水と米)の入った内釜2を入れて蓋体3を閉じ、そして、蓋体3に設けられた炊飯スイッチ(図示せず)をオン操作すると、制御装置10は、炊飯を開始する(S61)。
【0050】
この時、制御装置10は、内釜2を誘導加熱することなく、底部温度センサー7により検出された内釜2の底部温度、側面温度センサー8により検出された内釜2の側面温度、非接触型温度センサー12により検出された凸収容部2aの上面温度および蓋温度センサー9(内部温度センサー)により検出された内釜2の内部温度の各温度を読み込み、炊飯開始t0時における底部初期温度Tb0、側面初期温度Ts0、上面初期温度Tp0、内部初期温度Ti0として記憶する(S62)。次いで、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5とに高周波電流が流れるように、各インバーター回路(図示せず)を制御し(S63)、内釜2を誘導加熱させる。
【0051】
制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電開始から一定時間t(例えば数秒間)を経過したときに(S64)、底部温度センサー7により検出された内釜2の底部温度Tb、側面温度センサー8により検出された内釜2の側面温度Ts、および非接触型温度センサー12により検出された凸収容部2aの上面温度Tpをそれぞれ読み込む(S65)。
【0052】
そして、制御装置10は、一定時間t経過時の各温度Tb、Ts、Tpから炊飯開始t0時の各初期温度Tb0、Ts0、Tp0を減算してそれぞれの温度変化値を算出する(S66)。つまり、制御装置10は、底部温度Tbから底部初期温度Tb0を減算して底部温度変化値ΔTbを求め、側面温度Tsから側面初期温度Ts0を減算して側面温度変化値ΔTsを求め、上面温度Tpから上面初期温度Tp0を減算して上面温度変化値ΔTpを求める。
【0053】
その後、制御装置10は、炊飯開始t0時の内部初期温度Ti0に対応して設定された炊飯量判別用の設定底部温度ΔTbj、設定側面温度ΔTsjおよび設定上面温度ΔTpjをそれぞれ抽出する(S67)。これは、炊飯開始の際の周囲環境、例えば気温であったり、一度炊飯した後の温度であったり、また、保温をした直後の本体1内の温度によっては、内部初期温度Ti0が異なるため、その内部初期温度Ti0に応じた炊飯量判定用の設定底部温度ΔTbj、設定側面温度ΔTsjおよび設定上面温度ΔTpjを抽出している。
そして、制御装置10は、ΔTb<ΔTbjで、かつΔTs<ΔTsjであるか否かを判定する(S68)。制御装置10は、ΔTb>ΔTbjで、かつΔTs≧ΔTsjのときには、内釜2内の炊飯量が「少量」と判定してS80に進むが、ΔTb<ΔTbjで、かつΔTs<ΔTsjのときには、ΔTp<ΔTpjか否かを判定する(S69)。
【0054】
制御装置10は、S69において、ΔTp<ΔTpjのときには、内釜2内の炊飯量が「多量」と判定して、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を継続させて(S70)、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S71〜S74)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S85)。
【0055】
制御装置10は、予熱工程においては、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度まで上昇するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御し、炊飯物の温度が予熱温度に達したときには、その状態が保持されるように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御する。制御装置10は、炊きあげ工程においては、炊飯物の温度が98℃(米をα化させる温度)まで上昇するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御する。
【0056】
更に、制御装置10は、沸騰維持工程においては、炊飯物の温度が沸騰温度に達するように、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を制御し、この状態を米がα化するまで沸騰を維持する。制御装置10は、むらし工程においては、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を停止し、炊飯量に応じたむらし時間が経過するまで炊飯物(米飯)をむらす。なお、各工程において、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5への通電を交互に行うようにして、内釜の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにし、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにしても良い。
【0057】
制御装置10は、S69において、ΔTp≧ΔTpjのときには、内釜2内の炊飯量が「中量」と判定して、凸部加熱コイル4への通電を停止させ、底部加熱コイル5のみ通電を継続させて(S75)、前述したように、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S76〜S79)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S85)。
【0058】
制御装置10は、予熱工程においては、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度まで上昇するように、底部加熱コイル5への通電を制御し、炊飯物から露出している凸収容部2aが異常な温度にならない程度に、凸部加熱コイル4への通電を短時間行う。これは、できる限り鉛直方向に熱源を持たせて、炊飯物の米の吸水ムラを抑制するためである。
【0059】
制御装置10は、炊きあげ工程・沸騰維持工程においては、米が水をある程度吸って、体積が増えた段階で、凸部加熱コイル4への通電時間を予熱工程時よりも徐々に長くなるようにする。この場合、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5の両方に略同時に通電、あるいは交互に通電させて、内釜2の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにして、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにする。
【0060】
また、制御装置10は、S68において、ΔTb<ΔTbjで、かつΔTs≧ΔTsjのときには、内釜2内の炊飯量が「少量」と判定して、凸部加熱コイル4への通電を停止させ、底部加熱コイル5のみ通電を継続させて(S80)、前述したように、予熱工程、炊きあげ工程、沸騰維持工程、むらし工程の各工程を順に実施し(S81〜S84)、むらし工程を終了したときに炊飯を終了する(S85)。
【0061】
制御装置10は、予熱工程においては、底部加熱コイル5のみ通電させて、内釜2内の炊飯物の温度が予熱温度になるようにする。制御装置10は、炊きあげ工程・沸騰維持工程においては、米が水をある程度吸って、体積が増えた段階で、炊飯物から露出している凸収容部2aが異常な温度にならない程度に、凸部加熱コイル4への通電を短時間行う。これは、できる限り鉛直方向に熱源を持たせて、炊飯物の米の吸水ムラを抑制するためである。この場合、制御装置10は、凸部加熱コイル4と底部加熱コイル5の両方に略同時に通電、あるいは交互に通電させて、内釜2の中央部分から自然対流が起きるように、また、内釜2の内周側面から自然対流が起きるようにして、内釜2内の温度ムラを少なく、かつ米飯がムラなく炊き上がるようにする。
【0062】
以上のように実施の形態3によれば、炊飯開始t0の際(内釜2を誘導加熱する前)に、底部初期温度Tb0、側面初期温度Ts0、上面初期温度Tp0および内部初期温度Ti0を読み込み、内釜2を誘導加熱してから一定時間t経過後に、底部温度Tb、側面温度Tsおよび上面温度Tpを読み込んで、内釜2を誘導加熱する前の底部初期温度Tb0、側面初期温度Ts0および上面初期温度Tp0とでそれぞれの温度変化値ΔTb、ΔTs、ΔTpを算出する。そして、内釜2を誘導加熱する前に読み込んだ内部初期温度Ti0(内部温度Ti0)に対応して設定された設定底部温度ΔTbj、設定側面温度ΔTsjおよび設定上面温度ΔTpjをテーブルから抽出して、各温度変化値ΔTb、ΔTs、ΔTpとそれぞれ比較し、その比較結果から内釜2内の炊飯量を判定するようにしている。
これにより、内釜2の底部中央に設けられた凸収容部2aの高さよりも炊飯物が低い場合、つまり炊飯量が少量あるいは中量であっても、正確に内釜2内の炊飯量を判定できる。このため、電力供給が不足したり、過剰に電力を供給するということがなくなり、最適な電力を供給することができる。また、加熱ロスや内釜2の凸収容部2aの不必要な温度上昇を抑制でき、このため、内釜2など本体1の耐久性の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 本体、2 内釜、2a 凸収容部、3 蓋体、4 凸部加熱コイル、5 底部加熱コイル、6 中容器、6a 凸部、7 底部温度センサー、8 側面温度センサー、9 蓋温度センサー、10 制御装置、11 重量センサー、12 非接触温度センサー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6