【実施例1】
【0015】
実施例1に係る仕切弁につき、
図1から
図6を参照して説明する。先ず
図1の符号10,20は、本発明の適用された仕切弁である。
図1(a),(b)に示されるように、本発明の仕切弁10,20は、例えば流体管路1の所定の更新区間Sを更新する場合に、当該更新区間Sの更新とともに取り付けられ、次の更新区間Tの更新のため管路切り換えを不断流状態で行うようになっている。
【0016】
より具体的には、先ず
図1に示されるように、更新区間Sの上流側及び下流側に、開閉弁付割T字管3,3を接続し、その開閉弁4,4に接続した図示しない穿孔機を用い不断流状態で流体管を穿孔した後、これ等開閉弁付割T字管3,3同士をバイパス管5で接続する。また、これら開閉弁付割T字管3,3の更新区間S側に隣接した箇所に、同様に不断流状態で流体管を穿孔するとともに、当該穿孔を介して流体管を開閉可能な弁体を備えた密封栓2,2を設ける。
【0017】
そして、両開閉弁4,4を開放し且つ両密封栓2,2を閉塞することで、管内流体がバイパス管5にバイパスされる状態となる。この状態で更新区間Sの既設管を切除し新設管を取り付ける等の更新工事を施工できる。施工後は、両密封栓2,2を開放し両開閉弁4,4を閉塞することで、管内流体の流路を新設管に戻し、バイパス管5は撤去する。
【0018】
また
図1(b)に示されるように、新設管の取付けとともに、更新済み区間S1に後述するT字管型仕切弁20、直管型仕切弁10及びバイパス管6を予め配設することで、更新済み区間S1に隣接する次の更新区間Tの更新工事の準備をしておく。
【0019】
次に、更新区間Tの図示右側に、上記と同様の開閉弁付割T字管3及び密封栓2を取り付けた後、更新区間Tの更新工事を施工する。以下、特に図示しないが、次の更新区間を順次施工する。
【0020】
尚、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0021】
本発明の仕切弁の構造について説明する。
図2に示されるように、直管型仕切弁10は、管網を構成する流体管に接続される管路部としての直管部11と、この直管部11に形成された孔部11aを介し内部が連通する筐体部12と、この筐体部12に設けられ直管部11の内面を開閉可能に軸支された弁体部15と、この弁体部15が開放された状態で直管部11及び筐体部12の連通を遮断可能な作業弁部16と、から主として構成されている。
【0022】
より詳しくは、直管型仕切弁10の筐体部12は、直管部11に一体形成され筒状に延設される本体部14と、この本体部14の内周面に形成された案内部14bに周設したパッキン18を介し、密封状態で嵌合した可動部13とを有している。
【0023】
すなわち可動部13は、本体部14に入れ子式に嵌合しており、本体部14に対し直管部11の径方向に伸長若しくは短縮可能となっている。
図2に示されるように、可動部13と本体部14とは、互いの接続部としてのフランジ13a,14aのボルト孔に挿通されたボルト・ナット17によって接続されており、可動部13が本体部14に対し短縮した短縮位置では、互いのフランジ13a,14aが当接し過挿入が防止されるようになっている。また可動部13は、上部周壁13c及び下部周壁13bの間の略中央高さ位置にフランジ13aを有しており、下部周壁13bがパッキン18に摺動するようになっている。
【0024】
更に本体部14には、作業弁部16を構成する作業弁体16a及びこの作業弁体16aを外方から操作可能な操作軸16bが、孔部11aに連通する凹部内に配設されている。作業弁体16aは、孔部11aを開放する開放位置と遮断する遮断位置とを、外方に突出する操作軸16bの端部を把持し操作することで、直管部11の延設方向にスライド移動可能に設けられている。
【0025】
このように、作業弁部16の作業弁体16aが直管部11の延設方向に開閉するため、作業弁部16が直管部11から突出することを回避できる。
【0026】
また弁体部15は、可動部13の上端を密封状に貫通し、周方向に回転可能且つ軸方向に移動不能に枢支された弁軸15aと、この弁軸15aの雄ネジに螺合した雌ネジこま15bを備え弾性材により外面が被覆された弁体15cとから構成されている。すなわち弁体部15は、可動部13の外方に突出した弁軸15aの操作端部15dを把持し回転操作することで、雌ネジこま15bの螺挿に伴い弁体15cが軸方向に移動し、
図4(c)に示される直管部11の開放位置と、弁体15cの外面が直管部11の内面に周方向に亘り密封状に当接する閉塞位置(2点鎖線で図示)との間を往復動できるようになっている。
【0027】
図3に示されるように、T字管型仕切弁20は、流体管であるバイパス管に接続される管路部としての分岐管部21bと、この分岐管部21bに略直交してT字状に内部連通する本管部21cとを有し、この分岐管部21bに形成された孔部21aを介し内部が連通する筐体部12を備えている。T字管型仕切弁20のその他の構造は、上記した直管型仕切弁10と同様であるため、直管型仕切弁10と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0028】
次に
図4(a)〜(c)に示されるように、直管型仕切弁10の可動部13及び弁体部15の組み付け工程について、工程順に説明する。
【0029】
先ず、
図4(a)に示されるように、可動部13及び弁体部15の組み付け前の直管型仕切弁10は、本体部14のフランジ14aに閉塞蓋8が配置されており、本体部14と閉塞蓋8とはボルト・ナット9により締結されている。閉塞蓋8の下方では作業弁体16aが孔部11aを遮断しており、直管部11の密封性が保たれている。尚、閉塞蓋8の下面にはシート面が下方に延設されており、このシート面がパッキン18に密接することで、密封状態が維持されている。
【0030】
次に、
図4(b)に示されるように、閉塞蓋8を取り外し、これに替えて弁体部15を備えた可動部13を本体部14に組み付け、両フランジ13a,14aのボルト孔にボルト・ナット17若しくは本発明の制限手段としての規制ボルト30を取り付けておく。
【0031】
図6に示されるように、規制ボルト30は、対向面間が所定間隔離間した一対の対向片32a,32b及びこれら対向片32a,32bに架設された架設片32cからなり略コ字状に一体形成された規制部32と、一方の対向片32aの挿通孔から挿通され他方の対向片32bの螺挿孔に螺挿されるボルト31とからなる。さらに規制ボルト30は、架設片32cの略中央の開口部32dに挿通される所定高さの剛体からなるスペーサ33を備えている。尚、本実施例の規制ボルトは、必ずしも架設片32cの開口部32d及びスペーサ33を備えずともよい。
【0032】
図4(b)に示されるように、規制ボルト30は、一対の対向片32a,32bがそれぞれフランジ13aの上面及びフランジ14aの下面に当接し得る状態で、両フランジ13a,14aに取り付けられる。また規制ボルト30は、両フランジ13a,14aに取り付けられた状態で、スペーサ33を架設片32cの開口部32dから両フランジ13a,14aの対向面間に挿通できるようになっている。
【0033】
可動部13は本体部14に対し伸長しているが、可動部13の下部周壁13bの下端がパッキン18に密接しているため、密封状態を維持している。また、規制ボルト30のスペーサ33が両フランジ13a,14aの対向面間に係合しているため、弁体部15の弁体15cの下端は、遮断状態の作業弁体16aに接触することなく上方に離間している。
【0034】
このように、スペーサ33が弁体15cと作業弁体16aとの離間状態を維持可能な所定幅の短縮代に制限することで、可動部13を短縮させる際に、可動部13に伴って移動する弁体15cが作業弁体16aに当接し損傷してしまうことがない。
【0035】
次に、作業弁部16の外方に突出した操作軸16bの端部を被覆した被覆ナット16cを取り外し、操作軸16bを操作して作業弁体16aを開放状態とする。この開放に伴い筐体部12内に流体が流入するが、可動部13と本体部14とに遊嵌したボルト・ナット17及び規制ボルト30の規制部32が流体圧に抗し、可動部13の移動が規制されているため、密封状態は保たれている。作業弁体16aの開放後は、規制ボルト30に替えてボルト・ナット17を取り付ける。
【0036】
図4(c)に示されるように、ボルト・ナット17を徐々に螺入していくことで、可動部13を本体部14に対し漸次短縮させる。ボルト・ナット17を緊締して両フランジ13a,14aが面接触する状態になっている。この状態で、可動部13の位置は、開放位置の弁体15cの下端は、開放状態の作業弁体16aを超えて下方に位置し、且つ直管部11の管頂よりも上方に位置する短縮位置である。次に、弁軸15aの操作端部15dを回転操作することで弁体15cを上下に移動させ、直管部11を開放若しくは閉塞することができる。尚、本実施例の両フランジ13a,14aが面接触する状態に替えて、可動部13の下部周壁13bの下端面が本体部14の案内部14b下端の段部14cに当接した状態で、可動部13の位置が短縮位置となるように構成してもよい。
【0037】
このように、弁体15cの先端が作業弁体16aを超える位置まで可動部13を短縮することで、弁体部15が直管部11を開閉する開閉ストロークをより短縮できるばかりか、使用後に可動部13を伸長位置に配置した状態で作業弁体16aを遮断して、この可動部13を取り外しできる。
【0038】
次に
図5(a)〜(c)に示されるように、直管型仕切弁10の可動部13及び弁体部15の取り外し工程について、工程順に説明する。
【0039】
先ず、
図5(a),(b)に示されるように、弁体15cを開放位置として、両フランジ13a,14aを緊締している複数組のボルト・ナット17のうち、一部のボルト・ナット17を取り外し、これに替えて、規制ボルト30を両フランジ13a,14aに締結する。
【0040】
次に、
図5(c)に示されるように、残りのボルト・ナット17を漸次緩めるとともに、可動部13を本体部14に対し伸長させる。このとき筐体部12内に作用する流体圧力を利用して可動部13を伸長するようにしてもよい。
【0041】
尚、本実施例では、両フランジ13a,14aを緊締するボルト・ナットは4組存在しており、このうち2組を取り外し規制ボルト30に替えるとともに、残りの2組のボルト・ナット17を漸次緩めるようにしているが、両フランジを緊締するボルト・ナットの組数、そのうち規制ボルトに取り換える組数、及び残りのボルト・ナットの組数は本実施例に限られず、例えば両フランジを緊締する4組のボルト・ナットのうち、1組のみ規制ボルトに取り替え3組のボルト・ナットを残してもよいし、あるいは両フランジを緊締するボルト・ナットが6組存在し、そのうち2組を規制ボルトに取り替え4組のボルト・ナットを残しても構わない。
【0042】
図5(c)に示されるように、開放状態の弁体15cの下端が作業弁体16aよりも上方に位置する伸長位置まで、可動部13を本体部14に対し伸長させる。規制部32の対向片32a,32bの対向幅は、上記した可動部13の伸長位置におけるフランジ13aの上面とフランジ14aの下面との離間幅と略同じであるため、操作者は、互いに離間するフランジ13aの上面及びフランジ14aの下面が、規制部32の対向片32a,32bにそれぞれ当接する位置を可動部13の伸長位置として判断できる。
【0043】
また、規制部32は、一対の対向片32a,32b及びこれらに架設された架設片32cからなる略コ字状に一体形成されているため、可動部13の伸長動作の際に、例え内部流体圧力等により可動部13に対し本体部から離脱する方向に不測の外力が働いても、規制部32がフランジに係合して移動を規制し、可動部13の脱嵌を防止し本体部14との密封状態を逸脱する虞がない。
【0044】
さらに、架設片32cの開口部32dを介しフランジ13a,14aの対向面間にスペーサ33を挿入することで、伸長した可動部13の位置が安定し、不測に落下する虞を防止できる。尚、スペーサ33の先端はテーパ状に形成されているため、フランジ13a,14aの対向面間に挿入しやすい。
【0045】
図5(c)に示されるように、可動部13の伸長位置で作業弁体16aを遮断し、可動部13及び弁体部15を取り外す。そして本体部14のフランジ14aに
図4(a)で示した閉塞蓋8を取り付ける。可動部13は、本体部14との接続部であるフランジ13aよりも直管部11の反対側に、上部周壁13cが釣鐘状に延設されていることで、内部に弁体15cの収納空間が形成されている。このようにすることで、本体部14のフランジ14aを極力直管部11寄りに配設できるため、可動部13及び弁体部15を取り外した後に直管部11に残される本体部14を極小化することができる。
【0046】
上記した本発明の制限手段としての規制ボルト30によれば、筐体部12の可動部13が、本体部14に対する伸長を制限されていることで、直管型仕切弁10の使用後は可動部13を本体部14から脱嵌することなく密封状態を維持したまま伸長動作でき、内部流体の漏出なく作業弁体16aを遮断して可動部13を取り外すことができる。
【0047】
次に
図7に示されるように、本発明の仕切弁の変形例について説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。本変形例の筐体部12’は、本体部14’の内周面14dが段部を有さず上下方向に直線状に形成されており、この内周面14dに沿って可動部13が伸縮するようになっている。このようにすることで、仕切弁10’の構造を簡素化できるばかりか、段部に夾雑物が滞留する虞を回避できる。
【0048】
また、本発明の仕切弁の別の変形例として、特に図示しないが、例えば可動部と本体部とを密封するパッキンが、可動部の外周面に設けられていてもよいし、あるいは更に別の変形例として、可動部が着脱する本体部のフランジが、管路部から離間し、開放状態の弁体部の基端付近に設けられていてもよい。
【実施例3】
【0055】
次に、実施例3に係る仕切弁につき、
図9を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0056】
図9(a)に示されるように、本実施例3の制限手段50は、直管型仕切弁10の本体部14に対し固定され可動部13を囲うように立設される立設部51と、立設部51の上壁の雌ネジ部51aに螺合される操作ネジ52と、この操作ネジ52を回転自在且つ軸方向に移動不能に軸受けするとともに、弁体部15に固定される固定部53と、から構成される。
【0057】
制限手段50の組み付けについて、詳しくは、立設部51の下端に設けた複数の固定ネジ51bを内方に螺挿し、本体部14のフランジ14a周面部に当接若しくは螺合させることで、立設部51を本体部14に対し固定する。また固定部53に設けた固定ネジ53bを内方に螺挿し、弁体部15の操作端部15dに当接させることで、固定部53を弁体部15に固定する。また制限手段50を組み付けした後に、両フランジ13a,14aを緊締するボルト・ナットは、遊嵌若しくは取り外しておく。
【0058】
次に、
図9(b)に示されるように、操作ネジ52を上方に螺挿すると、操作ネジ52は、これを軸受けする固定部53、これに固定された弁体部15及び可動部13を伴って、本体部14に固定された立設部51に対し、漸次上方に移動する。
【0059】
このように操作ネジ52を回転操作することで、可動部13を本体部14に対し容易に且つ無段階に伸縮させることができる。また操作ネジ52及び立設部51の雌ネジ部51aが螺合していることで、可動部13に対し上方向に外力が加わってもこの外力に対抗できるため、可動部13が本体部14から脱嵌してしまう虞が無い。つまり本実施例3の操作ネジ52及び雌ネジ部51aは、本発明の制限手段の規制部を構成している。
【0060】
また、例えば操作ネジ52外面の所定高さ位置に、図示しない目印を付しておくことで、図に示される伸長位置に達したことを操作者が目視で確認できる。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0062】
例えば、前記実施例1では、本発明の制限手段としての規制ボルト30が、可動部13の短縮を所定幅に規制するスペーサ33を備えているが、例えばこのスペーサ33に替えて、略コ字状の規制部の前後方向の幅を上記した所定幅に形成してもよく、当該規制部を両フランジ13a,14aの対向面間に配置することで、可動部13の短縮を所定幅に規制するようにしてもよい。
【0063】
また例えば、前記実施例1では、本発明の制限手段としての規制ボルト30が、所定幅の伸長代を超える伸長を規制する規制部32を備えているが、本発明の制限手段は、必ずしも上記した規制部を備えているものに限られず、例えば密封状態を維持可能な所定幅の伸長代に達したことを操作者が目視で確認できる目印を有していてもよい。