特許第6141186号(P6141186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6141186非常に効率的なエネルギー移動及び調整可能なストークシフトを特徴とする複数の色素がドープされたシリカナノ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141186
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】非常に効率的なエネルギー移動及び調整可能なストークシフトを特徴とする複数の色素がドープされたシリカナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/00 20060101AFI20170529BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170529BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170529BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20170529BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20170529BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20170529BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20170529BHJP
   C09B 67/08 20060101ALN20170529BHJP
   C09B 67/02 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
   A61K49/00 A
   A61K9/14
   A61K47/04
   A61K47/34
   A61P43/00
   B82Y20/00
   B82Y5/00
   B82Y30/00
   G01N21/64 F
   !C09B67/08 B
   !C09B67/02 A
【請求項の数】10
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2013-533319(P2013-533319)
(86)(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公表番号】特表2014-503471(P2014-503471A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】IB2011054546
(87)【国際公開番号】WO2012049657
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年9月19日
(31)【優先権主張番号】RM2010A000547
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504381401
【氏名又は名称】アルマ・マーター・ステュディオラム−ウニベルシタッディ・ボローニャ
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】ボナッチ、サラ
(72)【発明者】
【氏名】モンタルティ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】プロディ、ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ザッケローニ、ネルシ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリス、リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】ジェノベーゼ、ダミアノ
(72)【発明者】
【氏名】ラムパッツォ、エンリコ
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0214833(US,A1)
【文献】 Journal of Physical Chemistry. B,2010年 7月13日,[online],doi:10.1021/jp1023444,Retrieved from the internet: ,URL,http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jp1023444
【文献】 ACS Nano,2010年 9月,Vol.4,No.9,p5389−5397
【文献】 Journal of Physical Chemistry. B,2007年,Vol.111,No.25,p7085−7091
【文献】 Journal of Fluorescence,2010年 1月,Vol.20,No.1,p67−72
【文献】 Tetrahedron Letters,2010年 3月,Vol.51,No.9,p1269−1272
【文献】 Biochemical and Biophysical Research Communications,1995年,Vol.207,No.2,p508−514
【文献】 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2006年,Vol.103,No.37,p13872−13877
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/00−49/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.親水性のシェル及び疎水性の中心部分を有するミセルと、
b.前記ミセルの中心部分の領域に位置し、シリケートネットワークを含むコアと、
c.少なくとも1種類の界面活性剤の複数の分子であって、以下の構造
1−Hydro1−Lipo−Hydro2−M2
(式中、
Lipoは、疎水性の鎖を表し、
Hydro1及びHydro2は、互いに独立して、それぞれの親水性の鎖を表し、M1は、認識官能基であり、
2は、−H、−OH、認識官能基及びヘテロ基からなる群より選択される)を有する官能化界面活性剤の少なくとも1種類の分子を含む複数の分子と、
d.前記コアb)中の第1のドナー色素及び少なくとも第2のアクセプター色素であって、前記第1及び前記少なくとも第2の色素は、エネルギー移動過程におけるドナー−アクセプター対のそれぞれの関係を有し、考慮するスペクトル領域についてモル吸光係数ε≧10,000M-1cm-1、蛍光量子収率Φ≧0.01、前記ドナー及び前記アクセプター色素との間でのフェルスター理論による十分な重なり積分を有し、前記色素は親油性であってよいし、又はトリアルコキシシラン部分の導入に有用な官能基を持っていてもよく;
前記第一の色素は7−(ジエチルアミノ)−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2−オキソ−2H−クロメン−3−カルボキサミド(D)および11−オキソ−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2,3,5,6,7,11−ヘキサヒドロ−1H−ピラノ[2,3−f]ピリド[3,2,1−ij]キノリン−10−カルボキサミド(D2)からなる群から選択され;
前記少なくとも前記第2の色素は(2,6−ジエチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)(B)、4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(3−オキソ−3−((3−(トリエトキシ−シリル)プロピル)アミノ)プロピル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン(B1)、4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン(B2)、ローダミンBトリエトキシシラン誘導体(R)、シアニン2−((1E,3E,5E)−5−(1−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−3,3−ジメチルインドリン−2−イリ−デン)−ペンタ−1,3−ジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウムヨージドのトリエトキシシラン誘導体(C5)、シアニン2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェノキシ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロ−へキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウムヨージドのトリエトキシシラン誘導体(C7)、及びシアニンナトリウム2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェニルチオ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−6−スルホナト−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウム−6−スルホネートのトリエトキシシラン誘導体(C2)からなる群から選択される、色素と
を含むシリカナノ粒子。
【請求項2】
前記官能基がアミン、−COOH、−N3、アルキン、アルケン、アクリロイル、−SH、マレイミド、アルデヒド、−OH、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、ヨードアセチル、TCT(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン)および活性化カルボン酸基からなる群より選択される請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記活性化カルボン酸基がNHS及びNHS−スルホエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド及びスルホN−ヒドロキシスクシンイミド)、TFPエステル(2,3,5,6−テトラフルオロフェノール)、PFPエステル(ペンタフルオロフェノール)、HOBtエステル(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、およびN−アシルイミダゾールからなる群より選択される請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
DB、DR、DC5、DBR、DBC5、DRC5、DBRC5、DBRC5C7及びD2B2C5C2からなる群より選択される色素の組合せを含む請求項1から3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記ナノ粒子がBR、BC5、RC5、BRC5からなる群より選択される色素の組合せを含む請求項1から3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
治療、診断及びセラノステックにおいて使用するための請求項1から5のいずれか一項のナノ粒子。
【請求項7】
治療、診断及びセラノステックにおけるプローブとして使用するための請求項6に記載のナノ粒子
【請求項8】
分析化学における請求項1からいずれか一項のナノ粒子の使用(ヒトの治療、診断及びセラノステックにおける使用を除く)
【請求項9】
分析化学におけるプローブとしての請求項8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項の、適切な量のナノ粒子を含む診断又はセラノステックのための組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジーの分野、特には少なくとも2種類の色素を含むシリカナノ粒子に関する。より詳細には、本発明は、色素が効率的なエネルギー移動過程を提供するシリカナノ粒子に関する。また、本発明は、医学、特には治療及び診断の分野における、より詳細にはセラノステック(theranostics)における、及び分析化学の分野における、前記ナノ粒子の使用も提供する。
【0002】
発明の背景
発光色素は、影響力の大きな分野における数多くの用途、例えば、環境及び食品分析、セキュリティ、並びに医療診断のために広く使用されているマーカーである。蛍光測定は、通常、非常に感度が高く、低コストであり、容易に行うことができ、多目的に使用でき、サブミクロンの視覚化及びサブミリ秒の時間分解能を提供する(L. Prodi, New J. of Chem. 2005, 29, 20-31)。
【0003】
特に、早期診断は治療の成功及び患者のクオリティ・オブ・ライフに密接に関連するので、医療診断は、水溶性、光安定性、非常に低い毒性及び高輝度などの特定の(光)化学的及び光物理学的性質が付与された蛍光ラベル及びセンサを必要とする(L. Prodi, New J. of Chem. 2005, 29, 20-31; Wolfbeis, O. S. Analytical Chemistry 2006, 78, 3859)。
【0004】
フォトルミネセンス分光法の汎用性は、好都合な信号を最適化するために調整することができる幅広い数のパラメータにも起因する。非常に複雑な分析学的問題でさえも、励起及び発光波長、信号収集のタイムウィンドウ、並びに励起ビーム又は放射光の偏光を制御することによって、実際に解決できる。
【0005】
役立つ蛍光ベースラベルは、様々な特徴を示さなければならない(O. S. Wolfbeis, Anal. Chem. 2006, 78, 3859-3873)。全ての生体ラベルのように、生体分子へ共有結合するための反応基を持つこと、水溶性であること、及び毒性を示さないことが要請される。蛍光性に関する限りにおいては、まずは蛍光単位が考えられる最高の蛍光信号を与えるという事実に依存する。フォトルミネセンスは、光子の吸収による励起状態の生成とそれにつづく輻射失活とを含むので2段階過程であり、信号強度は、モル吸収係数(ε)及びルミネセンス量子収率(Φ)による両方の過程の効率に直接関連する。ルミネセンス強度は、実際、非常に希釈した溶液中では、積ε×Φに正比例し、色素の輝度として定義される(L. Prodi, ibid)。また、光安定性も、特に撮像用途においては、特に重要である。更に、生物学的試料が含まれる場合特に、自己蛍光及び光散乱、関連する干渉は、信号対ノイズ比を高めるために、避けなければならない。これは、典型的には、3つの別々の手法を使用して行うことができる。第1は、700〜900nm領域に吸収及びルミネセンス帯を示す赤色及び近赤外(NIR)色素の開発及び使用に基づく。これらの色素は、散乱を抑え(波長の4乗に反比例するため)、このスペクトル領域では生体分子の自然蛍光がないことの結果として、極小のバックグラウンドを示す。第2の手法は、室温で長寿命を示す燐光色素の使用に基づく。この場合、バックグランド光は時間分解分光の使用により排除される。なぜなら、自然蛍光色素分子からの散乱光及び蛍光は、燐光よりも遥かに早く減衰し、そのため、測定装置によって取り除くことができるからである。最後に、大きなストークスシフトも有用である。なぜなら、これは、レイリー−チンダル及びラマンバンドからの干渉を減らすのに役立つからである。
【0006】
ルミネセンス分光法の幅広い用途のおかげで、蛍光ラベルの設計を最適にするための多くの研究努力が行われており、ナノ技術界における利点の利益も得てきた(Bruchez, M.; Moronne, M.; Gin, P.; Weiss, S.; Alivisatos, A. P. Science 1998, 281, 2013; Riehemann, K.; Schneider, S. W.; Luger, T. A.; Godin, B.; Ferrari, M.; Fuchs, H. Angew. Chem. Int. Edit. 2009, 48, 872; Shi, D. L. Adv. Funct. Mater. 2009, 19, 3356; Gunasekera, U. A.; Pankhurst, Q. A.; Douek, M. Targeted Oncology 2009, 4, 169; Strassert, C. A.; Otter, M.; Albuquerque, R. Q.; Hone, A.; Vida, Y.; Maier, B.; De Cola, L. Angew Chem Int Edit 2009, 48, 7928, Doshi, N.; Mitragotri, S. Adv. Funct. Mater. 2009, 19, 3843; Medintz, I. L; Uyeda, H. T.; Goldman, E. R.; Mattoussi, H. Nature Materials 2005, 4, 435)。これらの研究分野によって与えられる様々な全ての可能性の中で、シリカ系のルミネセンスナノ粒子(色素がドープされたシリカナノ粒子−DDSN−とも呼ばれる)は、重要な分析的課題、特に医療診断及び撮像に関連するもの(D. Shi, Adv. Funct. Mat. 2009, 19, 3356-3373)に対する、及びナノセラノステックデバイスの開発(Shi, D. L. Adv. Fund. Mater. 2009, 19, 3356; Gunasekera, U. A.; Pankhurst, Q. A.; Douek, M. Targeted Oncology 2009, 4, 169; Yong, K. T.; Roy, I.; Swihart, M. T.; Prasad, P. N. Journal of Materials Chemistry 2009, 19, 4655; Kim, D. K.; Dobson, J. Journal of Materials Chemistry 2009, 19, 6294; Liu, Y. Y.; Miyoshi, H.; Nakamura, M. International Journal of Cancer 2007, 120, 2527; Liu, Y.; Lou, C; Yang, H.; Shi, M.; Miyoshi, H. Curr. Cancer Drug Targets 2011 , 11, 156)に対する興味深い解決策を提供することができる。シリカは、実際、内在性の毒性を示さないが、小さな寸法のナノ粒子に関連する考えられる危険性を完全に排除するための、より深い研究が進行中である(Gunasekera, U. A.; Pankhurst, Q. A.; Douek, M. Targeted Oncology 2009, 4, 169; Wang, L.; Wang, K. M.; Santra, S.; Zhao, X. J.; Hilliard, L. R.; Smith, J. E.; Wu, J. R.; Tan, W. H. Analytical Chemistry 2006, 78, 646; Yong, K. T.; Roy, I.; Swihart, M. T.; Prasad, P. N. Journal of Materials Chemistry 2009, 19, 4655; Burns, A. A.; Vider, J.; Ow, H.; Herz, E.; Penate-Medina, O.; Baumgart, M.; Larson, S. M.; Wiesner, U.; Bradbury, M. Nano Letters 2009, 9, 442)。更に、それらのかなり単純であり且つ手ごろな合成は、バイオコンジュゲーションの準備が整った水溶性構造を容易にもたらすことができる。加えて、各DDSNは、多くの蛍光色素分子を含むことができ、106-1cm-1を容易に超えるモル吸収係数に達することができる。また、シリカマトリックスは、ナノ粒子内部に隔離された色素を外部薬品から保護することもでき、それにより、それらの(光)安定性及び、多くの場合、それらのルミネセンス量子収率を高めるので、DDSNは一般に見事なほど高い明るさを示す。
【0007】
しかしながら、明るさに加え、DDSNは上で論じた他の特徴も示し得る。
【0008】
例えば、それらは、大きなストークスシフトを示すように、且つ、より要件の多い条件で、バーコーディング及び多重分析に適した性質を示すように、容易に設計することができる。励起波長及び発光波長の間の大きな分離を得るために今までのところ提案されている最も単純な戦略は、Wiesner及びその同僚によって使用されるそれであり(E. Herz, A. Burns, D. Bonner, U. Wiesner, Macromol. Rapid Commun. 2009, 30, 1907-1910)、彼らは内在的に大きなストークスシフトによって特徴付けられる市販の蛍光色素分子を含有するDDSN(電荷移動特性を有する最低励起状態を典型的に有する)及びアルコキシシランにより誘導体化されたものを合成した。この手法は、直接的であるが、この特性を有する比較的少量の色素によって制限され得る。
【0009】
他の最も興味深く有益な手法は、シリカナノ粒子内部に拘束された2種以上の化学種、金属錯体又は有機色素の間の効率的なエネルギー移動過程を利用することである。Zhao及びその同僚(C. Wu, J. Hong, X. Guo, C. Huang, J. Lai, J. Zheng, J. Chen, X. Mu, Y. Zhao, Chem. Commun. 2008, 750-752)がRu(II)及びTb(III)錯体がドープされたシリカベースの系を開発した一方で、Konovalov及びその同僚(S. V. Fedorenko, O. D. Bochkova, A. R. Mustafina, V. A. Burilov, M . K. Kad irov, C . V. Hol in , I . R. N izameev, V. V. Skripacheva , A. Yu . Menshikova, I. S. Antipin, A. I. Konovalov, J. Phys. Chem. C 2010, 114, 6350-6355)は、類似した系であるが、さらによりレッドシフトした、Ru(II)及びYb(III)を含有した種をベースにしたものを提案した。
【0010】
この戦略は、異なる色の放射を示すが同じ波長で効率的に励起することができるナノ粒子のセットを得ることを可能にすることもでき(L. Wang, W. H. Tan, Nano Lett. 2006, 6, 84-88; L. Wang, C. Y. Yang, W. H. Tan, Nano Lett. 2005, 5, 37-43; X. L. Chen, M. C. Estevez, Z. Zhu, Y. F. Huang, Y. Chen, L. Wang, W. H. Tan, Anal. Chem. 2009, 81, 7009-7014)、それ以外では量子ドット(QD)を使用するだけで達成可能な特徴である。それらの中で色素の数及び性質並びにエネルギー移動過程の効率に依存して、2つの異なる用途が考え出され得ることに留意することが重要である。
【0011】
第1の用途は、バーコーディングNPの開発に基づく。この場合において、様々なナノ粒子のファミリーは、n種類の色素のセットを使用して調製され、各々のそれは、ドープ材料として、区別可能なルミネセンス帯を与える。ナノ粒子の各種類は、シリカマトリックス内部の様々な色素の異なる濃度によって特徴づけられる。部分的だが完全ではないエネルギー移動を有するために色素が適切に選択されるならば、全てのナノ粒子は1つの波長励起下で多帯域放射を呈することができ、それらは、異なるn種類の色素のn個のバンド(色)における異なる強度によって構成されるサインによって顕著であり得る。4つの放射帯のそれぞれで5つの異なる強度を持つ4種類の色素がドープされたNPを使用して、1024(44)個の異なるナノ粒子を予想することができる。この手法は、例えば蛍光顕微鏡法又はフローサイトメトリーにおいて単一のナノ粒子を扱うことができる場合には常に役立ち、ナノ粒子の各種類が、異なる生体分子又は生体構造(細胞)を認識するために誘導体化されるならば、NPの蛍光サインは調査中の分析物の性質を明確に示し、広範な多重化を可能にする。単一のアッセイにおいて多くの分析物の量を同時に測定する能力が医療診断及び撮像においてますます重要になっていることを思い出させることは重要である(Wolfbeis, O. S. Analytical Chemistry 2006, 78, 3859; Yao, G.; Wang, L.; Wu, Y. R.; Smith, J.; Xu, J. S.; Zhao, W. J.; Lee, E. J.; Tan, W. H. Analytical and Bioanalytical Chemistry 2006, 385, 518; Sukhanova, A.; Nabiev, I. Critical Reviews in Oncology Hematology 2008, 68, 39)。シリカナノ粒子についてもこの手法の多くの例が報告されている。
【0012】
第2の手法は、(ほとんど)完全なエネルギー移動が、ナノ粒子内部に存在する異なる色素間で起こる場合にのみ可能である。4種類の異なる色素、A、B、C及びD(波長が増加する順番)のセットが使用される場合、(i)A、(ii)A及びB、(iii)A、B及びC、並びに(iv)A、B、C及びDを含有する4種類のナノ粒子のセットを得ることができる。全てのナノ粒子は、A(単一波長励起)の吸収で励起することができるが、この場合において、最長波長色素のみが、短波長励起であっても有意な蛍光を呈することができる(Wang, L.; Tan, W. H. Nano Letters 2006, 6, 84)。この場合において、同時に調査することができる可能分析物の数は有意に低いが、異なるナノ粒子を分離する必要もなく異なる信号を区別することが可能であり、例えば多くのDNA分析、細胞蛍光測定(cytofluorimetry)及び組織化学において興味深い特徴である。この文脈において、DDSNは、2種類の蛍光色素、エネルギードナー、例えばフィコエリトリン、及びエネルギーアクセプター(典型的にはシアニン5又は7)の組合せである市販のタンデム色素の役立つ代替物であり得る(Roederer, M.; Kantor, A. B.; Parks, D. R.; Herzenberg, L. A. Cytometry 1996, 24, 191)。
【0013】
タンデム色素は、高輝度及び大きなストークシフトを提供する一方で、多くの欠点、例えば不安定性及び可変性を示す(Hulspas, R.; Dombkowski, D.; Preffer, F.; Douglas, D.; Kildew-Shah, B.; Gilbert, J. Cytom. Part A 2009, 75A, 966)。
【0014】
それらの間の非常に効率的なエネルギー移動過程がドナーのほぼ定量的な消光及びアクセプターの増感を確実にすることができる(少なくとも)2種類の異なる色素がドープされたシリカナノ粒子に基づく再現性が高く安定なラベルを提供する必要もある。
【0015】
効率的な粒子内エネルギー移動の適正な設計は、他の非常に役立つ機能、例えば光捕集、信号処理及びエネルギー変換を行うのに適したDDSNを生成することができることも留意すべきである(Bonacchi, S.; Genovese, D.; Juris, R.; Montalti, M.; Prodi, L.; Rampazzo, E.; Zaccheroni, N. Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 4056)。我々が知る限り、この種類の手法はシリカナノ粒子の分野において未だ探究されていない。
【0016】
ナノ粒子は、生体分析学的分野において、特には生体分子の検出、ラべリング及び撮像のため、並びに治療法として、特に薬物担体としても使用される(例えば、Q. Huo, J. Liu, L. Q. Wang, Y. Jiang, T. N. Lambert, E. Fang, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 6447-6453を参照のこと)。
【0017】
Tan及び同僚ら(L. Wang, W. Tan, Nano Lett. 2006, 6, 84-88及びWO2007044711において)は、微生物及び生物学的材料の検出のための二重及び三重色素ナノ粒子を開示している。これらの文献によると、蛍光エネルギー移動過程(FRET)NPの1つの他の有望な利点は、NP中の色素分子の量を最適化することによって、最長波長色素のみが短波長励起で有意な蛍光を呈するように放射スペクトルを調整することができることである。この特徴は、多くの有機色素の小さなストークスシフトという課題を乗り越え、NPを、有意なレイリー/ラマン散乱又は内在性の蛍光(fluorescece)によって試料中で検出できるようにする。しかしながら、この問題の解決法を見い出す又は任意の改善を提供する方法は示されていない。更に、エネルギー移動効率はより低く、主なチャネルとは異なるチャネルの「ノイズ」が高い。この理由により、前記著者は、各チャネル(色)について異なる強度があるバーコーディングにおける用途も示唆している(例えば4、これは、5種類のチャネルで54(1024)種類の異なるナノ粒子を与え、各チャネルを所定のバイオマーカーに関連させることができる)。この種類の用途は、本発明の目的に不適切である。
【0018】
L. Wang, W. Zhao, W. Tan, Nano Res. 2008, 1, 99-115は、治療及び診断におけるバイオコンジュゲートされたシリカナノ粒子の使用を概説している。この概説において、前記著者は、多重細菌検出のための2種及び3種類の色素をドープしたシリカナノ粒子を提案している。3種色素ナノ粒子が説明されており、これらの3種類の色素は、効率的な蛍光エネルギー移動を可能にするように選択され、それらの有効なスペクトルの重なりのおかげで、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン6G(R6G)及び6−カルボキシル−X−ローダミン(ROX)である。
【0019】
エネルギー移動過程(又は蛍光エネルギー移動過程−FRET)を使用する多くの診断技術は、大きなストークスシフトに関連する高輝度を必要とする。
【0020】
これは、エネルギー移動過程の可能な限り最高の効率、単一波長励起及び大きなストークスシフトの可能性を意味する。
【0021】
しかしながら、ドナー色素の寄生自己消光の問題がまだある。
【0022】
更に、考えられる最高の輝度を求める際、自己消光過程は最小化されるべきである。なぜなら、それらが平均蛍光量子収率を低くし、ラベリングの程度を増加させることによって分子輝度を増加させる直接的手法の有効性を制限するからである(Lakowicz, J. R. Principles of Fluorescence Spectroscopy; 3rd Ed. ed.; Springer: New York, 2006; Montalti, M.; Prodi, L.; Zaccheroni, N.; Zattoni, A.; Reschiglian, P.; Falini, G. Langmuir 2004, 20, 2989)。
【0023】
この文脈において、DDSN内部でも自己消光過程が発生し得るが、ナノ粒子のコアに含められる大量の色素のおかげにより、観察される量子収率の減少は、しばしば、吸収の増加によって相殺されるのより大きいことが強調されるべきである。DDSN内部の効率的なエネルギー移動はこの方向において役立ち得る。
【0024】
特には、クマリン色素、又はキサンテン色素、例えばフルオレセインは、エネルギー移動過程における優れたドナーであるが、ナノ粒子中に特定の濃度で投入されると寄生自己消光に悩まされる(例えば、M. Montalti, L Prodi, N. Zaccheroni, A. Zattoni, P. Reschiglian, G. Falini, Langmuir, 2008, 20, 2989-2991を参照のこと)。
【0025】
本発明者らが知る限り、自己消光と同時に多重分析学的及び診断の技術において効率的なエネルギー移動過程及び大きなストークスシフトを確保するという問題の解決策は、文献では未だに報告されていない。
【0026】
発明の概要
驚くべきことに、WO2010013136及びWO2010013137に開示されている特定のシリカナノ粒子を、特定のスペクトル特性が付与されている色素の選択との組合せで使用することによって、自己消光の問題が予想外にも回避される、又は少なくとも実質的に低減され、大きなストークスシフトが単一励起波長を使用しても得られることが見いだされた。同時に、最も長波長の色素のみが、より短い励起波長であっても有意な蛍光を呈する。
【0027】
本発明の利点の1つは、他の利点の中でも、一、ニ、三及び四発色団のナノ粒子を提供し、ナノ構造体内部の異なる色素間でのエネルギー移動過程に対する前例のない効率が観察されることである。これらの過程は、一方の側面では、非常に高い全体的な増感を、及び他方の側面では、異なるドナーの非常に低い残留放射をもたらし、単一波長励起によって少なくとも4種類の異なる色を交差干渉がほとんどなく得ることを可能にする。
【0028】
それゆえに、本発明の1つの目的は、
a.実質的に親水性のシェル及び実質的に疎水性の中心部分を有するミセルと、
b.ミセルの中心部分の領域に位置し、シリケートネットワークを含むコアと、
c.少なくとも1種類の界面活性剤の複数の分子であって、以下の構造
1−Hydro1−Lipo−Hydro2−M2
(式中、
Lipoは、実質的に疎水性の鎖を表し、
Hydro1及びHydro2は、互いに独立して、それぞれの実質的に親水性の鎖を表し、
1は、認識官能基であり、
2は、−H、−OH、認識官能基及びヘテロ基からなる群より選択される)
を有する官能化界面活性剤の少なくとも1種類の分子を含む複数の分子と、
d.第1及び少なくとも第2の色素であって、前記第1及び前記少なくとも第2の色素は、エネルギー移動過程におけるドナー−アクセプター対のそれぞれの関係を持つ色素であり、考慮するスペクトル領域についてのモル吸光係数ε≧10,000M-1cm-1、蛍光量子収率Φ≧0.01、前記ドナーと前記アクセプター色素との間でのフェルスター(Foerster)理論による十分な重なり積分を有し、前記色素は親油性(lipophylic)(水に不溶性)であってよいし、又は官能基(例えばアミン、−COOH、−N3、アルキン、アルケン、アクリロイル、−SH、マレイミド、アルデヒド、−OH、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、ヨードアセチル、TCT(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン)若しくは活性化カルボン酸基、例えばNHS及びNHS−スルホエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド及びスルホN−ヒドロキシスクシンイミド)、TFPエステル(2,3,5,6−テトラフルオロフェノール)、PFPエステル(ペンタフルオロフェノール)、HOBtエステル(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、トリアルコキシシラン部分の導入に有用なN−アシルイミダゾールを持っていてもよい色素と
を含むシリカナノ粒子である。
【0029】
本発明の別の目的は、治療、診断及びセラノステックにおける上記ナノ粒子の使用である。本発明のナノ粒子の特に好ましい使用は、この技術分野において通例意図される通りの定義に従った、及び上述されているWO2010013136及びWO2010013137に提供されている定義にも従ったプローブである。
【0030】
本発明の別の目的は、分析化学における、特にはこの技術分野において通例意図される通りのプローブとしての、上記ナノ粒子の使用である。
【0031】
本発明の別の目的は、適切な量の上記ナノ粒子を含む診断又はセラノステックの組成物である。
【0032】
本発明のナノ粒子は、全色素系のドナー/アクセプターの各対のエネルギー移動効率が85%以上であるという利点を持つ。
【0033】
本発明は、以下のさらなる利点を提供する。
【0034】
−ナノ粒子が2種より多い色素を含有する場合、異なるドナーの非常に高い全体的増感及び非常に低い残留放射、
−最大700〜800nmまでの非常に大きなストークスシフト、
−最も高いエネルギーを有するドナー(最も青いドナー)さえ励起させる非常に高い輝度、
−最後のアクセプターを除く全ての色素のほとんど無視できる残留強度。
【0035】
本発明は、核酸分析、組織化学、細胞蛍光測定、病原性(patogenic)細菌検出に有利に適用される。
【0036】
これら及び他の目的を、更に図及び例を用いて詳細に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、ナノ粒子当たりのDの分子の増加数の関数として、Dx(丸)、Dx−B0.1対(三角)、DxB10.1対(四角)、及びDxB10.2対(ひし形)を含有するナノ粒子の輝度レベルを示している(表5を参照のこと、λex=400nm)。ここで、x=(色素のモル/TEOSのモル)*100。
図2図2は、コアシェルシリカ−PEGナノ粒子の典型的なTEM画像、及びシリカコア粒度分布、d=(11±3)nm、(スケールバー100nm及び200nm)を示している。
図3図3は、水中におけるコアシェルシリカ−PEGナノ粒子(d=23nm、PdI=0.09)の典型的な動的光散乱粒径分布を示している。
図4図4は、405nm(細胞蛍光測定において典型的に用いられるレーザー源の放射波長)での非常に高い吸収係数及び4つの区別可能な放射帯での高輝度を示し、ほとんど交差干渉を示さない4種類のNPのセットを表している。
図5図5は、全ての可視範囲における放射が1種類の色素がドープされたナノ粒子のその1種と比較してほとんど無視できるテトラタンデム(tetratandem)系で得られた結果を示している。
図6図6は、ガラス繊維の4つのセットの共焦点発光スペクトルを示しており、ここでは、本発明の代表的なナノ粒子が吸収されていた。繊維は同じ波長(405nm)で励起され、明確に区別可能である。
【0038】
図において、a.u.は任意の単位を意味する。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明のシリカナノ粒子はWO2010/013136及びWO2010/013137に開示されており、そこに記載されている方法によって調製することができる。上記文献に開示されている全ての態様、条件及び教示は、本発明においても適用可能である。
【0040】
本発明の一般的理解を目的として、シリカナノ粒子の調製のスキームを提供する。
【化1】
【0041】
フルオロフォア(色素)を界面活性剤と混合することでミセルを形成し、これを引き続いてアルコキシシランと反応させることでシリカナノ粒子を形成し、最終的にナノ粒子を単離する。色素がナノ粒子シリカコア内に拘束されていることに留意されたい。
【0042】
本発明の第1の好ましい態様において、コアシェルシリカ−PEG(ポリエチレングリコール)ナノ粒子は、E. Rampazzo, S. Bonacchi, R. Juris, M. Montalti, D. Genovese, N. Zaccheroni, L. Prodi, D. C. Rambaldi, A. Zattoni, P. Reschiglian J. Phys. Chem. B, 2010, 114(45), 14605-14613)において以前に報告された手順を採用して調製される。シリカナノ粒子コア中に色素を拘束するには、前のRampazzoらの方法の変更が必要である。典型的な調製において、適切な量の界面活性剤、例えばPluronic F127、及び所望量のアルコキシシラン誘導体化又は水不溶性の色素が、適切な溶媒、例えばハロゲン化炭化水素又は同様の溶媒特性を有する有機溶媒、例えばジクロロメタン中に可溶化される。均質溶液が得られた後、溶媒は、例えば不活性ガス流による、及び/又は真空下にて生成物の安定性に影響しない温度、例えば室温での蒸発によって排除される。不活性イオン性塩(例えばNaCl)を、溶液のイオン強度を増加させるために固体残渣に添加し、混合物を室温にて希釈酸性水溶液により可溶化する。この溶液は、弱酸(例えば酢酸)又はより強い酸(例えばHCl)を含有することができる。次に、得られた水性均質溶液に、シリカ前駆体、例えばTEOSを、次いで、十分な量の時間、例えば3時間後にシラン化させる化合物、例えばTMSClを添加する。
【0043】
反応完了後、20〜72時間(例えば48時間)以内に、ナノ粒子を反応混合物から単離する。単離方法はよく知られており、好ましい態様では、水に対する透析が使用される。
【0044】
さらに、特に酸性の環境において安定でない色素の場合、代替の合成スキームが使用され得る。典型的な調製において、界面活性剤、例えばPluronic F127、及び所望量のアルコキシシラン誘導体化又は水不溶性の色素(単数又は複数)は、ジクロロメタン中に可溶化する。溶媒の排除後、不活性な塩、例えばNaClを固体残渣に添加し、続いて混合物を室温にて水で可溶化させる。次に、得られた水性均質溶液に、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)を、続いて、適切な量の時間、例えば15分後に、トリメチルシリルクロリド(TMSCl)を添加する。反応は、完了まで(at completion)、充分な時間、例えば24〜72時間、好ましくは48時間実施し、最終生成物を単離させる。透析は単離方法の一例である。
【0045】
上述の文献によると、以下の用語は、本明細書において提供される定義の通りと意図される。
【0046】
本発明によると、ミセルを含むシリカナノ粒子が提供され、これは、順じて、実質的に親水性のシェル(即ち、外部の方に向いた部分)及び実質的に疎水性の内側部分を有し、順じて、ミセルの内側部分の区域に位置するコアを含有し、シリケートネットワーク並びに第1及び少なくとも第2の色素を含む。
【0047】
「ミセル」という用語は、ミセル凝集体(1種類の界面活性剤のみの分子を含む)又はミセル共凝集体(多くの種類の界面活性剤の分子を含む)のいずれかを意味する。幾つかの態様によると、ミセルはミセル凝集体である。特には、粒子は形状が本質的に球状である。
【0048】
「実質的に親水性」という用語は、実質的に疎水性の鎖の水溶性より高い水溶性を有するナノ粒子、分子又は分子の一部、例えば鎖の領域を意図する。有利には、実質的に親水性の部分は、エタノール中より水中においてより高い可溶性を有する。「実質的に疎水性の」という用語は、実質的に親水性の鎖の水溶性より低い水溶性を有するナノ粒子、分子又は分子の一部、例えば鎖の領域を意図する。有利には、実質的に疎水性の部分は、実質的に親油性である。ナノ粒子、分子の一部(或いは鎖又は化合物)の実質的に親油性の領域は、水中よりエタノール中においてより高い可溶性を有する領域、分子の一部(或いは鎖又は化合物)を意味する。
【0049】
「認識官能基」という用語は、特定の基質又は分析物を結合できる官能基を意図する。有利には、基質及び/又は分析物は生体分子である。
【0050】
「ヘテロ基」という用語は、ヒドロ1及びヒドロ2の構成成分と異なるものであり、少なくとも1つのヘテロ原子及び/又は少なくとも1つの不飽和結合を持つ置換基を意図する。ヘテロ基は中間基として機能することができ、それは反応を介して、認識官能基で置換されているか、又は認識官能基を結合する。
【0051】
有利には、ヘテロ基は、−OCO(CH22COOH、−SH、−N3、−C≡CH、−SO3Na、−(CH23−SO3Na、−SO3CH3、−OPO32、−COOH、−OCH2COOHからなる群より選択される。
【0052】
「十分な重複」という用語は、フェルスター理論に従って定義される重なり積分Jを意図し、これは1×1012-1cm-1nm4を超える、好都合には1×1014-1cm-1nm4を超える。
【0053】
これらの文献は、放射性及び/若しくは電気活性及び/若しくはコントラスト剤である、及び/又は陽電子を放射できる有機若しくは有機金属化合物として意図される一般的に活性な化合物も開示している。放射化合物は、エネルギーを、好ましくは検出可能な電磁放射線(発光化合物)として又は熱として放射できる化合物として定義される。放射化合物は、発光種間における適切なエネルギー移動の過程を介しても、それ自体によって及び/又は少なくとも第2の放射する化合物との組合せで放射できることがあり、放射は、蛍光、燐光、電気化学ルミネセンス過程を介して、又は化学ルミネセンス反応を介して行うことができる。放射する化合物は蛍光性又は発光性であり得、後者は特には燐光性又は電気化学発光性のいずれかである。
【0054】
本発明は、具体的には、上記WO2010/013136及びWO2010/013137によって具体化されたものからの色素の選択に言及する。これらは、以下の特性を有する色素である。
【0055】
第1及び少なくとも第2の色素は、上記のシリカナノ粒子のコア中に含有され、ここで、前記第1及び前記少なくとも第2の色素は、エネルギー移動過程におけるドナー−アクセプター対のそれぞれの関係を有する色素であり、考慮するスペクトル領域について、モル吸収率ε≧10,000M-1cm-1、好ましくは≧30,000M-1cm-1、より好ましくは≧100,000M-1cm-1、考えられるスペクトル領域について、蛍光量子収率Φ≧0.01、好ましくは≧0.04、より好ましくは≧0.30、官能基(例えばアミン、−COOH、−N3、アルキン、アルケン、アクリロイル、−SH、マレイミド、アルデヒド、−OH、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、ヨードアセチル、TCT(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン)又は活性化カルボン酸基、例えばNHS及びNHS−スルホエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド及びスルホN−ヒドロキシスクシンイミド)、TFPエステル(2,3,5,6−テトラフルオロフェノール)、PFPエステル(ペンタフルオロフェノール)、HOBtエステル(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、トリアルコキシシラン部分の導入に適したN−アシルイミダゾール、及び前記ドナー及び前記アクセプター色素との間にフェルスター理論による十分な重なり積分を有する。
【0056】
本発明によると、選択される色素は、前記シリカナノ粒子のコアのシリケートネットワークに共有結合的に結合されるために誘導体化されるために誘導体化される、又はそれは、ミセルの中心部分に、及び、それにより、前記シリカナノ粒子のコアに拘束されるために親油性(水中で不溶性)である。
【0057】
本発明の好ましい態様において、色素は、C1〜C4トリアルコキシシランに、より好ましくはC2又はC1トリアルコキシシランに結合される。
【0058】
ドナー色素は、アクセプター色素に対してより短い波長で放射する色素である。
【0059】
第1の好ましい態様において、ドナー色素は、クマリン色素、又はキサンテン誘導体色素、例えばフルオレセイン若しくはその誘導体である。
【0060】
より好ましい態様において、トリアルコキシシランにすでに結合しているドナークマリン色素は、(7−(ジエチルアミノ)−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)クマリン−3−カルボキサミド)とも名づけられる7−(ジエチルアミノ)−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2−オキソ−2H−クロメン−3−カルボキサミド(DEACトリエトキシシラン;この明細書の以降においてはDとも呼んでいる)及び11−オキソ−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2,3,5,6,7,11−ヘキサヒドロ−1H−ピラノ[2,3−f]ピリド[3,2,1−ij]キノリン−10−カルボキサミド(クマリン343トリエトキシシラン;この明細書の以降においては、D2とも呼んでいる)からなる群から選択される。
【0061】
ドナー色素と組み合わせられるための好ましいアクセプター色素は、Bodipyのトリエトキシシラン誘導体2,6−ジエチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン(Bodipy TMDE Phトリエトキシシラン;この明細書の以降においてはBとも呼んでいる)、ボディパイのトリエトキシシラン誘導体4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシ−シリル)プロピル)カルバ−モイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン](Bodipy TM−Phトリエトキシシラン;この明細書の以降においはB2とも呼んでいる)、この明細書の以降においてはB1とも呼んでいるBodipy TM−Etトリエトキシシラン(4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(3−オキソ−3−((3−(トリエトキシシリル)−プロピル)アミノ)プロピル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)、ローダミンBトリエトキシシラン誘導体(この明細書の以降においはRとも呼んでいる)、シアニン2−((1E,3E,5E)−5−(1−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−3,3−ジメチルインドリン−2−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウムヨージドのトリエトキシシラン誘導体(Chromis 645 C NHS、この明細書の以降においてはC5とも呼んでいる)、及び以下の明細書においてC7として同定される2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェノキシ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウムヨージドのトリエトキシシラン誘導体(Chromis 800 C NHS)、及びこの明細書の以降においてはC2とも呼んでいるナトリウム2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェニルチオ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−6−スルホナト−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウム−6−スルホネートのトリエトキシシラン誘導体(Chromis 830A NHS)からなる群より選択される。
【化2】
【0062】
本発明による好ましい組合せは、
DB、DR、DC5、DBR、DBC5、DRC5、DBRC5、DBRC5C7;D2B2、D2R、D2C5、D2C5C2、D2B2C5、D2B2C2、D2B2C5C2;D2B2RC5
である。
【0063】
いくつかの用途、例えばDNA分析、細胞蛍光測定及び組織化学において、励起光源の数は実験ハードウェアの設定によって限定される。多くの用途にとって、405nmでのレーザー系統がますます重要になってきている励起光源である。そのため、この波長で吸収する化合物の利用可能性は特に有用である。
【0064】
本発明の好ましい態様において、2種類の色素を含有する色素ドープシリカナノ粒子(DDN)のファミリーが提供される。この態様はナノ−タンデム色素(N−TD)とも称され、異なる2種類の色素がドープされたシリカナノ粒子に基づいており、その間で、非常に効率的なエネルギー移動過程が、ドナーのほとんど定量的な消光及びアクセプターの増感を確実にする。結果として、これらのナノ系において、最長波長色素のみが短波長励起で有意な蛍光を呈する。エネルギー移動過程を特徴とする多発色団のシリカナノ粒子の多くの例が今まで報告されてきたが、この特徴は満足のいくレベルではまだ達成されていない(Wang, L.; Tan, W. H. Nano Letters 2006, 6, 84; Wang, L.; Zhao, W. J.; O’Donoghue, M. B.; Tan, W. H. Bioconjugate Chemistry 2007, 18, 297)。
【0065】
ナノ−タンデム色素に関連する本発明の態様の文脈において、この種類の例は、ドナー(D)としてのDEAC、及びアクセプターとしてのBodipy色素、1つの場合におけるTMDE−Ph−COOH(B)、及びTM−Ph−COOH(B2)第2色素である。色素は、以下の要件を満たすように選択された。(i)高い(>40,000M−1cm−1)モル吸収係数ε、(ii)非常に高い(>0.50)蛍光量子収率Φ、(iii)トリアルコキシシラン基の容易な導入のための官能基、及び(iv)ドナー及びアクセプターとの間のフェルスター理論(Foerster, T. Discuss. Faraday Soc. 1959, 27, 7)による十分な重なり積分。
【0066】
本発明の別の好ましい態様において、4種類の異なる色素:DEACトリエトキシシラン(D)、Bodipy TMDE−Ph−COOH(B)のトリエトキシシラン誘導体、ローダミンB誘導体(R)、シアニンChromis 645 C誘導体(C5)を、全ての場合においてB、R及びC5のためのTEOSのモルに対して0.01〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%、例えば0.1%の、及びDのためのTEOSのモルに対して0.01〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%、例えば0.2%のドープ程度を使用する全てのそれらの可能な組合せで含有する色素ドープシリカナノ粒子(DDSN)のファミリーが提供される。5種類の異なる色素D(0.2%)、B、R、C5、C7(0.1%)を含有する色素ドープシリカナノ粒子の試料も、近赤外放射系の例として調製した。Dのみが、又はD及びB対がドープされたナノ粒子の場合、ナノ粒子は、Dについて0.05%、0.1%及び0.4%のドープ程度も使用して調製した。本発明の一般性を示すために、4種類の異なる色素D2(0.2%)、B2、C5、C2(0.1%)を含有する色素ドープシリカナノ粒子の試料も調製した。
【0067】
色素は以下の要件を満たすように選択された。(i)フルオロフォアの最大吸収の付近の考慮するスペクトル領域について少なくとも高いモル吸収係数ε(≧10,000M-1cm-1、好ましくは≧30,000M-1cm-1、より好ましくは≧100,000M-1cm-1)、(ii)高い蛍光量子収率Φ(≧0.01、好ましくは≧0.04、より好ましくは≧0.30)、(iii)トリアルコキシシラン基(又は、代替として、水に対する全体的な不溶性)の容易な導入ための官能基、及び(iv)カスケード法における、ドナーとしての色素D及びアクセプターとしてのBの間、ドナーとしてのB及びアクセプターとしてのRの間、及びドナーとしてのR及びアクセプターとしてのCの間における、フェルスター理論による十分な重なり積分。
【0068】
この最後の要件の有効性を評価するため、我々は、同じ系に属する色素の各対に対してフェルスター半径R0を算出しておいた。値を表1に報告する。これからわかるように、色素のほとんどいずれの組合せも、かなり十分なドナー−アクセプター対を提供している。さらに、各色素は、それ自体の放射に対して優れたアクセプターであり、そのためホモ−ET過程もナノ粒子の全体的な光物理学に積極的に寄与している。
【表1】
【表2】
【0069】
1種類の色素のみがドープされたナノ粒子(参考)
本発明をより十分に理解するために、1種類の色素のみがドープされたナノ粒子の最も重要なパラメータを表3に示す。
【0070】
主に、各ナノ構造体中でのいくつかの色素の封入によるより高い吸収係数のおかげで、遥かに高い輝度がナノ粒子において常に観察されていることに気づかれたい。これは、他方では、蛍光量子収率はそれほど劇的には影響されない。同じ場合では、最もおそらく周囲環境のより高い強剛性のおかげで、このパラメータの増加が観察されている(B1、C1、及びR)が、他の場合では、ナノ粒子コア中の色素の封入時に観察された蛍光量子収率の減少は、寄生自己消光過程に起因し得る(Montalti, M.; Prodi, L.; Zaccheroni, N.; Zattoni, A.; Reschiglian, P.; Falini, G. Langmuir 2004, 20, 2989)。さらなる研究の努力は、こうした効果を最小化することに充てるべきであるが、全ての場合において、こうした減少が、吸収の増加によって相殺されるのより多いことを再び強調することが重要である。
【表3】
【0071】
B、R、C5及びC7の場合、ナノ粒子中の異なる色素の光物理的データは、無水エタノール中の単一色素によって示されるデータと非常に類似しており、関連するπ−π*遷移の性質により予測されるように、吸収及び発光スペクトルの両方における非常に小さいレッドシフト(<10nm)及び励起状態の寿命の一部延長が伴う。この効果は、最もおそらくは、堅牢なシリカマトリックスによって提供される保護によるものであり、C5の場合、より明らかである効果であり、その非輻射失活は主にトランス−シス光異性化によるものである。B及びC5の場合、ナノ粒子のドープ程度の変化は、励起状態の寿命及び蛍光量子収率の顕著な変化を誘発せず、自己消光機序がこれらの色素に対してほとんど非効率的であることを示すことに留意するのも興味深い。逆に、これらの過程は、Rの場合除外するべきでない。Rの関しては、ドープ程度を増加させる際に蛍光量子収率の無視できない低減が観察され得る。Dの場合、シリカマトリックス中へのその封入はずっと顕著なレッドシフトを誘発し、その最低励起状態が電荷輸送性状を有するために予想される通りである。励起状態の性質により、この色素は最も大きなストークシフトも示す。表4に報告されているデータから、クマリン色素の場合、自己消光過程は、ナノ粒子当たり色素の5分子超が存在する時、即ち、色素の間の平均距離が6.5nmより短い時にかなり効率的であることは明らかである。一般に、ナノ粒子の輝度(単数又は複数)は、単一色素の輝度と比較して高く、ドープ程度を増加させると、自己消光過程があまり効率的でない場合(Rの場合のように)にはさらに増加させることができ、又はそれらが無視できる場合(B及びC5の場合のように)にはさらにいっそう増加させることができる。
【表4】
【0072】
多発色団のナノ粒子。
【0073】
本発明の一態様において、ナノ粒子は2種類の色素からなる対を含む。
【0074】
本発明の別の態様において、ナノ粒子は3種類の色素を含む。
【0075】
本発明のまた別の態様において、ナノ粒子は4種類の色素を含む。
【0076】
本発明のさらなる態様において、ナノ粒子は5種類の色素を含む。
【0077】
ナノ粒子の各セットにおけるドナー及びアクセプターとの間のエネルギー移動(ET)過程ηETの効率は、等式1に従って、ドナーの蛍光の消光に基づいて評価し、式中、ID及びI°Dは、それぞれ、アクセプターの存在及び非存在におけるナノ粒子中のドナーの蛍光強度である。
【0078】
ηET=(1−ID/I°D)(等式1)
等式1に従って得られたデータは、アクセプターの蛍光の増感を検査して概算されたデータと、実験エラー内で常に完全一致しており、ドナーからアクセプターへの他の非活性化過程が無視できたことを示唆した。ET過程の高い効率により、研究された全てのナノ粒子ついて、励起スペクトルは吸収スペクトルと非常に類似していた。D、B及びB1を含有するナノ粒子の例示的な場合、我々は特に、ナノ粒子当たりのドナー分子の数の光物理学的性質に対する効果を調査した。この手法は一見して、あまり適切でないように想定され得るが、それは、唯一の興味深い特徴として、エネルギー移動過程のための可能な限り高い効率を得ると考えられてこなかったからである。この目標は、実際、ナノ粒子内部のアクセプターの濃度を増加させるより有効な方法で達することができ、なぜならこの後者単位の濃度が変化する場合のみ、その励起状態におけるドナー、及びアクセプターの間の平均距離が変化するからである。結果として、他の過程の非存在下で、アクセプターの濃度のみがヘテロ−エネルギー移動の効率に対する効果を有するはずである。しかしながら、大きなストークスシフト及び単一波長励起の可能性を有するためには、励起はドナーに対して行われるべきであり、分析学的観点から、アクセプター分子の数の増加は、輝度における有意な増加をもたらさないが、一方ドナー分子の数の増加はもたらす。
【0079】
表5からわかるように、等式2(式中、τ°は、アクセプターの非存在下におけるドナーの励起状態寿命である)に従って算出されるエネルギー移動過程のための速度定数は、ドナーの濃度を変化させる際に有意に変化することはない。
【0080】
kET=1/[τ°(1/ηET−1)](等式2)
しかしながら、エネルギー移動過程の導入は、Dについて観察された寄生自己消光過程への非常に競合的な経路を提供し、エネルギー移動の効率が高いドープ程度についても相対的に高い(>85%)ままであるという結果を伴うことに留意すべきである。この結果は、分析学的観点から重要な利点をもたらし、即ち、BodipyのB又はB1の放射を見るがクマリンDを励起しない系の輝度は(これらのナノ粒子が想定された実験条件)、0.05%から0.4%のDのドープ程度を増加させる際に5倍の増加を受け、それで、Dのみが存在する時には観察することができない効果である信号の平行増加を達成することができる(図1も参照のこと)。この結果は、我々の知るところではこれまで文献においてまだ報告されておらず、新規ナノ粒子の設計のために重要であり、というのは、フルオレセインとして、自己消光現象を被ることが知られている色素を使用する可能な方法を示唆しているからである。
【0081】
xy@NP、又はDxB1y@NP(X及びYは、色素D、B及びB1のモル対TEOSのモルをそれぞれ表す)の例示的な態様においてここに示される、本発明によって提供されるタンデム色素ナノ粒子は、405nm(サイトフルオロメトリーに通常用いられるレーザー供給源の放射波長)、2つの区別可能な放射帯を有しほとんど交差干渉を有していない高輝度で両方とも効率的に励起することができる2つの蛍光性ラベルのファミリーを表す。全てのこれらの結果は、これらの種類のコアシェルナノ粒子を、蛍光ベースの分析技術のためのラベルとして非常に興味深いものとしている。
【0082】
この拘束媒体において発生する追加の興味深い現象は、ナノ粒子内部のエネルギー移動を可能にするホモ−エネルギー移動過程である。これらの過程の発生は、増加的にドープされるNPについて観察される異方性のより低い値によって確認される。シリカマトリックスに包埋される場合、色素の回転自由は強く低減され、そのため、蛍光脱分極のための可能な機序だけがホモ−エネルギー移動であり、これは、色素が近いほど、即ち高いドープ比で発生する可能性がある。この効果は、ストークスシフトがより小さく、重なり積分が結果としてより高いために予想される通り、B、B1、R及びC5ではより高い。しかしながら、Dについても、この効果はモル数が高い場合には特に無視できず、励起状態寿命の短縮にもかかわらない測定異方性値の低減は(逆効果を通常誘発する)、この過程の発生の明らかな表れである(表7)。表6からわかるように、3種類又は4種類の色素がナノ粒子のコアに挿入される場合、異なるドナーの消光及びアクセプターの増感の効率はまたさらに明白である。特に、異なるドナーの残留強度は、5%の値をまれに超える。それは、ナノ粒子の該ファミリーにおいて観察される効率が、他の多発色団のシリカナノ粒子についてこれまでに報告されている効率より予想外にも高いことを強調するために特に重要である。本発明者らは如何なる理論にも束縛されるのを望まないが、この予想外の増加に対する可能な説明は、ナノ粒子の異なる構造に依拠する。一般に、前の例は、van Blaaderenによって修正された通りのStober方法論に従って調製された、50nmを通常超える直径を有するナノ粒子に基づいていた。我々は、この合成戦略が、色素の濃度がコアにおいては高いが外部シェルにおいてはずっと低いコア/シェル構造を自然発生的にもたらすことをすでに実証した(E. Rampazzo, S. Bonacchi, M. Montalti, L. Prodi, N. Zaccheroni, J. Am. Chem. Soc., 2009, 129, 14251-14256)。低密度は(より大きな発色団間距離を暗示する)、これらの外部層に埋められた色素のエネルギー移動の効率をおそらく制限する。我々の合成方法論は、逆に、より均質であるNPを代わりにもたらし、なぜならばNPがより小さいこと及びNPの形成が拘束ナノリアクターにおいて発生することの両方からであり、これは、我々が観察した前例のない効率の理由である。
【0083】
表6からわかるように、3種又は4種類の色素がナノ粒子のコアに挿入される場合、異なるドナーの消光及びアクセプターの増感の効率はまたさらに明白である。
【表5】
【表6】
【表7】
【0084】
二、三又は四発色団のナノ粒子における様々なET過程に関する前例のない効率は、一方の側では非常に高い全体的な増感を、他方の側では異なるドナーの非常に低い残留放射もたらす。
【0085】
この材料は、最終的には、非常に大きなストークスシフト(最大440nm、最終アクセプターとしてNIR色素を使用して達することができる値)、「最も青い」ドナーさえ励起する非常に高い輝度、及び最後のアクセプター以外全ての色素のほとんど無視できる残留強度を持つ。単一励起時に、ドープ色素の適正な選択だけで最終アクセプターの放射色を得ることが可能であるため、全てのこの特徴は、一緒になって、これらの系を、分離もなしに、多重化のための非常に有望なものとする加えて、これらのナノ粒子は、大きなストークスシフトに関連する高輝度を必要とする全ての診断技法のための役立つ溶液として現れる。
【0086】
本発明によって提供される1つのさらに重要な利点は、本明細書に記載されている系においてレイリー−チンダル及びラマンバンドから来る干渉の効率的な低減を可能にする値である80nmを超えるこれらのナノ粒子のストークスシフトによって表されることが、本明細書において強調される。
【0087】
用途の観点から、観察されたETの高い効率により、これらのナノ粒子は非常に有効及び再生可能な錯体タンデム色素とみなすことができる。図4から観察できるように、D@NP、(D+B)@NP、(D+B+R)@NP及び(D+B+R+C5)@NPは、405nm(サイトフルオロメトリーにおいて通常用いられるレーザー供給源の放射波長)での非常に高い吸収係数、4つの区別可能な放射帯を有する高輝度を持ち、ほとんど交差干渉がない4種類のNPのセットを表す。
【0088】
それ以上であるとは言わないまでも、同様の結果が(D2B2C5C2)@NPで得ることができ、全ての可視範囲におけるこれの放射は、単一色素がドープされたナノ粒子のその放射と比較してほとんど無視できる(図5)。より低いエネルギーアクセプターの放射波長及び吸収波長(疑似ストークスシフト)の間の差異は、この系において435nm(表6)であり、文献においてこれまでに報告されている最も大きいものの1つであることは留意に値する。
【0089】
交差干渉がほとんど存在しないことを証明するため、我々は、ガラス繊維の4つのサンプルにD@NP、(DB)@NP、(DBR)@NP及び(DBRC5)@NPをそれぞれ吸着させた。
【0090】
図6からわかるように、繊維の4セットは、全て同じ波長(405nm)で励起され、明確に区別可能な共焦放射スペクトルを有しており、このことは、この戦略が効率及び多用性において、如何なる場合においても2種類のみの蛍光色素の結合に限定される市販のタンデム色素を上回ることができる高発光ラベルの調製をもたらすことができるという事実を示している。
【0091】
以下の例で、本発明をさらに例示する。
【0092】
化学薬品:全ての試薬及び溶媒を、さらに精製することなく、購入した状態で使用した。非イオン性界面活性剤Pluronic(登録商標)F127、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、99.99%)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS、>99%)、クロロトリメチルシラン(TMSCl、≧98%)、塩酸(発煙性、≧37%)、3−エチル−2,4−ジメチルピロール(97%)、4−(クロロカルボニル)ベンゾエート(≧95%)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF3・Et2O)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、≧99%)及び酢酸(≧99.7%)をAldrichから購入した。トリエチルアミン(≧99.5%)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt≧99.0%)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC・HCl、≧98.0%)、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES、≧98.0%)、LiOH・H2O(≧99%)、試薬グレードのジクロロメタン、シクロヘキサン、酢酸エチル及びNaClをFlukaから購入した。7−(ジエチルアミノ)クマリン−3−カルボン酸(DEAC、≧98.0%)をSigmaから購入した。Chromis 645 C NHS((2−((1E,3E,5E)−5−(1−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−3,3−ジメチルインドリン−2−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウムヨージド))、Chromis 800 C NHS(2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェノキシ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウムヨージド)、及びChromis 830A NHS(ナトリウム2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェニルチオ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−6−スルホナト−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウム−6−スルホネート)をCyanagen s. r. l.(ボローニャ−イタリア)から購入した。
【0093】
Milli-Q Millipore系を水の精製のために使用した(抵抗率≧18MΩ)。
【0094】
限界濾過及び透析実験:ナノ粒子限界濾過を、窒素圧下にてMillipore(47mmのフィルター)から購入した75mLのステンレス鋼−ガラス耐溶媒性の撹拌セル中で実施した。限界濾過実験構成には、Amicon再生セルロース膜(10kDaカットオフ)及び濃度切替弁が備えられている助剤リザーバー(800mL)を含めた。
【0095】
透析を水に対して室温にて穏やかな撹拌下で、再生セルロース透析チュービング(Sigma、mol wt.カットオフ>12000Da、平均直径33mm)を用いて行った。粒子溶液の濾過を、必要な場合にはMillipore Duraporeフィルター(0.22、0.45μm)を使用して行った。
【0096】
例1
Chromis 645 C NHSのトリエトキシシラン誘導体、C5
【化3】
【0097】
ガラスバイアル中でChromis 645 C NHS 0.57mg(0.0008mmol、1当量)を乾燥ジクロロメタン245μLで可溶化させた。この溶液にジクロロメタン(0.0016mmol、2当量)中のAPTESの1:10(v/v)溶液3.8μLを添加した。混合物を終夜撹拌し、さらに精製することなく使用した。
【0098】
例2
Bodipy TM−Ph−COOMe(4,4−ジフルオロ−8−(4−(メトキシカルボニル)フェニル)−1,3,5,7−テトラメチル−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)
【化4】
【0099】
窒素雰囲気下にて、凝縮器及び滴下漏斗が備えられている3つ口フラスコ中で、2,4−ジメチルピロール460μL(4.33mmol、2当量)及び硫酸マグネシウム579mg(4.76mmol、2.2当量)を、ジクロロメタン6mL中に溶解させた。この溶液に、ジクロロメタン4mL中に可溶化したメチル4−(クロロカルボニル)ベンゾエート498mg(2.38mmol、1.1当量)を、滴下により30分かけて添加した。反応混合物を3時間加熱還流し、この間それは濃紫色を帯び、次いで室温で冷却した。次いで、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.69mL(9.53mmol、4.4当量)、及び15分後に三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート1.76mL(14.3mmol、6.6当量)を添加した。反応混合物を3時間再び加熱還流し、この間蛍光が現れた。
【0100】
最終的に、溶液を水で希釈し、2回ジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。生じた混合物を、フラッシュクロマトグラフィーの手段によって、シリカゲル上でシクロヘキサン/エーテルの勾配(95:5〜9:1〜8:2、v/v)を溶出液として使用して精製し、橙色の固体215mg(収率26%)を生成した。
【0101】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ: 8.19 (d, J = 8 Hz, 2 H), 7.41 (d, J = 8 Hz, 2 H), 6.00 (s, 2 H), 3.98 (s, 3 H), 2.57 (s, 6 H), 1.37 (s, 6 H).
【0102】
例3
Bodipy TM−Ph−COOH(8−(4−カルボキシフェニル)−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)
【化5】
【0103】
2つ口フラスコ中で、TM−Ph−COOMe 80mg(0.21mmol、1当量)をTHF2.5mL中に溶解させた。この溶液に、水1mL中に溶解させた水酸化リチウム一水和物44.4mg(1.05mmol、5当量)を、滴下により急速に添加した。反応混合物を撹拌下にて3時間室温で保持した。次いで、それを塩酸0.1M溶液で希釈し、3回ジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。生じた混合物を、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカゲル上でジエチルエーテル/酢酸エチル/アセトン混合物(4.5:4.5:1、v/v)を使用して精製し、橙色の固体17mg(収率22%)を生成した。
【0104】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ: 8.28 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.62 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.17 (s, 2 H), 2.54 (s, 6 H), 1.44 (s, 6 H).
【0105】
例4
Bodipy TM−Phトリエトキシシラン(4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)、B2
【化6】
【0106】
窒素雰囲気下にて、3−アミノプロピルトリエトキシシラン19μL(APTES、0.079mmol、2当量)、TM−Ph−COOH 14.5mg(0.039mmol、1当量)、トリエチルアミン11μL(TEA、0.079mmol、2当量)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド14.4μL(EDC、0.079mmol、2当量)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物11mg(HOBt、0.079mmol、2当量)を、ジクロロメタン中に溶解させ、終夜室温で撹拌した。
【0107】
反応混合物を次いで減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカ上でシクロヘキサン/酢酸エチル混合物(8:2、v/v)を溶出液として使用して精製し、生成物を橙色−黄金色の固体として13.1mg(収率58%)を得た。
【0108】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ: 7.94 (d, J = 8.2 Hz, 2 H), 7.39 (d, J = 8.2 Hz, 2 H), 6.70 (bs, 1H), 5.99 (s, 2 H), 3.85 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 3.57-3.48 (m, 2 H), 2.56 (s, 6 H), 1.89-1.74 (m, 2 H), 1.37 (s, 6 H), 1.24 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 0.76 (t, J = 7.9 Hz, 2 H).
【0109】
例5
Bodipy TM−Et−COOMe(4,4−ジフルオロ−8−(3−メトキシ−3−オキソプロピル)−1,3,5,7−テトラメチル−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)
【化7】
【0110】
窒素雰囲気下にて、凝縮器及び滴下漏斗を備えた3つ口フラスコ中で、2,4−ジメチルピロール1000μL(9.42mmol、2当量)をジクロロメタン12mL中に溶解させた。この溶液に、ジクロロメタン6mL中に可溶化したメチル4−クロロ−4−オキソブチレート1.20mL(9.42mmol、2当量)を滴下により30分かけて添加した。反応混合物を終夜加熱還流し、この間それは濃紫色を帯び、次いで室温で冷却した。次いでN,N−ジイソプロピルエチルアミン3.68mL(20.7mmol、4.4当量)、及び15分後に三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート3.84mL(31.1mmol、6.6当量)を添加した。反応混合物を再び3時間加熱還流し、この間蛍光が現れた。
【0111】
最終的に、溶液を水で希釈し、2回ジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。生じた混合物を、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカゲル上でシクロヘキサン/エーテルの勾配(9:1〜8:2、v/v)を溶出液として使用して精製し、橙色の固体471mg(収率30%)を生成した。
【0112】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, 25℃) δ: 6.05 (s, 2 H), 3.72 (s, 3 H), 3.31-3.27 (m, 2 H), 2.61-2.57 (m, 2H), 2.50 (s, 6 H), 2.42 (s, 6 H).
【0113】
例6
Bodipy TM−Et−COOH(8−(2−カルボキシエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)
【化8】
【0114】
2つ口フラスコ中で、TM−Et−COOMe 100mg(0.30mmol、1当量)をTHF 10mL中に溶解させた。この溶液に、水4mL中に溶解させた水酸化リチウム36.6mg(1.5mmol、5当量)を、滴下により急速に添加した。反応混合物を撹拌下で3時間室温にて保持した。次いで、それを塩酸0.1M溶液で希釈し、3回ジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。生じた混合物を、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカゲル上でシクロヘキサン/酢酸エチル混合物(3:7、v/v)を使用して精製し、橙色の固体73mg(収率76%)を生成した。
【0115】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, 25℃) δ: 6.06 (s, 2 H), 3.33-3.29 (m, 2 H), 2.67-2.63 (m, 2 H), 2.51 (s, 6 H), 2.43 (s, 6 H).
【0116】
例7
Bodipy TM−Etトリエトキシシラン(4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(3−オキソ−3−((3−(トリエトキシ−シリル)プロピル)アミノ)プロピル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)、B1
【化9】
【0117】
窒素雰囲気下にて、3−アミノプロピルトリエトキシシラン102μL(APTES、0.43mmol、2当量)、TM−Et−COOH(0.21mmol、1当量)68.6mg、トリエチルアミン(TEA、0.43mmol、2当量)59.9μL、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド117μL(EDC、0.43mmol、2当量)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物89.5mg(HOBt、0.43mmol、2当量)をジクロロメタン中に溶解させ、4時間室温で撹拌した。
【0118】
反応混合物を次いで減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカ上でシクロヘキサン/酢酸エチルの勾配(9:1〜1:1、v/v)を溶出液としてを使用して精製し、生成物を橙色−黄金色の固体として75.7mg(収率68%)得た。
【0119】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, 25℃) δ: 6.03 (s, 2 H), 5.82 (bs, 1 H), 3.79 (q, J = 7.1 Hz, 6 H), 3.33-3.29 (m, 2 H), 3.27-3.22 (m, 2 H), 2.49 (s, 6 H), 2.42 (s, 6 H), 2.41-2.38 (m, 2 H), 1.65-1.57 (m, 2 H), 1.20 (t, J = 7.1 Hz, 9 H), 0.60 (t, J = 8.0, 2 H).
【0120】
例8
クマリン343−トリエトキシシラン(11−オキソ−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2,3,5,6,7,11−ヘキサヒドロ−1H−ピラノ[2,3−f]ピリド[3,2,1−ij]キノリン−10−カルボキサミド)、D2
【化10】
【0121】
窒素雰囲気下にて、3−アミノプロピルトリエトキシシラン32.5μL(APTES、0.136mmol、2当量)、クマリン343 20mg(0.068mmol、1当量)、トリエチルアミン19.1μL(TEA、0.136mmol、2当量)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド24.8μL(EDC、0.136mmol、2当量)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物18.9mg(HOBt、0.136mmol、2当量)をジクロロメタン中に溶解させ、終夜室温で撹拌した。反応混合物を次いで減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカ上でシクロヘキサン/酢酸エチルの勾配(6:4〜1:1、v/v)を溶出液として使用して精製し、生成物を薄橙色の固体として22.8mg(収率69%)得た。
【0122】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ 8.9 (bs, 1 H), 8.63 (s, 1 H), 7.02 (s, 1 H), 3.84 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 3.50-3.40 (m, 2 H), 3.38-3.23 (m, 4 H), 2.91-2.76 (m, 4 H), 2.05-2.00 (m, 4 H), 1.79-1.67 (m, 2 H), 1.24 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 0.72 (t, J = 8.4 Hz, 2 H).
【0123】
例9
Bodipy TMDE−Ph−COOMe(2,6−ジエチル−4,4−ジフルオロ−8−(4−(メトキシカルボニル)−フェニル)−1,3,5,7−テトラメチル−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)
【化11】
【0124】
窒素雰囲気下にて、凝縮器及び滴下漏斗が備えられている3つ口フラスコ中で、3−エチル−2,4−ジメチルピロール602μL(4.33mmol、2当量)及び硫酸マグネシウム579mg(4.76mmol、2.2当量)を、ジクロロメタン6mL中に溶解させた。この溶液に、ジクロロメタン4mL中に可溶化したメチル4−(クロロカルボニル)ベンゾエート498mg(2.38mmol、1.1当量)を、滴下により30分かけて添加した。反応混合物を3時間加熱還流し、この間それは濃紫色を帯び、次いで室温で冷却した。次いでN,N−ジイソプロピルエチルアミン1.69mL(9.53mmol、4.4当量)、及び15分後に三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート1.76mL(14.3mmol、6.6当量)を添加した。反応混合物を再び3時間加熱還流し、この間蛍光が現れた。
【0125】
最終的に、溶液を水で希釈し、2回ジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。生じた混合物を、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカゲル上でシクロヘキサン/エーテルの勾配(98:2〜95:5〜9:1、v/v)を溶出液として使用して精製し、暗色橙色の固体411mg(収率44%)を生成した。
【0126】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ 8.18 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 3.99 (s, 3H), 2.54 (s, 6H), 2.30 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 1.26 (s, 6H), 0.96 (t, J = 7.5 Hz, 6H).
例10
Bodipy TMDE−Ph−COOH(8−(4−カルボキシフェニル)−2,6−ジエチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)
【化12】
【0127】
2つ口フラスコ中で、Bodipy TMDE−Ph−COOMe 100mg(0.23、1当量)をTHF2.5mL中に溶解させた。この溶液に、滴下により水酸化リチウム一水和物48.3mg(1.14、5当量)を含有する1mLの水溶液を急速に添加した。反応混合物を撹拌下で5時間室温にて保持した。次いで、それを水で希釈し、3回酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。生じた混合物を、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカゲル上でジエチルエーテル/酢酸エチル/アセトン混合物(4.5:4.5:1、v/v)を使用して精製し、橙色の固体41mg(収率42%)を生成した。
【0128】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ 8.26 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.55 (s, 6H), 2.31 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 1.28 (s, 6H), 0.99 (t, J = 7.5 Hz, 6H).
【0129】
例11
Bodipy TMDE−Phトリエトキシシラン(2,6−ジエチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)、B
【化13】
【0130】
窒素雰囲気下にて、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、0.07mmol、2当量)17μL、Bodipy TMDE−Ph−COOH(0.035mmol、1当量)15mg、トリエチルアミン10μL(TEA、0.07mmol、2当量)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド13mg(EDC、0.07mmol、2当量)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物10mg(HOBt、0.07mmol、2当量)を、ジクロロメタン中に溶解させ、終夜室温で撹拌した。
【0131】
反応混合物を次いで減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカ上でシクロヘキサン/ジエチルエーテル混合物(1:1、v/v)を溶出液として使用して精製し、生成物を橙色−黄金色の固体として15.1mg(収率68%)得た。
【0132】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ 7.94 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6,70 (bs, 1H), 3.86 (q, J = 7.1 Hz, 6H), 3.53 (q, J = 6.3 Hz, 2H), 2.54 (s, 6H), 2.31 (q, J = 7.6 Hz, 4H), 1.89-1.75 (m, 2H), 1.28-1.21 (m, 15H), 0.99 (t, J = 7.6 Hz, 6H), 0.77 (t, J = 7.9 Hz, 2H).
【0133】
例12
ローダミンBトリエトキシシラン誘導体、Rの合成
ローダミンB誘導体Rを、報告した手順を使用して合成した。[J. Phys. Chem. B, 2010, 114(45), 14606-14613.]
【化14】
【0134】
例13
DEACトリエトキシシラン。7−(ジエチルアミノ)−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2−オキソ−2H−クロメン−3−カルボキサミド(7−(ジエチルアミノ)−N−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)クマリン−3−カルボキサミド)、Dの合成
窒素雰囲気下にて、3−アミノプロピルトリエトキシシラン34μL(APTES、0.14mmol、2当量)、7−(ジエチルアミノ)クマリン−3−カルボン酸19mg(DEAC、0.07mmol、1当量)、トリエチルアミン20μL(TEA、0.14mmol、2当量)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド26mg(EDC、0.14mmol、2当量)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物20mg(HOBt、0.14mmol、2当量)を、ジクロロメタン中に溶解させ、終夜室温で撹拌した。
【化15】
【0135】
反応混合物を次いで減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーの手段によってシリカ上でシクロヘキサン/酢酸エチル混合物(1:1、v/v)を溶出液として使用して精製し、生成物を黄色の固体として15.7mg(収率48%)得た。
【0136】
1H NMR (CDCl3, 200 MHz, 25℃) δ 8.81-8.85 (m, 1H), 8.71 (s, 1H), 7.43 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.65 (dd, J = 2.5 Hz, J = 8.8 Hz, 1H), 6.51 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 3.83 (q, J = 6.9 Hz, 6H), 3.40-3.51 (m, 6H), 1.66-1.82 (m, 2H), 1.20-1.28 (m, 15H), 0.67-0.76 (m, 2H).
ESI-MS (M + H+) = 465.
【0137】
例14
Chromis 800 C NHSのトリエトキシシラン誘導体、C7
【化16】
【0138】
ガラスバイアル中で、Chromis 800 C NHS 0.82mg(0.0008mmol、1当量)を乾燥ジクロロメタン245μLで可溶化した。この溶液に、ジクロロメタン(0.0016mmol、2当量)中のAPTESの1:10(v/v)溶液3.8μLを添加した。混合物を終夜撹拌し、次いでさらに精製することなく使用した。
【0139】
例15
Chromis 830 A NHSのトリエトキシシラン誘導体、C2
【化17】
【0140】
ガラスバイアル中で、Chromis 800 C NHS 0.88mg(0.0008mmol、1当量)を乾燥ジクロロメタン245μLで可溶化した。この溶液に、ジクロロメタン(0.0016mmol、2当量)中のAPTESの1:10(v/v)溶液3.8μLを添加した。混合物を終夜撹拌し、次いでさらに精製することなく使用した。
【0141】
例16
ナノ粒子合成
コアシェルシリカ−PEG(ポリエチレングリコール)ナノ粒子を、前に報告した手順を用いて合成した。[J. Phys. Chem. B, 2010, 114(45), 14605-14613]典型的な調製において、Pluronic F127 100mg及び所望量のシラン化又は水不溶性色素(複数可)をジクロロメタン1.0〜2.0mLで、20mLのガラスシンチレーションバイアル中で慎重に可溶化した。溶媒を均質溶液から、穏やかな窒素流によって及び引き続いて真空下にて室温で蒸発させた。NaCl(68.6mg)を固体残渣に添加し、混合物を25℃にて電磁攪拌下で、酢酸1Mを1565μL用いて可溶化した。TEOS(179μL、0.80mmol)を次いで生じた水性均質溶液に、続いてTMSCl(10μL、0.08mmol)を180分後に添加した。
【0142】
混合物を撹拌下で48時間25℃にて保持した後、透析処理した。透析精製段階を、水と対比して、5mLの総容量に水で最終的に希釈したナノ粒子溶液(1500μL)の正確な量で実施した。
【0143】
例17
特に酸性環境において安定でない色素で使用することができる代替の合成スキーム
典型的な調製において、Pluronic F127 100mg及び所望量のシラン化又は水不溶性色素(複数可)をジクロロメタン1.0〜2.0mLで、20mLのガラスシンチレーションバイアル中で慎重に可溶化した。溶媒を均質溶液から、穏やかな窒素流の手段によって及び引き続いて真空下にて室温で蒸発させた。NaCl(68.6mg)を固体残渣に添加し、混合物を25℃にて電磁攪拌下で、水1565μLを用いて可溶化した。TMOS(119μL、0.8mmol)を次いで生じた水性均質溶液に、続いてTMSCl(10μL、0.08mmol)を15分後に添加した。
【0144】
混合物を撹拌下にて48時間25℃で保持した後、透析処理した。透析精製段階を、水と対比して、5mLの総容量に水で最終的に希釈したナノ粒子溶液(1500μL)の正確な量で実施した。
【0145】
DLS:ナノ粒子水力学的直径分布の決定を、633nmのレーザーダイオードが備えられているMalvern Nano ZS機器を採用する動的光散乱測定を介して実施した。試料を、1cmの光路長の使い捨てポリスチレンキュベット中に、水を溶媒として使用して収容した。DLS水力学的直径分布の幅をPdI(多分散指数)によって示す。キュムラント解析の手段によって算出した単一モード分布(ガウス)の場合はPdI=(σ/Zavg2であり、ここで、それぞれ、σは分布の幅であり、Zavgは粒子集団の平均直径である。
【0146】
TEM実験:80kVで動作するPhilips CM 100透過型電子顕微鏡を使用した。TEM調査のため、Formvar支持膜によって覆われた3.05mmの銅グリッド(400メッシュ)を、水で希釈した(1:50)ナノ粒子溶液の1滴の沈殿後に真空下で乾燥させた。
【0147】
NPのTEM画像は、シリカコアだけが画像に現れる充分なコントラストを持つことを示している。サイズ分布を、数百のナノ粒子のブロックを有する画像を分析して得た、図2(左)。得られたヒストグラムをガウス分布に従って一致させて、シリカナノ粒子コアについて(11±3)nmの平均直径を得た。
【0148】
光物理の測定:全てのNP溶液が非常に弱い光散乱を示し、光物理の観点から分子種の任意の溶液として処理することができる。DLS測定は数カ月後でさえもNPの凝集を示さない。
【0149】
UV−VIS吸収スペクトルを、25℃にてPerkin−Elmer Lambda 45分光光度計の手段によって記録した。1cmの光路長を有する石英キュベットを使用した。蛍光スペクトルを、光電子増倍管Hamamatsu R928Pが備えられているEdinburgh FLS920で記録した。PCS900 PCカードに接続されている同機器を、時間相関単一光子計数(TCSPC)実験のために使用した。ルミネセンス量子収率(不確実性、±15%)を、エタノール中のローダミン6Gの溶液を基準(Φ=0.94)として使用して決定し、蛍光強度を、標準的方法に従って内部フィルター効果に対して補正した。[Montalti, M.; Credi, C.; Prodi, L.; Gandolfi, M.T. Handbook of Photochemistry, CRC Press Boca Raton (FL), 2006.]。
【0150】
全ての蛍光異方性測定を、Glan−Thompson偏光子が備えられているEdinburgh FLS920上で行った。異方性測定値を、L−フォーマット構成を使用して回収し、全てのデータを、G因子を使用して偏光バイアスに対して補正した。
【0151】
4つの異なるスペクトルを、励起及び放射の偏光子:IVV、IVH、IHH、IHV(ここで、Vは垂直を表し、Hは水平を表し、第1の添え字は励起を指し、第2の添え字は放射を表す)の異なる配向組み合わせた各試料について獲得した。スペクトルを、G因子及び異方性を算定するのに使用した。
【0152】
G=IHV/INH、r=(IVV−GIVH)/IVV+2GIVH
[Lakowicz, J. R., Principles of Fluorescence Spectroscopy, Third Edition, Lakowicz, J. R., Springer 2006]。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
a.実質的に親水性のシェル及び実質的に疎水性の中心部分を有するミセルと、
b.前記ミセルの中心部分の領域に位置し、シリケートネットワークを含むコアと、
c.少なくとも1種類の界面活性剤の複数の分子であって、以下の構造
1−Hydro1−Lipo−Hydro2−M2
(式中、
Lipoは、実質的に疎水性の鎖を表し、
Hydro1及びHydro2は、互いに独立して、それぞれの実質的に親水性の鎖を表し、
1は、認識官能基であり、
2は、−H、−OH、認識官能基及びヘテロ基からなる群より選択される)を有する官能化界面活性剤の少なくとも1種類の分子を含む複数の分子と、
d.前記コアb)中の第1及び少なくとも第2の色素であって、前記第1及び前記少なくとも第2の色素は、エネルギー移動過程におけるドナー−アクセプター対のそれぞれの関係を有し、考慮するスペクトル領域についてモル吸光係数ε≧10,000M-1cm-1、蛍光量子収率Φ≧0.01、前記ドナー及び前記アクセプター色素との間でのフェルスター理論による十分な重なり積分を有し、前記色素は親油性であってよいし、又はトリアルコキシシラン部分の導入に有用な官能基を持っていてもよい色素と
を含むシリカナノ粒子。
[2]
前記官能基がアミン、−COOH、−N3、アルキン、アルケン、アクリロイル、−SH、マレイミド、アルデヒド、−OH、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、ヨードアセチル、TCT(2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン)又は活性化カルボン酸基、例えばNHS及びNHS−スルホエステル(N−ヒドロキシスクシンイミド及びスルホN−ヒドロキシスクシンイミド)、TFPエステル(2,3,5,6−テトラフルオロフェノール)、PFPエステル(ペンタフルオロフェノール)、HOBtエステル(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、N−アシルイミダゾールからなる群より選択される[1]に記載のナノ粒子。
[3]
前記ドナー色素がクマリン色素又はキサンテン誘導体色素である[1]又は[2]に記載のナノ粒子。
[4]
前記キサンテン誘導体色素がフルオレセイン又はその誘導体である[3]に記載のナノ粒子。
[5]
前記クマリン色素が7−(ジエチルアミノ)−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2−オキソ−2H−クロメン−3−カルボキサミド(D)又は11−オキソ−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−2,3,5,6,7,11−ヘキサヒドロ−1H−ピラノ[2,3−f]ピリド[3,2,1−ij]キノリン−10−カルボキサミド(D2)である[3]に記載のナノ粒子。
[6]
前記アクセプター色素が(2,6−ジエチル−4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン)(B)、4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(3−オキソ−3−((3−(トリエトキシ−シリル)プロピル)アミノ)プロピル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン(B1)、4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−8−(4−((3−(トリエトキシシリル)プロピル)カルバモイル)フェニル)−3a,4a−ジアザ−4−ボラ−s−インダセン(B2)、ローダミンBトリエトキシシラン誘導体(R)、シアニン2−((1E,3E,5E)−5−(1−(6−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−6−オキソヘキシル)−3,3−ジメチルインドリン−2−イリ−デン)−ペンタ−1,3−ジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウムヨージドのトリエトキシシラン誘導体(C5)、シアニン2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェノキシ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロ−へキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウムヨージドのトリエトキシシラン誘導体(C7)、及びシアニンナトリウム2−((E)−2−((E)−2−(4−(5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)−5−オキソペンタンアミド)フェニルチオ)−3−((Z)−2−(3−エチル−1,1−ジメチル−6−スルホナト−1H−ベンゾ[e]インドール−2(3H)−イリデン)エチリデン)シクロヘキサ−1−エニル)ビニル)−3−エチル−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドリウム−6−スルホネートのトリエトキシシラン誘導体(C2)からなる群から選択される[1]から[5]のいずれか一に記載のナノ粒子。
[7]
DB、DR、DC5、DBR、DBC5、DRC5、DBRC5、DBRC5C7及びD2B2C5C2からなる群より選択される色素の組合せを含む[5]及び[6]に記載のナノ粒子。
[8]
前記ナノ粒子がBR、BC5、RC5、BRC5からなる群より選択される色素の組合せを含む[1]に記載のナノ粒子。
[9]
治療、診断及びセラノステックにおける、特にはプローブとしての、[1]から[8]のいずれか一のナノ粒子の使用。
[10]
分析化学における、特にはプローブとしての、[1]から[8]のいずれか一のナノ粒子の使用。
[11]
[1]から[8]のいずれか一の、適切な量のナノ粒子を含む診断又はセラノステックの組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6