(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(a)および(b)において亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩が固体形または水溶液形で提供され、前記工程(c)において、前記二酸化塩素水溶液を製造するために
(c1)2つの成分が固体形で提供される場合は、2つの成分は合される工程の前に水に溶解される、または
(c2)固体形にある2つの成分が、同時または順番に水性溶媒中に導入される、または
(c3)2つの成分が水溶液形で提供される場合は、2つの溶液は合される、または
(c4)2つの成分が水溶液で提供され、同時または順番に水性溶媒中に導入される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて純粋な、長期および貯蔵安定性で輸送可能な二酸化塩素水溶液を製造するための方法であって、亜塩素酸塩を提供する工程、ペルオキソ二硫酸塩を提供する工程および亜塩素酸塩とペルオキソ二硫酸塩とを水性系中において1超のペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比[S
2O
82-]/[ClO
2-]で合して二酸化塩素水溶液を形成させる工程を含み、該二酸化塩素水溶液を製造するために追加の緩衝剤が加えられない方法に関する。本発明は、さらに適切な二酸化塩素溶液、この二酸化塩素溶液の使用ならびに前記二酸化塩素溶液を製造するための装置に関する。
【0002】
二酸化塩素(ClO
2)の水溶液は、二酸化塩素の高い酸化力に基づいて、特に水処理技術における漂白、消毒および脱臭のために使用される。だが二酸化塩素の溶液は、気体状二酸化塩素が溶液から漏出し易く、これが高濃度の場合は爆発性であるために、一般には取り扱いが困難である。そこで上記に挙げた使用のための二酸化塩素溶液は、通例は完成溶液として販売されることはなく、必要になると初めて、つまり現場で新しく製造および使用される。
【0003】
二酸化塩素水溶液を製造するためには、様々な方法が公知である。
【0004】
そこで、例えば亜塩素酸ナトリウムと塩酸溶液との反応により二酸化塩素水溶液を発生させることができる(いわゆる塩酸−亜塩素酸塩法)。この方法には、特に二酸化塩素がそのような溶液中では不安定であり、短時間内に塩素酸塩と塩化物に分解されてしまうという欠点がある。そこでこの方法で製造された溶液は、貯蔵することができず、すぐに使用しなければならない。
【0005】
いわゆる塩素−亜硫酸塩法では、亜塩素酸ナトリウムは塩素または次亜塩素酸によって変換される。この方法は一般に、気体状塩素および次亜塩素酸の取り扱いが困難であるという欠点を有する。そこでこの方法では、二酸化塩素の収量、したがって溶液の酸化力を低下させる望ましくない副生成物として相当に多量の塩素酸塩が発生する。
【0006】
これら2つの上述の方法の代替法として、ペルオキソ二硫酸塩を用いた亜塩素酸塩の酸化によって二酸化塩素の溶液を製造することが提案された。国際公開第96/33947(A)号パンフレットは、例えば二酸化塩素水溶液を製造するための方法であって、亜塩素酸塩の溶液を、該亜塩素酸塩が実質的に完全に二酸化塩素へ変換されるまで、pH値5.5〜9.5および室温でハロゲン無含有酸化剤を用いて変換させる方法について記載している。好ましくは、酸化剤としてペルオキソ二硫酸塩が使用されるが、この文献ではその他の点では先行技術と同様、亜塩素酸イオンのペルオキソ二硫酸イオンによる変換についての以下の平衡式(1):
2ClO
2-+S
2O
82- → 2ClO
2・+2SO
42- (1)
が報告されている。
【0007】
この平衡式から、一般に1当量のペルオキソ二硫酸イオンが2当量の亜塩素酸イオンを酸化することを読み取ることができる。したがって、国際公開第96/33947(A)号パンフレットでは、化学量論的に亜塩素酸イオンを酸化するための必要量の1〜2倍である量でペルオキソ二硫酸イオンを使用することが提案されている。そこで国際公開第96/33947(A)号パンフレットは、0.5〜1.0の範囲内にあるペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比[S
2O
82-]/[ClO
2-]を記載している。
【0008】
1つの適切な方法は、米国特許第2323593号明細書にも記載されており、この特許の実施例には0.57もしくは0.78のペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比[S
2O
82-]/[ClO
2-]が記載されている。さらに米国特許第2323593号明細書には、0.5未満のペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンの比率[S
2O
82-]/[ClO
2-]は反応速度を低下させるために不都合であると記載されている。
【0009】
欧州特許第1787953(A)号明細書では、同様に亜塩素酸イオンのペルオキソ二硫酸イオンによる変換による二酸化塩素溶液を製造するための方法であって、該二酸化塩素溶液が皮膚または体表面を消毒するために企図されている方法が記載されている。欧州特許第1787953(A)号明細書の焦点は、そのつどの使用場所での高度に希釈した二酸化塩素溶液(2〜300ppm)の迅速な提供(「使用時点(point of use)」製造)に当てられている。このためには2超のペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比[S
2O
82-]/[ClO
2-]が使用され、該ペルオキソ二硫酸イオンならびに該亜塩素酸塩溶液は緩衝化される。
【0010】
だが上述した方法は、これらの方法の使用を困難にする一連の欠点を有している。
【0011】
特に、これらの溶液の貯蔵安定性は、極めて短期間に、長くても数週間に限定されるので、変化した溶液の使用にはそれらの作用物質および分解生成物に関して問題が多い。その上、完成溶液の配布は、多くの場合に可能ではない。このため、通例は「使用時点」製造が推奨されている(例えば、欧州特許第1787953号明細書を参照されたい)。このとき適切な二酸化塩素溶液の製造は使用者に任されており、該使用者は該二酸化塩素溶液を適切な予備溶液の混合によって自分で製造しなければならない。これには、変換度および副生成物形成の測定に関して専門的知識を必要とする。
【0012】
さらに、先行技術において公知の方法には、制御された変換のためには室温より高い温度またはより長い反応時間を必要とするという欠点がある。さらに、規則的に変動する、強度に温度依存性の反応時間および収量ならびにその結果として生じる様々な純度等級は、これまで一般的である方法におけるまた別の問題である。その上、たいていの場合、様々な緩衝剤系ならびに反応促進剤(銀および銅の塩、カロー酸)の添加によるpH値安定化が必要であるが、これはさらに使用される二酸化塩素溶液の純度を低下させる。
【0013】
そこで本発明は、高い貯蔵安定性を示し、このため必ずしも現場で製造する必要がなく、完成溶液として販売可能な二酸化塩素溶液を提供するという課題に基づいている。さらに本発明の課題は、この二酸化塩素溶液を製造するための方法であって、温和な反応条件下の単純なやり方で安定性二酸化塩素溶液の製造を可能にする方法を提供するという課題に基づいている。
【0014】
この課題は、特許請求項に特徴付けた実施形態によって解決される。
【0015】
詳細には、二酸化塩素水溶液を製造するための方法であって、以下の
(a)亜塩素酸塩を提供する工程、
(b)ペルオキソ二硫酸塩を提供する工程、
(c)水性系内で亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩を1より大きいペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比[S
2O
82-]/[ClO
2-]で合して該二酸化塩素水溶液を形成させる工程を含み、
このとき該二酸化塩素水溶液を製造するために追加の緩衝剤が加えられない方法が提供される。
【0016】
工程(a)および(b)は、このとき各々好ましい順番で実施することができる。
【0017】
本発明による方法の工程(a)では、亜塩素酸イオン(ClO
2-)が提供される。亜塩素酸塩は、本発明によると亜塩素酸HClO
2の形態で、または適切な塩として使用することができる。好ましくは、亜塩素酸塩は、アルカリ金属亜塩素酸塩、特に亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウム、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、特に亜塩素酸マグネシウムおよび亜塩素酸カルシウム、アンモニウム亜塩素酸塩、特に亜塩素酸アンモニウム(NH
4ClO
2)および亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム、例えば亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、亜塩素酸テトラエチルアンモニウムおよび亜塩素酸テトラブチルアンモニウムならびにそれらの混合物から成る群から選択される。特に好ましくは、亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムおよびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0018】
亜塩素酸塩は、固体物質として、または溶液、特に水溶液の形態のいずれかで使用することができる。好ましくは、亜塩素酸塩は、不純物が一般に亜塩素酸塩のペルオキソ二硫酸イオンを用いた二酸化塩素への変換を妨害し、得られた二酸化塩素の安定性を減少させる可能性があるので、できる限り純粋な形態で使用される。それでも、例えば市販の、亜塩素酸ナトリウムの他に約25質量%までの塩化ナトリウム、好ましくは約20質量%までの塩化ナトリウム、特に好ましくは約10質量%までの塩化ナトリウムを含んでいてもよい固体亜塩素酸ナトリウムも使用することができるが、それは塩化ナトリウムが二酸化塩素への変換を妨害せず、二酸化塩素の安定性を侵害することもないからである。本発明による方法の好ましい一実施形態では、成形品、錠剤、カプセルまたはペレットとして固体形にある亜塩素酸塩が提供される。
【0019】
本発明による方法の工程(b)では、ペルオキソ二硫酸イオン(S
2O
82-)が提供される。ペルオキソ二硫酸塩は、本発明によるとペルオキソ二硫酸H
2S
2O
8の形態または適切な塩として使用することができる。好ましくは、ペルオキソ二硫酸塩は、アルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩、特にペルオキソ二硫酸リチウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよびペルオキソ二硫酸カリウム、アルカリ土類金属ペルオキソ二硫酸塩、特にペルオキソ二硫酸マグネシウムおよびペルオキソ二硫酸カルシウム、アンモニウムペルオキソ二硫酸塩、特にペルオキソ二硫酸アンモニウム((NH
4)
2S
2O
8)およびテトラアルキルアンモニウムペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸テトラメチルアンモニウム、ペルオキソ二硫酸テトラエチルアンモニウムおよびペルオキソ二硫酸テトラブチルアンモニウムならびにそれらの混合物から成る群から選択される。特に好ましくは、ペルオキソ二硫酸塩は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウムおよびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0020】
ペルオキソ二硫酸塩は、固体物質として、または溶液の形態、特に水溶液の形態のいずれかで使用することができる。好ましくは、ペルオキソ二硫酸塩は、不純物が一般に亜塩素酸塩のペルオキソ二硫酸イオンによる二酸化塩素への変換を妨害し、得られた二酸化塩素の安定性を減少させる可能性があるので、できる限り純粋な形態で使用される。本発明による方法の好ましい一実施形態では、ペルオキソ二硫酸塩は、成形品、錠剤、カプセルもしくはペレットとして固体形で供給される。
【0021】
さらに、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩を一緒に、2つの成分が相互に分離されて含有されていて遅延性で溶解する、例えば2相の二成分固体混合物として、または成形品、錠剤、カプセルもしくはペレットとして供給することも可能である。
【0022】
亜塩素酸塩および/またはペルオキソ二硫酸塩が溶液の形態で供給される場合は、好ましくは水溶液の形態で実施される。このときそのつどの適切な水、例えば水道水を溶媒として使用することができる。だが好ましくは脱塩水または蒸留水が使用される。これらの水溶液は、さらにまた別の適切な補助溶媒、例えばハロゲン化または非ハロゲン化有機溶媒を含有することができる。好ましい一実施形態では、このまた別の溶媒は、反応に対して不活性な、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびそれらの混合物から成る群から選択される適切な水溶性溶媒である。特に、水と混和可能な溶媒を使用することが好ましい。また別の溶媒は、例えば、80容量%まで、好ましくは50容量%まで、特に好ましくは10容量%まで、極めて特に好ましくは5容量%までの量で使用することができる。
【0023】
本発明による方法の工程(c)は、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩を水性系中で合して二酸化塩素水溶液が形成される工程を含んでいる。この合する工程は、先行技術において公知であるあらゆる適切な方法によって実施することができる。好ましくは、この2つの成分を合する工程は混合しながら実施される。混合は、同様に当業者であれば公知のあらゆる適切な方法によって実施できる。例えば、混合は、実験室用攪拌機を備える実験室規模で実施することができる。大工業規模では、例えば、攪拌容器内での完全混合によって実施することができる。好ましくは、合することは、2つの成分の実質的に固体をもはや含んでいない均質な溶液が結果として生じるように実施される。混合装置を使用したこの完全混合は、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩から二酸化塩素への変換が加速されるという利点を提供する。
【0024】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩は工程(a)および(b)において固体形または水溶液系で提供されるが、工程(c)では、二酸化塩素水溶液を製造するために
(c1)2つの成分は、2つの成分が固体形で提供される場合は、合する工程の前に水に溶解される、または
(c2)固体形にある2つの成分は、同時または順番に水性溶媒中に導入される、または
(c3)2つの成分が水溶液で提供される場合は、2つの溶液が合される、または
(c4)水溶液形にある2つの成分が提供され、同時または順番に水性溶媒中に導入される。
【0025】
好ましくは、工程(c1)における合する工程は、2つの成分が固体形で提供される場合、2つの成分は、一緒に、同時に、または順番に水に溶解されるように実施される。亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩が例えば二元固体混合物または成形品として供給される場合、この固体混合物またはこの成形品は単純に水に溶解され、その後にこのようにして得られた本発明によるモル比にある2つの溶液は実質的に同時に、または順番に合されてよい。
【0026】
工程(c2)では、これら2つの成分は、好ましくは固体形で順番に水性溶媒中に導入される。特別には、この場合、最初にペルオキソ二硫酸塩を水溶液中に入れるのが好ましく、次に固体形または水溶液であってよい亜塩素酸塩を加えることができよう。
【0027】
工程(c3)では、好ましくは本発明によるモル比にある2つの溶液が同時に合される。だがさらに、ペルオキソ二硫酸塩を含む水溶液を最初に投入し、その後に亜塩素酸塩溶液を加えることも可能である。
【0028】
工程(c4)では、これら2つの成分は、好ましくは水溶液で提供され、順番に水性溶媒中に導入される。この場合、添加の順序は重要ではなく、最初に水性のペルオキソ二硫酸塩溶液または亜塩素酸塩溶液を投入し、続いてそのつど他方の溶液を添加することができる。
【0029】
このとき好ましい方法は、2つの成分が最初は別々に水性溶媒中に溶解され、引き続いて両方の溶液がまとめて混合される(c3)による方法である。
【0030】
特に好ましいのは、水性溶媒、特に好ましくは脱塩水もしくは蒸留水を望ましい量で投入し、その後に2つの成分の水溶液を製造するために望ましい量を分離し、該溶液を製造し、再び水性溶媒に添加することである。
【0031】
(c1)〜(c4)の全ての場合に、あらゆる適切な濃度にある亜塩素酸塩水溶液は、飽和濃度までの適切な亜塩素酸塩を含有することができる。このときそのつどの飽和濃度は固定値を示すだけではなく、例えば特定の亜塩素酸塩が使用された温度および性質に依存する。亜塩素酸ナトリウムは、例えば20℃で約64.5質量%の飽和濃度を示す。しかし好ましくは、亜塩素酸塩の水溶液の濃度は、約5質量%以下、好ましくは2質量%以下および特別には1質量%以下に調整しなければならない。水溶液中のペルオキソ二硫酸塩の濃度は、その飽和濃度に達してよい。このときそのつどの飽和濃度は固定値を示すだけではなく、例えば特定のペルオキソ二硫酸塩が使用された温度および性質に依存する。ペルオキソ二硫酸ナトリウムは、例えば20℃で約54.5質量%の飽和濃度を示す。
【0032】
本発明による二酸化塩素溶液を製造するために使用される水は、あらゆる適切な水、例えば水道水であってよい。だが好ましくは、該溶液がこの方法では少量の不純物を含んでいるので脱塩水または蒸留水が使用される。これは亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩から二酸化塩素へのより良好な変換およびこの方法で含有された二酸化塩素の上昇した安定性に関して有益である。さらに、上述した共溶媒の1つを上述した好ましい量で使用することもできる。
【0033】
亜塩素酸塩およびペルオキシ二硫酸塩を合した後には二酸化塩素が形成される。この変換は水性系内で実施されるので、形成された二酸化塩素は水溶液の形態で存在する。
【0034】
水溶液中の二酸化塩素の製造に引き続いて、さらに水と非混和性の溶媒、例えば有機溶媒、特にジクロルメタン、クロロホルムおよび/またはテトラクロルメタン、および二酸化塩素を添加し、二酸化塩素を有機相内に移すことも可能である。これによって有機溶媒中の二酸化塩素の安定性溶液が得られる。
【0035】
驚くべきことに、これまでに報告された平衡式(1)とは反するこの変換においては、本発明によるペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比が1より大きい場合、1当量のペルオキソ二硫酸塩が1当量の塩素酸塩と反応して二酸化塩素の安定性溶液が形成されることが明らかになった。何らかの理論によって拘束されることなく、この反応においては形成された二酸化塩素を安定化する作用を及ぼすと推定される硫酸水素ラジカルが形成される。この反応は、以下の平衡式(2):
ClO
2-+HS
2O
8- → [ClO
2・*HSO
4・]+SO
42- (2)
[式中、HS
2O
8-は、S
2O
82-から自触媒によって形成される]によって表される。したがって1当量の塩素酸塩の1当量のペルオキソ二硫酸塩による変換においては、二酸化塩素ラジカルClO
2・の他に硫酸水素ラジカルHSO
4・も形成される。これら2つのラジカルは、ラジカル対[ClO
2・*HSO
4・]によって表されるように、相互に会合性で安定化する。この製法は、典型的なものに過ぎない。同様に、このようなラジカル対が式[ClO
2・*H
2O*HSO
4・]の水との会合体を形成することも考えられる。硫酸水素ラジカル自体は、これまで安定性ではないと見なされていた。
【0036】
さらに、1つの理論によって拘束されることなく、ラジカル錯体[ClO
2・*HSO
4・]の安定化は以下の観察によって確証可能であると推定される。
1)二酸化塩素溶液は、硫酸水素ラジカルの陽子に基づいて酸性pH値(好ましくは2.5〜3のpH範囲内)を示すことにより各二酸化塩素ラジカルは弱酸性環境内にある。これが二酸化塩素ラジカルの安定化に寄与すると推測される。
2)硫酸水素ラジカルとの会合によって、水化物形成の強化を実施することができ、これが水溶性を上昇させたのであろう。さらに、この会合によって該ラジカルの蒸気圧を低下させることができたのであろう。
3)この会合によって、二酸化塩素ラジカルから亜塩素酸塩への逆行形成傾向が低下し得る。
4)該会合体内の2つのラジカルの非荷電性の性質に基づいて、さもなければ塩不浸透膜、例えば逆浸透膜(RO)、ナノ濾過膜などを通るそれらの移動性もしくは透過性に関して何の作用も生じないと推定される。
5)さらに、硫酸水素ラジカルは、水とモノ過硫酸水素または硫酸水素もしくは硫酸塩へ反応する可能性を有すると推定されている。この変換では、二酸化塩素が反応して亜塩素酸塩または塩素酸塩が形成される。そこでラジカル錯体[ClO
2・*HSO
4・]の分解は安全な方法で分解生成物を生じさせる。酸化反応では、該ラジカル錯体は反応すると環境に重大な影響を及ぼさないアニオン性塩化物および硫酸塩を形成する。これとは対照的に、従来の、つまり安定化されていない二酸化塩素溶液は、分解すると塩素および酸素を形成するとの性質に基づいて爆発傾向を示す。
6)二酸化塩素ラジカルの濃度は、ラジカル対形成にとって極めて重要である。
【0037】
上述したラジカル対会合体の形成は、このラジカル対会合体が全体として蒸留され、結果、気相に入ることができ、さらに膜透過性であることを示す実験によって確証される。さらに該ラジカル対会合体[ClO
2・*HSO
4・]は、二酸化塩素ラジカルと比較して変化した物理的特性、例えば変化した蒸気圧および変化した溶解性を有する。硫酸水素ラジカルの酸化電位は、また別の電子当量を備える酸化電位として完全に広範囲に利用することができるので、したがって酸化電位の消失が生じない。これはフォトメトリー法および滴定法を用いて確証された。手短に言えば、6電子当量を利用することができ、そのうち5当量は二酸化塩素から塩化物への還元のため、1当量は硫酸水素ラジカルから硫酸塩への還元のためである。試験は、水中で最初に二酸化塩素ラジカルが反応し、次に引き続いて硫酸水素ラジカルが反応することを証明している。
【0038】
上述の知見を考慮すると、本発明による方法は、先行技術において公知の方法と比較して亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩から二酸化塩素への変換についてまた別の化学量論に基づくことを特徴とする。
【0039】
そこで本発明による方法の工程(c)では、ペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比[S
2O
82-]/[ClO
2-]が1超の亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩が使用される。したがって1当量の亜塩素酸塩は1モル過剰のペルオキソ二硫酸塩を用いて変換されるが、従来法では通常は1当量の亜塩素酸塩に対して約0.5当量のペルオキソ二硫酸塩しか使用されなかった。
【0040】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、ペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比が1〜2である(1<[S
2O
82-]/[[ClO
2-]<2)出発材料が使用される。このときペルオキソ二硫酸塩は、亜塩素酸塩に関連して軽度にのみ過剰で使用されるが、これは亜塩素酸塩が完全に変換した場合、該二酸化塩素溶液中に(形成された二酸化塩素に関連して)残留する未変換ペルオキソ二硫酸塩は1当量より少なくなる。溶液中の二酸化塩素の安定性は一般にまた別の成分が存在することによって(たとえほんのわずかな量であってもペルオキソ二硫酸塩によって)低下するので、上述した1〜2のモル比によって上昇した安定性を示す二酸化塩素溶液が得られる。
【0041】
本発明による方法のまた別の好ましい実施形態では、ペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比が2超、特に好ましくは4超、さらにいっそうより好ましくは10超の出発材料が使用される。さらに、約100までのペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンの比率を使用することも可能である。これらの実施形態では、亜塩素酸塩に比してより大きく過剰にあるペルオキソ二硫酸塩は、使用された亜塩素酸塩から二酸化塩素へのより迅速または完全な変換を達成するために使用される。
【0042】
本発明によるモル比を保持することによって、この反応は加速されほぼ定量的に進行する。特に好ましくは、本発明による方法では、使用された亜塩素酸塩の質量に基づいて約80%超、特に約90%超、特に好ましくは95%超収率が達成される。本発明による反応条件では、副反応は全く観察されない。
【0043】
さらに、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の二酸化塩素への効果的な変換のために、緩衝剤の添加によって規定のpH値へ反応溶液を調整する工程が必要とされないことが確認された。むしろ、緩衝剤の添加によってまた別の異物が該水溶液中に持ち込まれ、二酸化塩素への反応速度および該溶液中の二酸化塩素の安定性を低下させることが見いだされた。それに対して、本発明によると、二酸化塩素水溶液を製造するために緩衝剤は添加されない。さらにこの製造においては追加の緩衝剤も添加されない。これは、得られた溶液が緩衝剤を含んでいないことをさらに意味する。そこで、例えば該反応中には該変換中に形成される硫酸塩から硫酸水素/硫酸塩緩衝剤が形成される可能性がある。
【0044】
二酸化塩素を安定化させるために通例使用される緩衝剤は、少なくとも1つの弱酸とそれに結合した塩基とからの物質混合物である。本発明の意味においては、水中で約−2〜約12の範囲内のpΚ
a値を有する酸が弱酸であると見なされている。緩衝剤の添加によって、該水溶液のpH値は、あるpH範囲内で実質的に一定に保持される。したがってあらゆる緩衝剤系は、強酸が添加された場合にpH値がその範囲内で実質的に変化しないpH範囲を有している。強酸とは、水溶液中で完全に解離して存在している酸である。
【0045】
特に本発明によると、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤および炭酸緩衝剤から成る群から選択される緩衝剤は使用されない。特に、本発明によると炭酸水素塩または炭酸塩は使用されない。
【0046】
特に好ましくは、工程(a)で提供される亜塩素酸塩水溶液には、該溶液を9〜12のpH範囲内で緩衝化する緩衝剤は添加されない。さらに好ましくは、工程(b)で提供されるペルオキソ二硫酸塩水溶液には、該溶液を3〜9のpH範囲内で緩衝化する緩衝剤は添加されない。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態では、亜塩素酸塩の溶液がペルオキソ二硫酸塩の溶液と合されることによって二酸化塩素水溶液が製造される。好ましくは、ペルオキソ二硫酸塩溶液は、約4〜約8の範囲内のpH値を示すように濃縮して使用される。好ましい一実施形態では、ペルオキソ二硫酸塩溶液のpH値は約4〜約6であり、また別の好ましい実施形態では該pH値は約6〜約8である。さらに、亜塩素酸塩溶液は、好ましくは約10〜約12の範囲内のpH値を示すように濃縮して使用される。特に好ましくは、ペルオキソ二硫酸塩溶液は約5のpH値および亜塩素酸塩溶液は約11のpH値を示す。
【0048】
上述した亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の水溶液が相互に合されると、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の二酸化塩素への反応中の該溶液のpH値は、好ましくは約2〜約4の値を示す、つまり該水溶液のpH値は亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の二酸化塩素への反応が完全になるに伴って約2〜約4の範囲で安定化する。該pH値が約2.5〜約3に調整されるのが特に好ましい。さらにより好ましくは、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩が、合された溶液のpH値が反応中に約2.5の値で安定化するような量および濃度で使用される。
【0049】
得られた二酸化塩素溶液には、製造後に緩衝剤を、好ましくは約2〜4のpH範囲内に緩衝化する緩衝剤を添加することができる。
【0050】
本発明による方法は、それぞれに適した温度で実施することができる。しかし、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の変換は、比較的低い、約0℃〜約25℃で実施されるのが有益である。これとは対照的に、従来法では亜塩素酸塩のペルオキソ二硫酸塩を用いた二酸化塩素への加速された変換を達成するため、一般的に25℃より上方の高温が必要とされる。本発明の好ましい一実施形態では、ペルオキソ二硫酸塩および亜塩素酸塩を合するのは、約0℃〜約25℃、特に好ましくは約2℃〜約20℃で実施される。極めて特に好ましくは、合する工程(c)は、約5℃〜約15℃で実施される。より高い(つまり約25℃より高い)温度では、望ましくない副生成物を生じさせる副反応が発生することが証明されている。副生成物の形成は、これらが本発明による二酸化塩素溶液の安定性を低下させるので、不都合である。
【0051】
この場合にはさらに、この温度範囲を亜塩素酸塩成分とペルオキソ二硫酸塩成分とを合している間だけではなく、亜塩素酸塩とペルオキソ二硫酸塩の二酸化塩素への変換が実質的に完了するまで保持するのが有益である。このために好ましくは、使用する水溶液は、合する前に適温にし、引き続いて二酸化塩素への変換が実質的に完了するまでの間この温度範囲に保持する。使用する溶液の温度調節の他に、さらに合している間および反応が完了するまでの環境の温度を上述した好ましい範囲内に調節することがさらに有益である。これは例えば、冷蔵庫、冷却室または冷却容器内で実施することができる。本発明による特に好ましい実施形態では、亜塩素酸塩溶液およびペルオキソ二硫酸塩溶液は、約5℃〜約15℃の冷却下で合され、その後この温度範囲内で二酸化塩素へ完全に変換するまで反応させる。
【0052】
また別の好ましい実施形態では、本発明による方法によって得られた二酸化塩素溶液は、変換の完了後にもこの温度範囲で保持または貯蔵される。純粋二酸化塩素は1,013mbarで11℃の沸点を有する。そこで好ましくは、本発明による方法によって得られた二酸化塩素水溶液は、約11℃より下方で、特に約0℃〜約11℃で貯蔵される。
【0053】
亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩を合するのが約0℃〜約25℃、好ましくは0℃超〜約11℃の好ましい温度範囲で実施されると、二酸化塩素の形成中での副反応およびそれに伴う望ましくない副生成物、例えば塩素、次亜塩素酸塩および塩素酸塩の発生を実質的に回避することができる。そこで、本発明による方法によって製造された二酸化塩素溶液は異物をほとんど含んでいないので、これは本発明による二酸化塩素溶液の安定性をさらに上昇させる。
【0054】
好ましくは、本発明による方法は遮光下で実施される。紫外線もしくは太陽光線の存在下では、副生成物の形成が起こる可能性があることが見いだされたためである。副生成物の形成は、副生成物もしくは異物が本発明による二酸化塩素溶液を不安定化させることが見いだされたので、不都合である。反応混合物中に存在する副生成物が少ないほど、得られる溶液の長期安定性は高まる。
【0055】
本発明による方法の工程(c)において亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩を合することによって、これら2つの成分間で反応が発生して二酸化塩素が形成される(上記の平衡式(2)を参照)。本発明による方法を用いると、約72時間以内に亜塩素酸塩から二酸化塩素へのほぼ定量的な変換(つまり、95%超の変換)を達成することが可能である。好ましくは、既に48時間後には、特に好ましくは既に24時間後にはほぼ定量的変換が得られる。特に0.3〜0.6質量%の溶液に対しては、既に48時間後、好ましくは少なくとも24時間後に定量的変換が得られる。より高濃度の溶液(例えば、1質量%以上の濃度)に対しては、定量的変換を達成するまでの反応時間は、より短い時間に、好ましくは30分間以内、特に好ましくは15分間以内に短縮することができる。一定の温度および一定のペルオキソ二硫酸イオン−亜塩素酸イオンの比率では、この変換は亜塩素酸イオンの濃度が高いほど急速になる。亜塩素酸イオンおよびペルオキソ二硫酸イオンの濃度が一定の場合は、この変換は温度が高いほど急速になる。最終的には、ペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンの比率の上昇は、一定温度では同様により急速な変換を導く。
【0056】
これとは対照的に、先行技術(例えば国際公開第96/33947(A)号パンフレットを参照)では、高濃度の二酸化塩素溶液を製造するため、定量的変換までに約12日間の反応時間が報告されている。
【0057】
好ましくは、本発明による方法は、工程(c)の後に、亜塩素酸塩を二酸化塩素へ実質的に完全に(つまり、使用された亜塩素酸塩の95%超が)変換されるまでの亜塩素酸塩のペルオキソ二硫酸塩を用いた反応のまた別の工程を含んでいる。特に好ましい一実施形態では、本発明による方法は工程(c)の後に、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも24時間、さらにより好ましくは少なくとも36時間の亜塩素酸塩のペルオキソ二硫酸塩との反応のまた別の工程を含んでいる。別の好ましい一実施形態では、本発明による方法は、工程(c)の後に12〜48時間、および好ましくは24〜36時間の亜塩素酸塩のペルオキソ二硫酸塩との反応のまた別の工程を含んでいる。
【0058】
本発明による方法を用いると、あらゆる望ましい、もしくは適切な濃度を備える二酸化塩素溶液を製造することができる。好ましくは、本発明による方法を用いると、約2質量%まで、好ましくは約1質量%までの二酸化塩素水溶液が製造される。より高濃度の二酸化塩素溶液は、二酸化塩素の水への限定された溶解度に基づいて達成するのが困難ではあるが、それでも実現することはできる。本発明による二酸化塩素溶液を製造するために高濃度の亜塩素酸イオンを使用した場合は、特に適切な亜塩素酸塩の飽和溶解度の範囲内にある亜塩素酸イオン濃度を使用した場合は、濃度約4.5質量%までの二酸化塩素水溶液を製造することができる。約4.5質量%の数値は、5℃および標準圧で二酸化塩素の実際的に把握された水中での飽和限界を表している。高い圧力下では、水中で遊離二酸化塩素相が自然発生する可能性がある。このような混合物は、二酸化塩素および水の総量に基づいて典型的には約4.5超〜約12質量%の二酸化塩素を含んでいる。二酸化塩素の水への溶解度は、水に溶解した異物によって決定的に影響を受け、異物は二酸化塩素の溶解度を低下させる。これは、二酸化塩素の水への溶解度が高いほど、溶液中に含まれる異物が少ないことを意味している。本発明による方法を用いると異物部分を極めて微量しか含まない二酸化塩素溶液が得られるので、本発明による溶液への二酸化塩素の溶解度も従来の二酸化塩素溶液中より高い。
【0059】
そこで本発明による二酸化塩素溶液は、約12質量%まで、および好ましくは約2質量%までの二酸化塩素の比較的に高い濃度においてさえ良好に取り扱うことができ、自然分解によって爆発する傾向を示さない。しかし安全上の理由から、本発明による方法を用いると、念のために好ましくは約2.5質量%まで、特に好ましくは約1質量%まで、および特に約0.6質量%までの濃度の二酸化塩素を含む二酸化塩素溶液が製造される。これとは対照的に、先行技術では、二酸化塩素の溶液が希釈されているほど安定性であると記載されている。そこで先行技術では大抵の場合0.3質量%以下の濃度が報告されている。しかし本発明による方法を用いると、当然ながら、望ましい場合は、二酸化塩素のより低濃度の溶液を製造することも可能である。これは例えば、最初に本発明による方法によって濃度約0.5〜約4.5質量%の二酸化塩素の高濃度の溶液を製造し、その後に望ましい、例えば約0.003〜約1質量%の低濃度に希釈することによって実施することができる。
【0060】
そこで本発明の範囲内では、好ましくは濃度約0.003質量%〜約4.5質量%、より好ましくは約0.03質量%〜約2.5質量%、さらにより好ましくは約0.1質量%〜約1質量%、全く特に好ましくは約0.3質量%超〜約0.6質量%、および特別には約0.5質量%〜約0.6質量%の二酸化塩素を含む溶液が製造される。濃度約0.3質量%超〜約0.6質量%の二酸化塩素を含む適切な溶液は、著明に従来の二酸化塩素溶液より高濃度であるが、それにもかかわらず貯蔵安定性であって良好に取り扱い易いために、特に好都合である。適切な濃度は予定される使用に主として依存し、当業者であれば適切に選択することができる。より低濃度の溶液は、既述のように、高濃度の二酸化塩素溶液を適切に希釈することによっても容易に得られる。
【0061】
本発明による方法を用いると、二酸化塩素は、連続運転における連続的、またはバッチ運転におけるバッチ式のどちらかで製造することができる。本発明による方法を連続運転で実施する場合は、亜塩素酸塩ならびにペルオキソ二硫酸塩を水溶液の形態で提供することが特に有益である。
【0062】
本発明のまた別の好ましい実施形態では、工程(c)において合した後に得られた溶液は、該溶液を貯蔵可能な、および/または輸送可能な容器内に充填される。該溶液が該容器内に充填される場合は、二酸化塩素への変換をまだ完了させる必要はない。つまり、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の二酸化塩素への反応の完了は、該溶液が該溶液の貯蔵または輸送のために予定される容器内へ詰め替えられた後に実施することも同様に可能である。そこで、亜塩素酸塩のペルオキソ二硫酸塩を用いて反応させる任意のまた別の工程の前後に冷却する工程を実施することができる。また別の好ましい実施形態では、工程(c)において合することは、該溶液の貯蔵または輸送のために予定された容器内で実施される。この変形は、完成した二酸化塩素溶液をもはや詰め替える必要がないので、特に有益である。適切な容器については、以下で記載する。
【0063】
本発明による二酸化塩素溶液を製造するための方法およびそこから得られる二酸化塩素溶液は、先行技術と比較して多数の長所を示す。そこで本発明による方法は、極めて温和な反応条件(特に、低い温度)下で2つだけの構成成分を使用する二酸化塩素溶液の製造を可能にする。さらに、例えば反応混合物の加温が必要ないので、極めて少ない装置コストしか必要としない。さらに、本発明による方法を用いると、活性化因子または触媒(たいていは重金属塩)を添加する、または規定の緩衝剤系を使用する必要なしに、塩素成分のほぼ定量的変換を短い反応時間で達成することができる。
【0064】
単純で完全な変換に基づくと、結果として生じた溶液はまた別の成分もしくは異物(例えば、未変換出発材料、望ましくない副生成物、緩衝剤、活性化因子または触媒)をほとんど含んでいないだけではなく、ほとんど二酸化塩素だけしか含んでいない。さらに驚くべきことに、この二酸化塩素溶液中の異物の非存在が該二酸化塩素溶液の安定性を有意に改善することが見いだされた。そこで、該二酸化塩素溶液の純度が高くなるほど、該二酸化塩素溶液の安定性が高くなり、該二酸化塩素溶液の分解傾向は小さくなることが確証された。そこから、二酸化塩素溶液の上昇した安定性は、該二酸化塩素が化学物質の使用をできる限り抑えて製造された場合に達成されることは明らかであり、これは本発明による方法によって可能になる。添加は該溶液の不安定化を明らかに導くことが見いだされた。
【0065】
本発明による二酸化塩素溶液中には、極めて選択的な変換に基づいて、異物としてほんのわずかな量の次亜塩素酸塩、塩素および塩素酸塩しか存在しない。そこでこれらの成分との還元反応によって二酸化塩素の分解が発生する万が一の危険が大きく減少する。これに基づいて、本発明による二酸化塩素溶液は、二酸化塩素の特記すべき分解を観察することなく、永続的に、詳細には少なくとも1年間貯蔵することができる。そこで、本発明による二酸化塩素溶液への安定剤の添加も必要ない。
【0066】
二酸化塩素溶液の高い純度を保証するために、本発明による方法では、二酸化塩素溶液を製造するための緩衝剤は使用されない。好ましい一実施形態では、本発明による方法はその他に、亜塩素酸塩成分ならびにペルオキソ二硫酸塩成分の使用に限定され、二酸化塩素溶液を製造するために活性化因子、触媒および安定剤から成る群から選択されるまた別の成分が使用されない、つまり出発材料にも結果として生じる二酸化塩素溶液にも添加されない。活性化因子は、例えばラジカル開始剤の場合がある。特に好ましい一実施形態では、本発明による方法では決して触媒が使用されない。触媒は、特に遷移金属塩、例えば銀塩、マンガン塩、銅塩および鉄塩、またはアルカリハロゲン化物およびアルカリ土類金属ハロゲン化物の場合がある。特別には、アルカリ臭化物およびアルカリ土類金属臭化物ならびにアルカリヨウ化物およびアルカリ土類金属ヨウ化物の添加は、これらが臭素およびヨウ素の形成を通して二酸化塩素の分解を導くので、不都合である。安定剤は、例えばEDTA塩の場合がある。また別の好ましい実施形態では、本発明による方法では、助剤、例えばソルビトール、デンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウムまたは香気物質も使用されない。本発明による方法の特に好ましい実施形態では、本方法はさらに亜塩素酸塩成分ならびにペルオキソ二硫酸塩成分の使用に限定され、二酸化塩素溶液を製造するためにまた別の成分を使用することは決してない。
【0067】
これに対して先行技術では、高濃度の二酸化塩素だけが分解を加速する、および安定性の上昇のために緩衝剤の添加もしくは安定剤が不可欠であると記載されている。今では、この先入観を否定することができよう。
【0068】
この上昇した安定性に基づいて、本発明による二酸化塩素溶液は、永続的に貯蔵可能なだけではなく輸送可能な溶液も提供することができる。先行技術と比較して、本発明による方法を用いると、もはや二酸化塩素溶液を予定される使用の直前に現場で製造する必要はない。むしろ二酸化塩素溶液を相当に多量で製造し、冷却し、その後に初めて予定される使用場所に輸送することができる。
【0069】
さらに、あらゆる規模における、つまりミリグラム範囲内の量から数千立方メートルの範囲内の大規模用途までの本発明による方法の使用は、問題なく、危険を伴わずに可能である。
【0070】
該溶液は、本発明による製造方法の終了後にはそのまま使用する準備が整っているので、例えば吸収カラム、脱塩、他の溶液との混合によるさらなる再加工は必要ない。
【0071】
本発明は、さらに上述した方法によって製造される二酸化塩素水溶液に関する。
【0072】
本発明は、さらに二酸化塩素が約0.1質量%〜約12質量%まで、および好ましくは約0.3質量%〜約4.5質量%までの量で含む二酸化塩素水溶液に関し、このとき該水溶液のpH値は約2〜約4であり、該溶液は緩衝剤を全く含んでいない。特に好ましい実施形態では、該水溶液は二酸化塩素を約0.3〜約1質量%の量で含んでいるが、該溶液のpH値は約2〜約4であり、該溶液は緩衝剤を全く含んでいない。さらにより好ましいのは、二酸化塩素濃度約0.3超〜約0.6質量%の二酸化塩素溶液である。本発明による溶液は、従来の二酸化溶液より著明に高濃度であり、したがって貯蔵安定性である上に取り扱い易いので、特に有益である。
【0073】
本発明は、さらにその二酸化塩素を硫酸水素ラジカルと一緒にラジカル対会合体の形態で含有しており、該溶液が緩衝剤を含んでいない二酸化塩素水溶液に関する。好ましい一実施形態では、本発明による二酸化塩素溶液は、活性化因子、触媒および安定剤から成る群から選択されるまた別の成分を全く含んでいない。
【0074】
これらの二酸化塩素溶液は、高濃度でも上昇した安定性およびそれに結び付いている延長された貯蔵能力ならびに輸送能力の上述した長所を有する。
【0075】
本発明による二酸化塩素溶液は、さらに弱酸性pH値に基づいて耐腐食性であり、さらに従来型二酸化塩素溶液と比較して該溶液中で追加して含有されている硫酸水素ラジカル(上述の平衡式(2)を参照されたい)またはその結果として生じる副生成物に基づく追加の酸化電位からの溶液の保護を示す。
【0076】
本発明による二酸化塩素溶液は、永続的に、少なくとも1年間の貯蔵性もしくは耐久性がある、つまりこの期間内には二酸化塩素の著明な分解を観察することはない。好ましくは、本発明による二酸化塩素溶液は、無期限に貯蔵可能である。本発明による二酸化塩素溶液の貯蔵安定性を高めるために、該二酸化塩素溶液は、好ましくは冷却して、好ましくは0℃超〜約25℃、特に好ましくは約2℃〜約20℃、極めて特に好ましくは約5℃〜約15℃の温度で貯蔵される。
【0077】
さらに、本発明による二酸化塩素溶液は遮光下で貯蔵されるのが有益である。しかし驚くべきことに、水溶液中の二酸化塩素溶液は、気相中よりも紫外線もしくは太陽光線に対して顕著に安定性であるので、好ましい一実施形態によると、該溶液を貯蔵する容器内で該溶液の上方に存在する気相を光線入射から保護すれば十分である。このためには、例えば光線不透過性箔または光線不透過性容器もしくは光線不透過性のバレルを使用することができる。
【0078】
本発明による二酸化塩素水溶液は、該二酸化塩素が加水分解されない、二酸化塩素の真性水溶液である。該溶液の蒸気圧はヘンリーの法則にしたがっている、つまり部分圧の合計が総圧を生じさせる。二酸化塩素の蒸気圧は温度依存性であり、温度が上昇するにつれて増大する。純粋の非水性形にある二酸化塩素は1013mbarでは11℃の沸点を有するが、水中では、二酸化塩素は水と反応せずに極めて高い濃度で溶解性である。周囲温度が上昇するにつれて水溶性は低下し、二酸化塩素は気相内ではより理想気体のように挙動するが、このとき二酸化塩素水溶液の上方にある気相内の二酸化塩素は、周囲温度が沸点に近付くにつれて、またはそれどころかこれを下回ると、より現実的に挙動する。
【0079】
しかし様々な理由から、本発明による二酸化塩素溶液の蒸気圧はできる限り低く保持するのが望ましい。そこで二酸化塩素についての高い蒸気圧は、該溶液から該二酸化塩素の一部が漏出し、これが使用可能な二酸化塩素の濃度を減少させることを導く。これは特にその後、本発明による二酸化塩素溶液のための貯蔵容器が例えば換気される、または開口している場合は、二酸化塩素の有意な消失を導く可能性がある。この方法で、二酸化塩素は該溶液から気相内へ次第に移行し、その後に該容器から漏れ出る可能性がある。それ以上に、気相内の二酸化塩素は紫外線もしくは太陽光線に対して溶解形におけるより安定性が低い。したがって、気相内の二酸化塩素の部分が増加するにつれて分解反応が増加するが、これは本発明による溶液中の二酸化塩素の濃度および純度を減少させる。それ以上に、気相内の二酸化塩素はその爆発傾向に基づいて明らかにより危険であり、それによって取り扱いがより困難になる。
【0080】
そこで本発明による二酸化塩素水溶液をそれらの沸点の11℃より下方で、特に0℃超〜11℃、特に好ましくは5℃〜11℃で貯蔵するのが有益である。
【0081】
しかし過剰圧の使用も二酸化塩素の蒸気圧の低下に関して有益である。例えば本発明による二酸化塩素溶液は、約0.01〜約10bar、場合によっては不活性ガス、例えば窒素または類似の気体下で、好ましくは約0.1〜約1barの過剰圧を用いて装填することができ、これによって二酸化塩素の蒸気圧はさらに低下する。さらに沸点より上方の温度における過剰圧は、類似の結果を導く。そこで本発明による溶液は、該溶液が同時に適切な過剰圧で、気相内の二酸化塩素の量を減少させるために装填される限り、40℃までの温度でも貯蔵することができる。
【0082】
そこで本発明によると、二酸化塩素溶液は、本発明によるものであっても従来法によるものであっても、有益にも圧力下の1つの容器内に貯蔵可能であることが証明された。この圧力は、好ましくは0.01〜約10bar、好ましくは約0.1〜約1barの範囲内にある。
【0083】
本発明による二酸化塩素溶液の特に好ましい実施形態では、該二酸化塩素溶液は、0℃超〜約15℃の範囲内の温度において約0.1bar〜約1barの同時の加圧下に貯蔵される。
【0084】
本発明のまた別の好ましい実施形態では、該二酸化塩素溶液は、不活性雰囲気下でも貯蔵することができる。
【0085】
適切な容器としては、例えば従来型のプラスチック缶もしくは金属缶、スナップ式フタ付きボトル、バレル、ガラス瓶などが考えられる。材料に関しては、二酸化塩素に対して不活性で挙動し、極めて十分に耐食性である限り、制限は全くない。好ましくは、ガラス、金属もしくはプラスチック、特別にはHDPE、LDPE、PVC、PTFEもしくは混合ポリマー製の容器が使用される。本発明の好ましい一実施形態では、該溶液を混合、輸送および/または貯蔵するために予定される容器は光線不透過性である。
【0086】
本発明の二酸化塩素溶液を貯蔵するための容器に関しては、同様に気相内および液相内での平衡調節後の二酸化塩素の溶解度の温度依存性比率を記述しているヘンリーの法則も考慮に入れなければならない。特に、純粋に計算上では、例えば本発明による二酸化塩素溶液を部分的に消費した後の低充填状態では、該容器内には液相中より気相中により多くの二酸化塩素が存在する。そこから、通常は二酸化塩素溶液中の作用物質の主な消失が説明される。貯蔵容器内の非気密性は、平衡の永続的な後調節およびそれとともに該作用物質の完全な消失をもたらす。平衡調節の速度は、さらに存在する表面積に合わせて調節されるが、このとき液体から気相内への移行は該溶液の表面積および特に遊離気体容積に左右される。さもなければ密封された容器の表面が、例えば上に乗っている多かれ少なかれ密な浮体によって覆われている場合は、気相内の二酸化塩素の液体への平衡調節の速度は極めて大きく低下する。そこで、本発明による溶液を貯蔵および/または輸送するために予定された容器は、好ましくは浮体を含んでいる。この方法では、該二酸化塩素の蒸気圧が低いままである限り低充填状態において二酸化塩素溶液の表面積を減少させ、残りの充填物を確実に利用可能にすることができる。
【0087】
本発明による二酸化塩素溶液のpH値は、一実施形態では約2〜約4および好ましくは約2.5〜3である。このpH範囲は、本発明による溶液の安定性を考えると特に有益である。これとは対照的に、従来の二酸化塩素溶液は、通常は4超のpH値を示すが、このときこのpH値は適切な緩衝剤系によって達成される。本発明による一実施形態によると、この二酸化塩素溶液は緩衝剤を含んでいない。好ましい一実施形態では、本発明による二酸化塩素溶液は、活性化因子、触媒および安定剤から成る群から選択されるまた別の成分を全く含んでいない。
【0088】
本発明による二酸化塩素溶液のまた別の実施形態では、該溶液は二酸化塩素の他に少なくとも1つの別のラジカルを含んでいる。好ましくは、この本発明による二酸化塩素溶液は、上述した方法によって製造される。平衡式(2)から、1当量の亜塩素酸イオンの1当量のペルオキソ二硫酸イオンによる変換によって1当量の二酸化塩素の他に1当量の硫酸水素ラジカルもまた上述したように形成されることが推定されることは明白である。これに相応して、本発明によるとまた別のラジカルは、好ましくは1つの硫酸水素ラジカルまたは硫酸水素ラジカルとの反応によって得られた副生成物である。
【0089】
該溶液中に存在するまた別のラジカルに基づくと、本発明による二酸化塩素溶液は、1つのまた別の強酸化剤を含んでおり、そこで追加の酸化作用を示し、それによって自己触媒性分解が抑制または減少する。これに基づき、本発明による二酸化塩素溶液は、従来の二酸化塩素溶液と比較して有益である。
【0090】
本発明は、さらに本発明による二酸化塩素溶液の他に別個の適切な還元剤、例えば別個の亜硫酸塩溶液、二亜硫酸塩溶液、チオ硫酸塩溶液、硫化物溶液または亜硝酸塩溶液を含んでいる。好ましくは、該亜硫酸塩溶液は、亜硫酸ナトリウム溶液である。固体の亜硫酸塩も使用することができる。本発明による二酸化塩素溶液は、十分な量の亜硫酸塩の添加によって単純および確実な方法でより短時間で消失させることができる。本発明の二酸化塩素溶液への亜硫酸ナトリウム水溶液の添加は、水相および気相内に含まれる二酸化塩素を即時に消失させる。本発明によるキットの使用は、該二酸化塩素の輸送、取り扱いならびに破壊を単純化し、本発明による二酸化塩素溶液の安全な取り扱いを可能にする。該消失キットは、この利用に加えて、高濃度の二酸化塩素を備える溶液の使用を可能にし、引き続いて規定の無毒化が行われる。該二酸化塩素の消失は、無毒の塩化物だけおよび亜硫酸塩溶液が使用される場合には無毒の硫酸塩だけが形成されるという長所を有する。
【0091】
本発明は、消毒剤、酸化剤または漂白剤として、および/または脱臭剤としての上述した二酸化塩素水溶液の使用にさらに関する。本発明による二酸化塩素溶液は、このとき例えば空気、大地および水、例えば飲用水、風呂水、汚水、雑用水など、医学において、フィルターまたはバイオフィルムを消毒するためにさらに使用することができる。さらに、本発明による二酸化塩素溶液は、例えば様々な技術的方法、例えば製紙、食料品製造など、廃棄物および汚泥の処理、または洗浄剤中において酸化剤もしくは漂白剤として使用することができる。本発明による二酸化塩素溶液は、さらに例えば悪臭抑制、例えば下水道、工業プロセス家庭などにおいて、固体、懸濁液および洗浄剤中で脱臭剤として使用することもできる。上記に挙げた使用は、最終的列挙を示すものではない。むしろ本発明による二酸化塩素溶液は、それらの消毒、酸化および脱臭作用が有益であるあらゆる適切な領域において使用することができる。
【0092】
本発明による二酸化塩素溶液は、さらにこの溶液からの二酸化塩素を有機溶媒、例えばエーテル、炭化水素などを用いて抽出することによって有機溶媒中へ定量的に移行させるために使用することができる。そこで該二酸化塩素は、また別の適切な有機溶媒へ限定された反応へ利用することができる。そこで水が(例えば、空気中湿度などに基づく腐食のために)障害となるもしくは逆効果となる活動領域において使用することができる。
【0093】
本発明は、二酸化塩素水溶液の飲用水および風呂水を消毒する、または雑用水および下水を消毒するための使用であって、該二酸化塩素溶液が、亜塩素酸塩を提供する工程、ペルオキソ二硫酸塩を提供する工程ならびに亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩を水性系中において1より大きいペルオキソ二硫酸イオン対亜塩素酸イオンのモル比[S
2O
82-]/[ClO
2-]で合すると二酸化塩素水溶液が形成される工程を含む方法によって得られる使用にさらに関する。
【0094】
本発明は、飲用水および風呂水の消毒、雑用水および下水の処理またはバイオフィルムの効果的駆除のための二酸化塩素水溶液の使用であって、該二酸化塩素溶液をラジカル対会合体の形態にある硫酸水素ラジカルを一緒に含む使用にさらに関する。
【0095】
以下では、本発明による二酸化塩素溶液のさらに特に好ましい使用もしくは本発明の方法によって製造された二酸化塩素溶液について説明する。そこで、本発明による二酸化塩素溶液は工業的プロセスにおいて使用することができる。
【0096】
典型的に挙げられる技術的方法には、膜装置、例えば医学領域におけるRO装置の非破壊消毒(除菌);あらゆる種類の材料上の苔の除去;例えば乗り物、船舶、航空機上のサビ除去;製造工程における悪臭抑制;下水の除菌、物理化学的水分離および残留物質再使用による工業的下水処理;下水誘導システムにおける腐食保護;ワニスの表面保護、あらゆる種類のプラスチック、木材、金属セラミック、石材のコーティング;長期作用を備える除菌;表面および空間(気相)の消毒;空気モニタリング;美容的または医学的使用、例えばうがい水、疣治療、ダニ除去、適切な細胞破壊、外的もしくは内的使用または病原菌に対する使用;浄化装置後の下水(AOP)中の残留物質(医薬品、X線造影剤、酸化製品、シアン化物など)の酸化;気体状生成物(H
2S、NO、NO
2ならびに有機物質)の酸化;ならびに低温での殺菌、例えばOP材料が含まれる。本発明による二酸化塩素溶液は、同様に酸化的重金属処理のために使用することもできる。
【0097】
さらに本発明の二酸化塩素溶液は、標準消毒の形態または永続的消毒の形態での飲用水の処理のために、例えば給水施設における永続的飲用水消毒のため、送水管内のバイオフィルムを分解するために使用することができる。そこで本二酸化塩素溶液は、飲用水の緊急塩素処理もしくは消毒のために、例えば豪雨の後、汚染侵入後(例えば地下水、地表水もしくは雑用水の飲用水タンクの細菌汚染後および病原菌、例えば炭疽菌、コレラ菌などの除菌のため)または自然災害後に、この方法で消毒された飲用水を提供するため、または不良な質の地表水からも飲用水供給を保持するために使用することができる。最終的に、本二酸化塩素溶液は、建物(例、診療所、病院、高齢者ホーム、管理棟、オフィス棟、住居棟)、水泳プール、乗り物(例、自動車、鉄道、船舶、航空機)において温水および冷水導管、エアコンディショナー、水処理装置、水浄化装置、ボイラー、下水システムまたはプール内のプール用水の消毒のために、この方法で特にレジオネラ菌およびその他の菌ならびにバイオフィルムを除去するため、もしくはバイオフィルムの形成を抑制するために使用することができる。好ましくは、本発明による二酸化塩素溶液は、飲用水導管、エアコンディショナー、水浄化装置、ボイラーまたはプールにおいて標準消毒の形態または永続的消毒の形態においてバイオフィルム、レジオネラ菌もしくはその他の菌を除去するために使用される。
【0098】
この領域におけるまた別の適切な使用は、緊急消毒、地下タンクおよびディープタンク、水栓および配管系の消毒、導管破裂後の消毒、再汚染後の緊急消毒、バイオフィルム抑制およびバイオフィルム予防、薬剤を含む残渣の下水処理ならびに多剤耐性菌の除去の代用である。
【0099】
エアコンディショナーおよび冷却塔では、本発明による二酸化塩素溶液は、熱交換器および配管系からバイオフィルムを除去するため、細菌汚染、例えばレジオネラ菌による汚染を除去するため、標準消毒、継続的消毒または間欠的消毒のため、および腐食保護のために使用することができる。
【0100】
食料品製造においては、本発明による二酸化塩素溶液は、製造および洗浄水の水再生のため、製造工程における衛生状態を維持するため、輸送用車両の殺菌のため、感染巣の抑制および予防のため、さらに食肉処理分野において、例えば加工、包装または洗浄中の衛生状態を維持するために使用することができる。
【0101】
果実、果物および種子においては本発明による二酸化塩素溶液は、成長期中、収穫中および収穫後の衛生状態を維持するため、加工中の衛生状態を維持するため、安定性を延長するための包装中、種子の貯蔵衛生状態を維持するため、持続性作用を備えて消毒もしくは殺菌のために使用することができる。
【0102】
鉄道、航空機または船舶においては、本発明による二酸化塩素溶液は、衛生エリアの衛生を保持するため、エアコンディショナー、悪臭抑制のため、例えばレール領域の標識などからの長期持続的な生態学的植生除去のため、船舶の消毒のため、下水処理のため、中水道水、黄色水(Gelbwasser)もしくは黒色水の処理のため、飲料水(Trimmwasser)の除菌のため、および海水からの飲用水入手のために使用することができる。
【0103】
特に、本発明による二酸化塩素溶液は、例えば下水誘導システム、導管内における悪臭除去のために使用することができる。該二酸化塩素溶液は、この下水誘導システムにおいて、持続的に腐敗工程を停止させるので、防食剤としてさらに役立つ。この溶液を用いたバイオフィルム除去は、ワニス、あらゆる種類のコーティング、プラスチック、木材、金属、セラミック、石材に対する表面保護剤として極めて良好に使用することができる。ここで使用される溶液は、長期作用を伴って特に持続性で有効である。この長期作用は、表面からバイオフィルムを完全に除去した結果である。同様に、該溶液は表面および空間(気相)の浄化のため、さらに空気清浄を維持するためにも使用することができる。該二酸化塩素溶液は、膜の持続的洗浄、消毒ならびに殺菌のために使用することができる。安定性ラジカルにより、さらに医学的用途において、例えばうがい水として、疣治療、ダニ除去、適切な細胞崩壊のため、さらに一般には体外の消毒および病原体の破壊のために使用することができる。
【0104】
本発明は、上述した二酸化塩素溶液を製造するための装置にさらに関する。本発明による二酸化塩素溶液を製造するためのこの装置は、二酸化塩素溶液を製造するための本発明による方法が大規模工業的にのみ実施できるのではなく、小規模で使用するためにも適合するという考えに基づいている。そこで本発明による方法を実施するために適切な装置は、例えば戸建住宅または集合住宅においても、そこで例えば飲用水および風呂水を消毒するために必要な量の二酸化塩素を連続的に利用するために存在してよい。
【0105】
これらを背景にすると、本発明による二酸化塩素溶液を製造するための本発明による装置(1)は、
(a)亜塩素酸塩成分(2)のための少なくとも1つの貯蔵容器、
(b)ペルオキソ二硫酸塩成分(3)のための少なくとも1つの貯蔵容器、
(c)亜塩素酸塩成分(5)のための供給導管を通して亜塩素酸塩成分(2)のための少なくとも1つの貯蔵容器と接続されている、または接続可能である、およびペルオキソ二硫酸塩成分(6)のための供給導管を通してペルオキソ二硫酸塩成分(3)のための少なくとも1つの貯蔵容器と接続されている、または接続可能である、少なくとも1つの混合容器(4)、
(d)該二酸化塩素溶液のための少なくとも1つの供給導管(16)を通して該混合容器(4)と接続されている、または接続可能である該二酸化塩素溶液のための少なくとも1つの貯蔵容器(7)、および
(e)該二酸化塩素溶液のための該少なくとも1つの貯蔵容器(7)が備え付けられている1つの配量装置(18)を含んでいる。
【0106】
以下では、本発明による装置を好ましい一実施形態の添付の図面を参照して記載するが、これは本発明による装置の課題、特徴および利点は以下に詳述した説明ならびに添付の図面に基づくとより容易に理解できるからである。図面に示した実施形態は、必然的に存在する必要はないが単に好ましいだけの特徴も含めて描出されていると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図1】
図1は、二酸化塩素溶液を製造するための本発明の好ましい一実施形態を示している。
【0108】
装置1は、亜塩素酸塩成分2のための貯蔵容器を含んでいる。この貯蔵容器2は、該亜塩素酸塩成分を例えば固体形および水溶液として貯蔵することができるように構成されている。本発明による装置の好ましい一実施形態では、該貯蔵容器2は、混合もしくは撹拌装置8を含んでいるので、貯蔵容器2内では、固体亜塩素酸塩の水中への溶解によって水性亜塩素酸塩成分を発生させることができ、この溶解は混合もしくは撹拌装置8によって達成される。また別の好ましい実施形態では、貯蔵容器2は、該貯蔵容器2内の亜塩素酸塩の量もしくは濃度を測定することができるように装備されている1つ以上の測定セル9を含んでいる。これらは、例えば導電度、pH値、酸化還元値のための適切な測定セル、アンペロメトリック測定セル、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0109】
装置1は、ペルオキソ二硫酸塩成分3のための貯蔵容器を含んでいる。この貯蔵容器3は、該ペルオキソ二硫酸塩成分を例えば固体形および水溶液として貯蔵することができるように構成されている。本発明による装置の好ましい一実施形態では、該貯蔵容器3は、混合もしくは撹拌装置10を含んでいるので、貯蔵容器3内では、固体ペルオキソ二硫酸塩を水に溶解させることによって水性ペルオキソ二硫酸塩成分を発生させることができ、この溶解は混合もしくは撹拌装置10によって達成される。また別の好ましい実施形態では、該貯蔵容器3は、該貯蔵容器3内のペルオキソ二硫酸イオンの量もしくは濃度を測定するために適している1つ以上の測定セル11を含んでいる。これらは、例えば導電度、pH値、酸化還元値のための適切な測定セル、アンペロメトリック測定セル、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0110】
装置1は、亜塩素酸塩成分5のための供給導管を通して亜塩素酸塩成分2のための少なくとも1つの貯蔵容器と接続されている、または接続可能である、およびペルオキソ二硫酸塩成分6のための供給導管を通してペルオキソ二硫酸塩成分3のための少なくとも1つの貯蔵容器と接続されている、または接続可能である1つの混合容器4をさらに含んでいる。供給導管5および6は、該亜塩素酸塩もしくはペルオキソ二硫酸塩成分を貯蔵容器2および3から該混合容器4に供給するために装備されている。好ましい一実施形態では、供給導管5および6には、供給される亜塩素酸塩もしくはペルオキソ二硫酸塩の量を調節する、さらに亜塩素酸塩もしくはペルオキソ二硫酸塩の供給を完全に中断するために配量装置12および13が装備されている。特に好ましい一実施形態では、該供給導管5および6には、ペルオキソ二硫酸イオンおよび亜塩素酸イオンが1より大きい[S
2O
82-]/[ClO
2-]の比率で混合容器4に供給されるように、供給する亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の量を調節することができるように配量装置12および13が装備されている。
【0111】
混合容器4は、好ましくは、供給された亜塩素酸塩成分およびペルオキソ二硫酸塩成分を一緒に混合するために装備されている混合もしくは撹拌装置14を含んでいる。さらに、混合容器4は、好ましくは二酸化塩素イオンおよび/または亜塩素酸イオンおよびペルオキソ二硫酸イオンの量もしくは濃度を混合容器4内で測定するために装備されている1つ以上の測定セル15を含んでいる。適切な測定セル15によって、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩から二酸化塩素への変換の経過を追跡することが可能である。さらに、該混合容器4は、好ましくはこれに水を供給することができるように装備されている。これは特に、固体形にある2つの成分が該混合容器4に供給される場合は重要である。
【0112】
さらに、本発明による装置1は、二酸化塩素溶液のための1つ以上の貯蔵容器7を含んでいる。好ましい一実施形態では、本発明による装置1は、二酸化塩素溶液のための少なくとも2つの貯蔵容器7aおよび7bを含んでいる。少なくとも1つの貯蔵容器7は、少なくとも1つの供給導管16を通して該混合容器4と接続されている、または接続可能である。少なくとも1つの貯蔵容器7は、本発明による方法によって製造された二酸化塩素溶液をこれが特定の用途のために必要になるまで貯蔵しておくために装備されている。本発明による装置の好ましい一実施形態では、該少なくとも1つの貯蔵容器7内の圧力を測定する、ならびに該少なくとも1つの貯蔵容器7に圧力を印加するために装備されている圧力調節のための装置17が予定されている。これは、二酸化塩素溶液の蒸気圧の低下に関して有益である。特に好ましい一実施形態では、該少なくとも1つの貯蔵容器7は、該貯蔵容器7内の二酸化塩素溶液の表面を被覆するために装備されている浮体20も含んでいる。これは、該貯蔵容器の充填状態が低い場合には、該二酸化塩素溶液の蒸気圧の減少を顧慮すると有益である。
【0113】
さらに、本発明による装置1は、該二酸化塩素溶液のための該少なくとも1つの貯蔵容器7が備え付けられている1つの配量装置18を含んでいる。この配量装置18は、該少なくとも1つの貯蔵容器7からの該二酸化塩素溶液の採取を調節するために装備されている。該配量装置18は、例えば配量ポンプであってよい。本装置1は、二酸化塩素溶液のための少なくとも2つの貯蔵装置7aおよび7bを含んでいるので、該配量装置18がこれを用いて貯蔵容器7aまたは貯蔵容器7bのどちらかから二酸化塩素溶液を採取することができるように構成されているのが有益である。さらに、貯蔵容器7は、好ましくは二酸化塩素イオンおよび/または亜塩素酸イオンおよびペルオキソ二硫酸イオンの量もしくは濃度を貯蔵容器7内で測定するために装備されている1つ以上の測定セル19を含んでいる。それによって、いつでも該二酸化塩素溶液中の二酸化塩素の濃度ならびにその純度を測定することが可能である。
【0114】
本発明による装置は、二酸化塩素溶液を様々な量で製造して用意して保持することが可能である。少なくとも2つの異なる貯蔵容器7aおよび7b内での貯蔵はさらに、完成二酸化塩素溶液の継続的な採取を可能にする。そこで、例えば該溶液の貯蔵容器7aからの採取中には、貯蔵容器7bに再充填して逆にすることができる。
【0115】
好ましい一実施形態では、本発明による装置は、混合容器4と貯蔵容器7との間に配列されている1つの成熟容器をさらに含んでいる。この成熟容器は、有益にも、該混合容器4内で合された溶液を取り出し、亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩から二酸化塩素への変換が完了するまでの間収容するよう装備される。特に好ましい一実施形態では、該成熟容器は、圧力調節のための装置を同様に含んでいる。
【0116】
さらに本発明による装置は、好ましくは例えば測定セル9、11、15および19、圧力調節のための装置17ならびに配量装置12および13と接続されている、または接続可能である自動工程制御装置を含んでいる。この自動工程制御装置によって、例えば該製造しなければならない二酸化塩素溶液の量および濃度は供給されなければならない亜塩素酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の量の制御によって調節することができる。
【0117】
また別の好ましい実施形態では、本発明による装置1は、該二酸化塩素溶液の製造ならびに貯蔵が遮光下で実施されるように装備される。これは、例えば容器および供給導管が光線不透過性で装備されることによって実施することができる。しかしさらに、本装置1を光線不透過性である1つのケースまたは箱の中に配置することも可能である。
【0118】
また別の好ましい実施形態では、本発明による装置1は、温度調節可能である。このとき特に好ましいのは、装置1が、特に2つの出発生成物の混合ならびに完成二酸化塩素溶液の貯蔵が約0℃〜約25℃で実施可能なように装備されていることである。これは、例えば個々の混合もしくは貯蔵容器を冷却する適切な冷却装置によって実施することができる。しかしさらに、装置1の全体をある種類の冷蔵庫内に配置することも可能である。
【0119】
また別の好ましい実施形態では、本発明による装置1は、該二酸化塩素溶液を連続運転で連続的に製造するために装備されている。また別の好ましい実施形態では、本発明による装置1は、該二酸化塩素溶液をバッチ運転でバッチ式で製造するために装備されている。
【0120】
好ましい一実施形態では、本発明による装置は、戸建住宅または集合住宅において小型設備として使用するために装備される。これは例えば、その場所で飲用水および風呂水を消毒するために必要な量の二酸化塩素を連続的または必要時にバッチ式で利用できるようにするために有益である。また別の好ましい実施形態では、本発明による二酸化塩素溶液を製造するための装置は、それをハウジング内に持ち込めるように輸送可能に装備される。ハウジングは、輸送のために適切なハウジング、例えば金属製またはプラスチック製ハウジングであってよい。好ましくは、該輸送可能な装置は、重量500kg未満、特に好ましくは100kg未満の装置である。この方法では、本発明による装置を輸送し、したがって本発明による方法を該二酸化塩素溶液の使用場所で初めて使用することが可能である。これは、例えば、戸建住宅または集合住宅における小型設備の形態に合ってよい。
【0121】
また別の好ましい実施形態では、本発明による装置は、大規模工業用設備として、例えばタンク設備として使用するために装備される。これは例えば、本発明による二酸化塩素溶液を大量に製造し、その後場合によっては小さな容器に充填して販売する、もしくは輸送するために有益である。これは、本発明による現場で製造されていない二酸化塩素溶液が利用されるという長所を有する。
【0122】
引き続いて、本発明は同様に、少なくとも1つの二酸化塩素ラジカルならびに硫酸水素ラジカルを含む1つのラジカル対会合体に関する。好ましくは、このラジカル対会合体は、少なくとも1つの水の分子および場合によってはさらにまた別のラジカル種を含んでいる。これらのまた別のラジカル種は、例えば適切なラジカル中間段階、例えば二酸化塩素または硫酸水素ラジカルから形成されているOH
・、SO4
・-またはClO
・であってよい。好ましい一実施形態では、本発明によるラジカル対会合体は安定性である、つまり少なくとも1時間にわたって貯蔵安定性である。特に好ましい一実施形態では、1日、さらに好ましくは1年間貯蔵安定性である。また別の好ましい実施形態では、本発明によるラジカル対会合体は、緩衝剤の存在下では存在しない。
【0123】
以下では、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0124】
実施例
分析:
本発明による二酸化塩素溶液中の二酸化塩素の濃度は、様々な測定方法によって測定することができる。特別には、二酸化塩素の濃度は、アンペロメトリック、フォトメトリック、ヨードメトリック、二酸化塩素溶液の亜硫酸塩溶液用いた滴定またはイオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0125】
これらの分析方法は、DIN38408−5に関連してドイツガス水処理協会(DVGW)の作業計画書W224(2010年2月)、第18頁以降に詳細に記載されている。
【0126】
以下の実施例では、特に二酸化塩素濃度を測定するためのフォトメトリー法ならびにその他の部分、例えば亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオンおよび二酸化塩素を測定するためのイオンクロマトグラフィーが使用された。
【0127】
フォトメトリーでは、無制限にランベルト・ベール(Lambert−Beer)の法則が適用される。フォトメトリーを用いた二酸化塩素濃度を測定するためには、360nmの波長で測定される。モル吸光係数は、1100±50[l/mol
*cm]である。
【0128】
イオンクロマトグラフィーを用いると、該部分、例えば亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオンおよび二酸化塩素は組み合わせて把握される。条件は、先行技術において公知であり、例えばPetra Hubenbecker, Dissertation Bonn, 2010: "Untersuchung zur Entstehung von Desinfektionsnebenprodukten bei der Aufbereitung von Trinkwasser an Bord schwimmender Marineeinheiten unter Anwendungsbedingungen"に記載されている。
【0129】
実施例1:60Lの約0.6%二酸化塩素水溶液の製造
60リットルのタンク内に56,530gの脱塩水を測り入れる。これとは別に、別個の容器に1,970gの工業用24.5%亜塩素酸ナトリウムおよび1,500gのペルオキソ二硫酸ナトリウム(99%)を測り入れる。該過酸化物および亜塩素酸塩を前記タンクからの十分な量の水中に別々に溶解させる。亜塩素酸ナトリウム溶液の添加後、ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液を充填し、12℃で24〜48時間放置する。二酸化塩素の収率は、亜塩素酸ナトリウム投入量に基づき88〜98%である。
【0130】
実施例2:各0.2Lずつの約0.6%二酸化塩素水溶液を含む50本のスナップキャップ付きボトルの製造
10Lのバケツに9.65Lの脱塩水を測り入れる。別個に100gの粉末状の80%亜塩素酸ナトリウム(20%の塩化ナトリウムを含有する)および別に250gのペルオキソ二硫酸ナトリウム(99%)を測り入れる。両方の固体物質は該バケツからの十分な量の水を用いて別々に溶解させる。該亜塩素酸ナトリウム溶液をバケツの残りの水の中に入れ、短時間撹拌することで過酸化物と混合する。
【0131】
この完成混合物をボトルの中へ移し詰め、密封して2〜3日間5〜10℃の冷蔵庫内に貯蔵する。二酸化塩素の収率は、亜塩素酸ナトリウム投入量に基づき85〜99%である。
【0132】
実施例3:1Lの0.3%二酸化塩素溶液の製造
500mgの亜塩素酸ナトリウム(80%)を500mLの脱塩水中に溶解させ、497mLの脱塩水中の2,500mgのペルオキソ二硫酸ナトリウムの溶液と混合する。このボトルを密封し、冷蔵庫内で24時間放置する。収率は、亜塩素酸ナトリウム投入量に基づき>85%である。
【0133】
実施例4:1Lの0.6%二酸化塩素溶液の製造
10.00gの亜塩素酸ナトリウム(80%)を100mLの脱塩水中に溶解させる。105.00gの
ペルオキソ二硫酸ナトリウム(99%)を同様に100mLの脱塩水中に溶解させる。どちらの溶液も685mLの脱塩水中に入れる。このボトルを密封し、冷蔵庫内で3時間放置する。収率は、亜塩素酸ナトリウム投入量に基づき>95%である。
【0134】
実施例5:1Lの0.6%二酸化塩素溶液の製造
10.00gの亜塩素酸ナトリウム(80%)を40mLの脱塩水中に溶解させる。330gの
ペルオキソ二硫酸ナトリウム(99%)を同様に620mLの脱塩水中に溶解させる。このボトルを密封し、冷蔵庫内で30分間放置する。収率は、亜塩素酸ナトリウム投入量に基づき>98%である。
【0135】
実施例1〜5において製造された全ての二酸化塩素溶液は貯蔵安定性である、つまり1年後に二酸化塩素の顕著な分解(>5%)を観察されないことが確証された。さらに、反応混合物中の副生成物が少ないほど該溶液が安定性であることが証明された。
【0136】
ラジカル対会合体としての完成生成物は膜通過性である、およびこのラジカル対会合体は、変化した物理的特性(蒸気圧、溶解度など)を示すことが見いだされた。
【0137】
0.6%二酸化塩素溶液の蒸気圧に対しては、以下の数値が測定された:
【表1】
【0138】
文献(DVGW W224/1986 S.5)によると、該溶液は100mbar
以上のClO
2濃度(=10容量%、300g ClO
2/m
3)では爆発傾向を示すと警告されている。
【0139】
これとは対照的に、本発明による溶液が容易に取り扱い可能なこと、および自然分解の傾向もしくは爆発を決して示さないことが見いだされた。本生成物は、50℃という高温でさえ緩徐にしか塩素酸塩と反応せず、80〜90℃では急速に反応する。本溶液は、いかなる時も燃焼性ではない。これは4.5質量%までの二酸化塩素濃度を用いて試験した。濃度2.5質量%超の二酸化塩素溶液を製造すると、理想気体法則にしたがって概算で計算可能である反応容器内の圧力上昇が生じる。濃度約4.5質量%超では、二酸化塩素は油性液体として沈殿する。
【0140】
0.01〜4.5%の二酸化塩素有効成分濃度を含む溶液を燃焼している物体/焚き火と接触させると、これらの物体は自然に4.5% ClO
2溶液中に溶解する;だがこのとき気相は分解しない。1%未満のClO
2を含む溶液では、気相との反応を感知することができない。