(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141191
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】燃料を噴射する弁
(51)【国際特許分類】
F02M 51/06 20060101AFI20170529BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
F02M51/06 B
F02M55/02 350D
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-545129(P2013-545129)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2014-501347(P2014-501347A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】EP2011069494
(87)【国際公開番号】WO2012084328
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年6月24日
(31)【優先権主張番号】102010064105.7
(32)【優先日】2010年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グイド ピルグラム
【審査官】
安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−156169(JP,A)
【文献】
特開2009−287648(JP,A)
【文献】
特開2006−194237(JP,A)
【文献】
特開2003−021014(JP,A)
【文献】
特表2006−509140(JP,A)
【文献】
特開2003−049747(JP,A)
【文献】
特開昭63−125875(JP,A)
【文献】
特開2008−215273(JP,A)
【文献】
特開2009−216081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/06
F02M 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射する弁であって、
弁作動エレメント(2)と、
該弁作動エレメント(2)に結合されているアーマチュア(13)と、
該アーマチュア(13)の運動を制限するストッパ(6)と、
前記アーマチュア(13)と前記ストッパ(6)との間に設けられている緩衝エレメント(5)とを備え、
前記緩衝エレメント(5)は、緩衝層として前記アーマチュア(13)の少なくとも一部に被着されている、
燃料を噴射する弁において、
前記緩衝エレメント(5)は、非磁性材料から製造されていて、前記アーマチュア(13)に磁気的な残留エアギャップを提供し、
前記緩衝エレメント(5)は硬質プラスチックまたは弾性材料から製造されていて、面状の緩衝層を形成しており、
前記アーマチュア(13)は、基面(14)と環状の縁部(15)とを備え、ポット形に形成されており、
前記緩衝エレメント(5)は、前記基面(14)及び前記環状の縁部(15)の外側に被着されている
ことを特徴とする、燃料を噴射する弁。
【請求項2】
前記アーマチュア(13)は、軟磁性の材料から成るアーマチュアボディを有する、請求項1記載の弁。
【請求項3】
前記弾性材料が、ゴム材料である、請求項1又は2記載の弁。
【請求項4】
ゴム材料は加硫ゴムである、請求項3記載の弁。
【請求項5】
前記緩衝層は10〜30μmの厚さを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁。
【請求項6】
前記緩衝層は、約20μmの厚さを有する、請求項5記載の弁。
【請求項7】
前記アーマチュア(13)は、燃料を通過させるための流通開口(11)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、単純化された、一層廉価な構造を有する、燃料を噴射する弁に関する。
【0002】
燃料を噴射する弁は、公知先行技術に基づいて、種々異なる構成が知られている。電磁弁の場合には、アーマチュアが軟磁性の材料から製造されている。この軟磁性の材料は、たとえば旋削加工部品として生産され得る。永久安定性もしくは連続安定性を向上させるためには、アーマチュアがクロムで被覆される。弁が通電されると、磁界が形成されるので、アーマチュアは、このアーマチュアに固定されたニードルと共に加速され、次いで高い衝撃を伴ってストッパ、たとえば内側磁極またはハウジングに衝突する。このときに高い衝突衝撃が発生する恐れがあり、このことはクロム層の損傷、特にクロム層の剥落を招く恐れがある。さらに、アーマチュアのクロムメッキは極めてコストがかかる。この場合、金属成分であるクロムはさらに音響をも、未減衰のまま伝達する。さらに、公知先行技術における公知のアーマチュアは高い質量を有し、これにより高い衝撃が生ぜしめられる。このことは、付加的に、相応してやかましい衝突ノイズをも招く。
【0003】
発明の開示
請求項1の特徴部に記載の、本発明による燃料を噴射する弁、つまり弁作動エレメントと、該弁作動エレメントに結合されているアーマチュアと、該アーマチュアの運動を制限するストッパと、前記アーマチュアと前記ストッパとの間に設けられている緩衝エレメントとを備え、前記緩衝エレメントは、緩衝層として前記アーマチュアの少なくとも一部に、かつ/または前記ストッパの少なくとも一部に被着されていることを特徴とする、燃料を噴射する弁には、従来のものに比べて、ストッパにおけるアーマチュアの衝突衝撃の改善された緩衝が可能になるという利点がある。さらに、本発明によれば、ノイズ伝播も減衰され得る。また、クロムメッキが不要となることに基づいた著しいコスト削減の他に、永久安定性もしくは連続安定性の向上も得られる。このことは本発明によれば、アーマチュアのクロムメッキが不要にされ、その代わりに、アーマチュアとストッパとの間に緩衝エレメントが設けられることにより達成される。この緩衝エレメントは層として、アーマチュアの少なくとも一部および/またはストッパの少なくとも一部に被着されている。緩衝層はこの場合、極めて簡単にかつ廉価に被着され得る。
【0004】
従属項形式の請求項2以下には、本発明の有利な改良形が記載されている。
【0005】
アーマチュアはディスクとして形成されていると好ましい。これにより、アーマチュアの質量を減少させることができる。これにより、アーマチュアの操作時でのストッパにおける衝突衝撃が減じられる。ディスクとしてのアーマチュアの構成の他に、択一的には、アーマチュアのディスク形の基面が、軸方向に突出した環状の縁部を有し、これによりアーマチュアがポット形状を有することも可能である。ポット形のアーマチュアは、たとえば深絞り加工または流れ押出し加工によって製造され得る。ディスク形のアーマチュアは、たとえば打抜き加工によって製造され得る。
【0006】
アーマチュアは、軟磁性の材料から製造されていると有利である。
【0007】
特に有利には、緩衝層が非磁性材料から製造されていて、アーマチュアに磁気的な残留エアギャップを提供する。
【0008】
緩衝層は硬質プラスチック、たとえばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または弾性的な材料、特にゴムから製造されていると有利である。緩衝層は、軟磁性のアーマチュアに被着されるように射出成形されると有利である。
【0009】
さらに有利には、緩衝層は10〜30μmの厚さ、好ましくは約20μmの厚さを有する。この場合、特に20μmの厚さが、廉価な製造可能性および十分な緩衝機能の点で最適であることが判った。
【0010】
アーマチュアが、1つまたは複数の燃料孔を有すると、さらに有利である。この燃料孔によって燃料はアーマチュアの一方の側からアーマチュアを通ってアーマチュアの他方の側へ案内され、次いで弁流出部にまで案内され得る。
【0011】
したがって、本発明によれば、改善された緩衝特性と共に、減じられたノイズ伝達および改善された連続安定性をも有する電磁式インジェクタもしくはソレノイド式インジェクタを、クロムメッキなしで極めて簡単かつ廉価に製造することができる。さらに、本発明による弁は、内側に向かって開くタイプの弁または外側に向かって開くタイプの弁であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態による弁の概略的な断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態による弁の概略的な断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態による弁の概略的な断面図である。
【
図4】本発明の第4実施形態による弁の概略的な断面図である。
【0013】
発明の有利な実施形態
図1には、第1実施形態による、燃料を噴射する電磁式の弁1の断面図が示されている。この場合、弁は完全に図示されているのではなく、概略的にのみ図示されている。弁1は、調節エレメントである弁ニードル2と、この弁ニードル2に結合されているアーマチュア3とを有する。これにより、弁ニードル2はアーマチュア3と一緒に運動する。ハウジング7には、さらにストッパ6が設けられている。このストッパ6はアーマチュア3のストロークを制限する。アーマチュア3の戻しは、戻しエレメント8によって行われる。この弁1は電磁弁であり、さらにコイル9を有する。コイル9は通電時にアーマチュア3を矢印Aの方向でストッパ6に向かって運動させ、これによって弁1を開く。
【0014】
図1から判るように、アーマチュア3は、ディスクとして形成されたアーマチュアボディ4を有する。アーマチュアボディ4の、ストッパ6に向けられた側には、緩衝層の形の緩衝エレメント5が被着されている。緩衝層はこの場合、約20μmの厚さを有する。
図1には、図面を見易くするという理由から、緩衝層が誇張されて過大に描かれている。緩衝層は非磁性の材料、好ましくなプラスチックまたはゴム材料、たとえば加硫ゴム(Gummi)から製造されている。したがって、アーマチュア3が矢印Aの方向に運動すると、アーマチュア3は緩衝層によってストッパ6に衝突する。この場合、緩衝層はストッパ6における衝突衝撃の緩衝を引き受けると同時に、ノイズ伝播の減衰をも引き受ける。アーマチュアボディ4がディスクであるので、さらにアーマチュア質量も減じられている。このことからもストッパ6における衝突衝撃が減じられる。
【0015】
アーマチュア3には、さらにアーマチュアの一方の側からアーマチュアの他方の側への燃料通過のための貫通開口11が設けられている。
【0016】
したがって、本発明によれば、アーマチュアのクロムメッキを不要にすることができ、アーマチュアの一層廉価な製造可能性と共に、なお付加的な緩衝利点を達成することができる。
【0017】
図2には、本発明の第2実施形態による弁1が示されている。この場合、第1実施形態と同一の部分もしくは同一機能を持った部分は、第1実施形態の場合と同じ符号で示されている。
図2から判るように、第2実施形態では、ストッパ6に緩衝層の形の緩衝エレメント5が設けられている。アーマチュア3は軟磁性のアーマチュアボディ4しか有しない。したがって、ストッパ6に配置された緩衝層は、第1実施形態の緩衝層と同じ機能を引き受ける。
【0018】
図3に示した第3実施形態では、アーマチュア3に設けられた緩衝エレメント5の他に、付加的になおストッパ6に第2の緩衝エレメント10が設けられている。両緩衝エレメントは同じ材料、たとえばゴム被覆体から形成され得る。この場合特に可能となるのは、第1の緩衝層および第2の緩衝層の厚さを、上記両実施形態に比べて減少させること、有利には上記両実施形態の厚さの約1/2にまで減少させることができることである。
【0019】
図4には、第4実施形態による弁1が示されている。第4実施形態では、ポット形のアーマチュア13が設けられている。このポット形のアーマチュア13はディスク形の基面14と、環状の縁部15とを有する。この第4実施形態では、ディスク形の基面14の、ストッパ6に向けられた側も、環状の縁部15の外側も、緩衝層で被覆されている。このことは特に製造上の利点を有する。さらに念のため付言しておくと、ポット形のアーマチュアを180°回転させて、緩衝層をポット形のアーマチュアの内部に設けることも可能である。
【0020】
図1〜
図4に示した実施形態では、内側へ向かって開くニードルを備えたそれぞれ1つの電磁式インジェクタが図示されている。しかし念のため付言しておくと、本発明を、外側へ向かって開くタイプの電磁式インジェクタにおいて使用することも可能である。