【文献】
YOO Hyejin, et al.,J. AM. CHEM. SOC.,2010年 2月25日,Vol.132, No.10,p.3939-3944
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホストとしてのカラミチック且つサーモトロピック液晶と、ゲストとしての二色性蛍光色素とを含むゲスト・ホスト液晶色素混合物であって、前記二色性蛍光色素が、一般式
Ry−X1−C1
[式中、
Ryはリレン族からの発色団であり、C1は第二の発色団であり、且つX1はRyとC1との間の共役を妨げるスペーサーであり、且つ、前記スペーサーX1は、分子の長さ方向に垂直な軸上での曲げまたは折りたたみに対する剛性をもたらすように選択される]
を有する少なくとも1つの基を含有する多重発色団色素であり、前記多重発色団色素の発色団は線状に配置されていることを特徴とする、前記ゲスト・ホスト液晶色素混合物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲストが二色性蛍光色素であるゲスト・ホスト型の液晶混合物に関する。
【0002】
液晶(LC)は当業者によく知られており、且つ、物質が機械的には液体として振る舞うが、結晶の多くの光学的特性を示す、中間または中間状態を有する物質の類として定義できる。中間状態または液晶相は、固相の液晶を加熱することによって、または液相の液晶を冷却することによって得られる。液晶物質は、コレステリック、スメクティック、またはネマティック状態の1つで存在することができる。コレステリック状態は、著しく異なる光学特性によってネマティック状態から識別される。例えば、コレステリック材料は、光学的にネガ型である一方で、ネマティック材料は光学的にポジ型である。光学的にポジ型の液晶は、分子の層に垂直に、層に平行よりもゆっくりと光を伝搬する。ネマティック液晶は、通常光のビームを、横振動が互いに直角である2つの偏光成分へと配向させる。しかしながら、力場、例えば電場の印加により、分子が並び、それらの光学特性が変わる。
【0003】
過去、「ゲスト・ホスト」液晶ディスプレイ素子が開発されてきた。「ホスト」という用語は、液晶材料を示し、且つ、「ゲスト」という用語は、ホストによって配列され、選択的に活性化可能な外部刺激に応じて対照的な光吸収状態を生成できる物質を示す。例えば、米国特許第3833287号(Taylor, et al.)は、混合物中でネマティック液晶材料のらせん状分子配列に対応する多色性のゲスト材料と併用されるホストのネマティック液晶を開示している。らせん状配列において、ゲスト材料は入射光を吸収する一方で、電場印加の影響下でネマティック液晶によって配列される際には、ゲスト材料は光を吸収しない。従って、ディスプレイ素子内の混合物の薄層に電場を印加すると、入射光は該混合物を透過し、且つ、背面で反射され、従って背面の色を呈する。
【0004】
近年、有効なゲスト・ホスト系の改良が、二色性色素を使用して進んでいる。二色性は、色素分子の配向した集合が、光源に対して、配向の1状態においては特定の波長の光の比較的低い吸収を示し、且つ、配向の他の状態においては他の波長の比較的高い吸収を示すことによる特性である。配向は、液晶溶剤中での色素の溶解によって、または延伸プラスチック中に色素を埋め込むことによってもたらされ得る。
【0005】
二色性蛍光色素は、多くの分野、例えばディスプレイ[Chen and Swager: Org. Lett., Vol. 9, No.6, 2007]、照明[US 2007/0273265号]、レーザー[JP1994318766号]および切り替え可能なグレージング[WO2009141295号]における用途を有する。有用な温度範囲内で液晶色素混合物を得るために、それらの二色性色素とサーモトロピック液晶とを混合することが一般的である。それらの液晶・色素混合物は、ゲスト・ホストLC系として知られており、なぜなら、色素(ゲスト)の配列が液晶(ホスト)の配列によって規定されるからである。
【0006】
このLC・色素混合物の目的は、色素による光の吸収または蛍光放射(またはその両方)を制御できるようにすることである。吸収をどれだけ良好に制御できるかについての尺度は、LC混合物中の色素の二色性比である。二色性比は、分子の吸収軸に平行に来る光
と、吸収軸に垂直に伝わる光
との吸収における比である:
【数1】
。同じ特性を表す他の手段は、秩序パラメータ(S)であり、前記は
【数2】
と定義される。秩序パラメータは、完全な秩序については1であり、且つ、完全な等方系については0である。高い二色性比または秩序パラメータは、吸収または放射における高いコントラストを可能にし、そのことは多くの用途において望ましい。
【0007】
同時に、液晶中で二色性色素の高い可溶性を有することが望ましい。色素の可溶性が高いほど、ホスト材料として、より少ない液晶しか必要とされず、材料を節約する可能性がもたらされる。
【0008】
第三の要求として、色素の光安定性が高いことが望ましい。光安定性が高いことにより、強力な条件、例えば日光、レーザー、または室内照明において、寿命の長い素子が可能になる。
【0009】
第四の要求として、蛍光二色性色素は、高い量子効率を有するべきである。量子効率は、色素の、放出される光子の、吸収される光子に対する比である。色素の量子効率が高いほど、色素はより良く蛍光を発する。良好な蛍光色素は、少なくとも0.5、しかし好ましくは1近くの量子効率を有する。
【0010】
蛍光性であり且つ二色性である、多くの類の色素が提案されている。二色性色素についての概論は、例えばLiquid crystals: applications and uses、Volume 3(Birenda Bahadur (Edt)による)、World Scientific Publishing、1992内で見つけることができる。
【0011】
蛍光二色性アントラキノン色素は、ディスプレイ用途において使用されており、そこでは光強度は中程度であった。例えば、フッ素化液晶中の蛍光二色性色素についての調査の優れた報告が、Iwanagaによる、Materials 2009, 2, 1636−1661内にあり、フッ素化液晶LIXON 5052 XX内で可溶性1〜2質量%で、10までの二色性比であることが示されている。
【0012】
しかしながら、アントラキノンは、高い光強度下での寿命が限定されており、且つ、中程度の量子効率を有する。
【0013】
良好に配列する蛍光二色性色素は、ChenおよびSwager: Org. Lett., Vol.9, No.6, 2007によるアセンキノン型である。ここでもまた、量子効率は限定されている(0.30以下)。
【0014】
例えばXuelong Zhang, et al, J. Mater. Chem., 2006, 16, 736−740によって、チアジアゾール色素が試された。そこで、妥当な(0.5〜0.8)量子効率が、妥当な濃度(0.5質量%)での非常に良好な配列(DR=0〜15)と共に見出された。光安定性は中程度であり、且つ、高い強度の用途についての要求を満たさない。
【0015】
優れた秩序パラメータは、蛍光色素がワイヤへと自己組織化し、且つ、液晶中に懸濁される場合に達成され、例えばShane Moynihan, Pierre Lovera, Deirdre O’Carroll, Daniela lacopino, and Gareth Redmond Adv. Mater. 2008, 20, 2497−2502を参照されたい。しかしながら、蛍光の消光を引き起こすアグリゲートのアグロメレーションを回避しながら高い濃度を達成するのは困難である。
【0016】
リレン(rylene)型色素の類は、優れた蛍光量子収率(0.8〜1)および高い光安定性に関して特に注目されている。従って、多くの人々が、液晶ホスト中でその材料を配列させようとしている:
米国特許4378302号は、液晶ゲスト・ホスト混合物を形成するためのペリレンビスイミドと液晶との混合物を記載している。
【0017】
E WOLARZ, H MORYSON AND D BAUMANは、Displays, Vol. 13 No 4 1992, pp171内で、リレン型の色素については最大の秩序パラメータである0.63を示している。
【0018】
液晶混合物E7中のペリレンは、Roland Stolarski and Krzysztof J. Fiksinski, Dyes and Pigments 24 (1994) 295−303内で示されており、ペリレン3.9(または10)ジカルボン酸誘導体についての秩序パラメータ0.41が報告されている。
【0019】
液晶混合物E7中でのペリレンジエステル蛍光体は、Anisotropic fluorophores for liquid crystal displays, R L VAN EWYK, I O’CONNOR, A MOSLEY, A CUDDY, C HILSUM, C BLACKBURN, J GRIFFITHS AND F JONES、DISPLAYS, OCTOBER 1986, pp 155内で報告されている。
【0020】
耐光性リレン型色素は、BASFによって名称Lumogenとして市販されている。ネマティック液晶中でのそれらの秩序パラメータは低い:
【表1】
【0021】
上記の表から明らかなとおり、これらの色素は低い秩序パラメータという欠点がある。Lumogen IR 765およびLumogen IR788は、乏しい蛍光性を有し、且つ、市販の液晶混合物MLC6653(Merck Darmstadt製)、正の誘電異方性および正のデルタnを有するネマティック液晶混合物中での著しい可溶性を有さない(<<0.1質量%)。
【0022】
従って、本発明の課題は、4つ全ての要求について同時に良好に機能できる色素の類を提供することである。
【0023】
この課題は、カラミチック(calamatic)、サーモトロピック液晶をホストとして、且つ、二色性蛍光色素をゲストとして含むゲスト・ホスト液晶色素混合物であって、前記二色性蛍光色素が、少なくとも、一般式R
y−X
1−C
1
[式中、
R
yはリレン族からの発色団であり、C
1は第二の発色団であり、且つX
1はR
yとC
1との間の共役を妨げるスペーサーである]
を有する基を含有する多重発色団(multichromophoric)色素であることを特徴とする、前記ゲスト・ホスト液晶色素混合物によって解決される。
【0024】
特に、前記多重発色団色素は、色素構造の部分として少なくとも1つのリレン発色団を有する。
【0025】
発色団または発色単位は、380nmから800nmの範囲の光(可視光)の吸収をもたらし、従って分子の色をもたらす分子の部分として定義される。色は、分子が可視光の特定の波長を吸収し、且つ、他を透過または反射する際に生じる。発色団単位は、共役パイ(π)構造である。当業者は、かかる共役π構造を、交互の単結合および二重結合を有する化合物中で非局在化電子を有する結合p軌道系であって、一般に分子全体のエネルギーを下げ、且つ安定性を高め得るものであると理解している。非共有電子対、ラジカル、またはカルベニウムイオンは、系の一部であってよい。前記化合物は環式、非環式、線状またはそれらの混合物であってよい。共役は、介在するシグマ結合を横切る、1つのp軌道と他との重なりである(より大きな原子においてはd軌道が関係することがある)。
【0026】
共役系は、間にある単結合を橋渡しする、p軌道が重なり合った領域を有する。それらは、全ての隣接し整列したp軌道を横切ってπ電子の非局在化を可能にする。それらのπ電子は、単結合または原子に属しておらず、むしろ原子の群に属している。
【0027】
p軌道とd軌道との関わり合いにより、金属錯体も発色団として使用され得るが、しかしそれらは可溶性の点で実用的ではない。
【0028】
多重発色団分子(本明細書内では多重発色団色素としても示される)は、ここで、発色団単位が、共役パイ構造がそれらの間に存在しないように分離されている、1つより多くの発色団単位を有する分子として定義される。換言すれば、多重発色団分子内の個々の発色団または発色団単位は、非局在化されたパイ構造を有する一方で、それらの発色団単位の間のスペーサーは、様々な発色団の間の非局在化を伝えるのではなく、むしろかかる共役を妨害するように選択される。
【0029】
従って、多重発色団色素は、それらの一次吸収軸の長軸に沿って共有結合された複数の発色団を有し、その少なくとも1つの発色団はリレン型の色素である。吸収軸は、この軸に平行な偏光を有する入射光について最高の吸収を有する軸として定義される。
【0030】
本発明による多重発色団は、リレン族からの少なくとも1つの発色団を含む。
【0031】
リレン色素は、ペリ位において結合されたナフタレン単位から形成される色素の類である。発色団をポリマーとして見た場合、それらはポリ(ペリ−ナフタレン)として記載でき、構造は下記である。リレン基は、少なくとも1つのイミド基、エステル基またはアミド基で官能化されることができ、且つ、追加的な官能性を有することができる。それらの一次吸収軸は、分子の長さ方向に沿っている(以下の構造における水平軸)。
【0032】
【化1】
【0033】
1つの実施態様において、追加的な、または第二の発色団が、リレン色素の一次吸収軸に沿って配置されている。この方法において、リレン発色団並びに第二の発色団の両方の高い二色性比が達成される。
図1は、かかる構成と、配列に対して平行または垂直なゲスト・ホスト混合物に当たった光についての可能な挙動とを例示的に示す。
【0034】
他の実施態様において、1つのリレン型の発色団をその一次吸収軸について、分子の長さ方向に沿って配置する一方で、分子内の他の発色団をその吸収軸について、分子軸に垂直に配置する。この場合、平行に取り付けられた発色団について、優れた二色性比がまだ達成できている一方で、分子が光の偏光に対して回転される場合、垂直に取り付けられた発色団の吸収が増加する。キーとなるのは、分子がその延伸された葉巻型の形状を保持していることである。かかる分子を用いて、吸収における大きな色のシフトがゲスト・ホスト混合物を切り替えることによって達成される。
図2は、かかる分子および可能な挙動の例を示す。
【0035】
提案された類の色素は、カラミチック(棒状)サーモトロピック液晶中で優れた可溶性(>0.2質量%)を有する。さらには、それらは優れた耐光性を有する。液晶中でのそれらの二色性比は、10を上回り、且つ、収率は高い(50%〜100%)。
【0036】
多重発色団が単独の色素中に組み込まれているので、それらの色素のモル吸収効率は高い。それらの多重発色団色素は、液晶中で良好な可溶性(>0.2質量%)を有するので、該液晶・色素混合物の比吸収性は高く、そのことは有益である。
【0037】
本発明のさらなる利点は、FRET(フェルスター共鳴エネルギー移動)を使用して、吸収波長と放射波長との間の領域を拡張することが可能であることである。フェルスター共鳴エネルギー移動は、重なり合った吸収および発光スペクトルを有する2つの双極子の間の放射を有さないエネルギー移動である。2つの異なる色素分子を使用する通常のゲスト・ホスト溶液においては、発色団の間の距離が長い(>10nm)のでFRETは有効ではない。共有結合により結合された発色団では、FRETが生じることができ、なぜなら、発色団が互いに密に近接して共有結合されているからである。かかる多重発色団系におけるFRET過程の模式的な説明を
図10に示す。FRETの発生があることは、本発明のための必要条件ではない。
【0038】
第二の利点は、多重発色団単位の分子吸収率を個々の発色団の合計よりも高くできることが可能であることであり、例えばLanghals、Helvetica Chimica Acta − vol 88, 2005, pp1331内を参照されたい。より高いモル吸収係数は、ゲスト・ホスト混合物をより効果的にする。
【0039】
多重発色団リレン色素は、文献内でよく知られており、例えばDE102005037115号は、多数の多重発色団リレン色素を列挙している。LanghalsによるHelvetica Chimica Acta, Vol 88, pp 1309〜1343内にも良い概論がある。
【0040】
しかしながら、多重発色団色素は、可溶性および二色性比の点での要求を満たすように、注意深く選択しなければならない。
【0041】
好ましくは多重発色団色素の構造は以下のとおりであるべきである:
A
1−R
y−X
1−C
1−X
2・・・−C
n−A
2
[式中、
A
1およびA
2は可溶化脂肪族末端部であり、X
1は共有結合スペーサー(リンカーとも称される)であり、且つ、C
iは発色団であり、且つ、R
yはリレン型の色素である]。さらに強化された可溶性のために、C
1およびC
nの単位は、非対称の分子が得られるように異なっていてよい。
【0042】
X
iはさらには、それが、分子の長さ方向に垂直な軸上での曲げまたは折りたたみに対する剛性をもたらすように選択される。
【0043】
リンカーまたはスペーサー基を、注意深く選択する必要がある。リンカーは、葉巻状に延伸された構造が得られ、発色団の吸収軸が線状であり且つ星型または樹枝型の配置ではない配置を提供するように、発色団を結合すべきである。発色団は、個々の発色団の吸収軸の間の角度が25度未満である場合、同じ軸に沿って配置されることが意味される。
【0044】
該リンカー基は、発色団の共役を阻害すべきであり、そのことは例えば、リレン色素に取り付けられたイミド基によって、またはリレン色素のπ表面に関して面外にねじれたフェニレンリンカーによって、容易に達成される。共役が阻害されない場合、発色団の連続的な共役が、分子の「平坦な」構造を含み、そのことは可溶性について非常に不利であり、さらには、吸収を赤色、場合によっては赤外領域へとシフトすることがあり、そのことは、目標の1つが380nm〜800nmの範囲内の光(可視光)の吸収であるので望ましくない。
【0045】
さらには、該リンカー基は、分子の長さ方向に垂直な軸上での曲げまたは折りたたみに対する剛性をもたらすべきである。
【0046】
これらの要求事項を提供するいくつかの一般的な例を以下に示す:
【化2】
【0047】
Y
1〜Y
4はH、任意の分枝または非分枝のアルキル鎖またはアルキルオキシ鎖、ハロゲン(例えばフッ素)など(n=0、1、2、3; m=1、2、3、・・・)であってよい。
【0048】
これは固い結合をもたらし、分枝の長軸沿いに、発色団の互いに関する回転を限定的にしか可能にしない。リンカーとしての単独のC
2H
4基も、発色団の間の立体障害が線形の構成をもたらすのであれば役立つ場合があるが、しかし、いかなる脂肪族リンカーも避けられるべきであり、なぜならそれらは大きすぎる柔軟性がもたらされるからである。この高い柔軟性がもたらされる場合、二色性比の改善は失われ、且つ、単独の発色団と同様か、またはそれよりも悪い二色性比が得られる。
【0049】
以下の限定されない実施例を用いて、本発明をさらに説明する:
本発明による混合物のための1つの適した二発色団色素は、2−(4−(2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[5,10]アントラ[2,1,9−def]イソキノリン−8−イル)フェニル)−9−(トリデカン−7−イル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−1,3,8,10(2H,9H)−テトラオン(PBI−PMI)であり、吸収軸沿いに配置する2つの発色団単位を示す。
【0050】
この色素は、無極性溶剤(シクロヘキサン)中で0.77の良好な量子収率を示し、液晶ホスト中で二色性比14を有する。該色素は、線状に配置され且つベンゼン型のリンカーによって結合された2つのペリレン単位を有する。意外なことに、フッ素化液晶中でのこの分子の可溶性は高く(>0.2質量%)、且つ、分子の耐光性は単独のペリレンビスイミドの耐光性に匹敵する。従って、この分子は良好な蛍光二色性色素混合物についてのすべての要求に応える。
【0051】
【化3】
【0052】
第二の例は分子のペリレンビスイミド・
フルオレン誘導体2,7−ビス(N−(1−ヘキシルヘプチル)−3,4:9,10−ペリレン−ビスイミド−N’−イル))−9,9−ジドデシルフルオレン(PFP)である。この分子は、
フルオレンと共有結合された2つのペリレンビスイミド発色団の誘導体である。ここでもまた、この分子はフッ素化液晶中での優れた可溶性(0.2質量%)、良好な蛍光、二色性比12、および良好な耐光性を示す。
【0053】
【化4】
【0054】
同じ発色団の組み合わせも使用できる、例えば9,9’−ジ(トリデカン−7−イル)−1H,1’H−[2,2’−ビアントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン]−1,1’,3,3’8,8’,10,10’(9H,9’H)−オクタオン
【化5】
【0055】
または9,9’−(1,4−フェニレン)ビス(2−(トリデカン−7−イル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−1,3,8,10(2H,9H)−テトラオン)
【化6】
【0056】
選択的な配置、例えば以下が可能である: 2−{2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−8−フェニル−1H−ベンゾ[5,10]アントラ[2,1,9−def]イソキノリン−1,3(2H)−ジオン}−11−(1−ノニルデシル)ベンゾ[13,14]ペンタフェノ[3,4,5−def:10,9,8−d’e’f’]ジイソキノリン−1,3,10,12(2H,11H)−テトラオン
【化7】
【0057】
これは、ペリレンイミドに結合されたテリレンジイミドである。発色団の間の共有結合単位は、前記で概説した基準を満たす限り、異なる長さを有することができる。
【0058】
ゲスト・ホスト型液晶色素混合物の1つの好ましい実施態様において、発色団R
yおよびC
1は同一である、即ち、両者が同一のリレン発色団単位である。
【0059】
適したリレンベースの多重発色団色素は、特許出願DE−A−102005037115号内に開示されている。しかしながら、本発明を達成するためには、リンカーおよび発色団の構成を、前記で概説された要求に従って選択することが必要である。
【0060】
いくつかの他の適した分子は、構造I:
【化8】
【0061】
および構造II:
【化9】
【0062】
および2−{4−{2−(1−ヘキシルヘプチル)−9−イルアントラ[2,1,9−def;6,5,10−d’e’f’]−ジイソキノリン−1,3,8,10(2H,9H)−テトラオン}−2,3,5,6−テトラメチルフェニル}−11−(1−ノニルデシル)ベンゾ[13,14]ペンタフェノ[3,4,5−def:10,9,8−d’e’f’]ジイソキノリン−1,3,10,12(2H,11H)−テトラオン:
【化10】
を含む。
【0063】
本発明の混合物を達成するために、上記で示された色素を液晶と混合してゲスト・ホスト混合物を形成する。本発明による液晶混合物は、少なくとも1つの、しかし好ましくは様々な液晶分子を含み、そのLC分子はサーモトロピック、カラミチック液晶である。該混合物は、それが所望の稼働範囲にわたってネマティック液晶相を有するように構成される。液晶混合物は、正または負の誘電異方性を有する。
【0064】
適した混合物の例は、液晶混合物E7、高い複屈折および正の誘電性を有し、以下の組成のシアノビフェニルおよびシアノトリフェニルからなるサーモトロピック液晶混合物である:
8質量%の4’’−ペンチル−[1,1’:4’,1’’−ターフェニル]−4−カルボニトリル
25質量%の4’−ヘプチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボニトリル
51質量%の4’−ペンチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボニトリル
および16質量%の4’−(オクチルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボニトリル。
【0065】
選択的に、正の誘電異方性を有するフッ素化されたLC混合物を使用できる。かかる混合物中で使用される分子の例は以下に示され、且つ下記を含む:
4−プロピル−4’−(3,4,5−トリフルオロフェネチル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)、
【化11】
【0066】
3,4,5−トリフルオロ−4’−(2−(4−プロピルシクロヘキシル)エチル)−1,1’−ビフェニル、
【化12】
【0067】
4−(3,4−ジフルオロフェニル)−4’−プロピル−1,1’−ビ(シクロヘキサン)、
【化13】
【0068】
3,4−ジフルオロ−4’−(4−プロピルシクロヘキシル)−1,1’−ビフェニル、
【化14】
【0069】
4−プロピル−4’−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)、
【化15】
【0070】
4−(ジフルオロ(3,4,5−トリフルオロフェノキシ)メチル)−4’−プロピル−1,1’−ビ(シクロヘキサン)、
【化16】
【0071】
4−プロピル−4’−(トリフルオロメチル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)、
【化17】
【0072】
さらに他の選択肢は、負の誘電異方性を有する液晶混合物を使用することである。正の誘電異方性または負の誘電異方性の選択は、本発明にとって特定の意味を持つものではない。
【0073】
本発明のゲスト・ホスト混合物は、
・ 吸収における高い(>10)二色性比
・ 液晶中でのゲストの高い可溶性(>0.2質量%)、ひいては混合物の高い吸収率
・ 色素の高い光安定性を、
・ 良好な蛍光量子収率(>50%)と共に
もたらす。
【0074】
ネマティック相において、色素は、液晶と共に配向される。液晶の配向、ひいては色素の配向が入射光に対して変化する場合、吸収が変化する。また、色素の蛍光は異方性である。従って、蛍光を発する光が放射される面を、ゲスト・ホスト混合物を使用して制御することができる。
【0075】
ネマティック液晶混合物を配向させるための多数の方法が当業者に公知である。それらは、ポリイミドを用いた表面処理、光配向材料、電場、磁場を含む。
【0076】
二発色団リレン型色素は文献内でよく知られている。例えば、WO−A−00/52099号は二発色団リレン型色素の合成について報告しており、且つ、多くの類似のものを見出すことができる。しかしながら、等方性溶剤中での二発色団色素についての報告書は、結合されていない発色団と比較して、可溶性が悪化することを報告している、例えばH. Langhals and W. Jona in Angew. Chem. Int. Ed, 1998 37 No 7, pp 952−955を参照されたい。
【0077】
ペリレンも、液晶と組み合わせてゲスト・ホスト型系として幅広く使用されている。従って、多重発色団のリレン誘導体が液晶中で、単一発色団のものよりも高い可溶性を有することが見出されたのは意外であった。
【0078】
個々のリレンベースの発色団は公知であり、且つ、文献において広く使用可能である。リレンに基づく多重発色団単位への合成経路がある。液晶ゲスト・ホスト混合物はよく知られており、且つ、どのようにいくつかの液晶分子を混合して、所望の特性を有する液晶混合物にするのかについてはよく知られている。しかしながら、液晶混合物中で単独の発色団と比較して改善された可溶性および二色性比を示す、それらの多重発色団リレンベース成分の液晶中での使用は、今まで全く記載されていない。
【0079】
これは、リレン色素の可溶性が限定的であるという問題に起因する。通常、分子の大きさの増加に伴い、可溶性は減少することが予測される。驚くべきことに、これはここでは見られず、それどころか可溶性が改善する。
【0080】
リレンベースの色素は耐光性および高い蛍光性が立証されている。従って、それらが液晶中での多重発色団色素のためのベースとして選択される。この溶液は、二色性比および可溶性の点で単一発色団色素を大々的にしのぐので選択される。
【0081】
異なる類の蛍光色素を用いて類似の作用をなすことができる。使用可能な広範な蛍光色素がある。
【0082】
蛍光色素のアグリゲートによって、類似の効果を達成できる。リレン型色素のアグリゲートの多くは、強いπ−πの相互作用に起因する。しかしながら、わずかなアグリゲートしか有用ではなく、なぜなら、一般的なH型のアグリゲートが蛍光の消光作用を有するからである。色素が発色団の長さ方向に沿って凝集しているJ型のアグリゲートは、この目的に適している。非共有結合、例えば水素結合を形成できる分子を設計することで、超分子集合体の形成を助けることができる。この方法で、集合過程をより良好に制御できる。アグリゲートの長さの制御に注意すべきであり、なぜなら、非常に長い(>100nm)アグリゲートは、液晶ホスト中でアグリゲートのクラスタ化をもたらすことがあり、それによって系の切り替え性が低減されるからである。長さの制御は、一官能性基を有する発色団と二官能性基を有する発色団とを、一官能性型の発色団がアグリゲートの末端を形成するように混合することによって達成できる。また、非共有結合基は、ここでもまた、高い二色性比を達成するために固い基でなければならない。
【0083】
適した集合体の例を以下に示す。一官能性単位は、2−メチル−5,6,12,13−テトラフェノキシ[3,4,5−トリス(オクチルオキシ)ベンゾエート]−9−(4−(トリデカン−7−イル)フェニル)アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−1,3,8,10(2H,9H)−テトラオンであり、且つ、二官能性単位は、2,9−ジメチル−5,6,12,13−テトラフェノキシ[3,4,5−トリス(オクチルオキシ)ベンゾエート]アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−1,3,8,10(2H,9H)−テトラオンである。
【0084】
【化18】
【0085】
リレンの化学的性質はよく知られている。リレン誘導体は、蛍光の量子収率および光安定性の点において能力が立証されている。超分子集合体は、不安定であり、制御が困難であるので、好ましくない。超分子集合体に伴う不利な効果は、いくつかの集合体のアグロメレーション(網状結合)が中程度〜高い濃度で生じ得ることである。集合体のアグロメレーションは、適切な(再)配列を阻害する。
【0086】
本発明はさらに、照明、ディスプレイ、レージングおよび発光型太陽集光器用途におけるゲスト・ホスト液晶色素混合物の使用に関する。