【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、独立請求項の特徴部分に記載されている構成によって解決される。
【0005】
本発明の別の有利な構成及び発展形態は従属請求項に記載されている。
【0006】
本明細書の枠内において、レール車両は、固有の駆動装置の有無を問わない一つ又は複数の客車/貨車及び/又は牽引車の任意の組み合わせを表すことができる。特に、レール車両は動力車を有することができる。レール車両又はレール車両の客車/貨車は台車を有することができ、この台車には車両の車軸が配置されている。台車を車両構造体に固定することができる。
【0007】
ブレーキシステムは、ニューマチック式、エレクトロニューマチック式、ハイドロリック式、エレクトロハイドロリック式のブレーキシステム、若しくは電気的又は電気機械的なブレーキシステムで良く、またブレーキシステムは特に、一つ又は複数のブレーキ装置を有することができる。ブレーキ装置は特に、粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置で良く、この摩擦ブレーキ装置は、ブレーキ力を車輪とレールの接触部を介して伝達することができる。その種の粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置は、例えば、ブロックブレーキ装置、ディスクブレーキ装置、又はディスクブレーキ装置とブロックブレーキ装置とを組み合わせた装置が考えられる。この意味において、磁気ディスクブレーキのようなディスクブレーキ装置は粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置とはみなされない。何故ならば、そのようなディスクブレーキ装置は、そのブレーキ力を、車輪とレールの接触部を介して伝達するものではなく、その代わりに、レールとの固有の摩擦コンタクトを介して伝達するものだからである。
【0008】
粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置は、一つ又は複数の摩擦ブレーキユニットを有することができる。粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置は一つ又は複数の力発生器を有することができる。このために、ブレーキ圧又はブレーキ電流のような操作媒体が印加されると、制動のために摩擦ブレーキユニットが操作されるように力発生器を構成することができる。ブレーキ圧によって操作される力発生器を備えている摩擦ブレーキ装置を、圧力により操作されるブレーキ装置と称することができる。圧力により操作されるブレーキ装置として特に、ニューマチック式又はハイドロリック式のブレーキ装置が考えられる。
【0009】
電流によって操作される力発生器を備えている摩擦ブレーキ装置を電気的に操作されるブレーキ装置とみなすことができ、また特に、電気的又は電気機械的なブレーキ装置をすることができる。圧力により操作されるブレーキ装置は、電気的に駆動制御可能な弁、例えば電磁弁、及び/又は、電気的に駆動制御可能なパイロット弁を有することができ、また相応に、エレクトロニューマチック式又はエレクトロハイドロリック式のブレーキ装置と称することができる。ハイドロリック式又はニューマチック式のブレーキ圧又はブレーキ電流のような操作媒体が一つ又は複数の力発生器に印加された際に、車輪又は車両の軸に作用するブレーキトルクが形成されるように、摩擦ブレーキユニットを構成することができる。圧力により操作されるブレーキ装置又は摩擦ブレーキユニットは力発生器として、例えばニューマチック式又はハイドロリック式のシリンダを有することができ、このシリンダはニューマチック式又はハイドロリック式の圧力が印加された際に、制動のために摩擦ブレーキユニットを操作する。電気的に操作されるブレーキ装置又は摩擦ブレーキユニットは、力発生器として、電気的に操作されるアクチュエータを有することができ、このアクチュエータは電流をブレーキ操作力に変換することができる。
【0010】
摩擦ブレーキユニットは特に複数の摩擦エレメントを有することができ、それらの摩擦エレメントは相互に接して摩擦するために設けられている。特に少なくとも一つの摩擦ペアに二つの摩擦エレメントを設けることができる。例えば、摩擦ブレーキユニットはブレーキディスクを有することができ、このブレーキディスクは、ブレーキが操作された際に、ブレーキライニングが設けられている一つ又は複数のブレーキブロックと接触するように構成されている。摩擦ブレーキユニットは、択一的に、ブレーキが操作された際に、車輪の踏面と摩擦接触するブレーキライニングが対応付けられている、一つ又は複数のブレーキブロックを有することができる。
【0011】
摩擦ブレーキユニットの操作のために、力発生器又はニューマチック式若しくはハイドロリック式のシリンダに作用する圧力をブレーキ圧と称することができる。力発生器の操作のために供給される電流をブレーキ電流と称することができる。摩擦ブレーキユニットを、単独で懸架されている車輪及び/又は、相互に固く結合されている少なくとも二つの車輪を有している車輪軸を制動するように構成することができる。従って、摩擦ブレーキユニットを少なくとも一つの車輪に対応付けることができる。摩擦ブレーキユニットを、台車に対応付けられている軸及び/又は台車に対応付けられている車輪が配置されている台車に配置及び懸架することができる。力発生器による摩擦ブレーキユニットの操作時に作用する力をブレーキ力と称することができる。ブレーキ力は作用するブレーキ圧又はブレーキ電流に依存し、また摩擦ブレーキユニットの構造、状態及び機能にも依存する。制動時に車輪に作用するトルクをブレーキトルクと称することができる。ブレーキトルクは、特に、ブレーキ力及び車輪幾何学に依存し、とりわけ車輪の直径に依存する。例えばブレーキライニングを車輪踏面又はブレーキディスクと接触させるために、ブレーキ力を動いていない車輪にも作用させることができる。車輪が動いている場合には、ブレーキ力は対応するブレーキトルクを生じさせる。
【0012】
ブレーキ制御装置は、レール車両のブレーキシステムのための電子的な制御装置で良い。ブレーキ制御装置は例えば、車輪滑走防止コンピュータ又はブレーキコンピュータであるか、若しくは、レール車両のブレーキシステムのその他の制御装置として構成されている制御装置で良い。ブレーキ作用センサ装置を、車輪及び/又は軸に作用する実際のブレーキ作用を検出するように構成することができる。特に、ブレーキ作用センサ装置は、所属の少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットに作用するブレーキ力及び/又は所属のブレーキトルクを検出できるブレーキ力センサ装置として構成されていると考えられる。従って、ブレーキ作用センサ装置を例えば、少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットによって及ぼされるブレーキ力及び/又は少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットによって作用するブレーキトルクを検出するように構成することができる。このためにブレーキ作用センサ装置は、例えば台車における摩擦ブレーキユニットの懸架点に配置することができる一つ又は複数のセンサを含むことができる。
【0013】
ブレーキ作用センサ装置は特に一つ又は複数のひずみゲージを有することができる。ブレーキ作用センサ装置の複数のエレメント、例えば複数のセンサを、摩擦ブレーキユニットの可動及び/又は固定のエレメント及び/又はその懸架部に配置することができ、それにより、摩擦ブレーキユニットの操作時に、車輪又はブレーキディスクのような摩擦相手によって形成される反作用を測定することができる。その種の反作用によって、ブレーキ力及び/又はブレーキトルクを推定することができる。その種の反作用を変形の形態で認識することができ、そのような変形を例えばひずみゲージによって検出することができる。ブレーキ作用センサ装置を、ブレーキ力及び/又はブレーキトルクを検出するために、一つより多くの摩擦ブレーキユニットのために設けることができる。一般的に、センサ装置は、測定結果を表す信号を供給することができる。その種の信号を相応のデータによって表すことができ、それらのデータを制御装置によって受信することができる。ブレーキ操作センサ装置を、摩擦ブレーキ装置の操作に関するパラメータ、及び/又は、摩擦ブレーキ装置の操作を表すパラメータを検出するように構成することができ、それらのパラメータは、特に、圧力によって操作されるブレーキ装置のブレーキ圧及び/又は電気的に操作されるブレーキ装置のブレーキ電流で良い。
【0014】
本発明は、レール車両用のブレーキシステムのブレーキ制御装置に関し、このブレーキシステムは少なくとも一つの粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置を含んでいる。ブレーキ制御装置は、ブレーキシステムのブレーキ操作センサ装置から、少なくとも一つの粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置に対応付けられているブレーキ操作データを受信するように構成されている。更に、ブレーキ制御装置は、ブレーキシステムのブレーキ作用センサ装置から、少なくとも一つの粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置に対応付けられているブレーキ作用データを受信するように構成されている。更に、ブレーキ制御装置は、粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置を制動のために駆動制御し、制動時にブレーキ操作データとブレーキ作用データを相互に対応付けて監視するように構成されている。これによって、制動中にブレーキ操作データ及びブレーキ作用データを監視することができ、従って粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置の機能を制動中においても監視することができる。ブレーキ制御装置を特に、走行中に、即ちレール車両が移動しているときに制動を駆動制御するように構成することができる。ブレーキ制御装置は一つ又は複数の別個の制御装置コンポーネントを有することができる。例えば、一方のコンポーネントを制動の駆動制御のために構成することができ、他方のコンポーネントをブレーキ操作データ及びブレーキ作用データの受信及び/又は相互的な対応付けのために構成することができる。
【0015】
粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置は、圧力により操作されるか、又は電気的に操作されるブレーキ装置で良い。圧力により操作されるブレーキ装置は一つ又は複数の制御弁装置を有することができ、この制御弁装置を介してブレーキ圧を供給することができる。圧力により操作されるブレーキ装置はメイン制御弁装置を有することができ、そのメイン制御弁装置を介してブレーキ装置の複数の摩擦ブレーキユニットに共通のブレーキ圧、例えばメインブレーキ圧を供給することができる。ブレーキ制御装置及び/又はブレーキ制御装置のコンポーネントを、圧力により操作されるブレーキ装置の一つ又は複数の制御弁装置を制御し、その圧力により操作されるブレーキ装置が制動のために駆動制御されるように構成することができる。
【0016】
粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置は、一つ又は複数の摩擦ブレーキユニットを有することができる。圧力により操作されるブレーキ装置では、メイン制御弁装置の他に、付加的な制御弁装置、例えば、安全弁を設けることができ、そのような付加的な制御弁装置を介して、圧力により操作されるブレーキ装置の複数の摩擦ブレーキユニット又はそれらに対応付けられている力発生器にそれぞれブレーキ圧を供給することができる。特に、その種の付加的な制御弁装置に共通のブレーキ圧を供給することができる。付加的な制御弁は車輪滑走防止装置の一部で良い。ブレーキ制御装置による付加的な制御弁装置の適切な駆動制御によって、共通のブレーキ圧を、一つ又は複数の摩擦ブレーキユニットの操作に作用を及ぼすことができるそれぞれ個別のブレーキ圧に修正することができる。その種のブレーキ圧を個別に異ならせることができ、また特に、供給されたメインブレーキ圧と異ならせることができる。付加的な制御弁装置をそれぞれ一つ又は複数の摩擦ブレーキユニットに対応付けることができ、それらの摩擦ブレーキユニットには制御弁装置を介してブレーキ圧を供給することができる。
【0017】
電気的に操作されるブレーキ装置は一つ又は複数の電流源を含むことができ、その電流源を介して、ブレーキ制御装置に従い一つ又は複数の力発生器にブレーキ電流を供給することができる。ブレーキ制御装置に従い、種々の力発生器に異なるブレーキ電流を供給可能である、及び/又は、異なるブレーキ電流が供給される。ブレーキ操作センサ装置は一つ又は複数のセンサを有することができる。ブレーキ操作センサ装置が一つ又は複数のブレーキ圧力センサを有することができ、従って、ブレーキ操作センサをブレーキ圧力センサ装置とみなすことができる。相応に、ブレーキ操作データはブレーキ圧を表すことができる、及び/又は、ブレーキ操作データはブレーキ圧データで良い。
【0018】
ブレーキ操作センサ装置は、ブレーキ電流を検出するための一つ又は複数のセンサを有することができ、従ってブレーキ操作センサ装置をブレーキ電流センサ装置とみなすことができる。相応に、ブレーキ操作データはブレーキ電流を表すことができる、及び/又は、ブレーキ操作データはブレーキ電流データで良い。一般的に、ブレーキ操作データはブレーキ圧データ及び/又はブレーキ電流データを含むことができる。ブレーキ操作データの伝送のために、ブレーキ操作センサ装置がブレーキ制御装置と接続されていること、又はブレーキ操作センサ装置がブレーキ制御装置と接続可能であることは好適である。
【0019】
ブレーキ操作センサ装置は、粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置の個々の制御弁装置及び/又は力発生器に対応付けられている複数のブレーキ圧力センサ及び/又はブレーキ電流センサを有することができる。ブレーキ操作センサ装置を、力発生器に対応付けられているブレーキ装置を操作するために力発生器に供給される少なくとも一つのブレーキ圧又はブレーキ電流を検出するように構成することができる。特に、ブレーキ圧力センサ装置として構成されているブレーキ操作センサ装置を、力発生器及び/又は制御弁装置の下流側に印加される少なくとも一つの個別のブレーキ圧を検出するように構成することができる。従って、ブレーキ圧データはメインブレーキ圧に関連するか、又はメインブレーキ圧を表すことができる、及び/又は、力発生器及び/又は制御弁装置の下流側に印加される少なくとも一つのブレーキ圧に関連するか、そのようなブレーキ圧を表すことができる。特に、その種のブレーキ圧データを粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置に対応付けられているブレーキ圧データとみなすことができる。
【0020】
ブレーキ電流センサ装置として構成されているブレーキ操作センサ装置を、メインブレーキ電流を検出するため、及び/又は、力発生器に印加される少なくとも一つの個別のブレーキ電流を検出するために構成することができる。従って、ブレーキ電流データはメインブレーキ電流に関連するか、又はメインブレーキ電流を表すことができる、及び/又は、力発生器に印加される少なくとも一つのブレーキ電流に関連するか、又はそのようなブレーキ電流を表すことができる。特に、その種のブレーキ電流データを粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置に対応付けられているブレーキ電流データとみなすことができる。ブレーキ電流データ及び/又はブレーキ圧データを操作データとみなすことができる。
【0021】
ブレーキ作用センサ装置は一つ又は複数のブレーキ作用センサを含むことができる。ブレーキ作用データは制動時に車輪に作用するブレーキ作用を表すことができるか、又はブレーキ作用データをそのようなブレーキ作用に関連付けることができる。ブレーキ作用センサは特に、ブレーキ力及び/又はブレーキトルクを検出することができるブレーキ力センサで良い。従って、ブレーキ作用データは、少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットによって及ぼされるブレーキ力及び/又はブレーキトルクを表す、及び/又は、そのようなブレーキ力及び/又はブレーキトルクに関連付けられたブレーキ力データで良い。ブレーキ作用センサ又はブレーキ作用センサ装置をブレーキ装置の少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットに対応付けることができる。摩擦ブレーキユニットに対応付けられているその種のセンサ装置及び/又はその種のセンサからのブレーキ作用データを、ニューマチック式のブレーキ装置に対応付けられているブレーキ作用データとみなすことができる。ブレーキ作用センサを、摩擦ブレーキユニットのコンポーネント及び/又は摩擦ブレーキユニットのサスペンションと直接的に機械的に接触させて配置することができる。特に、ブレーキ作用センサを、材料歪みを測定するために構成することができ、その材料歪みからブレーキ作用を推定することができる。ブレーキ作用センサデータを伝送するために、ブレーキ作用センサ装置がブレーキ制御装置と接続されているか、又はブレーキ作用センサ装置をブレーキ制御装置に接続可能である場合には好適である。特に、ブレーキ作用センサが摩擦ブレーキユニットによって車輪又は軸にもたらされるブレーキ力を検出することができる。
【0022】
ブレーキ制御装置による粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置の駆動制御を、例えば、ブレーキ制御装置がその粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置の制御弁装置を電気的に駆動制御することによって、及び/又は、一つ又は複数のブレーキ電流を供給するための電流供給部を駆動制御することによって保証することができる。その場合、少なくとも一つの所定のブレーキ圧又はブレーキ電流を供給することができる。ブレーキ制御装置によって駆動制御することができる制動時に、ブレーキ制御装置は、ブレーキ圧データのようなブレーキ操作データ及び/又はブレーキ電流データ並びにブレーキ作用データを受信する。ブレーキ制御装置はそれらのデータを相互に対応付けることができ、この対応付けは例えば、粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置又は、粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置の所定の摩擦ブレーキユニットに対応付けられているブレーキ作用データと、その粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置又は摩擦ブレーキユニットに対応付けられているブレーキ操作データとがそれぞれ相互に対応付けられるように行われる。ブレーキ制御装置を、ブレーキ操作データ及びブレーキ作用データを相互に相関させるように構成することができる。特に、ブレーキ制御装置によって、ブレーキ操作データ及びブレーキ作用データを時間的に相関及び/又は同期させることができる。ブレーキ制御装置を、ブレーキ操作データとブレーキ作用データとの時間的な関係及び/又はブレーキ操作データとブレーキ作用データとの関係の時間的な変化を検出するように構成することができる。ブレーキ操作データとブレーキ作用データとの関係は関数関係で良く、また例えば、相互に相関付けられたブレーキ操作データとブレーキ作用データとの対比によって表すことができる。
【0023】
ブレーキ操作データ及びブレーキ作用データの監視は、ブレーキ操作データとブレーキ作用データとの間の所定の関係性が満たされているか否かの検査を含むことができる。つまり、例えば、駆動制御される及び/又はブレーキ操作センサ装置によって検出される所定の操作において、特に、駆動制御される及び/又は検出される所定のブレーキ圧又はブレーキ電流において、所定のブレーキ作用が達成されるか否かを監視することができる。
【0024】
ブレーキ制御装置を、摩擦ブレーキユニットによって及ぼされるブレーキ力を求めるためにブレーキ力データを処理するように構成することができる。その際に、制動すべき車輪が動いている場合には、回転する車輪の反作用がブレーキ力センサによって識別されることを考慮することができる。特に、ブレーキ制御装置を、ブレーキ力データからブレーキ力を、また場合によっては発生する可能性があるブレーキトルクを計算すように構成することができる。この場合、ブレーキ制御装置を、少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットを記述する、記憶されているモデルパラメータにアクセスするように構成することができる。もっとも、ブレーキ力センサ装置に、ブレーキ力データを処理できるコンピュータユニットを設けることも可能である。その種の処理においては、コンピュータユニット又は制御ユニットがブレーキ力及びブレーキトルクを計算し、相応に識別及び変形されたブレーキ力データの形態で供給し、また必要に応じてブレーキ制御装置に伝送することができる。この場合、コンピュータユニットをブレーキ制御装置の一部とみなすことができるか、又はセンサ装置に対応付けることができる。ブレーキ制御装置を、ブレーキ操作データ及びブレーキ作用データの監視の一部として機能診断を実施するように構成することができる。
【0025】
制動は検査制動で良い。検査制動のために、ブレーキ制御装置は粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置を所定のブレーキ圧又はブレーキ電流及び/又は所定のブレーキ作用でもって、特に所定のブレーキ力でもって駆動制御することができる。所定のブレーキ圧又はブレーキ電流及び/又は所定のブレーキ作用を一つ又は複数の摩擦ブレーキユニットに関連付けることができる。検査制動は最優先的にレール車両の制動に用いられるものではなく、粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置の監視及び検査に用いられる。検査制動の際には、比較的低いブレーキ圧又は比較的小さいブレーキ電流を印加することができる、及び/又は、比較的小さいブレーキ作用を駆動制御することができる。特に、ブレーキ圧又はブレーキ電流及び/又はブレーキ力を、緊急ブレーキ又は非常ブレーキの場合よりも小さくすることができる。特に、車両が走行のために駆動される間に、検査制動を実施することができる。
【0026】
車両の走行中に、即ちレール車両が移動している間に検査制動を制御するようにブレーキ制御装置を構成することは非常に好適である。これによって、ブレーキ圧又はブレーキ電流が印加された際に、摩擦ブレーキ装置に対してブレーキ力のみが形成されるか、又は、ブレーキトルクも生じているかを検査することができる。その種のブレーキトルクは、単にブレーキ力だけが印加される場合に比べて、ブレーキ力センサ装置の信号を著しく変化させると考えられる。駆動制御されるブレーキ圧又はブレーキ電流のもとでの走行中にブレーキ力のみが印加され、ブレーキトルクが生じない場合には、例えば、所属の車輪がブロックされており、従って車輪が回転しないか、又は所望のように回転子内ことを想定できる。
【0027】
粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置は、ブレーキ制御装置によって駆動制御可能な、相互に別個の複数の摩擦ブレーキユニットを有することができる。従って、ブレーキのフレキシブルな駆動制御が得られる。別個の駆動制御とは、力発生器に種々のブレーキ圧又はブレーキ電流が供給される、及び/又は、種々の摩擦ブレーキユニットが種々のブレーキ圧又はブレーキ電流でもって操作されるように、制御弁装置又は給電部が駆動制御されることを意味していると考えられる。
【0028】
特に、ブレーキ制御装置を、検査制動にわたり複数の摩擦ブレーキユニットを時間遅延させて駆動制御するように構成することができる。つまり検査制動を、時間的に離れた複数回の制動を含むことができる。従って、車両が走行中に検査制動によって過度に制動されることを回避することができる。更には、個々の制動に対して僅かな圧縮空気消費量又は電流消費量が達成される。特に、複数の摩擦ブレーキユニットを所定のシーケンスで駆動制御することができる。この関係において、レール車両、特にレール車両の客車/貨車は少なくとも二つの台車を有することができる。各台車には少なくとも二つの車軸を設けることができる。台車の各車軸には少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットを対応付けることができ、その場合、一つの台車の異なる車軸に異なる摩擦ブレーキユニットを対応付けることができる。従って、一つの台車に複数の摩擦ブレーキ装置を設けることができる。種々の台車における複数の摩擦ブレーキユニットには、一つの共通のメイン制御弁装置又は給電部から、共通のブレーキ圧又はブレーキ電流を供給することができ、それらを例えば一つの摩擦ブレーキユニットに対応付けられている複数の付加的な制御弁装置によってそれぞれ別個に変更することができる。
【0029】
ブレーキ制御装置を、台車の複数の摩擦ブレーキユニットの操作のために所定のシーケンスで粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置を駆動制御するように構成することができる。それらの摩擦ブレーキユニットを台車のように駆動制御することができる。例えば、1回の制動に対して、先ず第1の台車に配置されている摩擦ブレーキユニットを駆動制御し、続いて第2の台車に配置されている摩擦ブレーキユニットを駆動制御することができる。各台車における複数の摩擦ブレーキユニットを同時に、又は時間遅延させて、即ちサブシーケンスで駆動制御することができる。
【0030】
択一的に、所定のシーケンスにおいて、最初の実行時に先ず第1の台車の第1の摩擦ブレーキユニットを制動のために駆動制御し、続いて第2の台車の第1の摩擦ブレーキユニットを駆動制御することもできる。同一のメイン制御弁装置を介してブレーキ圧を供給することができるか、又は、給電部を介してブレーキ電流を供給することができる複数の摩擦ブレーキユニットを備えている別の複数の台車が設けられている場合には、それら別の台車の第1の摩擦ブレーキ装置を連続的にその都度駆動制御することができる。複数の台車の全ての第1の摩擦ブレーキユニットが駆動制御される場合には、2回目の実行時にブレーキ制御装置によって、それらの台車の内の一つの第2の摩擦ブレーキユニット、特に第1の台車の第2の摩擦ブレーキユニットを制動のために駆動制御することができる。その後、そのシーケンスにおいては、複数の別の台車の内の一つの第2の摩擦ブレーキユニットを制動のためにその都度駆動制御することができる。2回目の実行時においては、台車の駆動制御を1回目の実行時と同じ順序で行うことができる。2回目の実行時においては、台車の順序が1回目の実行時とは異なっていても良い。台車毎の摩擦ブレーキユニットの数に応じて、台車の適切な順序で更に駆動制御することができる。特にブレーキ制御装置を、所定のシーケンスにおいて、一つの台車の一つの摩擦ブレーキユニットだけがその都度制動のために駆動制御され、特に、その駆動制御が後続の別の台車の摩擦ブレーキユニットの制動のための駆動制御が開始される前に行われるように構成することができる。
【0031】
ブレーキ制御装置を、検査制動が走行中に所定の間隔で駆動制御されるように構成することができる。所定の間隔は時間的な間隔で良い。つまり例えば、所定の時間インターバルで検査制動を駆動制御するように、ブレーキ制御装置を構成することができる。所定の間隔は空間的な間隔でも良く、その場合、例えば所定の区間の走行後に検査制動が駆動制御される。そのように駆動制御される検査制動を、一つ又は複数の摩擦ブレーキユニットに関連付けることができる。
【0032】
一つの発展形態においては、ブレーキ制御装置を、ブレーキ作用データ及び所属のブレーキ操作データを記憶するように構成することができる。これによって、ブレーキ特性の長期間の監視又は個別の分析に関するデータセットを作成することができる。この関係において、ブレーキ制御装置を記憶装置と接続することができるか、ブレーキ制御装置は記憶装置と接続可能である。その種の記憶装置をブレーキ制御装置に配属させることができる。特に、記憶されているブレーキ作用データ及びブレーキ操作データに基づき、複数の摩擦ブレーキユニットの特性の時間経過を監視するように、ブレーキ制御装置を構成することができる。特に、個々の摩擦ブレーキ装置に関するブレーキ作用データの時間経過及びそれに対応付けられているブレーキ操作データの時間経過を監視するように、ブレーキ制御装置を構成することができる。例えば、少なくとも一つの摩擦ブレーキユニットに関するブレーキ力とブレーキ圧又はブレーキ電流との関係の経過を監視することができる。その場合には、例えば、所定のブレーキ圧又はブレーキ電流において摩擦ブレーキユニットによって形成されるブレーキ力が時間の経過と共に変化するか否か、及び/又は、どのように変化するかを検査することができる。
【0033】
更に本発明は、本明細書において説明したブレーキ制御装置を備えているレール車両のためのブレーキシステムに関する。ブレーキ制御装置は特に、本明細書において説明したブレーキ作用センサ装置、及び/又は、本明細書において説明したブレーキ操作センサ装置、及び/又は、本明細書において説明した少なくとも一つの粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置を有することができる。
【0034】
更に本発明は、本明細書において説明したブレーキ制御装置、及び/又は、本明細書において説明したブレーキシステムを備えているレール車両に関する。
【0035】
更に本発明は、レール車両のブレーキシステムの動作方法に関し、この動作方法は、ブレーキ制御装置によって、ブレーキシステムを制動のために駆動制御するステップと、ブレーキ制御装置によって、ブレーキシステムのブレーキ操作センサ装置から伝送されたブレーキ操作データを受信するステップと、ブレーキ制御装置によって、ブレーキシステムのブレーキ作用センサ装置から伝送されたブレーキ作用データを受信するステップと、ブレーキ制御装置によって、ブレーキ操作データを対応するブレーキ作用データに対応付けるステップと、ブレーキ制御装置によって、相互に対応付けられたブレーキ作用データ及びブレーキ操作データを監視するステップとを備えている。ブレーキ制御装置は、特に、本明細書において説明したブレーキ制御装置で良い。ブレーキシステムは、本明細書において説明したブレーキシステムで良い。ブレーキシステムを制動のために駆動制御する場合、ブレーキシステムの少なくとも一つの粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置を制動のために駆動制御することができる。制動は検査制動で良い。検査制動を走行中に駆動制御することができる。粘着力依存式の摩擦ブレーキ装置は、ブレーキ制御装置によって駆動制御可能な、相互に別個の複数の摩擦ブレーキユニットを有することができる。それらの摩擦ブレーキユニットを制動中に、特に検査制動中に相互に別個に駆動制御することができる。1回の検査制動にわたり、複数の摩擦ブレーキユニットを時間的に順次遅延させて駆動制御することができる。複数の摩擦ブレーキユニットを駆動制御するために所定のシーケンスを設けることもできる。検査制動を走行中に所定の間隔で駆動制御することができる。所定の間隔は、例えば時間的又は空間的な間隔で良い。ブレーキ制御装置によって、ブレーキ作用データと、それに対応付けられたブレーキ操作データとを記憶するステップを設けることができる。ブレーキ制御装置は、例えば機能診断、時間的な変化の監視及び/又はエラー診断を実施するためにデータを呼び出すことができる。
【0036】
機能診断は一般的に種々の結果を供給することができる。例えば、ブレーキ制御装置は車両の移動時の機能診断の結果として、ブロックされた軸を以下のことから識別することができる。即ち、ブレーキ圧又はブレーキ電流が存在していない、及び/又は、制動が駆動制御されていないにもかかわらず、そのようなブロックされた軸又はブロック車輪に対するブレーキトルクが発生していることがブレーキ作用データから明らかになることから識別することができる。その際に、例えば、車両の別の軸及び/又は車輪に、ブレーキ圧又はブレーキ電流に起因すると考えられる顕著なブレーキ力及び/又はブレーキトルクが印加されているか否かを比較することができる。例えば、別の車輪にブレーキ圧又はブレーキ電流が印加されており、及び/又は、相応の駆動制御が実施されており、そのようにしてブレーキ力及び/又はブレーキトルクが作用している場合には、問題のある車輪も同様に正確に制動されるが、しかしながらブレーキ圧検出又はブレーキ電流検出においてはエラーが存在している可能性が高い。そのような場合には、ブロックされた車輪又はエラーのあるブレーキ操作センサ装置が存在しているか否かを判断するために、電子的又ディジタル的な駆動制御との比較が有効となる。何故ならば、エラーのある駆動制御信号とブレーキ圧検出又はブレーキ電流検出のエラーは同時に発生するからである。
【0037】
更に、機能診断の枠内で、車両が移動しているか否かを確認することができる。何故ならば、所期のように駆動制御されたブレーキ圧又はブレーキ電流によってブレーキ力が印加される場合には、車両が移動していない際のブレーキ作用センサ装置の信号は、ブレーキトルクが印加される際に生じる信号、即ち移動状態中に生じる信号とは異なるからである。車両が移動していない場合、確かにブレーキ力は存在するが、車輪及び/又は軸は回転していないのでブレーキトルクは形成されない。特に、複数の車輪又は軸を検査する場合には、それにより車両の移動状態を推定することができる。複数の車輪がブロックされている場合においても、ブレーキ作用センサ装置の信号を停止状態の信号と区別することができる。ブレーキが操作されておらず、且つ車両が移動している場合に、即ち、少なくとも一つの摩擦ブレーキユニット又は複数の摩擦ブレーキユニットにブレーキ圧又はブレーキ電流が印加されない場合に、ブレーキトルク及び/又はブレーキ力が存在する場合には、ブレーキがブロックされていることを推定することができる。車両の移動時にブレーキ圧又はブレーキ電流が印加されるが、しかしながらブレーキトルクは検出されない場合には、ブレーキ圧又はブレーキ電流がブレーキ力又はブレーキトルクに変換されないブレーキの誤動作が存在していると考えられる。
【0038】
別のセンサ装置のデータから、例えば車輪回転数データからブロックされた軸又はブロックされた車輪が推定されるならば、その場合には、ブレーキ系に存在しない理由から軸がブロックされていることを推定することができる。例えば、軸受けエラー又は駆動部エラーが存在している可能性がある。オプションとしてブレーキ制御装置に接続されているか、又は接続可能である、軸受けにおける温度センサを介して、軸受けの損傷と駆動部の損傷を区別することができる。例えばその種の温度センサによって、軸受けの過熱を軸受けの損傷についての示唆として使用することができる。過熱が識別されない場合には、駆動部の損傷が存在していると考えられる。機能診断のその種の細分化に基づき、車両運転を種々に実施することができる。例えば、車両の停止時にブレーキがブロックされていることが識別されると、個々のブレーキをニュートラル位置に入れ、圧力供給部から切断することができる。その場合、車両は状況次第では、緩慢な走行時に残りの摩擦ブレーキユニット及び他のブレーキ系の相応の駆動制御によって走行を継続することが考えられる。軸受け又は駆動部によるブロック時には、通常の場合、非常ブレーキとそれに続く車両の牽引が必要になる。上述の機能診断によって、車輪滑走防止とは別個に構成することができる回転監視が実現される。特に、軸及び/又は車輪の回転特性の監視が実現され、そのような監視を車輪回転数センサに依存せずに実施することができる。車輪回転数センサが上述の機能診断に関する支援データを供給する場合であっても、基本的には、それらの支援データに依存せずに、ブロックされた車輪及び/又はブロックされた軸を監視することができる。それによって、特に高速車両のために規定されている別個の回転監視装置を省略することができる。そのような別個の回転監視装置は、通常のブレーキ制御部及び車輪滑走防止部に付加的に設けることができる。
【0039】
択一的に、ブレーキシステム及び/又はレール車両は一般的に、回転数センサを備えることができるか、又は回転数センサを接続することができる回転監視装置を有することができる。従って、回転監視装置のデータの妥当性検査を行うことができる。その場合には、レール車両の制御装置、特にブレーキ制御装置は、回転監視装置のデータの妥当性検査を実施することができる。特に、ブレーキ作用データを基礎とするデータを回転監視装置のデータと比較するように、制御装置を構成することができる。ブレーキ作用データを基礎とするデータは特に機能診断の結果を表すことができる。
【0040】
更に、上述の検査制動は走行中の動的なブレーキテストとして機能する。車両の移動時に軸又は車輪がブロックされている場合、ブロックされた車輪は実質的に回転しないので、車輪とレールとの間には実質的に滑り摩擦が生じている。これによって、車輪又は軸が回転している場合にブレーキ作用データ及び/又はブレーキ操作データに現われる可能性がある周期的な信号を、滑り摩擦期間の間、即ち車輪又は軸がブロックされている際には発生しないようにすることができる。その種の周期的な信号のエラーに基づき、例えば、滑り摩擦又は軸若しくは車輪のブロックを識別することができる。従って、ブレーキ作用データ及び/又はブレーキ操作データにおける周期的及び/又は準周期的な信号を検出及び/又は識別するようにブレーキ制御装置を構成することができる。検出された周期的及び/又は準周期的な信号を記憶するか、その種の信号に基づくデータを記憶するようにブレーキ制御装置を構成することができる。ブレーキ制御装置は、記憶されたデータを最新のブレーキ作用データ及び/又はブレーキ操作データと比較することができる。その比較に基づき、例えば、摩擦ブレーキユニットにおける周期的な信号の欠如、及び/又は、その周期の比較的大きい周期性へのシフトを確認することができる。それらは車輪のブロック又はスリップを示唆していると考えられる。信号スペクトルの周波数領域をブレーキ作用データ及び/又はブレーキ操作データから例えばフーリエ変換のような適切な変換によって求めるように、ブレーキ制御装置を構成することは好適である。例えば、車輪回転数データをブレーキデータの正規化及び/又はフィルタリングのために使用することによって、データを適切に正規化することも好適である。周期的な信号に関する標準的な周期を、目下の車輪回転数に依存しない比較ベースとして定義することができる。
【0041】
以下では、添付の図面を参照しながら、有利な実施の形態に基づき本発明を例示的に説明する。