(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141296
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】充填シュー及び充填管路を備えたセラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機及び該プレス成形機においてプレス成形体をプレス成形する方法
(51)【国際特許分類】
B30B 11/00 20060101AFI20170529BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20170529BHJP
B28B 13/02 20060101ALI20170529BHJP
B22F 3/035 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
B30B11/00 F
B28B3/02 G
B28B13/02
B22F3/035 C
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-540318(P2014-540318)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公表番号】特表2015-504370(P2015-504370A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】DE2012001082
(87)【国際公開番号】WO2013067994
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】102011118209.1
(32)【優先日】2011年11月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513121993
【氏名又は名称】ドアスト テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dorst Technologies GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ローラント メンツェル
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−291070(JP,A)
【文献】
実開昭58−072129(JP,U)
【文献】
特開昭60−046302(JP,A)
【文献】
特開2003−136296(JP,A)
【文献】
特開平06−210496(JP,A)
【文献】
特開2002−301595(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19903417(DE,A1)
【文献】
米国特許第03605825(US,A)
【文献】
特開昭62−109606(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01000735(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/00−11/02
B28B 3/02
B28B 13/02
B22F 3/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末及び/又はセラミックス粉末及び/又は顆粒状の材料(p)を充填し加圧するための、ダイ表面(1o)とダイ開口(2)とを備えたダイ(1)と、
前記材料(p)を充填するために移動軌道(4)に沿って前記ダイ表面(1o)上を移動可能に配置されている充填シュー(3)と、
該充填シュー(3)内に又は該充填シュー(3)を介して材料を充填するために該充填シュー(3)に接続されている複数の充填管路(7,8)と、を備えたセラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機であって、
少なくとも2つの前記充填管路(7,8)が、前記充填シュー(3)の上側にスペースが空くように前記移動軌道に対して鉛直方向上方向を除く横方向から前記充填シュー(3)に接続されていることを特徴とする、プレス成形機。
【請求項2】
前記充填管路(7,8)は、加圧中に向かう両反転点の間の、又は充填位置と加圧中に向かう反転点との間の前記移動軌道(4)に対して横方向から前記充填シュー(3)に接続されている、請求項1記載のプレス成形機。
【請求項3】
全ての前記充填管路(7,8)が、加圧中に向かう両反転点の間の、又は充填位置と加圧中に向かう反転点との間の前記移動軌道(4)に対して横方向から前記充填シュー(3)に接続されている、請求項1記載のプレス成形機。
【請求項4】
前記充填シュー(3)の、前記移動軌道(4)に対して直交方向に延びる周面には、接続される充填管路が設けられていない、請求項1から3までのいずれか1項記載のプレス成形機。
【請求項5】
前記充填管路(7,8)は前記充填シュー(3)の側壁(11)に、前記移動軌道(4)に沿った中央の移動線から所定の間隔(d3)を置いて接続されており、該間隔(d3)は、前記中央の移動線に対して直交方向で延在する前記ダイ開口(2)の側方の延在(d2)よりも大きい、請求項1から4までのいずれか1項記載のプレス成形機。
【請求項6】
前記充填管路(7,8)の少なくとも1つが、前記移動軌道(4)の側方右側で前記充填シュー(3)に接続されていて、前記充填管路(7,8)の少なくとも1つが、前記移動軌道(4)の側方左側で前記充填シュー(3)に接続されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のプレス成形機。
【請求項7】
金属粉末及び/又はセラミックス粉末及び/又は顆粒状材料(p)からプレス成形体(12)をプレス成形する方法であって、
ダイ(1)のダイ開口(2)に上記材料(p)を充填シュー(3)を介して充填し、
前記充填シュー(3)の退去後に前記ダイ開口内で前記材料(p)をパンチ装置(9,10)によって加圧する方法を、
請求項1から6までのいずれか1項記載のセラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機で行うことを特徴とする、プレス成形体(12)をプレス成形する方法。
【請求項8】
前記充填シュー(3)をプレスサイクル(c1)で、第1の休止及び/又は反転位置(p1)から前記移動軌道(4)に沿って前記ダイ開口を越えて第2の休止及び/又は反転位置(p3)へと移動させ、次のプレスサイクル(c2)で初めて、逆方向で、前記第1の休止及び/又は反転位置(p1)へと戻す、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記充填シュー(3)を、その休止及び反転位置又は反転位置(p1,p3)の間で、前記移動軌道(4)に沿ってほぼ直線状に移動させる、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記充填シュー(3)を、前記ダイ開口(2)を越える移動中に継続的に移動させる、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記充填シュー(3)を、その休止及び反転位置又は反転位置(p1,p3)の間の移動中全体にわたって継続的に移動させる、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
材料(p)を前記充填管路(7,8)によって案内する間、前記材料を同時に前記充填シュー(3)のそれぞれ右側及び左側から、同数の充填管路(7,8)を介して前記充填シュー(3)へと、かつ/又は前記ダイ開口(2)へと供給する、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項7から12までのいずれか1項記載の方法を実行するためにプログラミングされて記憶されたプログラム、かつ/又は、請求項1から6までのいずれか1項記載のプレス成形機の制御装置内にプログラミングされて記憶されたプログラムを備えたデータ媒体。
【請求項14】
プレス成形機において請求項7から12までのいずれか1項記載の方法を実行するために制御装置を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のプレス成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末及び/又はセラミックス粉末及び/又は顆粒状の材料を充填し加圧するためのダイ開口を備えたダイと、該ダイのダイ開口に材料を充填する充填シューとを備えた、セラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機に関する。さらに、本発明は、特にこのようなプレス成形機によってプレス成形体をプレス成形する方法に関する。
【0002】
例えば欧州特許出願公開第1000735A2号明細書によりこのような形式のプレス成形機及び方法が公知である。このような装置ではいわゆる充填シューがダイのダイ表面上を長手方向で移動可能である。移動軌道に沿ってダイ表面上で充填シューを往復移動させることができるように、リンク機構を介して充填シューに連結されている駆動装置のような、ガイド装置の構成部分が調節のために用いられる。この場合、粉末をダイ開口に充填するために、充填シューを第1の休止及び/又は反転位置から前方に向かってダイ開口の上方まで動かす。粉末は通常、容器、特に粉末サイロから、充填管路によってプレスシュー内に供給され、プレスシューから、またはプレスシューを介してダイ開口へと供給される。この場合、充填管路は充填シュー内室内で終わっている。この充填シュー内室は、後続の方法ステップでプレス成形体をプレス成形するために必要であるような全充填量を収容するために付加的に十分な大きさに形成することができる。この場合、充填中又は充填後、充填シューは場合によっては短い距離、ダイ開口を越えて移動してから、このような第2の休止及び/又は反転位置から第1の休止及び/又は反転位置へと戻される。その後、上側のパンチ装置のパンチが降ろされて、ダイ開口内に充填された粉末を、ダイ開口の内側でプレス成形体を形成するために下側のパンチ装置と上側のパンチ装置のパンチによって加圧する。次いで、プレス成形体を取り出し、ダイ開口の上方で充填シューが続いて動くために十分なスペースが得られるように、上側のパンチ装置のパンチは再び、ダイ表面上側の十分離れた位置に戻される。
【0003】
1つのプレスサイクルの継続期間は、例えば、第1の休止及び反転位置からの充填シューの最初のスタートから、この位置からの次のスタートまでである。とりわけ、加圧用の構成部分は、このようなプレス成形装置の高価な構成部分であり、主要な作業ステップ、即ち、プレス成形したい材料からプレス成形体をプレス成形するという作業ステップを実施するので、上側のパンチ装置のパンチが作動していない期間は、特に粉末に接していない期間は無駄な時間とみなされる。
【0004】
このような装置における欠点は特に、1つ又は複数の充填管路の内側で十分な充填圧を形成するために、充填管路ができるだけ急な勾配で上方に向かってガイドされるべきことにある。しかしながらこれにより、ダイ開口の上方の充填シューによる充填位置では充填管路が大きく上方に突出し、従って相応に大きなスペースを上方に要することになる。これにより上側のパンチ装置は上方に向かって大きくずらさなければならない。充填管路はできるだけ均等な移動を可能にするために、後方から充填シューまでガイドされていて、充填シューが前進する際には充填シューと共に前方の方向でダイ開口を越えるように引っ張られる。充填シューが、連行する充填材料を持たずに、第2の反転位置から再び第1の休止及び反転位置へと移動しなければならないことによりさらに無駄な時間が生じる。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公告第19903417B4号明細書によってもこのような形式の充填装置が公知である。この装置では、充填シューが、第1の休止及び反転位置から前方に向かってダイ開口を越えてガイドされ、次いで側方方向に往復旋回され、この場合、側方では完全にダイ開口を越えて動かされる。このような往復横方向運動が1つの充填過程中に複数回行われる可能性や、このような横方向運動が休止位置からのダイ開口を越える位置への充填シューの往復運動にも重畳される可能性も記載されている。このような動きは、ダイ開口内でできるだけ均一な粉体分布を得るために行われる。
【0006】
本発明の課題は、セラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機を改良して、無駄な時間を削減し、特にプレス成形体をプレス成形するサイクル時間を削減することができるようにすることである。
【0007】
この課題は、請求項1記載の特徴を備えたプレス成形機及び請求項6記載の特徴を備えた方法若しくは、請求項11記載のプログラムを有したデータ媒体により解決される。好ましい構成は従属請求項に記載されている。
【0008】
従って、金属粉末及び/又はセラミックス粉末及び/又は顆粒状の材料を充填し加圧するための、ダイ表面とダイ開口とを備えたダイと、前記材料を充填するために移動軌道に沿って前記ダイ表面上を移動可能に配置されている充填シューと、該充填シュー内に、又は該充填シューを介して材料を充填するために該充填シューに接続されている複数の充填管路とを有していて、少なくとも2つの前記充填管路が、前記移動軌道に対して横方向から前記充填シューに接続されている、セラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機が好適である。
【0009】
ダイ開口上での充填シューの移動とは特に、充填シューが場合によっては既に、十分な材料量をその内室に有した状態で、内室にある材料が充填シューとダイ表面との間で外に出ないようにダイ表面上を移動することを意味する。充填管路は、ダイ開口の上側に調節されて初めて、プレス成形すべき材料が充填管路から案内される際に、ダイ表面のすぐ上方まで達するように形成することができる。しかしながら充填管路は、ダイ表面から比較的離れて充填シュー内室内へとガイドされても良い。任意の別の構成、特に既に公知であるような構成を置き換えることもできる。充填管路は、ダイ表面上での充填シューのできるだけ妨げられない運動を可能にするために特に可撓的なホースの形で形成することができる。充填管路と充填シューとの接続は様々な形式で、特に公知の形式で行うことができ、即ち例えば、充填シューの本体との堅固な結合が形成されるまで充填管路を充填シューに連結することによって行うことができる。
【0010】
好ましい構成によれば、上側のパンチ装置とプレス駆動装置の上側のピストン装置から、ダイ表面に対して相対的な必要な行程はより短くなる。
【0011】
充填管路が、前記移動軌道に対して横方向から前記充填シューに接続されている、とは特に、充填管路が移動軌道に対して直交方向から充填シューに通じていて充填シューに配置されていることを意味し、即ち前方又は後方から移動軌道に対して平行に充填シューに通じているのではないことを意味する。しかしながら、移動軌道に対して傾斜して充填シューへと延びている充填管路も、これにより特に十分に均質な充填シュー内室及び/又はダイ開口の充填が可能であるならば、移動軌道に対して横方向から充填シューに接続されていると言える。
【0012】
特に、2つ又はそれ以上の充填管路が移動軌道に対して横方向から配置されていることにより、ダイ開口の上方に充填シューが位置している間に、上側のプレス成形機構成部分がその上方に配置される、上方の所要自由スペースは比較的僅かにすることができる。従って上側のパンチ装置と別の構成部分とが、ダイ表面から上方に向かって比較的僅かに離れていれば良いので、サイクル時間が短縮される。
【0013】
このようなプレス成形体は特に、エンジニアリングセラミック又は金属から成る、例えば歯車のような、エンジニアリングプレス成形体を意味する。
【0014】
充填管路、特に全ての前記充填管路が、加圧中に向かう両反転点の間の、又は充填位置と加圧中に向かう反転点との間の移動軌道に対して横方向から前記充填シューに接続されているプレス成形機が好適である。換言すれば、「移動軌道に対して横方向から」というこのような構成について、移動軌道は、ダイ開口の互いに向かい合って位置する2つの側にある加圧中に到達する両反転点の間に延在しているか、又は充填位置と加圧中に到達する反転点との間で延在しているかによって規定される。
【0015】
特に、充填シューには、移動軌道に対して直交方向に延びる周面では、接続される充填管路が設けられない。従って特に、充填管路を、移動軌道に対して平行に延在する側壁に位置することができる。しかしながら移動軌道に対して所定の角度を成して延びる充填シューの側壁に、充填管路を接続することもできる。これは特に、移動軌道に対して45°又はそれ以下の角度を有した側壁の延在について当てはまる。
【0016】
充填管路が前記充填シューの側壁に、前記移動軌道に沿った中央の移動線から所定の間隔を置いて接続されており、該間隔は、前記中央の移動線に対して直交方向で延在する前記ダイ開口の側方の延在よりも大きいならば特に好ましい。
【0017】
充填シューが直線運動しか行わない場合は、中央の移動線とは特に直線状の移動軌道を意味する。しかしながら、均一な粉末分布を得るために充填シューの側方運動が特にダイ開口の上側で所望される場合には、中央の移動線若しくは中央の移動軌道に対して横方向の運動も意味する。充填シューの側壁における充填管路の連結個所の中央の移動線に対する間隔とは特に、中央の移動線に対する、特にダイ開口の中心点に対する充填シュー内室の内側の側壁間隔を意味する。しかしながら概念の定義によっては、充填管路が相応の側壁に開口する個所における充填シューの外側の側壁の外側の側壁点も意味する。
【0018】
中央の移動線に対して直交方向の方向とは特に、両反転位置の間の充填シューの移動距離の長手方向延在に対して直交方向の方向を意味する。これは特に、継続的かつ互いに重畳する長手方向運動及び直交方向運動を含む。
【0019】
充填管路の少なくとも1つが、移動軌道の側方右側で前記充填シューに接続されていて、前記充填管路の少なくとも1つが、前記移動軌道の側方左側で前記充填シューに接続されているプレス成形機が好適である。移動軌道に対して側方右側及び側方左側に充填管路ができるだけ同様に配置されていることにより、充填シューが充填シューに取り付けられた充填管路と共に移動する間、その主な移動方向に対して左右に向かう充填シューの移動の影響が均質になる。
【0020】
独立請求項として好適には、金属粉末及び/又はセラミックス粉末及び/又は顆粒状材料からプレス成形体をプレス成形する方法において、ダイのダイ開口に上記材料を充填シューを介して充填し、前記充填シューの退去後に前記ダイ開口内で前記材料をパンチ装置によって加圧し、当該方法を、セラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機で行う。
【0021】
従ってこの方法は、充填管路若しくは充填ホースが、充填シューの移動軌道に対して横方向から充填シューの側方の壁に接続されているプレス成形機で行われる。このような装置により、プレス成形機の上側の構成部分、特にプレス成形機の上側のパンチをダイ表面若しくはダイ開口から比較的低く持ち上げれば良くなり、従って全体として短いサイクル時間が得られる。
【0022】
上記方法とは独立して好適な方法では、セラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機において、前記充填シューを1つのプレスサイクルで、第1の休止及び/又は反転位置から前記移動軌道に沿って前記ダイ開口を越えて第2の休止及び/又は反転位置へと移動させ、次のプレスサイクルで初めて、逆方向で、前記第1の休止及び/又は反転位置へと戻す。換言すれば、充填シューは前方に向かって第1のプレスサイクルでダイ開口を通過し、材料を加圧した後初めて、特に材料を予備加圧又は最終加圧若しくは最終圧縮した後で初めて、第2のプレスサイクルで戻され、この場合、プレス成形すべき材料が再びダイ開口へと充填される。
【0023】
このような方法によるダイ表面上での充填シューの調節により多くの利点が得られる。ダイ開口を越えて行われる直線運動により、プレスサイクル中に制動及び加速による遅れは不要であり、この場合、充填シューは最初、休止位置若しくは反転位置まで制動され、次いで逆方向に戻されて第1の休止及び反転位置まで加速されれば良い。特に、充填シューが場合によっては、同じプレスサイクル中に逆方向で第1の休止及び反転位置へと戻される前に、ダイ開口をある程度越えて第2の反転位置まで到るような空走行も不要である。このプレスサイクル中に再び戻されることなく、一方向で充填シューがダイ開口を越えて第2の反転位置へと向かう同様の走行により、均質な粉末分布が得られる。特に、充填シューがダイ開口を完全に越えて通過し、次いで同じプレスサイクルで戻されるのに比べて、同じプレスサイクル中で第2の反転位置のみへの充填シューの好ましい移動が行われた場合に、充填シューの総移動距離は短くなり、相応に、サイクル時間も短縮される。何故ならば、距離は確かにダイ開口を越えて行くが、完全には戻されないからである。
【0024】
前記充填シューを、その反転位置の間で、前記移動軌道に沿ってほぼ直線状に移動させるならばこのような方法は好ましい。移動軌道に沿った直線移動が好ましいが、例えば、ダイ開口上での側方の揺動運動又は蛇行状の移動軌道も可能であり、これにより場合によっては、ほぼ直線状の運動としか言えない。
【0025】
特に、前記充填シューを、前記ダイ開口を越える移動中に、特にその反転位置の間の全移動中にわたって継続的に移動させるこのような方法が実現可能である。この場合、継続的とは特に、均一な粉末分布を得るために、ダイ開口の領域において充填シューが継続的な速度であることを意味する。しかしながら、充填シューの速度が変更される構成も可能であり、この場合、充填シューの継続的な移動とは、充填シューが反転位置の間で一時的な停止なしに移動することを意味する。
【0026】
材料を前記充填管路によって案内する間、前記材料を同時にそれぞれ右側及び左側から、同数の充填管路を介して前記充填シューへと、かつ/又は前記ダイ開口へと供給する方法は特に好適である。材料が充填管路を通してガイドされる際に、予期しない強い作用を充填シュー及び/又はダイ表面上での充填シューの運動に与えることがある。プレス成形すべき材料を充填シューの両側に特に均等に案内することにより、充填シュー又はその移動に対する均等な影響が得られ、これにより充填シュー又はその移動に対する不都合な片側の作用又は過剰な片側の作用が生じない。
【0027】
独立請求項として特に、上記方法を実行するためにプログラミングされたプログラム、かつ/又は、上記プレス成形機の制御装置内にプログラミングされたプログラムを記憶して備えたデータ媒体も好適である。
【0028】
このような制御装置は、プレス成形機内で充填シューを動かすために通常使用される制御装置であって良く、この制御装置は、様々なプレス成形機構成部分の移動経過を実行するために、このような制御プログラムに応じて構成されている。この場合、制御装置は、1つのプロセッサとして純粋な制御装置として形成されて良いが、いわゆるハードウェア制御可能及びソフトウエア制御可能な構成部分の組み合わせから成っていても良い。
【0029】
以下に図面につき1つの実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】例示したセラミックス粉末及び/又は金属粉末プレス成形機のダイを、載置された充填シュー及び充填シューに配置された別の構成部分と共に示した平面図である。
【
図3】上側のパンチ装置及び/又は上側の加圧駆動構成部分の高さ調節を示す、若しくはダイのダイ表面上での充填シューの移動を示す、時間に沿った2つのグラフである。
【0031】
図1及び
図2には、
図3に示したプレス成形体12をプレス成形するためのプレス成形機構成部分が概略的に示されている。プレス成形体は、少なくとも1種の金属粉末及び/又はセラミックス粉末及び/又は顆粒状材料pからプレス成形される。
【0032】
プレス成形機には、ダイ1が配置されていて、ダイ1はダイ開口2を有している。ダイ開口2は、粉状かつ/又は顆粒状の材料p、特にセラミックス粉末及び/又は金属粉末を充填装置によって充填するために用いられる。このような材料若しくは粉末はこの場合、広義では、顆粒又は、微粒子粉末と顆粒状材料とから成る混合物も意味する。
【0033】
充填装置は、ダイ1のダイ表面1o上に載置されている充填シュー3を有している。充填シュー3は、移動軌道4に沿ってダイ表面1o上を運動可能若しくは移動可能である。この場合、構成部分が実線で示されている第1の休止及び/又は反転位置p1から、構成部分が点線で示されている第2の休止及び/又は反転位置p3までの直線運動が有利である。この場合、第2の休止及び/又は反転位置p3は、ダイ開口2の反対側に位置している。休止及び/又は反転位置とは特に、休止及び反転位置を、又は単なる反転位置を意味する。
【0034】
両休止及び/又は反転位置p1,p3は、充填シュー3と、充填シュー3に連結又は取り付けられた構成部分とが少なくとも休止及び/又は反転位置p1,p3に位置している間に、ダイ開口2においてプレス成形体のプレス成形を行うことができる程度に、ダイ開口2から間隔を置いて位置している。
【0035】
移動軌道4に沿った充填シュー3の直線運動の他に、原則的には、充填シュー3がその休止及び/又は反転位置p1,p3の間で移動されている間に、充填シュー3は、移動軌道4に対して横方向の運動を行うこともでき、又は重畳した縦方向運動及び横方向運動を行うこともできる。
【0036】
充填シュー3及び充填シュー3に配置された又は取り付けられた構成部分を動かすために、充填シュー3に取り付けられた又は連結された、駆動装置につながっているリンク機構を有したガイド装置5が使用される。駆動装置とリンク機構によって、充填シュー3はダイ表面上を移動することができる。
【0037】
充填装置はさらに少なくとも2つの充填管路7,8を有していて、これら充填管路7,8は、粉末若しくは顆粒又はこれらの混合物を、粉末容器から充填シュー3内へ導く、又は充填シュー3を通して又は直接にダイ開口2へと導く。移動軌道4の長手方向延在から見て、第1の充填管路7は充填シュー3の左側に配置されていて、第2の充填管路8は充填シュー3の右側に配置されている。
【0038】
充填管路7,8は好適には、ガイド装置5によって、充填シュー3と共に動かすことができるように可撓的な材料から成る充填ホースとして形成されている。充填管路7,8はこの場合、任意の形式で、特に公知の形式で、充填シュー3の本体に堅固に結合することができ、又は充填シュー3にのみ連結されていても良い。
【0039】
中央の移動線に対して横方向のダイ開口2の幅若しくは延在d2に比較して、充填管路7,8の取り付け点又は連結点は特に、中央の移動線からの間隔d3が、中央の移動線に対して横方向のダイ開口2の側方の延在d2よりも大きくなるように、移動軌道4若しくは移動軌道4に沿った中央の移動線から横方向に離れて充填シュー3に配置されている。この場合、間隔d3は特に、移動軌道4の側方に延在する、充填シュー3の側壁11までの間隔である。特に、側壁11とは、充填シュー3の運動方向から見て充填シューの前壁又は背壁又はそれに相当する区分とは異なる。この場合、側壁は見方によっては、側壁11の外側の一点又は、側壁11の内側の一点と見なすこともできる。特に、充填管路7,8が側壁11を貫通して一部、充填シュー3の充填シュー内室6内に延在しているならば、側壁とは、充填管路7,8が充填シュー内室6内で開口している点であると理解することができる。
【0040】
図1には、充填管路7,8が移動軌道4に対して約90°の角度αをなして配置されて充填シュー3に取り付けられている又は連結されていることが示されている。
図2に示されているように、しかしながらこのような連結は付加的に、別の角度αで行われても良く、特に45°〜90°の角度をなして行われて良い。さらにこのような意味では、充填シュー3の側方の側壁11は、移動軌道4に対して平行に延びているだけではなく、移動軌道4に対して傾斜している延在部も有しており、この延在部で充填管路7,8が接続又は連結されている。最終的に重要であるのは、移動軌道4から見て、充填管路7,8が充填シュー3から横方向で延びていることである。これにより充填シュー3の上側にできるだけ多くのスペースが空いたままとなるので、上側のパンチ装置は、ダイ表面1o若しくはダイ開口2から最小限だけ離れるように上方に向かって動かされれば良い。
【0041】
下方からは、下側のパンチ装置9の単数又は複数の下側パンチがダイ開口2内に突入し、ダイ開口2を下方に向かって閉鎖する。例示した下側パンチは特に駆動装置によって、互いに相対的にかつダイ1に対して相対的に調節可能である。粉状及び/又は顆粒状の材料pの充填後、この材料pを、上側のパンチ装置10の単数又は複数のパンチによって圧縮し、プレス成形体12となるように加圧することができる。このために、上側パンチは上方からダイ開口2内へと導入され、この場合、例えば複数の上側パンチも特に駆動装置によって、互いに相対的にかつダイ1に対して相対的に調節可能である。
【0042】
図2及び、特に
図3に示したように、処理過程によれば、第1のプレスサイクルc1の間、充填シュー3は、ここに取り付けられた構成部分、特に側方に配置された充填管路7,8と共に、第1の反転位置又は休止及び反転位置p1から第1の時点でダイ開口2の方向に動かされる。この場合、ダイ開口2に材料pを充填する際の中間位置p2に到るまでに、充填シュー3は第1の移動距離dだけ進む。充填シュー3のこのような移動中、上側のパンチ装置10とこのパンチ装置を調節する構成部分とは、充填シュー3と充填シュー3に取り付けられかつ連結された構成部分とが、ダイ開口2の上方を移動することができるように、ダイ開口2上方で十分高い高さhに位置している。高さh若しくは充填シュー3の移動距離dを時間tに関して示したグラフから判るように、上側のパンチ装置10と充填シュー3の動きはこの場合、部分的に互いに重なっていても良い。
【0043】
図示した中間位置p2への到達により既に、又は充填シュー3の僅かにこれを越えて行われる移動及び第1の休止及び/又は反転位置への迅速な反転の場合でも、独立請求項により実現可能な構成により、第1のサイクル継続期間c1の時間的節約若しくは短縮が得られる。何故ならば、充填管路7,8が側方に配置されていることにより上側のパンチ装置10に必要な持ち上げ高さhは比較的僅かであるからである。
【0044】
しかしながら特に好ましい方法では、充填シュー3及び充填シュー3に配置された構成部分は、ダイ開口2の充填後若しくは充填中再び、間隔を置いて位置している第2の休止及び/又は反転位置p3へと移動する。この休止及び/又は反転位置p3でも、プレス成形体12の加圧を行うことができる。この場合、プレス成形は行われ、充填シュー3がもともとの第1の休止及び/又は反転位置p1へと前もって反転及び移動することはない。このことは特に
図3に示されていて、
図3によれば、第2のプレスサイクルc2の範囲で、まず第1の休止及び/又は反転位置p1への充填シュー3の戻り運動が行われる。第2のプレスサイクルc2の間に行われるこのような戻り運動中に、ダイ開口2には再び材料pが充填され、別のプレス成形体12がプレス加工される。
【0045】
換言すれば、2つの個別のプレスサイクルc1,c2から成る上位の1つのサイクルでは、第1のプレスサイクルc1の間にダイ開口の充填、プレス成形体12のプレス成形、プレス成形体12の取り出しが行われ、第2のプレスサイクルc2の間に別のプレス成形体12がプレス加工され、取り出される。
【0046】
例えば、プレス成形体12を様々な材料からプレス成形する場合に、原則的には別の構成も可能であり、この場合、第1のプレスサイクルc1では、第1の材料のダイへの充填とパンチ装置9,10の調節による予備加圧とが行われ、その後第2のプレスサイクルc2で、第2の材料が充填され、これが次いで、予め圧縮された第1の材料と一緒に、プレス成形体12を形成するように加圧される。勿論、さらに別の材料を充填し、次いでその都度、予備圧縮してから、最終加圧を行ってプレス成形体12を形成することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 ダイ
1o ダイ表面
2 ダイ開口
3 充填シュー
4 移動軌道
5 ガイド装置
6 充填シュー内室
7 充填管路
8 充填管路
9 下側のパンチ装置
10 上側のパンチ装置
11 側壁
12 プレス成形体
d 充填シューの第1の移動距離
d2 中央の移動線に対して横方向のダイ開口の側方の延在
d3 中央の移動線からの側方の間隔
h 上側のパンチ装置の高さ
p 金属粉末及び/又はセラミックス粉末及び/又は顆粒状の材料
p1 第1の休止又は反転位置
p2 充填時の中間位置
p3 第2の休止又は反転位置
t 時間
α 移動軌道に対する充填管路の角度