特許第6141298号(P6141298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141298
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】チューブモジュール
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20170529BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B01J19/24 Z
   C07B61/00 C
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-540398(P2014-540398)
(86)(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公表番号】特表2015-502842(P2015-502842A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】EP2012071561
(87)【国際公開番号】WO2013068290
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年7月3日
(31)【優先権主張番号】11188166.0
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502305917
【氏名又は名称】アルファ・ラバル・コーポレイト・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ヘグルンド、カスパー
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−029046(JP,A)
【文献】 特開2001−353431(JP,A)
【文献】 実開昭49−046139(JP,U)
【文献】 米国特許第04834172(US,A)
【文献】 特開平08−135854(JP,A)
【文献】 特開昭62−062193(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/064917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B01J 8/00− 8/46
B01J 10/00−19/32
C07B 61/00
F28D 7/00− 7/16
F28F 1/00− 1/44
F16L 9/18− 9/19
DB等 JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続環状螺旋特徴をもつ少なくとも二つの同心のチューブを備えているチューブ状リアクター流れモジュールであり、
前記同心のチューブの内側チューブ(2)が、前記同心のチューブの外側チューブ(1)の内側に同心で配置され、前記同心のチューブの各々は、最大直径と最小直径を有しており、
前記内側チューブの最大直径は前記外側チューブの最小直径よりも大きく、前記内側チューブと前記外側チューブの間にすき間(B)を形成していて、
前記すき間(B)は、前記内側チューブと前記外側チューブの間に流れ経路を定めており、前記流れ経路は、環状螺旋流れ経路と軸上巻回流れ経路の組み合わせとして定められており、
前記外側チューブ(1)と前記内側チューブ(2)と間の前記すき間(B)は、前記外側チューブ(1)と前記内側チューブ(2)の長さに沿って連続しており、
第1の端部を形成している前記内側チューブと前記外側チューブの間に延出している第1の端部連結部品と、
第2の端部を形成している前記内側チューブと前記外側チューブの間に延出している第2の端部連結部品と、
を備え、
前記すき間(B)への第1の入口ポートであって、前記第1の入口ポートは、前記第1の端部から軸方向内側に形成されており、
前記すき間(B)からの第1の出口ポートであって、前記第1の出口ポートは、前記第2の端部から軸方向内側に形成されており、
前記チューブ状リアクター流れモジュールはまた、前記外側チューブ(1)の外側に同軸に配されたチューブ(4)を備えていて、前記チューブ(4)の最小直径は前記外側チューブ(1)の最大直径よりも大きく、環状空間(5)が前記チューブ(4)と前記外側チューブ(1)の間の空間として定められ、前記環状空間はプロセス流体のためのものである、
チューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項2】
前記チューブ状リアクター流れモジュールはまた、前記内側チューブ(2)の内側に同軸に配されたチューブ(6)を備えていて、前記チューブ(6)の最大直径は前記内側チューブ(2)の最小直径よりも小さく、環状空間(7)が、熱伝達流体またはプロセス流体のための前記チューブ(6)と前記内側チューブ(2)の間の空間として定められている、請求項に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項3】
前記チューブ(4)は、円筒状チューブ、波形チューブ、リブドチューブ、螺旋形状チューブまたは螺旋状フィンを備えたチューブから成る群から選択される、請求項に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項4】
前記チューブ(6)は、円筒状チューブ、波形チューブ、リブドチューブ、螺旋形状チューブまたは螺旋状フィンを備えたチューブから成る群から選択される、請求項に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項5】
前記チューブ状リアクター流れモジュールは、流体のための別の流れ経路(3)を形成している前記二つの同心外側および内側チューブ(1,2)に同軸に配された螺旋特徴をもつ同心チューブをさらに備えている、請求項1に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項6】
各流れ経路(3)と各環状空間(5,7)は、少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口を有している、請求項に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項7】
一つ以上のポートが、前記環状流れ経路(3)または前記環状空間(5,7)への液体または熱電対や圧力変換器のアクセスを提供する、請求項に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項8】
前記ポート(10,12,14)は、流体の入口、流体の出口または熱電対や圧力変換器のためのポートであり、前記ポート(10,12,14)は、前記環状流れ経路(3)または前記環状空間(5,7)に対して接線方向、径方向、または軸方向に配されている、請求項に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項9】
連続環状螺旋特徴を有している前記チューブ(4と6)の少なくとも一つは、付属螺旋状フィンを備えた螺旋形状が形成された壁及びチューブから成る、請求項に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項10】
前記連続環状螺旋特徴は、各環状流れ経路(3)を形成するのに適したピッチ(A)とすき間(B)と螺旋特徴高さ(C)を有している、請求項1に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項11】
流体のための環状流れ経路を定めている前記流れ経路は、前記二つの同心の外側および内側チューブ(1,2)の表面によって限定されていて、前記表面は、螺旋状波形として成形されている、請求項1に記載のチューブ状リアクター流れモジュール。
【請求項12】
請求項1ないし1のいずれか一つに記載の少なくとも二つのチューブ状流れモジュールを備えているチューブ状流れモジュールシステムであり、前記チューブ状流れモジュールは、互いに直列に、並列にまたはそれらの組み合わせで連結されている、チューブ状リアクター流れモジュールシステム。
【請求項13】
前記チューブ状リアクター流れモジュールシステムは、シェルおよびチューブシステムを形成しているシェルの内側にある、請求項1に記載のチューブ状リアクター流れモジュールシステム。
【請求項14】
化学反応のためのリアクターとしての請求項1ないし1のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュールまたは請求項1ないし13いずれかひとつに記載のチューブ状リアクター流れモジュールシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、チューブモジュールまたはチューブモジュールシステム、また、チューブモジュールまたはチューブモジュールシステムの使用に関する。本発明は特に、同軸チューブリアクターまたは同軸チューブリアクターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ状リアクターは、数年間使用状態にあり、そのようなリアクターの例は、US3052524とGB932048によって開示されており、それらは、三つのチューブから成り、熱伝達流体が最内側チューブと最外側チューブの中を流れ、反応物流体が中央チューブの中を流れる同心チューブ状リアクターを説明している。別の例が、触媒反応のための三同心チューブシステムを示しているWO2009150677によって開示されている。
【0003】
従来の同心チューブ状リアクターは、一定の輪郭を有している、すなわち、流れ経路は、プロセスおよびユーティリティーサイドの両方においてまっすぐである。これは、チューブ状リアクター内の流れが、両側において、しばしば、特に低い流量において、層流になることを意味し、低い流量は、反応が完了するに数分までの多くの秒を要するときにプロセス側において一般的におこる。
【0004】
層流形態の動作はつぎのものを提供する。
【0005】
・乏しい混合。
【0006】
・乏しい熱伝達(壁の間の距離が非常に小さくない限り)。
【0007】
・乏しいプラグ流れ。
【0008】
これは、生成物収量または希望の生成物の選択性の低減をもたらし、したがって、最終混合物は、希望の生成物から分離される必要のある不所望な副産物を包含するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US3052524
【特許文献2】GB932048
【特許文献3】WO2009150677
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明は、少なくとも二つの螺旋形状同心チューブを備えているチューブ状流れモジュールまたは同軸チューブ流れモジュール、特に同軸チューブリアクターまたは同軸チューブ熱交換器を提供することによって、上記の問題に対する解決策を得る。したがって、本発明はチューブ状流れモジュールに冠していて、その流れモジュールは、連続環状螺旋特徴をもつ少なくとも二つの同心チューブを備えている。同心チューブは、一方のチューブすなわち第二のチューブが他方のチューブすなわち第一のチューブの内側に同軸に配され、各チューブが最大直径と最小直径を有しているように互いに配されていてよい。第二のチューブの最大直径は第一のチューブの最小直径よりも大きく、したがって、第一のチューブと第二のチューブの間に空間を形成していてよい。前記空間は、第一のチューブと第二のチューブの間に流体のための流れ経路を定めていて、前記流れ経路は、環状螺旋流れ経路と軸上巻回流れ経路の組み合わせとして定められている。
【0011】
連続環状螺旋特徴を有している第一および第二の同心チューブすなわち外側および内側螺旋チューブは、それらの間に空間が形成され得るように同軸に配されていてよい。そのような形状は、方向を連続的に変えることを流体流れに強制し、ゆえに、混合と熱伝達とプラグ流れを改善する渦を誘導する。したがって、流れ経路は、表面によって制限された流体のための環状経路を定めていてよく、螺旋状波形として成形されていてよい。したがって、螺旋特徴を有している外側および内側チューブは、スクリューとナットのように係合され、螺旋特徴はねじのように作用する。内側チューブは外側チューブの中に、それらのチューブが互いに組み立てられたときにねじ止めされてよい。螺旋特徴間のすき間中に、希望の環状巻回流れ経路が形成される。
【0012】
チューブ状流れモジュールはまた、第一のチューブの外側に同軸に配されたチューブを備えていてよい。外側チューブの最小直径は第一のチューブの最大直径よりも大きいが小さくてよく、形成された環状空間は、外側チューブと第一のチューブの間の空間として定められてよく、その環状空間は、熱伝達流体または他の流体のためのものであってよい。
【0013】
チューブ状流れモジュールはまた、第二のチューブの内側に同軸に配されたチューブを備えていてよい。内側チューブの最大直径は、第二のチューブの最小直径よりも小さいか大きくてよく、形成された環状空間は、内側チューブと第二のチューブの間の空間として定められてよく、その環状空間は、熱伝達流体または他の流体のためのものであってよい。
【0014】
内側チューブと外側チューブは、それぞれ、円筒状チューブ、波形チューブ、リブドチューブ、螺旋形状チューブまたは螺旋状フィンを備えたチューブから成る群から適切に選択されてよい。
【0015】
チューブ状流れモジュールは、流体のための二つ以上の環状流れ経路を形成している互いに同軸に配された螺旋特徴をもつ三つ以上の同心チューブを備えていてよい。
【0016】
したがって、流れモジュールは、一つ以上の流れ経路と一つ以上の環状流れ空間を有していてよい。環状流れ経路は、プロセス流れのためのものであってよいが、環状流れ経路は、熱伝達流体のためのものであってよいことも可能である。環状流れ空間は、熱伝達流体のためのものまたはプロセス流体のためのものであってよい。
【0017】
チューブ状流れモジュールは、二つ以上の環状流れ経路を形成している互いに同軸に配された三つ以上の螺旋形状同心チューブを備えていてよい。また環状流れ空間すなわち熱伝達流体またはプロセス流体のための流れ空間は、流れモジュール内に同軸に配されていてよい。各環状流れ経路および各環状空間は、少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口を有していてよい。いくつかの同心環状流れ経路と環状流れ空間は同じ流れモジュール内にあってよく、チューブはどんな種類の適切な形状であってよく、円筒状チューブ、波形チューブ、リブドチューブ、螺旋形状チューブまたは螺旋状フィンを備えたチューブから成る群から選択され得る。
【0018】
本発明によるチューブ状流れモジュールでは、螺旋特徴を有しているチューブは、螺旋形状が形成された壁と付属螺旋状フィンを備えたチューブから成る群から選択されてよい。螺旋特徴は、各環状流れ経路中の流体の改良プラグ流れタイプの流れを得るのに適したピッチ(A)とすき間(B)と螺旋特徴高さ(C)を有している。環状流れ空間も、各環状流れ空間中の流体のプラグ流れタイプの流れを得るのに適したピッチ(A)とすき間(B)と螺旋特徴高さ(C)を有していてよい。
【0019】
螺旋形状同心チューブと内部または外側チューブとの間の環状空間は、流れ経路を確保するために、また螺旋形状同心チューブと内側または外側チューブの間にあらかじめ設計された距離を提供するために、空間内に配された一つ以上のスペーサーを有していてよい。流れ経路はさらに、一つ以上の端部連結部品によって確保されていてよい。本発明のチューブは、一つ以上の端部連結部品で設置され、したがって、チューブの配列を配置および安定化する設置手段を有していてよい。端部連結部品は、流体のためのポートを有していてよい。ポートは、流れ経路に対して接線方向に、流れ経路に対して径方向に、または端部連結部品上のチューブと縦整列してすなわち軸方向に配されていてよい。
【0020】
すべての部品、すなわち、螺旋特徴を有しているチューブと内側チューブと外側チューブと端部連結部品は、たとえばボルトによって互いに装着されてよいが、溶接や鑞付や液圧利用装置などの他の策も可能である。一つまたは二つのナットが、ボルトと共に、モジュールを閉じるための手段であってよい。二つの端部連結部品内に配された端部キャップが、複数のナットと複数のボルトと共に、またはそれらなしで、モジュールを閉じる一つの手法になり得る。端部キャップを備えた端部連結部品は、モジュールがどのように構成され閉じられるかに依存して、個別の部分であっても、一つの部品に一体化されていてもよい。螺旋スプリング、ディスクスプリング、ディスクスプリングのパックなどの一つまたは二つのスプリングが、熱膨張を補償するように調整されたおよび/またはチューブが高圧力に対して開くことを可能にする安全装置として使用されてよい。
【0021】
チューブ状流れモジュールは、一つ以上のアクセスポートまたは一つ以上のポート穴またはそれらの組み合わせを有していてよく、それらポートまたはポート穴は、環状流れ経路へのまたは環状空間へのアクセスを提供していてよい。アクセスポートまたはポート穴は、流体のための入口、流体の出口または道具のためのポートであってよい。アクセスポートまたはポート穴は、環状流れ経路または環状空間に対して接線方向、径方向または軸方向に配されていてよい。
【0022】
一つ以上のアクセスポートまたは一つ以上のポート穴またはそれらの組み合わせは、一つ以上のポート付属品を装備していてよい。ポート付属品は、ノズルのための、センサーユニットのための、熱電対のための、スプリング負荷センサー、または抵抗温度計のための設備を有していてよい。
【0023】
ノズルは、本発明によるポート付属品を通って挿入されてよく、任意の適切なノズルから選択されてよい。ノズルの例は、噴射ノズル、分散ノズル、再分散ノズル、再混合ノズル、共軸ノズル、チューブノズルほかである。
【0024】
共軸ノズルは、二つ以上のチューブが互いの内に配され、大きい直径を有している大きいチューブが、小さい直径を有している小さいチューブを囲んでいるノズルとして定められ得る。そのようなノズルが使用される場合、二つ以上の流体は混合されるか、分散を形成することが可能である。再混合ノズルは、ノズルヘッドを備えた穴を有しているチューブノズルであってよく、その穴はチューブよりも小さい半径を有している。ノズルは、分散ノズルの出口に一つ以上の穴を有していることが可能である分散ノズルであってよく、それらの穴は、同心円に配されることが可能であるか、他の適切なパターンに配されることが可能である。
【0025】
流れモジュールのチューブの材料は、ステンレススチール、鉄ベース合金、ニッケルベース合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、モリブデンベース合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ガラス、石英、グラファイト、強化グラファイト、ハステロイ(登録商標)またはプロセス媒体に耐性のある任意の他の材料から成る群から選択されてよい。チューブのための他の適した材料は、それでチューブが作られ得るPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、パーフロロエラストマーまたはフルオロエラストマー、PP(ポリプロペン)ほかなどのプラスチック材料などの特殊な材料である。異なるチューブは同じ材料製であってもよいが、異なるチューブが異なる材料で作られていてよいことも可能である。チューブの少なくとも一つは膜材料で作られていて、したがって、チューブモジュールは膜容量を有し得ることも可能であり得る。チューブは、たとえば、流れモジュールの目的に適切な特性を有している触媒材料または他のタイプの材料で被覆されていてよい。
【0026】
本発明はまた、チューブ状流れモジュールシステムに関していて、そのチューブ状流れモジュールシステムは、少なくとも二つのチューブ状流れモジュールが互いに直列に、並列に、またはそれらの組み合わせで連結されて構成されていてよい。さらなる代替案は、チューブ状流れモジュールシステムが、シェルおよびチューブシステムを形成しているシェルの内側または内部にあるものであってよい。
【0027】
本発明によるチューブ状流れモジュールは、化学反応のためのリアクターとして、熱伝達のための熱交換器として、分離のためまたは抽出のための接触器として、またはそれの組み合わせとして使用されてよい。
【0028】
本発明の他の側面および利点は、添付図面を参照して、本発明の実施形態の続く詳細な説明の中で示される。以下の図は、本発明を示すように、また本発明の範囲を限定しないように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、二つの螺旋形状チューブを有している本発明の流れモジュールを開示している。
図2図2は、流れモジュールが二つの螺旋形状チューブと熱伝達流体のための内側および外側チューブ成形経路を有している本発明の別の実施形態を開示している。
図3図3は、流れモジュールが二つの螺旋形状チューブと熱伝達流体のための内側および外側チューブ成形経路を有している本発明の実施形態をさらに開示している。
図4図4は、チューブのピッチとすき間と螺旋特徴高さを開示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
二つの同心螺旋形状チューブ1および2が、それらの一方が他方の中に係合されるのを可能にするようにして形成されている。螺旋形状はねじとして働き、そこでは、内側チューブ2の外側直径は、外側チューブ1の内側直径よりも大きい。二つのチューブの間のすき間に、空間すなわち流れ経路3が形成される。流れ経路3は、螺旋形状経路を、またチューブ1と2の軸および径方向の両方に巻回経路を形成している。
【0031】
設計は、流体流路として適切に使用されてよく、流体は、プロセス流体または熱伝達流体であってよい。平均流れ方向は軸方向にある。またチューブの径および接線方向の速度を変化させる。速度成分の大きさは、螺旋のピッチAとすき間Bと特徴高さCによって調整されることが可能である。速度変化は、渦を四方八方に誘導する。これは混合にとって良く、境界層を破壊し、改良プラグ流れ状況を作り出す。空間の体積に対するぬれ表面の比は、螺旋間のすき間によって調節され得る。これらの特徴は、流れモジュール、リアクター、熱交換器ほかに適した設計を生み出す。流体の流れは、液体やスラリーやガスなど、どんな種類であってもよい。
【0032】
図2は、外側螺旋チューブ1が外側チューブ4の中に閉じ込められていて、外側螺旋チューブ1と外側チューブ4の間の流体流れたとえば熱伝達流体のための環状空間5または経路を形成していることを示している。内側螺旋チューブ2は、内側チューブ6を閉じ込めていて、内側チューブ6と螺旋チューブ2の間の流体流れたとえば熱伝達流体のための環状空間7を形成していてよい。チューブ4と6は、図2に示されるように、まっすぐな同心、すなわち円筒状チューブであってよい。チューブ4と6は、螺旋形状または螺旋状フィンを備えたチューブであってよく、または、チューブ4と6は、波形、リブドチューブなど、どんな他の適切な形状、または、螺旋チューブすなわちチューブ1と2の内側または外側に適合するどんな他の形状を有していてよく、円筒形状以外の他のタイプの形状のチューブ4と6は図2に示されていない。
【0033】
環状空間5と7は、それぞれ、外側円筒状チューブ4と外側螺旋チューブ1、内側円筒状チューブ6と内側螺旋チューブ2の間に、一つ以上のスペーサーを装備していてよく、前記スペーサーは図2には示されていない。スペーサーは、補強の目的のために、整列のために、要素を増強して混合するように、または位置を固定するように、使用されることが可能である。
【0034】
螺旋チューブ1と2は、端部連結部品9のそばの各端部において軸および接線方向の両方に互いに設置されている。設置手段は、はめ合い部に一体化されている。螺旋チューブ1と2と端部連結部品9は、交換可能シールすなわちOリングほか、または永久シールすなわち溶接、ろう付けほかによって互いに対して密閉している。端部連結部品9は、流体ラインに連結するまたはたとえば熱電対や圧力変換器のような道具のための一つ以上のポート10を有している。
【0035】
外側チューブ4と外側螺旋チューブ1は端部連結部品11によって密閉されている。この場合、円筒状チューブ4では、接線方向設置は必要とされない。端部連結部品11は、流体ラインに連結するまたはたとえば熱電対や圧力変換器のような道具のための一つ以上のポート12を有している。ポート12は、流体を好ましい方向に案内する方向に螺旋形状チューブ1に対する接線方向に配されていてよい。
【0036】
内側チューブ6と内側螺旋チューブ2は端部連結部品13によって密閉されている。この場合、円筒状チューブ6では、接線方向設置は必要とされない。端部連結部品は、流体ラインに連結するまたはたとえば熱電対や圧力変換器のような道具のための一つ以上のポート14を有している。ポート14は、流体を好ましい方向に案内する方向に螺旋形状チューブ2に対する接線方向に配されていてよい。すべてのシールは、周囲に対してであり、流れ経路すなわち環状空間3と5と7の間ではなく、相互汚染の危険を最小化するためのものである。
【0037】
すべての部品すなわち螺旋チューブ1と2と円筒状チューブ4と6と端部連結部品9と11と13は、ボルト15とナット17と端部キャップ16とディスクスプリングパック18によって互いに保持されている。ディスクスプリング18は、熱膨張効果を補償するように、または/および、高すぎる圧力においてチューブが開くことを可能にする安全機能またはデバイスとして、調整されてよい。
【0038】
流れモジュールシステムを形成しているいくつかのユニットは互いに連結されていてよい。ポート10と12と14が、ユニット間またはマニホールドに連結されていてよい。
【0039】
図3は、螺旋チューブ2と円筒状チューブ6の間の空間7が、円筒状チューブ6上に配された混合増強要素19を装備しているチューブ状流れモジュールを示している。混合増強要素19は、螺旋チューブ2の螺旋形状に従うねじ19または螺旋状フィン19であってよい。円筒状チューブ4と螺旋チューブ1の間の空間5中に対応配列が作り出されてよく、これは図3では見れない。ポート10と12と14は、流体の入口、流体の出口または道具のためのポートである。図3では、ポート10と12と14は、環状流れ経路3に対してまたは環状空間5と7に対して接線方向または径方向に配されているが、他の代替策も可能である。ポートの可能な一つの配列は、ポートを流れ経路または流れ空間に対して軸方向に配することであり、これは図3では見れない。
【0040】
図4は、螺旋チューブのピッチAとすき間Bと螺旋特徴高さCの関係を示している。螺旋のピッチAとすき間Bと特徴高さCはまた、流れ空間5と7内の混合を強化するように配された螺旋状フィン19を有している円筒状チューブに適合可能であり、図4はこれを開示していない。ピッチAとすき間Bと螺旋特徴高さCはまた、各環状流れ経路3と流れ空間5と7中の流体の流れのプラグ流れタイプを促進し得る。
【0041】
本発明の流れモジュールは、次のプロセス動作、製造、反応、混合、ブレンド、極低温動作の実行、水洗、抽出および浄化、pH調整、溶媒交換、化学薬品の製造、中間の化学薬品の製造、低温作動で働くときのAPI(医薬品原薬)製造、製薬の中間物の製造、拡大縮小現像、析出または結晶化、多数の注入または多数の添加または多数の測定または多数のサンプリングの実施、多段反応での動作、事前冷却動作、事前加熱動作、事後加熱および事後冷却動作、バッチプロセスを連続プロセスに変換するためのプロセス、流れを分割および再結合するための動作をおこなうときに有用である。
【0042】
本発明においておこなわれ得る反応タイプは、添加反応、置換反応、脱離反応、交換反応、焼き入れ反応、還元、中和、分解、置換または置換反応、不均化反応、触媒反応、切断反応、酸化、閉環および開環、芳香族化および脱芳香族化反応、保護および脱保護反応、相移転および相移転触媒反応、光化学反応、気相、液相および固相を内包する反応を含んでいて、それは、フリーラジカル、親電子試薬、親核試薬(neucleophiles)、イオン、中性分子などを内包していてよい。
【0043】
アミノ酸合成、不せい合成、キラル合成、液相ペプチド合成、オレフィンメタセシス、ペプチド合成ほかなどの合成も、流れモジュールでおこなわれることが可能である。流れモジュールが使用されることが可能である他のタイプの合成は、炭水化物化学、二硫化炭素化学、シアニド化学、ジボラン化学、エピクロロヒドリン化学、ヒドラジン化学、ニトロメタン化学の範囲内の反応や、複素環式化合物、アセチレン化合物、酸塩化物、触媒、細胞毒素化合物、ステロイド中間物、イオン液体、ピリジン薬品、ポリマー、モノマー、炭水化物、ニトロンほかの合成である。
【0044】
流れモジュールは、アルドール縮合、バーチ還元、バイアー・フィリガー酸化、クルチウス転位、ディークマン縮合、ディールス・アルダー反応、Doebner・クネーフェナーゲル縮合、フリーデル・クラフツ反応、フリース転位、ガブリエル合成、ゴンバーグ・バッハマン反応、グリニャール反応、ヘック反応、ホフマン転位、Japp・クリンゲマン反応、Leimgruber・Batchoインドール合成、マンニッヒ反応、マイケル添加、マイケリス・Arbuzov反応、ミツノブ反応、ミヤウラ・スズキ反応、レフォルマトスキー反応、リッター反応、ローゼンムント還元、ザントマイヤー反応、シッフ塩基還元、ショッテンーバウマン反応、シャープレスエポキシ化、スクラウプ合成、Sonogashiraカップリング、シュトレッカーアミノ酸合成、Swern酸化、ウルマン反応、Willgerodt転位、Vilsmeier・Haack反応、ウィリアムソンエーテル合成、ウィッティヒ反応ほかなど、名を冠した反応に適している。
【0045】
流れモジュールが適しているさらなる反応は、縮合反応、カップリング反応、鹸化、オゾン分解、環化反応、環化重合反応、脱ハロゲン化、脱水素環化、脱水素、脱ハロゲン化水素化(dehydrohalogennations)、ジアゾ化、硫酸ジメチル反応、ハロゲン化物交換、シアン化水素反応、フッ化水素反応、水素添加反応、ヨウ素化反応、イソシアナート反応、ケテン反応、液体アンモニア反応、メチル化反応、カップリング、有機金属反応、金属化、酸化反応、酸化カップリング、オキソ反応、重縮合、ポリエステル化、重合反応、他の反応、たとえば、アセチル化、アリール化、アクリル化(acrylations)、アルコキシ化(alkoxylations)、アンモノリシス、アルキル化、アリル臭素化、アミド化、アミノ化、アジ化、ベンゾイル化、臭素化、ブチル基導入、カルボニル化、カルボキシル化、塩素化、クロルメチル化、クロロスルホン化(chlorosulfonations)、シアン化(cyanations)、シアノエチル化、シアノメチル化(cyano-methy-lations)、シアヌレート化(cyanurations)、エポキシ化、エステル化、エーテル化、ハロゲン化、ヒドロホルミル化、ヒドロシリル化、ヒドロキシル化、ケタール化、ニトロ化、ニトロメチル化、ニトロソ化、過酸化、ホスゲン化(phosgenations)、クオタナイゼーション(quaternizations)、シリル化(silylations)、スルホクロル化(sulfochlorinations)、スルホン化、スルホ酸化、チオカルボニル化(thiocarbonylations)、チオホルゲン化(thiophosgenations)、トシル化、アミノ交換反応、エステル交換反応ほかである。
【0046】
上記の説明は、本発明の言及された実施形態に限定されるものではなく、この分野の当業者には、本発明の範囲内において可能ないくつかの修正がある。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 連続環状螺旋特徴をもつ少なくとも二つの同心チューブ(1,2)を備えているチューブ状流れモジュールであり、チューブ(2)は、チューブ(1)の内側に同軸に配されていて、各チューブは最大直径と最小直径を有していて、チューブ(2)の最大直径はチューブ(1)の最小直径よりも大きく、チューブ(1)とチューブ(2)の間に空間を形成していて、前記空間は、チューブ(1)とチューブ(2)の間に流体のための流れ経路(3)を定めていて、流れ経路(3)は、環状螺旋流れ経路と軸上巻回流れ経路の組み合わせとして定められている、チューブ状流れモジュール。
[2] 前記チューブ状流れモジュールはまた、チューブ(1)の外側に同軸に配されたチューブ(4)を備えていて、チューブ(4)の最小直径はチューブ(1)の最大直径よりも大きいか小さく、環状空間(5)がチューブ(4)とチューブ(1)の間の空間として定められ、前記環状空間は熱伝達流体または他の流体のためのものである、[1]に記載のチューブ状流れモジュール。
[3] 前記チューブ状流れモジュールはまた、チューブ(2)の内側に同軸に配されたチューブ(6)を備えていて、チューブ(6)の最大直径はチューブ(2)の最小直径よりも小さいか大きく、環状空間(7)が、熱伝達流体または他の流体のためのチューブ(6)とチューブ(2)の間の空間として定められている、[1]または[2]に記載のチューブ状流れモジュール。
[4] チューブ(6)とチューブ(4)は、それぞれ、円筒状チューブ、波形チューブ、リブドチューブ、螺旋形状チューブまたは螺旋状フィンを備えたチューブから成る群から選択される、[1]か[2]か[3]に記載のチューブ状流れモジュール。
[5] 前記チューブ状流れモジュールは、流体のための二つ以上の環状流れ経路(3)を形成している互いに同軸に配された螺旋特徴をもつ三つ以上の同心チューブ(1,2)を備えている、[1]ないし[4]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュール。
[6] 各環状流れ経路(3)と各環状空間(5,7)は、少なくとも一つの入口と少なくとも一つの出口を有している、[1]ないし[5]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュール。
[7] 一つ以上のアクセスポートまたは一つ以上のポート穴またはそれらの組み合わせが、環状流れ経路(3)または環状空間(5,7)へのアクセスを提供している、[1]ないし[6]に記載のチューブ状流れモジュール。
[8] ポート(10,12,14)は、流体の入口、流体の出口または道具のためのポートであり、ポート(10,12,14)は、環状流れ経路(3)または環状空間(5,7)に対して接線方向、径方向、軸方向または縦方向に配されている、[1]ないし[7]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュール。
[9] 連続環状螺旋特徴を有している前記チューブは、螺旋形状が形成された壁と付属螺旋状フィンを備えたチューブから成る群から選択される、[1]ないし[8]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュール。
[10] 前記連続環状螺旋特徴は、各環状流れ経路(3)を形成するのに適したピッチ(A)とすき間(B)と螺旋特徴高さ(C)を有している、[1]ないし[9]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュール。
[11] 流体のための環状流れ経路を定めている前記流れ経路は、二つの同心チューブ(1,2)の表面によって限定されていて、前記表面は、螺旋状波形として成形されていて、組み立てられたときにねじのように作用する、[1]ないし[10]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュール。
[12] [1]ないし[11]のいずれか一つに記載の少なくとも二つのチューブ状流れモジュールを備えているチューブ状流れモジュールシステムであり、前記チューブ状流れモジュールは、互いに直列に、並列にまたはそれらの組み合わせで連結されている、チューブ状流れモジュールシステム。
[13] 前記チューブ状流れモジュールシステムは、シェルおよびチューブシステムを形成しているシェルの内側にある、[12]に記載のチューブ状流れモジュールシステム。
[14] 化学反応のためのリアクターとしての、熱伝達のための熱交換器としての、分離または抽出のための接触器としての、またはそれらの組み合わせとしての、[1]ないし[11]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れモジュールまたは[12]ないし[13]のいずれかひとつに記載のチューブ状流れシステムの使用。
図1
図2
図3
図4