特許第6141457号(P6141457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141457
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】1工程の鼓膜切開チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/00 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   A61F11/00 350
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-556926(P2015-556926)
(86)(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公表番号】特表2016-511664(P2016-511664A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】US2013050931
(87)【国際公開番号】WO2014126609
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】13/764,875
(32)【優先日】2013年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515220362
【氏名又は名称】フリッチュ・マイケル・エイチ
【氏名又は名称原語表記】FRITSCH, Michael, H.
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】フリッチュ・マイケル・エイチ
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05207685(US,A)
【文献】 米国特許第06379323(US,B1)
【文献】 米国特許第04695275(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0209972(US,A1)
【文献】 米国特許第05643280(US,A)
【文献】 特開2008−148911(JP,A)
【文献】 米国特許第04650488(US,A)
【文献】 特開2008−061983(JP,A)
【文献】 特開2004−235983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/00 − 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の鼓膜に挿入され、そこにとどまる鼓膜切開チューブ(200)において、
本体であって、第1の端部分(202)と、第2の端部分(204)と、前記第1の端部分(202)と前記第2の端部分(204)との間に配された中心部分(206)と、前記第1の端部分(202)に隣接して配された第1の開口端部(220)、前記第2の端部分(204)に隣接して配された第2の開口端部(222)、および前記第1の開口端部(220)と前記第2の開口端部(222)との間に延びる長軸を有する、軸方向に延びる通路(218)と、を含む、本体を含み、
前記第1の端部分(202)は、大径の半径方向に延びるフランジ(226)を含み、
前記中心部分(206)は、前記鼓膜の組織を通って延び、かつ前記鼓膜の組織内にとどまるようなサイズの小径の部分を含み、
前記第2の端部分(204)は、前記第2の端部分(204)に隣接して配された大径の第2のフランジ(238)を含み、前記第2のフランジ(238)は、前記鼓膜切開チューブ(200)を前記鼓膜に挿入する間に前記鼓膜をナイフのように切り開くのに十分鋭いナイフ状切開部分(262)を有する、周辺エッジ(260)を含み、
前記第2のフランジ(238)は半径方向に延び、丸い先端エッジを有するより大きい前方部分(246)とより小さい後方部分(242)とを含み、
前記ナイフ状切開部分(262)は、前記前方部分(246)上に配され、鋸歯状エッジを含んで、前記第2のフランジ(238)が前記鼓膜を切り開く可能性を増大し、前記ナイフ状切開部分(262)が前記鼓膜を裂いたり破裂させたりする可能性を減少させる、
鼓膜切開チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、テーパー状の厚さを有し、前記後方部分(242)は、前記前方部分(246)より厚い、鼓膜切開チューブ。
【請求項3】
請求項1に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、前記軸方向に延びる通路(218)の前記長軸に対して斜角をなして配される平面に配される、鼓膜切開チューブ。
【請求項4】
請求項3に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、前記軸方向に延びる通路(218)の前記長軸に対し斜角をなして配され、
前記鼓膜切開チューブ(200)が鼓膜の外部表面に接して設置されて、前記外部表面が前記軸方向に延びる通路(218)の前記長軸に垂直な平面に配されると、前記前方部分(246)は、前記鼓膜の前記外部表面に対して90°未満の切開角度で平面に配される、鼓膜切開チューブ。
【請求項5】
請求項4に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記前方部分(246)の前記切開角度は、前記軸方向に延びる通路(218)の前記長軸が鼓膜の前記外部表面に対して垂直に保持されている場合に、30°〜70°である、鼓膜切開チューブ。
【請求項6】
哺乳動物の鼓膜に挿入され、そこにとどまる鼓膜切開チューブ(30)において、
本体であって、第1の端部分(32)と、第2の端部分(34)と、前記第1の端部分(32)と前記第2の端部分(34)との間に配された中心部分(36)と、第1の開口端部および第2の開口端部を有する軸方向に延びる通路(40)と、を含む、本体を含み、
前記第1の端部分(32)は、前記第1の端部分(32)の第1の端部に隣接して配された大径の半径方向に延びるフランジ(44)と、小径の部分(52)と、を含み、
前記第2の端部分(34)は、前記第1の端部分(32)に連結された第1の端部、および第2の端部(60、62)を有する、少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)を含み、前記第2の端部(60、62)は、前記鼓膜切開チューブ(30)を前記鼓膜に挿入する間、前記鼓膜を切り開くよう十分に鋭くされた、鋭利な表面を含み、
前記鼓膜切開チューブ(30)は、前記鼓膜切開チューブ(30)を受容し、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)を前記挿入位置に保持するためのチューブ状挿入ツール(80)をさらに含み、 前記チューブ状挿入ツール(80)は、前記鼓膜切開チューブ(30)を受容するための通路を有するチューブ(82)と、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)が鼓室に配されるところまで、前記鼓膜切開チューブ(30)を前記鼓膜に軸方向に押し込むように、前記チューブ(82)に挿入可能なプランジャー部材(84)と、を含む、 鼓膜切開チューブ。
【請求項7】
請求項6に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第1の端部分(32)内部の前記軸方向に延びる通路(40)は長軸を有し、
前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)は、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)前記軸方向に延びる通路(40)の前記長軸に平行に配される挿入位置と、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)前記軸方向に延びる通路(40)の前記長軸に対して斜角および垂直な角度のうちの一方で配されるメンテナンス位置と、の間で動くことができる、鼓膜切開チューブ。
【請求項8】
請求項6に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)は、前記第1の端部分(32)に蝶番式に連結され、
前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)は、前記メンテナンス位置に動かす抑制力がない場合、付勢される、鼓膜切開チューブ。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の技術分野〕
本発明は、医療装置に関し、より具体的には、患者に鼓膜切開チューブを挿入することに関連して使用される鼓膜切開チューブ装置(tympanostomy tube device)、および患者に鼓膜切開チューブを挿入する方法に関する。
【0002】
〔背景〕
大部分の低年齢の子供は、時々、耳痛に悩まされる。多くの場合、耳痛は、中耳に流体が蓄積することにより生じ、これは、耳の感染症の原因となる。通常、耳痛は、この中耳炎の治療に役立つ抗生物質を子供に与えることにより、治療され得る。
【0003】
残念ながら、抗生物質はすべての患者で良く効くわけではない。それは、抗生物質は感染症を治すのに役立つものの、一部の患者では、自分の中耳の中にかなり頻繁に流体が蓄積するため、中耳を曝気し、これにより流体の蓄積を防ぐのを助ける対策を講じる必要があるからである。この曝気は、流体を減少させ、また、蓄積した流体中で細菌が感染症を引き起こす可能性を減少させるのに役立ち、耳痛の再発を減少または排除するのに役立つ。
【0004】
このような患者を治療するため、中耳を長時間にわたり曝気された状態に保つため、および、内耳に流体が蓄積するのを防ぐために、しばしば、鼓膜切開チューブが、鼓膜に挿入されて、鼓膜を通って延びる。鼓膜切開チューブは、グロメット、耳用チューブ(ear tube)、均圧チューブ、PEチューブ、または鼓室開放チューブ(myringotomy tube)としても知られている。
【0005】
チューブを挿入する手術は、鼓室開放を含み、局所麻酔または全身麻酔下で行われる。鼓室開放は、鼓膜にごく小さな切開部を作り、流体の余分な蓄積により生じた圧力を解放するか、または膿(puss)を排出する外科処置であり、チューブは、鼓膜に挿入されて長期間とどまる。
【0006】
最も一般的に使用されるタイプの耳用チューブは、グロメットのように成形される。耳を開放したまま保ち長時間にわたり空気を通すことが必要であると医師が判断した場合、「T」字型チューブを使用する場合がある。それは、これらの「T」字型チューブは、2〜4年などの間、適所にとどまることができるためである。このようなチューブを作るための、一般的に好まれる材料は、シリコーンまたはテフロンなどのプラスチック材料である。以前は、ステンレス鋼のチューブおよび他の材料がポピュラーであったが、もはや、あまり使用されていない。
【0007】
子供の耳に耳用チューブを入れることは、非常に一般的な処置である。米国では、子供が全身麻酔を受ける最も一般的な理由は、そのような耳用チューブを子供の耳に挿入することであると、推定されている。耳用チューブ(鼓膜切開チューブ)は、一般に、長期間鼓膜内部にとどまり、通常は6カ月〜2年の間持ちこたえるが、「T」字型チューブは、4年以上持ちこたえることができる。耳用チューブは一般的に、鼓膜の皮膚が経時的に外耳道の壁に向かってゆっくりと移動するにつれて、鼓膜から自然に抜ける。鼓膜は通常、チューブの部位に穴を残さずに閉じるが、少数の患者では、穿孔部が存在し得る。
【0008】
チューブ挿入を行う従来の方法では、まず、鼓室開放切開部を作るための針状ナイフを外耳道に挿入することによって、鼓室開放切開部を作る。第二に、切開部を作った後、グロメット状耳用チューブを、鉗子でつかみ、グロメットの半分が、切開部を通して挿入されて、最終的に鼓膜内部にぶら下がって置かれ、グロメット内の通路により、耳道と鼓室との間に通気道が作られる。
【0009】
典型的な耳用チューブグロメットは、糸用スプールまたはワイヤ用スプールと同様に成形される。グロメットは、概して、円筒形の半径方向外向き表面を有する、小径の中心部分を含む。円筒形の半径方向外向き周辺エッジ(perimetral edge)を有する、第1の比較的大径のフランジが、小径の部分の一端部に置かれ、第2の、同様に構成された大径の部分が、小径の部分の第2の端部に置かれる。軸方向に延びる通路が、スプールの第1の端部と第2の端部との間に延び、概ね丸い形状を有する、概ね平坦な上面および下面を含む。
【0010】
鼓膜に挿入されると、第1の大径の部分は、鼓膜の外側に置かれ、第2の大径の部分は、鼓膜の内側に置かれる。小径の中心部分は、鼓膜を通って延びる。結果として、第1および第2の大径の部分は、グロメット状チューブが、鼓膜から切り離されるのを防ぎ、これにより、グロメットが鼓膜内部の位置内でぶら下がったまま保たれる。適切な位置に保持されたら、チューブの軸方向に延びる通路は、鼓膜の内表面と外表面との間を通過し、これによって、鼓膜のすぐ内側に位置する耳の部分を含め、中耳に対し曝気をもたらすことができる。
【0011】
このような耳用チューブおよび挿入装置は、それらが意図する目的を果たすが、改善の余地がある。具体的には、耳用チューブは概してサイズが小さいので、鼓膜にチューブを挿入するよう適切にチューブを操作することが非常に困難でやりにくくなる。特に、ナイフで鼓膜に先頃作った非常に小さい切開部にグロメットを挿入するようにグロメットを適切に調整する(line up)ことは、熟練した外科医であっても困難である。本質的に、医師は、ナイフを耳に出し入れして切開部を作り、その後に、耳の、ナイフで作ったばかりの同じ切開部にグロメットを挿入しなければならない。
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、出願人が現在知っているものより、スムーズかつ容易な耳用チューブの挿入処置を提供する可能性をもたらす、耳用チューブおよび挿入装置を提供することである。
【0013】
〔発明の概要〕
本発明によると、哺乳動物の鼓膜に挿入され、そこにとどまる鼓膜切開チューブが提供される。鼓膜切開チューブは、第1の端部分、第2の端部分、および第1の端部分と第2の端部分との間に配される中心部分を含む、本体を含む。軸方向に延びる通路が、第1の端部分に隣接して配される第1の開口端部、第2の端部分に隣接して配される第2の開口端部、および第1の開口端部と第2の開口端部との間に延びる軸を有する。第1の端部分は、比較的大径で概して半径方向に延びるフランジを含む。中心部分は、鼓膜を通って延び、かつ鼓膜の組織内に位置するようにサイズ決めされた、小径の部分を含む。第2の端部分は、第2の端部分に隣接して配された、比較的大径の第2のフランジを含む。第2のフランジは、鼓膜切開チューブを鼓膜に挿入する間、鼓膜を切り開くように十分鋭利にされた切開部分を有する、周辺エッジ(perimetral edge)を含む。
【0014】
遠位フランジ部分は、シャフト部分に偏心して連結されて、比較的細長い部分および比較的短い部分を含んでいる。細長い部分および比較的短い部分は、シャフト部分の概ね相対する側に配されている。比較的細長い部分は、ナイフ状エッジ表面を含み、ナイフ状エッジ表面は、鼓膜に切開部を切り込むことができ、鼓膜への鼓膜切開チューブの挿入を容易にするように構成される。好ましくは、遠位フランジは、シャフト部分の軸に対して約110〜150°の斜角をなして配されて、鼓膜を切り開くために遠位シャフト部分の細長い部分の切断エッジをより良好に位置付ける。
【0015】
鼓膜内部に代替的な実施形態の鼓膜切開チューブを挿入するには、まず、チューブを、鉗子などの適切な器具でつかむ。鉗子はその後、鼓膜切開チューブの切断エッジを、鼓膜に隣接させ、かつ鼓膜と接触させて設置するために用いられる。鼓膜切開チューブは、鉗子で内側に押されて、遠位フランジのナイフ状半径方向外側エッジを、鼓膜に突き通す。遠位フランジが鼓膜の内側の中耳に配され、シャフト部分が鼓膜を通って延び、かつ近位フランジが鼓膜の外に配されるところまで、鼓膜切開チューブは内側に動かされ続ける。好ましくは、遠位フランジの近位向き表面は、鼓膜の内側(内部)表面に寄りかかるように位置付けられ、これにより、鼓膜切開チューブをその位置で固定し、鼓膜切開チューブが鼓膜から早く除去されてしまうのを防ぐのを助ける。
【0016】
本発明の1つの特徴は、鼓膜に切開部を切り込むための切断エッジを有する遠位フランジを含むことである。切断エッジは、鼓膜を裂いたり破裂させたりせずに鼓膜組織にうまく切り込むために、微小の鋸歯状切れ込みを有し得る。この特徴には、チューブ自体が切開部を作ることを可能にし、それにより、鼓膜切開チューブの鼓膜への設置を、より容易に達成させるという利点がある。
【0017】
また、本発明によると、鼓膜切開チューブシステムの代替的な「T」字型チューブの実施形態が、開示される。鼓膜切開チューブは、鼓膜切開チューブおよび挿入装置を含む。挿入装置は、鼓膜切開チューブを受容するようにサイズ決めされた軸方向に延びる内部通路を有する、概ね円筒形の部材を含む。挿入装置は、挿入装置の遠位端部が鼓膜の外部に位置する表面に係合することができるところまで、医師が挿入装置を外耳道に挿入することができるよう、概して十分に小さい外径を有する。
【0018】
この代替的な「T」字型鼓膜切開チューブは、近位部分および遠位部分を含む。近位部分は、本質的に概ね管状であり、軸方向に延びる内部通路を含む。近位部分は、挿入装置の内部の軸方向に延びる通路内部に受容されるようにサイズ決めされた、外径(exterior diameter)を有する。
【0019】
鼓膜切開チューブはまた、少なくとも第1の脚部および第2の脚部を有する遠位部分を含む。第1および第2の脚部はそれぞれ、その特定の脚部を鼓膜切開チューブの近位部分の遠位端部に連結する近位端部と、遠位端部と、を含む。それぞれの少なくとも第1および第2の遠位に配された脚部の遠位端部は、鼓膜切開チューブを鼓膜に少なくとも部分的に通すことができるように鼓膜を切開することができる切断表面を含むように構成される。鼓膜切開チューブの遠位脚部は、第1および第2の脚部が近位部分と概ね同軸に配される挿入位置と、第1および第2の脚部がチューブの近位部分に対して斜角をなして配される、メンテナンス位置との間を、動くことができる。
【0020】
少なくとも第1および第2の遠位脚部は、鼓膜に接して、それらの挿入位置に配され得る。次に、第1および第2の遠位脚部の遠位先端部は、鼓膜を貫通し切開するために用いられることができる。これにより、第1および第2の遠位脚部が、事前の切開およびナイフブレードを必要とすることなく、鼓室内部および鼓膜の概ね内部に配されるところまで、遠位脚部を鼓膜に通すことができる。鼓膜切開チューブが鼓膜に挿入されると、鼓膜切開チューブの近位部分の一部が、鼓膜を通って延び、近位部分の近位端部は、鼓膜の概ね外部に位置付けられる。そのように位置付けられると、鼓膜切開チューブの遠位脚部は、それらの挿入位置からメンテナンス位置へと動いて、チューブを鼓膜に固定するのを助け、チューブが耳から外れるのを防ぐ。
【0021】
好ましくは、第1および第2の脚部は、通常それらの挿入位置からメンテナンス位置に動くように付勢されるよう形成される。さらに、遠位脚部は、復原力(memory)を有するプラスチックから形成されるべきであり、遠位脚部は、メンテナンス位置にあるとき、鼓膜切開チューブの近位部分の中央通路の軸に概ね垂直な線に沿って延びる。
【0022】
代替的な実施形態の鼓膜切開チューブの1つの特徴は、鼓膜を切開するためのナイフとして役立ち、かつ動作するように構成された表面を有する遠位脚部を含む。この特徴は、以前は2工程のプロセスだったものを、1工程のプロセスに変換するので、切開プロセスを単純にするという利点がある。前述のように、先行技術では、第1の工程で鼓膜に切開部を作るのに、一般的にナイフを用いる。先行技術の第2の工程は、その後、ナイフが外耳道から抜き取られた後で、作ったばかりの切開部にグロメットを挿入することである。
【0023】
代替的な「T」字型チューブの実施形態では、挿入チューブは、好ましくは鼓膜の外に、外部表面に接して設置される。鼓膜切開チューブは、遠位脚部がそれらの挿入位置に置かれた状態で、挿入装置の中央通路に挿入されており、遠位脚部は、近位部分と概ね同軸に配される。脚部のナイフ状遠位エッジは、その後、ナイフとして使用されて、鼓膜に切開部を作る。
【0024】
例えばピストンまたはプランジャーの作用を通じて、軸方向に鼓膜切開チューブを連続的に押すことにより、遠位脚部は、遠位脚部が耳の中耳部分(鼓室)内部に完全に配されるところまで、鼓膜を通って動くことができる。遠位脚部の外側付勢により、その後、遠位脚部は、遠位脚部が近位部分と軸方向に整列する挿入位置から、遠位脚部が近位部分の軸に対し好ましくはほぼ完全に垂直で、概ね「T」字型を形成するメンテナンス位置まで動く。遠位脚部がこの概ね垂直なメンテナンス位置に配されると、遠位脚部は、鼓膜の内部表面に係合し、これにより、耳からの取り外しもしくは押出し、または鼓膜から押しのけられることに対する耐性をチューブに持たせることができる。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によると、鼓室内に内向き表面を有し、耳道内に外向き表面を有する鼓膜に継続して位置するように、鼓膜切開チューブを鼓膜に挿入する方法が提供される。この方法は、鼓膜切開チューブを提供することを含み、鼓膜切開チューブは、第1の端部分と、第2の端部分と、第1の端部分と第2の端部分との間に配された中心部分と、第1の端部分に隣接して配された第1の開口端部、第2の端部分に隣接して配された第2の開口端部、および第1の開口端部と第2の開口端部との間に延びる軸を有する軸方向に延びる通路と、を含む本体を含む。第1の端部分は、比較的大径の、概ね半径方向に延びるフランジを含む。中心部分は、鼓膜の組織を通って延び、かつ鼓膜の組織内にとどまるようなサイズの小径の部分を含み、第2の端部分は、第2の端部分に隣接して配された、比較的大径の第2のフランジを含む。
【0026】
第1の端部は、鼓膜の外部に配されたままになることが意図されており、第2の端部は、鼓膜の内部に配される。第2のフランジは、鼓膜切開チューブを鼓膜に挿入する間に鼓膜を切り開くための鋭い切開部分を有する周辺エッジを含む。物体をつかむように動作可能な第1および第2の対向するブレードを有する鉗子が、提供される。この鉗子は、鼓膜切開チューブをつかむのに使用され、第1のブレードは、軸方向に延びる空洞内に配され、第2のブレードは、中心部分の外部に配される。鉗子は、第2のフランジの鋭い切開部分を、鼓膜の外向き表面に対して斜角をなして位置付けるのに使用される。鼓膜切開チューブは、内側方向に押しやられて、鋭い切開部分を鼓膜に係合させ、鼓膜を切り開く。鼓膜切開チューブは、鼓膜の中に位置付けられ、鼓膜切開チューブは、通路が、鼓室と耳道との間に空気を導くように動作可能な状態で、鼓膜の中にとどまる。
【0027】
本発明のこれらの他の特徴は、図面の詳細、および以下の図面の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【0028】
〔発明の詳細な説明〕
まず、図21を参照すると、耳およびその構成部分の概略的な表示が示されている。この図は、本発明の鼓膜用チューブ(tympanic tube)、および耳内部でのその設置を説明するための背景を提供するのに役立つよう、参照のため提供されたものである。
【0029】
鼓膜用チューブは、外耳道を通して挿入される。チューブは、鼓膜の外側(外部)表面に隣接して位置付けられ、その後、鼓膜を通して鼓室に押し込まれる。鼓室は、中耳としても知られている。十分に挿入されて鼓膜内に位置したとき、鼓膜用チューブは、鼓膜の内側(内部)表面に隣接して配された遠位部分と、鼓膜の外部表面に隣接して配され、かつ外耳道の中に位置する近位端部と、を含む。
【0030】
鼓膜切開チューブは、概ね円筒形の中心部分も含み、この中心部分は、鼓膜を通って延び、鼓膜切開チューブの鼓膜端部(tympanic ends)の遠位端部および近位端部を連結する。このように挿入されると、本発明の鼓膜切開チューブは、外耳道と鼓室との間に通気通路を提供することにより、中耳の曝気をもたらす。この曝気は、鼓室の中に蓄積する流体の量を減らすのに役立ち、これにより、鼓室内で起こる感染症の可能性を減少させるのに役立つ。中耳内での感染症は、しばしば患者に耳痛をもたらすので、中耳炎のつらさおよび/または数を減らすことは、患者の耳痛の減少につながる。
【0031】
先に既知である鼓膜切開チューブが、図1および図2に示されている。先行技術の鼓膜切開チューブ10は、近位部分12および遠位部分14を含む。チューブ10はまた、近位部分12の近位端部に位置する近位端部16、および遠位部分14の遠位端部に位置する遠位端部18も含む。中心部分20は、近位部分が遠位部分18に接合する、チューブ10のエリアを含む。軸方向に延びる通路22が、近位部分12を通って延び、中心部分20の開口端部において終端している。図2に示すように、チューブ10がその挿入位置にあるとき、軸方向に延びる通路22は、近位端部16と遠位端部18との間をずっと延びている。遠位部分14は、軸方向に延びる第1の遠位脚部材24、および軸方向に延びる第2の遠位脚部材26を含む。
【0032】
図2に示すように、挿入位置にあるとき、第1および第2の遠位脚部24、26は、近位部分12と概ね同軸に配されること、ならびに、第1および第2の遠位脚部24、26は、近位部分12と同じ一般的配置および構成を有することが、分かる。しかしながら、遠位脚部24、26は、図2に示すような、挿入位置14と、図1に示すようなメンテナンス位置との間を動くことができる。メンテナンス位置にあるとき、遠位脚部24、26は、近位部分12を通って延びている、軸方向に延びる通路22の軸に対して、概ね斜角をなして、好ましくは垂直に、配される。
【0033】
先行技術のチューブ10の挿入は、まず、鼓膜に切開部を作るためにナイフを用いることにより、行われる。先行技術のチューブ10は次に、遠位部分14の遠位脚部24、26が完全に鼓室に挿入されるところまで、鼓膜内部の、新たに切られた切開部を通して挿入される。前述のように、この挿入処置は、鼓膜へのナイフの挿入および取り外しを必要とし、その後にチューブをつかんで操作するのに使用される挿入器具が続く、非常にやりにくい2工程処置である。いったんチューブ10がうまく挿入されると、器具が、外耳道から取り外される。
【0034】
本発明の第1の実施形態の「T」字型鼓膜切開チューブ30を、図3図10に示す。鼓膜切開チューブ30は、近位部分32、遠位部分34、および中心部分36を含む。中心部分36は、遠位部分34が近位部分32に接合する部分を含む。
【0035】
軸方向に延びる通路40は、近位部分32を通って軸方向に延びる。チューブ30が図4に示すような挿入位置にあるとき、軸方向に延びる通路40はまた、遠位部分34を通って延びる。チューブ30はまた、近位部分32の近位端部に配された近位端部42と、遠位部分34の遠位端部に配された遠位端部43と、を含む。
【0036】
半径方向外側に延びるフランジ44が、耳用チューブ30の近位端部42に形成される。半径方向外側に延びるフランジは、近位向き端面46と、半径方向外向き周辺エッジ48と、を含む。軸方向遠位向き表面50が、近位向き端面46に対して反対の関係に配される。
【0037】
半径方向に延びるフランジ44は、鼓膜切開チューブ30で作る切開部より大きな直径を有するように設計される。この、より大きな直径の目的は、鼓膜切開チューブ30が挿入後に鼓膜上の適切な場所に確実にとどまるようにすることである。比較的大径のフランジ44は、鼓膜切開チューブが、鼓膜の切開部と係合した状態から外れて、また鼓膜を通って鼓室内へと、内側に動かないことを確実にするのに役立つ。
【0038】
近位部分32は、軸方向に延びる、半径方向外向きの概ね円筒形の表面52を含み、この表面52は、概して、近位部分32の近位端部から遠位端部まで延びる。
【0039】
遠位部分34は、第1の遠位脚部56および第2の遠位脚部58を含む、少なくとも2つの遠位に配された脚部を含んでいる。第1および第2の遠位脚部56、58は、それぞれ、第1および第2の遠位端部60、62を含む。第1および第2の遠位端部60、62は、切断表面を含む、ナイフ状の鋭いエッジ表面を有するように、傾斜しているか、または別様に構成されている。第1および第2の遠位脚部60、62は、チューブ30を鼓室に向けて内側に動かすように近位フランジ42の近位向き表面46に加えられる軸方向に向けられた力など、軸方向および内側に向けられた力を鼓膜切開チューブ30に及ぼす際に、鼓膜98を容易に貫通するのに十分鋭くなるように設計された、遠位端部60、62を有していなければならない。遠位端部60、62は、微小サイズの歯または鋸歯状切れ込みを備えて形成されて、装置の切断特性を改善し、かつ鼓膜の引き裂きまたは破裂を防ぐことができる。
【0040】
遠位端部60、62を含む切断エッジを使用することにより、別個の切開部を作るのにナイフを使用する必要性がなくなる。挿入は、2工程(すなわち、(1)切開、その後に続く(2)チューブ挿入)から、1工程(すなわち、一体型の切開および挿入)になる。図3および図4で最もよく示されているように、遠位脚部56、58は、挿入位置(図4)とメンテナンス位置(図3)との間を動くことができる。挿入位置(図4)では、遠位脚部56、58は、通路40の長軸と概ね同軸に配された位置をとる。挿入位置では、切断エッジ60、62は、軸方向内側に及ぼされる力が鼓膜切開チューブ30に加わった際に、鼓膜などの膜に切り込むように位置付けられる。
【0041】
挿入位置(図4)から、遠位脚部56、58は、図3に示すような、メンテナンス位置へと動くことができる。メンテナンス位置では、第1および第2の遠位脚部56、58それぞれの長軸は、通路40の長軸に対して少なくとも斜角をなして配される。好ましくは、図3に示すように、第1および第2の脚部56、58は、互いに概ね同軸に、かつ通路40の長軸に概ね垂直である軸に沿って、配される。
【0042】
図3に示すようなメンテナンス位置にあるとき、遠位脚部56、58はそれぞれ、外側(外)向き表面68、70と、内側(内)向き表面72、74と、を含む。「内側および外側(medial and lateral)」という指定は、これらの表面を説明するのに使用される。それは、メンテナンス位置にあり、耳に挿入されたとき、外側向き表面68、70が、外側を向いて、鼓膜98の内側向き表面に接して配されるためである。内側向き表面56、58は、中耳の内部で内側を向く。内側/外側(medially/lateral)の指定は、装置が挿入位置(図4)にあるときには必ずしも当てはまらず、それは、挿入位置では、外側向き表面68、70が、半径方向外向き表面となり、内側向き表面56、58が、半径方向内向き表面となるためであることに、注意されたい。
【0043】
本発明の鼓膜切開チューブ30を挿入する方法およびプロセスは、図6図10を参照して最もよく説明される。
【0044】
鼓膜切開チューブ30を鼓膜に挿入するためには、挿入ツールセット80を使用する。挿入ツールセット80は、ガイドチューブ部材82、およびプランジャーまたはピストン84を含む。挿入ツールのチューブ部材82は、概ねチューブ状の構成であり、好ましくは、円筒形の、半径方向外向き外部表面85を有する。概ね円筒形の、半径方向内向き表面86が、軸方向に延びる内部通路を画定し、内部通路は、近位端部88と遠位端部90との間に延び、近位端部88および遠位端部90の双方で開口している。この通路は、内部に位置付けられたプランジャー84を収容する。
【0045】
挿入ツール80は、近位端部88が外科医によりつかまれ操作されることができるように十分な距離だけ外耳道の外部に配された状態で、外耳道に挿入され得るように、サイズ決めされ位置付けられる。遠位端部90は、挿入チューブ80が十分挿入されると、鼓膜98の外側(外)向き表面94にぶつかり、かつ接触して、設置可能でなければならない。
【0046】
鼓膜98は概して、外側(外)向き表面94と、内側(内)向き表面100と、を含む。鼓膜98の外側向き表面94は、外耳道の内部終端として機能し、内側表面100は、鼓室102の壁として機能する。太鼓の皮のように、鼓膜98は、外耳道を横切って伸びる。
【0047】
プランジャー部材84は、挿入チューブ80に沿って軸方向内側方向に、鼓膜切開チューブ30を軸方向移動させるために設けられる。プランジャー84は、円筒形のロッドのように単純な何かを含み得る。あるいは、ロッドまたはプランジャー84は、注射器のプランジャーと同様に構築されたプランジャー型機構として形成されてもよい。
【0048】
プランジャー84の1つの好適な特徴は、適切にサイズ決めされることである。具体的には、プランジャーは、挿入チューブ80の内径より広い直径を有するフランジまたはヘッド部材110を有していなくてはならない。これは、プランジャー84が挿入チューブ80の中のある深さまで挿入されることを可能にするために行われなければならない。好ましくは、プランジャー84の長さ、および鼓膜切開チューブ80の長さは、プランジャー84を十分挿入したときに、ある方向に、かつ鼓膜切開チューブ30が鼓膜98内部に適切に位置するところまで、鼓膜切開チューブ30が軸方向移動しているように、相補的にサイズ決めされなければならない。プランジャー84は、円筒形本体部分108と、大径ヘッド110を含む近位端部110と、遠位端部112と、を含む。
【0049】
次に図6を参照すると、挿入チューブ80の遠位端部90が鼓膜98の外側表面94に寄りかかるところまで挿入チューブ80が耳道に挿入された位置において、鼓膜切開チューブ30およびプランジャー84が示されている。鼓膜切開チューブ30は、遠位脚部56、58が軸方向に延びる通路40の軸と概ね同軸の関係で配される挿入位置において、図示されている。
【0050】
プランジャーは、プランジャー84の近位端部110が挿入チューブ80の外部に配された状態で、その遠位端部112を鼓膜切開チューブ200の半径方向外側に延びるフランジ44の上面上に配し、かつこの上面と係合させている。図6および図7は、空間の制限により、プランジャー84の長さを実寸大で示していない。これらの空間制限がなければ、プランジャーのヘッド110は、挿入チューブ80の近位端部88からさらに外側に延びるものとして図示されたであろう。
【0051】
図7は、プランジャー84が軸方向内側に移動するところまで挿入処置が進んで、鼓膜切開チューブ30を軸方向内側に押すところを示す、進行図(progressive view)である。この鼓膜切開チューブ30の軸方向内側(遠位)の移動により、切断エッジ遠位端部60、62が鼓膜98を貫通し切開することが可能となっている。図7に示す位置では、遠位脚部56、58はそれらの挿入位置にあり、遠位端部60、62は、かろうじて鼓膜98を通って延び、切断エッジ60、62のみが、鼓室102内に出ている。
【0052】
図8を参照すると、プランジャー84が挿入チューブ80の内部通路内に(その許容される位置まで)十分に延びており、プランジャー84の遠位端部112が挿入チューブ80の遠位端部90に隣接していることが分かる。また、プランジャーヘッド110の遠位向き表面が、挿入チューブ80の近位端部88に寄りかかっていることに注目されたい。この位置で、半径方向外側に延びるフランジ44は、鼓膜98の外側表面94に寄りかかっているか、またはほぼ寄りかかっていなければならない。さらに、プランジャー84の近位部分32は、挿入チューブ80とほぼ同じ広がりを持ち、かつ挿入チューブ80内で内部に配されるように、位置付けられる。
【0053】
鼓膜切開チューブ30の中心部分および遠位部分34は、鼓室に配され、遠位脚部56、58の外側向き表面68、70(図3)は、鼓膜98の内側向き表面100に隣接して配され、恐らくは内側向き表面100に寄りかかっている。遠位脚部56、58は、挿入位置からメンテナンス位置に動いていることにも、注目されたい。メンテナンス位置では、第1および第2の遠位脚部56、58は、中央通路40の軸に対して斜角をなして配され、好ましくは、中央通路40の軸にほぼ垂直に配される。
【0054】
図9は、図8と概ね同様である。しかしながら、プランジャー84は、取り外されている。図10に最もよく示されているように、挿入チューブ80も取り外され、鼓膜切開チューブ30の最終静止位置が示されており、遠位脚部56、58は、それらのメンテナンス位置へと動いている。近位端部フランジ44の比較的大きな半径方向直径(relatively enlarged radial diameter)、および脚部56、58の比較的大きな半径方向直径により、鼓膜切開チューブ30は(メンテナンス位置にある場合)、鼓膜98の切開部内部を軸方向に動くことはできないことが分かるであろう。フランジ44および脚部56、58は、これにより、外側または内側にスライドすることによって鼓膜切開チューブ30が鼓膜98から外れるのを防ぐのに役立つ。軸方向に延びる通路40は、外耳道と鼓室102との間に通気チューブを提供し、その中に流体が蓄積されるのを防ぐのに役立つ。
【0055】
第1の代替的な実施形態のT字型チューブ400が、図22図25に示される。第1の代替的な実施形態のT字型チューブ400は、チューブ400が鼓膜を断裂させずに鼓膜を切開するのを容易にするため、チューブ400が鋸歯状遠位エッジを有するという事実を除き、図3図10に関して前述したT字型鼓膜切開チューブ30と概ね同様に構築される。鋸歯状エッジを使用することは、チューブ400の特定の他の変更を必要とするが、これについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0056】
第1の代替的な実施形態のT字型チューブ400は、大径の近位端部402と、中心部分404と、を含む。中心部分404は、中心部分404を通って概ね軸方向に延びる、中空の中央通路408を含む。チューブ400の遠位部分は、第1および第2の遠位脚部408、410を含む。図23図25に示すように、第1および第2の遠位脚部408、410は、中空ではなく、むしろ中実で、構造的剛性を高め、それらを、鼓膜の貫通に、より良好に適応させる。第1および第2の遠位脚部408、410はそれぞれ、突起付き端部(pronged end)412で終端しており、突起付き端部412の半径は、遠位に進むにつれて減少し、この端部は、フィリップススクリュードライバー(Phillips screwdriver)の端部を思い出させる形状を有している。突起付き端部412は、半径方向外向き切断表面を有する、一対の概ね軸方向に延びる鋸歯状フィン414を含む。
【0057】
2つの遠位脚部408、410は、概ね中心部分404の遠位端部から突起付き端部412の遠位端部まで延びる平面に沿って、分割されることが分かる。この平坦な切断により、突起付き端部412は、それぞれの第1および第2の遠位脚部408、410の2つの端部分から作られる。
【0058】
第2の代替的な実施形態のT字型鼓膜切開チューブ430が、やはり、大径の近位端部432、および中心部分434を含むものとして、図26図28Aに示されている。中心部分434は、中空の中央通路436を含む。断面の引き出し線(section call out)が図26に示されており、これは、図5‐5に沿った断面の見方で、使用者が図5を見ること(user view Fig. 5)を意味することが、分かるであろう。鼓膜切開チューブ430を示すために図5をこのように使用することで、鼓膜切開チューブ430がこの見方(view)では、鼓膜切開チューブ30と概ね同一であることが示される。
【0059】
第1および第2の遠位脚部440、442は、中心部分434の遠位部分に連結される。遠位脚部440、442は、鼓膜切開チューブ430がその挿入部分にあるとき、概ね軸方向に延び、鼓膜切開チューブ430が挿入されたメンテナンス位置にあるとき、約90°の角度まで延びるように動くことができる。
【0060】
第1の遠位脚部440は、鼓膜切開チューブ430の遠位端部で終端していない。むしろ、第1の遠位脚部440は、先端を切り取られた、尖らないように切られた端部(truncated, blunt cut end)441を有し、この端部441は、鼓膜切開チューブ430の、4つの突起付きの遠位端部444のすぐ近位の位置において第1の遠位脚部440を終端させている。この先端を切り取られた、尖っていない端部441により、図28に示すように、4つの突起付きのテーパー状遠位端部444が、単一の一体的部材から形成され、4つの突起を持つ、フィリップススクリュードライバーに似た形状を有している。突起付きのテーパー状遠位端部440は、全体的に、第2の遠位脚部442から形成される。壊れていない、テーパー状で突起付きの遠位端部444は、切れ目がないことにより、さらに多くの数の鋸歯状フィン446の使用を可能にすると、出願人には考えられている。
【0061】
鋸歯状フィン446は、テーパー状で4つの突起付きの遠位端部444のテーパー状の外表面に沿って概ね軸方向に延びており、半径方向外側に延びる切断表面を形成するように半径方向外側に延びる鋸歯状切れ込みを有している。第1の代替的な実施形態と同様に、複数の鋸歯状フィン446は、遠位円錐状端部444が鼓膜を切開する際に遠位円錐状端部444による鼓膜の切断を促進し、鼓膜が裂ける可能性を減少させる。
【0062】
第3の代替的な実施形態のT字型鼓膜切開チューブ460が、図29図32に示されている。図29図32に示す実施形態は、大径の近位端部462と、中心部分464と、を含む。中心部分464は、チューブ460の近位端部462にある開口部から、チューブ460の遠位端部までずっと延びる、軸方向に延びる中央通路466を含む。第1および第2の代替的な実施形態とは異なり、第3の代替的な実施形態460は、中実の遠位端部を含まない。
【0063】
第1および第2の遠位脚部468、480はそれぞれ、中心部分464のほぼ遠位端部から遠位に延びる。第1の遠位脚部468および第2の遠位脚部480は、それぞれの第1および第2の遠位脚部468、480の遠位切断部分470、482で終端している。第1の遠位脚部の遠位切断部分470は、半円筒形の外表面477および角度のついた鋸歯状内表面478を含む、概ね逆転した円錐形状を有することが分かる。同様に、遠位端部482も、概ね半円筒形の外表面484、および角度のついた鋸歯状内部486を含む。第1および第2の代替的な実施形態と同様に、鋸歯状内表面478、486は、鼓膜の道(meadis)をより良好に切り開くのに役立ち、鼓膜の断裂を軽減するのに役立つ。
【0064】
次に図33を参照すると、第4の実施形態のT字型チューブが図示されている。
【0065】
図33に示すTチューブ500は、近位フランジ部分502と、軸方向に延びる中央通路506を含む比較的小径の管状中心部分504と、を含む。第4の実施形態のTチューブ500も、第1の脚部分および第2の脚部分を含み、これらは、図33に示すような挿入位置と、脚部が中央通路506の長軸に概ね垂直な線に沿って延びるメンテナンス位置との間を動くことができる。
【0066】
切断先端部分512が、第2の脚部510に連結される。切断先端部分512は、取り外し可能な連結方法または固定連結方法のいずれかで、連結され得る。切断先端部分512は、鋸歯状エッジを含む。好ましくは、切断先端部分512は、溶ける材料または吸収性材料から作られる。
【0067】
吸収性材料は、体が経時的に自然に分解し吸収する材料である。吸収性縫合材料の例は、ガットなどの材料、ならびにポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、およびカプロラクトンなどの合成材料を含む。これらの吸収性材料は、加水分解、タンパク質分解酵素による分解などを含む、さまざまなプロセスによって、分解する。
【0068】
吸収性の切断先端部を利用する目的は、経時的に、切断先端部が吸収され、内耳の中に存在しなくなって、切断、剥離などを引き起こさないことである。
【0069】
吸収性の切断表面を備えた鼓膜切開チューブ516の別の変形が、図34に示されている。図34のチューブ516は、T字型チューブの鼓膜切開チューブではなく、どちらかというと、標準的なグロメット状鼓膜切開チューブ516である。鼓膜切開チューブ516は、近位フランジ518と、軸を有する中央通路522を含む小径の管状中心部分520と、を含む。遠位フランジ524が、比較的小径の中心部分520と比べて、比較的大きな直径を有し、鼓膜切開チューブ516の遠位端部に配されている。
【0070】
吸収性の鋸歯状エッジ切断先端部526は、近位部分528を含み、近位部分528は、シャフト状であり、遠位切断部材526を鼓膜切開チューブ516に連結するために中央通路522に挿入可能である。切断エッジ530は、概ねテーパー状の形状であり、鼓膜を裂かないように鼓膜をより良好に切り開くための、鋸歯状エッジ切断表面を含んでいる。図33および図34に示すチューブ500、516の切断ヘッド512、530は、円錐状の構成のものとして図示されているが、これらは、フィリップススクリュードライバーと同様に成形されてよく、それらの断面形状は、図27および図28に示すものと概ね同様に見える。
【0071】
概して、操作および挿入時、第1、第2、および第3の代替的な実施形態は、T字型鼓膜用チューブの第1の実施形態30に関連して前述したのと概ね同じように動作する。
【0072】
代替的なグロメット実施形態の鼓膜切開チューブ200が図11図20に示されている。代替的な実施形態の鼓膜切開チューブ200は、大径の近位端部202、大径の遠位端部204、および小径の中心部分206を含む。
【0073】
中心部分206は、好ましくは概ね円筒形の構成で、本質的に管状である。円筒形の小径の中心部分206は、概ね円筒形の外壁210および概ね円筒形の内壁216を含む。円筒形の内壁216は、チューブ200の近位端部202に隣接した近位開口部220と、遠位端部204に隣接して配された遠位開口部222と、を有する、軸方向に延びる通路218を画定する。
【0074】
軸方向に延びる通路218は、鼓膜切開チューブ200の長軸を定める。近位開口部220および遠位開口部222、ならびに通路18はすべて、開口しており、空気が、外耳、特に外耳道と、中耳、特に鼓室102との間を流れることができる。この空気の流れは、粘液および流体が内耳(鼓室)に蓄積するのを軽減することに役立ち、したがって、感染症および結果として生じる耳痛を阻止するのに役立つ。
【0075】
近位部分202は、半径方向に延びるフランジ226を含み、フランジ226は、近位向きの半径方向に延びる表面228と、反対側の遠位向きの半径方向に延びる表面230と、を含む(図11図14)。大径の半径方向に延びるフランジ226は、鼓膜切開チューブ200が設置された切開部を通って内側に鼓膜切開チューブ200が移動するのを防ぐのに役立つので、釘の頭部と同じような機能を果たす。半径方向に延びるフランジ226はまた、半径方向外向きエッジ表面232を含む。エッジ表面232は、四角にされたもの(being squared off)として示されているが、最終的な装置では、端が丸い表面232となることができる。
【0076】
鼓膜切開チューブ202の遠位部分204は、偏心的な遠位フランジ238を含み、遠位フランジ238は、概ね卵形の構成である。偏心的な遠位フランジ238は、軸方向に延びる通路218および中心部分206に対して偏心的な関係で設置され、遠位フランジ238は、比較的短い後方部分242、および比較的細長い前方切開部分246を含み、前方切開部分246は、鼓膜98を切り開く鼓膜切開チューブ202の切開エッジ262を含んで、鼓膜98に切開部を形成する。切断(切開)エッジ262は、卵形の遠位前方切開部分246の最も幅広の部分まで延びる(図11図13A図15)。鼓膜切開チューブ200は、同時に切開部を切り開き、かつ通過して、鼓膜切開チューブ200を鼓膜98に1工程で挿入する。
【0077】
鼓膜切開チューブの偏心的な遠位フランジ238は、軸方向に延びる通路218の軸に対して斜角をなして設置されることも、分かる。好ましくは、偏心的な遠位フランジ238は、鼓膜切開チューブ200の長軸に対して約110°〜150°の角度で配される。この遠位フランジ238の角度の付いた設置は、鼓膜98を切開し通過するために、鼓膜切開チューブ200の切断エッジ262を、視覚的および人間工学的によりよく位置付けるのに役立つ。
【0078】
偏心的な遠位フランジ238は、近位向きの上面250と、遠位向きの下面252と、を含む。遠位フランジ238は、切断エッジ262を有する前方部分246と、非切断エッジ後方部分268と、を含む、周辺表面260を含む。遠位フランジ238の厚さは、フランジ238のさまざまなエリアで変化する。好ましくは、フランジ238は、ナイフ状の先端エッジ266に隣接して、前方部分246では、概ねより薄く、また、より小さな後方部分242の後方エッジ268では、比較的尖っておらず、より厚くなるように、設計される。最も好ましくは、フランジ238は、ナイフのエッジのようであり、遠位フランジ238は、後方エッジ268において最も厚く、傾斜しており、厚さは、前方部分242へと前方に進むにつれて、減少し、フランジ238は、前方の先端エッジ266で最も薄くなる。
【0079】
偏心的なフランジ238は、鼓膜98を切り開くことができるよう、先端エッジ266で、かつ切断エッジ262全体に沿って、十分剛性で、鋭くなるように設計され得る材料から作らなければならない。この強靭性と鋭さは、プラスチック、複合体、または金属の遠位エッジのフランジ238で達成され得る。切断エッジ262は、フランジ238のエッジ260に沿って、先端エッジ266から、フランジ238の最も幅広の地点259(図15)まで延びて、より良い切断特徴を確実にし得ることを、理解されたい。また、エッジ262は、微小サイズの歯または鋸歯状切れ込みを備えて形成され、装置の切断特徴を改善し、穿刺による鼓膜の引き裂きまたは破裂を防ぐことができる。先端エッジ266は、鋭くするよりは、丸くなければならず、先端エッジ266は、鼓膜98を通した圧力穿刺、破裂、または細断ではなく、制御切断(controlled cut)を行うことも、さらに理解されたい。
【0080】
鼓膜切開チューブ200の動作を、図17図20を参照して説明する。まず、図17を参照すると、チューブ200は、外耳道(不図示)に挿入されるものとして図示されている。チューブの近位端部202は、鉗子でつかまれ、外科医は、遠位フランジ238が鼓膜98の外側表面に隣接して設置されるように、鼓膜切開チューブ200を外耳道内部の適切な位置へと操作することができる。好ましくは、薄い鉗子、例えばアリゲーター型(alligator type)のMiltex微小耳用鉗子が用いられ、鉗子の第1および第2のブレードは、第1のブレードが通路218に挿入されて内部円筒形表面216をつかむことができるよう十分に薄く、一方、第2のブレードは、中心部分の外部に配されて、外部円筒形表面210をつかむ。このグリップ配置および鉗子構成を通じて、外科医は、チューブ200の長軸218が鼓膜98の外側向き表面の平面に斜角をなして、好ましくはほぼ概ね垂直に配されるように、チューブを容易に位置付けることができる。
【0081】
切断遠位エッジ切開部分266は、鼓膜98の外側向き外表面94に隣接して設置されることも分かる。チューブ200(およびその軸方向に延びる通路)の軸は、鼓膜98の外側表面の平面に対して垂直からある角度をなして保持され、軸方向に延びる通路218の軸は、鼓膜98に対して約45°の角度で配される。
【0082】
鉗子273は次に、外科医により操作されて、小さく前後するナイフのような切断の動きで、鼓膜98の外側向き表面94に向かって、軸方向内側方向に動き、先端エッジ266は、鼓膜98の外側向き表面94に切り込み、切り開くことができる。後方切断エッジ262の残りの部分は、鼓膜98の切開された開口部をたどって進む。好ましくは、チューブの切断エッジ262の先端エッジ266は、鼓膜87を「貫通」または「穿刺」しないように設計されており、これは、鼓膜98の貫通または穿刺が、鼓膜98の破砕、細断、または破裂につながることがあるためである。先行技術のデザインで生じていた鼓膜の損傷により、現在好ましいアプローチは、鼓膜に開口部を切開するのにナイフを使用して、その後、チューブを適所に設置する二次的工程が続く「2工程」アプローチを含むことになった。
【0083】
先端エッジ266は、鼓膜98を通る、主要ナイフ状切断表面を一般にもたらす。しかしながら、切断表面262の全体は、図18に示すように、切断表面262の他のエリアにより係合された鼓膜のエリアにおいて、鼓膜を切るのにも役立つ。
【0084】
次に図19を参照すると、次の進行は、先端エッジ266が鼓室TC内に出ているが、近位エッジ202が依然として外耳道ACにとどまっているところまで、鉗子273が鼓膜切開チューブ200を軸方向前方(および内側)に動かしているところを示している。切開部の図示した幅は、大量の鼓膜物質を切り取ったことを示しているわけではないことに注意されたい。むしろ、先端エッジ266が鼓膜98の組織にスリット状切開部を作ることが想定され、組織は、半径方向外側に十分広く切られて、フランジ238が鼓膜98を通過することを可能にし、その後、鼓膜98の組織を鼓膜切開チューブ200の中心部分206の外側円筒形表面210に係合させることができる。切開部が治癒すると、円筒形表面210にぴったりと係合して、鼓膜切開チューブ206を鼓膜98内の適所に保持するのを助ける。
【0085】
次に図20を参照すると、鼓膜切開チューブ200は、その最終位置にあるところが図示されている。鼓膜切開チューブ200の近位部分202が外耳道の中に配されているのが分かる。近位(第1の)フランジ226、特に近位フランジ226の遠位内側向き表面230が、鼓膜98の外側の外向き表面94に寄りかかる。第1のフランジ226の直径は、鼓膜98を通って切られた切開部の直径より概して大きいので、フランジ226の幅および直径は、鼓膜切開チューブ200が鼓室内へと内側方向に移動するのを防ぐのに役立つ。
【0086】
遠位フランジ238は、鼓室102に挿入される。遠位の第2のフランジ238の直径は切開部の直径より大きいので、遠位フランジ238は、鼓膜切開チューブ200が外側方向へと鼓室TCから出て外耳道ACに入るのを防ぐのに役立つ。近位向き表面250は、鼓膜98の内側向き表面100に係合し、これに接して位置する。偏心的なフランジ238の斜角により、縮小された後方部分242は、より遠位に配された前方先端エッジ部分246よりも、鼓膜98の内側表面100に、しっかりと密接して係合する。
【0087】
言及した特定の好適な実施形態と共に本発明を詳細に説明してきたが、本発明の範囲および趣旨は、本明細書に記載した装置の、改変、変形、および等価物を包含することが認識されるであろう。
【0088】
〔実施の態様〕
(1) 哺乳動物の鼓膜に挿入され、そこにとどまる鼓膜切開チューブ(200)において、
本体であって、第1の端部分(202)と、第2の端部分(204)と、前記第1の端部分(202)と前記第2の端部分(204)との間に配された中心部分(206)と、前記第1の端部分(202)に隣接して配された第1の開口端部(220)、前記第2の端部分(204)に隣接して配された第2の開口端部(222)、および前記第1の開口端部(220)と前記第2の開口端部(222)との間に延びる軸を有する、軸方向に延びる通路(218)と、を含む、本体を含み、
前記第1の端部分(202)は、大の半径方向に延びるフランジ(226)を含み、
前記中心部分(206)は、前記鼓膜の組織を通って延び、かつ前記鼓膜の組織内にとどまるようなサイズの小径の部分を含み、
前記第2の端部分(204)は、前記第2の端部分(204)に隣接して配された大径の第2のフランジ(238)を含み、前記第2のフランジ(238)は、前記鼓膜切開チューブ(200)を前記鼓膜に挿入する間に前記鼓膜をナイフのように切り開くのに十分鋭いナイフ状切開部分(262)を有する、周辺エッジ(260)を含む、鼓膜切開チューブ。
(2) 実施態様1に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は半径方向に延び丸い先端エッジを有するより大きい前方部分(246)とより小さい後方部分(242)と、を含む、鼓膜切開チューブ。
(3) 実施態様2に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、テーパー状の厚さを有し、前記後方部分(242)は、前記前方部分(246)より厚い、鼓膜切開チューブ。
(4) 実施態様3に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記ナイフ状切開部分(262)は、前記前方部分(246)上に配され、鋸歯状エッジを含んで、前記第2のフランジ(238)が前記鼓膜を切り開く可能性を増大し、前記切開部分(262)が前記鼓膜を裂いたり破裂させたりする可能性を減少させる、鼓膜切開チューブ。
(5) 実施態様4に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、前記軸方向に延びる通路(218)前記長軸に対して斜角をなして配される平面に配される、鼓膜切開チューブ。
【0089】
(6) 実施態様5に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、前記軸方向に延びる通路(218)の前記長軸に対し斜角をなして配され、
前記鼓膜切開チューブ(200)が鼓膜の外部表面に接して設置されて、前記外部表面が前記軸方向に延びる通路(218)前記長軸に垂直な平面に配されると、前記前方部分(246)は、前記鼓膜の前記外部表面に対して90°未満の切開角度で平面に配される、鼓膜切開チューブ。
(7) 実施態様6に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記前方部分(246)の前記切開角度は、前記軸方向に延びる通路(218)の軸が鼓膜の前記外部表面に対して垂直に保持されている場合に、30°〜70°である、鼓膜切開チューブ。
(8) 実施態様1に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、テーパー状の厚さを有し、前記後方部分(242)は、前記前方部分(246)より概して厚い、鼓膜切開チューブ。
(9) 実施態様1に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記切開部分(262)は、前記前方部分(246)上に配され、鋸歯状エッジを含んで、前記第2のフランジ(238)が前記鼓膜を切り開く可能性を増大し、前記切開部分が前記鼓膜を引き裂く可能性を減少させる、鼓膜切開チューブ。
(10) 実施態様1に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、前記軸方向に延びる通路(218)の軸に対して斜角をなして配された平面に配される、鼓膜切開チューブ。
【0090】
(11) 実施態様1に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第2のフランジ(238)は、前記軸方向に延びる通路(218)の前記軸に対して斜角をなして配され、
前記鼓膜切開チューブ(200)が鼓膜の外部表面に接して設置されて、前記外部表面が前記軸方向に延びる通路(218)の長軸に概ね垂直な平面に配されると、前記前方部分(246)は、前記鼓膜の前記外部表面に対して90°未満の切開角度で配される、鼓膜切開チューブ。
(12) 哺乳動物の鼓膜に挿入され、そこにとどまる鼓膜切開チューブ(30)において、
本体であって、第1の端部分(32)と、第2の端部分(34)と、前記第1の端部分(32)と前記第2の端部分(34)との間に配された中心部分(36)と、第1の開口端部および第2の開口端部を有する軸方向に延びる通路(40)と、を含む、本体を含み、
前記第1の端部分(32)は、前記第1の端部分(32)の第1の端部に隣接して配された大径の半径方向に延びるフランジ(44)と、小径の部分(52)と、を含み、
前記第2の端部分(34)は、前記第1の端部分(32)に連結された第1の端部、および第2の端部(60、62)を有する、少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)を含み、前記第2の端部(60、62)は、前記鼓膜切開チューブ(30)を前記鼓膜に挿入する間、前記鼓膜を切り開くよう十分に鋭くされた、鋭利な表面を含む、鼓膜切開チューブ。
(13) 実施態様12に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記第1の端部分(32)内部の前記軸方向に延びる通路(40)は、軸を有し、
前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)は、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)が前記軸方向に延びる通路(40)の前記長に平行に配される挿入位置と、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)が前記軸方向に延びる通路(40)の前記長軸に対して斜角および垂直な角度のうちの一方で配されるメンテナンス位置と、の間で動くことができる、鼓膜切開チューブ。
(14) 実施態様13に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記鼓膜切開チューブ(30)を受容し、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)を前記挿入位置に保持するための、チューブ状挿入ツール(80)をさらに含む、鼓膜切開チューブ。
(15) 実施態様14に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記チューブ状挿入ツール(80)は、前記鼓膜切開チューブ(30)を受容するための通路を有するチューブ(82)と、前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)が鼓室に配されるところまで、前記鼓膜切開チューブ(30)を前記鼓膜に軸方向に押し込むように、前記チューブ(82)に挿入可能なプランジャー部材(84)と、を含む、鼓膜切開チューブ。
【0091】
(16) 実施態様15に記載の鼓膜切開チューブにおいて、
前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)は、前記第1の部分(32)に蝶番式に連結され、
前記少なくとも第1の移動可能脚部(56)および第2の移動可能脚部(58)は、前記メンテナンス位置に動かす抑制力がない場合、付勢される、鼓膜切開チューブ。
(17) 鼓室内の内向き表面および耳道内の外向き表面を有する鼓膜に鼓膜切開チューブ(200)を挿入し、そこに継続してとどまらせる方法において、
第1の端部分(202)と、第2の端部分(204)と、前記第1の端部分(202)と前記第2の端部分(204)との間に配された中心部分(206)と、前記第1の端部分(202)に隣接して配された第1の開口端部(220)、前記第2の端部分(204)に隣接して配された第2の開口端部(222)、および前記第1の開口端部(220)と前記第2の開口端部(222)との間に延びる軸を有する、軸方向に延びる通路(218)と、を含む、本体を含む鼓膜切開チューブ(200)を提供する工程であって、前記第1の端部分(202)は、比較的大径の、概ね半径方向に延びるフランジ(226)を含み、前記中心部分(206)は、前記鼓膜の組織を通って延び、かつ前記鼓膜の組織内にとどまるようなサイズの小径の部分を含み、前記第2の端部分(204)は、前記第2の端部分(204)に隣接して配された比較的大径の第2のフランジ(238)を含み、前記第2のフランジ(238)は、前記鼓膜切開チューブ(200)を前記鼓膜に挿入する間に前記鼓膜を切り開くための鋭い切開部分(262)を有する、周辺エッジ(260)を含む、工程と、
物体をつかむように動作可能な第1および第2の対向するブレードを有する鉗子(273)を提供する工程と、
前記鉗子(273)を使用して前記鼓膜切開チューブ(200)をつかむ工程であって、前記第1のブレードは、前記軸方向に延びる空洞(218)に配され、前記第2のブレードは、前記中心部分(206)の外部に配される、工程と、
前記鉗子(273)を使用して、前記第2のフランジ(238)の前記鋭い切開部分(262)を、前記鼓膜の前記外向き表面に対して斜角に位置付ける工程と、
前記鼓膜切開チューブ(200)を内側方向に押しやって、前記鋭い切開部分(262)を前記鼓膜に係合させて前記鼓膜を切り開く工程と、
前記通路が前記鼓室と前記耳道との間に空気を導くように動作可能な状態で前記鼓膜切開チューブ(200)が前記鼓膜内にとどまるように、前記鼓膜切開チューブ(200)を前記鼓膜内に位置付ける工程と、
を含む、方法。
(18) 実施態様17に記載の鼓膜切開チューブ(200)を挿入する方法において、
前記鼓膜切開チューブ(200)を位置付ける工程は、前記第2のフランジ(238)が前記鼓室内にとどまり、前記第1のフランジ(226)が前記外耳道内にとどまり、かつ前記中心部分(206)が前記鼓膜を通って延びるように、前記鼓膜切開チューブ(200)を前記鼓膜に位置付ける工程を含む、方法。
(19) 実施態様18に記載の鼓膜切開チューブを挿入する方法において、
前記鼓膜切開チューブ(200)を前記鼓膜内に位置付ける工程は、前記第1のフランジ(226)が前記外耳道内にとどまり、前記第2のフランジ(238)が前記鼓室内にとどまり、かつ前記中心部分(106)が前記鼓膜を通って延びるように、前記鼓膜切開チューブ(200)を位置付ける工程を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】メンテナンス位置にある先行技術の「T」字型鼓膜切開チューブの、部分概略側面図である。
図2】挿入位置にある図1の先行技術の「T」字型鼓膜切開チューブの側面図である。
図3】メンテナンス位置で示された、本発明の「T」字型鼓膜切開チューブの側面図である。
図4】挿入位置で示された、図3の本発明の鼓膜切開チューブの側面図である。
図5図4の線5−5に沿った断面図である。
図6】鼓膜切開チューブを鼓膜に挿入する直前における、外耳道に挿入された「T」字型鼓膜切開チューブおよび挿入ツールの、部分断面側面図である。
図7】鼓膜に挿入されて、鼓膜を通って延びているときの、鼓膜切開チューブを示す、部分断面側面進行図(side, partly sectional, progressive view)である。
図8】本発明の「T」字型鼓膜切開チューブおよび挿入ツールの側面図であり、鼓膜に完全に挿入された鼓膜切開チューブを示しており、鼓膜切開チューブは、メンテナンス位置で示されている。
図9】鼓膜に完全に挿入され、メンテナンス位置にある鼓膜切開チューブを示す、部分断面側面図であり、プランジャーが、挿入チューブから取り外されている。
図10】鼓膜に完全に挿入された「T」字型鼓膜切開チューブを示す断面図であり、鼓膜切開チューブはメンテナンス位置にあり、挿入チューブおよびプランジャーは取り外されている。
図11】第1の代替的な実施形態の「グロメット」鼓膜切開チューブの斜視図である。
図12図11の線12−12に沿った断面図である。
図13図11に示す代替的な実施形態の鼓膜切開チューブの、幾分概略的な側面図である。
図14図11に示す鼓膜切開チューブの上面図である。
図15図11に示す鼓膜切開チューブグロメットの実施形態の底面図である。
図16図14の線16−16に沿った断面図である。
図17】グロメット実施形態の鼓膜切開チューブの部分概略側面図であり、チューブは、まさに鼓膜に挿入される位置にあるところが示されている。
図18】鼓膜を部分的に通って延びる鼓膜切開チューブを示していることを除き、図17と同様の側面図である。
図19】鼓膜に次第に挿入されている鼓膜切開チューブを示す、進行図(progressive view)である。
図20】本発明の鼓膜に完全に挿入された、グロメット実施形態の鼓膜チューブを示す、側面図である。
図21】人間の耳の解剖学的構造の線図である。
図22】鼓膜を通して挿入されたときに鼓膜の断裂を軽減するのを助ける鋸歯状切断表面を有する、本発明の第1の代替的な実施形態の「T」字型鼓膜切開チューブの側面図である。
図23図22の線23‐23に沿った断面図である。
図24図22の線24‐24に沿った断面図である。
図25図24の線25‐25に概ね沿った、拡大断面図である。
図26】鼓膜を通して挿入されたときに鼓膜の断裂を軽減する鋸歯状切断表面を含む、第2の代替的な実施形態の「T」字型鼓膜切開チューブである。
図27図26の線27‐27に概ね沿った断面図である。
図28図26の線28‐28に概ね沿った断面図である。
図28A図28の線28A‐28Aに概ね沿った、拡大断面図である。
図29】切断を容易にし、かつ鼓膜切開チューブが鼓膜を通して挿入されるときに鼓膜の断裂を軽減する鋸歯状切断エッジを有する、本発明の第3の代替的な実施形態の「T」字型鼓膜切開チューブの正面図である。
図30図29に示す第3の代替的な実施形態の鼓膜切開チューブの側面図である。
図31図30の線31‐31に概ね沿った断面図である。
図32図30の線32‐32に概ね沿った断面図である。
図33】鼓膜の損傷を軽減する鋸歯状切断表面と、溶ける/吸収性材料から形成される切断部分と、を含む、第4の代替的な実施形態の「T」字型鼓膜切開チューブである。
図34】溶けて/吸収性で、取り外し可能な切断部分を含む、代替的な実施形態のグロメット型鼓膜切開チューブである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図28A
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図34