特許第6141486号(P6141486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6141486
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】装身具
(51)【国際特許分類】
   A44C 25/00 20060101AFI20170529BHJP
   A44C 17/02 20060101ALI20170529BHJP
   A44C 1/00 20060101ALI20170529BHJP
   A44C 9/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A44C25/00
   A44C17/02
   A44C1/00
   A44C9/00
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-101313(P2016-101313)
(22)【出願日】2016年5月20日
【審査請求日】2016年6月9日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515184581
【氏名又は名称】永嶋 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100194098
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 良一
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−163039(JP,A)
【文献】 特開2007−167395(JP,A)
【文献】 特開2012−161564(JP,A)
【文献】 特開2007−202721(JP,A)
【文献】 米国特許第05950456(US,A)
【文献】 実開昭59−134412(JP,U)
【文献】 特開2009−005938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 1/00− 3/00
A44C 7/00−27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾物と、該装飾物を揺動可能に支持する補助具とを備えた装身具であって、
前記装飾物を前記補助具に対して揺動可能に吊り下げるための吊下部を備え、
前記補助具が、
基体と、
該基体から前記装飾物に向けて設置され、前記吊下部を支持することで前記装飾物を揺動可能にする支持部とを備え、
前記装飾物または前記補助具の少なくとも一方に錘部を備え、
該錘部が着脱可能であり、
前記装飾物の重心をゼロ点とするXYZ座標系において、前記支持部と前記吊下部との各係合部の中心点の各XYZ座標値の平均座標を示す平均点が、前記装飾物の重心より上部に位置し、
前記平均点が、前記装飾物の重心を通る鉛直線上、あるいは該鉛直線上から偏芯した位置に配置されて、前記装飾物の正面が、前記装飾物の正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の角度や向きに調節されていることを特徴とする装身具。
【請求項2】
前記装飾物が、装飾物本体と、該装飾物本体を保持する保持手段とを備え、
前記吊下部が、前記装飾物の正面に位置する看者から見えないように前記保持手段の背面に設けられていることを特徴とする請求項記載の装身具。
【請求項3】
前記基体が、前記装飾物の背面に設けられ、正面視における前記装飾物の外形形状より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の装身具。
【請求項4】
前記装飾物と前記補助具とを吊り下げるための保持部が設けられ、
該保持部が、前記装飾物と前記補助具とを含む全体の重心の鉛直線上、又は該鉛直線上から偏芯した位置に設置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の装身具。
【請求項5】
前記装飾物の周囲に、装飾枠が配置され、
該装飾枠が前記装飾物に固定されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の装身具。
【請求項6】
前記装飾物の周囲に、装飾枠が配置され、
該装飾枠が前記基体に固定されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装身具に関し、より詳細には、宝石等からなる装飾物が揺動可能に設けられ、装飾物の正面を、正面に位置する看者からみて審美的に適切な所定の角度や向きに調節できる装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
宝石や金銀等の装飾品は、光を反射することで輝き、見る人を魅了する。そして、装飾品が揺動することで、その輝きに微妙な変化が生じ、さらに美しさが増すため、装飾品が揺動しやすいように構成された装身具が提案されている。
【0003】
例えば、宝石に少なくとも1つの貫通孔が形成され、貫通孔に挿通されると共に装飾具本体に連結されて宝石が装飾具本体に揺動可能に支持された連結部を備えることで、宝石が揺動する装身具が提案されている(下記の特許文献1)。
【0004】
また、ダイヤモンド等が揺動するように、ダイヤモンド等を回動可能に2点で支持するフレームが設けられた装身具が提案されている(下記の特許文献2)。
【0005】
さらには、ダイヤモンド等が揺動するように、ダイヤモンド等を回動可能に2点で支持するフレームが設けられ、該2点が装飾物の重心に対して上方位置になるように、装飾物に錘部を取り付けた装身具が提案されている(下記の特許文献3)。
【0006】
[発明が解決しようとする課題]
上記特許文献1、2、3に提案されている装身具では、宝石あるいは宝石を支持した装飾体の揺動機構を支持するための、宝石を支える台座やフレームを、該宝石の周囲に必ず設けなければならず、これらが装身具をデザインする上での大きな制限となっており、また装身具の審美的価値を低下させる要因の一つとなっていた。
【0007】
さらには、正面に位置する看者からみて、装飾体の正面を、宝石が最も美しく見える角度に自在に調整することができるものではなかった。ここで、「装飾体の正面」とは、装飾体の看者に見せようとする側を示している。
また、特許文献3の錘部は、ダイヤモンド等を回動可能に支持する2点を、装飾物の重心より上部に位置させる機能を有するものであり、正面に位置する看者からみて、装飾体の正面を、宝石が最も美しく見える角度や向きに自在に調整する機能は有していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−61336号
【特許文献2】特許5424435号
【特許文献3】特許5279324号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、揺動可能で、正面の看者から見て最も審美的な方向に装飾物の正面を向ける機能を有し、デザインの自由度や審美的価値を一層高めることができ、装飾物の輝きの変化をより幻想的で、より魅惑的なものとすることができる装身具を提供することを目的としている。
【0015】
上記目的を達成するために本発明に係る装身具()は、装飾物と、該装飾物を揺動可能に支持する補助具とを備えた装身具であって、前記装飾物を前記補助具に対して揺動可能に吊り下げるための吊下部を備え、前記補助具が、基体と、該基体から前記装飾物に向けて設置され、前記吊下部を支持することで前記装飾物を揺動可能にする支持部とを備え、前記装飾物または前記補助具の少なくとも一方に錘部を備え、該錘部が着脱可能であり、前記装飾物の重心をゼロ点とするXYZ座標系において、前記支持部と前記吊下部との各係合部の中心点の各XYZ座標値の平均座標を示す平均点が、前記装飾物の重心より上部に位置し、前記平均点が、前記装飾物の重心を通る鉛直線上、あるいは該鉛直線上から偏芯した位置に配置されて、前記装飾物の正面が、前記装飾物の正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の角度や向きに調節されていることを特徴としている。
上記装身具()によれば、前記装飾物を揺動可能に保持し、さらに、前記装飾物の重心をゼロ点とするXYZ座標系において、前記支持部と前記吊下部との各係合部の中心点の各XYZ座標値の平均座標を示す平均点が、前記装飾物の重心より上部に位置し、前記平均点が、前記装飾物の重心を通る鉛直線上、あるいは該鉛直線上から偏芯した位置に配置されることによって、前記装飾物の正面が、前記看者から見て審美的に適切な所定の角度や向きに調節されているので、正面に位置する看者から見て、前記装飾物の正面を、宝石等からなる前記装飾物が最も美しく見える方向に向けることができるとともに、前記装飾物の小刻みな揺動が促され、リズミカルな揺動によって、前記装飾物の輝きの変化をより幻想的で、より魅惑的なものとすることができる。
また、前記装飾物と前記補助具とが所定の均衡状態となるように、前記装飾物または前記補助具の少なくとも一方、すなわち前記装飾物または前記補助具、あるいは両者に前記錘部が設けられ、該錘部により前記所定の均衡状態が調整されているので、例えば、正面に位置する看者から見て、前記装飾物の正面が、宝石等からなる前記装飾物が最も美しく見える角度や向きとなるように、当該装身具全体の重量バランスを適切に調整することができる。さらには、前記錘部の重量や数量、取り付け位置によって、前記装飾物の振幅や周期などの揺動状態を変えることができる。
さらに、前記錘部が着脱可能に構成されているので、前記錘部の位置や数量、重量などを調整することで、装着者が自由に、前記装飾物の正面の角度や向きおよび振幅や周期などの揺動状態を調整することができる。
また本発明に係る装身具()は、上記装身具(1)において、前記装飾物が、装飾物本体と、該装飾物本体を保持する保持手段とを備え、前記吊下部が、前記装飾物の正面に位置する看者から見えないように前記保持手段の背面に設けられていることを特徴としている。
【0016】
上記装身具()によれば、前記吊下部が、前記装飾物の正面に位置する看者から見えないように設けられているため、前記装飾物を宙に浮いているように見せることができるため、装身具の審美的価値を一層高めることができる。
【0017】
また本発明に係る装身具()は、上記装身具(1)又は(2)において、前記基体が、前記装飾物の背面に設けられ、正面視における前記装飾物の外形形状より小さいことを特徴としている。
【0018】
上記装身具()によれば、前記基体が、前記装飾物の背面に設けられ、正面視における前記装飾物の外形形状より小さいので、正面の看者に前記装飾物のみを見せることが可能になる。そのため、正面に位置する看者に、前記装飾物のみが揺動している状態を見せることができ、これにより、前記補助具と前記装飾物とを統一的なデザインにする必要がなく、前記装飾物のデザインの自由度を高めることができ、装身具の審美的価値も一層高めることができる。
【0019】
また本発明に係る装身具()は、上記装身具(1)〜()のいずれかにおいて、前記装飾物と前記補助具とを吊り下げるための保持部が設けられ、該保持部が、前記装飾物と前記補助具とを含む全体の重心の鉛直線上、又は該鉛直線上から偏芯した位置に配設されていることを特徴としている。
【0020】
上記装身具()によれば、前記装飾物をネックレスやピアス、イヤリングのように、前記装飾物と前記補助具とを吊り下げて使用する場合であり、かつ、前記保持部が、前記装飾物と前記補助具とを含む全体の重心の鉛直線上に配設されている場合には、前記装飾物の略正面を常に前記所定の角度や向きに設定することができる。
または、前記保持部が、前記装飾物と前記補助具とを含む全体の重心の鉛直線上から偏芯した位置に配設されることによって、後述する装身具()で、前記装飾物の周囲に設置される装飾枠を、前記看者から見て審美的に適切な所定の向きや角度に調節することができる。
【0021】
また本発明に係る装身具()は、上記装身具(1)〜()のいずれかにおいて、前記装飾物の周囲に、装飾枠が配置され、該装飾枠が前記装飾物に固定されていることを特徴としている。
【0022】
上記装身具()によれば、前記装飾物の周囲に、前記装飾枠が配置され、該装飾枠が前記装飾物に固定されているので、前記装飾物と前記装飾枠とを一体構造として揺動させることができ、また、前記装飾物と前記装飾枠を合わせた全体の正面を、正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の角度や向きに調節することができる。
たとえば、前記装飾物がダイヤモンドなどの宝石を含む場合、中央にダイヤモンドを配置し、その周囲に前記装飾枠を設け、該装飾枠の正面に小さなダイヤモンドが散りばめられたものとすることで、正面の看者に、中央のダイヤモンドと前記装飾枠に散りばめられた小さなダイヤモンド群を含めた全体を一つの大きなダイヤモンドのように見せるように、デザインを施すことができる。上記装身具()によれば、このようなデザインでも、中央のダイヤモンドと前記装飾枠に散りばめられた小さなダイヤモンド群を一体構造として取り扱うことが可能となるため、それらを一体構造として揺動させ、かつ前記装飾枠を含めた正面全体を正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の角度や向きに調節することができる。
【0023】
また本発明に係る装身具()は、上記装身具(1)〜()のいずれかにおいて、前記装飾物の周囲に、装飾枠が配置され、前記装飾枠が前記基体に固定されていることを特徴としている。
【0024】
上記装身具()によれば、揺動する前記装飾物の周囲に、揺動しない前記装飾枠を設けることができる。また、前記装飾枠は自由にデザインすることが可能であるため、揺動しない装飾枠と、揺動する前記装飾物とを合わせた全体の自由なデザインが可能となり、それにより装身具の審美的価値を一層高めることができる。かつ装身具()と組み合わせて、装身具()をネックレスやピアス、イヤリングなどのように吊り下げて使用する場合、装身具()を吊り下げるための前記保持部が、前記装飾物と前記補助具とを含む全体の重心の鉛直線上、又は該鉛直線上から偏芯した位置に配設することによって、前記装飾枠を正面に位置する看者からみて審美的に適切な所定の角度や向きに調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態(1)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
図2】(a)〜(c)は、実施の形態(1)に係る装身具における吊下部と支持部との別の係合部の形態例を示した平面図である。
図3】実施の形態(2)に係る装身具を示す図であり、(a−1)、(a−2)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
図4】実施の形態(3)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
図5】実施の形態(4)に係る装身具を示す図であり、(a−1)、(a−2)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
図6】実施の形態(5)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
図7】実施の形態(6)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
図8】実施の形態(7)に係る装身具を示す図であり、(a−1)、(a−2)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る装身具の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明に関する良好な一例を開示するものであり、本発明が各実施の形態に限定されるものではない。例えば、各実施の形態において開示する装身具の形状や構造等は、良好な一例を示すに過ぎず、その他の可能性を否定するものではない。
【0027】
本発明に係る装身具は、宝石や貴金属等に細工を施した装飾物を揺動可能にし、該装飾物の正面を、正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の角度や向きに調節できる装身具であり、特にネックレス、ブローチ、ピアス、イヤリング、ブレスレット等への使用に適したものであるが、他の種の装身具にも本発明を適用することは勿論可能である。
【0028】
図1は、実施の形態(1)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
実施の形態(1)に係る装身具1は、正面の看者から見て、装飾物本体11のみが見えて、かつ装飾物本体11の正面が審美的に美しい角度や向きに保持されて、揺動する形態を有している。
【0029】
装身具1は、装飾物10と、装飾物10を揺動可能に支持する補助具20とを含んで構成されている。装飾物10は、ダイヤモンド等の宝石などからなる装飾物本体11と、装飾物本体11を保持する保持手段12とを備えている。
保持手段12の背面には、装飾物10を補助具20に対して揺動可能に吊り下げるための吊下部13を備え、吊下部13は、装飾物10の正面から見えないように、すなわち装飾物10の正面投影範囲内に位置するように保持手段12の背面に設けられている。
【0030】
補助具20は、装飾物10の背面側に配設された基体21と、基体21から装飾物10に向けて設置され、吊下部13を支持することで装飾物10を揺動可能にする支持部22とを備えている。
また、装飾物10の重心Bをゼロ点とするXYZ(X軸、Y軸、Z軸)座標系において、支持部22と吊下部13の各係合部の中心点の各XYZ座標値の平均座標を示す平均点が、装飾物10の重心Bより上部に位置し、前記平均点が、装飾物10の重心を通る鉛直線上、あるいは該鉛直線上から偏芯した位置に配置されて、装飾物10の正面が、正面に位置する看者からみて審美的に適切な所定の角度や向きに調節されている。
【0031】
さらに、補助具20は、装飾物10をネックレスのように吊り下げて使用する場合には、必要に応じて、基体21から装飾物10に向けて設置(延設)された支持部23と、支持部23に取り付けられ、チェーン等を保持する保持部24とを備えている。保持部24は、装飾物10と補助具20を含む装身具1全体の重心の鉛直線上に設置されている。
さらには、支持部23で支持部22を兼用し、支持部23で吊下部13を支持することも可能である。
また、支持部23と基体21を兼用させて、例えば、装飾物10を取り囲むような円筒形状にして(すなわち、図1(b−1)、(b−2)、(b−3)で、支持部23を円筒形状とし、基体21を兼ねて、図1に示した基体21を設けていない状態にして)、支持部23より、支持部22を装飾物10の方向に伸ばす構造にすることもできる。
より具体的には、上記構造に加えて、吊下部13を図1に示すような円環形状ではなく、装飾物10を取り囲むような円筒形状にし、採光のための孔や模様を設けたり、線状構造で円筒を形成することも可能である。この場合、支持部22を、例えばJ字形で先端が針状に尖った線状形状にして、円筒形状をした吊下部13の貫通孔部に挿入し、先端を円筒形状の吊下部13に設けられた窪み部や孔部に挿入することで、装飾物10を支持して、揺動させる構成にすることもできる。
このように、これらは適切な揺動状態を得ることや、正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の向きや角度に調節すること、さらにはデザイン上の理由などから、自由に設計することが可能である。
また、デザインによっては、基体21を装飾物10よりも大きくし、正面に位置する看者から、基体21の一部および、支持部22、支持部23、吊下部13、保持部24の一部または全体を目視できるように配置することも可能である。
【0032】
保持部24の代わりに、基体21の背面にクリップや留め具等を保持部として設けることで、イヤリング、ピアス、ブローチ等として使用できる。あるいは、基体21自体をクリップや留め具とすることで、イヤリング、ピアス、ブローチ等として使用することもできる。
【0033】
吊下部13は、丸カン等の環状部材を装飾物本体11または保持手段12に、穿孔されたものや、ろう付け等により固着形成されたものの他、保持手段12に一体形成されたものや接着されたものであってもよい。
また、図1に示す吊下部13は、側面視円環状に形成されているが、この形状に限定されず、例えば、楕円環状、矩形環状などで形成されていてもよく、また線状構造や環状部材を組み合わせたものなどで構成されていてもよい。あるいは、前記のような、装飾物10を取り囲むような円筒形状や、半円筒形状、断面視で90°に4分の1分割された円筒形状などであっても良い。
また、図1においては、吊下部13は、保持手段12に2箇所設けられているが、1個所でも良く、また3個所以上に設けることも可能である。
【0034】
保持手段12は、例えば、金、銀、プラチナ、パラジウム、あるいはその合金、である貴金属、または、チタン、タングステン、純銅、純鉄、あるいは合金である真鍮、ステンレス鋼などの非貴金属、金属にメッキ等を施したもの、プラスティック、あるいはこれらの複合構造などにより形成され、台座や石座としての機能を有するものである。
【0035】
保持手段12の形態は、図1に示す形態に限定されるものではなく、装飾物本体11を保持可能な形態であればよく、例えば、略平板形状、略円盤形状、略円錐形状、略半球形状、略円筒形状、線条体の組み合わせ形状をしたものなどが採用され得る。
本実施の形態においては、デザインや装飾物本体11の材質によっては、装飾物10を装飾物本体11のみで構成し、すなわち、保持手段12を設けず、装飾物本体11に直接、穿孔などの手段によって、吊下部13を配設することもできる。
【0036】
また、図1に示した保持手段12は、装飾物本体11を固定するための爪12aを有しているが、爪以外の固定方法でも良い。保持手段12は、爪12aを除き、装飾物本体11の正面から見えない形態とすることが好ましいが、装飾の一部として正面から見える形態としてもよい。保持手段12には、装飾性を付与するとともに光を取り込みやすくするため、あるいはゴミなどを排出しやすくするための、複数の通孔、模様、透かしなどが形成されていてもよい。また、保持手段12の内面が研磨等により鏡面仕上げとされたものや、保持手段12の内面に光反射部材(図示せず)が別途配設されたものを使用することもできる。
【0037】
補助具20は、正面視における装飾物本体11より小さなサイズ、すなわち装飾物10の正面投影範囲内に収まるサイズで構成されている。したがって、正面の看者から見れば、装飾物本体11のみが見え、補助具20は見えない状態となっている。
しかし、デザインによっては、補助具20を構成する基体21を装飾物10よりも大きくし、正面に位置する看者から、基体21の一部および、支持部22、支持部23、吊下部13、保持部24の一部または全体を目視できるように配置することも可能である。
補助具20は、例えば、金、銀、プラチナ、パラジウム、あるいはその合金である貴金属、または、チタン、タングステン、純銅、純鉄、あるいは合金である真鍮、ステンレス鋼などの非貴金属、金属にメッキ等を施したもの、プラスティック、あるいはこれらの複合構造などにより形成される。
【0038】
基体21は、例えば略円盤状に形成され、略中央部分に通光性やデザイン性を高めるための円形の通孔21aが形成されていてもよいが、基体21の外形、通孔の形状や個数はこれに限定されない。
さらには、前記のように、支持部23の形状によっては、支持部23で基体21を兼用することも可能である。
【0039】
また、補助具20は、基体21から装飾物10側に突出形成された支持部22を含んで構成されている。支持部22は直線状の他、ループ状などにして装飾性を高めることもできる。また、支持部22を各種のスプリング部材、又は板バネ、線バネなどの各種バネ部材などの弾性部材で構成することもできる。さらには、前記のように、支持部23からJ字形状で、吊下部13を支持することも可能である。支持部22と吊下部13とが接触する係合部A1、A2は、支持部22を吊下部13に係合させて、装飾物10を揺動可能に支持するための部位である。
【0040】
支持部22と基体21との固定方法は、容易に外れない強固な固定方法であれば、どのような方法でもよく、例えば、ろう付け、あるいは前記のように、支持部22端部を基体21に形成された孔部(図示せず)に挿し込んで係合する方法などが採用され得る。
支持部22の形状は、どのようなものであっても良く、図1のようなT字状の他、丸環のような円環状や線状構造、あるいは線状構造の組み合わせ、前記J字形状、円環を連結したチェーンのような形状、さらには装飾物10を取り囲むような構造であっても良い。
【0041】
また、吊下部13と支持部22との係合部A1、A2の摩擦抵抗は極力小さくすることが好ましく、たとえば、係合部A1、A2における支持部22の断面形状を、線状の稜線を備えた山形形状とすることが好ましい。さらに、吊下部13の断面形状を、円形形状、より好ましくは、断面視において内周部に向けて先細の形状(山形形状)としてもよい。あるいは、吊下部13の内面上部に穿孔を設け、支持部22から針状構造体を前記穿孔に挿入する構造とすることもできる。
また、図1に示した装身具1では、吊下部13と支持部22との係合部A1、A2が2個所形成されているが、係合部は1個所でも良く、さらには3個所以上に形成されていてもよい。
【0042】
さらには、支持部23と基体21との固定方法は、容易に外れない強固な固定方法であれば、どのような方法でもよく、例えば、ろう付け、支持部23端部を基体21に形成された孔部(図示せず)に挿し込んで係合する方法などが採用され得る。また、支持部23を各種のスプリング部材、又は板バネ、線バネなどの各種バネ部材などの弾性部材で構成することもできる。
また、前記のように、支持部23の形状によっては、支持部23で基体21を兼用することも可能である。
【0043】
次に実施の形態(1)に係る装身具1の揺動動作について説明する。
吊下部13と支持部22との係合部A1、A2は基本的には点で形成されているが、線で形成されていても良い。
係合部A1、A2が点の場合、装飾物10(装飾物本体11と保持手段12を含む)の重心Bをゼロ点とするXYZ座標系において、各係合部A1、A2の座標のX軸、Y軸、Z軸の各座標値の平均座標を示す平均点(この場合、A1とA2の中点)が、装飾物10の重心Bより上部に位置し、前記平均点が、重心Bを通る鉛直線上、あるいは該鉛直線上から偏芯した位置に配置されて、装飾物10の正面が、正面に位置する看者からみて審美的に適切な所定の角度や向きとなるように調節されている。
【0044】
また、係合部A1、A2が線の場合、装飾物10の重心Bをゼロ点とするXYZ座標系において、各係合部A1、A2の線の中心点の座標のX軸、Y軸、Z軸の各座標値の平均座標を示す平均点が、装飾物10の重心Bより上部に位置し、前記平均点が、装飾物10の重心Bを通る鉛直線上、あるいは該鉛直線上から偏芯した位置に配置されて、装飾物10の正面が、正面に位置する看者からみて審美的に適切な所定の角度や向きとなるように調節されている。
【0045】
以下、揺動動作について具体的に説明する。
(装飾物本体11の正面の角度<1>)
図1(b−1)に示した形態が、前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線上にあり、かつ正面から見て、重心Bを通る鉛直線と平均点が重なる場合である。この場合は、装飾物本体11の正面の角度を略鉛直に保って、装飾物本体11を揺動させることができる。
【0046】
(装飾物本体11の正面の角度<2>)
また、図1(b−2)に示した形態が、前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より後方にあり、かつ正面から見て、重心Bを通る鉛直線と平均点が重なる場合である。この場合は、装飾物本体11の正面の角度を鉛直線に対して下向きに保って、装飾物本体11を揺動させることができる。
【0047】
(装飾物本体11の正面の角度<3>)
さらに、図1(b−3)に示した形態が、前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より前方にあり、かつ正面から見て、重心Bを通る鉛直線と平均点が重なる場合である。この場合は、装飾物本体11の正面の角度を鉛直線に対して上向きに保って、装飾物本体11を揺動させることができる。
【0048】
(装飾物本体11の正面の向き<A>)
図1(b−1)、(b−2)、(b−3)に示すように、正面から見て、前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線と重なる位置にある場合、正面の看者から見て、装飾物本体11の向きを、鉛直線と直交する水平線に沿った、真正面に保って、装飾物本体11を揺動させることができる。
【0049】
(装飾物本体11の正面の向き<B>)
あるいは、正面から見て、前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より右側にある場合(図示せず)、正面の看者から見て、装飾物本体11の正面を左向きに保って、装飾物本体11を揺動させることができる。
【0050】
(装飾物本体11の正面の向き<C>)
逆に、正面から見て、前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より左側にある場合(図示せず)、正面の看者から見て、装飾物本体11の正面を右向きに保って、装飾物本体11を揺動させることができる。
【0051】
(装飾物本体11の正面の角度と向き:<1>、<2>、<3>と<A>、<B>、<C>との組み合わせ)
さらに、前記<1>、<2>、<3>のいずれかの形態と<A>、<B>、<C>のいずれかの形態とを組み合わせることにより、装飾物10の正面の角度と向きを、正面に位置する看者から見て自由に調整することが可能となり、また審美的に適切な所定の角度と向きに調節可能となっている。なお、図1(c)は、前記<1>と<A>とを組み合わせた形態を示した平面図である。
【0052】
保持部24は、装飾物10をネックレスのように吊り下げて使用する場合に、必要に応じて設けられるもので、チェーン等を保持する部位であり、基体21から装飾物10に向けて設置された支持部23に固定されている。実施の形態(1)においては、保持部24と支持部23とは、正面から見て、装飾物本体11に隠れており、換言すれば、装飾物10の正面投影範囲内に配置されて、正面の看者から見えない構造になっている。
【0053】
しかし、デザインによっては、正面に位置する看者から、保持部24の一部または全体を目視できるように配置することも可能である。
また、図1では支持部23は平板形状であるが、支持部23の形状は、どのようなものであっても良く、図1のような平板状の他、丸環のような円環状や線状構造、あるいは線状構造の組み合わせ、さらには装飾物10を取り囲むような構造であっても良い。
また、支持部23には、装飾性を高めたり、採光やゴミの排出のための、穿孔や、透かし、模様が施されていても良い。
また、前記のように、支持部23で基体21を兼用することもできる。
【0054】
上記実施の形態(1)に係る装身具1によれば、保持手段12の背面に、すなわち、装飾物10の正面投影範囲内に、吊下部13と、補助具20とが設けられていることが基本構造であるので、支持部22を含む補助具20が装飾物本体11に隠れて、前方より見えにくくなり、あるいは完全に見えなくなるため、正面の看者に揺動する装飾物本体11のみを見せることができ、装飾物10のデザインの自由度を高めることができ、それにより装身具の審美的価値も一層高めることができる。ただし、前記の通り、デザイン上、吊下部13と補助具20が正面の看者から目視できるようにすることも可能である。
【0055】
また、支持部22と吊下部13との各係合部A1、A2の中心点の座標の各XYZ座標値の平均座標を示す平均点が、装飾物10の重心Bより上部に位置し、前記平均点が、装飾物10の重心Bを通る鉛直線上、あるいは該鉛直線上から偏芯した位置に配置されて、装飾物10の正面が、正面に位置する看者からみて審美的に適切な所定の角度と向きに調節されているので、前記看者からみて、揺動する装飾物10の正面を、宝石等の装飾物本体11が最も美しく見えるように位置させることができるとともに、装飾物10を、あたかも宙に浮いているように見せることができ、さらに装飾物10の小刻みな揺動が促され、リズミカルな揺動によって、装飾物10の輝きの変化をより幻想的で、より魅惑的なものとすることができる。
【0056】
なお、吊下部13と支持部22との係合形態は、図1に示した形態に限定されるものではなく、例えば、図2に示した形態なども採用され得る。図2(a)〜(c)は、実施の形態(1)に係る装身具における吊下部と支持部との別の係合形態の一例を示した平面図である。なお、図2に示す各平面図では、吊下部と支持部との形態を分かりやすくするために、図1に示した保持部24および支持部23は図示を省略している。
【0057】
図2(a)に示す装身具1では、略円環状の吊下部13Aが、装飾物10に1箇所設けられ、支持部22Aが、細長形状をした略コの字形状の部材で構成され、その両端の開放端が基体21に固定され、略コの字形状の中央部に吊下部13Aが係合される係合部Aが1箇所形成された構成となっている。
【0058】
また、図2(b)に示す装身具1では、線状構造の吊下部13Bが、装飾物10に設けられ、支持部22Bが、図1に示した装身具1と同様に略T字形状の部材で構成され、T字の縦軸部の端部が基体21に固定され、T字の横軸部が吊下部13Bにそれぞれ係合されて、2箇所の係合部A1、A2が形成された構成となっている。
この場合、支持部22Bの横軸部に、装飾物10の水平方向の移動を規制するための水平位置規制部22aを設けてもよい。
【0059】
さらに、図2(c)に示す装身具1では、略円環状の吊下部13Cが、装飾物10に所定間隔を設けて水平方向に2箇所並列に設けられ、支持部22Cが、2本の略L字状をした屈曲可能な部材で構成され、支持部22Cの各L字状部材の一端が基体21に固定され、各L字状部材の他端が吊下部13Cにそれぞれ係合されて、2箇所の係合部A1、A2が形成された構成となっている。
図2(a)〜(c)に示す装身具1の揺動の機構、及び装飾物正面の角度と向きの調整方法は、図1に示した実施の形態(1)に係る装身具1と同様であり、装飾物10の揺動動作、及び装飾物正面の角度と向きの調整について、実施の形態(1)に係る装身具1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0060】
図3は、実施の形態(2)に係る装身具を示す図であり、(a−1)、(a−2)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。なお、図1に示す実施の形態(1)に係る装身具1と同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。
実施の形態(1)に係る装身具1では、装飾物本体11が、ダイヤモンドカットなどが施された1つの宝石等(ダイヤモンドなど)で構成されていたが、実施の形態(2)に係る装身具1Aでは、装飾物本体11Aが多数(複数)のダイヤモンド等の宝石等で構成されている。装飾物本体11Aを構成する宝石は図1のようにダイヤモンドカットがなされていなくてもよい。
【0061】
尚、図3(a−1)は、正面の看者から保持手段12Aが、デザインとして目視できるケースであり、図3(a−2)は、正面の看者から保持手段12Aが目視できず、デザインとして装飾物本体11Aのみが目視できるケースである。
また、装飾物本体11Aを構成する多数の宝石の正面側配置例を図3(a−1)、(a−2)に示しているが、宝石の配置形態はこれに限定されるものではなく、宝石の種類、サイズ、形状、配列などをデザインに応じて適宜設計することができる。
【0062】
保持手段12Aは、多数の宝石等からなる装飾物本体11Aが保持可能に形成されている。保持手段12Aには、装飾物本体11Aを固定するための爪が設けられているが、爪以外の固定方法でもよい。保持手段12Aには、複数の通孔、模様、透かしなどの様々なデザインが施されていてもよい。また、保持手段12Aに、装飾物10の重心の位置を調整する目的や、装飾として装飾体14が取り付けられていても良い。装飾体14の形状は自由に設計することができ、保持手段12Aの背面を囲うように設けても良く、又は線状構造体などで構成しても良い。また、装飾性や通光性を保つために、装飾体14に、透かし、孔、模様などの様々なデザインが施されていても良い。
また、図中Bは、装飾物10(装飾物本体11A、保持手段12A、装飾体14を含む)全体の重心を表している。
【0063】
また、実施の形態(2)に係る装身具1Aの揺動の機構、及び装飾物正面の角度と向きの調整方法は、図1に示した実施の形態(1)に係る装身具1と同様である。
すなわち、図3(b−1)に示した形態が、<1>前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線上にあり、かつ正面から見て、重心Bを通る鉛直線と平均点が重なる場合である。図3(b−2)に示した形態が、<2>前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より後方にあり、かつ正面から見て、重心Bを通る鉛直線と平均点が重なる場合である。図3(b−3)に示した形態が、<3>前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より前方にあり、かつ正面から見て、重心Bを通る鉛直線と平均点が重なる場合である。図3(b−1)、(b−2)、(b−3)の形態にそれぞれ前記平均点の位置を調整することで、装飾物本体11Aの正面の角度(鉛直、下向き、上向き)を調整することが可能となっている。
【0064】
また、装飾物本体11Aの正面の向きについて、正面から見て、<A>前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線と重なる位置、<B>前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より右側の位置、<C>前記平均点が装飾物10の重心Bを通る鉛直線より左側の位置となるように、前記平均点の位置を調整することで、装飾物本体11Aの正面の向き(真正面、左向き、右向き)を調整することが可能となっている。
【0065】
さらに、上記<1>、<2>、<3>のいずれかの形態と<A>、<B>、<C>のいずれかの形態とを組み合わせることにより、装飾物10の正面の角度と向きを、正面に位置する看者からみて自由に調整することが可能となり、また審美的に適切な所定の角度と向きに調節可能となっている。なお、図3(c)は、前記<1>と<A>を組み合わせた形態を示した平面図である。
【0066】
図4は、実施の形態(3)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b−1)〜(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。なお、図1に示す実施の形態(1)に係る装身具1と同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。
実施の形態(3)に係る装身具1Bでは、保持手段12または補助具20の少なくとも一方に錘部15、25が設けられ、それにより、正面の看者から見て、装飾物本体11のみが見えて、かつ装飾物本体11の正面が審美的に美しい角度と向きに保持され、揺動の状態を調整することが可能となっている。
しかし、デザイン上の観点から、基体20を装飾物10よりも大きくし、正面に位置する看者から、基体20の一部および、支持部22、支持部23、吊下部13の一部または全体を目視できるように配置しても良い。
【0067】
図4に示すように、錘部15は保持手段12の背面に取り付けられ、錘部25は基体21に取り付けられる。錘部15と保持手段12との固定方法、及び錘部25と基体21との固定方法は、容易に外れない強固な固定方法であれば、どのような方法でもよく、例えば、ろう付け、接着、端部を保持手段12または基体21に形成された孔部(図示せず)に挿し込んで固着する方法、保持手段12や基体21の一部肉厚を厚くする方法、保持手段12や基体21に比重の大きな金属を埋め込む方法などが採用され得る。
【0068】
錘部15、錘部25は、例えば、金、銀、プラチナ、パラジウム、あるいはその合金である貴金属、または、チタン、タングステン、純銅、純鉄、あるいは合金である真鍮、ステンレス鋼などの非貴金属、金属にメッキ等を施したもの、プラスティック、あるいはこれらの複合構造などにより形成され、各々保持手段12または基体21と同材質であっても良いし、異種材質であっても良い。
また、錘部15、錘部25の形状は平板状、円柱状、塊状などのどのような形状であっても良く、デザイン等を考慮して自由に選定でき、また、保持手段12と一体形成されたものや内部に埋め込まれたものであってもよい。
さらに、錘部15、錘部25の重量や個数、取り付け位置などは、装飾物10や装身具1Bの各重心位置を変更、調整する目的で、装飾物10や補助具20の重量、大きさ等を考慮して自由に選定することができる。
【0069】
また、錘部15、錘部25は、ボルトなどの取付具や挟み込み構造にするなどの方法により着脱可能な構成とすることもできる。この場合、錘部15は保持手段12の背面、錘部25は基体21の任意の位置にそれぞれ取り付け可能に構成することができる。また、錘部15、錘部25の重量や個数を変えることで、装飾物本体11の正面の角度や揺動の状態、あるいは基体21の角度を自由に調節することができる。
【0070】
さらに、錘部25は、前記のとおり、鉛直軸に対する基体21の角度と向きを自由に変える機能を有するとともに、装身具全体の重心の位置を変える機能を有している。これにより、装飾物10がネックレスのように吊り下げて使用するものである場合には、チェーン等の保持部24をデザイン上好ましい位置に変えることができる。
【0071】
また、錘部15は、装飾物10(装飾物本体11と保持手段12を含む)全体の重心Bの位置を変えるとともに、揺動の状態を変える機能を有する。
重心Bの位置を変えることにより、上記実施の形態(1)と同様に、装飾物10の正面の角度と向きを、正面に位置する看者からみて自由に調整することが可能となり、審美的に適切な所定の角度と向きに調節することが可能となる。
さらに、錘部15の重量や数量、取り付け位置等を変えることにより、揺動のモーメントを変化させて、揺動の状態を自由に変えることができる。
錘部15と錘部25は、どちらか一つだけ取り付けても良いし、両者を同時に取り付けても良い。
【0072】
図5は、実施の形態(4)に係る装身具を示す図であり、(a−1)、(a−2)は正面図、(b−1)、(b−2)、(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
実施の形態(4)に係る装身具1Cは、図3に示す実施の形態(2)に係る装身具1Aの保持手段12A又は基体21の少なくとも一方に錘部15、25を取り付けたものであり、装身具1Aと同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。また、錘部15、錘部25の構成や機能等は、実施の形態(3)に係る装身具1Bに設けた錘部15、錘部25と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0073】
ここで、図5(a−1)は、正面の看者から保持手段12Aが、デザインとして目視できるケースであり、図5(a−2)は、正面の看者から保持手段12Aが目視できず、デザインとして装飾物本体11Aのみが目視できるケースである。
また、装飾物本体11Aを構成する多数の宝石の正面側配置例を図5(a−1)、(a−2)に示しているが、宝石の配置形態はこれに限定されるものではなく、宝石の種類、サイズ、形状、配列などをデザインに応じて適宜設計することができる。
【0074】
実施の形態(4)に係る装身具1Cの揺動の機構、及び装飾物正面の角度と向きの調整方法は、図3、4に示した実施の形態(2)、(3)に係る装身具1A、1Bと同様であり、装飾物10の揺動動作及び装飾物正面の角度と向きの調整について、実施の形態(2)、(3)に係る装身具1A、1Bと同様の作用及び効果を得ることができる。
【0075】
図6は、実施の形態(5)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。図5に示す実施の形態(4)に係る装身具1Cと同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。
ここで、図6(a)は、正面の看者から保持手段12Aが目視できるケースであるが、図3(a−2)や図5(a−2)のように、正面の看者から保持手段12Aが目視できず、装飾物本体11Aのみが目視できるケースも存在する(図示せず)。
また、装飾物本体11Aを構成する多数の宝石の正面側配置例を図6(a−1)に示しているが、宝石の配置形態はこれに限定されるものではなく、宝石の種類、サイズ、形状、配列などをデザインに応じて適宜設計することができる。
【0076】
実施の形態(5)に係る装身具1Dが、実施の形態(4)に係る装身具1Cと相違する主な点は、吊下部13D、支持部22D、保持具24の形態にある。
すなわち、実施の形態(5)は、実施の形態(4)における支持部22と保持部24が、正面の看者から目視でき、保持部24が直接基体21に結合されている形態を表している。
この実施の形態(5)は、実施の形態(4)のみならず、前記の実施の形態(1)〜(3)にも適用することができる。
【0077】
より具体的には、環状部材などからなる吊下部13Dが、保持手段12Bの背面に1箇所設けられている。
支持部22Dは、細長U字状に折り曲げられた線状体を、さらに略U字状に折り曲げて形成された部材である。支持部22D略中央のU字状部分に、吊下部13Dが係合され、係合部Aが形成されるようになっている。
基体21の上端部に、環状の保持具24が設けられ、基体21の背面に錘部25が設けられている。また、保持手段12Bに錘部15を設けることもできる。錘部15、25の構成や機能等は、実施の形態(3)に係る装身具1Bの錘部15、25と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0078】
また、実施の形態(5)に係る装身具1Dの揺動の機構、及び装飾物正面の角度と向きの調整方法は、実施の形態(1)、(3)に係る装身具1、1Bと同様であり、装飾物10の揺動及び装飾物正面の角度と向きの調整について、実施の形態(1)、(3)に係る装身具1、1Bと同様の作用及び効果を得ることができる。
【0079】
実施の形態(3)、(4)、(5)に係る装身具1B、1C、1Dによれば、保持手段12、12Aまたは補助具20の少なくとも一方に錘部15、25が設けられ、錘部15、25により、装飾物10及び/又は補助具20について所定の均衡状態が調整されているので、例えば、正面に位置する看者からみて、装飾物10の正面が、宝石等の装飾物本体11、11Aが最も美しく見える角度と向きとなるように、装飾物や装身具全体の重心位置を調整して、重量バランスを適切に調整することができる。さらには、錘部15、25の重量や取り付け位置、数量によって、揺動の状態を変えることができ、装飾物10の輝きに変化を持たせて、より魅惑的な装身具とすることができる。
【0080】
図7は、実施の形態(6)に係る装身具を示す図であり、(a)は正面図、(b−1)、(b−2)、(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
実施の形態(6)に係る装身具1Eが、実施の形態(1)〜(5)に係る各装身具1、1A、1B、1C、1Dと相違する点は、装飾物本体11の周囲に装飾枠17が配置され、装飾枠17が保持手段12に固定されている点であり、その他の構成は、実施の形態(1)〜(5)に係る装身具1、1A、1B、1C、1Dと同様であるので、同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
実施の形態(6)に係る装身具1Eは、装飾物本体11の周囲に装飾枠17が配置され、装飾枠17が保持手段12に固定されている。具体的には、図7に示すように、装飾枠17が、保持手段12から延設された保持部18によって保持手段12に保持されており、装飾枠17の正面側に小さなダイヤモンドなどの装飾物本体11aが設けられている。この場合、保持部18が4箇所に設けられているが、この形態に限定されない。保持部18は、装飾枠17を保持手段12に保持可能な形態であればよい。
また、装飾枠17は図7に示す略円環形状の他、半円形状やC字型形状などでもよく、その形状を自由にデザインすることができる。
ここで、宝石の配置形態は、図7(a)に限定されるものではなく、宝石の種類、サイズ、形状、配列などをデザインに応じて適宜設計することができる。
【0082】
実施の形態(6)に係る装身具1Eには、中心部のダイヤモンドなどの装飾物本体11の周囲に、小さなダイヤモンドなどの装飾物本体11aが散りばめられた装飾枠17が設けられ、中心部の装飾物本体11がより大きく見えるようにデザインが施されている。
装身具1Eでは、中心部の装飾物本体11と装飾枠17の装飾物本体11aとが一体化されて、同時に揺動し、かつ正面の看者から見て、装飾物本体11と装飾枠17のみが見えて、かつ装飾物本体11と装飾枠17の正面が審美的に美しい角度と向きに保持されて、揺動する形態となっている。
【0083】
また、実施の形態(6)に係る装身具1Eでは、保持手段12及び補助具20のいずれにも錘部15、25を設けない構成とすることもできるが、保持手段12又は補助具20の少なくとも一方に、錘部15、25を設ける構成とすることもできる(すなわち、実施の形態(3)の構成を組み合わせることができる)。
【0084】
実施の形態(6)に係る装身具1Eによれば、装飾物本体11の周囲に、装飾枠17が配置され、装飾枠17が保持手段12に固定されているので、装飾物本体11と装飾枠17とを一体構造として揺動させることができ、また、装飾物本体11と装飾枠17とが一体構造化され、その正面を、正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の角度と向きに調節することができる。
【0085】
図8は、実施の形態(7)に係る装身具を示す図であり、(a−1)、(a−2)は正面図、(b−1)、(b−2)、(b−3)は部分断面側面図、(c)は平面図である。
実施の形態(7)に係る装身具1Fが、実施の形態(1)〜(6)に係る各装身具1、1A、1B、1C、1D、1Eと相違する点は、装飾物本体11A、又は装飾物本体11Aに連結された外枠17の周囲に、装飾枠17Aが配置され、装飾枠17Aが基体21に固定されている点であり、その他の構成は、実施の形態(1)〜(6)に係る装身具1、1A、1B、1C、1D、1Eと同様であるので、同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
実施の形態(7)に係る装身具1Fは、装飾物本体11A(装飾物本体11Aに直結された外枠17を含む)の周囲に装飾枠17Aが配置され、装飾枠17Aが基体21に固定されている。具体的には、図8に示すように、装飾枠17Aが、基体21から延設された保持部18Aによって基体21に保持されており、装飾枠17Aの正面側に小さなダイヤモンドなどの宝石や貴金属などからなる装飾物本体11aが設けられている。装飾枠17Aは揺動せず、中心部の装飾物本体11A(装飾物本体11Aに直結された外枠17を含む)だけが揺動することで、中心部の装飾物本体11Aを際立たせることができる。また、揺動する装飾物本体11Aと、揺動せず、デザインされた装飾枠17Aとを設けることで、審美性を向上させることが可能となっている。
【0087】
装飾枠17Aは図8に示す略円環形状の他、半円形状やC字型形状などでもよく、その形状を自由にデザインすることができる。
さらに、装飾枠17Aは、図8(a−1)に示すように、枠正面に小さな宝石が散りばめられた形態の他、図8(a−2)に示す装飾枠17Bのように、貴金属などでデザインされたものであっても良い。
ここで、宝石の配置形態は、図8(a−1)、(a−2)に限定されるものではなく、宝石の種類、サイズ、形状、配列などをデザインに応じて適宜設計することができる。
また、装飾枠17Aで基体21を兼用することもできる。
【0088】
また、実施の形態(7)に係る装身具1Fでは、保持手段12Aに錘部15が設けられているが、保持手段12A及び補助具20に錘部15、錘部25を設ける構成とすることもできる。
【0089】
補助具20の基体21に錘部25を設けた場合、錘部25によって、正面から見た、装飾枠17Aの鉛直軸に対する角度を自由に変えることができ、正面の看者からみて、最も美しい角度に装飾枠17Aを配置することができる。
また、錘部15の有無、数量、重量、取り付け位置などによって、実施の形態(3)と同様に、装飾体本体11Aの正面の方向を、正面に位置する看者から見て審美的に適切な所定の角度と向きに調節することができるとともに、揺動状態を調節することができる。
【0090】
実施の形態(7)に係る装身具1Fによれば、揺動する装飾物本体11Aの周囲に、揺動しない装飾枠17Aを設けることができる。また、装飾枠17Aは自由にデザインすることが可能であるため、揺動しない装飾枠17Aと揺動する装飾物本体11Aとを合わせた全体の自由なデザインが可能となり、それにより装身具の審美的価値を一層高めることができる。
【0091】
なお、上記実施の形態(1)〜(7)に係る装身具は、装飾物本体11、11A、11aが複数種類の宝石や貴金属などを含んで構成されている装飾物にも適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 装身具
10 装飾物
11、11A、11a 装飾物本体
12、12A 保持手段
13、13A、13B、13C、13D 吊下部
18、22、23 支持部
14 装飾体
15、25 錘部
17、17A、17B 装飾枠
20 補助具
21 基体
22a 水平位置規制部
24 保持部
A、A1、A2 係合部
B 装飾物の重心
【要約】
【課題】揺動可能で、正面の看者から見て最も審美的な方向に該装飾物の正面を向ける機能を有し、デザインの自由度や審美的価値を一層高めることができ、装飾物の輝きの変化をより幻想的で、より魅惑的な装身具を提供すること。
【解決手段】装飾物10と、装飾物10を揺動可能に支持する補助具20とを備えた装身具1であって、装飾物10を補助具20に対して揺動可能に吊下げるための吊下部13が装飾物10に設けられ、補助具20が、基体21と、基体21から装飾物10に向けて設置され、吊下部13を支持することで装飾物10を揺動可能にする支持部22とを備え、装飾物の重心をゼロ点とするXYZ座標系において、支持部と吊下部との各係合部の中心点の各XYZ座標値の平均座標を示す平均点が、装飾物10の重心より上部に位置し、該平均点を、装飾物10の重心を通る鉛直線上、或は鉛直線上から偏芯した位置に配置する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図6
図7
図8