特許第6141498号(P6141498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141498
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】清浄剤を含む潤滑組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 159/24 20060101AFI20170529BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20170529BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20170529BHJP
   C10N 10/06 20060101ALN20170529BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20170529BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20170529BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20170529BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20170529BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
   C10M159/24
   C10N10:02
   C10N10:04
   C10N10:06
   C10N20:00 Z
   C10N30:04
   C10N30:06
   C10N40:04
   C10N40:25
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-151267(P2016-151267)
(22)【出願日】2016年8月1日
(62)【分割の表示】特願2013-546241(P2013-546241)の分割
【原出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-186092(P2016-186092A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】61/425,274
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フレンド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム バートン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー エム. ウォーカー
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−012793(JP,A)
【文献】 特開昭60−044595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄剤を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)溶媒の存在下で、
(i)ヒドロカルビル置換されたスルホン酸を含む酸性清浄剤基質、および
(iii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;ならびに
(b)(a)の生成物と、ヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物、および二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程であって、ここで、該反応性等価物は、酸または無水物である、工程
を包含し
ここで、該清浄剤は、200〜600mg KOH/gのTBNを有し、
該ヒドロキシカルボン酸は、酒石酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、またはこれらの混合物である、
プロセス。
【請求項2】
前記清浄剤が300〜550mg KOH/gのTBNを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記清浄剤が350〜500mg KOH/gのTBNを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記塩基性金属化合物は、一価、二価、または三価の金属を含み、前記金属のヒドロキシドまたはオキシドである、前記請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、またはこれらの混合物である、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸性清浄剤基質および前記ヒドロキシカルボン酸は、該酸性清浄剤基質 対 該ヒドロキシカルボン酸のモル比が20:1〜1:2の範囲にある反応物として存在する、前記請求項1〜6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記酸性清浄剤基質および前記ヒドロキシカルボン酸は、該酸性清浄剤基質 対 該ヒドロキシカルボン酸のモル比が20:1〜1:1の範囲にある反応物として存在する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記酸性清浄剤基質および前記ヒドロキシカルボン酸は、該酸性清浄剤基質 対 該ヒドロキシカルボン酸のモル比が18:1〜1:1の範囲にある反応物として存在する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応する工程(a)がさらにアルコールの存在を含む前記請求項1から9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記請求項1〜10のいずれかに記載のプロセスであって、さらに揮発性物質を、(a)または(b)の生成物から除去する工程を包含する、プロセス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のプロセスによって得られた/得ることができる、生成物。
【請求項13】
潤滑粘度の油および請求項12に記載の生成物を含む、潤滑組成物であって、ここで、該生成物は、該潤滑組成物のうちの0.1重量%〜6重量%の範囲において存在する潤滑組成物。
【請求項14】
前記生成物は、前記潤滑組成物のうちの0.15重量%〜5重量%の範囲において存在する、請求項13に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記生成物は、前記潤滑組成物のうちの0.2重量%〜3重量%の範囲において存在する、請求項14に記載の潤滑組成物。
【請求項16】
内燃機関を潤滑する方法であって、該方法は、該内燃機関に、請求項1315のいずれかに記載の潤滑組成物を供給する工程を包含する、方法。
【請求項17】
前記内燃機関は、シリンダーボア、シリンダーブロック、またはピストンリング上に鋼表面を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記内燃機関は、鋼、またはアルミニウム合金、またはアルミニウム複合材の表面を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
動力伝達経路デバイスを潤滑する方法であって、該方法は、該動力伝達経路デバイスに、請求項1315のいずれかに記載の潤滑組成物を供給する工程を包含する、方法。
【請求項20】
前記動力伝達経路デバイスは、マニュアルトランスミッションを含み、該マニュアルトランスミッションは、シンクロナイザーシステム、または車軸を含んでいても含んでいなくてもよい、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、潤滑粘度の油および清浄剤を含む潤滑組成物を提供する。本発明はさらに、上記清浄剤を調製するためのプロセスおよび機械式デバイス(例えば、内燃機関または動力伝達経路デバイス)における上記潤滑組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
潤滑油が内燃機関を腐食、摩耗、煤堆積および酸形成から保護するために使用される多くの表面活性添加剤(耐摩耗剤、分散剤、または清浄剤を含む)を含むことは、周知である。しばしば、このような表面活性添加剤は、機械式デバイス(例えば、内燃機関または動力伝達経路デバイス)に対して有害な影響を有し得る。有害な効果としては、考えられる摩耗(鉄およびアルミニウムベースの成分の両方において)、ベアリング腐食、増大した酸蓄積(燃焼副生成物の中和の欠如に起因する)、または燃料経済性の低下が挙げられ得る。
【0003】
エンジン潤滑油のための一般的耐摩耗添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)である。ZDDP耐摩耗添加剤は、金属表面に保護フィルムを形成することによって、エンジンを保護すると考えられている。ZDDPはまた、燃料経済性および効率ならびに銅腐食に対して有害な影響を有し得る。その結果として、エンジン潤滑剤はまた、燃料経済性に対するZDDPの有害な影響を未然に防ぐための摩擦調整剤(friction modifier)および銅腐食に対するZDDPの有害な影響を未然に防ぐための腐食防止剤を含み得る。他の添加剤はまた、鉛腐食を増大させ得る。
【0004】
当業者に公知の他の技術は、可能な耐摩耗剤として、カルボン酸のエステルもしくはアミドもしくはイミド、またはヒドロキシカルボン酸のエステルもしくはアミドもしくはイミドを開示している多くの刊行物を含む。上記刊行物としては、特許文献1〜21が挙げられる。
【0005】
清浄剤(例えば、金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレート、および金属サリキサレート)が公知である。上記清浄剤は、カルボン酸の存在下または非存在下で調製され得る。例えば、カルボン酸改変清浄剤は、特許文献22〜25に開示されている。そこで開示される代表的な酸は、式RCH(R)COHによって定義され得、ここでRは、C10〜C24アルキル基であり、Rは、水素またはC〜Cアルキル基である。例示される酸改変清浄剤としては、ステアリン酸の重量で12〜20を含むヒドロカルビル置換されたフェネートが挙げられる。特許文献26は、炭酸カルシウムの分散物を調製するためのメタノールプロセスにおいて有用であるように、酸化カルシウムを活性化する手段(炭酸カルシウムを焙焼することから調製される)を開示する。上記酸化カルシウムは、少量の酸(例えば、酢酸)とのメタノール懸濁物中で処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】カナダ国特許出願公開第1 183 125号明細書
【特許文献2】東ドイツ国特許出願公開第DD 299533明細書
【特許文献3】国際公開第2006/044411号
【特許文献4】国際公開第2005/087904号
【特許文献5】国際公開第2008/070307号
【特許文献6】特開2005−139238号公報
【特許文献7】特開平10−183161号公報
【特許文献8】特開平10−130679号公報
【特許文献9】特開平05−117680号公報
【特許文献10】米国特許出願公開第2010/0190669号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2010/0197536号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2010/0093573号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2005/0198894号明細書
【特許文献14】米国特許第4,237,022号明細書
【特許文献15】米国特許第5,338,470号明細書
【特許文献16】米国特許第4,436,640号明細書
【特許文献17】米国特許第4,157,970号明細書
【特許文献18】米国特許第4,863,622号明細書
【特許文献19】米国特許第5,132,034号明細書
【特許文献20】米国特許第5,215,549号明細書
【特許文献21】米国特許第6,127,327号明細書
【特許文献22】欧州特許出願公開第0 271 262号明細書
【特許文献23】欧州特許出願公開第0 273 588号明細書
【特許文献24】米国特許第5,792,735号明細書
【特許文献25】米国特許第5,674,821号明細書
【特許文献26】米国特許第3,155,617号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明の目的は、耐摩耗性能、摩擦調整(特に、燃料経済性を向上させるため)、または清浄性能のうちの少なくとも1つを提供することを含む。
【0008】
本明細書で使用される場合、本明細書で開示される潤滑組成物に存在する添加剤の量への言及は、別段示されなければ、油なしのベースで引用される(すなわち、活性物質(actives)の量)。
【0009】
一実施形態において、本発明は、清浄剤を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、
(a)溶媒(代表的には、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)酸性清浄剤基質、および
(ii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b) 必要に応じて、上記(a)の生成物と、二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、上記(a)または(b)の生成物から除去する工程
を包含し、ここでヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物は、(a)、(b)、(c)、および工程(a)〜(c)の混合からなる群より選択されるいずれか必要とされる工程のうちの少なくとも1つに添加される。
【0010】
本明細書で使用される場合、表現「いずれか必要とされる工程のうちの少なくとも1つに添加される」とは、上記ヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物が、本発明の
実施において実際に行われる工程のうちのいずれかに添加されることを意味すると解釈される。例えば、工程(a)および(b)が行われる場合、上記ヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物は、工程(a)または工程(b)のいずれかにおいて添加され得るか、またはさらに工程(a)および(b)の両方において添加され得る。工程(a)および(c)が行われる場合も同様。工程(a)、(b)および(c)が行われる場合も同様。
【0011】
本明細書で使用される場合、表現「ヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物」とは、酸、無水物、金属塩、アンモニウム塩、アミン塩またはエステルを含む。一実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物は、酸または無水物のいずれか、代表的には、酸を含み得る。
【0012】
金属塩は、金属(例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、またはこれらの混合物)に由来し得る。上記金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムが挙げられ得る。上記金属は、カルシウムまたはマグネシウムを含み得る。
【0013】
上記油状媒体は、以下に記載されるように、潤滑粘度の油と同じであり得る。
【0014】
一実施形態において、上記プロセス工程(b)は必要とされ、過塩基性清浄剤を調製するためのプロセスを生じ、ここで上記清浄剤は、200〜600、または300〜550、または350〜500mg KOH/gのTBNを有する。
【0015】
一実施形態において、上記プロセス工程(b)は行われず、非過塩基性清浄剤(中性清浄剤ともいわれ得る)を調製するプロセスを生じる。非過塩基性清浄剤のTBNは、20〜200未満、または30〜100、または35〜50mg KOH/gであり得る。清浄剤が、強酸(例えば、ヒドロカルビル置換されたスルホン酸)から調製される場合、上記TBNは、より低い可能性がある(例えば、0〜50mg KOH/g、または10〜20mg KOH/g)。
【0016】
一実施形態において、上記酸性清浄剤基質は、ヒドロカルビル置換されたスルホン酸、ヒドロカルビル置換されたヒドロキシ芳香族酸(例えば、サリキサレーン(salixaranesもしくはサリチレート)、またはこれらの混合物であり得る。一実施形態において、上記酸性清浄剤基質は、ヒドロカルビル置換された有機酸またはヒドロカルビル置換されたフェノールであり得る。一実施形態において、上記酸性清浄剤基質は、ヒドロカルビル置換されたスルホン酸、またはその混合物であり得る。
【0017】
一実施形態において、本発明は、清浄剤を調製するためにプロセスを提供し、上記プロセスは、
(a)溶媒(代表的には、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)酸性清浄剤基質、および
(ii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b)上記(a)の生成物と、二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、上記(a)または(b)の生成物から除去する工程
を包含し、ここでヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物は、工程(a)、(b
)のうちの少なくとも一方、または工程(a)または(b)の混合に添加される。
【0018】
一実施形態において、本発明は、清浄剤を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、
(a)溶媒(代表的には、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)酸性清浄剤基質、および
(ii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b)上記(a)の生成物と、ヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物、および二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、上記(a)または(b)の生成物から除去する工程、
を包含する。
【0019】
一実施形態において、本発明は、清浄剤を調製するためのプロセスを提供し、上記プロセスは、
(a)溶媒(代表的には、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)ヒドロキシカルボン酸、
(ii)酸性清浄剤基質、および
(iii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b)上記(a)の生成物と、二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、上記工程(b)の生成物から除去する工程
を包含する。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載されるプロセスによって得られた/得ることができる生成物を提供し得る。
【0021】
本発明はまた、潤滑粘度の油および本明細書に記載されるプロセスによって得られた/得ることができる生成物を含む潤滑組成物を提供し得る。
【0022】
一実施形態において、本発明は、機械式デバイスを本明細書で開示される潤滑組成物で潤滑する方法を提供する。上記機械式デバイスは、内燃機関または動力伝達経路デバイスであり得る。
【0023】
上記内燃機関は、シリンダーボア、シリンダーブロック、またはピストンリングのうちの少なくとも1つの上に鋼表面を有し得る。
【0024】
上記内燃機関は、シリンダーボア、シリンダーブロック、またはピストンリングのうちの少なくとも1つの上にアルミニウム合金、またはアルミニウム複合材の表面を有し得る。
【0025】
上記動力伝達経路デバイスは、マニュアルトランスミッションであり得、上記マニュアルトランスミッションは、シンクロナイザーシステム、または車軸を含んでいても含んで
いなくてもよい。
【0026】
一実施形態において、本発明は、本発明の清浄剤の使用を提供し、耐摩耗性能または摩擦制御性能をも提供する。
【0027】
一実施形態において、本発明は、本発明の清浄剤の使用を提供し、内燃機関のための潤滑組成物において耐摩耗性能または摩擦制御性能をも提供する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、本発明の清浄剤の使用を提供し、動力伝達経路デバイスのための潤滑組成物において耐摩耗性能または摩擦制御性能をも提供する。
【0029】
本明細書に記載されるプロセスによって得られた/得ることができる生成物は、上記潤滑組成物のうちの0.01重量%〜8重量%、または0.1重量%〜6重量%、または0.15重量%〜5重量%、または0.2重量%〜3重量%の範囲において存在し得る。一実施形態において、上記化合物は、上記潤滑組成物のうちの0.2重量%〜3重量%において存在し得る。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、清浄剤、清浄剤を調製するためのプロセス、潤滑組成物、機械式デバイスを潤滑する方法、および上記で開示されるとおりの使用を提供する。
【0031】
(塩基性金属化合物)
上記金属塩基性化合物は、上記清浄剤に塩基度を供給するために使用される。上記塩基性金属化合物は、上記金属のヒドロキシドまたはオキシドの化合物である。上記金属化合物内で、上記金属は、代表的には、イオンの形態にある。上記金属は、一価、二価、または三価であり得る。一価である場合、上記金属イオンMは、アルカリ金属であり得、二価である場合には、上記金属イオンMは、アルカリ土類金属であり得、そして三価である場合には、上記金属イオンMは、アルミニウムであり得る。上記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、もしくはカリウム、またはこれらの混合物、代表的には、ナトリウムが挙げられ得る。上記アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたはこれらの混合物、代表的には、カルシウムまたはマグネシウムが挙げられ得る。
【0032】
ヒドロキシド官能基を有する金属塩基性化合物の例としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化アルミニウムが挙げられる。オキシド官能基を有する金属塩基性化合物の適切な例としては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化バリウムが挙げられる。上記オキシドおよび/または上記ヒドロキシドは、単独で、または組み合わせにおいて使用され得る。上記オキシドまたはヒドロキシドは、水和されていてもよいし、脱水されていてもよいが、水和されているのが代表的である(少なくとも、カルシウムに関しては)。一実施形態において、上記金属塩基性化合物は、水酸化カルシウムであり得、これは、単独で、または他の金属塩基性化合物との混合物として、使用され得る。水酸化カルシウムは、しばしば、石灰といわれる。一実施形態において、上記金属塩基性化合物は、酸化カルシウムであり得、これは、単独で、または他の金属塩基性化合物の混合物として使用され得る。
【0033】
(酸性清浄剤基質)
異なる実施形態において、本発明のプロセスは、中性清浄剤、または過塩基性清浄剤を形成する。一実施形態において、本明細書に記載されるプロセスは、「過塩基性」として記載され得る生成物を提供する。表現「過塩基性」とは、当業者に公知である。
【0034】
過塩基性物質(他に、過塩基性塩または超塩基性塩といわれる)は、一般に、上記金属および上記金属と反応した特定の酸性有機化合物の化学量論に従う中和のために存在するものより過剰の金属含有量によって特徴付けられる、単相の均一なニュートン系である。
【0035】
金属の量は、一般に、基質 対 金属比の点から表される。専門用語「金属比」とは、上記過塩基性塩における金属の総化学当量 対 上記塩における金属の化学当量の比を示すために、先行技術および本明細書において使用され、これは、ヒドロカルビル置換された有機酸;過塩基化されるべきヒドロカルビル置換されたフェノールまたはこれらの混合物と、上記2種の反応物の公知の化学反応性および化学量論に従って塩基として反応する金属化合物との間の反応を生じると予測される。従って、通常のまたは中性の塩において、上記金属比は、1であり、過塩基性塩においては、上記金属比は、1より大きい。本発明において使用される上記ヒドロカルビル置換された有機酸;上記ヒドロカルビル置換されたフェノールまたはこれらの混合物の上記過塩基性金属塩は、通常、40:1(または40)を超えない金属比を有する。しばしば、2:1〜35:1の比を有する塩が使用される。このような過塩基性物質は、当業者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノール、およびこれらのうちのいずれか2種以上の混合物の塩基性塩を作製するための技術を記載する特許としては、以下が挙げられる:米国特許第2,501,731号;同第2,616,905号;同第2,616,911号;同第2,616,925号;同第2,777,874号;同第3,256,186号;同第3,384,585号;同第3,365,396号;同第3,320,162号;同第3,318,809号;同第3,488,284号;および同第3,629,109号。
【0036】
表現「金属比」、TBNおよび「石けん含有量」のより詳細な説明は、当業者に公知であり、標準テキスト、標題「Chemistry and Technology of
Lubricants」, Third Edition,R. M. MortierおよびS. T. Orszulik編, Copyright 2010, 第219〜220ページにおいて、副題7.2.5. 清浄剤分類の下で説明される。
【0037】
上記清浄剤は、塩基性金属化合物、および酸性清浄剤基質の反応によって形成され得る。上記酸性清浄剤基質としては、アルキルフェノール、アルデヒド結合アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキル芳香族スルホン酸(例えば、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルトルエンスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸)、脂肪族カルボン酸、カリックスアレーン、サリキサレーン(salixarene)、アルキルサリチル酸、またはこれらの混合物が挙げられ得る。
【0038】
まとめて、上記アルキルフェノール、上記アルデヒド結合アルキルフェノール、および上記硫化アルキルフェノールが、清浄剤を調製するために使用される場合、上記清浄剤は、フェネートといわれ得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、上記引用されるTBN値およびTBNの関連する範囲は、「基準のまま(an as is basis)」であり、すなわち、粘性を取り扱うために使用される希釈油の従来の量を含む。希釈油の従来の量は、代表的には、上記清浄剤成分の30重量%〜60重量%(しばしば、40重量%〜55重量%)の範囲である。
【0040】
上記フェのレートのTBNは、200未満から、または30〜175(代表的には、中性フェネートについては、155)mg KOH/g、過塩基性フェネートについては200以上〜500、または210〜400(代表的には、250〜255)mg KOH/gまで変動し得る。
【0041】
フェネート(すなわち、アルキルフェネート)の上記アルキル基は、4〜80、または6〜45、または8〜20、または9〜15個の炭素原子を含み得る。
【0042】
一実施形態において、上記酸性または中性化した清浄剤基質は、アルキル芳香族スルホン酸、カリックスアレーン、サリキサレーン、アルキルサリチル酸、カルボキシレートまたはこれらの混合物のうちの1種以上を含む。
【0043】
上記清浄剤が形成される場合、上記中性または過塩基性清浄剤の一般的名称は、サリキサレート(カリックスアレーンまたはサリキサレーンから)、スルホネート(芳香族スルホン酸、代表的には、ベンゼンスルホン酸から)、サリチレート(アルキルサリチル酸から)、またはフェネート(アルキルフェノール、アルデヒド結合アルキルフェノール、硫化アルキルフェノールから)、またはサリゲニンである。
【0044】
一実施形態において、上記清浄剤は、スルホネート、またはその混合物であり得る。上記スルホネートは、モノヒドロカルビル置換されたまたはジヒドロカルビル置換されたベンゼン(またはナフタレン、インデニル、インダニル、またはビシクロペンタジエニル)スルホン酸から調製され得、ここで上記ヒドロカルビル基は、6〜40個、または8〜35個、または9〜30個の炭素原子を含み得る。
【0045】
上記ヒドロカルビル基は、ポリプロピレン、または少なくとも10個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキル基に由来し得る。適切なアルキル基の例としては、分枝状および/または直鎖状の、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル(nonodecyl)、エイコシル、ウン−エイコシル、ド−エイコシル、トリ−エイコシル、テトラ−エイコシル、ペンタ−エイコシル、ヘキサ−エイコシルまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
一実施形態において、上記ヒドロカルビル置換されたスルホン酸としては、ポリプロペンベンゼンスルホン酸およびC16−C24アルキルベンゼンスルホン酸、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
中性または僅かに塩基性である場合、スルホネート清浄剤は、100未満、または75未満、代表的には、20〜50mg KOH/g、または0〜20mg KOH/gのTBNを有し得る。
【0048】
過塩基性である場合、スルホネート清浄剤は、200より大きい、または300〜550、または350〜450mg KOH/gのTBNを有し得る。
【0049】
サリチレート清浄剤は、アルキル置換されたサリチル酸に由来し得る。中性サリチレートのTBNは、50〜200、または75〜175mg KOH/gであり得る。過塩基性サリチレートは、200より大きく400まで、または225〜350mg KOH/gのTBNを有し得る。
【0050】
上記サリチレートのアルキル基は、4〜80個、または6〜45個、または8〜20個、または9〜18個の炭素原子を含み得る。異なる実施形態において、上記サリチレートのアルキル基は、12個または16個の炭素原子を含み得る。
【0051】
スルホネート、フェネートおよびサリチレートの清浄剤の化学構造は、当業者に公知である。標準テキスト、標題「Chemistry and Technology of
Lubricants」, Third Edition,R. M. Mortie
rおよびS. T. Orszulik編, Copyright 2010, 220〜223ページは、副題7.2.6の下で、上記清浄剤およびそれらの構造の一般的開示を提供する。
【0052】
サリゲニン清浄剤は、米国特許第7,285,516号の第3欄47行目〜第5欄63行目に記載される。
【0053】
サリキサレート清浄剤は、米国特許第7,285,516号の第5欄64行目〜第7欄53行目に記載される。一般に、用語サリキサレートは、ホルムアルデヒドの存在下で、ヒドロカルビル置換されたフェノールと(必要に応じて、ヒドロカルビル置換された)サリチル酸とのカップリングから得られる。サリキサレート誘導体およびそれらの調製法は、米国特許第6,200,936号およびPCT公開WO 01/56968にも記載される。上記サリキサレート誘導体は、大環状構造ではなく、主に直鎖状の構造を有するが、両方の構造が、用語「サリキサレート」によって包含されると解釈されると考えられる。過塩基性サリキサレートは、170〜300mg KOH/gのTBNを有し得る。中性サリキサレートは、50から170未満のmg KOH/gのTBNを有し得る。
【0054】
一実施形態において、上記清浄剤は、脂肪族カルボン酸に由来するカルボキシレートであり得る。上記脂肪族の酸は、6〜30個、または7〜16個の炭素原子を含み得る。適切なカルボン酸の例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、デカン酸、ドデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、アラキジン酸、ガドレイン酸、エイコサジエン酸、ベヘン酸、エルカ酸、トール油脂肪酸、なたね油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記脂肪族の酸は、オレイン酸またはトール油脂肪酸である。
【0055】
上記カルボキシレートは、0.2〜10、または0.5〜7、または0.7〜5の金属比を有し得る。過塩基性である場合、上記金属比は、1より大きい。
【0056】
一実施形態において、上記酸性または中和化清浄剤基質は、上記基質のうちの少なくとも2種の混合物を含む。2種以上の清浄剤基質が使用される場合、上記形成される過塩基性清浄剤は、複合体/ハイブリッドとして記載され得る。代表的には、上記複合体/ハイブリッドは、塩基性金属化合物および酸性化過塩基化剤(acidifying overbasing agent)の存在下で、アルキル芳香族スルホン酸、少なくとも1種のアルキルフェノール(例えば、アルキルフェノール、アルデヒド結合アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール)および必要に応じて、アルキルサリチル酸を反応させることによって、調製され得る。複合体またはハイブリッドを調製するために使用される清浄剤基質は、WO97/46643(米国特許第6,429,179号としても公開)に開示されるとおりに調製され得る。
【0057】
上記清浄剤基質および上記ヒドロキシカルボン酸は、20:1〜1:2、または20:1〜1:1、または18:1〜1:1の範囲にある上記清浄剤基質 対 上記ヒドロキシカルボン酸のモル比を有する反応物として存在する。
【0058】
上記清浄剤基質がスルホネートである場合、上記清浄剤基質 対 上記ヒドロキシカルボン酸のモル比は、5:1〜1:1、または3:1〜1:1まで変動し得る。
【0059】
上記清浄剤基質がフェネートである場合、上記清浄剤基質 対 上記ヒドロキシカルボン酸のモル比は、18:1〜1:1、または18:1〜8:1まで変動し得る。
【0060】
上記清浄剤基質がサリチレートである場合、上記清浄剤 対 上記ヒドロキシカルボン酸のモル比は、10:1〜1:1、または8:1〜5:1まで変動し得る。
【0061】
上記清浄剤基質がサリキサレートである場合、上記清浄剤基質 対 上記ヒドロキシカルボン酸のモル比は、5:1〜1:1、または3:1〜1:1まで変動し得る。
【0062】
(ヒドロキシカルボン酸)
上記ヒドロキシカルボン酸は、代表的には、非芳香族であり得る。上記ヒドロキシカルボン酸は、以下の式:
【0063】
【化1】
によって表され得、ここで
nおよびmは、独立して、1〜5の整数であり得;
Xは、脂肪族基もしくは脂環式基、または炭素鎖中に酸素原子を含む脂肪族基もしくは脂環式基、または前述のタイプの置換された基であり得、上記基は、最大6個までの炭素原子を含み、n+m個の利用可能な結合点を有する基であり;
各Yは、独立して、−O−、>NH、もしくは>NRであり得るか、または2個のYが一緒になって、2個のカルボニル基の間で形成されるイミド構造R−N<の窒素を表し;そして
各RおよびRは、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり得、
各Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル基またはアシル基であり得、ただし少なくとも1個の−OR基は、上記−C(O)−Y−R基のうちの少なくとも1個に対してαまたはβであるX内の炭素原子上に位置し、ただしRおよびRのうちの少なくとも一方は、水素である(代表的には、全てのRおよびRが、水素である)。
【0064】
上記ヒドロキシカルボン酸は、2〜8個、または2〜6個、または2〜4個、または2〜3個のカルボン酸基を有し得る。一実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸は、少なくとも2個のカルボン酸基を有し得る。
【0065】
上記ヒドロキシカルボン酸は、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、またはこれらの混合物であり得る。上記ヒドロキシカルボン酸は、例えば、酒石酸(nおよびmがともに2に等しい)、クエン酸(n=3、m=1)、リンゴ酸(n=2、m=1)、グリコール酸(nおよびmがともに1に等しい)、またはこれらの混合物であり得る。
【0066】
一実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸は、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、またはこれらの混合物であり得る。異なる実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸は、クエン酸、酒石酸、またはこれらの混合物であり得る。一実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸は、酒石酸であり得る。
【0067】
(溶媒)
上記溶媒は、潤滑粘度の油または炭化水素溶媒のいずれかであり得る(代表的には、上記溶媒は、潤滑粘度の油であり得る)。上記プロセスは、油以外の炭化水素溶媒の存在を
含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。存在する場合、炭化水素溶媒は、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素を含み得る。適切な脂肪族炭化水素の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカンおよびこれらの混合物が挙げられる。適切な芳香族炭化水素の例としては、ベンゼン、キシレン、トルエンおよびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記プロセスは、油以外の溶媒または油に加えて、溶媒を必要とする。別の実施形態において、本発明のプロセスは、炭化水素溶媒を含まない。
【0068】
(アルコール)
必要に応じて、本明細書に記載されるプロセスは、アルコール、またはその混合物を含み得る。上記アルコールは、モノ−オールまたはポリオールであり得る。上記モノ−オールは、少なくとも1種の他のアルコールとの混合物中のメタノールであり得る。上記ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはこれらの混合物であり得る。一実施形態において、本明細書に記載されるプロセスは、アルコールまたはその混合物をさらに含み得る。上記アルコールは、促進剤といわれ得る。
【0069】
上記アルコールは、メタノールおよび2〜10個、または2〜6個、または2〜5個、または3〜5個の炭素原子を含むアルコールの混合物を含む。上記2〜7個の炭素原子を含むアルコールの混合物は、分枝状もしくは直鎖状のアルキル鎖またはこれらの混合物を含み得るが、分枝状が代表的である。
【0070】
上記アルコールの混合物は、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、イソブタノール、ペンタン−1−オール、ペンタン−2−オール、ペンタン−3−オール、イソペンタノール、ヘキサン−1−オール、ヘキサン−2−オール、ヘキサン−3−オール、ヘプタン−1−オール、ヘプタン−2−オール、ヘプタン−3−オール、ヘプタン−4−オール、2−エチルヘキサノール、デカン−1−オールまたはこれらの混合物を含み得る。上記アルコールの混合物は、少なくとも1種のブタノールおよび少なくとも1種のアミルアルコールを含む。アルコールの混合物は、イソアミルアルコールとして、Union Carbideまたは他の供給業者から市販されている。
【0071】
(潤滑粘度の油)
上記潤滑組成物は、潤滑粘度の油を含む。このような油としては、天然および合成の油、水素化分解、水素化、および水素仕上げ(hydrofinishing)由来の油、未精製油、精製油、再精製油またはその混合物が挙げられる。未精製油、精製油および再精製油のより詳細な説明は、国際公開WO2008/147704の段落[0054]〜[0056]において提供される(類似の開示は、米国特許出願2010/197536において提供される。[0072]〜[0073]を参照のこと)。天然および合成の潤滑油のより詳細な説明は、それぞれ、WO2008/147704の段落[0058]〜[0059]において記載される(類似の開示は、米国特許出願2010/197536において提供される。[0075]〜[0076]を参照のこと)。合成油はまた、Fischer−Tropsch反応によって生成され得、代表的には、水素異性化されたFischer−Tropsch炭化水素またはワックスであり得る。一実施形態において、油は、Fischer−Tropsch GTL(gas−to−liquid)合成手順ならびに他のGTL油によって調製され得る。
【0072】
潤滑粘度の油はまた、2008年4月バージョンの「Appendix E − API Base Oil Interchangeability Guidelines
for Passenger Car Motor Oils and Diesel
Engine Oils」、セクション1.3 副題1.3. 「Base Stoc
k Categories」に特定されるとおりに定義され得る。上記APIガイドラインはまた、米国特許第7,285,516号(第11欄64行目〜第12欄10行目を参照のこと)にまとめられている。一実施形態において、上記潤滑粘度の油は、API グループII、グループIII、グループIVの油、またはこれらの混合物であり得る。
【0073】
上記存在する潤滑粘度の油の量は、代表的には、100重量%から、本発明の化合物および他の性能添加剤の量の合計を差し引いた後の残りである。
【0074】
上記潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に調合された潤滑剤の形態にあり得る。本発明の潤滑組成物(本明細書で開示される添加剤を含む)が、さらなる油と合わされて、全体としてまたは部分的に、仕上げられた潤滑剤を形成し得る濃縮物の形態にある場合、これら添加剤 対 上記潤滑粘度の油および/または対 希釈油の比は、重量で1:99〜99:1、または重量で80:20〜10:90の範囲を含む。
【0075】
(他の性能添加剤)
潤滑組成物は、本明細書に記載されるプロセスの生成物を潤滑粘度の油に、必要に応じて、他の性能添加剤(本明細書で以下に記載されるとおり)の存在下で添加することによって調製され得る。
【0076】
本発明の潤滑組成物は、必要に応じて、他の性能添加剤を含む。上記他の性能添加剤は、金属不活性化剤、粘度調整剤、清浄剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、分散剤、分散粘度調整剤、極圧剤、抗酸化剤、消泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤およびこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む。代表的には、完全に調合された潤滑油は、これら性能添加剤のうちの1種以上を含む。
【0077】
抗酸化剤としては、以下が挙げられる:硫化オレフィン、ジアリールアミン、アルキル化ジアリールアミン、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン)、ヒドロキシルチオエーテル、またはこれらの混合物。一実施形態において、上記潤滑組成物は、抗酸化剤、またはその混合物を含む。上記抗酸化剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜15重量%、または0.1重量%〜10重量%、または0.5重量%〜5重量%、または0.5重量%〜3重量%、または0.3重量%〜1.5重量%において存在し得る。
【0078】
上記ジアリールアミンまたはアルキル化ジアリールアミンは、フェニル−α−ナフチルアミン(PANA)、アルキル化ジフェニルアミン、もしくはアルキル化フェニルナフチルアミン、またはこれらの混合物であり得る。上記アルキル化ジフェニルアミンとしては、以下が挙げられ得る:ジ−ノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチル化ジフェニルアミン、ジ−デシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミンおよびこれらの混合物。一実施形態において、上記ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、またはこれらの混合物を含み得る。一実施形態において、上記アルキル化ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミン、またはジノニルジフェニルアミンを含み得る。上記アルキル化ジアリールアミンは、オクチルフェニルナフチルアミン、ジ−オクチルフェニルナフチルアミン、ノニルフェニルナフチルアミン、ジ−ノニルフェニルナフチルアミン、デシルフェニルナフチルアミンまたはジ−デシルフェニルナフチルアミンを含み得る。
【0079】
上記ヒンダードフェノール抗酸化剤は、しばしば、立体障害基として二級ブチル基および/または三級ブチル基を含む。上記フェノール基は、ヒドロカルビル基(代表的には、直鎖状または分枝状のアルキル)および/または第2の芳香族基に連結する架橋基でさら
に置換され得る。適切なヒンダードフェノール抗酸化剤の例としては、以下が挙げられる:2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールもしくは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール。一実施形態において、上記ヒンダードフェノール抗酸化剤は、エステルであり得、例えば、CibaのIrganoxTM L−135が挙げられ得る。エステル含有ヒンダードフェノール抗酸化剤化学のより詳細な説明は、米国特許第6,559,105号に見いだされる。
【0080】
抗酸化剤として使用され得るジチオカルバミン酸モリブデンの例としては、以下が挙げられる:R. T. Vanderbilt Co., Ltd.からのVanlube
822TMおよびMolyvanTM A、ならびにAdeka Sakura−LubeTM S−100、S−165、S−600および525のような商品名で販売される市販の物質、またはこれらの混合物。
【0081】
一実施形態において、上記潤滑組成物は、粘度調整剤をさらに含む。上記粘度調整剤は、当該分野で公知であり、水素化スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、ポリオレフィン、マレイン酸無水物−オレフィンコポリマーのエステル(例えば、国際出願WO 2010/014655に記載されるもの)、マレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、またはこれらの混合物が挙げられ得る。
【0082】
上記分散粘度調整剤は、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(例えば、マレイン酸無水物)およびアミンで官能化したエチレン−プロピレンコポリマー;アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応したスチレン−マレイン酸無水物コポリマーが挙げられ得る。分散粘度調整剤のより詳細な説明は、国際公開WO2006/015130または米国特許第4,863,623号;同第6,107,257号;同第6,107,258号;同第6,117,825号;および同第7,790,661号に開示される。一実施形態において、上記分散粘度調整剤は、米国特許第4,863,623号(第2欄15行目〜第3欄52行目を参照のこと)または国際公開WO2006/015130(第2ページ段落[0008]を参照のこと。調製実施例は、段落[0065]〜[0073]に記載される)に記載されるものを含み得る。一実施形態において、上記分散粘度調整剤は、米国特許第7,790,661号の第2欄48行目〜第10欄38行目に記載されるものを含み得る。
【0083】
一実施形態において、本発明の潤滑組成物は、分散粘度調整剤をさらに含む。上記分散粘度調整剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜15重量%、または0重量%〜10重量%、または0.05重量%〜5重量%、または0.2重量%〜2重量%において存在し得る。
【0084】
上記潤滑組成物は、分散剤、またはその混合物をさらに含み得る。上記分散剤は、スクシンイミド分散剤、Mannich分散剤、スクシンアミド分散剤、ポリオレフィンコハク酸エステル、アミド、もしくはエステル−アミド、またはこれらの混合物であり得る。一実施形態において、上記分散剤は、単一の分散剤として存在し得る。一実施形態において、上記分散剤は、2種または3種の異なる分散剤の混合物として存在し得、ここで少なくとも1種は、スクシンイミド分散剤であり得る。
【0085】
上記スクシンイミド分散剤は、脂肪族ポリアミン、またはその混合物に由来し得る。上
記脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミン、またはこれらの混合物のような脂肪族ポリアミンであり得る。一実施形態において、上記脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミンであり得る。一実施形態において、上記脂肪族ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ポリアミンスティルボトム(polyamine still bottom)、およびこれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0086】
一実施形態において、上記分散剤は、ポリオレフィンコハク酸エステル、アミド、またはエステル−アミドであり得る。例えば、ポリオレフィンコハク酸エステルは、ペンタエリスリトールのポリイソブチレンコハク酸エステル、またはこれらの混合物であり得る。ポリオレフィンコハク酸エステル−アミドは、上記のように、アルコール(例えば、ペンタエリスリトール)およびポリアミンと反応したポリイソブチレンコハク酸であり得る。
【0087】
上記分散剤は、N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミドであり得る。N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミドの例は、ポリイソブチレンスクシンイミドである。代表的には、ポリイソブチレンコハク酸無水物が由来する上記ポリイソブチレンは、数平均分子量 350〜5000、または550〜3000または750〜2500を有する。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第3,172,892号、同第3,219,666号、同第3,316,177号、同第3,340,281号、同第3,351,552号、同第3,381,022号、同第3,433,744号、同第3,444,170号、同第3,467,668号、同第3,501,405号、同第3,542,680号、同第3,576,743号、同第3,632,511号、同第4,234,435号、再発行第26,433号、および米国特許第6,165,235号、同第7,238,650号およびEP特許出願0 355 895 Aに開示される。
【0088】
上記分散剤はまた、種々の剤のうちのいずれかとの反応によって、従来法によって後処理され得る。これらの中には、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸)、ウレア、チオウレア、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸(例えば、テレフタル酸)、炭化水素置換されたコハク酸無水物、マレイン酸無水物、ニトリル、エポキシド、およびリン化合物がある。一実施形態において、上記後処理される分散剤は、ホウ酸化(borated)される。一実施形態において、上記後処理される分散剤は、ジメルカプトチアジアゾールと反応される。一実施形態において、上記後処理される分散剤は、リン酸または亜リン酸と反応される。一実施形態において、上記後処理される分散剤は、テレフタル酸およびホウ酸と反応される(米国特許出願US2009/0054278に記載されるとおり)。
【0089】
上記分散剤は、上記潤滑組成物のうちの0.01重量%〜20重量%、または0.1重量%〜15重量%、または0.1重量%〜10重量%、または1重量%〜6重量%、または1〜3重量%において存在し得る。
【0090】
一実施形態において、本発明は、過塩基性金属含有清浄剤をさらに含む潤滑組成物を提供する。上記金属含有清浄剤の金属は、亜鉛、ナトリウム、カルシウム、バリウム、またはマグネシウムであり得る。代表的には、上記金属含有清浄剤の金属は、ナトリウム、カルシウム、またはマグネシウムであり得る。
【0091】
上記過塩基性金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、およびこれらの混合物、またはこれらのホウ酸化等価物からなる群より選択され得る。上記過塩基性清浄剤は、ホウ酸のようなホウ酸化剤(borating agent)でホウ酸化され得る。
【0092】
上記過塩基性金属含有清浄剤はまた、混合界面活性剤系(フェネートおよび/またはスルホネート成分、例えば、フェネート/サリチレート、スルホネート/フェネート、スルホネート/サリチレート、スルホネート/フェネート/サリチレートが挙げられる;例えば、米国特許第6,429,178号;同第6,429,179号;同第6,153,565号;および同第6,281,179号において記載されるとおり)で形成された「ハイブリッド」清浄剤を含み得る。例えば、ハイブリッドスルホネート/フェネート清浄剤が使用される場合、上記ハイブリッド清浄剤は、それぞれ、フェネートおよびスルホネート石けんの類似の量を導入する、フェネートおよびスルホネート清浄剤の別個の量に等価であるとみなされる。
【0093】
代表的には、過塩基性金属含有清浄剤は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレートまたはサリチレートの亜鉛塩、ナトリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩であり得る。過塩基性サリキサレート、フェネートおよびサリチレートは、代表的には、総塩基数 180〜450TBNを有する。過塩基性スルホネートは、代表的には、総塩基数 250〜600、または300〜500を有する。過塩基性清浄剤は、当該分野で公知である。一実施形態において、上記スルホネート清浄剤は、米国特許出願2005065045(および米国特許第7,407,919号として特許査定された)の段落[0026]〜[0037]において記載されるように、少なくとも8の金属比を有する、主に直鎖状のアルキルベンゼンスルホネート清浄剤であり得る。上記主に直鎖状のアルキルベンゼンスルホネート清浄剤は、燃料経済性を改善する一助となるために特に有用であり得る。
【0094】
代表的には、上記過塩基性金属含有清浄剤は、カルシウムまたはマグネシウムの過塩基性清浄剤であり得る。
【0095】
過塩基性清浄剤は、当該分野で公知である。過塩基性物質(他に、過塩基性塩または超塩基性塩ともいわれる)は、一般に、上記金属および上記金属と反応した特定の酸性有機化合物の化学量論に従う中和のために存在するものの金属含有量によって特徴付けられる、単相の均一なニュートン系である。上記過塩基性物質は、酸性物質(代表的には、無機酸または低級カルボン酸、好ましくは、二酸化炭素)と、酸性有機化合物、上記酸性有機物質のための少なくとも1種の不活性な有機溶媒(鉱油、ナフサ、トルエン、キシレンなど)を含む反応媒体、化学量論的に過剰な金属塩基、および促進剤(例えば、塩化カルシウム、酢酸、フェノールまたはアルコール)を含む混合物とを反応させることによって調製される。上記酸性有機物質は、通常は、油中である程度の溶解度を提供するに十分な数の炭素原子を有する。「過剰な」金属(化学量論的に)の量は、金属比の点から一般に表現される。用語「金属比」は、上記金属の総当量 対 上記酸性有機化合物の当量の比である。中性金属塩は、金属比1を有する。通常の塩に存在する金属の3.5倍程度を有する塩は、3.5当量過剰の金属、すなわち比4.5を有する。用語「金属比」はまた、標準テキスト、標題「Chemistry and Technology of Lubricants」, Third Edition,R. M. MortierおよびS. T. Orszulik編, Copyright 2010, 219ページ、副題7.25において説明されている。
【0096】
一実施形態において、上記摩擦調整剤は、アミンの長鎖脂肪酸誘導体、長鎖脂肪エステル、または長鎖脂肪エポキシドの誘導体;脂肪イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪アルキルタートレート;脂肪アルキル酒石酸イミド(tartrimides);脂肪アルキル酒石酸アミド(tartramides);脂肪グリコレート;および脂肪グリコールアミドからなる群より選択され得る。上記摩擦調整剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜6重量%、または0.01重量%〜4重量%、または0.05重量%〜2
重量%、または0.1重量%〜2重量%において存在し得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、摩擦調整剤に関連する用語「脂肪アルキル」または「脂肪(の)」は、10〜22個の炭素原子を有する炭素鎖、代表的には、直鎖の炭素鎖を意味する。
【0098】
適切な摩擦調整剤の例としては、以下が挙げられる:アミン、脂肪エステル、または脂肪エポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;脂肪イミダゾリン(例えば、カルボン酸およびポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物);アルキルリン酸のアミン塩;脂肪アルキルタートレート;脂肪アルキル酒石酸イミド;脂肪アルキル酒石酸アミド;脂肪ホスホネート;脂肪ホスファイト;ホウ酸化リン脂質、ホウ酸化脂肪エポキシド;グリセロールエステル;ホウ酸化グリセロールエステル;脂肪アミン;アルコキシ化脂肪アミン;ホウ酸化アルコキシ化脂肪アミン;ヒドロキシル脂肪アミンおよびポリヒドロキシ脂肪アミン(三級ヒドロキシ脂肪アミンを含む);ヒドロキシアルキルアミド;脂肪酸の金属塩;アルキルサリチレートの金属塩;脂肪オキサゾリン;脂肪エトキシ化アルコール;カルボン酸およびポリアルキレンポリアミンの縮合生成物;または脂肪カルボン酸と、グアニジン、アミノグアニジン、ウレア、もしくはチオウレアおよびこれらの塩とからの反応生成物。
【0099】
摩擦調整剤はまた、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、ポリオールおよび脂肪族カルボン酸のひまわり油または大豆油モノエステルのような物質を包含し得る。
【0100】
一実施形態において、上記摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態において、上記長鎖脂肪酸エステルは、モノエステルであり得、別の実施形態において、上記長鎖脂肪酸エステルは、トリグリセリドであり得る。
【0101】
上記潤滑組成物は、必要に応じて、少なくとも1種の耐摩耗剤をさらに含む。適切な耐摩耗剤の例としては、以下が挙げられる:チタン化合物、タートレート、酒石酸イミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)、ホスファイト(例えば、亜リン酸ジブチル)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物(例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル(thiocarbamic ether)、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド。上記耐摩耗剤は、一実施形態において、国際公開WO2006/044411またはカナダ国特許CA 1 183 125に開示されるように、タートレート、または酒石酸イミドを含む。上記タートレートまたは酒石酸イミドは、アルキル−エステル基を含み得、ここで上記アルキル基の炭素原子の合計は、少なくとも8である。上記耐摩耗剤は、一実施形態において、米国特許出願20050198894に開示されるように、シトレートを含み得る。
【0102】
別のクラスの添加剤としては、米国特許第7,727,943号およびUS2006/0014651に開示されるように、油溶性チタン化合物が挙げられる。上記油溶性チタン化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、堆積制御添加剤、またはこれら機能のうちの1つより多くとして機能し得る。一実施形態において、上記油溶性チタン化合物は、チタン(IV)アルコキシドである。上記チタンアルコキシドは、一価アルコール、ポリオール、またはこれらの混合物から形成される。一価アルコキシドは、2〜16個、または3〜10個の炭素原子を有し得る。一実施形態において、上記チタンアルコキシドは、チタン(IV)イソプロポキシドである。一実施形態において、上記チタンアルコキシドは、チタン(IV)2−エチルヘキソキシドである。一実施形態において、上記チタン化合物は、ビシナル1,2−ジオールまたはポリオールのアルコキシドを含む。一実施形態
において、上記1,2−ビシナルジオールは、グリセロールの脂肪酸モノエステルを含み、しばしば、上記脂肪酸は、オレイン酸である。
【0103】
一実施形態において、上記油溶性チタン化合物は、カルボン酸チタンである。一実施形態において、上記カルボン酸チタン(IV)は、ネオデカン酸チタンである。
【0104】
油に可溶性である極圧(EP)剤としては、硫黄含有EP剤およびクロロ硫黄(chlorosulphur)含有EP剤、ジメルカプトチアジアゾールまたは分散剤のCS誘導体(代表的には、スクシンイミド分散剤)、塩素化炭化水素EP剤の誘導体およびリンEP剤が挙げられる。このようなEP剤の例としては、以下が挙げられる:塩素化ワックス;硫化オレフィン(例えば、硫化イソブチレン)、ヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはそのオリゴマー、有機スルフィドおよびポリスルフィド(例えば、ジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、ならびに硫化Diels−Alder付加物;リン硫化(phosphosulphurised)炭化水素(例えば、硫化リンと、テルペンチンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物);リンエステル(例えば、ジヒドロカーボンホスファイトおよびトリヒドロカーボンホスファイト、例えば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニル;亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリル、およびポリプロピレン置換された亜リン酸フェノール;金属チオカルバメート(例えば、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびヘプチルフェノール二酸バリウム);アルキルリン酸およびジアルキルリン酸のアミン塩または誘導体(例えば、ジアルキルジチオリン酸と、プロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩、およびその後に続くさらなるPとの反応を含む);ならびにこれらの混合物(米国特許第3,197,405号に記載されるとおり)。
【0105】
本発明の組成物において有用であり得る消泡剤としては、ポリシロキサン、アクリル酸エチルと2−エチルヘキシルアクリレートとの、および必要に応じて、ビニルアセテートとのコポリマー、;抗乳化剤(フッ素化ポリシロキサン、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む)が挙げられる。
【0106】
本発明の組成物において有用であり得る流動点降下剤としては、ポリαオレフィン、マレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドが挙げられる。
【0107】
抗乳化剤としては、トリアルキルホスフェート、ならびにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの種々のポリマーおよびコポリマー、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0108】
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール(代表的には、トリルトリアゾール)、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾールの誘導体が挙げられる。上記金属不活性化剤はまた、腐食防止剤として記載され得る。
【0109】
シール膨潤剤としては、スルホレン(sulfolene)誘導体であるExxon Necton−37TM(FN 1380)およびExxon Mineral Seal OilTM(FN 3200)が挙げられる。
【0110】
(産業上の利用可能性)
本発明の潤滑組成物は、内燃機関、動力伝達経路デバイス、油圧系統、グリース、タービン、または冷媒中で有用であり得る。上記潤滑組成物が、グリース組成物の一部である場合、上記組成物は、増粘剤をさらに含む。上記増粘剤は、単純な金属石けん増粘剤、石けん複合体(soap complex)、非石けん増粘剤、このような酸官能化油の金属塩、ポリウレアおよびジウレアの増粘剤、スルホン酸カルシウム増粘剤、またはこれらの混合物が挙げられ得る。グリース用の増粘剤は、当該分野で周知である。
【0111】
一実施形態において、本発明は、内燃機関を潤滑する方法を提供する。上記エンジン構成要素は、鋼またはアルミニウムの表面を有し得る。
【0112】
アルミニウム表面は、共晶アルミニウム合金または過共晶アルミニウム合金(例えば、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、または他のセラミック材料に由来するもの)であり得るアルミニウム合金に由来し得る。上記アルミニウム表面は、アルミニウム合金、またはアルミニウ複合材を有するシリンダーボア、シリンダーブロック、またはピストンリングに存在し得る。
【0113】
上記内燃機関は、排気再循環システムを有していてもよいし、有していなくてもよい。上記内燃機関は、放出制御システムまたはターボチャージャーと適合され得る。上記放出制御システムの例としては、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)、または選択的触媒還元(SCR)を使用するシステムが挙げられる。
【0114】
一実施形態において、上記内燃機関は、ディーゼル燃料のエンジン(代表的には、ヘビーデューティーディーゼルエンジン)、ガソリン燃料のエンジン、天然ガス燃料のエンジン、ガソリン/アルコール混合燃料のエンジン、または水素燃料の内燃機関であり得る。一実施形態において、上記内燃機関は、ディーゼル燃料のエンジンであり得、別の実施形態において、ガソリン燃料のエンジンであり得る。一実施形態において、上記内燃機関は、ヘビーデューティーディーゼルエンジンであり得る。
【0115】
上記内燃機関は、2ストロークまたは4ストロークのエンジンであり得る。適切な内燃機関としては、船舶用ディーゼルエンジン、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、ならびに自動車およびトラックのエンジンが挙げられる。上記船舶用ディーゼルエンジンは、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑剤(代表的には、2ストロークエンジンにおいて)、システム油(代表的には、2ストロークエンジンにおいて)、またはクランク室潤滑剤(代表的には、4ストロークエンジンにおいて)で潤滑され得る。
【0116】
内燃機関のための上記潤滑組成物は、硫黄、リンまたは硫酸灰分(ASTM D−874)含有量とは無関係に、任意のエンジン潤滑剤に適切であり得る。上記エンジン油潤滑剤の硫黄含有量は、1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%以下であり得る。一実施形態において、上記硫黄含有量は、0.001重量%〜0.5重量%、または0.01重量%〜0.3重量%の範囲にあり得る。上記リン含有量は、0.2重量%以下、または0.12重量%以下、または0.1重量%以下、または0.085重量%以下、または0.08重量%以下、またはさらに0.06重量%以下、0.055重量%以下、または0.05重量%以下であり得る。一実施形態において、上記リン含有量は、0.04重量%〜0.12重量%であり得る。一実施形態において、上記リン含有量は、100ppm〜1000ppm、または200ppm〜600ppmであり得る。上記総硫酸灰分含有量は、上記潤滑組成物のうちの0.3重量%〜1.2重量%、または0.5重量%〜1.1重量%であり得る。一実施形態において、上記硫酸灰分含有量は、上記潤滑組成物のうちの0.5重量%〜1.1重量%であり得る。
【0117】
一実施形態において、上記潤滑組成物は、エンジン油であり得、ここで上記潤滑組成物は、上記潤滑組成物の、(i)硫黄含有量0.5重量%以下、(ii)リン含有量0.12重量%以下、および(iii)硫酸灰分含有量0.5重量%〜1.1重量%のうちの少なくとも1つを有するとして特徴付けられ得る。
【0118】
エンジン潤滑組成物は、他の添加剤をさらに含み得る。一実施形態において、本発明は、分散剤、耐摩耗剤、分散粘度調整剤(本発明の化合物以外)、摩擦調整剤、粘度調整剤、抗酸化剤、過塩基性清浄剤、またはこれらの混合物のうちの少なくとも1つをさらに含む潤滑組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤、耐摩耗剤、分散粘度調整剤、摩擦調整剤、粘度調整剤(代表的には、オレフィンコポリマー(例えば、エチレン−プロピレンコポリマー))、抗酸化剤(フェノール系抗酸化剤およびアミン系抗酸化剤が挙げられる)、過塩基性清浄剤(過塩基性スルホネートおよびフェネートが挙げられる)、またはこれらの混合物のうちの1つをさらに含む潤滑組成物を提供する。
【0119】
一実施形態において、エンジン潤滑組成物は、モリブデン化合物をさらに含む潤滑組成物であり得る。上記モリブデン化合物は、耐摩耗剤または抗酸化剤であり得る。上記モリブデン化合物は、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、およびこれらの混合物からなる群より選択され得る。上記モリブデン化合物は、上記潤滑組成物に0〜1000ppm、または5〜1000ppm、または10〜750ppm、5ppm〜300ppm、または20ppm〜250ppmのモリブデンを提供し得る。
【0120】
エンジン潤滑組成物は、リン含有耐摩耗剤をさらに含み得る。代表的には、上記リン含有耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ホスファイト、ホスフェート、ホスホネート、およびアンモニウムホスフェート塩、またはこれらの混合物であり得る。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、当該分野で公知である。上記耐摩耗剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜3重量%、または0.1重量%〜1.5重量%、または0.5重量%〜0.9重量%において存在し得る。
【0121】
上記過塩基性清浄剤(本発明の清浄剤以外)は、0重量%〜15重量%、または0.1重量%〜10重量%、または0.2重量%〜8重量%、または0.2重量%〜3重量%において存在し得る。例えば、ヘビーデューティーディーゼルエンジンにおいて、上記清浄剤は、上記潤滑組成物のうちの2重量%〜3重量%において存在し得る。乗用車エンジンについては、上記清浄剤は、上記潤滑組成物のうちの0.2重量%〜1重量%において存在し得る。一実施形態において、エンジン潤滑組成物は、少なくとも3、または少なくとも8、または少なくとも15の金属比を有する少なくとも1種の過塩基性清浄剤をさらに含む。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「石けん」は、清浄剤の界面活性部分を意味し、金属塩基(例えば、炭酸カルシウム)を含まない。上記石けんという用語は、清浄剤基質と、もいわれ得る。例えば、フェネート清浄剤石けんまたは基質は、アルキル化フェノールまたは硫黄結合アルキル化フェノール、またはメチレン結合アルキル化フェノールである。またはスルホネート清浄剤については、上記石けんまたは基質は、アルキルベンゼンスルホン酸の中性塩である。
【0123】
一実施形態において、内燃機関潤滑組成物は、清浄剤(本発明の清浄剤を含む)によって送達される石けん含有量を有し得、上記潤滑組成物のうちの0.06重量%〜1.4重量%未満、または0.1重量%〜1重量%未満、または0.15重量%〜0.9重量%の範囲にあり得る。
【0124】
代表的には、上記内燃機関潤滑組成物は、本発明の清浄剤を使用し得る。ここで上記ヒドロキシカルボン酸は、少なくとも2個のカルボン酸基を有し得る(例えば、酒石酸)。
【0125】
エンジン潤滑組成物のための有用な腐食防止剤は、WO2006/047486の5〜8段落に記載されるもの、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物および脂肪酸(例えば、オレイン酸)とポリアミンとの縮合生成物を含む。一実施形態において、上記腐食防止剤は、Synalox(登録商標)腐食防止剤を含む。上記Synalox(登録商標)腐食防止剤は、プロピレンオキシドのホモポリマーまたはコポリマーであり得る。上記Synalox(登録商標)腐食防止剤は、Form No. 118−01453−0702 AMS(The Dow Chemical Companyによって刊行)を有する製品パンフレットにおいてより詳細に記載される。上記製品パンフレットは、標題「SYNALOX Lubricants, High−Performance Polyglycols for Demanding Applications」である。
【0126】
一実施形態において、本発明の潤滑組成物は、分散粘度調整剤をさらに含む。上記分散粘度調整剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜5重量%、または0重量%〜4重量%、または0.05重量%〜2重量%、または0.2重量%〜1.2重量%において存在し得る。
【0127】
エンジン潤滑組成物は、異なる実施形態において、以下の表に開示される組成を有し得る:
【0128】
【表1】
動力伝達経路デバイス
一実施形態において、本発明の方法および潤滑組成物は、動力伝達経路デバイスに適切であり得る。上記動力伝達経路デバイスは、ギア油、車軸油、ドライブシャフト油、トラクション油、マニュアルトランスミッション油、オートマチックトランスミッション油、またはオフハイウェイ油(off highway oil)(例えば、農用トラクター油)のうちの少なくとも1つによって潤滑され得る。一実施形態において、本発明は、マ
ニュアルトランスミッションを潤滑する方法を提供し、上記マニュアルトランスミッションは、シンクロナイザーシステムを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。一実施形態において、本発明は、オートマチックトランスミッションを潤滑する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、車軸を潤滑する方法を提供する。
【0129】
動力伝達経路デバイスのための潤滑組成物は、上記潤滑組成物のうちの0.05重量%より多く、または0.4重量%〜5重量%、または0.5重量%〜3重量%、0.8重量%〜2.5重量%、1重量%〜2重量%、0.075重量%〜0.5重量%、または0.1重量%〜0.25重量%の硫黄含有量を有し得る。
【0130】
動力伝達経路デバイスのための潤滑組成物は、100ppm〜5000ppm、または200ppm〜4750ppm、300ppm〜4500ppm、または450ppm〜4000ppmのリン含有量を有し得る。
【0131】
オートマチックトランスミッションとしては、無段変速機(CVT)、変速比無限大変速機(IVT)、トロイダルトランスミッション、連続滑りトルクコンバータークラッチ(continuously slipping torque converter clutch)(CSTCC)、多段オートマチックトランスミッションまたはデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が挙げられる。
【0132】
オートマチックトランスミッションは、連続滑りトルクコンバータークラッチ(CSTCC)、湿式スタートおよびシフティングクラッチ(wet start and shifting clutch)を含み得、およびいくつかの場合においては、金属または複合材シンクロナイザーをも含み得る。
【0133】
デュアルクラッチトランスミッションまたはオートマチックトランスミッションは、ハイブリッドドライブを提供するための電気モーターユニットをも組み込み得る。
【0134】
マニュアルトランスミッション潤滑剤は、同期化されなくてもよいし、シンクロナイザー機構を含んでいてもよいマニュアルギアボックスにおいて使用され得る。上記ギアボックスは、自給式であってもよいし、トランスファーギアボックス、遊星歯車ボックス、作動デバイス、リミテッドスリップデフ、またはトルクベクタリングデバイスのうちのいずれかをさらに含んでいてもよい。これらは、マニュアルトランスミッション流体によって潤滑され得る。
【0135】
ギア油または車軸油は、実用車における遊星歯車ハブ減速車軸(planetary hub reduction axle)、メカニカルステアリングおよびトランスファーギアボックス、およびシンクロメッシュギアボックス、パワーテイクオフギア、リミテッドスリップ車軸(limited slip axle)、および遊星歯車ハブ減速ギアボックス(planetary hub reduction gear box)において使用され得る。
【0136】
本発明の潤滑組成物が動力伝達経路デバイスに適切である場合、一般に、以前に記載されるとおりのスクシンイミド分散剤が、使用され得る。一実施形態において、上記スクシンイミド分散剤は、N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミドであり得る。上記長鎖アルケニルスクシンイミドは、ポリイソブチレンスクシンイミドを含み得、ここでポリイソブチレンスクシンイミドが由来する上記ポリイソブチレンは、350〜5000、または500〜3000、または750〜1150の範囲の数平均分子量を有する。
【0137】
一実施形態において、動力伝達経路デバイスのための上記分散剤は、後処理された分散
剤であり得る。上記分散剤は、ジメルカプトチアジアゾールで、必要に応じて、リン化合物、芳香族ジカルボン酸、およびホウ酸化剤のうちの1種以上の存在下で後処理され得る。
【0138】
一実施形態において、上記後処理された分散剤は、アルケニルスクシンイミドまたはスクシンイミド清浄剤を、リンエステルおよび水とともに加熱して、上記エステルを部分的に水和することによって形成され得る。このタイプの後処理された分散剤は、例えば、米国特許第5,164,103号において開示されている。
【0139】
一実施形態において、上記後処理された分散剤は、分散剤およびジメルカプトチアジアゾールの混合物を調製し、上記混合物を約100℃より高く加熱することによって、生成され得る。このタイプの上記後処理された分散剤は、例えば、米国特許第4,136,043号において開示されている。
【0140】
一実施形態において、上記分散剤は、以下から調製される生成物を形成するために後処理され得、以下の工程を包含する:(i)分散剤(代表的には、スクシンイミド)、(ii)2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールもしくはヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはこれらのオリゴマー(代表的には、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはこれらのオリゴマー)、(iii)ホウ酸化剤(上記で記載されるものに類似);および(iv)必要に応じて、1,3二酸および1,4二酸(代表的には、テレフタル酸)殻なる群より選択される芳香族化合物のジカルボン酸、または(v)必要に応じて、リンの酸化合物(phosphorus acid compound)(リン酸または亜リン酸のいずれかを含む)を一緒に加熱する工程(上記加熱する工程は、(i)、(ii)、(iii)および必要に応じて、(iv)または必要に応じて、(v)の生成物を提供するために十分であり、これは、潤滑粘度の油に可溶性である)。このタイプの上記後処理された分散剤は、例えば、国際出願WO 2006/654726 Aに開示されている。
【0141】
一実施形態において、上記油溶性のリンアミン塩耐摩耗剤は、リンの酸エステルまたはその混合物のアミン塩を含む。上記リンの酸エステルのアミン塩としては、リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびそのアミン塩;ホスファイト;ならびにリン含有カルボン酸エステル、エーテル、およびアミドのアミン塩;リン酸もしくはトリリン酸のヒドロキシ置換されたジエステルまたはトリエステルおよびこれらのアミン塩;リン酸もしくはトリリン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルまたはトリエステルおよびそのアミン塩;ならびにこれらの混合物が挙げられる。上記リンの酸エステルのアミン塩は、単独で、または組み合わせにおいて使用され得る。
【0142】
一実施形態において、上記油溶性のリンアミン塩は、部分アミン塩−部分金属塩化合物またはその混合物を含む。一実施形態において、上記リン化合物は、分子中に硫黄原子をさらに含む。
【0143】
上記耐摩耗剤の例としては、非イオン性リン化合物(代表的には、+3または+5の酸化状態を伴うリン原子を有する化合物)が挙げられ得る。一実施形態において、上記リン化合物のアミン塩は、無灰分(すなわち、金属を含まない(他の成分と混合する前に))であり得る。
【0144】
上記アミン塩としての使用に適切であり得るアミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、およびこれらの混合物が挙げられる。上記アミンは、少なくとも1個のヒドロカルビル基、または特定の実施形態においては、2個または3個のヒドロカルビル基を有するものを含む。上記ヒドロカルビル基は、2〜30個の炭素原子、または他の実施
形態においては、8〜26個、または10〜20個、または13〜19個の炭素原子を含み得る。
【0145】
一級アミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ならびにn−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミンおよびオレイルアミンのような脂肪アミンが挙げられる。他の有用な脂肪アミンとしては、市販の脂肪アミン(例えば、「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals, Chicago, Illinoisから入手可能な製品)(例えば、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SD)が挙げられ、ここで文字名称は、脂肪基(例えば、ココ、オレイル、タロー、またはステアリル基)に関する。
【0146】
適切な二級アミンの例としては、ビス−2−エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミンおよびエチルアミルアミンが挙げられる。上記二級アミンは、環式アミン(例えば、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリン)であり得る。
【0147】
上記アミンはまた、三級脂肪族一級アミンであり得る。この場合の脂肪族基は、2〜30個、または6〜26個、または8〜24個の炭素原子を含むアルキル基であり得る。三級アルキルアミンとしては、モノアミン(例えば、tert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、tert−オクチルアミン、tert−デシルアミン、tertドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミン(tetracosanylamine)、およびtert−オクタコサニルアミン(octacosanylamine))が挙げられる。
【0148】
一実施形態において、リンの酸アミン塩(phosphorus acid amine salt)は、C11〜C14三級アルキル一級基またはこれらの混合物とのアミンを含む。一実施形態において、上記リンの酸アミン塩は、C14〜C18三級アルキル一級アミンを含むアミンまたはこれらの混合物を含む。一実施形態において、上記リンの酸アミン塩は、C18〜C22三級アルキル一級アミンを含むアミンまたはこれらの混合物を含む。
【0149】
アミンの混合物はまた、この任意選択の耐摩耗剤において使用され得る。一実施形態において、アミンの有用な混合物は、「Primene(登録商標) 81R」および「Primene(登録商標) JMT」である。Primene(登録商標) 81RおよびPrimene(登録商標) JMT(ともに、Rohm & Haas、またはDow Chemicalsによって製造および販売)は、それぞれ、C11〜C14三級アルキル一級アミンおよびC18〜C22三級アルキル一級アミンの混合物である。
【0150】
一実施形態において、リン化合物の油溶性アミン塩は、リン含有化合物の硫黄を含まないアミン塩を含み、以下を包含するプロセスによって得られ得た/得ることができる:アミンと、(i)リン酸のヒドロキシ置換ジエステル、または(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルまたはトリエステルのいずれかとを反応させる工程。このタイプの化合物のより詳細な説明は、国際出願PCT/US08/051126(または米国特許出願第11/627405号に等価)に開示されている。
【0151】
一実施形態において、上記アルキルリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩は、C14〜C18アルキルリン酸と、Primene 81RTM(Rohm & Haas、またはDow Chemicalsによって製造および販売)(これは、C11〜C14三級アルキル一級アミンの混合物である)との反応生成物である。
【0152】
ジアルキルジチオリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩の例としては、イソプロピルジチオリン酸、メチル−アミルジチオリン酸(4−メチル−2−ペンチルジチオリン酸またはこれらの混合物)、2−エチルヘキシルジチオリン酸、ヘプチルジチオリン酸、オクチルジチオリン酸またはノニルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81RTMとの反応生成物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0153】
一実施形態において、上記ジチオリン酸は、エポキシドまたはグリコールと反応され得る。この反応生成物は、リンの酸、無水物、または低級エステルとさらに反応される。上記エポキシドとしては、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドが挙げられる。有用なエポキシドの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、およびスチレンオキシドが挙げられる。一実施形態において、上記エポキシドは、プロピレンオキシドであり得る。上記グリコールは、1〜12個、または2〜6個、または2〜3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールであり得る。上記ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬およびこれらを反応させる方法は、米国特許第3,197,405号および同第3,544,465号に記載される。次いで、得られた酸は、アミンと塩形成され得る。適切なジチオリン酸由来の酸の例は、リンペントキシド(約64g)を58℃において45分間にわたって、514gのヒドロキシプロピル O,O−ジ(4−メチル−2−ペンチル)ホスホロジチオエート(ジ(4−メチル−2−ペンチル)−ホスホロジチオ酸と、1.3モルのプロピレンオキシドとを25℃において反応させることによって調製)に添加することによって調製される。上記混合物は、75℃において2.5時間にわたって加熱され得、珪藻土と混合され得、70℃において濾過され得る。上記濾液は、11.8重量% リン、15.2重量% 硫黄、および酸価87(ブロモフェノールブルー)を含む。
【0154】
上記ジチオカルバメート含有化合物は、ジチオカルバミン酸(dithiocarbamate acid)または塩と不飽和化合物とを反応させることによって調製され得る。上記ジチオカルバメート含有化合物はまた、アミン、二硫化炭素および不飽和化合物を同時に反応させることによって調製され得る。一般に、上記反応は、温度25℃〜125℃において起こる。
【0155】
硫化オレフィンを形成するために硫化され得る適切なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ウンデシル、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン、ノナデセン(nonodecene)、エイコセン、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物、ならびにそれらのダイマー、トリマーおよびテトラマーは、特に有用なオレフィンである。あるいは、上記オレフィンは、ジエン(例えば、1,3−ブタジエン)および不飽和エステル(例えば、ブチルアクリレート)のDiels−Alder付加物であり得る。
【0156】
別のクラスの硫化オレフィンとしては、脂肪酸およびそれらのエステルが挙げられる。上記脂肪酸は、しばしば、植物油または動物油から得られ;代表的には、4〜22個の炭素原子を含む。適切な脂肪酸およびそれらのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸またはこれらの混合物が挙げられる。しばしば
、上記脂肪酸は、ラード油、トール油、ラッカセイ油、大豆油、綿実油、ひまわり種子油、またはこれらの混合物から得られる。一実施形態において、脂肪酸および/またはエステルは、オレフィンと混合される。
【0157】
動力伝達経路デバイスに有用な腐食防止剤としては、1−アミノ−2−プロパノール、アミン、トリアゾール誘導体(トリルトリアゾールを含む)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物および/または脂肪酸(例えば、オレイン酸)とポリアミンとの縮合生成物が挙げられる。
【0158】
動力伝達経路デバイス潤滑組成物は、過塩基性清浄剤を含み得、これはホウ酸化されていても、されていなくてもよい。例えば、上記潤滑組成物は、ホウ酸化過塩基性カルシウムもしくはマグネシウムスルホネート清浄剤、またはこれらの混合物を含み得る。
【0159】
動力伝達経路デバイス潤滑組成物は、異なる実施形態において、以下の表に開示される組成物を有し得る:
【0160】
【表2】
脚注:
上記表中の粘度調節剤はまた、潤滑粘度の油の代替としてみなされ得る。
列Aは、自動車または車軸ギア潤滑剤の代表であり得る。
列Bは、オートマチックトランスミッション潤滑剤の代表であり得る。
列Cは、オフハイウェイ潤滑剤の代表であり得る。
列Dは、マニュアルトランスミッション潤滑剤の代表であり得る。
【0161】
以下の実施例は、本発明の例示を提供する。これら実施例は、非網羅的であり、かつ本発明の範囲を限定するとは解釈されない。
【実施例】
【0162】
調製実施例1(Prep1): 希釈油(512g)、アルコール(36.8g)、ポリイソブチレンコハク酸無水物(36.8g)、石灰(25g)、塩化カルシウム(1.55g)および水(2.22g)の溶液に、直鎖状C20−24−アルキルベンゼンスル
ホン酸(228g)を、少しずつ、20℃において添加する。次いで、上記混合物を100℃へと加熱し、1時間40分間にわたって維持して還流させる。次いで、上記反応混合物を蒸留条件下で150℃へと加温し、10分間にわたって維持し、その後室温へと冷却する。上記冷却した溶液に、カルシウムメチレン結合ヘプチルフェネート(64.6g)、アルコール(207.4g)、酒石酸(32.4g)、水(4.2g)および石灰62.3g)を添加する。次いで、上記混合物を50℃へと加温し、気体二酸化炭素を1時間にわたって導入することで炭酸塩化する(carbonated)。5回に分けてさらなる石灰(62.3g)を導入し、続いて、その後炭酸塩化する。次いで、上記反応混合物を150℃へと蒸留条件下で加熱し、100℃へと冷却し、最終的に、濾過して、最終生成物を得る。
【0163】
調製実施例2(Prep2): 希釈油(512g)、アルコール(36.8g)、ポリイソブチレンコハク酸無水物(36.8g)、石灰(25g)、塩化カルシウム(1.55g)および水(2.22g)の溶液に、直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸(228g)を少しずつ20℃において添加する。次いで、上記混合物を100℃へと加熱し、1時間40分間にわたって維持して還流させる。次いで、上記反応混合物を蒸留条件下で150℃へと加温し、10分間にわたって維持し、その後室温へと冷却する。上記冷却した溶液に、カルシウムメチレン結合ヘプチルフェネート(64.6g)、アルコール(207.4g)、グリコール酸(36.8g)、水(4.2g)および石灰(62.3g)を添加する。次いで、上記混合物を50℃へと加温し、気体二酸化炭素を1時間にわたって導入することで炭酸塩化する。5回に分けてさらなる石灰(62.3g)を導入し、続いて、その後炭酸塩化する。次いで、上記反応混合物を150℃へと蒸留条件下で加熱し、100℃へと冷却し、最終的に、濾過して、最終生成物を得る。
【0164】
以下の実施例において引用される量は、従来の量の希釈油を含む。代表的には、希釈油は、分散剤および清浄剤中に存在し、30重量%〜60重量% 希釈油まで変動し得る。
【0165】
(内燃潤滑剤評価)
比較例1(CE1)は、5W−30エンジンオイル潤滑剤(7.5重量%の分散剤、0.57重量%のジアルキルジチオリン酸亜鉛、3.6重量%の抗酸化剤(フェノール系抗酸化剤、アミン系抗酸化剤、および硫化オレフィンの混合物)、0.15重量%の腐食防止剤、0.29重量%の80 TBN スルホネート清浄剤、および1.80重量%の400 TBN スルホネート清浄剤を含む)である。残りは、4mm−1油および6mm−1油の混合物に由来するAPI グループIII基油である。上記潤滑組成物は、硫酸灰分含有量 1重量%、および清浄剤石けん含有量 0.5重量%を有する。
【0166】
実施例1(EX1)は、400 TBNスルホネート清浄剤を、Prep1の生成物1.8重量%で置き換えたことを除いて、CE1に類似である。
【0167】
比較例2(CE2)は、1.53重量%の400 TBN スルホネート清浄剤および1.19重量%の80 TBN スルホネート清浄剤を含むことを除いて、CE1に類似である。上記潤滑組成物は、硫酸灰分含有量 1重量%、および清浄剤石けん含有量 1重量%を有する。
【0168】
実施例2(EX2)は、上記400 TBN スルホネート清浄剤を、1.53重量%のPrep1の生成物で置き換えたことを除いて、CE2に類似である。
【0169】
比較例3(CE3)は、0.5重量%のC12−14アルキルタートレートをさらに含むことを除いて、CE1に類似である。
【0170】
実施例3(EX3)は、上記400 TBN スルホネート清浄剤を、1.8重量%のPrep1の生成物で置き換えたことを除いて、CE3に類似である。
【0171】
CE1〜CE3およびEX1〜EX3を、PCS Instrumentsから入手可能なプログラムされた温度高周波数往復リグ(HFRR)を使用して、耐摩耗性能を評価する。上記評価のためのHFRR条件は、500g負荷、75分間の持続時間、1000μmストローク、20ヘルツ周波数、および温度プロフィール(40℃において15分間、続いて、160℃へと毎分2℃の割合での温度上昇)である。得られる上記摩耗痕データが測定され、以下の表中に示される:
【0172】
【表3】
(動力伝達経路潤滑剤評価)
比較例4(CE4)は、0.25重量%の400 TBN スルホン酸カルシウム清浄剤、0.2重量%の亜リン酸ジブチル、0.5重量%のアミン系抗酸化剤、テレフタル酸およびホウ酸と反応された2重量%の後処理された分散剤、および基油を含む。上記ギア油は、粘度5.6mm/sを有する。
【0173】
比較例5(CE5)は、CE4に類似で有り、1重量%の400 TBN スルホン酸カルシウム清浄剤を含む。
【0174】
実施例4(EX4)は、1重量%の400 TBN スルホン酸カルシウム清浄剤を、1重量%のPrep1の生成物で置き換えたことを除いて、CE5に類似である。
【0175】
実施例5(EX5)は、1重量%の400 TBN スルホン酸カルシウム清浄剤を、1重量%のPrep2の生成物で置き換えたことを除いて、CE5に類似である。
【0176】
CE4、CE5、EX4およびEX5を、FZG試験手順およびVSFT試験手順によって、ギア油性能について評価する。
【0177】
上記FZG試験は、減速ギア、ハイポイドギア、オートマチックトランスミッションギアなどのための油の抗スカフィング(antiscuffing)特性を測定する。上記FZG試験の説明およびその結果の意味は、G. Niemann、H. RettigおよびG. LechnerによるASLE Transactions, 4 71−86 (1961)の記事「Scuffing Tests on Gear Oils
in the FZG Apparatus」において見いだされる。試験手順DIN
51354が利用され、これは、Prufung von Schmierstoff
en: Mechanische Prufung von Gebriebeolen
in der FZG−−Zahnrad−−Verspannungs−−Prufmaschine, January 1970において考察される。上記FZG試験の以下のランク付けは、FZG A10/16.6R/90試験に基づく。報告される結果は、負荷ステージ失敗を含む。代表的には、より高い負荷ステージ失敗を報告する潤滑剤について、より良好な結果が得られる。
【0178】
上記VSFT試験手順は、金属または金属表面に対して回転させる別の摩擦物質であり得るディスクからなる。上記特定の試験において使用される摩擦物質は、表において示されるように、オートマチックトランスミッションクラッチにおいて一般に使用される種々の市販の摩擦物質である。上記試験は、3種の温度および2種の負荷レベルにわたって実施される。上記VSFTによって測定される摩擦係数は、一定圧でのいくつかの速度掃引(a number speed sweep)にわたって滑り速度(50および200r.p.m.)に対してプロットされる。その結果は、最初に、時間の関数としてμ−v曲線の傾きとして表され、40、80および120℃ならびに24kgおよび40kg(235Nおよび392N)の力について報告され、4時間間隔で、0〜52時間まで決定される。代表的には、傾きは、最初は正であり(ある量の変動はある)、徐々に低下し得、おそらく、特定の期間の後に負になる。
【0179】
全体として、本発明は、耐摩耗性能、摩擦調整(特に、燃料経済性を向上させるため)、または清浄性能のうちの少なくとも1つを提供し得る。
【0180】
上記の物質のうちのいくつかは、最終調合物において相互作用し得るるので、上記最終調合物の成分は、最初に添加されるものとは異なり得ることは、公知である。それによって形成される生成物(その意図された用途において本発明の潤滑組成物を使用する際に形成される生成物が挙げられる)は、容易に記載しにくい可能性がある。それにも関わらず、全てのこのような改変および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上記の成分を混合することによって調製される潤滑組成物を包含する。
【0181】
上記で言及される文書の各々は、本明細書に参考として援用される。実施例または他に明示的に示されている箇所を除いて、材料、反応条件、分子量、炭素原子数などの量を特定するこの説明中の全ての数量は、語句「約」によって修飾されていると理解されるべきである。別段示されなければ、本明細書で言及される各化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および他のこのような物質(これらは、市販のグレードにおいて存在すると通常は理解される)を含み得る市販のグレードの物質であると解釈されるべきである。しかし、各化学物質成分の量は、任意の溶媒または希釈油を除いて示され、これらは、別段示されなければ、市販の物質に習慣的に存在し得る。本明細書で示される上限および下限の量、範囲、および比は、独立して、組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各要素についての範囲および量は、他の要素のうちのいずれかについての範囲および量と一緒に使用され得る。
【0182】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、その通常の意味において使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、上記用語は、炭素原子を有する基であって、上記分子の残りに直接結合されかつ主に炭化水素特性を有するものに言及する。ヒドロカルビル基の例としては、以下が挙げられる:炭化水素置換基(脂肪族、脂環式、および芳香族置換基が挙げられる);置換された炭化水素置換基(すなわち、非炭化水素基(これは、本発明の状況において、上記置換基の主に炭化水素性質を変化させない)を含む置換基;およびヘテロ置換基(すなわち、主に炭化水素特性を同様に有するが、環または鎖中に炭素以外を含む置換基)。用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」のより詳細な定義は、国際公開WO20081
47704の段落[0118]〜[0119]、または米国公開特許出願2010−0197536の段落[0137]〜[0141]における類似の定義に記載される。
【0183】
本発明は、その好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、その種々の改変は、本明細書を読めば当業者に明らかになることは理解されるべきである。従って、本明細書に開示される発明が、添付の特許請求の範囲内に入るとして、このような改変を網羅すると解釈されることは理解されるべきである。
【0184】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項目1)
清浄剤を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)溶媒(代表的に、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)酸性清浄剤基質、および
(iii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b)必要に応じて、(a)の生成物と、二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、(a)または(b)の生成物から除去する工程;
を包含し、ここでヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物は、(a)、(b)、(c)、および工程(a)〜(c)の混合からなる群より選択されるいずれか必要とされる工程のうちの少なくとも1つに添加される、プロセス。
(項目2)
清浄剤を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)溶媒(代表的には、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))、の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)酸性清浄剤基質、および
(iii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b)(a)の生成物と、二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、(a)または(b)の生成物から除去する工程;
を包含し、ここでヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物は、工程(a)、(b)、または工程(a)もしくは(b)の混合のうちの少なくとも1つに添加される、プロセス。
(項目3)
清浄剤を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)溶媒(代表的には、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)酸性清浄剤基質、および
(iii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b)(a)の生成物と、ヒドロキシカルボン酸、またはその反応性等価物、および二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、(a)または(b)の生成物から除去する工程;
を包含する、プロセス。
(項目4)
清浄剤を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)溶媒(代表的には、油状媒体、または炭化水素溶媒(例えば、アルカン(代表的には、ヘキサン)、またはトルエン))の存在下で、および必要に応じて、さらにアルコールの存在下で、
(i)ヒドロキシカルボン酸、
(ii)酸性清浄剤基質、および
(iii)塩基性金属化合物
の混合物を反応させる工程;
(b)(a)の生成物と、二酸化炭素とを反応させて、過塩基性清浄剤を形成する工程;ならびに
(c)必要に応じて、揮発性物質(代表的には、溶媒、水またはアルコール)を、(b)の生成物から除去する工程、
を包含する、プロセス。
(項目5)
工程(b)を要し、過塩基性清浄剤を調製するプロセスを生じ、そして前記清浄剤は、200〜600、または300〜550、または350〜500mg KOH/gのTBNを有する、項目1に記載のプロセス。
(項目6)
工程(b)は行われず、非過塩基性清浄剤を調製するプロセスを生じる、項目1に記載のプロセス。
(項目7)
前記塩基性金属化合物は、前記金属のヒドロキシドまたはオキシドである、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目8)
前記塩基性金属化合物は、一価、二価、または三価の金属を含む、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目9)
前記金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、項目8に記載のプロセス。
(項目10)
前記金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、またはこれらの混合物である、項目8または9に記載のプロセス。
(項目11)
前記金属は、カルシウムまたはマグネシウムである、項目8または9のいずれかに記載のプロセス。
(項目12)
前記酸性清浄剤基質は、ヒドロカルビル置換されたスルホン酸、ヒドロカルビル置換されたヒドロキシ芳香族酸、またはこれらの混合物である、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目13)
前記酸性清浄剤基質は、ヒドロカルビル置換されたスルホン酸またはこれらの混合物である、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目14)
前記酸性清浄剤基質は、ヒドロカルビル置換された有機酸またはヒドロカルビル置換されたフェノールである、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目15)
前記ヒドロキシカルボン酸は、非芳香族である、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目16)
前記ヒドロキシカルボン酸は、以下の式:
【化2】
によって表され、ここで
nおよびmは、独立して、1〜5の整数であり;
Xは、脂肪族基もしくは脂環式基、または炭素鎖中に酸素原子を含む脂肪族基もしくは脂環式基、あるいは前述のタイプの置換された基であって、該基は、最大6個の炭素原子を含み、n+m個の利用可能な結合点を有する、基であり;
各Yは、独立して、−O−、>NH、もしくは>NRであるか、または2個のYが一緒になって、2個のカルボニル基の間で形成されるイミド構造R−N<の窒素を表し;そして
各RおよびRは、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、
各Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル基またはアシル基であるが、ただし少なくとも1個の−OR基は、該−C(O)−Y−R基のうちの少なくとも1個に対してαまたはβであるX内の炭素原子上に位置し、ただしRおよびRのうちの少なくとも一方は、水素である(代表的には、RおよびRの全てが水素である)、
前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目17)
前記ヒドロキシカルボン酸は、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、またはこれらの混合物である、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目18)
前記ヒドロキシカルボン酸は、酒石酸、クエン酸、またはこれらの混合物(代表的には、酒石酸)である、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目19)
前記ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、リンゴ酸、またはこれらの混合物である、項目1〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目20)
前記酸性清浄剤基質および前記ヒドロキシカルボン酸は、該酸性清浄剤基質 対 該ヒドロキシカルボン酸のモル比が20:1〜1:2、または20:1〜1:1、または18:1〜1:1の範囲にある反応物として存在する、前記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目21)
項目1〜20のいずれかに記載のプロセスによって得られた/得ることができる、生成物。
(項目22)
潤滑粘度の油および項目21に記載の生成物を含む、潤滑組成物。
(項目23)
前記生成物は、前記潤滑組成物のうちの0.01重量%〜8重量%、または0.1重量%〜6重量%、または0.15重量%〜5重量%、または0.2重量%〜3重量%の範囲において存在する、項目22に記載の潤滑組成物。
(項目24)
内燃機関を潤滑する方法であって、該方法は、該内燃機関に、項目22〜23のいずれかに記載の潤滑組成物を供給する工程を包含する、方法。
(項目25)
前記内燃機関は、シリンダーボア、シリンダーブロック、またはピストンリング上に鋼表面を有する、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記内燃機関は、鋼、またはアルミニウム合金、またはアルミニウム複合材の表面を有する、項目24に記載の方法。
(項目27)
動力伝達経路デバイスを潤滑する方法であって、該方法は、該動力伝達経路デバイスに、項目22〜23のいずれかに記載の潤滑組成物を供給する工程を包含する、方法。
(項目28)
前記動力伝達経路デバイスは、マニュアルトランスミッションを含み、該マニュアルトランスミッションは、シンクロナイザーシステム、または車軸を含んでいても含んでいなくてもよい、項目27に記載の方法。