(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子部品の実装工程は、プリント基板に塗布材料(printable materials)を塗布する印刷工程と、印刷工程後の塗布材料の印刷状態を検査する検査工程と、検査工程後に塗布材料が塗布されたプリント基板に電子部品を実装する実装工程とを含む。
【0003】
印刷工程としては、スクリーン印刷による方法が広く用いられている。スクリーン印刷は、基板の表面に塗布材料が塗布する技術である。塗布材料を塗布するため、基板には、スクリーンマスクが用いられる。スクリーンマスクは、基板に印刷される回路パターンに対応する開口部(孔)が形成されたステンシルの一種である。印刷工程では、スクリーンマスクは、基板の表面に重装される。スクリーンマスクの上には、塗布材料が供給される。塗布材料は、スキージによってローリングされる。ローリングされた塗布材料は、開口部を通して基板に塗布される。印刷工程の後においては、実装工程の前に検査工程が行われる。
【0004】
検査工程においては、印刷部位に正しく塗布材料が印刷されているか否かが判定される。この検査工程においては、合否判定の基準となる検査用データが必要となる。検査用データをスクリーンマスクの設計用データ(典型的にはCADデータ)から生成した場合、現物の公差や、経時劣化の影響等により、現物と検査用データとの間にずれが生じ、正確な検査ができなくなる。よって、特許文献1や特許文献2に開示されている技術では、印刷に用いられる実物のマスクプレートから検査用データを取得する方法が採用されている。
【0005】
マスクプレートの開口部を画像認識によって検出する場合、撮像に用いられるカメラの撮像視野は、一般にマスクプレートのサイズよりも小さい。そのため、画像認識に際しては、撮像視野をマスクプレート上で移動させながら複数回撮像し、複数の画像を取得する必要がある。複数の画像から、検査用データを生成する際には、個々の撮像視野からはみ出した開口部を一つの開口部として正確に再現する必要がある。
【0006】
そこで、特許文献1の構成では、マトリックス配列の視野位置に撮像視野を順次移動させて複数の画像を取得する際に、開口部の一部がはみ出した不完全開口部が検出された場合には、その不完全開口部を当該画像における結合対象開口部として特定し、個別に登録する。次いで、この画像に係る不完全開口部と、この画像に隣接する撮像視野で得られた画像における不完全開口部とを結合して、一つの開口部を生成する結合処理を実行している。
【0007】
また、特許文献2の構成では、マトリックス配列の視野位置に撮像視野を順次移動させて複数の画像を取得する際に、開口部の一部がはみ出した不完全開口部が検出された場合には、その不完全開口部のサイズに基づいて、除外エリアを決定し、データ化対象から除外エリアを除外する。次いで、上記撮像視野に隣接する位置に撮像視野を移動させる際に、除外エリアだけ撮像視野を重ね合わせて、先に除外した開口部を隣接撮像視野に含めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法では、撮像視野ごとに不完全開口部の登録処理を実行する必要がある。しかし、不完全開口部の登録処理では、個々の開口部の断面を含むデータを取得し、登録処理を実行する必要があるため、データ処理量が多くなり、処理時間が長くなるという不具合があった。
【0010】
また、特許文献2の方法では、除外エリアを特定するための演算、特定されたエリアからデータを除去するための演算、隣接する撮像視野をシフトする処理等が必要となり、処理に時間がかかるばかりでなく、撮像視野をシフトするという煩雑な処理が必要となっていた。さらに、シフト回数の増加に伴い、撮像回数も増加することになる。そのため、処理が複雑になり、処理時間も長くかかっていた。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、検査処理に用いられる検査用データをスクリーンマスクの画像から生成するに当たり、処理時間を短縮することのできるスクリーン印刷用検査データの作成ユニット、スクリーン印刷装置およびスクリーン印刷用検査データの作成方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、塗布材料を透過させる複数の開口部が形成されたスクリーンマスクの下面を撮像して画像データを出力する撮像手段と、前記撮像手段の視野に応じて前記スクリーンマスクの下面をマトリックス状に分割した撮像エリアを設定するエリア設定手段と、各撮像エリアごとに前記スクリーンマスクの下面を撮像できるように前記撮像手段を移動するドライブ手段と、前記撮像手段が出力した、前記スクリーンマスクの各撮像エリアごとの画像データを一枚の画像を表す画像データに結合する結合手段と、結合処理された画像データから前記スクリーンマスクの前記開口部のデータを特定する特定手段と、特定された開口部のデータに基づいて、検査用のデータを生成する生成手段とを備えているスクリーン印刷用検査データの作成ユニットである。
【0013】
また、本発明の別の態様は、スクリーン印刷用検査データの作成方法であって、塗布材料を透過させる複数の開口部が形成されたスクリーンマスクの下面をマトリックス状に分割した撮像エリアを設定するエリア設定ステップと、各撮像エリアごとに前記スクリーンマスクの下面を撮像して画像データを取得する撮像ステップと、前記スクリーンマスクの各撮像エリアごとの画像データを一枚の画像を表す画像データに結合する結合ステップと、結合処理された画像データから前記スクリーンマスクの前記開口部のデータを特定する特定ステップと、特定された開口部のデータに基づいて、検査用のデータを生成する生成ステップとを備えているスクリーン印刷用検査データの作成方法である。
【0014】
これらの態様では、現物のスクリーンマスクから検査用のデータを生成することができる。この検査用データを生成する際には、まず、撮像エリアが設定される。撮像エリアは、撮像手段の視野に応じてスクリーンマスクの下面を分割したマトリックス状に配列されている。スクリーンマスクは、撮像エリア毎に撮像され、画像データが生成(出力)される。出力された複数の画像データは、まず一枚の画像を表す画像データに結合される。この処理の後に、結合された画像データから開口部のデータが特定される。従って、開口部の一部が撮像エリアからはみ出している場合においても、分割された開口部毎のデータを特定し、個別に保存する必要がない。そのため、処理速度を迅速化することができる。
【0015】
好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成ユニットにおいて、前記ドライブ手段は、前記スクリーンマスクの一辺に沿って前記撮像エリアを往動するように前記撮像手段を駆動するとともに、前記撮像手段が往動した撮像エリアに隣接する次の撮像エリアを、往動した方向と逆方向に復動するように前記撮像手段を駆動するように構成されており、前記撮像手段は、往動時にも復動時にも前記スクリーンマスクの下面を前記撮像エリアごとに順次、撮像するように構成されている。
【0016】
また、好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成方法において、前記撮像ステップは、撮像手段を用いて前記スクリーンマスクの下面を撮像する処理であって、前記スクリーンマスクの一辺に沿って前記撮像エリアを往動するように撮像手段を駆動するとともに、前記撮像手段が往動した撮像エリアに隣接する次の撮像エリアを、往動した方向と逆方向に復動するように前記撮像手段を駆動する処理を含むとともに、往動時にも復動時にも前記スクリーンマスクの下面を前記撮像エリアごとに順次、撮像する処理を含む。
【0017】
これらの態様では、いわゆる「牛耕式」(Boustrophedon)でスクリーンマスクの下面を撮像することができる。すなわち、撮像手段がスクリーンマスクの一辺に沿って、往動する際も復動する際も撮像処理が実行される。したがって、撮像手段を一方向(例えば、分割された撮像エリアの列方向)に駆動する際に、戻りがけで空送りする時間がなくなり、撮像時間を短縮することができる。上記「一方向」は、列に限らず、行であってもよい。
【0018】
好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成ユニットにおいて、前記撮像手段が出力した画像データを一時的に保存する作業領域をさらに備え、前記結合手段は、前記スクリーンマスクの一辺に沿う、前記撮像エリアの一行分又は一列分を一単位として、少なくとも二単位分の撮像エリアの画像データを前記作業領域に保存するように構成されており、前記特定手段は、前記作業領域に保存された前記二単位分の画像データから前記開口部のデータを特定するように構成されている。
【0019】
また、好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成方法において、前記結合ステップは、前記スクリーンマスクの一辺に沿う、前記撮像エリアの一行分又は一列分を一単位として、少なくとも二単位分の撮像エリアの画像データを前記作業領域に保存する処理を含み、前記特定ステップは、前記作業領域に保存された前記二単位分の画像データから前記開口部のデータを特定する処理を含む。
【0020】
これらの態様では、途切れた開口部のデータを得るために必要最低限度の画像データを扱うことができる。よって、開口部のデータを得るために必要なメモリ容量や処理容量を最小限度のものに設定することができる。
【0021】
好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成ユニットにおいて、前記結合手段は、前記特定手段が前記開口部のデータを特定した後、前記作業領域の画像データを最初の一単位分から順に削除して、後続する画像データの保存順序を繰り上げるものである。
【0022】
また、好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成方法において、前記結合ステップは、前記特定ステップが前記開口部のデータを特定した後、前記作業領域の画像データを最初の一単位分から順に削除して、後続する画像データの保存順序を繰り上げる処理を含む。
【0023】
これらの態様では、いわゆるFIFO(First In First Out)方式で、作業領域内のデータが処理される。従って、比較的小さな容量の作業領域で効率よく開口部のデータを生成すること可能になる。通常、開口部は、全長が短い。一方、撮像手段は、広視野のものが多い。よって、一行分又は一列分を一単位として、二単位分の画像データが結合されている場合、接合部分で途切れていた開口部の全体を収めることができる。よって、比較的小さな作業領域内で、効率よく、開口部のデータを特定することが可能となる。
【0024】
好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成ユニットにおいて、前記特定手段は、前記結合手段が前記作業領域に画像データを保存するのに先立って、個々の撮像エリア内に全体が含まれている開口部のデータを特定するように構成されている。
【0025】
また、好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成方法において、前記特定ステップは、前記結合ステップが前記作業領域に画像データを保存するのに先立って、個々の撮像エリア内に全体が含まれている開口部のデータを特定する処理を含む。
【0026】
これらの態様では、個々の撮像エリア内に全体が含まれている開口部がある場合には、その開口部のデータが特定されるので、作業領域では、途切れている開口部の特定処理だけが実行されることになる。そのため、作業領域を使用している時間が短くなり、システム全体の負荷を低減することができる。
【0027】
好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成ユニットにおいて、前記特定手段が前記開口部のデータを特定するのに先立って前記画像データを二値化する二値化手段をさらに備えている。
【0028】
また、好ましい態様のスクリーン印刷用検査データの作成方法において、前記特定手段が前記開口部のデータを特定するのに先立って前記画像データを二値化する二値化ステップをさらに備えている。
【0029】
これらの態様では、特定手段が画像処理にするのに先立って、画像データが二値化される。よって、画像処理に必要なメモリ領域を可及的に小さくすることができる。
【0030】
さらに、本発明の別の態様は、フレームと、前記フレームに取り付けられたスクリーンマスクと、上記スクリーン印刷用検査データの作成ユニットとを備えたスクリーン印刷装置であって、前記撮像手段は、前記スクリーンマスクの下面を撮像するマスク撮像カメラで構成されており、前記ドライブ手段は、前記フレームに取り付けられ、前記マスク撮像カメラを前記スクリーンマスクに対し相対的に駆動するサーボモータで構成されているスクリーン印刷装置である。
【0031】
この態様では、既設のスクリーン印刷装置を用いて、スクリーン印刷用検査データを作成することができる。
【0032】
このように、本発明によれば、現物のスクリーンマスクから検査用のデータを生成する際に、個々の画像データを結合した後、結合された画像データから開口部のデータが生成されるので、効率よく短時間で、開口部のデータを生成することができる。よって本発明によれば、検査処理に用いられる検査用データをスクリーンマスクの画像から生成するに当たり、処理時間を短縮することができる、という顕著な効果を奏する。
【0033】
本発明のさらなる特徴、目的、構成、並びに作用効果は、添付図面と併せて読むべき以下の詳細な説明から容易に理解できるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置1の正面図、
図2は、そのスクリーン印刷装置の斜視図である。
【0037】
このスクリーン印刷装置1には、図外の基板搬送装置が接続されている。上記基板搬送装置は、プリント基板Wを一水平方向(
図1では紙面と直交する方向)に搬送する。基板搬送装置が搬送した未処理のプリント基板Wは、スクリーン印刷装置1によって印刷される。また、スクリーン印刷装置1によって印刷されたプリント基板Wは、基板搬送装置によって上記一水平方向に搬出される。
【0038】
以下の説明では、上記一水平方向をX軸方向とし、このX軸方向と直交する水平方向(
図1で左右方向)をY軸方向とする。また、Y軸方向において、
図1の左側を仮に前方とする。
【0039】
このスクリーン印刷装置1は、フレーム10と、印刷ユニット20と、テーブルユニット30と、撮像ユニット40と、制御部50(
図3参照)とを備えている。
【0040】
フレーム10は、スクリーン印刷装置1の外枠を構成する。フレーム10は、略直方体の基台11を備えている。基台11は、フレーム10の下端部に配置された構造体である。フレーム10は、スケレトン構造を有している。基台11には、ふたつ一組の柱12、12が前後に立設されている。各組の柱12は、Y軸方向に延びるビーム13とともに、X軸方向に開くゲート状の構造体を一体的に構成している。
【0041】
印刷ユニット20は、スクリーン印刷を実行するユニットである。印刷ユニット20は、スキージ21を備えている。スキージ21は、スクリーン印刷装置1の前方上方に位置する箇所に配置されている。スキージ21の下方には、印刷パターンにあわせて開口部分が形成されたスクリーンマスク25が着脱可能に取り付けられている。この印刷ユニット20の詳細な構成については、本件出願人が先に提案した、例えば特許第4451192号等に開示されているので、残余の説明は、省略する。
【0042】
テーブルユニット30は、スクリーン印刷装置1の基台11上に設けられている。テーブルユニット30は、上記基板搬送装置が搬送した未処理のプリント基板Wをクランプし、印刷ユニット20に供給する。また、印刷が終了すると、プリント基板Wを上記基板搬送装置に受け渡す。このテーブルユニット30の詳細な構成については、本件出願人が先に提案した、例えば特許第4451192号等に開示されているので、残余の説明は、省略する。
【0043】
撮像ユニット40は、プリント基板Wを撮像するユニットである。撮像ユニット40は、カメラヘッド41を備えている。カメラヘッド41は、フレーム10に取り付けられている可動体である。
【0044】
カメラヘッド41は、基板撮像カメラ42およびマスク撮像カメラ43を備えている。基板撮像カメラ42およびマスク撮像カメラ43は、何れも照明を備えたCCDカメラ等から構成されている。マスク撮像カメラ43は、本発明の撮像手段の一例である。
【0045】
基板撮像カメラ42は、プリント基板Wに印刷されたフィデューシャルマークを撮像する。撮像されたマーク画像は、制御部50で処理される。制御部50は、このマーク画像の情報に基づいてプリント基板Wの配置位置を認識するように構成されている。
【0046】
マスク撮像カメラ43は、スクリーンマスク25を撮像する。撮像されたマスク画像は、制御部50で処理される。制御部50は、このマスク画像の情報に基づいて、印刷の良否判定を実行することができるように構成されている。
【0047】
カメラヘッド41をフレーム10に取り付けるため、ビーム13の下面には、それぞれY軸方向に延びる一対のレール14が設けられる。レール14は、X軸方向に延びる可動ビーム15を移動可能に担持する。またビーム13は、ボールねじ軸16を支持する。ボールねじ軸16には、図略のナットが螺合している。このナットは、可動ビーム15の背面に取り付けられている。また、ボールねじ軸16は、フレーム10に固定されているサーボモータ17に連結されている。サーボモータ17は、ボールねじ軸16を双方向に駆動可能に構成されている。ボールねじ軸16が一方向に駆動されると、ナットを介し、可動ビーム15(従って、カメラヘッド41)がY軸方向において、前方から後方に移動する。以下の説明では、この動作を「往動」という。また、ボールねじ軸16が逆方向に駆動されると、ナットを介し、可動ビーム15(従って、カメラヘッド41)がY軸方向において、後方から前方に移動する。以下の説明では、この動作を「復動」という。可動ビーム15には、上下に対向し、それぞれがX軸方向に延びる一対のレール(図示せず)が設けられている。カメラヘッド41は、これらレールに移動可能に装着されている。
【0048】
また、可動ビーム15には、サーボモータ18が装着されている。このサーボモータ18は、図略のボールねじ機構を駆動する。この図略のボールねじ機構は、可動ビーム15上で、カメラヘッド41をX軸方向に往復移動できるように構成されている。
【0049】
上述したサーボモータ17、18は、本発明のドライブ手段の一例である。
【0050】
次に、
図3を参照して、制御部50は、このスクリーン印刷装置1の動作を制御するユニットである。制御部50は、主制御部51と、モータ制御部52と、画像処理部53と、入出力装置54とを有する。
【0051】
主制御部51は、スクリーン印刷装置1の制御を行う中枢となるものであって、演算部51aと記憶部51bとを備えている。
【0052】
演算部51aは、いわゆるCPUで構成されている。演算部51aは、スクリーン印刷装置1の制御に関する演算を行う。記憶部51bは、いわゆるメモリである。記憶部51bは、ROM、RAM、補助記憶装置を含む。記憶部51bには、スクリーン印刷装置1の制御に必要なプログラムを格納するプログラム領域510と、制御の基準となる制御データを格納するデータ領域511等が設定されている。さらに本実施形態では、記憶部51bに、作業領域512が設定される。この作業領域512は、後述する検査用データの作成時に一時的な画像データを記憶する。演算部51aは、記憶部51bに格納されたプログラムや制御データを適宜読み込み、各制御部52〜53から入力される情報をこれらのプログラムや制御データを用いて演算し、この演算結果を各制御部52〜53を通じて様々な機械要素に送信することにより、これらの機械要素を制御する。
【0053】
モータ制御部52は、上記サーボモータ17、18を含む各種サーボモータ61〜64と接続されている。各サーボモータ17、18、61〜64は、モータ制御部52を介して演算部51aからの制御データを受信し、当該制御データに基づいて所定量、所定方向に回動する。また、回動時のデータを、モータ制御部52を介して演算部51aに送信する。
【0054】
画像処理部53は、基板撮像カメラ42、マスク撮像カメラ43と接続されているものであり、これら基板撮像カメラ42、マスク撮像カメラ43は、画像処理部53を介して演算部51aからの制御データを受信し、当該制御データに基づいて所定タイミングで対象物を撮像する。また、撮像された画像に係る画像データを、画像処理部53を介して演算部51aに送信する。
【0055】
入出力装置54は、主制御部51に対し、モータ制御部52、画像処理部53、その他の機器を接続するインターフェイスである。図示の例では、入出力装置54を介して、制御状態をモニタするための表示ユニット70が接続されている。
【0056】
本実施形態において、制御部50は、本発明のエリア設定手段520、結合手段521、特定手段522、生成手段523、二値化手段524を論理的に構成する構成要素の具体例である。また、本実施形態において、エリア設定手段520、結合手段521、特定手段522、生成手段523、および二値化手段524を構成する制御部50、並びにマスク撮像カメラ43は、本発明の作成ユニット100の一例である。
【0057】
以下に説明するように、エリア設定手段520としての制御部50は、撮像手段としてのマスク撮像カメラ43の視野に応じてスクリーンマスク25の下面をマトリックス状に分割した撮像エリアAを設定する。
【0058】
結合手段521としての制御部50は、撮像手段としてのマスク撮像カメラ43が出力した、スクリーンマスク25の各撮像エリアAごとの画像データを一枚の画像を表す画像データに結合する。
【0059】
特定手段222としての制御部50は、結合処理された画像データからスクリーンマスク25の開口部25aのデータを特定する。
【0060】
生成手段523としての制御部50は、特定された開口部25aのデータに基づいて、検査用のデータを生成する。
【0061】
二値化手段としての制御部50は、開口部25aのデータを特定するのに先立って画像データを二値化する。
【0062】
換言すれば、制御部50は、撮像手段としてのマスク撮像カメラ43の視野に応じてスクリーンマスク25の下面をマトリックス状に分割した撮像エリアAを設定するエリア設定ステップと、撮像手段としてのマスク撮像カメラ43が出力した、スクリーンマスク25の各撮像エリアAごとの画像データを一枚の画像を表す画像データに結合する結合ステップと、結合処理された画像データからスクリーンマスク25の開口部25aのデータを特定する特定ステップと、特定された開口部25aのデータに基づいて、検査用のデータを生成する生成ステップと、開口部25aのデータが特定されるのに先立って画像データを二値化する二値化ステップとを実行するユニットである。
【0063】
次に、
図4以下を参照して、このスクリーン印刷装置1に使用する検査用データを作成する手順について説明する。
【0064】
以下の説明では、スクリーンマスク25として、例えば、
図6に示すような多数の開口部25aを有するものから検査用データを生成する場合を例に説明する。
【0065】
図4および
図6を参照して、制御部50は、まず調査視野列番号Cの初期値を1に設定する(ステップS1)。次に、調査視野行番号Rの初期値を1に設定する(ステップS2)。これらは、
図6に例示したスクリーンマスクをマトリックス状に分割した場合のアドレスを決定する値である。
【0066】
すなわち、
図7に示すように、制御部50は、マスク撮像カメラ43の視野に応じてスクリーンマスク25の下面をマトリックス状に分割した撮像エリアAを設定する。その際、撮像エリアAの座標を特定するために、当該撮像エリアAの行(row)を調査視野行番号Rで特定し、列(column)を調査視野列番号Cで特定することとしているのである。以下の説明では、個々の撮像エリアAについて説明する場合には、符号のAを変数としてA(R、C)と表記する。
【0067】
また、撮像エリアAの調査視野行番号Rを変更するために、制御部50は、インクリメント変数nを用いることとしている。このインクリメント変数nは、後述するように、牛耕式で撮像処理を実行するために、符号が適宜変更される。本実施形態においては、インクリメント変数nの初期値を正の値で1に設定することとしている(ステップS3)。インクリメント変数nが正の値の場合、サーボモータ17は、マスク撮像カメラ43が往動する方向に回転する。また、インクリメント変数nが負の値の場合、サーボモータ17は、マスク撮像カメラ43が復動する方向に回転する。
【0068】
次いで、制御部50は、サーボモータ17、18等を作動させ、マスク撮像カメラ43を撮像エリアA(R,C)の撮像位置に移動する(ステップS4)。ここで、本実施形態において、インクリメント変数nが正の値の場合、サーボモータ17は、マスク撮像カメラ43が往動する方向に回転する。マスク撮像カメラ43が撮像エリアA(R,C)に対応する撮像位置に到着すると、マスク撮像カメラ43は、当該撮像エリアA(R,C)を撮像する。その画像データは、画像処理部53でデジタルデータに変換され、主制御部51に入力される(ステップS5)。また、この処理過程で、スクリーンマスクを保持するステージに対するカメラの取付角度等に基づき、ずれが補正される。さらに、この段階で、画像データは、二値化データに変換される。これにより、爾後のデータ処理において、必要なメモリ容量を節約することができる。
【0069】
次いで、制御部50は、画像データに基づき、撮像エリアA(R,C)に写っている開口部25aのうち、途切れていないものを特定して、その座標、寸法等を表す開口部情報を作成する(ステップS6)。図示の例では、
図8に示す撮像エリアA(1,1)のうち、塗りつぶされている部位の開口部情報が作成される。
【0070】
次いで、制御部50は、この画像データを作業領域に複製する(ステップS7)。これは、行方向、または列方向に途切れている開口部25aのデータを後で生成するためである。なお、このステップにおいて、途切れている開口部25aが全くない場合には、ステップS6を省略する処理を実行してもよい。
【0071】
次いで、制御部50は、調査視野列番号Cに係る全ての行R(C)の撮像エリアAの撮像が終了したか否かを判定する(ステップS8)。仮に、残りの行R(C)が存在する場合、調査視野行番号Rをインクリメント変数nでインクリメントし(ステップS10)、ステップS4以下の処理を繰り返す。
【0072】
一方、ステップS8で、調査視野列番号Cに係る全ての行R(C)の撮像エリアAの撮像が終了したと判定した場合、制御部50は、さらに、調査視野列番号Cが1よりも大きいか否かを判定する(ステップS9)。これは、調査視野列番号Cがnull、0、1の場合、作業領域に複製された画像データは、1行以下である。そのため、調査視野列番号Cが1以下の場合、制御部50は、結合処理を実行することなく、次のステップに移行する。一方、変数が2以上の場合、制御部50は、画像結合処理サブルーチンを実行する(ステップS11)。画像結合処理サブルーチンの詳細は、後述する。
【0073】
次いで、制御部50は、全ての調査視野列番号Cの処理が終了したか否かを判定する(ステップS12)。全ての調査視野列番号Cの処理が終了した場合、制御部50は、最終処理を実行し(ステップS13)、全処理を終了する。ここで、最終処理は、最終列において結合されていなかった画像を結合する処理、結合された画像によって結合される開口部25aのデータ生成処理、開口部のデータに基づいて、最終的な検査用のデータを生成する処理、作業領域に複製された画像を消去する処理、マスク撮像カメラ43を所定の初期位置に移動させる処理等が含まれる。なお、この最終処理における画像結合処理やデータ生成処理は、原理的には、後述する画像結合処理サブルーチンでの処理と同等であるので、その詳細については説明を省略する。
【0074】
一方、残りの調査視野列番号Cがある場合、制御部50は、調査視野列番号Cの変数をインクリメントする(ステップS14)。次いで、行Rのインクリメント方向を決定するために、制御部50は、インクリメント変数nの符号、すなわち、インクリメント変数nが0よりも大きいか否かを判定する(ステップS15)。仮に、インクリメント変数nが正の値であった場合、制御部50は、行の初期値を最終行の値に設定するとともに、インクリメント変数nの値を−1に設定する(ステップS16)。その後、制御部50は、ステップS4に移行し、上述した処理を実行する。インクリメント変数nが負の値の場合、サーボモータ17は、マスク撮像カメラ43が復動する方向に回転する。従って、
図9に示すように、例えば、1列目の撮像エリアの終端がA(5,1)であった場合、次の撮像エリアは、A(5,2)となる。よって、ある列の撮像エリアを撮像した後、次の列の撮像エリアを撮像する際に、マスク撮像カメラ43を空送りするロスが生じない。2列目の撮像エリアA(R,2)が終了すると、マスク撮像カメラ43は、撮像エリアA(1,2)に移動している。その後、撮像処理が進むと、ステップS15の判定により、インクリメント変数nは、再び正の値に切り換えられ、その後、ステップS2に制御が移行する。よって、その後は、撮像エリアA(1,3)から撮像が開始され、3列目の撮像エリアA(R,3)が全て撮像される。
【0075】
そして、最終処理が終了した後は、
図10に示すように、全ての開口部について、開口部のデータが取得される。そして、その開口部のデータに基づき、検査用のデータが精緻に生成される。
【0076】
次に、
図5を参照して、画像結合処理サブルーチン(ステップS11)について説明する。
【0077】
このサブルーチンを実行する際、制御部50は、まず、
図11に示すように、作業領域512に複製された二値化データを結合した画像データを生成する。ここで、作業領域512には、例えば、2列分の画像データを格納する容量が設定されており、最初の列の格納部分をA、次の列の格納部分をBとして説明する。図示のように、2列目の画像データが全て複製された段階で、両格納部分A、Bには、二列分の画像データが格納される。これらの画像データは、まず、結合処理によって、一枚の画像を表す画像データに結合される。よって、各列A、Bの行ごとの境界部分および列Aと列Bの境界部分で途切れていた開口部の画像は、全て完全な形で再現される。その後、制御部50は、ステップS111の結合された画像データ生成処理によって結合された開口部について開口部情報を生成する(ステップS112)。これにより、各開口部の開口部情報を生成するために必要最低限度の演算処理で、開口部情報を生成することができる。
【0078】
図12を参照して、例えば、a×bの開口部25aの情報を生成する場合を例に説明する。この開口部25aが、四つの撮像エリアA(R,C)、A(R+1,C)、A(R,C+1)、A(R+1,C+1)の境界によって途切れていた場合、本実施形態であれば、ステップS112を実行するまで、すなわち、画像データが結合され、開口部25aの画像が途切れていない状態になるまで、演算処理は実行されない。そのため、演算量は、2×a+2×bの輪郭について、座標と長さを取得するだけで処理を実行することができる。これに対して、撮像エリアA(R,C)、A(R+1,C)、A(R,C+1)、A(R+1,C+1)ごとに、開口部25aの断片の情報を取得し、保存する場合には、4×a+4×bの処理量が必要となるから、処理時間は、2倍かかることになる。よって、本実施形態においては、従来技術に比べ、格段に処理を速めることが可能となる。
【0079】
一つの開口部のデータ処理が終了すると、制御部50は、全ての開口部についてのデータ生成が終了しているか否かを判定する(ステップS113)。未処理の開口部がある場合、制御部50は、ステップS113に移行して、上記処理を繰り返す。
【0080】
全ての開口部について処理が終了した場合、制御部50は、作業領域のうち、最初の列Aに格納されている画像データを消去し(ステップS114)、この列Aに、2番目の列に格納されていた画像データを移動させる(ステップS115)。これらの処理により、
図13に示すように、列Aには、最後の画像データが格納され、列Bは、ブランク(null)になるので、次の列の画像データを格納することが可能になる。これによって、順次、画像データを必要充分な部分だけ合成させながら、最小の演算量で開口部の開口部のデータを生成することが可能となる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、現物のスクリーンマスク25から検査用のデータを生成することができる。この検査用データを生成する際には、まず、
図7に示したように、撮像エリアA(R,C)が設定される。撮像エリアA(R,C)は、撮像手段としてのマスク撮像カメラ43の視野に応じてスクリーンマスク25の下面を分割したマトリックス状に配列されている。マスク撮像カメラ43は、
図4のステップS4に示したように、撮像エリアA(R,C)毎にスクリーンマスク25の下面を撮像する。撮像された画像のデータは、
図11に示したように、まず一枚の画像を表す画像データに結合される。される。この処理の後に、結合された画像データから開口部25aのデータが特定される。従って、開口部25aの一部が撮像エリアA(R,C)からはみ出している場合においても、分割された開口部25a毎のデータを特定し、個別に保存する必要がない。そのため、処理速度を迅速化することができる。
【0082】
また、本実施形態では、ドライブ手段としてのサーボモータ17、18は、制御部50の制御により、スクリーンマスク25の一辺(図示の例では、調査視野列番号C)に沿って撮像エリアA(R,C)を往動するようにマスク撮像カメラ43を駆動するとともに、マスク撮像カメラ43が往動した撮像エリア(例えば、1列目のA(R,1))に隣接する次の撮像エリア(例えば、A(R,2))を、マスク撮像カメラ43が往動した方向と逆方向に復動するようにマスク撮像カメラ43を駆動するように構成されており、マスク撮像カメラ43は、往動時にも復動時にもスクリーンマスク25の下面を撮像エリアA(R,C)ごとに順次、撮像するように構成されている。
【0083】
このため、本実施形態では、いわゆる「牛耕式」でスクリーンマスク25の下面を撮像することができる。すなわち、マスク撮像カメラ43がスクリーンマスク25の一辺に沿って、往動する際も復動する際も撮像処理が実行される。したがって、マスク撮像カメラ43を一方向(例えば、分割された撮像エリアA(R,C)の列方向)に駆動する際に、戻りがけで空送りする時間がなくなり、撮像時間を短縮することができる。無論、「一方向」は、列に限らず、行であってもよい。
【0084】
また、本実施形態では、マスク撮像カメラ43が出力した画像データを一時的に保存する作業領域512を記憶部51bに備えている。制御部50は、
図11に示したように、スクリーンマスク25の一辺に沿う一列分を一単位として、二単位分の撮像エリアA(R,C)の画像データを作業領域512に保存するように構成されている。さらに制御部50は、作業領域512に保存された二単位分の画像データから開口部25aのデータを特定するように構成されている。このため本実施形態では、途切れた開口部25aのデータを得るために必要最低限度の画像データを扱うことができる。よって、開口部25aのデータを得るために必要なメモリ容量や処理容量を最小限度のものに設定することができる。
【0085】
また、本実施形態では、制御部50は、開口部25aのデータを特定した後、
図13に示したように、作業領域512の画像を最初の一単位分から順に削除して、後続する画像データの保存順序を繰り上げるものである。
【0086】
このため、本実施形態では、比較的小さな容量の作業領域512で効率よく開口部25aのデータを生成すること可能になる。通常、開口部25aは、全長が短い。一方、マスク撮像カメラ43は、広視野のものが多い。よって、一行分又は一列分を一単位として、二単位分の画像データが結合されている場合、接合部分で途切れていた開口部25aの全体を収めることができる。従って、比較的小さな作業領域512内で、効率よく、開口部25aのデータを特定することが可能となる。また、作業領域512に保存された画像データは、いわゆるFIFO方式で順に処理されることになる。従って、作業領域512を可及的に低減することができる。
【0087】
また、本実施形態では、制御部50は、作業領域512に画像データを保存するのに先立って、個々の撮像エリアA(R,C)内に全体が含まれている開口部25aのデータを特定するように構成されている。
【0088】
このため本実施形態では、個々の撮像エリアA(R,C)内に全体が含まれている開口部25aがある場合には、その開口部25aのデータが特定されるので、作業領域512では、途切れている開口部25aの特定処理だけが実行されることになる。そのため、作業領域512を使用している時間が短くなり、システム全体の負荷を低減することができる。
【0089】
また、本実施形態では、制御部50が開口部25aのデータを特定するのに先立って画像データを二値化する二値化手段をさらに備えている。
【0090】
このため、本実施形態では、制御部50が画像処理にするのに先立って、画像データが二値化される。よって、画像処理に必要なメモリ領域を可及的に小さくすることができる。
【0091】
また、本実施形態は、フレーム10と、フレーム10に取り付けられたスクリーンマスク25とを備えたスクリーン印刷装置にスクリーン印刷用検査データの作成ユニットを構成し、マスク撮像カメラ43でスクリーンマスク25の下面を撮像して画像データを出力する撮像手段を構成し、サーボモータ17、18でマスク撮像カメラ43をスクリーンマスク25に対し相対的に駆動するドライブ手段を構成している。このため、本実施形態では、既設のスクリーン印刷装置1を用いて、スクリーン印刷用検査データを作成することができる。
【0092】
このように、本実施形態によれば、現物のスクリーンマスク25から検査用のデータを生成する際に、撮像エリアA(R,C)ごとに分割された個々の画像データを結合している。そして、この結合処理によって得られた結合された画像データから開口部25aデータが生成されている。従って、
図12を例に説明したように、効率よく短時間で、開口部のデータを生成することができる。よって本実施形態によれば、検査処理に用いられる検査用データをスクリーンマスク25の画像から生成するに当たり、処理時間を短縮することができる、という顕著な効果を奏する。
【0093】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。
【0094】
例えば、作業領域に、三列分のデータを保存できるようにしておいてもよい。また、スクリーンマスクの一辺に沿う画像データの収集は、上述した実施形態のように、列を基準とするものばかりではなく、行を基準とするものであつてもよい。